JP2522662B2 - ポリチオフェンを正極とする有機電解質電池 - Google Patents

ポリチオフェンを正極とする有機電解質電池

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は有機電解質電池に係り、更に詳しくは半導体
の性質を有する不溶不融性基体を負極とし、ポリチオフ
ェンを正極とし、電解によってこれら正極及び負極にド
ーピングしうるイオンを生成しうる化合物を非プロトン
性有機溶媒に溶解した溶液を電解液とする有機電解質電
池に関する。
[従来の技術および問題点] 近年、電子機器の小型勝、薄形化あるいは軽量化は目
覚ましく、それに伴い電源となる電池の小型化、薄形
化、軽量化の要望が大きい。小型で性能のよい電池とし
て現在は酸化銀電池が多用されており、又薄形化された
乾電池や、小型軽量な高性能電池として、リチウム電池
が開発され実用化されている。しかしこれらの電池は1
次電池であるため充放電を繰返して長時間使用すること
はできない。一方、高性能な2次電池としてニッケル−
カドミウム電池が実用化されているが、小型化、薄形
化、軽量化という点で未だ不満足である。
又、大容量の2次電池として従来より鉛蓄電池が種々
の産業分野で用いられているが、この電池の最大の欠点
は重いことである。これは電極として過酸化鉛及び鉛を
用いているため宿命的なものである。近年、電気自動車
用電池として該電池の軽量化及び性能改善が試みられた
が実用するに至らなかった。しかし蓄電池として大容量
が且つ軽量な2次電池に対する要望は強いものがある。
以上のように現在実用化されている電池は夫々一長一
短があり、それぞれ用途に応じて使い分けされている
が、電池の小型化、薄形化、或は軽量化に対するニーズ
は大きい。このようなニーズに応えようとする電池とし
て、有機半導体である薄膜状ポリアセチレンに電子供与
性物質又は電子受容性物質をドーピングしたものを電極
活物質として用いる電池が研究され、提案されている。
該電池は2次電池として高性能で且つ薄形化、軽量化の
可能性を有しているが、大きな欠点がある。それは有機
半導体であるポリアセチレンが極めて不安定な物質であ
り、空気中の酸素により容易に酸化を受け、又熱により
変質することである。従って電池製造は不活性ガス雰囲
気で行なわなければならず、又ポリアセチレンを電極に
適した形状に製造することにも制約を受ける。
ポリアセチレンの前述した欠点は、ポリアセチレンの
電池を実用化する上で大きな障害となっている。近年、
ポリアセチレンに代る安定な有機半導体を見いだすべく
多くの研究が行われてきた。その結果、チオフェンの重
合体であるポリチオフェンが、空気中の酸素に対して極
めて安定である事が判明した。また、電気化学的にポリ
チオフェンへアニオンをドーピングできることも明らか
となった。この事実に基き、ポリチオフェンを正極に用
いた二次電池が研究されてきた。しかし、該電池の実用
化を進めるにあたりいくつかの課題が残されていた。そ
の内、最も重要な課題は負極活物質の問題である。一次
電池の負極活物質として一般的に使用されているリチウ
ムは、二次電池の負極として用いると、充電時にリチウ
ム表面にデンドライトが発生し、好ましくない。また、
負極にポリチオフェンを用いると、デンドライトの発生
は防止できるが、放電不能である。
本発明の目的はポリチオフェンを正極としてサイクル
寿命の長い電池を提供することにある。
本発明の他の目的は容量の大きい電池を提供すること
にある。
本発明のさらに他の目的は小型化、薄形化あるいは軽
量化が可能でありそして製造も容易である経済的な二次
電池である有機電解質電池を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は内部抵抗が小さく、しかも
長期に亘って充電、放電が可能な二次電池を提供するこ
とにある。
[問題点を解決するための手段] 本発明者は先に、炭素、水素および酸素からなる芳香
族系縮合ポリマーの熱処理物であって、水素原子/炭素
原子の原子比が0.05〜0.5であり、且つBET法による比表
