JP2556636Y2 - パーキングブレーキ機構付きディスクブレーキ - Google Patents

パーキングブレーキ機構付きディスクブレーキ

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JP2556636Y2
JP2556636Y2 JP6840291U JP6840291U JP2556636Y2 JP 2556636 Y2 JP2556636 Y2 JP 2556636Y2 JP 6840291 U JP6840291 U JP 6840291U JP 6840291 U JP6840291 U JP 6840291U JP 2556636 Y2 JP2556636 Y2 JP 2556636Y2
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昌彦 中嶋
直躬 三岡
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Hosei Brake Industry Co Ltd
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Toyota Motor Corp
Hosei Brake Industry Co Ltd
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案はパーキングブレーキ機構
付きディスクブレーキに関し、特に、ピストン内に設け
られたアジャストナットに螺合されたアジャストボルト
のピストン底部側と反対側の端部において設けられたコ
ーンクラッチを介して、パーキングブレーキ操作力がア
ジャストボルトからアジャストナットおよびピストンへ
伝達されるとともに、液圧によるブレーキ作動時におけ
るアジャストボルトの回転に基づいてパーキングブレー
キ操作ストロークを自動調節する一方、過大液圧時には
その操作ストロークのオーバアジャストが防止される形
式のパーキングブレーキ機構付きディスクブレーキに関
するものである。
【0002】
【従来の技術】シリンダボア内に一方向への突出し可能
に嵌合された有底円筒状のピストンと、そのピストン内
軸心回りの回転不能且つそのピストンに対して軸方向
の相対移動可能に設けられたアジャストナットと、その
アジャストナットをそのピストンの底部側へ付勢して常
にはそのピストンと一体的に移動させる第1付勢手段
と、一端部側に雄ねじ部を有するとともに他端部側に第
1テーパ面を有し、その雄ねじ部がピストン内に挿入さ
れてアジャストナットに軸方向において所定の間隙を有
する状態で螺合されたアジャストボルトと、そのアジャ
ストボルトの他端部と軸方向に対向するように前記シリ
ンダボア内に設けられ、そのアジャストボルトの前記第
1テーパ面とテーパ嵌合可能な第2テーパ面を有する可
動部材と、そのアジャストボルトをスラストベアリング
を介して可動部材側へ付勢してアジャストボルトの前記
第1テーパ面を可動部材の前記第2テーパ面に押し付け
る第2付勢手段とを備え、パーキングブレーキ操作部材
からの操作力が前記可動部材,アジャストボルト,およ
びアジャストナットを介して前記ピストンに伝達される
、そのピストンが突き出されてパーキングブレーキを
作動させる一方、前記シリンダボア内の液圧によりその
ピストンが突き出されるサービスブレーキ時に前記所定
の間隙を超えて前記アジャストナットがそのピストンと
共に移動させられると、その液圧および前記第2付勢手
段の付勢力に抗して前記アジャストボルトが前記可動部
材から離間させられ、前記第1テーパ面と前記第2テー
パ面とが非嵌合になるとともに、その液圧および第2付
勢手段によりアジャストボルトが可動部材側へ付勢され
ることによりそのアジャストボルトがアジャストナット
に対して一方向へ回転しながら可動部材側へ移動させら
れ、これにより前記パーキングブレーキ操作部材の操作
ストロークを自動調節するが、その液圧が予め定められ
た一定圧を超えたときにはその液圧および前記第2付勢
手段により前記第1付勢手段の付勢力に抗して前記アジ
ャストナットを前記ピストンの底部から離間させるとと
もに前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とをテーパ嵌
