JP2545878B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

鉛蓄電池

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JP2545878B2
JP2545878B2 JP62235452A JP23545287A JP2545878B2 JP 2545878 B2 JP2545878 B2 JP 2545878B2 JP 62235452 A JP62235452 A JP 62235452A JP 23545287 A JP23545287 A JP 23545287A JP 2545878 B2 JP2545878 B2 JP 2545878B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は,非常用電源,ポータブル電源などの小型鉛
蓄電池のみならず,大型の据置用,自動車用,電気自動
車用などとしても使用可能であり,さらに太陽電池と組
合せた電力蓄電用途としても期待し得る,改良された鉛
蓄電池に関するものである。
<従来の技術> 従来の鉛蓄電池は,電解液として希硫酸を使用してい
るため,運搬および取扱い上の制約が多く,これを改善
するために,電解液を非流動化するなどの方法が行なわ
れている。
この方法として例えば,平均繊維径1μ程度の微細な
ガラス繊維から形成された微細ガラスマットに液状電解
液を保持させたガラスマット方式や,二酸化珪素粉末な
どのゲル化剤を液状電解液と混合してゲル状電解液とす
る方法がある。
しかし,上記の微細ガラスマットは高価であり,使用
中にガラス繊維マットが収縮し,極板との密着性が悪く
なるので,マットを圧縮した状態で組立てなければなら
ないなどの問題がある。特に大型電池では,極板群の上
部への液の上昇が少なくなり,上部では特性が劣化する
などの問題がある。
一方,ゲル化電解液を使用する場合,一般的にはゲル
化剤として二酸化珪素が用いられているが,この場合,
電解液全体を均一にゲル化することが難かしいため例え
ば,特開昭61−267274号に記載されるごとく,二酸化珪
素とともに芒硝などの硫酸塩をゲル化助剤として加える
方法や,また特開昭62−10858号に記載されるごとく,
二酸化珪素粉末と合成樹脂粉末とを混合して,シート状
に焼結成形したのちに硫酸を加えてゲル化する方法など
の改善が提案されている。
しかし,これらの方法では,形状の制約,大容量化に
対する制約,経済性などの点で必ずしも満足できるもの
ではなく,その改良が強く要望されている。
<発明が解決しようとする問題点> 本発明の目的は,かかる従来からの方法で得られる非
流動化した電解液を用いる形式の鉛蓄電池の有する問題
点を解決し,安価で,成形組立てが容易であり,かつ性
能の信頼性の高い鉛蓄電池を提供することである。
<問題点を解決するための手段> 本発明者らはかかる観点から,電解液を非流動化させ
るための新たな材料を検討した結果,耐硫酸性が良く,
大きな硫酸吸収性を有し,かつ硫酸をゲル化する特性を
もつ,成形,加工の容易な,新規なエチレン共重合体樹
脂を見出し本発明に至った。
すなわち,本発明は, 希硫酸を電解液とする鉛蓄電池において,電解液が,
エチレン単位40〜90重量%と,(A)分子中にアミド結
合およびアミンを有するエチレン正不飽和コモノマー単
位および(B)分子中にエステル結合およびアミンを有
するエチレン性不飽和コモノマー単位から選ばれる少な
くとも一種のコモノマー単位60〜10重量%からなり,か
つ数平均分子量が5,000〜50,000であるエチレン共重合
体樹脂および/または該樹脂成形体に,吸収もしくは含
浸されることにより非流動化状態にあることを特徴とす
る鉛蓄電池に関するものである。
本発明において使用されるエチレン共重合体用のコモ
ノマー単位(A)分子中にアミド結合およびアミンを有
するエチレン性不飽和コモノマー単位とは,コモノマー
分子中にアミド結合(−CO−NH−)およびアミン RおよびR′は水素または炭素数1〜4のアルキル基,
または窒素原子とともにヘテロ環を形成している。)を
ともに有している化合物をいう。アミド結合は主鎖に,
