JP2541607B2 - 四輪駆動車の駆動力配分制御装置 - Google Patents

四輪駆動車の駆動力配分制御装置

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JP2541607B2
JP2541607B2 JP63018889A JP1888988A JP2541607B2 JP 2541607 B2 JP2541607 B2 JP 2541607B2 JP 63018889 A JP63018889 A JP 63018889A JP 1888988 A JP1888988 A JP 1888988A JP 2541607 B2 JP2541607 B2 JP 2541607B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、四輪駆動車の駆動力配分制御装置に係
り、とくに、前後輪に駆動力を配分する四輪駆動車のト
ランスファー内に、前,後輪間の締結力を連続的に変更
可能なクラッチを装備した駆動力配分制御装置に関す
る。
〔従来の技術〕
四輪駆動車の駆動力配分制御装置としては、例えば、
本出願人によって提案された特開昭61−157437号記載の
ものが知られている。
この従来装置では、前後輪への駆動力伝達系に個別に
設けた回転センサから回転信号を入力し、前後輪の駆動
力伝達系の回転数差を演算し、その回転数差が大きくな
るにしたがってクラッチの締結力を増大させ、被締結側
への駆動力配分を多くするように制御していた。これに
より、前後輪の良好な駆動力配分が得られるようになっ
ていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、このような従来の制御装置にあって
は、前後輪の回転差が増大した場合に、これに応じてク
ラッチ締結力を単に高めるという制御手法を採ってお
り、伝達トルクと前後輪回転差との積に応じて決定され
るクラッチの発熱量を特に意識した制御ではないことか
ら、例えば長距離の砂地走行などにおいてクラッチ伝達
トルク,前後輪回転差が共に大きい場合、クラッチの熱
的破壊による焼損を招くという未解決の課題があった。
また、そのような走行状態において、クラッチの熱的破
壊を回避したいがために、クラッチ締結力を弱めて伝達
トルクを低下させると、単なる2輪駆動又はこれに近い
駆動状態となり、砂地路等の走破性が低下するという相
反する状況にあった。
この発明は、このような未解決の課題に鑑みてなされ
たもので、長距離の砂地路等を連続走行する場合でも、
良好な駆動性を得ることができるとともに、クラッチの
発熱による焼損等を防止することができ、且つ、運転者
がその走行に合わせて発熱量抑制の制御時間を任意に決
定することのできる四輪駆動車の駆動力配分制御装置を
提供することを、その目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、この発明では、第1図に示
すように、エンジンの駆動力を前,後輪に配分するトラ
ンスファー内に装着され該トランスファーの前輪側と後
輪側との間の締結力を連続的に変更可能なクラッチを備
え、このクラッチの締結力を車両の走行状況に応じて変
更させるようにした四輪駆動車の駆動力配分制御装置に
おいて、車両の前後輪の回転速度差を検出する前後輪回
転速度差検出手段と、前記クラッチの伝達するトルクを
検出する伝達トルク検出手段と、前記前後輪回転速度差
検出手段及び前記伝達トルク検出手段の検出値に基づき
クラッチの発熱量を演算する発熱量演算手段と、この発
熱量演算手段による演算結果が一定値以上になり且つそ
の状態が一定時間以上継続する所定のクラッチ発熱状態
か否かを判定する発熱状態判定手段と、この発熱状態判
定手段による判定結果が所定のクラッチ発熱状態である
ときに、前記クラッチの締結力を増大させる発熱抑制制
御手段と、この発熱抑制制御手段が作動したときにのみ