面積値が600m2/g以上であるポリアセン系骨格構造を有
する不溶不融性基体が電極として優れていることを見い
出し、特許出願している(特開昭60−170163)。今般、
本発明者らは、かかる不溶不融性基体を負極として用い
ることにより、前述したポリチオフェン二次電池の問題
点を解決できる事を見い出した。
従って上記の本発明の目的は、 (A) ポリチオフェンを正極とする有機電解質電池に
おいて、 (B) 炭素、水素及び酸素からなる芳香族縮合ポリマ
ーの熱処理物であって、水素原子/炭素原子の原子数比
が0.05〜0.5であり、且つBET法による比表面積が600m2/
g以上であるポリアセン系骨格構造を含む不溶不融性基
体を負極とし、 (C) 電解によりこれら正極および負極にドーピング
されうるイオンを生成しうる化合物と非プロトン性有機
溶媒を含む溶液を電解液とすることを特徴とする有機電
解質電池により達成される。
本発明は、上記のような正極物質と負極物質の組合せ
を特徴とする。
正極として用いるポリチオフェンは、チオフェン又は
チオフェン類似物を重合して得られる高分子量重合体で
ある。本発明におけるポリチオフェンの原料モノマーと
してチオフェン又はチオフェン類似物、たとえば2−メ
チルチオフェン、3−メチルチオフェン、2,5−ジメチ
ルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェンの如き、チオ
フェン五員環の2〜5の位置に置換基を有するチオフェ
ン類似物を用いることができる。
ポリチオフェンを製造する方法とては、電気化学的な
反応を利用した電極重合反応、酸化剤による酸化重合な
どあり、チオフェン又はチオフェン類似物を重合するこ
とが可能ならばいずれの方法でも良い。例えば次のよう
にして製造することができる。
チオフェン又はチオフェン類似物を支持塩を溶解させ
た有機溶媒中に溶解する。ここで支持塩は、電極重合反
応時に溶液に伝を通すために必要であり、特にその種類
については限定されないが、一般的には(Et)4NClO4,
(Et4)BF4,LiClO4,LiBF4などが用いられる。チオフェ
ン又は、チオフェン類似物を溶解させる有機溶媒は、チ
オフェン又はチオフェン類似物が溶解するものならばい
ずれでも良いが、一般的にアセトニトリル又はプロピレ
ンカーボネートなどが用いられる。
このチオフェン又はチオフェン類似物を溶解させた溶
液中に、例えば白金の如き不活性金属を用いた対極、及
び例えばLiの如き標準電極、さらに作用極を取り付けた
電解槽を準備する。上記電解槽を用い、参照電極に対し
て適切な電位幅、すなわち溶媒及び支持塩の分解反応が
生ずることなくチオフェン又はチオフェン類似化合物の
重合のみが作用極上で生ずる電位幅内で電解重合を行
う。電解重合法としては、定電流電解法、電位走査法等
が知られているが、上述した適正電位幅内に作用極の電
位が保持されうる方法であれば、いずれでも良い。
本発明において負極として用いられる不溶不融性基体
の原料である芳香族系縮合ポリマーは、フィールド性水
酸基を有する芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との
縮合物である。かかる芳香族炭化水素化合物としては、
例えばフェノール、クレゾール、キシレノールの如きい
わゆるフェノール類が好適であるが、他に例えば下記式 〔ここで、xおよびyはそれぞれ独立に、0,1又は2で
ある。〕 で表わされるメチレン−ビスフェノール類、あるいはヒ
ドロキシビフェニル類、ヒドロキシナフタレン類である
こともできる。これらのうち、実用的にはフェノール類
特にフェノールが好適である。
本発明における芳香族系縮合ポリマーとしては、上記
のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の
1部をフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化
合物例えばキシレン、トルエン等で置換した変性芳香族
系ポリマー例えばフェノールとシシレンとホルムアルデ
ヒドとの縮合物を用いることもできる。
