JP2528697B2 - ピアノの鍵盤高さ調整法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明はピアノの鍵盤ならし、即ち鍵の静止状態にお
ける鍵先端上面の高さ調整を容易にした調整法に関す
る。

［従来の技術］ ピアノの鍵盤は打鍵の力をアクションへ伝達する働き
を持ち、アップライトピアノにおける鍵盤を一例として
円盤構造を以下に説明する。

第１図はピアノの棚板（ｂ）上に筬中（1b）を支点と
して鍵手前上部を押圧すれば、キャプスタンボタン
（６）が植設された鍵後端部が上方へ上昇し、図示しな
いアクションを駆動するための鍵盤（ａ）が揺動自在に
載置されている。第２図は鍵盤（ａ）の詳細構造を示
し、筬前（1a）と筬中（1b）が取り付けられた筬（１）
があり、第３図に示すように筬中（1b）にはバランスピ
ン（２）が、筬前（1a）にはフロントピン（３）が垂直
に植設してあり、このバランスピン（２）とフロントピ
ン（３）が嵌合挿通する孔を穿設した白鍵（ｃ）および
黒鍵（ｄ）を上よりバランスピン（２）とフロントピン
（３）に挿通して設置する。バランスピン（２）は各鍵
（ｃ）（ｄ）の支点となり、フロントピン（３）は各鍵
（ｃ）（ｄ）の手前先端の横振れを防止すると共に隣接
する鍵との間隔を一定に保持する。また、バランスピン
（２）及びフロントピン（３）には鍵（ｃ）（ｄ）の下
面に夫々パンチング紙とパンチンググロスが緩衝用材と
して挿入され、鍵（ｃ）（ｄ）と筬前（1a）及び筬中
（1b）との動作時に発生する雑音を防止している。そし
て鍵（ｃ）（ｄ）の手前先端を押圧することにより、バ
ランスピン（２）を支点として回動し、後端のキャプス
タンボタン（６）でアクション機構を作動させ、ハンマ
ーで弦を打弦して発音する。鍵（ｃ）（ｄ）が押されて
いない時は鍵（ｃ）（ｄ）の後端下面は筬後（４）上の
鍵盤枕（５）上に静止支持されている。

［発明が解決しようとする課題］ 前述した鍵盤構造において、各鍵（ｃ）（ｄ）の手前
上端は静止状態では各々の高さは一定であり、かつ全鍵
の手前上端は凹凸のない一直線になることが要求され
る。しかし、筬中（1b）、筬後（４）及び鍵（ｃ）
（ｄ）はブナ、スプルース等の木材を使用しているた
め、反りや加工高さのばらつき、あるいはパンチング紙
とパンチングクロスの厚さのばらつきによって、通常は
鍵盤先端上面は一直線にはならないため、両端（最低音
部と最高音部）の白鍵または黒鍵の先端上面の鍵盤高さ
が所定の高さとなるようにバランスピン（２）にパンチ
ング紙及びパンチングクロスを挿入して調整した後、白
鍵または黒鍵上に長尺な直線定規を載置し、各鍵毎に上
記バランスピン（２）に別途パンチング紙を挿入する
等、様々な調整作業を必要としていた。

またこれらの調整作業は筬（１）に組込んだ鍵盤
（ａ）を棚板（ｂ）上に載置・固定した状態で行われる
ため、鍵盤（ａ）単体での調整て作業ができなかった。

［問題を解決するための手段］ この発明は上記の欠点を無くした鍵盤高さ調整方法を
提供するもので、所要数の鍵（ｃ）（ｄ）を載置した筬
（１）を定盤（７）上に固定した後、所望高さを有する
長尺の鍵盤高さ決めレール（８）を前記鍵（ｃ）（ｄ）
の先端上面に載置すると共に定盤（７）に固定し、長尺
な鍵盤押えレール（９）によりバランスピン（２）後方
を押圧して前記鍵盤高さ決めレール（８）に鍵（ｃ）
（ｄ）の先端上面を当接させて、該鍵（ｃ）（ｄ）後端
下面を鍵盤枕（５）高さになるよう平滑に削り加工を施
したことにより、ピアノの鍵盤高さの調整作業を容易に
する。

