JP2540208B2 - 組織接着剤 - Google Patents

組織接着剤

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JP2540208B2
JP2540208B2 JP1137316A JP13731689A JP2540208B2 JP 2540208 B2 JP2540208 B2 JP 2540208B2 JP 1137316 A JP1137316 A JP 1137316A JP 13731689 A JP13731689 A JP 13731689A JP 2540208 B2 JP2540208 B2 JP 2540208B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、フィブリノゲン含量が少なくとも0.25(25
質量%)であり、第XIII因子の含量が、第XIII因子のフ
ィブリノゲンに対する割合をフィブリノゲン1gあたりの
第XIII因子の単位数で表したとき少なくとも150単位で
ある、ヒトまたは動物の組織または器官部分を継目なし
に、あるいは継目を支持するように連結する、傷をふさ
ぎ、血を止め、傷の治癒を促進するための凍結乾燥の形
の組織接着剤に関するものである。
[従来技術と発明が解決すべき課題] この型の組織接着剤は、既に米国特許第4,362,567
号、第4,414,976号、カナダ特許第1,168,982号に記載さ
れている。これらの組織接着剤はフィブリノゲンおよび
第XIII因子の外にフィブロネクチンおよびアルブミンの
ような他のタンパク質、並びに所望により抗生物質を含
有する。
それらの作用機序はトロンビンの作用により、再構成
された組織接着剤中に存在する(可溶性)フィブリノゲ
ンが(不溶性)のフィブリンに変換され、第XIII因子が
活性化されて第XIII因子aになるという事実に基づいて
いる。後者は形成されたフィブリンを交叉結合し、組織
の接着に必須の高分子ポリマーを形成させる。必要なト
ロンビン活性は接着すべき組織自身(傷の部位)から導
かれるか、あるいはトロンビンおよびCa2+イオンを含有
する溶液の型で接着時に組織接着剤に加えてもよい。
そのような製剤は確実に出血を止め、組織接着剤の傷
または組織表面への接着能力を改良し、接着部位または
接ぎ合わされた傷の引っ張り強度を高め、該組織接着剤
は傷の治癒過程で完全に吸収されるものであり、傷の治
癒を促進する特性を有する。
組織接着剤は溶液状態では非常に安定とはいえず、長
時間にわたって持続性を有するものではないので、冷凍
保存液または凍結乾燥品の形で市場化し、利用すること
ができる。したがって、入手した市販の生産物は、適用
前に解凍するか、凍結乾燥品から再構成する必要があ
る。いずれの方法でもかなり時間が浪費される。
医師の側からは、特に外科処理を含む救急状況におい
ては、迅速に利用できることが決定的に重要である故
に、溶解時間の短縮が望まれている。組織接着剤として
用いるためにはフィブリノゲン濃度は少なくとも70mg/m
lであることが必要であり、この濃度を達成することは
しばしば困難であり、時間がかかることから、この問題
は接着剤凍結乾燥品の再構成の場合に切迫している。こ
れは、生物学的適合性という点から、例えば溶液の生理
学的塩含有量、すなわ生理学的イオン強度を越えてはな
らないという場合である[レデルら(Redl)、メディジ
ニッシュ・ウェルト(Medizinische Welt)、1985、3
6、769〜776]。
用いた出発物質(例えば、ヒト血漿)に透過性の病原
ウイルス(肝炎、HIV)が含有されている可能性がある
という危険に関し、製品の安全性を高めねばならない点
が、特に困難である:すなわち、このような理由から、
製品をウイルス不活性工程に委ねねばならず、その工程
は、好ましくは、粉末原料を湿度を調節した密封容器内
で予め定めた時間、加熱することにより行われる。しか
しながら、これは、フィブリノゲン生産物の溶解性にさ
らに悪影響を及ぼす。溶液を安定剤の存在下で加熱する
というような、他のウイルス不活化法においていてさえ
も同様である。
既述の理由から、凍結乾燥品の再構成時間の改善のた
めに、夥しい試行がなされてきた。例えば、カナダ特許
1,182,444号には、凍結乾燥医薬品の溶解性を向上する
方法および手順が記載されている。該特許文献で開示さ
れた、加熱、撹拌を連結した装置は改善を示している。
即ち、著しい再構成時間の短縮を示しているが、医師は
一層の改善を要求している。
難溶解性タンパク質はある種の添加物によって改善さ
れ得ることが知られている。即ち、EP−A−O 085 923
にはフィブリノゲンの外に尿素またはグアニジン残基を
有する物質をも含有する、凍結乾燥したフィブリノゲン
組成物が開示されている。しかしながら、そのような添
加物には繊維芽細胞の成長を阻害し、変化した、非生理
学的なフィブリン構造をもたらし、フィブリンの所望の
弾力性が欠如することになる(レデルら、前掲)。繊維
芽細胞の成長阻害、即ち、傷の治癒工程を開始する細胞
の成長阻害によって、フィブリノゲンを基盤とする組織
接着の傷治癒促進作用が失われる。形成されたフィブリ
ンの弾力性の欠如はまた、インビボでの接着の引っ張り
強度が脅かされることになる。
本発明は、上記の欠点が除去されている、従来技術に
比較して再構成時間が短縮された組織接着剤を提供する
ことを目的とするものである。
本発明においては、フィブリノゲンの外に、少なくと
も1種の生物学的に適合し得る界面活性剤[テンシド
(tenside)とも称する]、および所望により、他のタ
ンパク質ならびに添加物を含有する組織接着剤によっ
て、上記目的を達成した。これらの生物学的に適合し得
るテンシドの存在が、上記の悪影響を現すことなく、再
構成時間を実質上、短縮するということは驚くべきこと
である。
このことは、当該技術分野では一般にテンシドはフィ
ブリノゲンの作用を変性すると考えられており、フィブ
リノゲンの沈澱化剤として用いられていたことから、非
常に驚異的である[クリオカ(Kurioka)およびイノベ
(Inove)ら、「フィブリノゲンと界面活性剤との相互
作用(Interaction of Fibrinogen with Detergen
t)」、ジャーナル・オブ・バイオケミカル・アンド・
バイオフィジカル・メソッズ(J.Biochem)、77、449〜