またアルデヒドとしてはホルムアルデヒド、アセトア
ルデヒド、フルフラー等のアルデヒドを使用することが
できるが、ホルムアルデヒドが好適である。フェノール
ホルムアルデヒド縮合物としては、ノボラック型又はレ
ゾール型或はそれらの複合物のいずれであってもよい。
本発明における不溶不融性基体は、上記の如き芳香族
系縮合ポリマーの熱処理物であって例えば次のようにし
て製造することができる。
フェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合又は
これとフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化
合物との混合物およびアルデヒド類から初期縮合物を作
り、この初期縮合物と無機塩とを含む水溶液を調製し、
この水溶液を適当な型に流し込み、加熱して該型内で例
えば板状、フィルム状あるいは円筒状等の形態に硬化
し、その後この硬化体を非酸化性雰囲気中で350〜800℃
の温度まで加熱し熱処理し、次いで得られた熱処理体を
洗浄して該熱処理体に含有される無機塩を除去する。
初期縮合物と共に溶いる上記無機塩は後の工程で除去
されるものであり、本発明の不溶不融性基体に600m2/g
以上の比表面積値を持たせるための助剤である。無機塩
として例えば塩化亜鉛、リン酸ナトリウム、水酸化カリ
ウムあるいは硫化カリウム等を用いることができる。こ
れらのうち塩化亜鉛が特に好ましい。無機塩は、初期縮
合物の例えば0.05〜10重量倍の量で用いることができ
る。下限より少ない量では比表面積値が600m2/g以上と
はならず、また上限より多い量では最終的に得られる成
形体の機械的強度が低下する傾向が大きくなり望ましく
ない。
初期縮合物と無機塩の水溶液は、使用する無機塩の種
類によっても異なるが例えば無機塩の0.1〜1重量倍の
水を用いて調製することができ、該水溶液は適当な型に
流し込み、例えば50〜200℃の温度で加熱すると硬化す
る。
上記した初期縮合物と無機塩の水溶液にフェノール系
繊維(例えば日本カイノール社製のカイノール(商標)
繊維)を混ぜ込んでもよい。あるいはフェノール系繊維
からなる布、フェルト等に上記水溶液を充分に含浸させ
たプリプレグを作り、成形硬化してもよい。
かくして得られた硬化体は、次いで非酸化性雰囲気中
で350〜800℃の温度、好ましくは350〜700℃の温度、特
に好ましくは400〜600℃の温度まで加熱され、熱処理さ
れる。
熱処理の際の好ましい昇温速度は、使用する芳香族系
縮合ポリマー、その硬化処理の程度、形状等によって多
少相違するが、一般に室温から300℃程度の温度までは
比較的大きな昇温速度とすることが可能であり、例えば
100℃/時間の速度とすることも可能である。300℃以上
の温度なると、該芳香族系縮合ポリマーの熱分解が開始
し、水蒸気、水素、メタン、一酸化炭素の如きガスが発
生し始めるため、充分に遅い速度で昇温せしめるのが有
利である。
芳香族縮合ポリマーのかかる加熱、熱処理は、非酸化
性雰囲気下において行なわれる。非酸化性雰囲気は、例
えば窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、二酸化炭素雰
囲気等、あるいは真空であり、窒素が好ましく用いられ
る。かかる非酸化性雰囲気は、静止していても流動して
いてもさしつかえない。
得られた熱処理体を水あるいは希塩酸等により十分に
洗浄することによって、熱処理体中に含まれる無機塩を
除去することができ、その後これを乾燥する。このよう
にして水素原子/炭素原子の原子数比(以下H/C比とい
う)が0.5〜0.05、好ましくは0.35〜0.1のポリアセン系
骨格構造を有しかつBET法による比表面積が600m2/g以上
である不溶不融性基体が得られる。
X線回折(CuKα)によれば、メイン・ピークの位置
は2θで表わして20.5〜23.5゜の間に存在し、また該メ
イン・ピークの他に41〜46゜の間にブロードな他のピー
クが存在する。また、赤外線吸収スペクトルによれば、
D(=D2900〜2940/D1560〜1640)の吸光度比は通常0.
