JP2548754Y2 - リールの逆転防止装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は釣用リールの逆転防止装
置に関する。

【０００２】

【従来の技術】本明細書では、釣糸をリールのスプール
に巻取る方向のローターの回転方向を正転方向、その逆
に釣糸を引出す方向のローターの回転方向を逆転方向と
いう。釣りにおいて、フッキング操作のように釣糸を引
出した後に巻取って糸張りをした際に、その状態で糸張
りが維持されるようにリールには逆転防止装置が付いて
いる。

【０００３】その様なリールの一例が実公昭６３−６４
号公報に開示されている。この公報は正転時に騒音を生
じないリールの逆転防止機構の提供が目的であるが、従
来からの基本的な逆転防止機構も開示されている。即
ち、スプール軸（回転軸）に逆転防止体が固定されてお
り、この逆転防止体の外周に形成されている歯状の係止
部に爪状の係合体が係合してローターの逆転を防止する
のである。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかし、歯状の係止部
が形成されている逆転防止体はリールの中心部に装着さ
れているため、その外周長さは充分とはいえず、その各
歯状の係止部の占める中心角は小さくない。即ち、上記
公報の第２図のように８個の歯状係止部を形成する場合
には、その中心角は（３６０度／８＝）４５度であり、
フッキング操作中において所定量の釣糸巻取りを終了し
ても、この４５度分は逆転方向の空転可能な量であり、
完全には逆転が防止されずに糸フケを生ずることがあ
る。

【０００５】依って本考案は、釣糸の巻取りを中断した
場合にローターが逆転して糸フケの生じることを可及的
に低減させると共に、ローターの中心側空間を有効に利
用できる逆転防止装置の提供を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本考案
は、リール本体に回転可能に支持されてハンドルの回転
と連動するローターの逆回転を防止する装置であって、
前記ローターの内周に沿って一体的に形成された歯状の
係合部と、前記リール本体に対して回動自在に取り付け
られていると共に、弾性力によって前記歯状の係合部に
対して常時付勢されている係止爪と、前記歯状係合部に
併設され、前記ローターの回転に追従するように該ロー
ターの内周に支持されていると共に、前記弾性力に打ち
勝って前記係止爪を前記歯状係合部から離隔させる係合
解除部を有する環状の係止爪制御体と、前記係合解除部
が前記係止爪を前記歯状係合部から離隔した位置に停滞
させるべく、前記係止爪制御体のローター回転への追従
を規制する規制手段とを具備することを特徴とするリー
ルの逆転防止装置を提供する。

【０００７】

【作用】ローターの内周はローターの内部空間の中で中
心軸線から最も遠いため、該内周に沿った長さ寸法は長
く、ここに形成される歯状の係合部の数を多くすること
が可能である。従って、一個の歯状係合部の占める中心
角を小さくでき、逆転防止時の空転量が小さくなる。ま
た、環状の係止爪制御体も前記歯状係合部に併設されて
ローター内周に支持されている。従って、歯状係合部も
係止爪制御体もその配置はローターの中心付近に空間的
な余裕を生じせしめ、装置のコンパクト化が達成できる
と共に、その空間を有効に利用でき、発音機構等をその
中心部に無理無く装着できる他、空間的な余裕のため、
リールの組み立てが容易になる。

【０００８】

【実施例】以下、本考案を添付図面に示す実施例に基づ
いて更に詳細に説明する。まず、図１から図３を参照す
ると、リール脚１０Ｂを有するリール本体１０には、公
知の如く図示しない摺動機構により前後動可能にスプー
ル軸１２が軸承されており、このスプール軸１２の先に
釣糸を巻回するスプール１４が取り付けられている。

【０００９】一方、リール本体１０の側部にはハンドル
２０が装着されており、このハンドル２０の回転軸には
駆動歯車２２が一体化されており、該駆動歯車２２はロ
ーター１６と一体的に回転する回転軸筒１８Ａの後部に
設けられたピニオン１８と噛み合っている。この機構に
よってハンドル２０を回転させればローター１６が回転
すると共に、ハンドル回転に連動する公知の摺動機構に
よりスプール１４が前後動して該スプール１４に釣糸を
巻取るように構成されている。

