JP2552971B2 - 溶接トーチ用ワイヤ送給ガイドパイプを有する溶接装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶接トーチ用ワイヤ送
給ガイドパイプを有する溶接装置に関し、特に、スパイ
ラル鋼管製造設備に於けるスパイラル鋼管の内面に対す
る溶接を行う装置などに用いられる溶接トーチ用ワイヤ
送給ガイドパイプを有する溶接装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、スパイラル鋼管製造設備に於け
るスパイラル鋼管の内面に対する溶接を行う内面溶接装
置として、図２に示されるようなものがある。図２に於
いて、スパイラル鋼管１の管軸方向である図に於ける左
右方向に、固定支持体としての支持ビーム２が延在する
ように設けられており、支持ビーム２の下端面には所定
のピッチをもって多数の内面成形ロール３が配設されて
いる。これら内面成形ロール３と図示されない２列の外
面成形ロールとにより、成形されるスパイラル鋼管１の
軸線に対して所定の成形角度をもって搬送されてくるス
トリップがスパイラル状に成形される。このスパイラル
状に成形されたストリップの互いに隣接する側縁同士
が、支持ビーム２の図の左方の前端部に設けられた例え
ば３本の溶接トーチ４ａ〜４ｃにより溶接されて、スパ
イラル鋼管１が製造される。

【０００３】尚、上記溶接トーチ４ａ〜４ｃは、支持ビ
ーム２の後端側に各々に対応して設けられたワイヤ送給
装置２１ａ〜２１ｃからそれぞれ別個に送給される消耗
電極としてのワイヤを用いてアーク溶接するものであ
る。支持ビーム２内には、各ワイヤをワイヤ送給装置２
１ａ〜２１ｃから溶接トーチ４ａ〜４ｃに向けてガイド
するためのワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５ｃが受容さ
れており、支持ビーム２の前端部には、各ワイヤ送給ガ
イドパイプ５ａ〜５ｃの各溶接トーチ４ａ〜４ｃ側端部
を軸線回りに回動自在にかつ軸線方向に摺動自在に支持
するパイプ支持部材２２が設けられている。

【０００４】また、上記溶接装置では、溶接トーチ４ａ
〜４ｃの前後位置調整のために、支持ビーム２の後端部
には各ワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５ｃ毎に各前後位
置調整装置２３ａ〜２３ｃが設けられている。これら前
後位置調整装置２３ａ〜２３ｃは、互いに同様の構造で
あるため、その１つの前後位置調整装置２３ａについて
示すと、ワイヤ送給装置２１ａを支持する支持台２４
と、支持台２４に固定されたガイドバー２５と、ガイド
バー２５を摺動自在に支持するように支持ビーム２の下
端面に固設されたガイド部材２６と、ガイドバー２５を
駆動することにより支持台２４を介してワイヤ送給装置
２１ａ〜２１ｃを前後方向に移動させるためのシリンダ
２７とからなる。尚、シリンダ２７は、図示されない制
御装置の制御命令により伸縮駆動されるようになってお
り、各ワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５ｃには溶接通電
用ケーブル９が接続されている。

【０００５】このようにして構成された溶接装置では、
溶接通電時の発熱により上記したワイヤ送給ガイドパイ
プ５ａ〜５ｃが熱膨張する。この膨張代は、上記シリン
ダ２７が固定状態の場合には、ワイヤ送給装置２１ａ〜
２１ｃが初期位置に拘束されるため、溶接トーチ４ａ〜
４ｃ側に表れることになる。そのため、溶接トーチ４ａ
〜４ｃを溶接シームＳに合わせる調整を溶接作業中に作
業者が頻繁に行わなければならないばかりでなく、溶接
シームＳを外れて溶接されてしまった場合にはその手直
しを行う必要が生じる等の問題がある。