455、1975年]。
とりわけ、実質上、凍結乾燥製品の再構成時間の短縮
をもたらす濃度でテンシドを含有するフィブリノゲンを
基礎とする組織接着剤が細胞毒性でなく、繊維芽細胞の
成長を阻害せず、生理学的フィブリンクロット(凝塊)
の機械的特性(究極的な引張強度と弾力性)および空間
的分岐構造を変化させることがないということが分か
る。様々な化学構造の4種類の全テンシド類、即ち非イ
オン性、双イオン性、陰イオン性および陽イオン性のテ
ンシドの非常に異なった化学構造を有する多くのテンシ
ドについて、このことは真実である。
本発明の、組織接着剤製品におけるテンシドの使用は
その製造工程中に、製品がウイルス不活化工程に付され
る、すべての場合を意図している。即ち、本発明は、製
品が最終的に、凍結乾燥しないで、使用用溶液の冷凍保
存物として製造される場合にも有意義である。これは、
例えば、中間段階で製品を凍結乾燥し、ウイルス不活化
のために熱処理工程に付す場合である。テンシドの混合
によって熱処理した中間製品の再溶解が容易となり、以
後の工程を迅速に行うことができる。
このように、テンシドの添加は製造工程の様々な段
階、特に、ウイルス不活化法実施の前、または後に行う
ことができる。それはまた、安定化を目的とする抗酸化
剤を含有する組織接着剤にも適する。
組織接着剤は、非イオン性、陽イオン性、陰イオン性
または双イオン性テンシドからなる群から選択される少
なくとも1種のテンシドをフィブリノゲン含有量に基づ
いて、0.0003から0.15の量(0.03〜15質量%)、好まし
くは0.001〜0.01(0.1〜1.0質量%)の量で含有するこ
とが好都合である。
本発明の組織接着剤は注射用蒸留水を用い、フィブリ
ノゲン濃度が少なくとも70mg/ml、モル浸漬透圧濃度が
最大限0.70osmolの溶液であって、注射用蒸留水でさら
に10倍希釈したとき、20℃における最大電気伝導率が3m
sとなるように電解質含有量が制限されている使用用の
溶液に再構成することができる態様が好ましい。
使用用溶液のイオン強度および/または浸透圧が非生
理学的に高い組織接着剤は細胞毒性であることが分かっ
ている。
テンシドの添加によって本発明の、凍結乾燥組織接着
剤は、その使用用溶液のイオン強度および/または浸透
圧を高めることなく再構成時間を短縮されているので、
細胞損傷はまったく認められない。
本発明の製品の許容し得る電解質含量の測定は、該製
品から得られる使用用溶液の電気伝導率(これは単純な
操作で正確に測定することができるので)を用いて行う
ことが適当である。
本発明の再構成された組織接着剤の特徴は、適用後、
ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動で測定するとトロンビンおよびCa2+イオンを
含有する溶液と混合して37℃でインキュベートしたの
ち、3〜5分でフィブリン−ガンマ鎖が完全に交叉結合
し、2時間で少なくとも60%のフィブリン−アルファ鎖
が交叉結合し得る点にある。
組織接着剤に含有させることが好ましいことが分かっ
たテンシドを以下に示す。
ポリオキシエチレン(23)−ドデシル−エーテル、ポ
リオキシエチレン(10)−ヘキサデシル−エーテル、ポ
リオキシエチレン(20)−ヘキサデシル−エーテル、オ
クチルフェノールポリエチレングリコール(30)−エー
テル、オクチルフェノールポリエチレングリコール(12
−13)−エーテル、オクチルフェノールポリエチレング
リコール(7−8)−エーテル、オクチルフェノールポ
リエチレングリコール(40)−エーテルおよびオクチル
フェノールポリエチレングリコール−エーテルホルムア
ルデヒドポリマーからなるポリエーテル−アルコール
類、ポリエチレングリコール−660−12−ヒドロキシス
テアレート、ポリオキシエチレンステアロイル−エステ
ルなどのポリエーテルエステル類、またはポリオキシエ
チレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー類。
組織接着剤にスクロース−パルミテート−ステアレー
ト等の糖エステル類、ソルビタンモノラウレート、ソル
ビタンモノオレエート等のポリアルコール無水物エステ
ル類、オクチル−β−D−グルコピラノシド等のグリコ
シド類、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジ
オール等のアルキノール類、ドデシル−ジメチル−アミ
ンオキシド等のアミノキシド類、またはヒドロキシアル
キル−アミド類などの群から選択されるテンシドを含有
させても、再構成時間を短縮し得る。
また、同様の正の効果は、ジオクチルスルホサクシネ
ート等のスルホサクシネート類、またはデスオキシコー
ル酸ナトリウム等の胆汁酸のアルカリ金属塩から選択さ
れるテンシドを含有する組織接着剤においても観察され
る。
さらに、組織接着剤はベンジルジメチル−2−ヒドロ
キシエチル−アンモニウム−クロリドまたはベンジル−
トリメチルアンモニウム−クロリド等の置換アンモニウ
ム塩、またはセチルピリジニウム−クロリド等のアルキ
ル−ピリジニウム塩からなる群から選択されるテンシド
を含有することも好ましい。これらのテンシドは陽イオ
ン性である。
双イオンの存在によっても再構成時間を短縮し得る。
本発明の組織接着剤はレシチン等のホスファチド群から
選択される1個のテンシド、あるいは、N−ドデシル−
N´N−ジメチルアンモニオ−3−プロパン−スルホネ
ート等のスルホベタイン、3−(3−(コールアミドプ
ロピル)−ジメチルアミノ−1−プロパン−スルホネー
ト等の双イオン性胆汁酸誘導体、アルキルベタイン、N
−ラウロイルサルコシン等のサルコシン、N−ラウリル
−β−イミノ−ジプロパノン酸等のN−ラウロイルサル
コシンからなる群から選択されるテンシドを含有するこ
とが好都合である。
さらに、所望により、特に、ウイルス不活化法を実施
する場合、本発明の組織接着剤には抗酸化剤を含有せし
めてよい。
さらに好都合な態様として、本発明の組織接着剤には
抗微生物活性を有する添加物をも含有させることができ
る。
本発明はまた、乾燥品あたりの含量が少なくとも0.25
(25質量%)であるフィブリノゲン、フィブリノゲン1g
あたりの残量が少なくとも150単位である第XIII因子、
総含量がフィブリノゲン含量の0.0003〜0.15(0.03〜15
