JP2526172B2 - 薄板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接に用いるガスシ―ルドア―ク溶接用ワイヤ - Google Patents

薄板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接に用いるガスシ―ルドア―ク溶接用ワイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は薄板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接に用いるガス
シールドアーク溶接用ワイヤに係り、なかでも、亜鉛メ
ッキが施された亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接をガスシール
ドアーク溶接で実施する際に、ピット、ブローホールな
どの溶接欠陥を低減でき、また、発生させることなく、
ビード外観を良好にできる薄板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶
接に用いるガスシールドアーク溶接用ワイヤに関する。
従来の技術 鋼板の防錆性を向上させるため熱延あるいは冷延鋼板
の表面に亜鉛メッキを施した亜鉛メッキ鋼板は、屋根板
をはじめ建築材料、電気機器に多く使用されている。近
年では、自動車車体の耐蝕性向上のために、亜鉛メッキ
鋼板が多く使用されるようになり、薄板構造材として、
アーク溶接で接合される機会が多くなっている。亜鉛メ
ッキ鋼板をアーク溶接する場合、亜鉛の沸点(906℃)
が鋼板の融点より低いため、とくに薄板鋼板の溶接が多
く適用される重ね隅肉溶接では、溶接熱影響部から発生
する亜鉛蒸気が溶融池に噴出し、これが溶接金属の凝固
過程で逃げきれずに溶接金属中に残存することによって
ブローホールが形成され、この亜鉛ガスが溶接ビード表
面まで噴出してピットが形成され、これらの溶接欠陥が
多発する傾向がある。これらの欠陥は溶接接合強度の低
下をもたらすだけでなく、開孔したピットは後処理の塗
装での美観を損ない好ましくない。これを防止するため
に、亜鉛メッキ鋼板表面にブローホール防止材を塗布し
たり、鋼板表面の亜鉛メッキ層を機械的に研削除去若し
くはガス炎で燃焼させるなどの鋼板表面の前処理による
方法や、イルミナイト系などの被覆アーク溶接棒を用い
てアーク溶接する方法などがある。
しかし、ブローホール防止剤を塗布する方法は溶接前
処理だけでなく更に塗装前に洗浄工程が必要になるなど
余分な工程を必要である。亜鉛メッキ層を研削などする
方法は溶接能率の低下や熱による鋼板の歪みの問題など
がある。
また、イルミナイト系などの被覆アーク溶接棒を用い
て防止する方法としては、特開昭63−183794号公報に、
添加したBiにより、溶融池の粘性を高めて、亜鉛蒸気の
溶融池中への侵入を防止する方法、特開平1−202394号
公報には、Ni添加、特開平2−20690号公報には、高C
ワイヤ、特開平2−59195号公報には、Nb、Vの添加ワ
イヤが示されている。
しかし、はじめのBi添加は、高速溶接を行なった場合
や亜鉛の目付け量が多く噴出するガス量が多くなった場
合には、ブローホールの防止効果が低下し、併せて、発
生するピットも大きくなる。次の高Cワイヤは溶融池で
のCO反応によるスパッタの発生が増加し溶接ビードの外
観が劣化するとともに溶接金属が硬化して好ましくな
い。次のNi、Nb、Vの添加は高価なNi、Nb、Vを多量に
添加するために非常に高価なワイヤとなるだけでなく、
溶接金属が著しく硬化して好ましくない。
また、特開昭63−194891号公報には、溶接金属の融点
を1340℃以上になるよう、調整した被覆アーク溶接用ワ
イヤが示されている。
しかしながら、合金鋼のように多元成分系を示す溶接
金属では、液相線温度と固相線温度とがへだたり、融点
を明確に定義できないばかりか、求められない。仮り
に、溶接金属を成す合金の一部が溶け出す固相線温度を
融点と見ても、同号証の各実施例に記載されるワイヤの
融点は1343〜1368℃であって、合金鋼としても非常に低
い融点である。従って、この融点は、実施例に記載され
たワイヤ合金成分はそれ以外にも多量の合金成分類が添
加されている場合の融点である。
このところから、実施と同等の融点を得るために、実
施例に示す成分組成以外に多量のNi、Crを添加したワイ
ヤを作成し確認したところ、ブローホール、ピットの発
生は少なかったものの、高価な合金を2.5%以上も添加
しなければならず、軟鋼の溶接ワイヤとしては適さない
ものであった。また、融点が一般的な軟鋼および低合金
