JP2519325B2 - 臨床検査用の自動分析装置および方法 - Google Patents

臨床検査用の自動分析装置および方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、臨床検査で試料を自動分析する際に、試料
中に妨害物質が含まれていると、データ異常としてオペ
レータに知らせることができる臨床検査用の自動分析装
置、および自動分析方法に関する。
〔従来の技術〕
臨床検査用の自動分析装置で人間の血液等を分析した
際に、人間が正常な場合、分析した項目は殆ど正常値範
囲に入る筈である。ある項目が正常値範囲を外れたとし
たならば、そのデータに何らかの異常が起きた筈であ
る。一方、人間が病気になった場合、例えば肝臓が悪い
ならば、肝臓に関する酵素のGOT,GPT,LDH,ALPなどのデ
ータは高値となるのが一般的である。このとき、GOT,GP
T,ALPは異常に高値なのに、LDHが正常になるということ
は通常考えにくい。むしろ、LDHのデータには、装置、
試薬、又は血清中の共存物質が影響していることが考え
られる。このように得られた各データの正常・異常をチ
ェックする従来の方法の一例が、西畑 豊外3名「矛盾
データ検索システムの開発とその評価」,日本臨床検査
自動化学会会誌JJCLA,Vol.11 No.5,1986年,第58頁か
ら第61頁において論じられている。この方法は、項目間
のデータの関係をフローチャートに従って順次チェック
していくことにより、データの矛盾を発見してデータ異
常を報告するようにしている。
データそのものの異常をチェックする方法としては酵
素などでいくつかが知られている。酵素は生物的な触媒
であり、臨床検査では、酵素が基質を消費して別な物質
に変化させる反応系の中にNADH等の特定の波長で吸光度
がある物質を組合せて酵素の活性値を測定する。例え
ば、肝臓の機能検査に使われるGOTでは次の反応系を使
っている。
NADHが340nmで吸光度を持っており、この反応の中でN
ADHはNAD+という340nmで吸光度を持たない物質に変化し
ていく。この吸光度変化量を測定することにより酵素活
性を測定している。吸光度変化率は酵素活性により一定
時間一定である。試薬や装置に異常があった場合、この
吸光度変化は一様ではなくなり、曲がりが生ずる。この
曲がりをチェックすることによりデータ異常が検出され
る。
酵素活性が大きい場合、短時間のうちに酵素が基質を
消費してしまい、吸光度変化が曲がる現象がおこり、実
際よりも低値になる。これを防止するために吸光度に一
定のラインを設けて、ある一定以上または以下の吸光度
になったら、その吸光度を使用しない措置をとってい
る。
また、異常データを検出する自動分析装置としては、
特開昭60−95359号公報と特開昭60−95360号公報を挙げ
ることができる。これらは、測定したデータが正常値範
囲内にあるときはメモリには記憶せず、正常値範囲外に
あるものだけをメモリに記憶するようにして、異常デー
タ発見の容易化を図ったものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上記従来技術のうち、項目間のデータ
チェックをおこなう方法は、項目自身のデータについて
チェックするのではなく、相互の関連について調べてい
る。ところが、このような方法では、数項目が偶然に同
時におかしくなった場合などは、データの異常として検
出はできないという欠点がある。一方、患者にはいろい
ろな病気があり、ある病気ではデータが上昇するが、別
な病気ではデータが減少するということもある。このた
め、矛盾データ検索のための境界値設定が難かしくな
る。境界値設定が広いと正常なデータでも異常となって
報告される。境界値設定が狭いと異常なデータが正常と
して報告される。どちらの場合もデータに対する信頼性
が失われる。
また、酵素の直線性チェックでは単に曲がりを比較検
討するだけであり、装置や試薬の異常により曲がってい
る場合には有効であるが、試料中に妨害物質があってデ
ータが異常となっているときには、反応が曲がっている
わけではなく、吸光度変化率が大きくなっているだけで
あり、異常を検出することはできない。また、酵素反応
には直線ではなく曲がっている反応もある。酵素以外の
項目では、キレート発色などが使用されており、このチ
ェック方法は使用できない。