合させ、そのテーパ嵌合の摩擦力に基づいて前記アジャ
ストボルトの回転を阻止することにより前記操作ストロ
ークのオーバアジャストを防止する形式のパーキングブ
レーキ機構付きディスクブレーキが知られている。
【0003】たとえば、特公昭63−35857号公報
に記載されたものがそれである。このディスクブレーキ
においては、アジャストボルトの雄ねじ部側と反対側の
端部と可動部材との間に大気圧室が設けられており、こ
れにより、液圧によりアジャストボルトにピストン底部
側と反対側への付勢力が生じ、過大液圧時にはアジャス
トボルトのテーパ状外周面(第1テーパ面)が可動部材
のテーパ状内周面(第2テーパ面)に強く押し付けられ
ることにより、アジャストボルトの回転が阻止されてパ
ーキングブレーキ操作ストロークのオーバアジャストが
防止されるようになっている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】しかしながら、かかる
従来のパーキングブレーキ機構付きディスクブレーキに
おいては、アジャストボルトの第1テーパ面と可動部材
第2テーパ面との嵌合部分はシリンダボア内の液圧室
に位置させられているため、液圧室内にブレーキ液を通
しつつその液圧室内のエア抜きを行う場合において、そ
の嵌合部分(コーンクラッチ)に存在するエアを除去し
難く、液圧室内のエア抜き性を充分に得難いという問題
があった。
【0005】これに対し、たとえば特開昭54−118
956号公報に記載されているように、シリンダボアの
内周面のアジャストボルトの雄ねじ部とテーパ状外周面
(第1テーパ面)との間に位置する部分に内周側へ突き
出す環状突出部を設け、この環状突出部の内周面にアジ
ャストボルトを摺動可能かつ液密に嵌合して、アジャス
トボルトの雄ねじ部側に液圧室を形成し且つアジャスト
ボルトのテーパ状外周面側に大気圧室を形成するように
すれば、アジャストボルトのテーパ状外周面と可動部材
のテーパ状内周面(第2テーパ面)との嵌合部分が大気
圧室に配置されることとなるので、液圧室内のエア抜き
性が向上すると考えられる。
【0006】しかし、この場合においても未だ解決すべ
き種々の問題を有している。すなわち、可動部材の外径
は、通常、環状突出部の内径より大きくされるため、そ
の可動部材をピストンと同一の側からシリンダボア内に
組み付けることはできないことから、シリンダボアを両
端において開口するように形成しなければならない。こ
のため、シリンダボアの可動部材側の開口から小石や泥
水等が侵入するのを防止するためにその開口部分にダス
トブーツ等を取り付ける必要を生ずるとともに、このダ
ストブーツが破損したりするとアジャストボルトと可動
部材とのテーパ嵌合部分に小石や泥水等が侵入してその
テーパ嵌合部分における摩擦力が充分に得られなくな
り、パーキングブレーキ操作ストロークのオーバアジャ
ストを確実に防止できなくなるおそれがあるのである。
【0007】また、シリンダボアの内周面に内周側へ突
き出す環状突出部を形成するためにシリンダボアの加工
を軸心方向両側から行う必要を生じて、シリンダボアの
加工が面倒となる欠点がある。
【0008】また、アジャストボルトと可動部材との間
のテーパ嵌合部分は大気圧室に設けられても、液圧室内
には前記スラストベアリングおよび第2付勢手段等の多
くの部品が未だ設けられており、液圧室内におけるそれ
らの部品の存在により、必ずしも液圧室内のエア抜き性
が充分に得られるとは言い難かったのである。
【0009】本考案は以上の事情を背景として為された
ものであって、その目的とするところは、シリンダボア
に一方向への突出し可能に嵌合された有底円筒状のピス
トン内へ挿入されたアジャストボルトのピストン底部側
と反対側の端部とシリンダボア内に設けられた可動部材
との間のテーパ嵌合部分を介して、パーキングブレーキ
操作力がアジャストボルトと螺合するアジャストナット
およびピストンへ伝達されるとともに、液圧によるブレ
ーキ作動時におけるアジャストボルトの回転に基づいて
パーキングブレーキ操作ストロークを自動調節する一
方、過大液圧時にはその操作ストロークのオーバアジャ
ストが防止される形式のパーキングブレーキ機構付きデ
ィスクブレーキにおいて、前記テーパ嵌合部分を大気圧
