JP2521974Y2 - ボビン搬送トレー用の搬送ベルト - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、精紡機で製された糸をボビン搬送トレーを
搬送媒体として次工程のワインダに自動搬送するため、
その他の自動搬送のために形成されたボビン搬送路に組
込まれて使用される搬送ベルトに関するものである。

〔従来の技術〕

精紡機で生産された糸をボビン搬送トレーを介して精
紡ボビンのまま次工程のワインダに自動搬送すること、
或は、ワインダにおいてチーズに巻取られた精紡糸の空
ボビンを精紡機へ還流搬送することが従来から行われて
いる。

このような自動搬送は、一例として第１図，第２図に
示すように、円板状のベース部材１とこのベース部材上
に立設したボビン支持杆２とからなるペグ状のボビン搬
送トレーPTと、このトレーを、例えば精紡機とワインダ
間に適宜敷設した搬送路に沿って移動させるトレー搬送
機構TGとから形成される。尚、Ｂは精紡糸を巻取ってい
るボビンである。

トレー搬送機構TGは、搬送トレーPTにおけるベース部
材１の上面側に、トレーの搬送方向に関し左右に配設さ
れたガイドワイヤ３と、前記ベース本体１の下面側にお
いてトレーの搬送方向に沿い、且つ当該ベース本体１の
下面に当接し、ベース本体の上面側へ向けて板バネ５に
より弾機的に当接されつつ走行させられる狭幅側を上下
にしてボビン搬送路に配設された搬送ベルト４とから成
る。尚、６は搬送ベルト４を走行方向に関し左右から遊
隙を持たせて挟持したベルトの走行ガイドである。

上記搬送機構TGに於て、搬送ベルト４は、その上端縁
が搬送トレーPTのベース部材１の下面に当接して、当該
ベルト４の走行時、ベース部材１との間に作用する摩擦
力によって搬送トレーPTを搬送しなければならない一
方、ベルト４の下端縁は板バネ５に滑り接触しなければ
ならないという相反する作用をする。他方、このベルト
４の上端縁側は、搬送機構上において搬送トレーPTをア
キュームレートする場合には、円滑なアキュームレート
性能を発揮できるものでなければならない。

上記のような異なる作用が要求される搬送ベルト４に
於て、そのベルト上端縁側の搬送力性能と、この性能に
相反するベルト下端縁側の滑り接触性能とを同時に満足
させるため、従来、ベルトの上端縁側を摩擦係数が大き
なゴム系材料で形成する一方、ベルトの下端縁側は滑り
易いナイロン系の材料で形成した搬送ベルト４が使用さ
れている。

尚、ベース本体１の下面側に当接し、狭幅側を上下に
してボビン搬送路に配設されたこの従来の搬送ベルト４
の上端縁は、第１図に示したものとは異なりリフラット
に形成されている。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかし乍ら、搬送ベルト４における上端縁側は、単に
搬送トレーPTにおけるベース部材１の下端縁に搬送力を
伝達する機能があれば足りるものではなく、搬送路上で
各搬送トレーPTがアキュームレーションされている場合
でも搬送ベルト４の走行は継続されるから、ベース部材
１に対しては円滑なアキュームレーションを実現するた
めに、ある程度のすべり性も併有している必要がある。

本考案はこのような点に鑑み、ベルト４の走行搬送時
には搬送トレーPTのベース部材１との間で十分な搬送力
を発揮する一方で、搬送トレーPTのアキュームレート時
にはベルト４に余計な摩耗をもたらさずに十分な滑り性
を発揮することができるボビン搬送トレー用の搬送機構
に使用して好適な搬送ベルトを開発することをその課題
としてなされたものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題を解決するためになされた本考案の一の構成
は、ボビンを嵌挿支持するボビン搬送トレーのベース部
材の下面に摩擦当接して走行するように狭幅側を上下に
してボビン搬送路に配設され、下端縁に滑り面が形成さ
れた搬送ベルトにおいて、このベルトにおける前記ベー
ス部材との当接側に、この当接側を弾性変形させるため
の空隙を、前記ベルトの上端縁に該ベルトの長さ方向に
沿って溝状乃至は切欠状をなすように列設して形成した
ことを特徴とするものであり、また、本考案の他の構成
は、ボビンを嵌挿支持するボビン搬送トレーのベース部
材の下面に摩擦当接して走行するように狭幅側を上下に
してボビン搬送路に配設され、下端縁に滑り面が形成さ
れた搬送ベルトにおいて、このベルトにおける前記ベー
ス部材との当接側に、この当接側を弾性変形させるため
の空隙を、前記ベルトの上端縁近傍に該ベルト長さ方向
に沿って列設した穴により形成したことを特徴とするも
のである。

〔作用〕

搬送ベルトのボビン搬送トレーに当接する側、即ち、
狭い幅側を上下にしてボビン搬送路に配設された搬送ベ
ルトの上端縁にそのベルトの長さ方向に沿って列設した
溝状乃至は切欠状をなす空隙は、当該搬送ベルトの搬送
トレーとの当接部分を鋸歯状乃至は櫛歯状に形成する。