質量%)である、生物学的に適合し得る少なくとも1種
のテンシド、および所望により、フィブリノゲン含量の
0.65(65質量%)までのフィブロネクチン、フィブリノ
ゲン含量の1.1(110質量%)までのアルブミンを含有す
るヒトまたは動物のタンパク質を基礎とする凍結乾燥組
成物を、ヒトまたは動物の組織または器官部分を継目な
しに、または継目を支持して連結する、傷をふさぎ、血
を止め、傷の治癒を促進するための、フィブリノゲン濃
度が少なくとも70mg/mlである、そのまま使用できる組
織接着剤溶液の調製に用いる方法を提供するものであ
る。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明す
る。
実施例1−37 −20℃に冷凍された新鮮なヒト血漿280を+2℃に
加温し、形成された定温沈澱を遠心分離し、1中にク
エン酸ナトリウム・2H2O(6.6g)、NaCl(3.4g)、グリ
シン(10.0g)、アプロチニン25,000KIUおよびヘパリン
200IUを含有するpH6.5のバッファーで処理し、再度+2
℃で遠心分離した。分離した沈澱を約50gづつに分け、
以後の処理まで−20℃で保存した。次いで各部分を解凍
し、1中にヒトアルブミン19.0g、グリシン9.0g、ク
エン酸ナトリウム・2H2O(1.0g)、アプロチニン25,000
KIUおよびヘパリン200IUを含有するpH7.9のバッファー
に種々の濃度の様々なテンシドを加えて溶かし、タンパ
ク質濃度を50g/に調節した。タンパク質含量の測定は
ケルダール法で行った。
比較溶液(対照)を調製するために、分離した沈澱の
一部をテンシドを加えないで上記のバッファーに溶かし
た。
次いで、希釈した組織接着剤溶液を滅菌ろ過し、最終
容器(ガラスビン)、これらの最終容器の一部は磁気ま
たは磁気化可能な撹拌体を具備している、に2.5mlづつ
充填した。次いで、それらを通常の方法で冷凍保存し、
凍結乾燥し、最終容器を気密的に密封し、以下の試験に
用いるまで+4℃で保存した。
製剤を一般的に特性化するために、下記の測定を行っ
た。
最終容器あたりの乾燥物質量。
総タンパク質量(ケルダール法)。
尿素存在下でのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
によるフィブリノゲン、フィブロネクチンおよびアルブ
ミンの相対含量[ファーランら(M.Furlan)、「ヒトフ
ィブリノゲンの血漿性分解IV、フラグメントY中に残存
しているサブユニット鎖の同定(Plasmic degradation
of human fibrinogen IV Identification of subunit c
hain remnants in fragment Y)」、バイオシミカ・エ
・バイオフィジカ・アクタ(Biochim.Biophys.Acta)、
400、112〜120(1975)、114頁による]、即ち、(a)
非還元試料および(b)β−メルカプトエタノールによ
って還元した試料を用い、クーマシーブルーで染色し、
濃度計で測定する[シーリッヒ(T.Seelich)およびレ
デル(H.Redl)、「テオレティッツェ・グラントラーゲ
ン・デス・フィブリンクレーバ(Theoretische Grundla
gen des Fibrinklebers)」:シンフ(K.Schimph)、フ
ィブリノゲン、フィブリンおよびフィブリンクレバー
(Fibrinogen,Fibrin und Fibrinkleber):シャタウァ
・ベルラグ(F.K.Schattauer Verlag)、スタットガー
ト−ニューヨーク(Stuttgart−New York)、1980年、1
99〜208頁]。
試料(a)ではアルブミンは、単独のタンパク質バン
ドとして、単離され、アルブミン含量(総タンパク質に
対する%として)を直接得る。試料(b)は以下の単離
バンドを示す:フィブロネクチン、フィブリノゲン−A
アルファ、Bベータおよびガンマ鎖、この場合、フィブ
リノゲン−B0ベータバンドにはアルブミンも含まれてい
ることに注意すべきである。試料(b)からはフィブロ
ネクチン含量を直接得ることができる。フィブリノゲン
含量はフィブリノゲン−Aアルファ、Bベータおよびガ
ンマバンドの合計から、試料(a)で得たアルブミン値
を引いて求めた。
このようにして求めたフィブリノゲン、フィブロネク
チンおよびアルブミンの値(総タンパク質に対する%)
と、別々に測定した総タンパク質から、最終容器1ml中
のこれら3種のタンパク質含量を算出することができ
る。
フィブリノゲン含量はUSP XVI規則、298頁記載の方
法に従い、トロンビンで凝塊可能なタンパク質としてケ
ルダール法で求めることもできる。これらの2方法の結
果は良く一致していた。
乾燥物質中のフィブリノゲン含量の決定にはUSP法で
得た値を用いた。
第XIII因子の含量は、第XIII因子を含有しないフィブ
リノゲンを基質とする下記のフィブリン交叉結合試験に
より、測定した。
第XIII因子不含の、フィブリノゲン濃度10mg/mlのフ
ィブリノゲン溶液各0.5mlを、1ml中にトロンビン60I.U
とCaCl2130myMolとを含有する様々な希釈度の試料溶液
各0.1mlと混合し、37℃でインキュベートした。2時間
インキュベートしたのち、尿素、ドデシル硫酸ナトリウ
ム(SDS)、およびベータ−メルカプトエタノールの混
合物を加えて反応を止め、タンパク質に含まれているジ
スルフィド架橋結合を還元して開裂する。フィブリンガ
ンマ鎖の交叉結合の程度は、このようにして得られた試
料をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、クー
マシーブルーで染色し、濃度測定法で測定し、第XIII因
子含量の測定に供した。[ファーランら(M.Furlan)、
ヒトフィブリノゲンの血漿性分解IV、フラグメントY中
に残存しているサブユニット鎖、Biochim,Biopys.Acta4
00、112−120(1975)、特にp114]。
標準として、プールしたクエン酸添加ヒト血漿を用い
た。血漿1mlは、定義(definitionem)あたり第XIII因
子1単位を含む。試験条件下で50%のフィブリンガンマ
鎖の交叉結合を生じる、試料および標準の希釈率を求