当該作動を表示する表示手段と、前記発熱抑制制御手段
の作動を手動で解除する解除手段とを備えている。
〔作用〕
この発明においては、前後輪回転速度差検出手段及び
伝達トルク検出手段の各検出値に基づき発熱量演算手段
によってクラッチの発熱量が演算される。そして、この
演算結果が一定値以上になり且つその状態が一定時間以
上継続する所定のクラッチ発熱状態か否かが発熱状態判
定手段によって判定される。この判定結果が所定のクラ
ッチ発熱状態であるときには、発熱抑制制御手段によ
り、クラッチの締結力が増大され、前後輪の回転速度差
が縮小される。これによって、駆動状態はリジッドな四
輪駆動方向に制御され、砂地路等の走破性が確保される
とともに、伝達トルクと前後輪回転差との積に比例する
クラッチの発熱量が抑制される。
そして、発熱抑制制御手段が作動したときには、表示
手段により当該作動中である旨が表示され、運転者はこ
れを容易に認識できる。このため、運転者が解除手段を
適宜な時刻で手動操作することにより、発熱抑制制御状
態が解除され、通常の締結力制御に復帰できる。
〔実施例〕
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第2図乃至第8図は、この発明の一実施例を示す図で
ある。この実施例は、FR(フロントエンジン,リヤドラ
イブ)方式をベースにしたパートタイム四輪駆動車に適
用した場合を示す。
第2図において、1はエンジン、2FL〜2RRは前左〜後
右側の車輪、3は車輪2FL〜2RRへの駆動力配分比を変更
可能な駆動力伝達系、4は駆動力伝達系3による駆動力
配分を制御する駆動力配分制御装置を示す。
この内、駆動力伝達系3は、エンジン1からの駆動力
を断続するクラッチ10と、このクラッチ10の出力を選択
された歯車比で変速する変速機12と、この変速機12から
の駆動力を前輪2FL,2FR側及び後輪(常駆動輪)2RL,2RR
側に分割するトランスファー14とを有している。そし
て、駆動力伝達系3では、トランスファー14で分割され
た前輪側駆動力が前輪側出力軸16、フロントディファレ
ンシャルギヤ18及び前輪側ドライブシャフト20を介して
前輪2FL,2FRに伝達され、一方、後輪側駆動力がプロペ
ラシャフト22、リヤディファレンシャルギヤ24及び後輪
側ドライブシャフト26を介して後輪2RL,2RRに伝達され
る。
トランスファー14は、第3,4図に示すように構成され
ている。即ち、第3図において、28はトランスファーケ
ースを示し、このトランスファーケース28内に変速機12
の出力側に連結された入力軸30が挿通され、この入力軸
30はベアリング31等によって回動自在に軸支されてい
る。また、入力軸30の第3図における右端側は、プロペ
ラシャフト(後輪側出力軸)22に連結され且つベアリン
グ32によって回動自在に軸支された出力軸33に結合され
ている。ここで、30Aは油路、34は出力軸33にスプライ
ン結合された継手フランジ、35はオイルシール、36はス
ピードメータ用ピニオンである。
一方、前記入力軸30の中央部には、図示の如く、前後
輪に対するトルク配分比を変更できる湿式多板クラッチ
37が設けられている。このクラッチ37は、入力軸30にス
プライン結合されたクラッチドラム37aと、このクラッ
チドラム37aに回転方向を係合させたフリクションプレ
ート37bと、前記入力軸30の外周部にニードルベアリン
グ38によって回動自在に支持されたクラッチハブ37c
と、このクラッチハブ37cに回転方向を係合させたフリ
クションディスク37dと、クラッチ37の第3図における
右側に配置されたクラッチピストン37eと、このクラッ
チピストン37eとクラッチドラム37aとの間に形成された
シリンダ室37fとを備えている。また、このクラッチ37
において、37gはディシュプレートであり、37hはリター
ンスプリングである。
また、クラッチ37は、図示のようにギヤトレーンを介