室に設ける場合において、ダストブーツ等を設けること
なくそのテーパ嵌合部分に小石や泥水等が侵入するのを
確実に防止し得てオーバアジャストを一層確実に防止し
得るとともに、シリンダボアの加工を容易に為し得る一
方、液圧室内のエア抜き性を一層向上させ得るパーキン
グブレーキ機構付きディスクブレーキを提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本考案の要旨とするところは、一方向において開口す
るシリンダボア内に突出し可能に嵌合された有底円筒状
のピストンと、そのピストン内に軸心回りの回転不能且
つそのピストンに対して軸方向の相対移動可能に設けら
れたアジャストナットと、そのアジャストナットをその
ピストンの底部側へ付勢して常にはそのピストンと一体
的に移動させる第1付勢手段と、一端部側に雄ねじ部を
有し且つ他端部側に第1テーパ面を有するとともに長手
方向中間部に嵌合部を有し、その雄ねじ部がそのピスト
ン内に挿入されてそのアジャストナットに軸方向におい
て所定の間隙を有する状態で螺合されたアジャストボル
トと、そのアジャストボルトの他端部と軸方向に対向す
るように前記シリンダボア内に設けられ、そのアジャス
トボルトの前記第1テーパ面とテーパ嵌合可能な第2テ
ーパ面を有する可動部材と、そのアジャストボルトをス
ラストベアリングを介してその可動部材側へ付勢してア
ジャストボルトの第1テーパ面を可動部材の第2テーパ
面に押し付ける第2付勢手段と、そのアジャストボルト
の雄ねじ部側においてそのシリンダボア内に形成された
液圧室と、そのアジャストボルトの前記第1テーパ面側
においてそのシリンダボア内に形成された大気圧室とを
備え、パーキングブレーキ操作部材からの操作力が前記
可動部材,アジャストボルト,およびアジャストナット
を介して前記ピストンに伝達されると、そのピストンが
突き出されてパーキングブレーキを作動させる一方、
記液圧室の液圧によりそのピストンが突き出されるサー
ビスブレーキ時に前記所定の間隙を超えて前記アジャス
トナットがそのピストンと共に移動させられると、その
液圧および前記第2付勢手段の付勢力に抗して前記アジ
ャストボルトが前記可動部材から離間させられ、前記第
1テーパ面と前記第2テーパ面とが非嵌合になるととも
に、その液圧および第2付勢手段によりアジャストボル
トが可動部材側へ付勢されることによりそのアジャスト
ボルトがアジャストナットに対して一方向へ回転しなが
ら可動部材側へ移動させられ、これにより前記パーキン
グブレーキ操作部材の操作ストロークを自動調節する
が、その液圧が予め定められた一定圧を超えたときには
その液圧および前記第2付勢手段により前記第1付勢手
段の付勢力に抗して前記 アジャストナットを前記ピスト
ンの底部から離間させるとともに前記第1テーパ面と前
記第2テーパ面とをテーパ嵌合させ、そのテーパ嵌合の
摩擦力に基づいて前記アジャストボルトの回転を阻止す
ることにより前記操作ストロークのオーバアジャストを
防止する形式のパーキングブレーキ機構付きディスクブ
レーキにおいて、前記アジャストボルトの嵌合部の外周
面と前記シリンダボアの内周面との間に、そのシリンダ
ボア内を分割して前記液圧室および大気圧室を形成する
ための環状の隔壁部材を、そのシリンダボアの底部側へ
の一定限度以上の移動不能かつアジャストボルトに対し
て軸方向の相対移動可能に嵌合し、そのシリンダボアの
内周面およびアジャストボルトの嵌合部の外周面と前記
隔壁部材との間に、それらの間を液密に封止するシール
手段を設けるとともに、前記スラストベアリングおよび
前記第2付勢手段を前記大気圧室内に設けたことにあ
る。
【0011】
【作用および考案の効果】このようにすれば、シリンダ
ボアの内周面とアジャストボルトの嵌合部の外周面との
間に環状の隔壁部材がシリンダボアの底部側への一定限
度以上の移動不能かつアジャストボルトに対して軸方向
の相対移動可能に嵌合されてシリンダボア内が2分割さ
れるとともに、その隔壁部材とシリンダボアの内周面お
よびアジャストボルトの嵌合部の外周面との間にそれら
の間を液密に封止するシール手段が設けられることによ
り、アジャストボルトの雄ねじ部側に液圧室が形成され
且つアジャストボルトの第1テーパ面側に大気圧室が形