め、元の試料の第XIII因子含有量(X)を以下の式に基
いて計算する。
式中、VXは未知試料の希釈率、XSは標準の希釈率を表
す。
このようにして求めた第XIII因子の含有量と上記で求
めたフィブリノゲン含有量から、フィブリノゲンgあた
りの第XIII因子の単位数を算出した。
電気伝導率: 使用用の接着剤溶液を蒸留水で10倍希釈したのち、ラ
ジオメーター・コペンハーゲンのCDM−3−導電率測定
計で20℃で測定する。
浸透圧: ウエスコー(Wescor、米国の)蒸気圧浸透圧計で測定
する。
添加したテンシドの有効性および無毒性を以下の方法
で試験した。
再構成時間: 再構成時間は、凍結乾燥物質に溶媒(H2Oまたはアプ
ロチニン水溶液、3000KIU/ml)1.0mlを加えた後、37℃
で完全に溶解するのに必要な時間として、分単位で測定
した。凍結乾燥品を溶解する上で必要な凍結乾燥品と溶
媒との混合は2方法で行われた。磁気撹拌体を入れずに
ビンを手で軽く振る(方法1)方法と、磁気撹拌体を入
れたビン、即ち、撹拌と加熱を合併した装置を具備する
ビンを用いる方法である。これは誘導によって操作し得
る特殊な磁気撹拌装置であって、加熱可能なものである
(フィブリノテルム(FibrinothermR)、イムノ・ア
クチエンゲゼルシャフト・フュール・ヘミシュ−メディ
ツィニッシェ・プロデュクテ(Immuno AG)、ウィーン
(Vienna))。
表1記載の再構成時間は各々3回の測定値の平均値で
ある。
凝塊可能なタンパク質(フィブリノゲン)の含有量:
上記参照。
フィブリンアルファ鎖の交叉結合能力:測定は交叉結
合試験[シーリッヒ(T.Seelich)およびレデル(H.Red
lら)、「テオレティッツェ・グラントラーゲン・デス
・フィブリンクレーバ(Theoretische Grundlagen des
Febrinklebers)」、シャタウァ・ベルラグ(F.K.Schat
tauer Verlag)、スタットガート−ニューヨーク(Stut
tgart−New York)、199〜208頁、1980年]によって行
われた。この試験では使用用に溶解した組織接着剤を、
1mlあたり、CaCl240myMolとトロンビン15I.U.を含有す
る等容量の溶液と混合し、混合物を37℃でインキュベー
トする。フィブリンアルファ鎖の交叉結合の程度を、尿
素混合物、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびベー
タ−メルカプトエタノールを加えて反応を止め、タンパ
ク質に含有されているジスルフィド架橋結合を還元的に
開裂し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、
クーマシーブルーで染色することにより、濃度測定的に
決定した。
形成されたフィブリンの特性化: 様々な出版物で報告したように、形成されたフィブリ
ン構造の種類はすでに顕微鏡的に確認されている。生理
的条件下で形成される通常の空間的に枝分かれした構造
は、巨視的には、それ自身、白色の強靱な弾性クロット
(凝塊)(コアースクロット)として現れる。非生理的
条件下では、透き通った、脆い、いわゆる微細クロット
(ファインンクロット)を形成する[フェリー(Ferr
y)およびモリソン(Morrison)ら、ジャーナル・オブ
・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.
Soc.)、69、338〜400頁、1947年;レドルら(Redl)、
メディツィニッシェ・ヴェルト(Med.Welt)、36、769
〜776頁、1985年]。
このように、形成されたフィブリンを特性化するに
は、等容量の使用用の被験組織接着剤溶液と、トロンビ
ン−CaCl2溶液(1mlあたり、CaCl240myMolとトロンビン
15I.U.を含有)とを37℃で混合し、約10分後、形成され
たフィブリンクロットの外観と粘稠性(consistency)
(強度、弾性)とを判定する。
細胞適合性(Cytocompatibility) レデルら[Redl、メディツィニッシェ・ヴェルト(Me
d.Welt)、36、769〜776頁、1985年]による。
試験すべき組織接着剤溶液を等張性食塩水で希釈し
(1+1)、この溶液を、均一な細胞シートが形成され
るまで細胞培養で培養した生きているヒト肺繊維芽細胞
に重ねた。組織接着剤(またはそれに含有されている各
テンシド)が生きた細胞に及ぼし得る影響を光学顕微鏡
で観察した。約1時間のインキュベーションののち、細
胞を固定し、さらに正確に評定するために染色した。
別の試験で、漸増量のNaClまたはスクロースを実施例
1−37の比較製剤を構成する組織接着剤溶液に加え、こ
れらの溶液を用いて上記の細胞毒性試験を行った。これ
らの試験は、細胞毒性が現れ得る電解質含有量と浸透圧
とを見いだすことを意図したものである。
細胞毒性作用は、浸透圧0.70osm以上、および/また
は電気伝導率(上記試験方法に記載のように、注射用蒸
留水で10倍希釈した溶液の電気伝導率)3mS以上で起き
ることが分かった。
組成に関しては、実施例1−37並びに関連の対応する
実施例は、テンシド含有量が異なるか、テンシドを含有
しないかにおいてのみ異なっている。フィブリノゲン含
有量は乾燥物質の48〜51%であり、これらの僅かな相違
は、テンシド含有量の相違に起因している。
最終容器に入れた凍結乾燥品を水1.0mlで再構成する
と、フィブリノゲン濃度は80mg/mlとなった。フィブリ
ノゲンの相対含有量は全タンパク質の64%、フィブロネ
クチンのそれは4.7%、アルブミンのそれは26%と測定
された。従って質量比は、フィブロネクチンのフィブリ
ノゲンに対する値は0.07、アルブミンのフィブリノゲン
に対する値は0.41となる。
全実施例において、電気伝導率(水で10倍希釈した
後)は20℃で約1.3mSである。即ち、比較的少量のテン
シドを添加しても、見掛け上、電気伝導率は影響されな
い。
同様に、全実施例の浸透圧(濃厚な組織接着剤溶液の
浸透圧)は約0.45osmolであった。フィブリノゲン1gあ
たりの第XIII因子の割合は、全実施例で170単位であっ
た。
テンシドが凍結乾燥した組織接着剤の再構成時間に対
して予期しなかった好ましい影響を及ぼすことを表1に
示した。この表1には凝塊可能なタンパク質およびフィ