して前輪側にも連結されている。即ち、前記クラッチハ
ブ37cは、ベアリング40A,40Bによって回動自在な第1の
ギヤ41Aにスプライン結合されており、この第1のギヤ4
1Aはベアリング42,43によって回動自在な第2のギヤ41B
に噛合され、この第2のギヤ41Bが第3のギヤ41Cを介し
て前述した出力軸16に連結されている。
さらに、前記トランスファーケース28の右端寄りの側
面所定位置には、後述する油圧供給機構から油圧(指令
力)が供給される入力ポート46が設けられている。そし
て、この入力ポート46は、トランスファーケース28及び
クラッチドラム37aの内部に図示のように形成された油
路47を介して前記シリンダ室37fに連通している。
このため、入力ポート46にオイルの供給がない状態で
は、クラッチ37のシリンダ室37fの圧力が零であるか
ら、リターンスプリング37hのばね力によって、フリク
ションプレート37bとフリクションディスク37dが離間し
ている。従って、この状態では、入力軸30に伝達された
入力トルクはその全部が出力軸33,プロペラシャフト22
を介して後輪側に伝達され、2輪駆動状態となる。一
方、入力ポート46にオイルが供給されている状態では、
そのシリンダ室37fの加圧程度に応じてクラッチピスト
ン37eによる押圧力が発生し、これに対応してフリクシ
ョンプレート37bとフリクションディスク37dとの間に摩
擦力による締結力が発生し、これにより、全駆動トルク
の内の一部が出力軸16を介して前輪側にも伝達され、結
局、締結力に応じて駆動トルクが後輪側及び前輪側に配
分・伝達される。この前後輪に対するトルク配分比は、
入力ポート46に供給する作動油の圧力Pに応じて「0:10
0」から「50:50」までほぼ連続的に変更できる。
一方、第2図に戻って、駆動力配分制御装置4は、前
記トランスファー14の摩擦クラッチ37の入力ポート46に
作動油を供給する油圧供給機構50と、この油圧供給機構
50の出力油圧Pを検出するための圧力センサ52と、前輪
側,後輪側の回転速度を検出するための前輪側,後輪側
回転センサ54,56と、車両の横加速度を検出するための
横加速度センサ57と、車両が完全(リジッド)四輪駆動
状態であるときに点灯する表示器58と、車両の完全四輪
駆動状態を解除するための手動解除スイッチ59と、全体
を制御するコントローラ60とを備えている。
前記油圧供給機構50は、第4図に示すように、エンジ
ンを回転駆動源とし、タンク62内のオイルを吸入,加圧
してこれを前記入力ポート46に供給するオイルポンプ64
と、このオイルポンプ64の吐出側に併設された電磁比例
制御形の減圧弁でなる圧力制御弁66とを有している。こ
のため、圧力制御弁66の比例ソレノイド66Aに供給する
指令電流iの値に比例して供給圧Pが第5図に示すよう
に設定される。
前記圧力センサ52は、油圧供給機構50の供給側の所定
位置に装備され、その供給圧Pを検知してこれに応じた
アナログ電圧でなる油圧信号pをコントローラ58に出力
する。また、前輪側回転センサ54及び後輪側回転センサ
56は、前輪側出力軸16及び後輪側のプロペラシャフト22
の所定位置に個別に装備され、各軸の回転数に応じたパ
ルス信号による回転信号nf,nrを個別にコントローラ58
に出力する。横加速度センサ57は、車両の所定位置に装
備され、車両の横方向の加速度(求心加速度に相当)を
検知してこれに応じたアナログ電圧でなる横加速度信号
gYをコントローラ60に出力する。さらに、表示器58,手
動解除スイッチ59は目視及び操作が容易な運転席の所定
位置に各々装備されている。そして、表示器58はLED等
から成り、コントローラ60から点灯駆動信号Dが供給さ
れたときに点灯するようになっている。また、手動解除
スイッチ59はオンオフスイッチから成り、オン時に論理
「1」,オフ時に論理「0」の解除指令信号RLを出力す
るようになっていいる。