成される。この場合において、液圧室および大気圧室を
形成するためのシリンダボアの分割は、シリンダボアの
内周面に環状突出部を突設したりすることなく隔壁部材
を嵌合することにより行われるため、可動部材をピスト
ンと同一方向からシリンダボア内へ組み付けることがで
きる。このため、シリンダボアはピストンの突出し側の
一端においてのみ開口されておればよく、アジャストボ
ルトの第1テーパ面と可動部材の第2テーパ面とのテー
パ嵌合部分が配置される大気圧室をシリンダボアの底部
側に設けることできることから、ダストブーツ等を設
けることなく前記テーパ嵌合部分への小石や泥水等の侵
入を確実に防止し得てパーキングブレーキ操作ストロー
クのオーバアジャストを一層確実に防止し得る。
【0012】また、シリンダボアの内周面に環状突出部
を突設する必要がなく且つシリンダボアを軸心方向の一
方の側から加工できるため、シリンダボアの加工を比較
的容易に為し得る。
【0013】また、前記スラストベアリングおよび第2
付勢手段は大気圧室内に設けられるので、液圧室内の部
品点数が従来に比べて大幅に低減させられることとな
り、これにより、液圧室内のエア抜き性を一層向上させ
得る。
【0014】
【実施例】以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。
【0015】図1は本考案が適用されたパーキングブレ
ーキ機構付きディスクブレーキの要部を示す図であっ
て、車輪と共に回転可能に設けられたディスクロータ1
0の外周部にはキャリパ12が跨設されており、そのキ
ャリパ12は図示しない非回転部材に固定された支持部
材14に一対のスライドピン(図示せず)等を介してデ
ィスクロータ10の軸心と平行な方向の移動可能に支持
されている。キャリパ12は、第1シリンダボア16を
有し、その第1シリンダボア16内に全体として有底円
筒状を成すピストン18が軸心回りの回転不能な状態で
一方向の突出し可能に嵌合されたシリンダ部20と、そ
のシリンダ部20のピストン18の突出し方向と反対側
の端部においてシリンダ部20に一体に設けられた突出
部22と、シリンダ部20のピストン18突出し方向の
端部から一体に延び出してディスクロータ10を間にし
てシリンダ部20と対向する二股状の爪部24とを備え
ている。キャリパ12の内側、すなわちピストン18と
爪部24との間には、一対のパッド26,28がディス
クロータ10を挟んだ状態で配設されており、それらパ
ッド26,28は前記支持部材14によりディスクロー
タ10の軸心と平行な方向の移動可能に支持されてい
る。
【0016】上記ピストン18の内部には、全体として
円筒状を成し、一端部側外周面に外向きフランジ30を
有するアジャストナット32がその外向きフランジ30
がピストン18の底部側に位置する状態で、ピストン1
8に対する軸方向の相対移動可能かつ軸心回りの相対回
転不能に設けられている。アジャストナット32の外向
きフランジ30とピストン18の内周面との間には、そ
のピストン18の内周面に嵌め付けられた止め輪34お
よび座金36を介してスプリング38が予圧状態で設け
られており、アジャストナット32はこのスプリング3
8の付勢力に従ってピストン18の底部に押し付けられ
ている。
【0017】上記シリンダ部20の内部には、更に、第
1シリンダボア16と同心に第2シリンダボア40およ
び第3シリンダボア42が順次形成されており、第1シ
リンダボア16,第2シリンダボア40,第3シリンダ
ボア42の順で径が小さくされている。これらの3つの
シリンダボア16,40,42内にはアジャストボルト
44が配設されている。アジャストボルト44は、雄ね
じ部46と、その雄ねじ部46より大径の嵌合部48
と、その嵌合部48より更に大径であって且つ雄ねじ部
46から離隔する程径が小さくなるテーパ状外周面50
を有する頭部52とを備えており、雄ねじ部46がアジ
ャストナット32に軸方向において所定の間隙を有する
状態で螺合されている。第3シリンダボア42内には、
軸心方向の一端部側にテーパ状内周面54を有し且つ他
端部側に係合凹所56を有する可動部材58が軸心方向
の移動可能に嵌合されている。この可動部材58はそれ
に突設された回止めピン60が第3シリンダボア42の
底部に設けられた穴61内に所定間隙を有して嵌め入れ
