JP2543251Y2 - オイルフィルター - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案はオイルフィルターに関
する。

【０００２】

【従来の技術】自動車に搭載されたエンジンの潤滑オイ
ルは、エンジンの作動時において常時オイルフィルター
を介して濾過され、オイルに含まれている異物を除去す
るようになつている。この異物は、燃焼時に発生する”
すす”が大部分を占め、この”すす”がサブミクロン単
位でオイル中に混入、分散され、これによって各摺動部
の磨耗が促進されたり、オイルの粘度が上昇してオイル
ポンプの吐出量が低下し、潤滑不足が起こり摺動部のオ
イル切れを来たしたりする。

【０００３】ところで、従来のオイルフィルターは、所
謂デットエンドと称される濾過方式が一般に採用されて
いる。即ち、かかるデットエンド濾過方式によりるオイ
ルフィルターは、図３に示すように異物Ｘを含むオイ
ル、つまり、非浄化オイルを濾過体ａの濾過面ｂに対し
て略直角方向に流すことにより、オイルの濾過が行なわ
れるようになっている。

【０００４】しかしながら、かかる従来のオイルフィル
ターにあっては、濾過体ａで濾過される時に捕捉される
異物Ｘは、順次濾過面に堆積されて目詰りを生じ、濾過
性能が経時的に低下する。このような目詰りが発生する
フィルタ−では、濾過精度の向上を図って、濾過体ａの
濾孔径を小さくした場合には、早期に目詰り状態になっ
てフィルタ−ライフが著しく短縮される。一方、フィル
ターライフを長くするためいは、必然的に濾孔径を大き
くしなければならないが、このようにすると、濾過精度
の低下が余儀なくされてしまう。

【０００５】即ち、従来のオイルフィルターでは、濾過
精度とフィルターライフとはお互いに相反する関係とな
り、これら両者を共に満足させるオイルフィルターの開
発が強く望まれていた。そこで、例えば、特願平２−９
０２９６においては、一次側通路の非浄化オイルが濾過
体を通過する際に、濾過面が一次通路の流れ方向に沿っ
て配置されるようにし、濾過面に捕捉された異物は、一
次側通路を流通するオイルによって、常時これを剥離さ
せる方向の力が作用し、異物が濾過面に堆積されるのが
防止される。そして、濾過面から剥離された異物は、一
次側出口から一次側出口と一次側入口との間で構成され
る閉回路内全体での異物濃度が高くなる。

【０００６】このとき、濾過面を通って濾過されたオイ
ルに相当する分は、一次側通路に順次補給される。従っ
て、異物の捕捉は、これが濾過体の濾過面にみに集中さ
れるのとは異なって、前記閉回路全体で行われるため、
その捕捉量は非常に大きくなり、濾過体の濾孔径を小さ
くした場合にも、目詰りを無くしてフィルターライフの
著しい向上を図ることができる構造としている。しかし
ながら、このような構造のオイルフィルターには、以下
に説明する技術的課題があった。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】前記特許出願に提案さ
れているオイルフィルターでは、濾過面が一層であり濾
孔径が小さい濾過材を使用することもあって、濾過面積
が十分とはいえなかった。この考案はこのような従来の
問題点を鑑みてなされたもので、その目的とするところ
は、濾過面を二層として濾過面積を増やし、フィルター
ライフをより長くした実用的なオイルフィルターを提供
することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、この考案は、非浄化オイルの一次側入口および一次
側出口を有する一次側通路と、この一次側通路を通過す
る非浄化オイルの流れ方向に沿って濾過面が配置される
濾過体と、この濾過体を通過した浄化オイルが流通する
二次側通路とを備え、前記一次側入口に非浄化オイルを
導入する導入回路の一端を接続すると共に、前記一次側
出口をこの導入回路の他端に接続し、前記一次側出口と
一次側入口との間で閉回路を構成し、前記濾過体を二層
としたことを特徴とする。

【０００９】

【作用】以上の構成により本考案のオイルフィルターに
あっては、一次側通路の非浄化オイルが濾過体を二層に
した第１層の外面を第２層の内面を通過する際に、濾過
面が一次側通路の流れ方向に沿って配置されているた
め、濾過面に捕捉された異物には、一次側通路を流通す
るオイルによって、常時これを剥離する方向の力が作用
し、異物が濾過面に堆積されるのが防止されるととも
に、濾過体を二層にしているので濾過面積が多くなりフ
ィルターライフを長くすることができる。

【００１０】

【実施例】以下本考案の実施例を図に基ずいて詳細に説
明する。即ち、図１は、本考案の一実施例を示すオイル
フィルター１０で、同図はシステム回路を併記したオイ
ルフィルター１０の断面図を示している。

【００１１】同図に示すオイルフィルター１０は、上端
開口部が蓋体１２によって閉止される有底筒状の容器１
４内に、第１層の濾過体としての筒状のフィルター体１
６と、第２層の濾過体としての筒状のフィルター体１８
とが同心状に収納されることにより概略構成されてい
る。

