JP2548707B2 - ステロイド化合物の製造法 - Google Patents

ステロイド化合物の製造法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は植物生長調節剤であるブラシノライド類縁体
合成の中間体として有用なステロイド化合物の製造法に
関する。
〔従来の技術〕
式(1)で示される化合物を原料にして、目的とする
式(4)で示されるステロイド化合物を製造する方法と
しては、J.Org.Chem.,28 571(1969),J.Am.Chem Soc.,
62.3349(1949)、特公昭60−17794号などが知られてい
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
前記のいずれの製造方法も、式(1)の化合物から式
(4)の化合物を製造する3工程で、工程毎に反応溶媒
を水洗除去、蒸留留去する操作を必要とし、工業的に実
施する場合において、有利とはいえない。
したがって本発明者は式(4)の化合物及び類縁体の
製造にあたって、これを工業的に容易に操作可能な方法
に改善すべく鋭意検討した。
〔問題を解決するための手段〕
本発明者は、式 (式中、R1を示し、R2はメチル基又はエチル基を示し、※は基R1
ステロイド核への結合部位を示す。) で示される化合物を出発原料に用い各反応工程の反応条
件を検討した結果、目的とする、式 (式中R1は前記と同じものを意味する。) で示される化合物を各工程の容易な操作でかつ収率よく
製造できる方法を見い出した。
以下に本発明を詳細に説明する。
先ず、式(1)の化合物を芳香族又は脂肪族炭化水素
溶媒中、有機塩基の存在下、R3SO2X(R3は低級アルキル
基又はメチル基若しくは塩基で置換されてもよいフェニ
ル基を示し、Xは塩素又はフッ素原子を示す。)と反応
させて式 (式中R4はR3SO2−基を示し、R1,R3前記と同じものを意
味する。) で示される化合物を得ることができる。この反応におい
て、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶媒としては、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、n−ヘプタ
ン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどがあげ
られ、これらは式(1)の化合物1重量部に対し5〜20
部用いるのが好ましい。
塩基としては、ピリジン、ピコリン、トリエチルアミ
ン、トリメチルアミンなどがあげられ、これらの塩基の
量は式(1)の化合物1モルに対し、1.0〜5.0モル用い
るのが好ましい。
次に反応に用いるR3SO2Xとしては、メタンスルホニル
クロライド、メタンスルホニルフルオライド、P−クロ
ロベンゼンスルホニルクロライド、P−トルエンスルホ
ニルクロライド、P−トルエンスルホニルフルオライド
などがあげられ、これらは式(1)の化合物1モルに対
し1.0〜2.0モル用いるのが好ましい。
また反応温度は室温以下が好ましい。反応0.5〜2時
間で終了する。次に式(2)の化合物を異性化すること
により、式 (式中R1は前記と同じものを意味する。) で示される化合物を得ることができる。この反応におい
ても前記化合物(1)から化合物(2)に用いた芳香族
又は脂肪族炭化水素系溶媒と同一の溶媒を用いることが
できる。即ち、式(2)の化合物を無機又は有機塩基の
存在下、所望によりさらに相間移動触媒、水と不活性な
水混和性溶媒の存在下、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶
媒中反応させることにより化合物(3)を製造できる。
この反応において、無機又は有機の塩基としては、水
酸化アルカリ(たとえはKOH,NaOH)炭酸又は重炭酸アル
カリ(たとえば、Na2CO3,NaHCO3,K2CO3,KHCO3)有機酸
のアルカリ金属塩(たとえば、CH3COONa,CH3COOK)、第
3級アミン(たとえば、ピリジン、ピコリン、トリエチ
ルアミン)などがあげられ、この中では、Na2CO3,K2CO3
が特に好ましい。これらの無機又は有機の塩基は式
(2)の化合物1モルに対し1.0〜2.0モル用いるのが好
ましい。
相間移動触媒としては例えば、第4級アンモニウム塩
(臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−
n−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアン
モニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化
ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化メチルトリ−2
−メチルフェニルアンモニウムなど)、ホスホニウム化
合物(ヨウ化テトラメチルホスホニウム、臭化テトラ−
n−ブチルホスホニウム、など)サルフェート化合物
(メチルジノニルスルホニウムメチルサルフェート、ベ
ンジルトリエチルアンモニウムサルフェートなど)があ
げられ、これらは式(2)の化合物1重量部に対し0.02
〜0.2部用いるのが好ましい。
次に水と混合する不活性溶媒としてはケトン類(例え
ば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、
メチルイソプロピルケトン)、環状エーテル類(例え
ば、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、アミド類(例
えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)
などがあげられる。
これら溶媒と水との混合割合は1:0.05〜1:0.3の範囲
が好ましい。
芳香族又は脂肪族炭化水素系溶媒は前記化合物(2)
の製造で記載したものがあげられる。これらの溶媒と水
混和性溶媒の混合割合は1:0.5〜1:5の範囲が好ましい。
また反応温度は室温〜混合溶媒の沸点付近が好ましい。
次に式(3)の化合物を酸化することにより、式 (式中R1は前記と同じものを意味する。) で示される化合物を得ることができる。この酸化反応の
反応溶媒としては、化合物(1)から(2)、化合物
(2)から(3)の製造に用いた芳香族又は脂肪族炭化
水素系溶媒がそのまま使用できる。
ケトンを用いる酸化反応としては例えばJ.Chem.Soc.,
1946 39で知られているジョーンズ酸化(ケトン中酸化
クロム(VI)の希硫酸溶液を用いる方法)、新実験化学
講座15「酸化と還元I−2」(昭和51年9月20日、丸善
株式会社発行)803〜828に記載された、オッペンナウア
ー酸化(カルボニル化合物とアルミニウムアルコキシド
を用いる方法)があげられる。この中では、特にジョー
ンズ酸化が好ましい。
この酸化に用いられるケトン類としてはアセトン、メ
チルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチル
ケトン、シクロヘキサノン、ベンゾキノンなどがあげら
れる。
式(3)の化合物に対するケトン類の割合は、任意に
加えられるが、ジョーンズ酸化においては、1.0〜10倍
が好ましく、オッペンナウアー酸化においては、3〜20
0当量加えるのが好ましい。又芳香族又は脂肪族炭化水
素系溶媒とケトン類の混合割合は任意の範囲で使用でき
るが0.1〜2重量部が好ましい。
なお、上記の反応操作により得られた生成物は薄層ク
ロマトグラフィーにより反応追跡を行い、反応終了後一
般的な処理方法、すなわち、水による希釈、有機溶媒に
よる抽出回収、酸、アルカリ洗浄、及び抽出物が中性に
なるまでの水による洗浄、次いで硫酸マグネシウム上で
の乾燥、濾過および真空蒸発による溶媒の除去で得るこ
とができ、また、必要に応じては、シリカゲルカラムに
よる精製を行うことにより、目的物を得ることができ
る。
〔発明の効果〕 本発明の方法により、式(1)の化合物を出発原料に
3工程で式(4)の化合物を製造するに際し、単一の容
器内で、芳香族あるいは、脂肪族炭化水素系溶媒を用
い、各反応における、試薬、触媒、その他の溶媒を添加
することで、反応を行うことが可能になり、しかも高収
率で経済的に目的とする式(4)の化合物を製造できる
ようになった。
〔実施例〕
以下実施例により本発明を説明する。
実施例1 (22E,24R)−3α,5−シクロ−5α−エルゴスト−22
−エン−6−オンの合成 ブラシカステロール5.0g(12.54mmol)にトルエン42m
l、トリエチルアミン8.7ml(62.70mmol)を加え冷却す
る。これを撹拌しつつメシルクロライド2.0ml(25.08mm
ol)をゆっくりと滴下する。反応終了後、食塩水、1N−
塩酸、重曹水の順に洗浄し、次いでアセトン126ml、水2
5ml、炭酸ナトリウム1.29g(12.17mmol)を加え加熱還
流状態で、約12時間反応させ薄層クロマドグラフィーで
反応終了を確認した上で、アセトンを留去し放冷する。
これに、トルエン58ml、食塩水を加え分液する。得られ