アミンは末端もしくは側鎖に有しているものが好まし
い。
具体的には,下記一般式(A′)で表わされるアクリ
ルアミド系コモノマー単位などが例示される。
〔式中,R1は水素またはメチル基であり,R2およびR3は水
素または炭素数1ないし4のアルキル基,または窒素原
子とともにヘテロ環 など,R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基であ
る。)を形成しており,nは2ないし5の整数を表わ
す。〕 本発明において使用されるエチレン共重合体用のコモ
ノマー単位(B)分子中にエステル結合およびアミンを
有するエチレン性不飽和コモノマー単位とは,コモノマ
ー分子中にエステル結合(−CO−O−)およびアミン R″およびRは水素または炭素数1〜4のアルキル
基,または窒素原子とともにヘテロ環を形成してい
る。)をともに有している化合物をいう。エステル結合
は主鎖に,アミンは末端もしくは側鎖に有しているもの
が好ましい。
具体的には,下記一般式(B′)で表わされるアクリ
ル酸エステル系コモノマー単位などが例示される。
〔式中,R5は水素またはメチル基であり,R6およびR7は水
素または炭素数1〜4のアルキル基,または窒素原子と
ともにヘテロ環 など,R8は水素または炭素数1〜4のアルキル基であ
る。)を形成しており,mは2ないし5の整数を表わ
す。〕 本発明において使用される(A′)アクリルアミド系
コモノマー単位の好ましい具体例としては,ジメチルア
ミノエチルアクリルアミド,ジメチルアミノプロピルア
クリルアミド,ジメチルアミノブチルアクリルアミド,
ジエチルアミノエチルアクリルアミド,ジエチルアミノ
プロピルアクリルアミド,ジエチルアミノブチルアクリ
ルアミド,ジプロピルアミノエイルアクリルアミド,ジ
プロピルアミノプロピルアクリルアミド,ジプロピルア
ミノブチルアクリルアミド,N−(1,1−ジメチル−3−
ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド,N−(2−メ
チル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドな
ど,およびこれらに対応するメタクリルアミド誘導体で
ある。なお,これらのアクリルアミド系コモノマー単位
の末端アミノ基の窒素原子と結合している2つのアルキ
ル基が,窒素原子とともにヘテロ環,特に6員のヘテロ
環を形成していてもよい。
特に好ましいコモノマー単位としては,ジメチルアミ
ノプロピルアクリルアミド,ジメチルアミノプロピルメ
タクリルアミド,ジメチルアミノエチルアクリルアミ
ド,およびジメチルアミノエチルメタクリルアミドなど
が挙げられる。
また,本発明において使用される(B′)アクリル酸
エステル系コモノマー単位の好ましい具体例としては,
アミノメチルアクリレート,アミノエチルアクリレー
ト,アミノノルマルブチルアクリレート,メチルアミノ
エチルアクリレート,エチルアミノエチルアクリレー
ト,エチルアミノイソブチルアクリレート,イソプロピ
ルアミノメチルアクリレート,イソプロピルアミノエチ
ルアクリレート,ノルマルブチルアクリルアミノエチル
アクリレート,ターシャリブチルアミノエチルアクリレ
ート,ジメチルアミノメチルアクリレート,ジメチルア
ミノエチルアクリレート,ジメチルアミノイソプロピル
アクリレート,ジメチルアミノノルマルブチルアクリレ
ート,N−メチル−N−エチルアミノエチルアクリレー
ト,N−メチル−N−メルマルブチルアミノエチルアクリ
レート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジイソプ
ロピルアミノエチルアクリレート,ジノルマルプロピル
アミノノルマルプロピルアクリレート,ジノルマルブチ
ルアミノエチルアクリレート,ジノルマルブチルアミノ
ノルマルプロピルアクリレートなどのアクリル酸エステ
ルおよびこれらに対応するメタクリル酸エステルなどで
ある。なお,これらのアクリル酸エステル系コモノマー
単位の末端の窒素原子と結合している2つのアルキル基
が,窒素原子とともにヘテロ環,特に6員のヘテロ環を
形成してもよい。
特に好ましいコモノマー単位としては,ジメチルアミ
ノエチルメタクリレート,ジメチルアミノエチルアクリ