ブリン−アルファ鎖の交叉結合能力も示されている。
1−37番は異なったテンシドを含有する組織接着剤に
関する実施例であり、これらのテンシドの正確な化学的
性質は表2から得ることができる。これらは、複数の非
イオン性、双イオン性、陰イオン性および陽イオン性テ
ンシドが再構成時間の実質的な短縮に適当であることを
示している。テンシドの添加によって、凍結乾燥品は、
方法1またはIIのいずれによっても、実施例1−37の比
較例に比べて約2〜3倍早く溶解し、その溶解時間は方
法Iでは15分であり、撹拌および加熱合併法(方法II)
では7分であった。
加えたテンシドは、実際面ではフィブリノゲンの凝塊
性には影響せず、フィブリン−アルファ鎖の交叉結合能
力に僅かな影響を及ぼすにすぎない。
テンシド添加によって製剤の優れた生化学的、物理的
および生物学的性質が悪影響(負の影響)を受けること
はなかった。すべての例で、それらは細胞毒性でなく、
形成されるフィブリンクロットは白色の、所望の強い弾
性粘稠性(consistency)を有するものであった。
実施例17、21および37は様々な組み合わせのテンシド
を用いても、望ましくない副作用なしに再構成時間を短
縮することができることを示している。
実施例37は特に、陰イオン性テンシドと陽イオン性テ
ンシドとを併用しても所望の結果が得られることを示し
ている。等モル量の2つのテンシドA2およびK1を用いる
ことにより、双イオン性テンシドと同様、加えたテンシ
ドが一緒になって、同数の陽電荷および陰電荷が与えら
れる。
また、実施例31〜36は、陰イオンまたは陽イオン性テ
ンシドを単独で使用しても成功することを示すものであ
る。実施例23は、安定化の目的で抗酸化剤(自己酸化の
防止のため)をも含有する、ポリエーテルアルコール群
から選択される非イオン性テンシド(N17)を用いた例
を示すものである。
続く実施例38〜42は、フィブリノゲン製剤をウィルス
不活化工程に付した場合に、いずれも好影響が得られる
ことを示している。
実施例38および38a 希釈溶液1mlあたり第XIII因子10単位を加えて実施例
1〜37と同様にして、組織接着剤を調製した。次いで、
得られた溶液全体を冷凍保存し、凍結乾燥して水分含有
量0.005(0.5質量%)で窒素雰囲気下、60℃で30時間加
熱した。
次いで、加熱した凍結乾燥品を2部分に分け、1方を
水(比較)に、他方をテンシドPluronicF108(表2参
照)の0.01重量%水溶液に、タンパク質濃度が50g/と
なるように溶かした。両方の溶液を滅菌ろ過し、撹拌体
を有する、または有さない最終容器(ガラスビン)に2.
5mlづつ詰め、冷凍保存し、凍結乾燥した。
1.0mlの水(実施例38)またはアプロチニン水溶液
(実施例38a)にそれぞれ溶かして再構成し、フィブリ
ノゲン約80mg/mlの使用用組織接着剤溶液を得た。要し
た再構成時間は、本発明のテンシド含有製剤について、
方法I(手動撹拌)では7分間、方法II(加熱および撹
拌を合併した装置)では3〜4分間であった。
テンシド不含の比較試料については、対応する時間は
それぞれ、20分間および9分間であった。第XIII因子の
フィブリノゲンに対する割合は1gあたり約420単位と決
定された。
これ以外の点では、2製剤は互いに注目される相違を
有さず、その他の性質は実施例1から37までの組織接着
剤と対応していた。
実施例39 溶液1あたり第XIII因子15,000単位を加える外は実
施例1〜37記載のごとくにしてテンシド不含の希釈した
組織接着剤(パートI)およびTriton WR 1339(表2
参照)を濃度0.1g/で含有する希釈組織接着剤(表2
参照)を調製した。
次いで、両溶液をそのまま凍結乾燥し、水分含有量を
0.075(7.5重量%)に調節し、窒素雰囲気下、60℃で10
時間加熱した。次いで、両パートをタンパク質濃度が50
g/になるように溶かした。パートIの溶解は時間が長
くかかる上、不完全であった。これに対し、パートIIは
容易かつ完全に溶けた。両パートとも、まず透明になる
までろ過した後、滅菌ろ過し、5mlづつ、撹拌体を有す
る、または有しない最終容器(ガラスビン)に入れ、冷
凍保存し、常法通り凍結乾燥した。
水2.0mlを加えて再構成し、フィブリノゲン80mg/mlの
使用用組織接着剤溶液を得た。要した再構成時間は、本
発明のテンシド含有製剤について、方法I(手動撹拌)
では8分間、方法II(加熱および撹拌を合併した装置)
では4分間であった。
テンシド不含の比較試料については、対応する時間は
それぞれ、25分間および12分間であった。第XIII因子の
フィブリノゲンに対する割合は約520U/gと決定された。
これらの2製剤の他の性質は前記の実施例のものに対応
していた。
実施例40 テンシドおよび抗生物質を含有する熱処理し
た組織接着剤 希釈した組織接着剤溶液1mlあたり第XIII因子20単位
を加え、凍結乾燥品を、予めNaOHでpH7.3に調節したゲ
ンタマイシン18g/水溶液に溶かす外は先の実施例39に
記載のごとくにしてテンシド不含または含有の熱処理し
た凍結乾燥組織接着剤を調製した。
次いで、溶液を滅菌ろ過し、12.5mlづつ、撹拌体を有
する最終容器に入れて凍結乾燥した。
水またはアプロチニン水溶液5.0mlで再構成し、フィ
ブリノゲン約80mg/ml、ゲンタマイシン約45mg/mlを含有
する組織接着剤溶液を得た。
凍結乾燥製剤のフィブリノゲン含有量は38質量%、第
XIII因子のフィブリノゲンに対する割合は約750U/gと決
定された。電気伝導率(水で10倍希釈した後)は2.2m
S、濃縮した使用用溶液の浸透圧は0.61osmであった。
本発明のテンシド含有製剤の再構成に要した時間(方
法II)は4分間であり、抗生物質含有の比較製剤のそれ
は25分間であった。
抗生物質をそのまま含有する凍結乾燥組織接着剤の溶
解性は、テンシドおよび抗生物質不含の比較対照(実施
例39)との比較によって示されるように、抗生物質をそ
のまま含有する凍結乾燥組織接着剤の溶解性は低下する
ことから、この場合には製剤にテンシドを含有させるこ
とが特に有利である。この望ましくない抗生物質の影響
はテンシドを含有することによって完全に償われる。
実施例41 非イオン性テンシドを添加し、濁り度以上に
加熱し、相分離することによる親油性成分の除去 成分の除去 希釈した組織接着剤溶液を実施例1〜37記載の比較例