前記コントローラ60は、第4図に示すように、マイク
ロコンピュータ70と、圧力センサ52,横加速度センサ57
の検出値を各々A/D変換してマイクロコンピュータ70に
出力するA/D変換器72,73と、マイクロコンピュータ70か
らの制御信号をD/A変換するD/A変換器76と、このD/A変
換器76の出力に応じて圧力制御弁66に指令電流iを供給
する駆動回路78とを有している。
前記マイクロコンピュータ70はインターフェイス回路
80,演算処理装置82,記憶処理84を少なくとも含んで構成
される。演算処理装置82は、各検出信号p,nf,nr,gY及び
解除指令信号RLをインターフェイス回路80を介して読み
込み、予め格納されている所定プログラムにしたがって
駆動力配分制御のための演算・制御処理等を行う。ま
た、記憶装置84は、演算処理装置82の処理の実行に必要
なプログラム及び固定データ等を予め記憶しているとと
もに、その処理結果を一時記憶可能になっている。この
内、固定データとしては、第6図に示す如くの求心加速
度をパラメータとする回転速度差ΔNと指令電流iとの
関係を示した制御特性に対応した記憶テーブル、油圧信
号pから油圧Pをルックアップするための記憶テーブル
及び横加速度信号gYから横加速度GYをルックアップする
ための記憶テーブルを含む。
次に、上記実施例の動作を説明する。
イグニッションスイッチがオン状態となると、これに
付勢されてコントローラ58での制御が開始される。そし
て、コントローラ58では、所定のメインプログラムを実
行するとともに、一定時間(例えば20msec)毎にタイマ
割込により第7図に示す処理を実行する。
一方、エンジンが回転すると、オイルポンプ64が作動
開始し、油圧供給機構50は指令電流iに応じた油圧Pを
クラッチ37に供給可能になる。
第7図のタイマ割込処理を説明する。
同図のステップでは、演算処理装置82は、前輪側回
転センサ54及び後輪側回転センサ56による回転信号nf
びnrを各々所定時間づつ読み込む。次いで、ステップ
では、単位時間当たりのパルス数又はパルス間隔を演算
することによる前輪側回転速度Nf及び後輪側回転速度Nr
を演算し、ステップに移行する。このステップにお
いては、ΔN=Nr−Nfの式により、回転速度差ΔNを演
算する。
次いで、ステップにおいて、演算処理装置82は圧力
センサ52に係る圧力信号pを読み込む。そして、ステッ
プにおいて、記憶テーブルを参照することにより油圧
供給機構50が実際にクラッチ37に供給している油圧Pを
算出する。
次いで、ステップに移行し、クラッチ伝達トルクΔ
Tを、 ΔT=P・S・2n・μ・rm ……(1) の式に基づき演算する。ここで、Sはピストン37eの圧
力作用面積,nはフリクションディスク枚数,μはクラッ
チ板の摩擦係数,rmはフリクションディスクのトルク伝
達有効半径である。
続いて、ステップにおいて、クラッチ板の発熱量Q
を、 Q=K・ΔN・ΔT ……(2) の式に基づき演算する。ここで、Kはクラッチ板枚数,
面積等により定まる定数、ΔNはステップにおいて演
算した回転速度差、ΔTはステップにおいて演算した
クラッチ伝達トルクである。したがって、この式によれ
ば、回転速度差ΔNとクラッチ伝達トルクΔTとが大き
いほど、発熱量Qが大きくなる。この発熱による等発熱
量曲線を示すと、例えば第8図中の曲線(A)〜(C)
のようになる。同図において曲線(B)は熱的限界を示
し、これ以上の発熱が継続する場合は焼損等の恐れがあ
る。そこで、そのようなときには前輪側,後輪側の回転
速度を同一にして回転速度差(すべり)ΔNを零とすれ
ば、発熱が生じないことになる。
そこで、ステップに移行し、現在の発熱具合を調べ
る。まず、ステップで求めた発熱量Qに対して、ステ
ップでQ>Q0か否かの判断を行う。Q0は予め定めた基
準発熱量であり、クラッチ37の焼損発生を弁別できる値
に設定されている。この判断でQ≦Q0の場合は、車両は