レート,ジメチルアミノプロピルメタクリレートおよび
ジメチルアミノプロピルアクリレートなどが挙げられ
る。
本発明におけるエチレン共重合体中の(A)分子中に
アミド結合およびアミンを有するエチレン性不飽和コモ
ノマー単位および(B)分子中にエステル結合およびア
ミンを有するエチレン性不飽和コモノマー単位から選ば
れる少なくとも1種のコモノマー単位の量は60〜10重量
%であり,より好ましくは50〜20重量%である。
該コモノマー単位量が10重量%未満では,硫酸を充分
吸収するに至らず優れた硫酸保持体またはゲル化剤とは
ならない。また60重量%を越えた場合は,該エチレン共
重合体の硫酸吸収性が大きくなりすぎて,硫酸を吸収し
た状態において成形体としての形状を保持できなくなる
などの問題点がある。
本発明におけるエチレン共重合体は,必要により他の
エチレンと共重合可能な少なくとも1種以上のエチレン
系不飽和コモノマーを共重合させた三元もしくは多元共
重合体であってもよい。
本発明において使用される他のエチレン系不飽和のコ
モノマーの好ましい具体例としては,アクリル酸メチ
ル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリ
ル酸エチル,アクリル酸n−ブチル,メタクリル酸n−
ブチル,アクリル酸グリシジル,メタクリル酸グリシジ
ル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニルなどが挙げられて
いる。特に好ましい化合物としては,アクリル酸メチ
ル,メタクリル酸メチル,アクリル酸エチル,および酢
酸ビニルである。
該エチレン系不飽和コモノマーの重合単位は,0〜20重
量%,好ましくは0〜15重量%である。
本発明におけるエチレン共重合体は,前記エチレン共
重合体の2種以上の混合物としても用いることができ
る。
本発明におけるエチレン共重合体の数平均分子量は,
テトラリン溶液について135℃で測定した極限粘度
〔η〕を使って下記の式(1)で算出した値で,5,000〜
50,000(〔η〕=0.29〜1.23),好ましくは8,000〜40,
000(〔η〕=0.39〜1.07)の範囲である。
〔η〕=1.35×10-30.63 (1) ここに,〔η〕は極限粘度,Mnは数平均分子量を表わ
す。
(出典;I.Harris,Journal of Polymer Science,
(4),353−364,(1952) 本発明において,数平均分子量が50,000を越えた場合
には,樹脂自体の溶融流動性が小さくなり成形加工しに
くくなる上に,成形体は硫酸を充分吸収するに至らず,
優れた硫酸保持体またはゲル化剤とはならない。
また、数平均分子量が5,000未満の場合には,樹脂自
体の機械的強度が劣り,硫酸を吸収した状態で成形体と
しての形状を保持できなくなる。
本発明において希硫酸とは濃度90%以下の硫酸をい
う。
本発明において樹脂成形体は,該エチレン共重合体樹
脂を,押出成形,射出成形,プレス成形等の公知の熱可
塑性樹脂成形加工法により成形加工することにより得る
ことができる。
その形態はフィルム,シート,チューブ,繊維,不織
布,織布,粉末などである。不織布および織布に用いる
繊維は本発明による樹脂単独の繊維およびその中空繊維
のほか,ポリプロピレンとの複合繊維であってもよい。
例えばポリプロピレンを芯とし,本発明による樹脂を
鞘とする鞘芯型複合繊維,もしくはポリプロピレンと本
発明の樹脂から成る並列型複合繊維,もしくは該複合繊
維から成る織布,不織布などは特に好ましい形態であ
る。
これらの複合繊維は,例えば,特広昭44−14900号,
特公昭46−24732号,特開昭46−2162号,特公昭54−447
73号,特公昭54−44774号,特公昭55−26209号,特公昭
55−17807号および特公昭55−483号などに記載の複合紡
糸方法ならびに複合紡糸装置によって製造することがで
きる。
また,フィルムおよびシートは,例えば,炭酸ナトリ
ウム,炭酸水素ナトリウムなどの水または硫酸などの無
機酸に可溶である化合物の微粉末を添加して成形したの
ち,水または硫酸などの無機酸で処理して,これらの添
加粉末を溶解除去して,多孔性としたフィルムおよびシ