【００１０】上記ローター１６の後部の内周には多数の
歯状の係合部３０が一体的に形成されている。一方、リ
ール本体１０の前端部１０Ａには軸ピン２４を中心とし
て回動自在に略Ｖ字形に形成された係止爪２６の基部が
取り付けられており、この係止爪２６にはばね部材２８
が装着されており、この係止爪２６を、常時、歯状係合
部３０の方向へ付勢している。従って、この係止爪２６
の一方の腕部は普段、ローター１６の内周の歯状係合部
３０に接触、係合している。

【００１１】上記ローター１６の後部内周であって歯状
係合部３０の傍には、該ローター１６の回転に追従可能
なように該ローター１６の内周と摩擦係合している環状
の係止爪制御体３２が配設されている。この係止爪制御
体３２の更に外側位置のローター内周には、ばね製の止
め輪３４が溝に挿入されている。これにより係止爪制御
体３２の抜けを防止している。

【００１２】上記係止爪制御体３２の内周には、中心方
向に突出した係合解除部３２Ａが形成されており、ロー
ター１６の回転に伴って係止爪制御体３２が図２のＤ方
向に回転すると、係合解除部３２Ａが係止爪２６に突設
されている係合突起２６Ａに当接して、ばね部材２８の
ばね力に抗して係止爪２６を歯状係合部３０から離隔さ
せる中心方向に押し下げることができる。

【００１３】一方、係止爪制御体３２の円周方向の他の
位置には回転規制部３２Ｂが突出しており、リール本体
１０の前端部１０Ａには２個の規制ストッパー１０ａ，
１０ｂが上記回転規制部３２Ｂの両側の所定の位置に設
けられている。更には、操作部材３６はその先端が半円
柱状に形成されたカム部材３８と連動しており、このカ
ム部材３８と操作部材３６は切替手段を構成している。
図３に示す実線位置の操作部材３６は実線で示す向きの
カム部材３８と対応しており、操作部材３６を図３の２
点鎖線３６Ａで示す位置に切り換えると、カム部材３８
は９０度回転し、図３の２点鎖線で示す向きになる。

【００１４】以上のような構成のリールの作動を以下に
説明する。まず、カム部材３８の側面３８Ａがローター
１６の中心の方向を向くように操作部材３６を図２と図
３に示すような通常の位置に設定すると、ばね部材２８
によって付勢されている係止部材２６はローター１６の
内周の歯状係合部３０に係合することができる。しか
し、ハンドル操作によってローター１６が図２の矢視線
Ｄ１で示す正回転方向に回転すると、歯状係合部３０の
歯の傾斜方向の関係によって係止爪２６の存在にも拘ら
ずローター１６は回転を続行できる。

【００１５】この際、環状の係止爪制御体３２は摩擦に
よってローター１６と共にＤ１方向に回転するが、その
際に、係合解除部３２Ａが係止爪２６の係合突起２６Ａ
に接触し、係止爪２６をローター１６の中心方向に押し
下げる。従って、歯状係合部３０との係合は外れる。こ
の係合が外れた状態で、係止爪制御体３２の回転規制部
３２Ｂがリール本体１０の前端部１０Ａに突出している
規制ストッパー１０ａに当接する。従って、以後ロータ
ー１６がそのまま回転しても係止爪制御体３２はロータ
ー１６の内周に対して相対滑りを生じながら静止させら
れ、係止爪２６を歯状係合部３０から離隔させたままの
図３の状態が維持される。従って、ローター１６がＤ１
方向に回転して釣糸を巻き上げている最中に歯状係合部
３０と係止爪２６との接触によるクリック音が生じな
い。

【００１６】この図３の状態から、ローター１６をＤ１
とは逆の方向に回転させると、係止爪制御体３２もロー
ター１６との摩擦のために共に逆方向に回転し、その係
合解除部３２Ａが係止爪２６の係合突起２６Ａから離
れ、ばね部材２８の作用によって係止爪２６は図２に示
すように再び歯状係合部３０と係合する。こうして係合
すると、ローター１６はもはや逆転方向には回転するこ
とができない。即ち、逆転防止装置となっているのであ
る。