【０００６】上記溶接トーチ４ａ〜４ｃの変位を防止す
るべく、ワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５ｃの溶接トー
チ４ａ〜４ｃ側端部を前後方向に変位可能にかつ選択的
に固定し得るクランプ機構を設け、溶接トーチ４ａ〜４
ｃの位置調整後に固定して溶接作業を行うことが考えら
れるが、この場合にはワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５
ｃの両端部が拘束されることから、熱膨張が生じた場合
にはワイヤ送給ガイドパイプ５ａ〜５ｃに曲げ応力が生
じるという問題がある。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の
問題点に鑑み、本発明の主な目的は、溶接通電時に生じ
るワイヤ送給ガイドパイプの熱膨張による悪影響を防止
するべく改良された溶接トーチ用ワイヤ送給ガイドパイ
プを有する溶接装置を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】このような目的は、本発
明によれば、後端に接続されたワイヤ送給装置から送給
される消耗電極としてのワイヤを前端に接続された溶接
トーチに向けてガイドするためのワイヤ送給ガイドパイ
プと、溶接通電時には前記ワイヤ送給ガイドパイプの前
記溶接トーチ側端部を固定するべく、前記ワイヤ送給ガ
イドパイプに沿って延在する固定支持体に設けられた固
定及び解除自在なクランプ機構と、前記ワイヤ送給装置
を前記ワイヤ送給ガイドパイプの長手方向に対して変位
自在に支持するように前記固定支持体に設けられたガイ
ド手段と、駆動手段の駆動力により前記ワイヤ送給装置
を前記長手方向に駆動するための駆動力伝達手段と、溶
接通電時には前記駆動手段と前記伝達手段との両者間の
動力伝達を解除し得るように該両者間に設けられたクラ
ッチ機構とを有することを特徴とする溶接トーチ用ワイ
ヤ送給ガイドパイプを有する溶接装置を提供することに
より達成される。

【０００９】

【作用】このようにすれば、溶接トーチを管軸方向に位
置調整するときには、クランプ機構を解除状態にしてク
ラッチを係合状態にすることにより、駆動手段により溶
接トーチを移動させることができる。位置調整した後に
は、クランプ機構を固定状態にすることにより溶接トー
チの位置が固定され、溶接通電によりワイヤ送給ガイド
パイプが熱膨張しても、溶接通電時にはワイヤ送給装置
を駆動するための駆動力伝達手段と駆動手段との間に設
けられたクラッチ機構を係合解除状態にしておくことに
より、ワイヤ送給装置が熱膨張代分だけ変位することが
でき、ワイヤ送給ガイドパイプに曲げ応力が生じない。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の好適実施例を添付の図面につ
いて詳しく説明する。図１は、本発明が適用されたスパ
イラル鋼管製造設備に於けるスパイラル鋼管の内面に対
する溶接を行う内面溶接装置の要部を拡大して模式的に
示す側面図であり、従来例で示した図２と同様の部分に
ついては同一の符号を付けてその詳しい説明を省略す
る。

【００１１】図１に於いて、従来例と同様に、スパイラ
ル鋼管１の内部にてその軸線方向に沿って延在するよう
にされた固定支持体としての支持ビーム２の下面には多
数の内面成形ロール３が設けられており、図示されない
外面成形ロールとにより、ストリップがスパイラル状に
成形される。支持ビーム２内には、各溶接トーチ４ａ〜
４ｃ毎に消耗電極としてのワイヤ８を送給するべくガイ
ドするためのワイヤ送給ガイドパイプ５ａが受容されて
いる。尚、図１では１本のワイヤ送給ガイドパイプ５ａ
のみを示しているが、従来例と同様に例えば３本設けら
れており、それぞれの前端に各溶接トーチ４ａ〜４ｃが
結合されているが、それぞれ同様に構成されているた
め、以下、１本のワイヤ送給ガイドパイプ５ａについて
のみ説明する。

【００１２】ワイヤ送給ガイドパイプ５ａの後端部は、
支持ビーム２の後端からその後方に向けて延出してお
り、支持ビーム２の後端からワイヤ送給ガイドパイプ５
ａの延出線に沿って延在するように支持ビーム２の後端
部に固設された支持台６上に設けられたワイヤ送給装置
７に接続されている。このワイヤ送給装置７は、一体的
に設けられたモータ７ａにより駆動される駆動ロールと
対向押し付けロールとを有し、図の右方から供給される
ワイヤ８を、両ロール間に挟持しつつワイヤ送給ガイド
パイプ５ａを介して溶接トーチ４ａに送給するようにな
っている。また、ワイヤ送給ガイドパイプ５ａの支持ビ
ーム２の後方近傍部分には溶接通電用ケーブル９が接続
されている。このようにして、送給されるワイヤ８を用
いて、溶接トーチ４ａによりストリップの隣接する側縁
同士がアーク溶接されて、スパイラル鋼管１が製造され
る。