のごとくにして製造した。溶液1mlあたり第XIII因子15
単位を加え、得られた溶液を約15℃に維持し、1あた
りプルロニック(Pluronic L61、表2参照)10gを含有
する5容量%の溶液を撹拌下に加えた。次いで、溶液を
撹拌下、徐々に約30℃まで加温した。生じたエマルジョ
ンを強力に遠心(約30,000Xg、30分間、30℃)すると2
相に分離した。
この処置の後、テンシドが少ない(=主な量)下層の
相をさらに処理した。これにより、溶解困難な親油性成
分が希釈組織接着剤溶液から除去された。
記載の条件下、テンシドの少ない相に残存するテンシ
ドの量は約0.02g/であることが分かった。
このようにして得られた精製希釈組織接着剤溶液をそ
のまま凍結乾燥し、水分含有量を0.075(7.5質量%)に
調節し、窒素雰囲気下、60℃で10時間加熱した。次い
で、凍結乾燥品をタンパク質濃度が50g/になるように
溶かし、まず透明になるまでろ過した後、滅菌ろ過し、
12.5mlづつ、磁気撹拌体を有する、または有しない最終
容器(ガラスビン)に入れ、冷凍して常法通り凍結乾燥
した。
溶媒5.0ml(水またはアプロチニン水溶液)を加えて
再構成し、フィブリノゲン80mg/mlの使用用組織接着剤
溶液を得た。
要した再構成時間は、方法I(手動撹拌)では13分
間、方法II(加熱および撹拌を合併した装置)では7分
間であった(比較試料については、対応する時間はそれ
ぞれ、25分間および12分間であった)。
第XIII因子のフィブリノゲンに対する割合は約510U/g
と決定された。製剤の他の性質は前記の実施例1〜39の
ものに対応していた。
実施例42 熱処理した凍結乾燥品を溶解した後、希釈した組織接
着剤溶液1あたり0.1gのTriton WR−1339(表2参
照)を加える外は実施例41記載の方法を繰り返した。こ
の方法により、実施例41と比較して(表1)やや好結果
を得た。
以下の実施例43に、実際的には水に不溶性であって、
エマルジョンとして添加されたテンシドによっても希釈
組織接着剤溶液を精製する(親油性成分の除去)ことが
できることを示す。次いで水溶性テンシドを加えると、
非常に良い結果が得られる。
実施例43 希釈組織接着剤溶液にプルロニック溶液(PluronicL6
1、表2参照)の代わりに1重量%の水中スパン80懸濁
液(Span80)(表2参照)を5容量%加え、混合物を室
温で30分間撹拌する外は実施例42記載の方法を踏襲し
た。テンシド、スパン80(表2参照)は殆ど水に不溶性
である。
20℃で遠心して相を分離した後、希釈組織接着剤溶液
1あたり0.1gのTriton WR−1339(表2参照)を加え
た。これを実施例41および42記載のごとくさらに処理し
た。要した再構成時間は、方法Iでは5.5分間、方法II
では3分間であった(比較試料:それぞれ、13分間およ
び7分間)。
以下の実施例44〜47は、凍結乾燥した組織接着剤製剤
が、上記した実施例記載の方法以外の方法で製造された
ものであっても、また、そのタンパク質組成、とりわけ
フィブロネクチンのフィブリノゲンに対する割合および
アルブミンのフィブリノゲンに対する割合が異なってい
ても、該製剤の再構成時間にテンシドが好影響を及ぼす
ことを示すものである。
従来から既知の、フィブリノゲンおよび第XIII因子を
基礎とする連結乾燥組織接着剤は、アルブミンがそのよ
うな製剤の溶解性を実質上改良することから、すべてア
ルブミンを含有していた。本発明に従い、生物学的に適
合し得るテンシドを少量加えることで、下記実施例44に
記載のごとく、アルブミンを含有しないにもかかわらず
非常に容易に再構成される製剤を得ることができる。
実施例44 プールした、クエン酸添加ヒト血漿10に撹拌下、室
温で粉末化グリシン1500gを加え、pHを7.35に調節し、
室温でさらに1時間混合物を撹拌した。析出した沈澱を
遠心分離し、1中にNaCl9.0gとクエン酸ナトリウム二
水和物2.9gを含有する溶液1.5に溶かした。
グリシン225gを加え、上記と同様にしてグリシンによ
る沈澱を繰り返した。沈澱を遠心分離した後、後者を半
量の水と混合し、1中にNaCl3.6gとクエン酸ナトリウ
ム・二水和物1.2gを含有するpH7.35の溶液に対して、4
℃で透析し、次いで、37℃に加温して溶液化し、同溶液
でタンパク質濃度を40g/に調節した。
テンシド不含の比較試料を調製するために、溶液の一
部を滅菌ろ過し、2.5mlづつ最終容器に入れ、前記の実
施例記載のごとくに冷凍保存し、凍結乾燥した。
溶液の別の部分には濃度0.1mg/mlでテンシドWR1339
(表2参照)を加え、得られた溶液を滅菌ろ過し、容器
内で凍結乾燥した。
このようにして得られた製品はフィブリノゲン含有量
が85重量%であって、実際上、アルブミンおよびフィブ
ロネクチンを含有していなかった。第XIII因子のフィブ
リノゲンに対する割合は175単位/gであった。
溶媒1.0ml(水またはアプロチニン溶液)で再構成
し、フィブリノゲン含有量が約95mg/mlである使用用の
組織接着剤溶液を得た。
電気伝導率(水で10倍希釈した液)は1.8mS、使用用
の濃縮液の浸透圧は0.35osmであった。
要した再構成時間(方法II)はテンシド不含の比較製
品に関しては約35分間であったが、本発明のテンシド含
有製品に関しては3.5分間にすぎなかった。
この実施例は、そのままでは極めて溶解が困難な凍結
乾燥品に、本発明に従って生物学的に適合し得るテンシ
ドを添加すると、溶解性が大きく予測しない程に改善さ
れるということを示すものである。従って、限られた量
しか得ることができない、かなり高価なヒトアルブミン
を可溶化剤として用いずに済ますことが初めて可能とな
ったのである。
実施例45 実施例1〜43で得たヒト血漿低温沈澱を、1中にNa
Cl9.0g、クエン酸ナトリウム・二水和物2.9gおよびアプ
ロチニン25,000KIUを含有する溶液2.0に溶かし、37℃
に加温した。次いで、粉砕グリシン165gを撹拌下、徐々
に加え、20℃に冷却しながら、溶液をさらに1時間撹拌
した。析出した沈澱を遠心分離し、1中にNaCl1.2g、
アプロチニン25,000KIUおよびクエン酸ナトリウム・二
水和物2.4gを含有するpH7.35のバッファー溶液16倍容量
で0〜2℃において洗浄し、再度、0℃〜2℃で遠心分