ートでもよい。
本発明のエチレン共重合体樹脂は,硫酸を自重の2〜
8倍吸収する能力を有する。
例えば,(A′)アクリルアミド系コモノマー単位と
して,ジメチルアミノプロピルアクリルアミド43重量%
含み,数平均分子量が31,000(〔η〕=0.91)であるエ
チレン共重合体樹脂を厚さ0.5mmのシートに加工し25℃
の40%希硫酸に3時間浸漬することにより自重の3.5倍
の,また60℃の40%希硫酸に1時間浸清することにより
自重の4.6倍の希硫酸を吸収し,体積はそれぞれ3.2倍,
および3.8倍まで膨潤する。
したがって,該樹脂シートを極極間にはさみ,適量の
希硫酸を注入して樹脂に吸収,膨潤させることにより,
極板間からの脱落がない状態で希硫酸電解液を非流動化
することができる。
また,該樹脂を多孔性シートに成形し,極板間に装入
したのち適量の硫酸を注入することにより,該シートは
硫酸を吸収して膨潤し,極板間に固定されるとともに,
多孔部分に硫酸を含浸して,電解液を非流動化して保持
できるので,硫酸の固定保持量が大きくでき,その結
果,長期間使用しても極板と電解液との接触が良好で,
性能と信頼性の高い鉛蓄電池を製造することができる。
また,該樹脂とポリプロピレンとの複合繊維もしくは
該複合繊維から成る織布,または不織布状のマットを使
用する場合も同様である。
さらに,該樹脂粉末を極板間に充填して電槽に装入し
たのち,適量の硫酸を注入することにより,樹脂粉末自
体が硫酸を吸収して膨潤するとともに,粉末粒子間に硫
酸を非流動化して保持した鉛蓄電池をも製造することが
できる。
また,該樹脂粉末と硫酸のを混合して,硫酸を樹脂に
吸収させるとともに粒子間に含浸させて電槽に充填し,
続いて極板群を装入する方法も考えられる。
さらには,該樹脂と硫酸とを混合し,樹脂の融点以上
の温度に加熱,撹拌することにより,樹脂が硫酸に溶融
した粘性液とすることができる。該溶融粘性液を電槽に
充填し,極板群を装入して冷却することにより,電解液
がゲル状で非流動化された鉛蓄電池を製造することもで
きる。
また,この際,該樹脂から成るフィルムにより正極お
よび/または負極を包むことにより,使用中における活
物質の脱落を防止する処置をほどこした極板群として使
用することもできる。また,このような処置をほどこす
ことにより活物質の脱落を防止できるため活物質量の削
減も期待できる。
さらには,極板間に該樹脂もしくは該樹脂とポリプロ
ピレンとの複合繊維からなる多孔性シートまたは多孔性
マットを設置するとともに,前記溶融粘性液とを併用す
ることもできる。
なお本発明による鉛蓄電池には,公知の方法により正
極から発生する酸素を負極に吸収させたり,また触媒に
より水にもどす処置をとることもできる。また,サルフ
ェーションを防止したり,極板からの鉛の溶出を制御す
るために,電解液に硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウム
などの硫酸塩を加えたものを使用してもよい。
以上のごとく,本発明によるエチレン共重合体樹脂お
よび/または該樹脂成形体を使用することにより,容易
に電解液を非流動化することができ,その結果として,
運搬および使用条件の制約の少ない,かつ形状を自由に
デザインし得る鉛蓄電池を製造することができる。
なお,本発明による鉛蓄電池を製作するにあたり,電
解液を非流動化するために使用する前記エチレン共重合
体樹脂および/または該樹脂成形体を,耐熱性や電解液
吸収率の向上を目的として,あらかじめ,電子線,ガン
マ線,紫外線などを照射する方法,あるいは有機過酸化
物,ジアゾ化合物などともに各種の熱可塑性成形加工機
により溶融混練する方法などにより分子間架橋して使用
することもできる。
<実施例> 次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する
が,本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1 エチレン単位57重量%および(A′)アクリルアミド
系コモノマー単位としてジメチルアミノプロピルアクリ
ルアミド43重量%からなる,数平均分子量31,000
(〔η〕=0.91)であるエチレン共重合体樹脂を20mm径