例えば比較的摩擦係数の大きい良路を走行しており、ク
ラッチ伝達トルクΔT及び回転速度差ΔNの積が比較的
小さく、焼損等の恐れがないとして、次いでステップ
〜に移行し、クラッチ締結力の通常制御を行った後、
メインプログラムに復帰する。
この通常制御を詳述すると、ステップでは横加速度
信号gYを読み込み、ステップでは横加速度信号gYの値
に対応した横加速度GY(求心加速度に相当)を記憶テー
ブルをルックアップすることにより求める。次いで、ス
テップに移行し、第6図に対応した記憶テーブルを参
照し、ステップで求めた横加速度GYをパラメータとし
て曲線を選択し且つ回転速度差ΔNに対応した電流値を
決定し、これを記憶装置84の指令電流iに相当する所定
領域にセットする。これによって、回転速度差ΔNが同
一値であっても、例えば比較的緩やかな旋回走行であっ
て低い求心加速度が発生しているとき(第6図中の低ゲ
インの制御特性(A)参照)と、例えば急旋回走行であ
って高い求心加速度が発生しているとき(同図中の高ゲ
インの制御特性(B)参照)とでは、異なった値の指令
電流iが決定される。この場合、通常走行時は回転速度
差ΔNが小さいため、指令電流iは0〜i1の間の値が決
定される。
次いで、ステップに移行し、演算処理装置82は、そ
の時点でセットされている指令電流iの値に対応した制
御信号をD/A変換器76に出力する。このD/A変換器76によ
ってアナログ化された制御信号を受けた駆動回路78は、
ステップで設定された値の指令電流iを圧力制御弁66
に出力する。これによって、トランスファー14の入力ポ
ート46には、前述したように、指令電流i=0〜i1に応
じた油圧P=0〜P1が供給される(第5図参照)。そし
て、この油圧Pに対応した範囲でクラッチ締結力が増減
され、これに応じて前後輪へのトルク配分比が例えば
「0:100」〜「30:70」の範囲で制御され、適宜に2輪又
は4輪駆動となり、これにより路面状況等に対応した的
確な走行性が確保される。
一方、所定時間毎にタイマ割込を繰り返す中で、前記
ステップにおいてQ>Q0であると判断されたとする。
この場合は、例えば砂地走行等によってクラッチ伝達ト
ルクΔT及び回転速度差ΔNの積が比較的大きく、現在
のクラッチ37の発熱量が大きいと認識して、ステップ
に移行する。ステップでは、一度、Q>Q0の状態にな
ってから一定時間T1以上が既に経過したか否かを、図示
しないカウンタを各回毎にインクリメントし且つそのカ
ウンタ値を所定値と比較することによって行う。
つまり、ステップの判断で未だ一定時間T1が経過し
ていない場合は、クラッチ37に焼損発生の可能性が無い
として、前記ステップ〜の通常制御を行う。
しかし、ステップの判断で一定時間T1又はそれ以上
が経過したとされる場合は、焼損の可能性があるとし
て、ステップで、記憶装置84の指令電流iに対応した
所定領域にその最大指令電流値iMAX(第5図参照)をセ
ットした後、ステップ,に移行する。
このステップ,は、運転者がリジッドな四輪駆動
状態を任意のタイミングで終了させようとしているかど
うかをチェックするもので、ステップでは、演算処理
装置82は手動解除スイッチ59に係る解除指令信号RLを読
み込む。また、ステップでは、読み込んだ解除指令信
号RLが論理「1」か論理「0」かを判断することによっ
て解除指令か否かを判断する。
このステップの判断において解除指令信号RLが論理
「0」である場合は、手動解除スイッチ59に対して非操
作状態であり、リジッドな四輪駆動状態を継続するとし
て、ステップに移行する。このステップでは、演算
処理装置82は表示器59に点灯駆動信号Dを出力して、表
示器58を点灯させる。この後、前述したステップに移
行し、最大指令電流値iMAXに対応した制御信号をA/D変
換器76に出力した後、メインプログラムに復帰する。こ
れによって、クラッチ37に印加される油圧Pがその最大