【００１２】前記蓋体１２の中央には、排出筒２０が配
置され、この排出筒２０の上部はヘッド２２に螺着支持
されている。前記筒状のフィルター体１６の上下端に
は、それぞれ端板２４、２６が設けられている。上方の
端板２４の開口部２４ａは、前記排出筒２０の外周との
間に適宜間隔を設けるようにして、ガスケット２８を介
装して蓋体１２の外周に装着されている。筒状のフィル
ター体１８の上端には、中央が開口された端板２５が設
けられ、その開口部２５ａは、前記排出筒２０にＯリン
グ３８を介して液密に嵌合され、フィルター体１８の下
端は、フィルター１６と共通の端板２６で支持されてい
る。

【００１３】また、下方の端板２６と前記容器１４の底
面との間には、圧縮スプリング３０が縮設され、このス
プリング３０によって前記開口２４ａの上端がガスケッ
ト２８を押圧するように付勢している。前記フィルター
体１８は、前記フィルター体１６の内側に適宜間隔をも
って配置され、筒状にじぐざく折りされた濾紙３３と、
この濾紙３３の外周を補強する筒状の有孔板３５とを有
しており、フィルター体１６は、濾紙３２と、濾紙３２
の内周を補強する筒状の有孔板３４とを備えている。

【００１４】一方、前記ヘッド２２には、１次側入口４
０、１次側出口４２および２次側出口４４が形成されて
いる。前記１次側入口４０は、蓋体１２に形成された開
口１２ａを介して、容器１４とフィルター体１６との間
を連通し、前記１次側出口４２は前記排出筒２０の内側
に連通している。また、前記２次側出口４４は、前記排
出筒２０の肉厚内に形成された側路４６を介して、前記
フィルター体１６と前記フィルター体１８と間の空間と
連通してる。

【００１５】そして、前記１次側入口４０と前記１次側
出口４２とは、容器１４とフィルター体１６との間の１
次側外通路４８と、容器１４底部と下方端板２６との間
の１次側タンク部５０と、この下方端板２６の中央開口
部２６ａと、筒状のフィルター体１８の内側の１次側内
通路５２と、前記排出筒２０とを介して連通され、これ
ら流通経路によって１次側通路５４が構成される。

【００１６】また、前記フィルター体１６とフィルター
体１８との間から前記２次側出口４４に至る流通経路に
よって２次側通路５６が構成される。次ぎに、前記構成
になるオイルフィルター１０に接続されるシステム回路
を説明する。

【００１７】１００はオイルパンで、このオイルパン１
００内のオイルは、第１オイルポンプ１０２により吸引
され、フルフロフィルター１０４を介してエンジン摺動
部１０６に供給される潤滑経路１０８と、導入回路１１
０を介して前記オイルフィルター１０に供給される濾過
経路１１２とに分流される。

【００１８】、前記導入回路１１０には、逆止弁１１４
と、リリーフ弁１１６を有する第２オイルポンプ１１８
と、熱交換器１２０とが順次後流方向に向かって直列に
設けられ、その最終端は前記オイルフィルター１０の１
次側入口４０に接続される。一方、オイルフィルター１
０の１次側出口４２には、回路１２２が接続されるが、
この回路１２２は前記逆止弁１１４と前記第２オイルポ
ンプ１１８との間の導入回路１１０に接続され、１次側
出口４２から１次側入口４０に至る閉回路が構成され
る。

【００１９】また、前記２次側出口４４には排出回路１
２４が接続され、この排出回路１２４を介してオイルパ
ン１００内に連通される。以上の構成の本実施例のオイ
ルフィルター１０の作用を以下述べる。第１オイルポン
プ１０２によって吸引されるオイルパン１００内のオイ
ルは、異物が混入された非浄化オイルであり、この非浄
化オイルが濾過経路１１２に分流され導入通路１１０に
導入されると、第２オイルポンプ１１８のリリーフ弁１
１６により一定圧とされた後、適宜作動される熱交換器
１２０で加温されたものがオイルフィルター１０に供給
される。

【００２０】前記熱交換器１２０は、エンジンの冷却水
を熱源として、オイルの保温と粘度低下を目的とするも
のである。そして、オイルフィルター１０の１次側入口
４０に供給された非浄化オイルは、１次側外通路４８お
よび１次側タンク５０を介して１次側内通路５２に導入
され、この１次側外通路４８および１次側内通路５２で
は一部の非浄化オイルがフィルター体１６とフィルター
体１８の濾紙３２、３３を通過して異物Ｘを捕捉する。

【００２１】前記フィルター体１６、１８を通過して浄
化されたオイルは、２次側通路５６および２次側出口４
４を通過して排出回路１２４からオイルパン１００内に
還元される。この場合、オイルが２次側通路５６側に流
出すると、逆止弁１１４が開弁してその分だけ１次側通
路４８にオイルが自動的に補給だれる。