【００１７】以上のように操作部材３６を図２や図３の
位置に設定してある場合には、ローター１６が逆転でき
ないため釣糸を引き出すことができないが、既述の如く
図３の２点鎖線で示す方向に切替えるとカム部材３８が
２点鎖線で示すように向きを変え、側面３８Ａが係止爪
２６の他方の腕部である作動部２６Ｂと対向せずに、該
作動部２６Ｂは図４で明示するようにカム部材３８の外
周面に当接し、その結果、係止爪２６が歯状係合部３０
から離隔させられる。これは上記係止爪制御体３２の係
合解除部３２Ａの位置に拘らないことであるため、ロー
ター１６はその正転時も逆転時も自由に回転できる。な
お、逆転時においては、ローター１６の内周に摩擦係合
している係止爪制御体３２が共に逆回転し、その回転規
制部３２Ｂが他方の規制ストッパー１０ｂに当接し、以
後はローター１６が逆回転を続行しても該係止爪制御体
３２は回転に追従せず、その位置に停留する。

【００１８】以上のように作動する本実施例のリール
は、ローター１６の中心軸から最も遠い内周に沿って歯
状係合部３０を形成しているため、その歯状係合部の形
成可能円周長さは最大である。従って、歯状係合部の数
を多く設定でき、このため一個当たりの成す中心角は小
さくなり、その分逆回転時の空転量が少なくなる。従っ
て、フッキング操作等において糸フケが最小限となる。
また、係止爪制御体３２も歯状係合部に併設してロータ
ー１６の内周に取り付けているため、ローター１６の中
心付近に空間的な余裕が生じ、装置のコンパクト化が達
成できると共に、逆にいえば、その空間を有効に利用で
き、発音機構等をその中心部にでも無理無く装着できる
他、空間的な余裕のため、リールの組み立てが容易にな
る。

【００１９】 逆回転阻止にも所定量の空転が存在する
が、歯状係合部３０がローター１６の内周に沿って形成
されているため、上述の如く歯状係合部一個当たりの中
心角を小さく設定できる。従って、逆転阻止時の空転量
を可及的に低減することができる。その他、ローター中
心部に空間的な余裕が生じる。

【００２０】

【考案の効果】以上の説明から明らかなように本考案に
よれば、釣糸の巻取りを中断した場合にローターの逆転
量が可及的に低減できるように構成でき、また、係止爪
制御体もローター内周に支持されているため、ローター
の中心付近に空間的な余裕が生じ、装置のコンパクト化
が達成できると共に、その空間を有効に利用でき、発音
機構等をその中心部に無理無く装着できる他、空間的な
余裕のため、リールの組み立てが容易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は本考案に係るリールの部分破断側面図で
ある。

【図２】図２は図１の矢視線Ａ−Ａによる横断面図であ
る。

【図３】図３は図２に対応してリールの作動を説明する
ための横断面図である。

【図４】図４は図２に対応してリールの作動を説明する
ための横断面図である。

【符号の説明】

１０ リール本体 １０ａ 規制ストッパー １６ ローター ２６ 係止爪 ３０ 歯状係合部 ３２ 係止爪制御体 ３２Ａ 係合解除部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 リール本体に回転可能に支持されてハン
   ドルの回転と連動するローターの逆回転を防止する装置
   であって、 前記ローターの内周に沿って一体的に形成された歯状の
   係合部と、 前記リール本体に対して回動自在に取り付けられている
   と共に、弾性力によって前記歯状の係合部に対して常時
   付勢されている係止爪と、前記歯状係合部に併設され、 前記ローターの回転に追従
   するように該ローターの内周に支持されていると共に、
   前記弾性力に打ち勝って前記係止爪を前記歯状係合部か
   ら離隔させる係合解除部を有する環状の係止爪制御体
   と、 前記係合解除部が前記係止爪を前記歯状係合部から離隔
   した位置に停滞させるべく、前記係止爪制御体のロータ
   ー回転への追従を規制する規制手段とを具備することを
   特徴とするリールの逆転防止装置。