鋼の融点(固相線温度)である1440℃以上の場合には、
全く効果が認められなかった。
発明が解決しようとする課題 本発明は上記欠点の解決を目的とし、具体的には、亜
鉛メッキ鋼板をガスシールドアーク溶接する際に、ピッ
ト、ブローホールなどの溶接欠陥がなく、又は最小限に
削減でき、しかも、高能率で達成できるワイヤを提案す
る。
課題を解決するための手段ならびにその作用 そこで、本発明者はこの問題を解決するために、ワイ
ヤの組成について、種々の観点から検討したところ、 重量%で、C:0.12%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.30
〜2.20%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、B:0.0003〜
0.0200%、Ti:0.30%以下、Bi、Seの1種若しくは2種
を0.05%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物か
ら成ること、 C、Si、Mn、P、Sは、上記範囲内において、その上
に、以下の(1)式から算出された固相線温度(℃)
(S.T℃)が1485℃以上になるように、含まれること、 であった。
S.T(℃)=1536−{415.5(%C)+12.3(%Si) +6.8(%Mn)+124.5(%P)+183.9(%S)} ……
(1) 以下、これらのところを更に具体的に説明すると、次
の通りである。
C:C量が多くなると、Cの脱酸反応で発生するCO若しく
はCO2ガスによってスパッタが増大するとともに、溶接
ビードが劣化する。このため、Cは0.12%以下でなけれ
ばならない。
Si:Siは溶接金属の脱酸剤として必要であるが、0.05%
以下では効果がなく、1.0%を越えると溶接金属の表面
張力が低下し、大きなピットが発生して好ましくない。
Mn:Mnは、Siと同じように溶接金属の脱酸効果と溶接金
属の強度を向上させる効果がある。しかしながら、0.30
%未満ではその効果がなくブローホールが増大する。2.
20%を越えると溶接金属の強度が上がり過ぎ、薄板溶接
でも継手疲労面で好ましくない。
P、S:P、Sは溶接金属の割れ性能を劣化させる成分で
あり、出来る限り少ないことが望ましいが、0.030%以
下であれば問題はない。
B:Bは、一般に溶接金属の靭性を改善、向上するもので
あるが、本発明ではBがブローホール、ピットの防止に
最も効果のある成分であるところに着目し、このところ
から添加する。
すなわち、Bを添加すると、ブローホール、ピットは
大幅に低減する。0.0005%未満では効果がなく、0.0200
%を超えると、ビード外観が劣化するとともに高温割れ
の危険性があり好ましくない。
Bi、Se:Bi、Seは少量添加で溶接金属の表面張力を大幅
に低下させるために、ブローホールの発生数な多少減少
する。しかしながら、1m/min以上の如き溶接速度で高速
溶接を行なった場合には残存したブローホールが大きく
開孔し、大きなピットになりやすくビード外観が劣化す
る。このため、Bi又はSeのうちの一種又は総量で0.05%
以下に制限する必要がある。
Ti:CO2溶接でのアーク特性を改善するために、Tiを添加
する。しかしながら、添加量が0.30%を超えると、逆に
アーク特性が劣化してスパッタが増大するとともに、溶
接金属が硬化して好ましくない。
固相線温度(℃)(S.T):ブローホールの発生には溶
接金属の凝固温度が影響することに着目した。
そこで、この影響について研究したところ、まず、亜
鉛ガスの噴出は熱影響部での亜鉛の蒸発が主体である。
このため、亜鉛ガスの時間当りの最大噴出時期は、溶接
アークの通過時点よりも遅れる。その上で、溶接金属の
凝固が亜鉛ガスの最大噴出時期に合致した場合に、最も
ブローホールが発生しやすい。これに反し、溶接金属の
凝固亜鉛ガスの最大噴出時期よりも早いか、あるいは亜
鉛ガスの最大噴出時期よりも遅れる場合に、ブローホー
ルの発生は減少する。
しかし、溶接金属の凝固は、使用する溶接ワイヤの組
成のみで定めることができず、このほかに、母材の組
成、母材の希釈率、溶接条件などに影響されるため、溶
接金属の凝固温度自体は、溶接ワイヤの組成から必ずし
も一義的に定めることができない。
そこで、本発明者は、薄板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接
に限ると、溶接金属は凝固条件を、上記(1)式に示す
ように、ワイヤ組成中のC、Si、Mn、PならびにSの各
成分量から求められるワイヤの固相線温度(℃)(S.