られることにより、軸心回りの回転が阻止されている。
上記アジャストボルト44のテーパ状外周面50は第1
テーパ面に相当し、可動部材58のテーパ状内周面54
は第2テーパ面に相当する。
【0018】上記突出部22の内部には、第3シリンダ
ボア42等の軸心と直角な方向に延びる取付穴74が第
3シリンダボア42の底部と連通する状態で設けられて
おり、その取付穴74内にはカム軸76がニードルベア
リング78を介して軸心回りの回転可能に設けられてい
る。カム軸76の一端部であって突出部22の外側に位
置する部分には、図示しないパーキングブレーキ操作部
材からパーキングブレーキ操作力が伝達されるレバー部
材80が相対回転不能に取り付けられている。カム軸7
6の外周面の長手方向中間部には偏心した位置を底部と
する係合切欠82が形成されており、その係合切欠82
の底部と可動部材58の係合凹所56の底部との間には
トグル84が設けられている。なお、86は、ピストン
18の外周面と第1シリンダボア16の内周面との間を
液密にシールするとともにピストン18の戻し作用を為
すピストンシールであり、88はダストブーツである。
【0019】上記第2シリンダボア40の内周面とアジ
ャストボルト44の嵌合部48の外周面との間には、環
状の隔壁部材90が止め輪91等により第2シリンダボ
ア40に対して軸方向の移動不能かつアジャストボルト
44に対して軸方向の相対移動可能に嵌合されている。
隔壁部材90の外周面と第2シリンダボア40の内周面
との間は、その隔壁部材90の外周面に形成された環状
溝92に嵌め着けられたOリング94にて液密に封止さ
れているとともに、隔壁部材90の内周面とアジャスト
ボルト44の嵌合部48の外周面との間は、その嵌合部
48の外周面に形成された環状溝96に嵌め着けられた
カップシール98にて液密に封止されている。これによ
り、隔壁部材90を間にして、アジャストボルト44の
雄ねじ部46やピストン18等が設けられた第1シリン
ダボア16内に液圧室100が形成されているととも
に、アジャストボルト44の頭部52や可動部材58等
が設けられた第3シリンダボア42内に大気圧室102
が形成されており、液圧室100内にブレーキ液圧が供
給されたときには、その液圧に応じた可動部材58側へ
の推力がアジャストボルト44に作用させられるように
なっている。本実施例においては、上記第1シリンダボ
ア16,第2シリンダボア40,および第3シリンダボ
ア42がクレームにおけるシリンダボアに相当するとと
もに、上記Oリング94およびカップシール98がシー
ル手段として機能している。
【0020】上記隔壁部材90の大気圧室102と対向
する面には、液圧室100側へ延びる環状凹所104が
設けられている。その環状凹所104の底部とアジャス
トボルト44の頭部52との間には、座金106および
スラストベアリング108を介してスプリング110が
予圧状態で介挿されており、スプリング110の大部分
は環状凹所104内に収容されている。これにより、ス
プリング110の付勢力に従ってアジャストボルト44
が可動部材58側へ付勢されて、そのアジャストボルト
44のテーパ状外周面50が可動部材58のテーパ状内
周面54に押し付けられるようになっている。本実施例
においては、上記スプリング110が第2付勢手段に相
当し、このスプリング110のばね定数は上記スプリン
グ38のばね定数より小さくされている。
【0021】なお、上記のように構成されたパーキング
ブレーキ機構付きディスクブレーキを組み立てる際に
は、たとえば、トグル84,可動部材58,嵌合部48
に隔壁部材90が嵌合され且つスラストベアリング10
8およびスプリング110等が組み付けられたアジャス
トボルト44が第1シリンダボア16の開口側から順次
組み付けられた後、アジャストナット32が組み付けら
れたピストン18を回転させつつ第1シリンダボア16
内に挿入することによりそのアジャストナット32がア
ジャストボルト44に螺合されることとなる。
【0022】次に、上記パーキングブレーキ機構付きデ
ィスクブレーキの作動を説明する。まず、パーキングブ
レーキ操作時においては、レバー部材80によりカム軸
76が図1において右回りに回転させられると、カム軸
76によりトグル84が図1において左側へ押動され、