離した。次いで、沈澱を1あたりグリシン9.0gをも含
有する上記バッファー溶液に溶かし、タンパク質濃度を
30mg/mlに調節した。
次いで、この溶液に、1mlあたり20重量%のヒトアル
ブミン溶液5容量%、精製凍結乾燥フィブロネクチン15
mgおよび第XIII因子5単位を加えた。
テンシド不含の比較試料を調製するために、溶液の一
部を滅菌ろ過し、2.6mlづつ最終容器に入れ、前記の実
施例記載のごとくに冷凍保存し、凍結乾燥した。
溶液の別の部分には濃度0.15mg/mlでテンシドTriton
WR1339(表2参照)を加え、得られた溶液を滅菌ろ過
し、容器内で凍結乾燥した。
このようにして得られた製品は以下の組成を有してい
た。
フィブリノゲン:乾燥物質について、41質量%。
第XIII因子のフィブリノゲンに対する割合:340単位/
g。
フィブリノゲンに対するフィブロネクチンの質量比
率:0.58。
フィブリノゲンに対するアルブミンの質量比率:0.3
5。
溶媒1.0ml(水またはアプロチニン溶液)で再構成
し、フィブリノゲン含有量が約72mg/mlである使用用の
組織接着剤溶液を得た。
要した再構成時間(方法II)はテンシド不含の比較製
品に関しては15分間であったが、本発明のテンシド含有
製品に関しては4分間にすぎなかった。
電気伝導率(さらに水で10倍希釈した後)は1.3mS、
濃厚な使用用溶液の浸透圧は0.45osmであった。
この実施例は、フィブリノゲンと同じく溶解困難な血
漿タンパクに属するフィブロネクリンを高含量で含む、
溶解困難な凍結乾燥組織接着剤製品の再構成時間に対し
てテンシドが好影響を及ぼすことを示すものである。フ
ィブロネクチンを含有することは、接着剤の組織への接
着能力および傷に対する治癒促進性を増大する。
実施例46 実施例45の方法に従ってフィブリノゲン含有量が30mg
/mlである希釈組織接着剤溶液を調製した。
次いで、1mlあたり20重量%のヒトアルブミン溶液13
容量%、精製凍結乾燥フィブロネクチン3mg、および第X
III因子5単位を加えた。テンシド不含の比較試料を調
製するために、溶液の一部を滅菌ろ過し、14.0mlづつ最
終容器に入れ、前記の実施例記載のごとくに冷凍保存
し、凍結乾燥した。
溶液の別の部分には濃度0.1mg/mlでテンシドWR1339
(表2参照)を加え、得られた溶液を減菌ろ過し、容器
内で凍結乾燥した。
このようにして得られた製品は以下の組成を有してい
た。
フィブリノゲン:乾燥物質について、40質量%。
第XIII因子のフィブリノゲンに対する割合:350単位/
g。
フィブリノゲンに対するフィブロネクチンの質量比
率:0.13。
フィブリノゲンに対するアルブミンの質量比率:0.9
0。
溶媒5.0mlで再構成し、フィブリノゲン含有量が約72m
g/mlである使用用の組織接着剤溶液を得た。
要した再構成時間(方法II)はテンシド不含の比較製
品に関しては12分間であったが、本発明のテンシド含有
製品に関しては4分間にすぎなかった。
この実施例は、特に総タンパク質量(149mg/ml)およ
びアルブミンのフィブリノゲンに対する質量比が高い連
結乾燥組織接着剤製品の再構成時間にテンシドが好影響
を及ぼすことを示すものである。
アルブミン含有は製品の安定化、特に製品がウイルス
不活化処理(例えば熱処理)に付される場合に安定化作
用を果す。
実施例47 プールした、クエン酸添加ヒト血漿をアプロチニン10
0,000KIUと混合し、次いで、室温において、飽和硫酸ア
ンモニウム溶液760mlを加え、pHを7.0に調節し、混合物
を4℃で一夜撹拌した。
形成された沈澱を遠心分離し、1中にNaCl18.0g、
クエン酸ナトリウム・二水和物14.7gおよびアプロチニ
ン25,000KIUを含有するPH7.4のバッファー溶液1.0に
溶かした。
遠心して少量の不溶性物質を除去し、同様の方法で硫
酸アンモニウムによる沈澱を繰り返した。
析出した沈澱を遠心分離し、1中にNaCl3.6gとクエ
ン酸ナトリウム・二水和物1.2gを含有するpH7.35のバッ
ファー溶液に対して4℃で透折し、次いで、37℃に加温
して溶液化し、同じ溶液でタンパク質濃度を40mg/mlに
調節し、20重量%のヒトアルブミン3容量%と第XIII因
子4単位/mlを加えた。テンシド不含の比較試料を調製
するために、溶液の一部を滅菌ろ過し、5.0mlづつ最終
容器に入れ、前記の実施例記載のごとくに冷凍保存し、
凍結乾燥した。
溶液の別の部分には濃度0.12g/lでテンシドSolutol H
S 15(表2参照)を加え、得られた溶液を同様にして処
理した。
溶媒2.0ml(水またはアプロチニン溶液)で再構成
し、フィブリノゲン含有量が84mg/mlである使用用の組
織接着剤溶液を得た。
要した再構成時間(方法II)はテンシド不含の比較製
品に関しては約25分間であったが、本発明のテンシド含
有製品に関しては5分間にすぎなかった。
なお、得られた製品は以下の組成および性質を有して
いた。
フィブリノゲン:乾燥物質について、71質量%。
第XIII因子のフィブリノゲンに対する割合:265単位/
g。
フィブリノゲンに対するフィブロネクチンの質量比
率:0.095。
フィブリノゲンに対するアルブミンの質量比率:0.1
8。
電気伝導率(さらに水で10倍希釈した後):2.0mS。
使用用の濃縮液の浸透圧:0.36osmであった。
この実施例は、改変された製造方法によって得られ
た、アルブミン含有量の低い製品(このようにして得ら
れた製品はそのままではかなり溶解困難である)に、本
発明により生物学的に適合し得るテンシドを加えると、
実質上、溶解性が改良されることを示すものである。
実施例1〜47記載の本発明の製品はすべて細胞毒性を
有さず、所望の強靱で弾性のある粘稠性を有する白色の
フィブリンクロットを形成することが分かった。
これらの製品(並びに関連の比較製品)の最も基本的
な性質を表1に列記する。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィブリノゲン含量が少なくとも0.25(25
    質量%)であり、第XIII因子の含量が、第XIII因子のフ
    ィブリノゲンに対する割合をフィブリノゲン1gあたりの
    第XIII因子の単位数で表したとき少なくとも150単位で
    ある、ヒトまたは動物の組織または器官部分を継目なし