T)で規制し、この固相線温度にもとずいて、ブローホ
ールの発生しない条件を求めた。
なお、ここで、固相線温度は、第3版鉄鋼便覧、第1
巻基礎(社団法人日本鉄鋼協会 昭和58年3月3日第3
刷発行)205頁右欄表4・6に示されるものである。ま
た、この固相線温度は、デンドライト樹間の液相内にお
ける溶質の濃縮に注目し、その凝固点降下度から導かれ
たものである。
この結果、固相線温度が1485℃以上か若しくは1420℃
以下の範囲にあるように、ワイヤ中にC、Si、Mn、Pな
らびにSを配合すると、溶接金属の凝固を亜鉛ガスの最
大噴出時期より早めるか、遅らすことができ、ブローホ
ールの発生を低減できることがわかった。
更に、この条件を吟味したところ、固相線温度が1420
℃以下にしたように配合するには、このほかに、Niなど
の高価な成分を多量に添加しなければならず、実用的に
は、固相線温度が1485℃以上になるように配合するのが
最も好ましかった。
なお、C、Si、Mn、P、Sを上記のように配合するほ
かに、Ni、Cr、Alなどを添加し、後記の(2)式に示す
ワイヤの固相線温度(S.T)が1485℃以上になるように
すると、ブローホールを低減させることができる。しか
し、これら成分は、添加量が多いと高価になるため、こ
れらの添加量の総計は5%以下が望ましい。
Ni、Cr、Alなどの成分が添加されたときの固相線温度
(S.T)は、(2)式に示し、(2)式は(1)式と同
様に導かれたものである。
S.T(℃)=1536−{415.5(%C)+12.3(%Si) +6.8(%Mn)+124.5(%P)+183.9(%S) +4.3(%Ni)+1.4(%Cr)+4.1(%Al)} ……
(2) また、シールドガスはCO2ガスシールドだけでなく、A
r+CO2(5〜50%)混合ガスの所謂MAG溶接においても
同様の効果が認められる。
更に、MAG溶接で使用する溶接用電源は従来のサイリ
スタ電源だけでなく、インバータ制御電源、インバータ
パルス電源でも同等の効果が認められる。
実 施 例 第1表のA〜Eの本発明に係る組成のものとF〜Kの
比較例の組成との鋼を、5.5mmφのロッドに圧延後、焼
鈍、銅メッキを施しながら冷間伸線で1.2mmφの溶接用
ワイヤにした。これらワイヤを用いて、第2表の溶接条
件で目付け量45g/m2の両面亜鉛メッキ鋼板(厚さ2.0m
m)の重ね隅肉溶接を第1図に示す如く行なった。この
溶接において、溶接ビード表面に発生したピットは目視
で、溶接ビードに内在したブローホールはX線透過試験
で観察した。試験結果は第1表に示す。本発明範囲を満
足するワイヤA〜Eはピット、ブローホールともに少な
く、ビード外観も良好であった。
これに対し、比較例のワイヤF〜Kはピット、ブロー
ホールの発生が多く、なかでも、ワイヤKの組成は、本
発明範囲内にあるが、固相線温度が1480℃と低いため、
ワイヤーA、B(固相線温度1485℃、1496℃)と較べる
と、ピット、ブローホールが多く、ビード外観が劣化し
た。
なお、第1図において、符号1は亜鉛メッキ鋼板、2
は溶接ワイヤ、3は溶接ビードを示す。
<発明の効果> 以上詳しく説明した通り、本発明に係るワイヤは、重
量%で、C:0.12%以下、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.30〜2.
20%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、B:0.0003〜0.02
00%、Ti:0.30%以下、Bi、Seの1種若しくは2種を0.0
5%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からな
って、更に、上記の(1)式から算出された固相線温度
(S.T)が1485℃以上になるよう、C、Si、Mn、P、S
を含むものである。
従って、このワイヤを用いることにより、薄板亜鉛メ
ッキ鋼板の重ね溶接のガスシールドアーク溶接におい
て、用いるワイヤに高価な成分を添加配合することな
く、ピット、ブローホールの欠陥の少ない高能率な溶接
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るワイヤを用いてガスシールドアー
ク溶接する際の一例の説明図である。 符号1……亜鉛メッキ鋼板 2……ワイヤ 3……溶接ビード

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.12%以下、Si:0.05〜1.00
    %、Mn:0.30〜2.20%、P:0.030%以下、S:0.030%以
    下、B:0.0003〜0.0200%ならびにTi:0.30%以下を含む
    ほか、Bi、Seの1種若しくは2種を0.05%以下を含み、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなって、更に、C、
    Si、Mn、P、Sは、以下の式に示す固相線温度(S.T
    ℃)が1485℃以上になるように含むことを特徴とする薄
    板亜鉛メッキ鋼板の重ね溶接に用いるガスシールドアー
    ク溶接用ワイヤ。 S.T(℃)=1536−{415.5(%C)+12.3(%Si) +6.8(%Mn)+124.5(%P)+183.9(%S)}
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