JP2517762B2 - 金属粉末射出成形用組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の技術分野） 本発明は金属粉末の射出成形に適した成形用組成物に
関する。

（従来の技術） 従来、金属粉末原料に有機質バインダーを添加して加
熱混練し、流動性を付与して射出成形によりグリーン成
形体とし、これを脱脂・焼結して金属製品を得る方法が
知られている。この射出成形法は、条件さえ適切に選べ
ば、粉末冶金と呼ばれる圧縮成形法、ペースト法、スリ
ップキャスティング法、ホットプレス法等の他の方法と
比較して、３次元の複雑な形状の製品を、仕上げ加工を
殆ど必要としない精度で量産できる利点がある。

（発明が解決しようとする課題） すなわち、射出成形法において欠陥のない金属製品を
得るには、使用される有機質バインダーの加熱流動性、
離型性、脱脂特性とか、グリーン成形体の硬さ、強度等
の特性が重要なファクターとなり、バインダーの選択あ
るいは組合せが本成形法のキーポイントとなっている。
これが不適切な場合には、加熱流動性を確保するために
多量の有機質バインダーが必要となり、その結果として
グリーン成形体の強度低下、肉厚に差のある部分や複雑
な形状の部分におけるクラックの発生等が生じ易くな
る。また有機質バインダーの種類によっては、グリーン
成形体にヒケ、ウェルドライン、歪み、クラック等の欠
陥がもたらされるだけでなく、脱脂工程においても膨
れ、割れ、表層剥離、変形等の異常が発生する。従来の
有機質バインダーでは、ともすると、このような欠陥を
生じ易く、これを完全に回避できるものを見出すことは
極めて至難なことであった。

したがって、本発明の目的は上述した各種の欠陥をも
たらす恐れのない金属粉末の射出成形用組成物を提供す
るにある。

（課題を解決するための手段） 本発明は、この目的達成のため鋭意研究の結果見出さ
れたもので、この金属粉末射出成形用組成物として、
１）金属粉末もしくは金属合金粉末46〜57容量％、２−
Ａ）平均けん化度５〜65モル％の熱溶融型ポリ酢酸ビニ
ル５〜25容量％と、Ｂ）その他の熱可塑性樹脂９〜25容
量％とからなる有機質バインダー23〜50容量％、および
３）その他の添加剤４〜25容量％からなるものにしたこ
とを、要旨とするものである。

以下本発明を詳細に説明する。

まず、本発明の金属粉末射出用組成物に使用される有
機質バインダーとしては、前記成形用組成物に対する割
合で、平均けん化度５〜65モル％の熱溶融型ポリ酢酸ビ
ニル５〜25容量％と、その他の熱可塑性樹脂９〜25容量
％とからなるものである。

ここで用いられる熱溶融型ポリ酢酸ビニルは、平均け
ん化度５〜65モル％のポリ酢酸ビニルで、好ましくは平
均重合度が100〜1600のものである。

また、このポリ酢酸ビニルは酢酸ビニルと共重合可能
なコモノマーとの共重合体のけん化物でもよく、この場
合の共重合体中に占めるコモノマーの割合としては15モ
ル％未満、好ましくは７モル％未満がよい。

この平均重合度が100未満のものでは分子量が小さく
軟化点が低いため、グリーン成形体が変形し易くなり、
また1600を超えると溶融粘度が高すぎて金属粉末と混練
しにくく加熱流動性も悪くなる。一方、平均けん化度が
５モル％未満のものは軟化点が低く、グリーン成形体の
金型からの離型性が悪く、変形し易いものとなる。他
方、これが65モル％を超えると溶融粘度が高く加熱流動
性が悪くなる。

この熱溶融型ポリ酢酸ビニルの有機質バインダーへの
添加量は、前述したように成形用組成物に対する割合で
５〜25容量％、好ましくは10〜25容量％とするのがよ
い。これが５容量％未満ではグリーン成形体の脱脂中に
変形を起こす恐れがあり、また25容量％を超えると加熱
流動性と脱脂性の双方が悪くなるので好ましくない。

この熱溶融型ポリ酢酸ビニルと併用されるその他の熱
可塑性樹脂は、従来一般に使用されているもので、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリ
プロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブチ
ルメタクリレート、ポリスチレン、エチレン−エチルア
クリレート共重合体等が挙げられる。

本発明による射出成形用組成物は、前述したように、
この有機質バインダーを全組成物中、金属粉末もしくは
金属合金粉末46〜57容量％に対して、有機質バインダー
23〜50容量％の割合で配合使用する。

この際、バインダーの使用量が全組成物の23容量％未
満のときは成形性の改善が充分でなく、グリーン成形体
の完全な充てんが困難となるほか、ヒケ、ウェルドライ
ン、クラック、歪み等の欠陥がもたらされる。また50容
量％を超えると、脱脂中に膨れ、割れ、変形等の欠陥が
生ずる恐れがある。