値PMAXとなる。この結果、クラッチ37の摩擦力,即ちク
ラッチ締結力が最大になり、前後輪の駆動力配分比はほ
ぼ等しい値となり、前後輪の回転差ΔNが略零となる。
つまり、前記第(2)式においてΔN≒0となること
で、直接的にはクラッチ板の発熱に起因したクラッチ発
熱量Q≒0となる。
その後、ステップにおいて解除指令であると判断さ
れるまでの任意の時間は、クラッチ37の締結力が最大に
保持されるため、その後の発熱が殆ど無く、従ってクラ
ッチ37は安全領域(第8図中の曲線(B)以下の状態)
まで冷却され、焼損が確実に回避される。このとき、車
両はリジットな四輪駆動状態であるから、例えば長距離
の砂地走行によってかかる状態に陥った場合でも、手動
解除スイッチ59をオン操作しない限り、その走破性が失
われるということもない。
一方、タイマ割込処理を繰り返す中で、手動解除スイ
ッチ59がオン操作され、前記ステップにおいて解除指
令が出されていると判断した場合は、ステップで表示
器58に対する点灯駆動信号Dをオフとし、これによって
表示器58を非点灯状態とした後、前記ステップ〜の
通常制御に復帰する。
このように、本実施例では、例えば砂地走行に入った
場合は、自動的に完全四輪駆動状態となり、これにより
良好な駆動性能が確保されるとともに、クラッチ37の焼
損等が防止される。また、その完全四輪駆動状態が表示
されているから、運転者は、例えば砂地走行が終了した
ときには手動解除スイッチ59を操作することにより、容
易に且つ任意の解除タイミングで通常制御に復帰でき
る。この通常制御への復帰は、手動解除スイッチ59を用
いないで、単に一定時間が経過したときに復帰するとす
ることもできるが、とくに砂地路,雪路等を長距離にわ
たって連続走行する場合には、一定時間の経過時点が必
ずしもその走行の終了時点に一致しないことから、的確
な解除指令を行うことができなかったが、本実施例によ
ればそのような事態にならなくて済むという利点もあ
る。
ここで、本実施例では、前輪側回転センサ54,後輪側
回転センサ56及び第7図のステップ〜の処理により
前後輪回転速度差検出手段が構成され、圧力センサ52及
び同図のステップ〜の処理によって伝達トルク検出
手段が構成され、同図のステップの処理により発熱量
演算手段が構成され、同図のステップ,の処理によ
り発熱状態判定手段が構成され、同図のステップ,
及びD/A変換器76,駆動回路78,油圧供給機構50によって
発熱抑制制御手段が構成され、表示器58及び同図のステ
ップ,の処理によって表示手段が構成され、手動解
除スイッチ59及び同図のステップ,の処理によって
解除手段が構成されている。
なお、上記実施例における伝達トルク検出手段は、圧
力センサ52を用いて摩擦クラッチ37に印加する油圧Pを
検出し、この検出値に基づき演算によってクラッチ伝達
トルクΔTを推定するとしたが、この発明は必ずしもこ
れに限定されることなく、例えば、トルクセンサを前輪
側出力軸16(第2図,第4図参照)に装備し、その検出
値に基づき前輪側に伝達される駆動トルクを算出し、こ
の算出値からクラッチ伝達トルクΔTを算出するように
してもよい。また、クラッチ伝達トルクΔTは、クラッ
チ印加油圧P,指令電流値iに略比例するから、記憶装置
84で逐次更新されている指令電流値iの値を読み出し、
この値からΔTを推定演算してもよい。その際、駆動回
路78から圧力制御弁66の比例ソレノイド66Aに実際に供
給されている指令電流iを検出する電流センサを装備
し、この検出値を用いて演算の正確性を期すこともでき
る。
また、この発明における前後輪回転速度差検出手段
は、前輪2FL,2FR及び後輪2RL,2RRの回転速度を検出し、
これに基づき回転速度差を演算するようにしてもよい。
さらに、前記実施例ではクラッチとして湿式多板クラ
ッチを採用した場合を説明したが、このクラッチは被締
結側への伝達トルクを連続的に可変できる構成のもので
あれば、例えば電磁クラッチであってもよい。