そのトグル84に生じた推力が可動部材58,アジャス
トボルト44,およびアジャストナット32を介してピ
ストン18に伝達されてピストン18が突き出される。
これにより、一方のパッド28がディスクロータ10に
押し付けられるとともに、その反力でキャリパ12がピ
ストン18の突出し方向と反対方向へ移動させられて他
方のパッド26がディスクロータ10に押し付けられる
ことによりパーキングブレーキが作動させられる。
【0023】上記ディスクブレーキのサービスブレーキ
操作時においては、液圧室100内に供給されたブレー
キ液圧によりピストン18が突き出されて上記の場合と
同様にして制動が行われる。このとき、ピストン18の
外周面とピストンシール86との間に相対的な滑りを生
じないピストン18の予め定められた移動範囲内の突出
し時においては、アジャストナット32がスプリング3
8によりピストン18の底部に押し付けられた状態でピ
ストン18と一体的に作動させられるとともに、アジャ
ストナット32とアジャストボルト44との間の前記軸
方向の間隙(がたつき)によりアジャストナット32と
アジャストボルト44との間には軸力が作用しない。一
方、ブレーキ液圧が予め定められた一定圧よりも低くて
そのブレーキ液圧およびスプリング110によるアジャ
ストボルト44に対するピストン18底部側と反対側へ
の付勢力がスプリング38の付勢力より小さい場合にお
いて、パッド26,28の磨耗によりピストン18が前
記予め定められた移動範囲を超えて突き出されてピスト
ン18の外周面とピストンシール86との間に相対的な
滑りを生じた場合には、アジャストナット32とアジャ
ストボルト44との間に軸力が生じてアジャストボルト
44がブレーキ液圧およびスプリング110の付勢力に
抗してピストン18底部側へ移動させられ、これによ
り、アジャストボルト44のテーパ状外周面50が可動
部材58のテーパ状内周面54から離れて、テーパ状外
周面50がテーパ状内周面54とテーパ嵌合するまでア
ジャストボルト44がブレーキ液圧およびスプリング1
10の付勢力に従って一方向へ回転させられることによ
り、レバー部材80の回動量ひいては前記パーキングブ
レーキ操作部材の操作ストロークが自動的に調節される
ようになっている。本実施例では、上記スプリング38
が第1付勢手段に相当する。
【0024】また、ブレーキ液圧が過大となると、パッ
ド26,28の磨耗に拘らずキャリパ12の変形等に起
因してピストン18が前記予め定められた移動範囲を超
えて突き出される場合があるが、ブレーキ液圧が大きく
なって前記予め定められた一定圧を超えると、そのブレ
ーキ液圧およびスプリング110によるアジャストボル
ト44に対するピストン18底部側と反対側への付勢力
がスプリング38の付勢力より大きくなって、ピストン
18の突出しに伴ってスプリング38が圧縮されつつア
ジャストナット32がピストン18の底部から離れ且つ
アジャストボルト44のテーパ状外周面50が可動部材
58のテーパ状内周面54に強く押し付けられることに
より、それらテーパ状外周面50とテーパ状内周面54
との間の摩擦力に基づいてアジャストボルト44の回転
が阻止されてパーキングブレーキ操作部材の操作ストロ
ークのオーバアジャストが防止されるようになってい
る。
【0025】このように本実施例によれば、アジャスト
ボルト44と可動部材58との間のテーパ嵌合部分が大
気圧室102に設けられているので、かかるテーパ嵌合
部分が液圧室に設けられる従来の場合に比べて、液圧室
100内のエア抜き性が好適に得られる。この場合にお
いて、液圧室100および大気圧室102を形成するた
めのシリンダ部20内の分割は、シリンダボア内周面に
環状突出部を突設したりすることなく、第2シリンダボ
ア40の内周面とアジャストボルト44の嵌合部48の
外周面との間に隔壁部材90を嵌合することにより行わ
れるため、ディスクブレーキの組立て時においては可動
部材58をピストン18と同様に第1シリンダボア16
の開口側から組み付けることができる。これにより、可
動部材58を第3シリンダボア42に嵌合するためにそ
の第3シリンダボア42の第2シリンダボア40と反対
側の端部を開口させる必要がなく、第3シリンダボア4
2内に形成された大気圧室102すなわちその大気圧室