［実施例］ 以下に本発明を第５図を参照して説明する。

鍵（ｃ）（ｄ）の支点となるバランスピン（２）を植
設した筬中（1b）と、フロントピン（３）を植設した筬
前（1a）とを固着した筬（１）を、この筬（１）の反り
が無くなるように別に設けた金属等からなる平坦面を有
する定盤（７）上に吸着、固定し、各バランスピン
（２）及びフロントピン（３）に鍵（ｃ）（ｄ）を挿通
して全て並べる。

次いで、予め筬（１）下面より白鍵（ｃ）及び黒鍵
（ｄ）の上面までの所望高さに設定された逆Ｌ字形の接
触面をなし、前鍵盤幅を有する長尺な鍵盤高さ決めレー
ル（８）を上記白鍵（ｃ）及び黒鍵（ｄ）の先端上面に
セットして定盤（７）に載置・固定する。

次に、所望鍵盤幅を有し、各鍵（ｃ）（ｄ）と接触す
る部分に硬質フェルト等からなるパットを取り付けた鍵
盤押えレール（９）により、全鍵盤（ａ）を上方より押
圧し、各鍵（ｃ）（ｄ）の先端上面が前記鍵盤高さ決め
レール（８）に接触させ、筬（１）下面より白鍵（ｃ）
及び黒鍵（ｄ）の上面までの高さを一定になるようにセ
ツトした後、全鍵盤（ａ）の後端部下面をバーチカルカ
ッターあるいはサンダー等の切削工具（10）により鍵盤
枕（５）高さになるように１〜2mm削り落として水平面
に全て揃える。

このように鍵盤（ａ）後端下面に切削加工を施した筬
（１）を前記定盤（７）より取り外し、ピアノ本体の棚
板（ｂ）に取着した筬後（４）の鍵盤枕（５）に各鍵
（ｃ）（ｄ）を載置すると共に、筬（１）を棚板（ｂ）
に載置・締結すれば全ての白鍵（ｃ）及び黒鍵（ｄ）の
先端上面は棚板（ｂ）より一定高さに設定される。

［効果］ 以上に説明したようにこの発明によれば、別体の定盤
上で所定高さに鍵盤上面を設定して鍵後端下面を平滑に
削り落とすようにしたので、筬を棚板上に固定して鍵を
鍵盤枕上に載置するのみで全ての白鍵及び黒鍵の先端上
面は一定高さに設定され、従来のような各鍵や筬の反
り、筬中高さや各パンチング紙及びパンチンググロス厚
のばらつきによる鍵高さの不揃いが無くなり、調整作業
も容易となり、しかもこの調整作業を別の作業工程で行
うことができるため、従来の棚板上面に筬を載置・締結
した後でなければ鍵盤高さ調整が行えないという工程ロ
スを無くすことができる利点を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図はアップライトピアノに鍵盤を取り付けた状態を
示す側面図、第２図は筬に鍵盤を載置した斜視図、第３
図は筬及び筬後の組立状態を示す斜視図、第４図は筬に
鍵盤を載置した状態を示す側断面図、第５図は本発明の
実施例を示す側面図である。 ａ……鍵盤、ｂ……棚板 ｃ……白鍵、ｄ……黒鍵 １……筬、1a……筬前 1b……筬中、２……バランスピン 2a……バランスパンチング紙、2b……バランスパンチン
グクロス ３……フロントピン、3a……フロントパンチング紙 3b……フロントパンチングクロス、４……筬後 ５……鍵盤枕、６……キャプスタンボタン ７……定盤、８……鍵盤高さ決めレール ９……鍵盤押えレール、10……切削工具

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】所要数の鍵（ｃ）（ｄ）を載置した筬
   （１）を定盤（７）上に固定した後、所要高さを有する
   長尺の鍵盤高さ決めレール（８）を前記鍵（ｃ）（ｄ）
   の先端上面に載置すると共に定盤（７）に固定し、長尺
   な鍵盤押えレール（９）によりバランスピン（２）後方
   を押圧して前記鍵盤高さ決めレール（８）に鍵（ｃ）
   （ｄ）の先端上面を当接させて、該鍵（ｃ）（ｄ）後端
   下面を鍵盤枕（５）高さになるよう平滑に削り加工を施
   したことを特徴とする鍵盤高さ調整法。