さらにまた、この発明は、後輪駆動車をベースにした
4輪駆動車に限定されるものではなく、前輪駆動車をベ
ースにした4輪駆動車に搭載されるトランスファーのク
ラッチに対する装置であってよい。
さらにまた、この発明におけるコントローラ60は、マ
イクロコンピュータの代わりにカウンタ,比較器等の電
子回路によって構成するとしてもよい。
〔発明の効果〕 以上説明してきたように、この発明は、前後輪回転速
度差検出手段及び伝達トルク検出手段の検出値に基づき
クラッチの発熱量を演算する発熱量演算手段と、この発
熱量演算手段による演算結果が一定値以上になり且つそ
の状態が一定時間以上継続する所定のクラッチ発熱状態
か否かを判定する発熱状態判定手段と、この発熱状態判
定手段による判定結果が所定のクラッチ発熱状態である
ときに、クラッチの締結力を増大させる発熱抑制制御手
段と、この発熱抑制制御手段が作動したときにのみ当該
作動を表示する表示手段と、発熱抑制制御手段の作動を
手動で解除する解除手段とを備える構成にしたため、例
えば、長距離の砂地路を連続走行する場合等,熱的に厳
しい環境下にあっても、その走行開始時には自動的に完
全四輪駆動方向に制御されることから、良好な駆動性を
得ることができるとともに、クラッチの発熱による焼損
等を確実に防止することができ、且つ、運転者がその走
行終了に合わせて発熱量抑制の制御間隔を簡単な操作で
任意に決定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の構成を示す特許請求の範囲との対応
図、第2図はこの発明の一実施例の概略を示す構成図、
第3図は第2図の実施例におけるトランスファーを示す
概略断面図、第4図は第2図の実施例におけるコントロ
ーラを中心とするブロック図、第5図は指令電流iと供
給圧Pとの関係を示すグラフ、第6図は回転速度差ΔN
と指令電流iとの関係を示すグラフ、第7図はコントロ
ーラにおいて実行される処理手順を示す概略フローチャ
ート、第8図はクラッチの等発熱量曲線を示すグラフで
ある。 図中、1はエンジン、4は駆動力配分制御装置、14はト
ランスファー、37はクラッチ、50は油圧供給機構、52は
圧力センサ、54は前輪側回転センサ、56は後輪側回転セ
ンサ、58は表示器、59は手動解除スイッチ、60はコント
ローラである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンの駆動力を前,後輪に配分するト
    ランスファー内に装着され該トランスファーの前輪側と
    後輪側との間の締結力を連続的に変更可能なクラッチを
    備え、このクラッチの締結力を車両の走行状況に応じて
    変更させるようにした四輪駆動車の駆動力配分制御装置
    において、 車両の前後輪の回転速度差を検出する前後輪回転速度差
    検出手段と、前記クラッチの伝達するトルクを検出する
    伝達トルク検出手段と、前記前後輪回転速度差検出手段
    及び前記伝達トルク検出手段の検出値に基づきクラッチ
    の発熱量を演算する発熱量演算手段と、この発熱量演算
    手段による演算結果が一定値以上になり且つその状態が
    一定時間以上継続する所定のクラッチ発熱状態か否かを
    判定する発熱状態判定手段と、この発熱状態判定手段に
    よる判定結果が所定のクラッチ発熱状態であるときに、
    前記クラッチの締結力を増大させる発熱抑制制御手段
    と、この発熱抑制制御手段が作動したときにのみ当該作
    動を表示する表示手段と、前記発熱抑制制御手段の作動
    を手動で解除する解除手段とを備えたことを特徴とする
    四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
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