の押出機により押出成形加工を行ない,幅9cm,厚さ0.5m
mの押出しシートを成形した。
このシートから幅8cm,長さ12cmの試料片を切り出し,
これを60℃の40%希硫酸溶液に1時間浸漬することによ
り,幅13.0cm,長さ18.8cm,厚さ0.75mmの当初の樹脂重量
の4.6倍重量の40%硫酸を吸収した樹脂シートを得た。
第1図に示すごとく,予め硫酸根をもたせた幅10cm,
高さ8cm,厚さ2mmの正極板5を包むように該希硫酸吸収
樹脂シート7を設置し,その両側に幅10cm,高さ8cm,厚
さ0.5mmの負極板6を積重ねたのち,電槽1に装入し
た。初期充電を行なうことにより,電解液が非流動化さ
れた鉛蓄電池を完成した。
その起動力は2Vであり,容量は10時間率で1.8Ahであ
った。
実施例2 実施例1で使用したものと同様のエチレン共重合体樹
脂により,平均繊維径が90μであり,空隙率60%で密度
が0.4g/cm3,厚さ2mmの不織布(多孔性マット)を作製し
た。それから幅15cm,長さ20cmの試料片を切り出した。
この不織布を用いて,第2図に示す封筒状鉛蓄電池を
作製した。
すなわち,別途作製した同一組成のエチレン共重合体
樹脂で成形した厚さ50μのフィルム8にて包むことによ
り活物質の脱落を防止する処置を施した幅15cm,長さ10c
m,厚さ0.5mmの陽極板5,および同じくエチレン共重合体
樹脂の厚さ50μのフィルムにて包むことにより,活物質
の脱落を防止する処置をほどこした幅15cm,長さ20.5cm,
厚さ0.2mmの負極板6を作製した。さらに,陽極板5を
包むように前記不織布9を設置し,その両側に負極板6
を積重ねたのち,厚さ150μのポリエチレンフィルム10
で包んだ。これに40%の硫酸120gを注入した。さらに,
正極端子3および負極端子4のみを袋から出し,開口部
にエチレン共重合系接着性樹脂,ボンドファースト 7B
(住友化学社製)のフィルム11をはさんで熱接着して密
封した。注入した硫酸は樹脂に吸収されるとともに多孔
部分にも含浸されて非流動化動態となった。
これに初期充電を行なうことにより,第2図に示す封
筒状鉛蓄電池を完成した。
その起電力は2Vであり,その容量は10時間率で13Ahで
あった。
実施例3〜6 第1表に示す本発明による各種のエチレン共重合体を
ドライアイスで冷却して粉砕機を用いて粉砕した。この
粉末と25℃の40%硫酸とを第1表に示す割合にて混合
し,第3図に示す鉛蓄電池の,3室に分割され,各室が幅
2cm,長さ3cm,高さ3.5cmである電槽1に注入した。
次いで各室に幅2.8cm,高さ2.5cm,厚さ1.8mmの負極板
6を3枚と,幅および高さが同じで厚さ2.5mmの正極板
5を2枚とを交吾にそれぞれ2.4mm間隔で固定し,連結
した極板群を装入した。
樹脂粉末および希硫酸の混合液は,極板間の空隙を上
昇して各極板群の上端まで満ち,10分間静置することに
より樹脂粉末に硫酸液が吸収されるとともに,粉末粒子
間隙にも硫酸が保持された非流動化された電解液12とな
った。
これにふた2を取付け初期充電を行なうことにより第
1表に示す性能をもつ鉛蓄電池を得た。
実施例7 エチレン単位52重量%およびアクリルアミド系コモノ
マー単位としてジメチルアミノプロピルアクリルアミド
48重量%からなる,数平均分子量15,100(〔η〕=0.5
8)であるエチレン共重合体樹脂45gに40%希硫酸30gを
加え,100℃に昇温して2時間撹拌することにより樹脂が
希硫酸に溶解した溶融粘性液を得た。
この液を70℃に冷却後,実施例3で使用したものと同
じ鉛蓄電池の電槽に注入したのち極板群を装入した。こ
れを常温にまで冷却することにより,電解液はゲル化
し,非流動化状態となっており,これにふたを取付けて
初期充電を行なうことにより鉛蓄電池を完成した。
その起電力は6Vであり、容量は10時間率で1.1Ahであ
った。
実施例8 実施例1で使用したものと同様のエチレン共重合体樹
脂を鞘とし,メルトフローレートが4g/10分である結晶
性ポリプロピレンを芯とする混合比が50:50であり,平
均繊維径が29μの複合糸をつくり,これを85℃で熱接着
することにより,空隙率が74%,密度0.24g/cm2,厚さ2.