空隙が列設された穴により形成されると、搬送ベルト
のトレーとの当接部分はフィルムの送り穴状に形成され
る。

これらの鋸歯状乃至は櫛歯状部、或は、送り穴状に形
成された部分は弾性変形し易いため、トレーと搬送ベル
トの当接精度が多少粗くても、略均一な摩擦搬送力を発
揮する一方、各トレーのアキュームレート時にトレーの
当接面に対し滑り易く且つ耐摩耗性を得るために、比較
的硬度の高い材料を使用できる。

〔実施例〕

次に本考案の実施例を図に拠り説明する。

第１図は本考案搬送ベルトの一例を使用したボビン搬
送機構の例を示す側面図、第２図は第１図のＡ−Ａ断面
図、第３図は第１図に示した搬送機構における搬送ベル
トの斜視図、第４図〜第８図はそれぞれ本考案搬送ベル
トの他の例の側面図、第９図は更に本考案搬送ベルトの
別例の側面図、第10図はそのＣ−Ｃ断面図である。

第３図は本考案を適用する搬送ベルトの一例を示すも
ので、このベルト４は、その芯体4aをナイロン系の合成
樹脂で形成すると共に、この芯体4aの両側面をゴム系の
被覆材4b,4bで形成したものである。

そして、このベルト４はその上端縁側、即ちトレーPT
のベース部材１と当接する側について芯体4aを少し除去
する一方、下端縁側は両側の被覆材4bをテーパ状に削除
した断面形状に形成されている。

ベルト４の上端縁側について芯体4aを除去するのは、
トレーPTとの当接面において搬送に適した摩擦力を得る
ためであり、また、ベルト４の下端縁側について被覆材
4b,4bを削除しているのはこのベルト４の走行時に板バ
ネ５とのすべり性を確保するためである。

本考案ではこのような搬送ベルト４において、トレー
PTとの当接側、即ち、上端縁側の被覆材4b,4bに、一例
として第３図に示すように、ベルトの走行方向に関し後
方へ傾斜した切欠き状の空隙41をほぼ等ピッチで列設す
ることにより、鋸歯状部4cを形成した。

従来の搬送ベルト４においては、その上端縁側がゴム
系の被覆材4b,4bによってフラットに形成されていたも
のを、本考案では空隙41の列設によって鋸歯状部4cを形
成したので、個々の鋸歯状部4cは、その材質がゴム系で
あることにもよって、ベルト４の走行方向に関し前後左
右に比較的容易に変形可能となる。

このことは、この搬送ベルト４によってボビン搬送ト
レーPTを搬送するとき、搬送機構TGを形成する各構成部
品の加工精度や寸法精度、或は、搬送機構TGの組立精度
等にバラつき等があることによって、搬送されるトレー
PTが横振れや上下振動等の不規則挙動を呈しても、これ
らの挙動をこのベルト４における各鋸歯状4cが弾性変形
して吸収可能であることを意味する。

一方、上記のような鋸歯状部4cを有しない従来の搬送
ベルト４では、ベルトを走行させ乍らトレーPTを円滑に
アキュームレートしても容易にベルトが摩耗しないよう
にするため、ベルトにおける被覆材4bの硬度の選択に
は、経験を不可欠としていた。即ち、アキュームレート
性能を上げ耐摩耗性をよくするには、ベルトの被覆材4b
の硬度が高いものを使用すればよいが、硬度が高すぎる
とトレー底面との接合面における摩擦力、つまり、搬送
力が低下する問題が生じるため、耐摩耗性，アキューム
レート性と、高摩擦係数による高い搬送力との兼合いを
とった被覆材の硬度を選定することは、多くのテスト搬
送などを繰返して経験的に決めるしかなかったからであ
る。

しかるに、本考案ベルトでは上記のように搬送ベルト
４のトレーPTとの接触面側に弾性変形が可能な、ここで
は一例として鋸歯状部4cを形成したので、この鋸歯状部
が形成される搬送ベルト４の被覆材4bに、従来のそれよ
り高硬度のものを使用しても、搬送力が低下することは
ないと同時に、アキュームレート性，耐摩耗性も同時に
改善することができるという、格別の効果が得られる。

上記のような性能を発揮できる搬送ベルト４の鋸歯状
部4cの応用例としては、第４図〜第６図に示すような形
状とすることも可能である。

而して、第４図に示す搬送ベルト４は、空隙41の幅を
細くして鋸歯状部4cを櫛歯状に形成したものである。

第５図，第６図に示すものは、空隙41をほぼ逆三角形
状に形成して鋸歯状部4cをほぼ台形状（第５図）、或
は、ほぼ三角形状（第６図）に形成した本考案搬送ベル
トの別例である。