5以下、好ましくは0.3以下である。
すなわち、上記不溶不融性基体は、ポリアセン系のベ
ンゼンの多環構造がポリアセン系分子間に均一且つ適度
に発達したものであると理解される。
H/C比が0.5を越える場合あるいは0.05より小さい場合
には、該基体を後に示す方法に従って2次電池の電極と
して用いたとき充放電の効率が低下し好ましくない。
又、該ポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体
のBET法による比表面積値は塩化亜鉛等の無機塩を使用
して製造しているため極めて大きな値となり、本発明で
は600m2/g以上であるものが用いられる。600m2/g未満の
場合には、該基体を電極とした2次電池の充電時におけ
る充電電圧を高くする必要が生じるためエネルギー密度
等が低下し、又電解液の劣化をさそうため好ましくな
い。
また、特開昭61−218060号公報に示した様に、無機塩
を初期縮合物の2.5〜10倍量とし、水溶液の粘度を100,0
00〜100センチポイズに調整し、加熱時に水分の蒸発を
抑止する用にして硬化された成形体を使用して非酸化性
雰囲気下で熱処理すると平均孔径10μ以下の連通気孔を
有する多孔状の不溶不融性基体が得られる。該基体を電
極とすると電解液が該連通孔を通じて細部まで自由に出
入りし易いため、より好ましい。
上記不溶不融性基体の電気伝導度は通常10-11〜101Ω
-1・cm-1である。後述する様に電解質イオンをドーピン
グして電極材として利用する場合には伝導度が大巾に増
大するため、集電性を兼ねた電極材となる。
また不溶不融性基体は例えばフィルム、板等の種々の
形態をとることができるため、小型電池、薄型電池ある
いは軽量電池の電極材として適している。
本発明で用いられる上記多孔性不溶不融性基体は600m
2/g以上の大きい比表面積値を有するにもかかわらず酸
化安定性に優れており、現実に空気中に長時間放置して
も電気伝導度等の物性に変化がない。また、耐熱性、耐
薬品性に優れているため、電極材として用いたときに電
極の劣化の問題が生じない。
本発明の有機電解質電池は、ポリチオフェンを正極と
し、上記の不溶不融性基体を負極とし、電解によりこれ
ら正極、負極にドーピング可能なイオンを生成しうる化
合物と非プロトン性有機溶媒を含む溶液を電解液として
用いる。
電極にドーピングされうるイオンを生成しうる化合物
としては、例えばアルカリ金属又はテトラアルキルアン
モニウムのハロゲン化物、過塩素酸塩などが用いられ
る。
具体的にはLiI,NaI,KI,NH4I,LiClO4,LiBF4,LiAsF6,Li
PF6,NaClO4,NaBF4,NaAsF6,NaPF6,KClO4,KBF4,KAsF6,KPF
6,(C2H54NClO4,(n−C4H94NClO4,(t−C4H94N
ClO4,(C2H54NBF4,(n−C4H94NBF4,(t−C4H94
NBF4,(C2H54NPF6,(n−C4H94NPF6,(t−C4H94
NPF6,LiB(C2H5、LiB(C6H5又はLiHF4等の化合
物である。
前記化合物を溶解する溶媒として非プロトン性有機溶
媒が用いられる。例えばエチレンカーボネート、ピロピ
レンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシ
ド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロ
フラン、スルホラン、ジオキソラン、塩化メチレン又は
これらの混合物が挙げられる。これらのうちから電解質
として用いられる前記化合物の溶解性、電池性能等を考
慮して選択される。
電解液中の前記化合物の濃度は、電解液による内部抵
抗を小さくするため少なくとも0.1モル/以上とする
のが望ましく、通常0.2〜1.5モル/とするのがより好
ましい。
本発明の電池における充放電は、正極として用いるポ
リチオフェン及び負極として用いる不溶不融性基体へド
ーピング剤が電気化学的ドーピングと電気化学的アンド
ーピングされることによって行われる。即ち、ポリチオ
フェン及び不溶不融性基体へのドーピングによってエネ
ルギーが蓄えられ、一方、ポリチオフェン及び不溶不融
性基体からのアンドーピングによってエネルギーが電池
外部に取り出せる。
本発明の電池内に配置される、ポリチオフェンからな
る正極及び不溶不融性基体からなる負極の形状および大
きさは、電池の用途、使用目的等に従って任意に選ぶこ
とができる。又、これら正極及び負極から外部に電流を
取り出すための集電体として、ポリチオフェン正極及び
不溶不融性基体負極をそのまま、又はドーピング剤でド
ーピングしたポリチオフェン正極及び不溶不融性基体負
極を用いることができる。また、電池の用途、使用目的
に応じて、ドーピング剤及び電解液に対し耐食性のある
他の導伝性物質、例えば炭素、白金、ニッケル、ステン
レス等を用いることもできる。
次に、図により本発明の実施態様を説明する。第1図
は本発明に係る電池の基本構成図である。
第1図において、1はポリチオフェンを用いた正極で
あり、2はフィルム状あるいは板状等である不溶不融性