例えば、LAP(ロイシンアミノペプチダーゼ)測定の
場合、正常な検体は副波長で第2試薬添加後でも吸光度
変化は見られないが、血清中に脂肪が多く濁っている
と、試薬と血清中の濁りが反応し、副波長で吸光度の上
昇が見られる。このため、濃度計算では主波長から副波
長の差を使用して、30ポイントから50ポイントの吸光度
変化率から求めるので、実際よりも濃度が低値となる。
従来では、このデータ異常を検出する方法がなく、その
まま医者に報告されている。
また、IP(無機リン)測定の場合、正常な検体は第1
試薬添加後に吸光度変化は見られない。血清中にM蛋白
が多量に含まれている検体ではM蛋白が試薬と反応し吸
光度が上昇する。第2試薬添加後もこの吸光度上昇が続
く。濃度計算では50ポイント目の吸光度を使用するた
め、実際の濃度よりも高値となる。従来では、このデー
タ異常をチェックする方法がなく、そのまま医者に報告
されている。
さらに、上記両公報に示された自動分析装置では、単
に異常データを検出しているだけで、試料中の妨害物質
によるデータ異常を検出することは考慮されていない。
本発明の目的は、試料中に妨害物質があればそのこと
を知らせ、妨害物質の影響を少なくするようにした臨床
検査用の自動分析装置および方法を提供することであ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明は、反応容器に分
注された試料と試薬の反応液に対して光を照射すること
により、吸光度を測定して試料分析を行う自動分析装置
において、一定時間ごとに異なる波長の光を前記反応液
に照射して、前記試料の吸光度を測定する測定手段と、
該測定手段で測定した吸光度を時系列的に記憶する記憶
手段と、該記憶手段内に記憶した吸光度データのうち所
定時間内の吸光度の時系列的な変化を算出する算出手段
と、該算出手段で算出した算出結果と予め各分析項目ご
とに設定した前記所定時間内の試料の吸光度限界値とを
比較し、算出結果が前記吸光度限界値を越えていればデ
ータ異常を示すアラームを各分析項目ごとに発生する判
別手段と、を備えたものである。
また、本発明の自動分析方法は、反応容器に分注され
た試料と試薬の混合液に対して、一定時間ごとに異なる
波長の光を照射して前記試料の吸光度を測定する行程
と、その測定した吸光度データに基づいて経時的な吸光
度変化を算出する行程と、その算出結果と予め各分析項
目ごとに設定した前記試料の吸光度の限界値とを比較
し、算出結果が限界値を越えていればデータ異常を示す
アラームを発生する行程と、を含むことである。
〔作用〕
上記構成によれば、試料と試薬が混合された反応液に
対し、測定手段より一定時間ごとに異なる波長の光が照
射され、試料の吸光度が測定される。測定された吸光度
データは記憶手段に記憶される。そして、算出手段で
は、記憶手段に記憶された吸光度データを用いて所定時
間内の吸光度の時系列的な変化が算出される。この場
合、所定時間内の吸光度の時系列的な変化は、最小二乗
法により、例えば吸光度変化率として算出される。さら
に判別手段では、算出手段による算出結果と予め各分析
項目ごとに設定された所定時間内の試料の吸光度限界値
とが比較され、算出結果が限界値を越えていれば、デー
タ異常としてアラームが発せられる。これにより、各分
析項目ごとにデータ異常を検出することができるように
なるので、異常データを誤って医者に報告してしまうこ
とを防止できる。
〔実施例〕
以下に本発明の一実施例を図面に従って説明する。
第1図は本発明に係る自動分析装置の全体構成概略図
である。図において、反応容器1を収納した反応ディス
ク2は恒温槽3に連結され、一定温度に保持されてい
る。反応ディスク2の外側には、試料分注機構4と試薬
分注機構5が配設されている。試料分注機構4は、試料
ディスク6上に設置されている試料カップ7内の試料
を、反応容器1に注入するためのものである。試薬分注
機構5は、試薬ディスク8上に設置されている試薬ビン
9内の試薬を反応容器1に注入するためのものである。
試料分注機構4は試料用ポンプ10に、試薬分注機構5は
試薬用ポンプ11にそれぞれ接続されている。また反応デ
ィスク2の外側には、前記両分注機構4,5の他に、撹拌
装置12と洗浄装置13が設けられている。そして洗浄装置
13は容器ポンプ14に接続されている。さらに反応ディス