た有機層を冷却し、これにアセトン10mlを加える。温度
が0℃を越えないようにJones試薬5.7m(CrO31.1g含
有)を加えさらに2時間撹拌し反応終了後、メタノール
を加えさらに撹拌する。その後、食塩水を加え分液し、
次いで重曹水、食塩水の順で洗浄する。これを硫酸マグ
ネシウムで乾燥後濃縮乾固すると粗シクロ−6−オン体
が得られる。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/エチ
ルエーテル=15/1)で精製し、目的物である(22E,24
R)−3α,5−シクロ−5α−エルゴスト−22−エン−
6−オン4.12g(82.8%)を得た。
mp107−109℃(文献値mp108−110℃) IR:1705cm-1(νc=o)1 Hnmr(DCDl3)δ5.2(2H,m,22−および23−H) 文献:M.Anastassia,,P.Ciuffreds,on A.Fiecchi,J.Chem
Sec.,P.T.I.1983,379 実施例2 スティグマステロール メシレートの合成 スティグマステロール25.0g(60.6mmol)、トルエン2
00ml、トリエチルアミン42.1mlを加え冷却する。これに
メシルクロライド9.4ml(0.12mol)を撹拌しつつゆっく
りと滴下する。反応終了後、トリエチルアミンの塩酸塩
を濾過し、濾液を食塩水、1N−塩酸水、重曹水の順で洗
浄する。これを硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固
し、メシを硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固し、メ
シレート29.1g(97.8%)を得た。
実施例3 ブラシカステリル トシレートの合成 ブラシカステロール65g(16.3mmol)、ベンゼン52m
l、ピリジン6.6mlを加え冷却する。これにp−トルエン
スルホン酸クロライド6.2g(32.6mmol)を撹拌しつつゆ
っくり加える。反応終了後、食塩水、1N−塩酸、重曹水
で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固し、トシ
レート8.8g(97.7%)を得た。
実施例4 24S−エチル−3α,5−シクロ−5α−コレスト−22E−
エン−6β−オル(i−スティグマステロール)の合成 前記(実施例2)のメシレート590mg(1.20mmol)を
トルエン3.7ml、アセトン11mlに溶かし加熱還流させ
る。ここへ水2.2mlに溶かした炭酸ナトリウム130mg(1.
23mmol)を加えさらに11時間加熱還流を続ける。反応終
了後室温まで放冷しトルエン10ml、食塩水を加え分液
し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮乾固し、シ
リカゲルカラムで精製(ヘキサン/エチルエーテル=10
/1)し、i−ステロールを413mg(83.3%)を得た。
mp49−51℃(文献値1)50−52℃)1 Hnmr(CDCl3):δ3.13(1H b)5.08(2H,m,22−およ
び23H) 1) 文献:(K.Mori et al.,Tetrahedoron,38,2099
(1982) 実施例5 i−スティグマステロールの合成 前記(実施例2)のメシレート510mg(1.04mmol)を
トルエン6mlに溶かしておき、次いで別容器にアセトン9
ml、水3ml、炭酸カリウム144mg(1.04mmol)を加え加熱
還流さておく、ここへトルエン溶液をゆっくりと滴下さ
せ、さらに還流を続ける。反応終了後、実施例4と同様
な操作、精製を行ないi−ステロール364mg(84.8%)
を得た。
実施例6 (22E,24R)−3α,5−シクロ−5α−エルゴスト−22
−エン−6β−オル(i−ブラシカステロール)の合成 前記(実施例3)のトシレート663mg(1.20mmol)を
ベンゼン6ml、ジメチルホルムアミド6mlに溶かし加熱還
流させる。そこへ水3mlに溶かした炭酸水素ナトリウム2
00mg(2.40mmol)を加え3時間還流させる。以下実施例
2と同様な操作、精製を行ないi−ステロール354mg(7
4.0%)を得た。
mp111〜113℃(文献値mp113−115℃)1 Hnmr(CDCl3):δ0.3−0.5(3H,m,)5.1(2H,m,22−
および23H) 文献:M.J.Thompson,C.F.Cohen,S.M.Lancaster,Steroid