基体を用いた負極である。3,3′は各電極から外部に電
流を取り出したり、充電するために電流を供給するため
の集電体であり、電極及び外部端子7,7′に電圧降下を
生じないように接続されている。4は電解液であり5は
正負両極の接触を阻止すること及び電解液を保持するこ
とを目的として配置されたセパレータである。該セパレ
ータは耐久性のある連続気孔を有する電子伝導性のない
多孔体であり、通常ガラス繊維、ポリエチエン或はポリ
プロピレン等からなる布、不織布或いは多孔体が用いら
れる。セパレータの厚さは電池の内部抵抗を小さくする
ため薄い方が好ましいが、電解液の保持量、流通性、強
度等を勘案して決定される。正負両極及びセパレータは
電池ケース6内に実用上問題が生じないように固定され
る。電極の形状、大きさ等は目的とする電池の形状、性
能により適宜決められる。例えば薄形電池を製造するに
は電極はフィルム状が適し、大容量電池を製造するには
フィルム状或は板状等の正負両極を交互に多数枚積層す
ることにより達成できる。
ドーピング又はアンドーピングは一定電流下でも一定
電圧下でも、また電流及び電圧の変化する条件下のいず
れでも行ってもよいが、ポリチオフェン及び不溶不融性
基体にドーピングされるドーピング剤の量は、ポリチオ
フェン及び該基体の炭素原子1個に対してドーピングさ
れたイオンの数の百分率で表わして0.5〜20%が好まし
い。
ポリチオフェンと不溶不融性基体を電極として用いる
本発明の電池は充放電を繰返し動作することのできる2
次電池であり、その起電圧は該電池のドーピング量(充
電量)によって異なるが1.0〜3.5Vである。本発明の電
池を構成する正負極及び電解液の比重が小さいため重量
当りの容量が大きい。又パワー密度については、電池の
構成により差はあるが、鉛蓄電池よりはるかに大きなパ
ワー密度を有している。更に本発明に従いポリチオフェ
ンと不溶不融性基体を電極として使用すると、内部抵抗
が小さく、繰返し充放電が可能な、長期にわたって電池
性能の低下しない2次電池を製造することができる。
[発明の効果] ポリチオフェンを電極として用いる2次電池におい
て、本発明で規定したポリアセン構造を持つ多孔性不溶
不融性基体を負極として用いることにより、従来のポリ
チオフェン電極電池の欠点が解消された。すなわち、負
極におけるデンドライトの発生が少なく、かつ容量が大
きくなった。
本発明の有機電解質電池は、また軽量な電池であり、
かつ自己放電、サイクル特性に優れている。以下実施例
によって本発明を具体的に説明する。
実施例 1 (a) 水溶性レゾール(約60%濃度)/塩化亜鉛/水
を重量比で10/25/4の割合で混合した水溶液をフィルム
アプリケーターでガラス板上に成膜した。次に成膜した
水溶液上にガラス板を被せ水分が蒸発しない様にした
後、約100℃の温度で1時間加熱して硬化させた。
該フェノール樹脂フィルムをシリコニット電気炉中に
入れ窒素気流下で40℃/時間の速度で昇温して、500℃
まで熱処理を行った。次に該熱処理物を希塩酸で洗った
後、水洗し、その後乾燥することによってフィルム状の
不溶不融性多孔体を得た。該フィルムの厚みは約200μ
mであり、見掛け密度は約0.35g/cm3であり、機械的強
度に優れたフィルムであった。次に該フィルムの電気伝
導度を室温で直流4端子法で測定したところ10-4(Ω・
cm)-1であった。また元素分析を行ったところ、水素原
子/炭素原子の原子比は0.27であった。X線回折からの
ピークの形状はポリアセン系骨格構造に基因するパター
ンであり、2θで20〜22゜付近にブロードなメインピー
クが存在し、また41〜46゜付近に小さなピークが確認さ
れた。
またBET法による比表面積値の測定を行ったところ210
0m2/gと極めて大きな値であった。
(b) 100mlのプロピレンカーボネートに支持塩とし
て(Et)4NClO4を0.7g溶かした溶液にチオフェンを3g溶
かして、チオフェン溶液を調整した。そしてステンレス
板を作用極とし、白金を対極とし、Liを参照電極として
取りつけ、電解槽を構成した。次にLi参照の作用極電位
が4.5Vを越えることがないように注意しながら1mA/cm2
の陽極電流密度で、ポリチオフェンの膜厚が200μmに
なるまで通電し、ポリチオフェンを重合した。
(c) 続いて、(a)の方法で得られた不溶不融性基
体を負極とし、該不溶不融性基体と同一重量の(b)の
方法で得られたポリチオフェンを正極として、第1図の
様に電池を組んだ。集電体としてはステンレス金網を用
い、セパレーターとしてはガラス繊維からなるフェルト
を用いた。また、電解液として、プロピレンカーボネー
トに1モル/の濃度になるようにLiClO4を溶解させた
溶液を用いた。電池を組み、正極と負極を短絡すること
により電池電圧を0Vとした。
前述のようにドーピング量は不溶不融性基体中の炭素
原子1個当りにドーピングされたイオンの数の百分率で
表わすこととしたが、ドーピングされたイオンの数は回
路を流れた電流値より求められる。
上記電池に、外部電源により2.5Vの電圧を約1時間印
加して正極にClO4 -イオン、負極にLi+イオンをドーピン
グすることによって充電した。充電後の起電圧の値は2.