    に、あるいは継目を支持するように連結する、傷をふさ
    ぎ、血を止め、傷の治癒を促進するための連結乾燥の形
    の組織接着剤において、フィブリノゲンの外に、少なく
    とも1種の生物学的に適合性ある界面活性剤と、所望に
    より他のタンパク質類、並びにアジュバントまたは添加
    剤を含有することを特徴とする組織接着剤。
  2. 【請求項2】非イオン性、陽イオン性、陰イオン性およ
    び双イオン性界面活性剤からなる群から選択される少な
    くとも1種の界面活性剤をフィブリノゲン含量に基づい
    て、0.0003から0.15の量(0.03〜15質量%)含有する請
    求項1記載の接着剤。
  3. 【請求項3】該界面活性剤が0.001〜0.01(0.1〜1.0質
    量%)の量で存在する請求項2記載の接着剤。
  4. 【請求項4】該組織接着剤が、注射用蒸留水を加えてフ
    ィブリノゲン濃度が少なくとも70mg/mlの、最大モル浸
    透圧濃度0.70osmolの溶液であって、注射用蒸留水でさ
    らに10倍希釈した場合、20℃における最大電気伝導率が
    3msとなるよう、電解質濃度が制限された、そのまま使
    用し得る溶液に再構成し得るものである請求項1記載の
    組織接着剤。
  5. 【請求項5】ラウリル硫酸ナトリウム−(SDS)−ポリ
    アクリルアミドゲル電気泳動で測定した場合、トロンビ
    ンおよびCa2+イオンを含有する溶液と混合して37℃でイ
    ンキュベートしたのち3〜5分後にフィブリン−ガンマ
    鎖が完全に交叉結合し、2時間後に少なくとも60%のフ
    ィブリン−アルファ鎖が交叉結合し得るものである請求
    項4記載の再構成型の組織接着剤。
  6. 【請求項6】ポリオキシエチレン(23)−ドデシル−エ
    ーテル、ポリオキシエチレン(10)−ヘキサデシル−エ
    ーテル、ポリオキシエチレン(20)−ヘキサデシル−エ
    ーテル、オクチルフェノールポリエチレングリコール
    (30)−エーテル、オクチルフェノールポリエチレング
    リコール(12−13)−エーテル、オクチルフェノールポ
    リエチレングリコール(7−8)−エーテル、オクチル
    フェノールポリエチレングリコール(40)−エーテルお
    よびオクチルフェノールポリエチレングリコール−エー
    テル−ホルムアルデヒドポリマーからなるポリエーテル
    −アルコール類、ポリエチレンングリコール−660−12
    −ヒドロキシステアレート、ポリオキシエチレンステア
    ロイル−エステルなどのポリエーテルエステル類、また
    はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロッ
    クポリマー類から選択される界面活性剤を含有する請求
    項2記載の組織接着剤。
  7. 【請求項7】スクロース−パルミテート−ステアレート
    等の糖エステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビ
    タンモノオレエート等のポリアルコール無水物エステル
    類、オクチル−β−D−グルコピラノシド等のグリコシ
    ド類、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオ
    ール等のアルキノール類、ドセシル−ジメチル−アミン
    オキシド等のアミン−オキシド類、またはヒドロキシア
    ルキル−アミド類などの群から選択される界面活性剤を
    含有する請求項2記載の組織接着剤。
  8. 【請求項8】ジオクチルースルホサクシネート等のスル
    ホサクシネート類、またはデスオキシコール酸ナトリウ
    ム等の胆汁酸のアルカリ金属塩から選択される界面活性
    剤を含有する請求項2記載の組織接着剤。
  9. 【請求項9】ベンジルジメチル−2−ヒドロキシエチル
    −アンモニウム−クロリドまたはベンジル−トリメチル
    アンモニウム−クロリド等の置換アンモニウム塩、また
    はセチルピリジニウム−クロリド等のアルキル−ピリジ
    ニウム塩からなる群から選択される界面活性剤を含有す
    る請求項2記載の組織接着剤。
  10. 【請求項10】レシチン等のホスファチド群から選択さ
    れる1個の界面活性剤、あるいは、N−ドデシル−N´
    N−ジメチルアンモニオ−3−プロパン−スルホネート
    等のスルホベタイン、3−(3−(コールアミドプロピ
    ル)−ジメチルアミノ−1−プロパン−スルホネート等
    の双イオン性胆汁酸誘導体、アルキルベタイン、N−ラ
    ウロイルサルコシン等のサルコシン、N−ラウリル−β
    −イミノ−ジプロパン酸等のイミノ−ジプロパン酸から
    なる群から選択される少なくとも1個の界面活性剤を含
    有する請求項2記載の組織接着剤。
  11. 【請求項11】さらに、抗酸化剤をも含有する請求項1
    記載の組織接着剤。
  12. 【請求項12】さらに、抗微生物活性を有する添加物を
    も含有する請求項1記載の組織接着剤。
  13. 【請求項13】乾燥品あたりのフィブリノゲンの含量が
    少なくとも0.25(25質量%)であり、第XIII因子の含量
    がフィブリノゲン1gあたり少なくとも150単位であり、
    生物学的に適合し得る少なくとも1つの界面活性剤を含
    有し、界面活性剤の総含量がフィブリノゲン含量の0.00
    03〜0.15(0.03〜15質量%)の範囲であって、所望によ
    り、フィブリノゲン含量の0.65(65質量%)までのフィ
    ブロネクチン、及びフィブリノゲン含量の1.1(110質量
    %)までのアルブミンをヒトまたは動物のタンパク質と
    一緒に含有し、ヒトまたは動物の組織または器官部分を
    継目なしに、または継目を支持して連結する、傷をふさ
    ぎ、血を止め、傷の治癒を促進するためのフィブリノゲ
    ン濃度が少なくとも70mg/mlである組織接着剤溶液を調
    製するために用いられる請求項1記載の組織接着剤。
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