なお、ここで使用される金属または合金粉末として
は、鉄、鉄合金、超硬合金、銅、銅合金、ステンレス
鋼、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン
カーバイト等の粉末が例示される。

本発明の射出成形用組成物には上記の金属または合金
粉末原料と有機質バインダーに、さらに可塑剤、滑剤、
ワックス等の各種添加剤を４〜25容量％の割合で配合す
ることにより、熱流動性、脱脂性がさらに改善される。

このような可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジ
ブチルフタレート、ジオクチルフタレート、脂肪酸エス
テル等が、また滑剤としてはステアリン酸、ステアリン
酸アミド、ステアリン酸の各種塩等が、さらにワックス
類にはパラフィンワックス等が例示され、これらの使用
量は成形用組成物に対する割合で可塑剤および滑剤がそ
れぞれ15容量％以下、ワックス類が20容量％以下である
ことが好ましい。

本発明による射出成形用組成物は、上記各成分を加熱
混練後、粉砕、射出成形すると、いわゆるグリーン成形
体となり、さらにこれを加熱脱脂、焼結することによっ
て焼結体状の金属製品が得られる。

（実施例） 以下、本発明の具体的態様を実施例（実験No.1〜５）
および比較例（同No.6〜12）により説明するが、本発明
はこの実施例に限定されるものではない。

実験No.1〜12. 原料粉末として平均粒径12μｍのカルボニル鉄、平均
粒径8.5μｍのステンレス鋼および平均粒径10μｍのチ
タン金属の各粉末を用意し、それぞれを第１表に示す割
合の各種有機質バインダー、可塑剤、潤滑剤、ワックス
等と配合し、加圧ニーダーを用いて160℃で30分間混合
して均質化した後、冷却して粉砕し、平均粒径3mmの成
形材料とした。この各々についてプランジャ型射出成形
機を用い第２表に示す成形条件で第１図に示した形状の
コマ型成形体を成形した。

得られた各コマ型グリーン成形体について、圧縮試験
機を用いて圧縮速度10mm/分で圧縮破壊したときの強度
を測定した。また、このコマ型グリーン成形体の各40個
について、常温から320℃まで６℃／時で昇温加熱し脱
脂した後の成形体の状態を観察し、第２図に示す４段階
の変形判断基準〔（ａ）正常良品、（ｂ）少し傾く、
（ｃ）90度変形、（ｄ）型が崩れる〕により評価し、成
形体の欠陥の程度の尺度とした。この圧縮強度の測定結
果と成形体の変形程度ごとの個数を第２表に併記した。

さらに、上記の各コマ型グリーン成形体を脱脂した
後、第３表に示す条件で焼結し、得られた焼結体につい
て理論密度比を算出し、その結果を第３表に併記した。

なお、第１表における各符号はそれぞれ下記を意味す
る。

金属粉末の種類： Fe…カルボニル鉄粉末 SUS316L…ステンレス鋼〃 Ti…チタン金属〃 有機質バインダーの種類： PE…ポリエチレン、住友化学工業（株）製、スミカセン
G808 EVA…エチレン−酢酸ビニル共重合体、東洋曹達（株）
製、UE633 PBA…ポリブチルメタクリレート、三洋化成工業（株）
製、CB−１ SMRI…熱溶融型ポリ酢酸ビニル、信越化学工業（株）
製、SMR−10L、けん化度40モル％、平均重合度240のポ
リ酢酸ビニル SMRII…同上、SMR−10M、けん化度70モル％、平均重合
度240のポリ酢酸ビニル SMRIII…同上、SMR−10H、けん化度80モル％、平均重合
度240のポリ酢酸ビニル その他の添加物： Wax…パラフィンワックス、m.p.45℃、試薬 St…ステアリン酸、試薬 DBP…ジブチルフタレート、試薬 （発明の効果） 本発明の射出成形用組成物により得られる成形体は、
従来のバインダーを使用したものに比べて、硬く、強度
も高いものになるほか、ヒケ、ウェルドライン、歪み、
クラック等の欠陥が無く、脱脂工程における、膨れ、ク
ラック、表面剥離、変形等の欠陥も全く認められない、
良好な性状の焼結体となる。

【図面の簡単な説明】

図面はいずれも実施例に係わるもので、その第１図は使
用したコマ型成形体の形状を示すもので、同図（ａ）は
平面図、同図（ｂ）は正面図である。第２図（ａ）〜
（ｄ）はそれぞれコマ型成形体の昇温加熱後における変
形度合を４種類の段階で示す正面図である。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】金属粉末もしくは金属合金粉末46〜57容量
   ％、２−Ａ）平均けん化度５〜65モル％の熱溶融型ポリ
   酢酸ビニル５〜25容量％と、Ｂ）その他の熱可塑性樹脂
   ９〜25容量％とからなる有機質バインダー23〜50容量
   ％、および３）その他の添加物４〜25容量％とからなる
   金属粉末射出成形用組成物。