5Vであった。次に1時間当りのアンドーピング量が3.5
%となる速度で放電したところ、約1時間で電池の電圧
は0Vに戻った。この充放電の操作を100回行なった後、
再び容量を測定したところ、1回目と同じであった。す
なわち、1時間当りのアンドーピング量が3.5%となる
速度で放電したところ、約1時間で電池の電圧が0Vとな
った。
比較例 1 ポリマージャーナル(Polymer,Jurnal),1971,No.2,
p.231に示されている方法を用いて、ポリアセチレンの
フィルムを合成した。該ポリアセチレンフィルムを負極
とした。実施例1の(b)の方法で得られたポリチオフ
ェンを正極とした。ポリアセチレンフィルムを負極とし
た以外はすべて実施例1の(c)と同様にして電池を組
んだ。外部電源により、2.5Vの電圧を1時間印加するこ
とにより充電した。充電直後の電圧は2.5Vであった。次
に実施例1と同一の速度で放電したところ40分間で電池
の電圧が0になった。この充放電の操作を10回行ない、
再び容量を測定すると、1回目の容量の50%となってい
た。
比較例 2 実施例1の(b)の方法で得られたポリチオフェンを
正極のみならず負極としても用いた以外は、すべて実施
例1の(c)と同様にして電池を組んだ。電池を組んだ
直後の電圧は0Vであった。次に外部電源により、2.5Vの
電圧を1時間印加することにより充電をした。充電直後
の電圧は2.5Vであったが、正極負極間を電気的に接続し
ていないのにかかわらず、電池電圧は数十秒後に0.3Vま
で低下した。すなわち、2.5Vで充電後の電池の電圧は0.
3Vであった。しかし、この電池に電流を通したところ内
部抵抗が100〜1000Ωと大きくなり、放電をすることが
できなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る電池の基本構成図であり、1は正
極、2は負極、3,3′は集電体、4は電解液、5はセパ
レーター、6は電池ケース、7,7′は外部端子を表わ
す。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリチオフェンを正極とする有機電解質電
    池において、炭素、水素及び酸素からなる芳香族系縮合
    ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子
    数比が0.05〜0.5であり、且つBET法による比表面積が60
    0m2/g以上であるポリアセン系骨格構造を含む不溶不融
    性基体を負極とし、電解により上記正極及び負極にドー
    ピングされうるイオンを生成しうる化合物と非プロトン
    性有機溶媒を含む溶液を電解液とすることを特徴とする
    有機電解質電池。
  2. 【請求項2】芳香族系縮合ポリマーがフェノールとホル
    ムアルデヒドとの縮合物である特許請求の範囲第1項記
    載の有機電解質電池。
  3. 【請求項3】水素原子/炭素原子の原子比が0.1〜0.35
    である特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の有機電
    解質電池。
  4. 【請求項4】不溶不融性基体が平均孔径10μ以下の多数
    の連通孔を有するものである特許請求の範囲第1項乃至
    第3項の何れか一つに記載の有機電解質電池。
  5. 【請求項5】電解によりドーピングされうるイオンを生
    成しうる化合物が、LiI,NaI,KI,NH4I,LiClO4,LiBF4,LiA
    sF6,LiPF6,NaClO4,NaBF4,NaAsF6,NaPF6,KClO4,KBF4,KAs
    F6,KPF6,(C2H54NClO4,(n−C4H94NClO4,(t−C4
    H94NClO4,(C2H54NBF4,(n−C4H94NBF4,(t−C
    4H94NBF4,(C2H54NPF6,(n−C4H94NPF6,(t−C
    4H94NPF6,LiB(C2H5、LiB(C6H5又はLiHF4
    ある特許請求の範囲第1項乃至第4項の何れか一つに記
    載の有機電解質電池。
  6. 【請求項6】非プロトン性有機溶媒がエチレンカーボネ
    ート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、
    ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチ
    ルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、
    テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、塩化
    メチレン又はこれらの混合物である特許請求の範囲第1
    項に記載の有機電解質電池。
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