第７図，第８図に示す本考案ベルトの他の例は、空隙
41′を切欠き状に形成せず丸穴乃至は横長穴の穴明け加
工により形成したものである。

第７図，第８図の搬送ベルト４においては、穴状の空
隙41′がベルト４における被覆材4bのトレーとの当接側
に列設されることにより、ベルト４におけるトレーPTと
の当接面はほぼフラット面であるが、このフラット面の
下に形成される各空隙41′同士の境界部による脚部4dが
第３図〜第６図に示した搬送ベルト４における個々の鋸
歯状部4cとほぼ同様の断面に形成されるから、第７図，
第８図のベルトにおけるトレーPTとの当接面がフラット
であっても、弾性変形が可能である。尚、穴状空隙41′
は、各空隙41′をベルトの上端縁側において開放しても
よい。また、第５図〜第８図に示した搬送ベルトは走行
方向について方向性がない。空隙41,41′の形状が走行
方向に関し、対称形だからである。

以上の実施例は、本考案を第１図，第２図に示した芯
体4aと被覆材4bとから成る積層タイプの搬送ベルト４に
適用した例について説明したものであるが、本考案が適
用できる搬送ベルトは、これらに限られる訳ではない。

即ち、搬送ベルト全体が上記ベルト４の芯体4aと同様
のナイロン系の合成樹脂材による単層構造であったり、
或は、搬送ベルト全体が上記ベルト４における被覆材4b
と同様のゴム系、その他適宜の材質であっても、本考案
は上記実施例の場合と同様に適用可能である。

また、本考案が適用できる搬送ベルトの断面形状も、
第１図，第２図により説明した断面縦長矩形状以外に、
断面縦長円形等に形成されたベルトであってもよい。

更に、この断面異形の搬送ベルトにおいて、その断面
構造も、単一材構成，被層構成のいずれであっても本考
案は適用可能である。例えば、第９図，第10図に示すも
のは芯体4aと同一部材4a′を２枚積層し、当接側を厚み
の外側に向けて曲げると共に、長さ方向に亘って波状を
なす空隙41を形成したものである。尚、第９図，第10図
において4cはベルト４の側面に起立形成したガイド6,6
との当接爪片、4dはベルト４の下端の長さ方向に形成し
た板バネ５との滑り面である。

〔考案の効果〕

本考案は以上の通りであって、狭幅側を上下にしてボ
ビン搬送路に配設されるペグ状のボビン搬送トレー用の
搬送ベルトにおいて、搬送トレーの下面との摩擦当接側
を、このベルトの上端縁又はその近傍に、該ベルトの長
さ方向に沿って空隙を列設することにより弾性変形でき
る形態にしたから、搬送トレーに対し弾性的把持力を以
て摩擦搬送能力を発揮することができ、また、搬送路に
おけるガイド等に寸法バラツキなどがあっても、これを
吸収して略均一化された搬送力を実現することができ
る。

しかも、搬送ベルトはトレーとの当接側を弾性変形し
易い形態としたことにより、このベルトの搬送面の硬度
を比較的高いもので形成できるため、良好な搬送力発揮
と同時に、耐摩耗性並びにアキュームレート性能を高め
ることができる。

従って、本考案はペグ状のボビン搬送トレーの搬送機
構に組込む搬送ベルトとしてきわめて好適である。

【図面の簡単な説明】 第１図は本考案搬送ベルトの一例を使用したボビン搬送
機構の例を示す側面図、第２図は第１図のＡ−Ａ断面
図、第３図は第１図に示した搬送機構における搬送ベル
トの斜視図、第４図〜第８図はそれぞれ本考案搬送ベル
トの他の例の側面図、第９図は更に本考案搬送ベルトの
別例の側面図、第10図はそのＣ−Ｃ断面図である。 ４……搬送ベルト、4a……芯体、4b……被覆材、41,4
1′……空隙、4c……鋸歯状部、4d……脚部

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ボビンを嵌挿支持するボビン搬送トレーの
   ベース部材の下面に摩擦当接して走行するように狭幅側
   を上下にしてボビン搬送路に配設され、下端縁に滑り面
   が形成された搬送ベルトにおいて、このベルトにおける
   前記ベース部材との当接側に、この当接側を弾性変形さ
   せるための空隙を、前記ベルトの上端縁に該ベルトの長
   さ方向に沿って溝状乃至は切欠状をなすように列設して
   形成したことを特徴とするボビン搬送トレー用の搬送ベ
   ルト。
2. 【請求項２】ボビンを嵌挿支持するボビン搬送トレーの
   ベース部材の下面に摩擦当接して走行するように狭幅側
   を上下にしてボビン搬送路に配設され、下端縁に滑り面
   が形成された搬送ベルトにおいて、このベルトにおける
   前記ベース部材との当接側に、この当接側を弾性変形さ
   せるための空隙を、前記ベルトの上端縁近傍に該ベルト
   の長さ方向に沿って列設した穴により形成したことを特
   徴とするボビン搬送トレー用の搬送ベルト。