【００１３】上記ワイヤ送給装置７は、支持台６上にガ
イドレール１０を介してワイヤ送給ガイドパイプ５ａの
軸線方向に沿ってスライド自在に支持されたスライダ１
１上に固設されている。尚、スライダ１１上には、ワイ
ヤ送給ガイドパイプ５ａをその軸線回りに適宜回動させ
るために、支持ビーム２の後端とワイヤ送給装置７との
間に設けられた傾斜角調整装置１２が固設されている。

【００１４】スライダ１１には、支持台６の下方に向け
て支持台６を貫通するアーム部の下端に設けられたボー
ルねじ機構のボス状のめねじ部材１３が一体的に固設さ
れている。ボールねじ機構の長尺軸状のおねじ部材１４
は、支持台６の下方にて、ワイヤ送給ガイドパイプ５ａ
の軸線に沿って延在するように設けられている。このお
ねじ部材１４の両端は、支持ビーム６の後端部の下部に
設けられたブラケットに設けられた軸受１５と、支持台
６の下面に設けられた軸受１６とにより、回動自在に軸
支されている。

【００１５】おねじ部材１４の軸受１６の図１の右側端
部は、クラッチ機構としての例えば電磁クラッチ１７を
介して、駆動手段としてのモータ１８の駆動軸と選択的
に結合されるようになっている。このようにして駆動力
伝達手段が構成されているが、比較的大きなリード角を
もって両ねじ部材１３・１４が互いに螺合しており、お
ねじ部材１４の回転により図の左右方向にめねじ部材１
３が移動するばかりでなく、めねじ部材１３の移動によ
りおねじ部材１４が回転し得るようになっている。

【００１６】また、ワイヤ送給ガイドパイプ５ａの溶接
トーチ４ａ側の前端部が略直角に下向きに湾曲するよう
に形成されているが、その湾曲部手前の首下部が、支持
ビーム６の内部に設けられたクランプ機構１９により支
持されている。このクランプ機構１９は、ワイヤ送給ガ
イドパイプ５ａを挟持するように上下に二つ割りされた
ブロックを有し、その一方のブロックを固定しておき、
他方のブロックをくさび形部材と係合させておき、その
くさび形部材をシリンダ１９ａにより適宜移動させるこ
とにより上記他方のブロックを上下させて、ワイヤ送給
ガイドパイプ５ａを選択的に挟持し得るようになってい
る。

【００１７】このようにして構成された内面溶接装置で
は、前記したようにスパイラル鋼管１の内面側の溶接を
行うが、スパイラル鋼管の溶接に於て本実施例のように
複数の溶接トーチを用いて行う場合には、鋼管のサイズ
替えに際して、複数の溶接トーチ列のスパイラル角度と
管軸方向位置と溶接シームＳの長手方向位置とを調整す
る必要がある。例えばスパイラル角度及び溶接シームＳ
の長手方向位置の調整には、前記した傾斜角調整装置１
２を用いて図示されない制御装置により自動的にワイヤ
送給ガイドパイプ５ａを軸線回りに回動させて行うこと
ができる。

【００１８】また、管軸方向位置の調整は、前記したワ
イヤ送給装置７を前後方向にモータ１８により駆動して
行うことができる。この場合には、図示されない制御装
置により、先ずクランプ機構１９のシリンダ１９ａを駆
動して、クランプ解除状態にする。そして、電磁クラッ
チ１７を係合状態にして、モータ１８を駆動することに
より、電磁クラッチ１７を介してトルクが伝達されてお
ねじ部材１４が回転し、ボールねじ機構によりめねじ部
材１３を軸線方向に移動させることができ、スライダ１
１即ちワイヤ送給装置７と共にワイヤ送給ガイドパイプ
５ａを移動させて、溶接トーチ４ａ〜４ｃの管軸方向位
置調整を行うことができる。

【００１９】上記管軸方向位置調整を行った後には、ク
ランプ機構１９をクランプ状態にしてワイヤ送給ガイド
パイプ５ａの溶接トーチ４ａ側である前端部を固定し、
電磁クラッチ１７を解除状態にする。そして、ケーブル
９から給電して溶接トーチによりアーク溶接を行うが、
このときの溶接電流がワイヤ送給ガイドパイプ５ａを介
して溶接トーチ４ａに流れるため、ワイヤ送給ガイドパ
イプ５ａが熱膨張する。