102内に配設されるアジャストボルト44と可動部材
58とのテーパ嵌合部分をシリンダボア底部側に設ける
ことができることから、ダストブーツ等を設けることな
く前記テーパ嵌合部分への小石や泥水等の侵入を確実に
防止することができる。この結果、過大液圧時において
そのテーパ嵌合部分における摩擦力が充分に得られるの
で、パーキングブレーキ操作ストロークのオーバアジャ
ストを一層確実に防止することができるのである。
【0026】また、本実施例によれば、シリンダボア1
6,40,42は軸心方向の一方の側(第1シリンダボ
ア16の開口側)から加工されることとなるため、シリ
ンダボアの内周面に環状突出部を形成するためにそのシ
リンダボアを軸心方向両側から加工する場合に比べて、
シリンダボア16,40,42を容易に加工することが
できる。
【0027】また、本実施例によれば、アジャストボル
ト44を軸心回りの回転可能に可動部材58側へ付勢す
るためのスラストベアリング108およびスプリング1
10等が大気圧室102内に設けられいているので、か
かるスラストベアリングやスプリング等が液圧室内に設
けられている従来の場合に比べて、液圧室100内の部
品点数が大幅に低減されることとなり、これにより、液
圧室100内のエア抜き性を一層向上させることができ
る。
【0028】また、本実施例によれば、スプリング11
0の大部分は隔壁部材90の環状凹所104内に収容さ
れているので、アジャストボルト44の長さ寸法ひいて
はキャリパ12の第1シリンダボア16軸心と平行な方
向の長さ寸法を好適に抑制できることから、ディスクブ
レーキの設置スペースを増大させることがない利点があ
る。
【0029】ところで、アジャストボルトを可動部材側
へ付勢するためのスプリングを液圧室内に設ける従来の
場合には、そのスプリングの一端部を受けるためにフラ
ンジ付き筒状座金をシリンダボアの内周面に設けること
が行われているが、本実施例によれば、スプリング11
0の一端部は隔壁部材90にて受けられるため、かかる
フランジ付き筒状座金を別個に設ける必要がなくなって
ディスクブレーキのコストを低減することも可能となる
利点がある。
【0030】なお、前記実施例では、隔壁部材90と第
2シリンダボア40の内周面およびアジャストボルト4
4の嵌合部48の外周面との間は、隔壁部材90の外周
面に嵌め着けられたOリング94および嵌合部48の外
周面に嵌め着けられたカップシール98にて液密にシー
ルされているが、第2シリンダボア40の内周面に形成
した環状溝や隔壁部材90の内周面に形成した環状溝に
シール部材を嵌め着けてもよいことは勿論である。
【0031】また、前記実施例では、第2付勢手段とし
てのスプリング110は圧縮コイルスプリングにて構成
されているが、皿ばねなどにて構成することもできる。
【0032】また、前記実施例では、スプリング110
はアジャストボルト44と隔壁部材90との間に設けら
れているが、アジャストボルト44と第3シリンダボア
42の内周面との間にコーンスプリングなどを設けるよ
うに構成することもできる。この場合においては、前記
止め輪91を削除することも可能である。
【0033】また、前記実施例では、シリンダボアは互
いに径の異なる3つのシリンダボア16,40,42を
有して構成されているが、必ずしもその必要はなく、た
とえば同一径のシリンダボア内にピストン,隔壁部材,
および可動部材を設けるように構成することもできる。
【0034】その他、本考案はその趣旨を逸脱しない範
囲において種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案が適用されたパーキングブレーキ機構付
きディスクブレーキの一例を示す図であって、要部を示
す断面図である。
【符号の説明】
{16 第1シリンダボア,40 第2シリンダボア,
42 第3シリンダボア}シリンダボア 18 ピストン 32 アジャストナット38 スプリング(第1付勢手段) 44 アジャストボルト 46 雄ねじ部 48 嵌合部 50 テーパ状外周面(第1テーパ面) 54 テーパ状内周面(第2テーパ面) 58 可動部材 90 隔壁部材 {94 Oリング,98 カップシール}シール手段 100 液圧室 102 大気圧室 108 スラストベアリング 110 スプリング(第2付勢手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 稲富 昭夫 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 昭54−118956(JP,A)