ク2の近傍には光源15、回折格子16、多波長の光を同時
に検知する検知器17が配設されている。反応ディスク
2、試料ディスク6および試薬ディスク8は各々回転自
在であり、且つこの回転はインターフェイス18を介して
CPU19により制御される。またインターフェイス18には
アナログ/デジタルコンバータ20、プリンタ21、CRT2
2、キーボード23およびメモリー24が接続されている。
キーボード23はアラーム条件を入力するためのものであ
り、メモリー24は測定した吸光度を記憶するためのもの
である。またインターフェイス18には、検知器17で検知
した信号をLOG変換する増幅器25、および前述した試料
用ポンプ10、試薬用ポンプ11、容器ポンプ14が各々接続
されている。
なお、本実施例では、光源15、検知器17等は測定手段
を構成している。また算出手段と判別手段はCPU19の中
に内蔵されている。
以上の構成において、試料ディスク6は、試料の順番
に従って、試料分注機構4の下まで回転移動し、試料分
注機構4に連結された試料用ポンプ10により、反応容器
1の中に所定量の試料が分注される。試料を分注された
反応容器1は、反応ディスク2上を試薬添加位置まで移
動する。試薬添加位置まで移動された反応容器1は、試
薬分注機構5に連結された試薬用ポンプ11により試薬ビ
ン9から吸引された所定の試薬が加えられる。試薬添加
後の反応容器1は撹拌装置12の位置まで移動し、撹拌が
行なわれる。内容物が撹拌された反応容器1は光源15か
ら発した光束を通過する。この場合、光源15からは一定
時間ごとに異なる波長の光が反応容器1に照射され、そ
のときの吸光度が回折格子16を介して検知器16により検
知される。検知された吸光度信号は、増幅器25を経由
し、インターフェイス18を介して、CPU103に入り、試料
中の測定対象濃度に変換される。濃度変換されたデータ
はインターフェース18を介してプリンタ21から印字出力
されるか、CRT22の画面上に表示され、メモリー24に格
納される。測定の終了した反応容器1は洗浄装置13の位
置まで移動し、容器ポンプ14により内部の液を排出後、
水で洗浄され次の分析に供される。
ところで、第1図に示した自動分析装置では、試料カ
ップ7の試料と試薬ビン9の試薬が各項目ごとに一定量
ずつ反応容器1に分注され、反応ディスク2と共に回転
しながら検知器16で多波長の吸光度が測定され、経時的
な吸光度変化がメモリー24に記憶される。吸光度の測定
は12秒ごとに50回、約10分間に亘って実施される。そし
て、最初に第1試薬が添加され、24,25回目の間で第2
試薬が添加される。
CP19では、メモリー24に記憶された多波長の吸光度デ
ータを用いてキーボード23より入力されるチェック方式
に従ってチェックを行う。チェック式は、四則演算およ
び吸光度変化率並びに正常範囲の設定により構成されて
いる。
次に実際に設定したチェック式について説明する。
LAP測定 主波長:340nm、副波長:405nm 正常な検体では副波長で30ポイント以降に吸光度変化
はないが、異常な検体では副波長でプラスの吸光度変化
が現われる。この現象から、測光ポイント30から50まで
の吸光度変化率が10以下の場合を正常とし、10を越える
場合は異常としてアラームを発生する。
第5図と第6図はそれぞれ1人の患者に対してLAP測
定を行い、そのときの副波長での吸光度変化を示してい
る。上記のチェック式によれば、第5図の結果は正常デ
ータであり、第6図の結果は異常データであると判断で
きる。なお、第4図は5人の患者に対してLAP測定を行
い、そのときの主波長での吸光度変化を示している。
IP測定 主波長:340nm、副波長:405nm 正常な検体では第1試薬添加後、第2試薬添加までの
間には吸光度変化はないが、異常な検体では吸光度の上
昇が見られる。この現象から、340nmと405nmの2波長で
第2試薬添加直前の24ポイント目と9ポイント目の吸光
度差を比較することにより、データの正常・異常を判別
できる。
すなわち、 吸光度(24ポイント)−吸光度(9ポイント)40:異常 吸光度(24ポイント)−吸光度(9ポイント)<40:正常 と表わすことができる。
第2図は8人の患者に対して、また第3図は5人の患
者に対してIP測定を行い、そのときの吸光度変化をそれ
ぞれ示している。上記のチェック式によれば、第2図の