【００２０】本実施例によれば、ボールねじ機構のリー
ド角が上記したように大きいため、逆向きに伝達力が働
く場合、即ちめねじ部材１３側が移動した場合、めねじ
部材１３側からおねじ部材１４を容易に回すことができ
る。溶接通電時には、おねじ部材１４は、電磁クラッチ
１７が解除状態であることから、モータ１８に対して相
対的に回転自在である。従って、両ねじ部材１３・１４
の螺合状態が抵抗にはならず、上記熱膨張により、ワイ
ヤ送給装置７が容易に移動でき、熱膨張代を容易に逃が
すことができるため、溶接トーチ４ａの初期調整位置が
変化することを防止できる。尚、ワイヤ送給ガイドパイ
プ５ａのクランプ機構１９より溶接トーチ４ａ側でも、
熱膨張が生じるが、その熱膨張代は極めて小さいため、
溶接トーチ４ａが溶接シームＳから外れることはなく、
溶接ビードの信頼性が向上する。

【００２１】尚、本実施例では、ワイヤ送給装置７とモ
ータ１８との間の伝達機構にボールねじ機構を用いた
が、これに限らず、ラック・ピニオン機構などを用いる
こともできる。また、駆動手段としてシリンダ装置を用
いて、その駆動用ロッド端部を選択的に把持可能なクラ
ンプ装置を設けるようにしても良い。また、駆動手段と
してモータ１８及び電磁クラッチ１７を用いたが、電磁
クラッチの代わりに固定式カップリングを用い、モータ
のブレーキを選択的に使用しても良い。

【００２２】

【発明の効果】このように、本発明によれば、溶接通電
時のワイヤ送給ガイドパイプの熱膨張により、ワイヤ送
給ガイドパイプの一端に設けられた溶接トーチの管軸方
向の位置が変わってしまうことを防止できると共に、ワ
イヤ送給ガイドパイプの他端に設けられたワイヤ送給装
置を熱膨張方向に逃がすことができ、ワイヤ送給ガイド
パイプに熱膨張による曲げ応力が加わることを防止でき
ると共に、溶接中に、熱膨張の影響により生じる溶接ト
ーチを溶接シームに合わせる作業の頻度を極力低減し得
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用されたスパイラル鋼管製造設備に
於ける内面溶接装置の要部を拡大して模式的に示す側面
図。

【図２】従来のスパイラル鋼管製造設備に於ける内面溶
接装置を模式的に示す側面図。

【符号の説明】

１ スパイラル鋼管 ２ 支持ビーム ３ 内面成形ロール ４ａ〜４ｃ 溶接トーチ ５ａ〜５ｃ ワイヤ送給ガイドパイプ ６ 支持台 ７ ワイヤ送給装置 ８ ワイヤ ９ ケーブル １０ ガイドレール １１ スライダ １２ 傾斜角調整装置 １３ めねじ部材 １４ おねじ部材 １５・１６ 軸受 １７ 電磁クラッチ １８ モータ １９ クランプ機構 １９ａ シリンダ ２１ａ〜２１ｃ ワイヤ送給装置 ２２ パイプ支持部材 ２３ａ〜２３ｃ 前後位置調整装置 ２４ 支持台 ２５ ガイドバー ２６ ガイド部材 ２７ シリンダ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 後端に接続されたワイヤ送給装置から送
   給される消耗電極としてのワイヤを前端に接続された溶
   接トーチに向けてガイドするためのワイヤ送給ガイドパ
   イプと、溶接通電時には前記ワイヤ送給ガイドパイプの
   前記溶接トーチ側端部を固定するべく、前記ワイヤ送給
   ガイドパイプに沿って延在する固定支持体に設けられた
   固定及び解除自在なクランプ機構と、前記ワイヤ送給装
   置を前記ワイヤ送給ガイドパイプの長手方向に対して変
   位自在に支持するように前記固定支持体に設けられたガ
   イド手段と、駆動手段の駆動力により前記ワイヤ送給装
   置を前記長手方向に駆動するための駆動力伝達手段と、
   溶接通電時には前記駆動手段と前記伝達手段との両者間
   の動力伝達を解除し得るように該両者間に設けられたク
   ラッチ機構とを有することを特徴とする溶接トーチ用ワ
   イヤ送給ガイドパイプを有する溶接装置。