4mmの不織布を製作した。この不織布から幅2.5cm,長さ
2.8cmの不織布マットを12枚を切り出した。市販の小型
シール型鉛蓄電池(松下電器産業社製 小型シール鉛蓄
電池LCR6V1.2型)の極板群間に装入されていたガラスマ
ットを除去し,この極板間に該不織布マット12枚をそれ
ぞれ装入した。さらに40%の希硫酸28gを注入すること
にり鉛蓄電池を組立てた。
その起電力は6Vであり,その容量は10時間率で1.1Ah
であった。
参考例 ガラス繊維マットを電解液の保持体として使用した市
販の鉛蓄電池(松下電器産業社製 小型シール鉛蓄電池
IVC6V1.2型)の起電力および容量を測定した。
起電力は6V,容量は10時間率で1.2Ahであった。
<発明の効果> 以上のように,本発明によれば,エチレン共重合体樹
脂および/または該樹脂成形体を電解液固定化剤として
使用することにより,容量に電解液を非流動化すること
ができ,その結果として運搬および使用条件の制約が少
なく,かつ形状のデザインが自由にでき,かつ大型化の
容易な鉛蓄電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による樹脂シートに電解液を吸収し非流
動化させた鉛蓄電池の断面図および一部断面図である。 第2図は本発明による多孔性樹脂マットに電解液を吸収
および含浸させることにより非流動化させた鉛蓄電池の
断面図および一部断面図である。 第3図は本発明による樹脂粉末に電解液を吸収および含
浸させることにより非流動化させた鉛蓄電池の断面図お
よび一部断面図である。 1……電槽、2……ふた、3……正極端子 4……負極端子、5……正極板、6……負極板 7……希硫酸を吸収した樹脂シート状電解液 8……エチレン共重合体樹脂フィルムの袋 9……希硫酸を吸収した多孔性樹脂マット状電解液 10……ポリエチレン袋 11……エチレン共重合系接着性樹脂 12……樹脂粉末に希硫酸を吸収してゲル化した電解液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡田 満幸 千葉県市原市姉崎海岸5―1 住友化学 工業株式会社内 (72)発明者 浅尾 浩一郎 千葉県市原市姉崎海岸5―1 住友化学 工業株式会社内 (56)参考文献 特公 昭37−5211(JP,B1)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希硫酸を電解液とする鉛蓄電池において、
    電解液が、エチレン単位40〜90重量%と、(A)分子中
    にアミド結合およびアミンを有するエチレン性不飽和コ
    モノマー単位および(B)分子中にエステル結合および
    アミンを有するエチレン性不飽和コモノマー単位から選
    ばれる少なくとも一種のコモノマー単位60〜10重量%か
    らなり、かつ数平均分子量が5,000〜50,000であるエチ
    レン共重合体樹脂および/または該樹脂成形体に、吸収
    もしくは含浸されることにより非流動化状態にあること
    を特徴とする鉛蓄電池。
  2. 【請求項2】(A)分子中にアミド結合およびアミンを
    有するエチレン性不飽和コモノマー単位が、下記一般式
    (A′)で表わされるアクリルアミド系コモノマー単位
    である特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。 〔式中、R1は水素またはメチル基であり、R2およびR3
    水素または炭素数1ないし4のアルキル基、または窒素
    原子とともに など、R4は水素または炭素数1〜4のアルキル基であ
    る。)を形成しており、nは2ないし5の整数を表わ
    す。〕
  3. 【請求項3】(B)分子中にエステル結合およびアミン
    を有するエチレン性不飽和コモノマー単位が、下記一般
    式(B′)で表わされるアクリル酸エステル系コモノマ
    ー単位である特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。 〔式中、R5は水素またはメチル基であり、R6およびR7
    水素または炭素数1〜4のアルキル基、または窒素原子
    とともに など、R8は水素または炭素数1〜4のアルキル基であ
    る。)を形成しており、mは2ないし5の整数を表わ
    す。〕
  4. 【請求項4】樹脂成形体が、フィルムもしくはシートで
    ある特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。
  5. 【請求項5】樹脂成形体が、多孔性シートもしくは多孔
    性マットである特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。
  6. 【請求項6】樹脂成形体が、ポリプロピレンとの複合繊
    維または該複合繊維から成る織布もしくは不織布状のマ
    ットである特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。
  7. 【請求項7】樹脂成形体が、粉末状である特許請求の範
    囲第1項記載の鉛蓄電池。
  8. 【請求項8】電解液の吸収が、エチレン共重合体樹脂と
    希硫酸とを混合し、該樹脂の融点以上の温度に昇温して
    行なわれてなる特許請求の範囲第1項記載の鉛蓄電池。
  9. 【請求項9】(A′)アクリルアミド系コモノマー単位
    がジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルア
    ミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチル
    アクリルアミドおよびジメチルアミノエチルメタクリル
    アミドから選ばれる少なくとも1種である特許請求の範
    囲第2項記載の鉛蓄電池。
  10. 【請求項10】(B′)アクリル酸エステル系コモノマ
    ー単位がジメチルアミノエチルメタクリレートおよび/
    またはジメチルアミノエチルアクリレートである特許請
    求の範囲第3項記載の鉛蓄電池。
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