結果は異常データであり、第3図の結果は正常データで
あると判断できる。
本実施例の自動分析装置により、一般患者200名につ
いて血清のLAP測定およびIP測定を実施し、その測定デ
ータをチェックしたところ、LAP測定で2名、IP測定で
4名のデータ異常を発見した。
次に反応液中の妨害物質の吸光度スペクトルを測定す
る場合について説明する。
血清中に含まれる妨害物質としては、濁り,ヘモグロ
ビン,ビリルビンがあり、第7図に示す吸光度スペクト
ルをしている。LAP,IPは、340mmを主波長、405mmを副波
長としている。ビリルビンの吸光度スペクトルは405mm
に吸光度を持つため、副波長での吸光度が実際よりも大
きくなり誤差となる。一方、ビリルビンの吸光度のピー
クは450mmにあり、450mmの吸光度の大きさから、405mm
にどの程度の影響があるのか判定できる。すなわち、45
0mmの吸光度の大きさから、データに影響ありとしてア
ラームを発生させる。
また、上記の実施例において、450mmのビリルビンの
吸光度から、405mmにおけるビリルビンの吸光度の影響
を推定する。一般に450mmと405mmにおけるビリルビンの
吸光度は一定の比例関係にあり、2:1程度の影響があ
る。この推定した吸光度を差し引いて、LAP,IP等の濃度
換算をおこなう。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、吸光度の時系
列的な変化を予め設定された正常な場合のものと比較す
ることにより、データ異常のアラームを発するようにし
ているので、試料中に妨害物質等があるとそのことを容
易かつ正確に検出できる。その結果、医者には正常なデ
ータのみが報告され、医者は患者に対して誤りのない診
断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る自動分析装置の概略構成図、第2
図および第3図はIP測定の結果を示す線図、第4図乃至
第6図はLAP測定の結果を示す線図、第7図は血清中に
含まれる妨害物質の吸光度スペクトルを示す線図であ
る。 1……反応容器、2……反応ディスク、4……試料分注
機構、5……試薬分注機構、6……試料ディスク、7…
…試料カップ、8……試薬ディスク、9……試薬ビン、
15……光源、16……回折格子、17……検知器、18……イ
ンターフェース、19……CPU、23……キーボード、24…
…メモリー、25……増幅器。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反応容器に分注された試料と試薬の反応液
    に対して光を照射することにより、吸光度を測定して試
    料分析を行う自動分析装置において、 一定時間ごとに異なる波長の光を前記反応液に照射し
    て、前記試料の吸光度を測定する測定手段と、該測定手
    段で測定した吸光度を時系列的に記憶する記憶手段と、
    該記憶手段内に記憶した吸光度データのうち所定時間内
    の吸光度の時系列的な変化を算出する算出手段と、該算
    出手段で算出した算出結果と予め各分析項目ごとに設定
    した前記所定時間内の試料の吸光度限界値とを比較し、
    算出結果が前記吸光度限界値を越えていればデータ異常
    を示すアラームを各分析項目ごとに発生する判別手段
    と、を備えたことを特徴とする臨床検査用の自動分析装
    置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の自動分析装置において、 前記算出手段は、前記所定時間内の吸光度の時系列的な
    変化を、最小二乗法により吸光度変化率として算出する
    ことを特徴とする臨床検査用の自動分析装置。
  3. 【請求項3】反応容器に分注された試料と試薬の混合液
    に対して、一定時間ごとに異なる波長の光を照射して前
    記試料の吸光度を測定する行程と、その測定した吸光度
    データに基づいて経時的な吸光度変化を算出する行程
    と、その算出結果と予め各分析項目ごとに設定した前記
    試料の吸光度の限界値とを比較し、算出結果が限界値を
    越えていればデータ異常を示すアラームを発生する行程
    と、を含む自動分析方法。
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