Claims (1)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一方向において開口するシリンダボア内
    に突出し可能に嵌合された有底円筒状のピストンと、該
    ピストン内に軸心回りの回転不能且つ該ピストンに対し
    て軸方向の相対移動可能に設けられたアジャストナット
    と、該アジャストナットを該ピストンの底部側へ付勢し
    て常には該ピストンと一体的に移動させる第1付勢手段
    と、一端部側に雄ねじ部を有し且つ他端部側に第1テー
    パ面を有するとともに長手方向中間部に嵌合部を有し、
    該雄ねじ部が該ピストン内に挿入されて該アジャストナ
    ットに軸方向において所定の間隙を有する状態で螺合さ
    れたアジャストボルトと、該アジャストボルトの他端部
    と軸方向に対向するように前記シリンダボア内に設けら
    れ、該アジャストボルトの前記第1テーパ面とテーパ嵌
    合可能な第2テーパ面を有する可動部材と、該アジャス
    トボルトをスラストベアリングを介して該可動部材側へ
    付勢して該アジャストボルトの前記第1テーパ面を該可
    動部材の前記第2テーパ面に押し付ける第2付勢手段
    と、該アジャストボルトの雄ねじ部側において該シリン
    ダボア内に形成された液圧室と、該アジャストボルトの
    前記第1テーパ面側において該シリンダボア内に形成さ
    れた大気圧室とを備え、パーキングブレーキ操作部材か
    らの操作力が前記可動部材,アジャストボルト,および
    アジャストナットを介して前記ピストンに伝達される
    、該ピストンが突き出されてパーキングブレーキを作
    動させる一方、前記液圧室の液圧により該ピストンが突
    き出されるサービスブレーキ時に前記所定の間隙を超え
    て前記アジャストナットが該ピストンと共に移動させら
    れると、該液圧および前記第2付勢手段の付勢力に抗し
    て前記アジャストボルトが前記可動部材から離間させら
    れ、前記第1テーパ面と前記第2テーパ面とが非嵌合に
    なるとともに、該液圧および該第2付勢手段により該ア
    ジャストボルトが該可動部材側へ付勢されることにより
    該アジャストボルトが該アジャストナットに対して一方
    向へ回転しながら該可動部材側へ移動させられ、これに
    より前記パーキングブレーキ操作部材の操作ストローク
    を自動調節するが、該液圧が予め定められた一定圧を超
    えたときには該液圧および前記第2付勢手段により前記
    第1付勢手段の付勢力に抗して前記アジャストナットを
    前記ピストンの底部から離間させるとともに前記第1テ
    ーパ面と前記第2テーパ面とをテーパ嵌合させ、該テー
    パ嵌合の摩擦力に基づいて前記アジャストボルトの回転
    を阻止することにより前記操作ストロークのオーバアジ
    ャストを防止する形式のパーキングブレーキ機構付きデ
    ィスクブレーキにおいて、 前記アジャストボルトの嵌合部の外周面と前記シリンダ
    ボアの内周面との間に、該シリンダボア内を分割して前
    記液圧室および大気圧室を形成するための環状の隔壁部
    材を、該シリンダボアの底部側への一定限度以上の移動
    不能かつ該アジャストボルトに対して軸方向の相対移動
    可能に嵌合するとともに、該シリンダボアの内周面およ
    び該アジャストボルトの嵌合部の外周面と該隔壁部材と
    の間に、それらの間を液密に封止するシール手段を設け
    る一方、前記スラストベアリングおよび前記第2付勢手
    段を前記大気圧室内に設けたことを特徴とするパーキン
    グブレーキ機構付きディスクブレーキ。
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