s,1965,7,745 実施例7 i−ブラシカステロールの合成 ジオキサン6ml、水3ml、炭酸ナトリウム220mg(2.08m
mol)を加え、加熱し還流させる。ここへ前記(実施例
3)のトシレート564mg(1.02mmol)をベンゼン6mlに溶
かした溶液をゆっくり滴下させ、さらに9時間反応させ
る。反応終了後、実施例2と同様な操作、精製を行ない
i−ステロール298mg(73.7%)を得た。
実施例8 i−ブラシカステロールの合成 炭酸ナトリウム3.7g(35mmol)を水100mlに溶解さ
せ、そこに前記(実施例3)のトレシート17.7g(32mmo
l)のトルエン−アセトン(9:1)750mlの溶液を加え、
さらに臭化−n−ブチルテトラアンモニウム1.0g(3.1m
mol)を加えて70℃で12時間反応させた。トルエン層を
分離し、実施例2と同様な操作、精製を行ない、i−ス
テロール10.4g(81.7%)を得た。
実施例9 24S−エチル−3α,5−シクロ−5α−コレスト−22E−
エン−6−オンの合成 i−スティグマステロール300mg(0.727mmol)をトル
エン7ml、アセトン3mlに溶かし0℃に冷却する。そこ
に、Jones試薬0.6ml(CrO30.12g含有)を反応温度が0
℃を越えないように、ゆっくり滴下し、そののち、0℃
で1時間撹拌し反応を完結させた。メタノールを加えし
ばらく撹拌した後、トルエン10ml水を加え分液する。さ
らに食塩水、重曹水、食塩水と順に洗浄していき、有機
層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濃縮後目的のケトン
体293mg(98.1%)を得た。
mp98−100℃(文献値1)98−99℃) IR:1685cm-1(νc=o)1 Hnmr(CDCl3):δ5.15(2H,m,22−および−23H) 実施例10 (22E,24R)−3α,5−シクロ−5α−エルゴスト−22
−オン−6−エンの合成 i−ブラシカステロール500mg(1.25mmol)をトルエ
ン10ml、アセトン1mlに溶かし、0℃に冷却する。そこ
にJones試薬1.0ml(CrO30.2g含有)を加える。以下実施
例9と同様操作を行ない、目的物のケトン体480mg(96.
8%)を得た。
実施例11 (22E,24R)−3α,5−シクロ−5α−エルゴスト−22
−エン−6−オンの合成 i−ブラシカステロール500mg(1.25mmol)、シクロ
ヘキサン1.24g(12.6mmol)、トルエン3mlを加え加熱す
る。さらに、アルミニウムイソプロポキシド0.256g(1.
25mmol)のトルエン5ml溶液をゆっくりと滴下する。滴
下終了後約1時間還流を行なう。反応終了後冷却し、10
%硫酸水溶液10mlを加え十分撹拌した後、トルエン層を
水洗し硫酸マグネシウムで乾燥後、トルエンを留去し粗
生成物を得た。これをシリカゲルカラム(ヘキサン/エ
ーテル=15/1)で精製して目的物を372mg(75.0%)得
た。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 J.Chem.Soc.Perkin Trans.I No.2(1983) P.379−382

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 (式中R1を示し、R2はメチル基又はエチル基を示し、※は基R1
    ステロイド核への結合部位を示す。) で示される化合物を、有機塩基の存在下R3SO2X(R3は低
    級アルキル基又はメチル基若しくは塩素で置換されても
    よいフェニル基を示し、Xは塩素又はフッ素原子を示
    す。)と芳香族又は脂肪族炭化水素系溶媒中反応させ
    て、式 (式中R4はR3SO2−基を示しR1,R3は前記と同じものを意
    味する。) で示される化合物を製造し、この化合物を無機又は有機
    塩基の存在下、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶媒と不活
    性な水混和性有機溶媒の混合溶媒中で水と反応させて、
    (式中R1は前記と同じものを意味する。) で示される化合物を製造し、この化合物をケトン化合物
    の存在下、芳香族又は脂肪族炭化水素系溶媒中で酸化反
    応させることを特徴とする、式 (式中R1は前記と同じものを意味する。) で示されるステロイド化合物の製造法。
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