【００２２】一方、前記フィルター体１６、１８を通過
しなかった残りの非浄化オイルは、１次側内通路５２か
ら排出筒２０、１次側出口４２および回路１２２を通過
して、逆止弁１１４と第２オイルポンプ１１８との間の
導入回路１１０に戻される。そして、前記導入回路１１
０に戻された非浄化オイルは、再度１次側入口４０から
１次側通路５４に供給される。

【００２３】ところで、本実施例にあってはフィルター
体１６の外周部を１次側外通路４８とし、フィルター体
１８の内周部を１次側内通路５２として、ここを軸方向
に非浄化オイルが流通するため、フィルター体１６の外
面とフィルター体１８の内面に形成される濾過面１６
ａ，１８ａは、図２に示すように、非浄化オイルの流れ
方向に沿って平行に配置されることになる。

【００２４】これにより、前記濾過面１６ａと１８ａで
捕捉された異物Ｘは、非浄化オイルの流れによる剥離力
が作用し、この剥離力を受けた異物Ｘは、濾過面１６ａ
と濾過面１８ａに堆積されることなく、非浄化オイル中
に混入される。一方、前記１次側通路５４は、回路１２
２および導入回路１１０を介して閉回路とされてこの中
を循環しているため、前記フィルター体１６とフィルタ
ー体１８で捕捉されて非浄化オイル内に混入された異物
Ｘは、この循環経路内全体の大きな空間内で保持される
ことになる。

【００２５】このため、異物Ｘの捕捉容量は、従来のデ
ッドエンド濾過方式のオイルフィルターに比較して著し
く増大され、しかも、フィルター体が１６、１８と二層
になつており濾過面１６ａ，１８ａには異物Ｘが堆積さ
れないことから、このフィルター体１６、１８による浄
化能力を常に略最良の状態に維持することができるた
め、フィルターライフの著しい向上を達成できる。

【００２６】また、濾紙３２、３３の濾孔径を小さくし
た場合にあっても、その浄化能力の低下促進が抑制され
るため、浄化精度の著しい向上をも図ることが可能とな
る。

【００２７】尚、本実施例のオイルフィルター１０にあ
っては、非浄化オイル中に順次混入されていく異物Ｘに
よつて、閉回路とされた１次側通路５４内の異物Ｘ濃度
は、徐々に高められるが、この高濃度となった非浄化オ
イルはエンジン停止により第２オイルポンプ１１８が停
止された場合にも、逆止弁１１４によりオイルパン１０
０内に逆流されるのが防止される。

【００２８】ところで、前記オイルフィルター１０では
閉回路とされた１次側通路５４の循環経路内の異物Ｘ濃
度が限界値（約３０ｗｔ％）に達したときには、オイル
フィルター１０の交換が行われるが、このフィルター交
換時に導入回路１１０および回路１２２内の汚染オイル
を除去すればよい。従って、フィルター交換時にはオイ
ルフィルター１０を含む循環回路内の容積分のオイルを
補給する必要があるが、この補給量はオイルパン１００
内に収容されるオイル量の約１／５〜１／８と少ない量
で済ますことができる。

【００２９】

【考案の効果】以上説明したように本考案のオイルフィ
ルターにあっては、１次側通路の非浄化オイルが濾過体
を通過する際に、濾過面が１次側通路の流れ方向に沿っ
て配置されているため、このときのオイルの流通により
濾過面に捕捉された異物は剥離されて、異物が濾過面に
堆積されるのを防止することができる。

【００３０】また、濾過面から剥離された異物は、１次
側出口から１次側入口に接続された導入通路の流入さ
れ、これら１次側出口と１次側入口との間で構成される
閉回路全体で異物を保持し、フィルター体が二層となつ
ており濾過面積が増大しているため、その捕捉容量を著
しく増大することができる。従って、浄化精度の著しい
向上およびフィルターライフの著しい向上を図り、か
つ、オイルフィルターの小型化をも達成できるという各
種優れた効果をそうする。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案にかかるオイルフィルターの一実施例
を示す断面図である。

【図２】同オイルフィルターの濾過状態の説明図であ
る。

【図３】従来のオイルフィルターの濾過状態の説明図で
ある。

【符号の説明】

１０ オイルフィルター １６、１８ フィルター体（濾過体） １６ａ、１８ａ 濾過面 ４０ １次側入口 ４２ １次側出口 ４４ ２次側出口 ４８ １次側外通路 ５０ １次側タンク部 ５２ １次側内通路 ５４ １次側通路 ５６ ２次側通路 １００ オイルパン １０２ 第１オイルポンプ １１８ 第２オイルポンプ １１０ 導入通路

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 非浄化オイルの一次側入口および一次側
   出口を有する一次側通路と、この一次側通路を通過する
   非浄化オイルの流れ方向に沿って濾過面が配置される濾
   過体と、この濾過体を通過した浄化オイルが流通する二
   次側通路とを備え、前記一次側入口に非浄化オイルを導
   入する導入回路の一端を接続すると共に、前記一次側出
   口をこの導入回路の他端に接続し、前記一次側出口と一
   次側入口との間で閉回路を構成し、前記濾過体を二層と
   したことを特徴とするオイルフィルター。