JP2517616Y2 - 紡績装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、ドラフト装置によっ
てドラフトされた無撚の短繊維束に旋回気流を作用させ
て加撚することにより紡績糸を製造する装置、特に、長
繊維用紡績装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】出願人は、主として綿等の短繊維用の実
撚状紡績糸の製造に適する空気式紡績装置を先に提案
し、すでに別途出願（実願平３−２９９０４号）してい
る。

【０００３】その装置は、回転又は非回転の中空スピン
ドル及びその入口へ先端を向けて突出するガイド部材を
有し、スピンドル入口へ向けて旋回気流を噴出してドラ
フト装置を出た繊維束に撚を掛ける紡績装置である。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上記した従来の紡績装
置は、短繊維用としては、巻付繊維量が極めて多く、外
観、強力特性共にリング糸に遜色のない糸を製造するこ
とができる優れたものであるが、ウール等の長繊維を紡
績する場合には、芯繊維が多く、巻付け繊維の少ない、
結束紡績糸が製造される。

【０００５】この考案は、巻付け繊維量を増大させこと
によって、長繊維用に適する空気式紡績装置を提供する
ことを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この考案の紡績装置は、ドラフト装置を出た繊維束
に旋回気流を作用させるノズルを有するノズルブロック
と、回転又は非回転の中空スピンドルと、その入口へ先
端を向けて突出するガイド部材とよりなる本体、及び本
体入口部に固定され、分離した繊維束を旋回気流作用位
置近くまで分離状態を維持して供給する複数の繊維束供
給管とよりなるものである。

【０００７】

【作 用】上記のように構成された紡績装置において
は、ドラフト装置を出て複数の繊維束供給管より供給さ
れる各繊維束は、ノズルから噴出する旋回空気流の作用
によって、その作用位置近くまで分離したままドラフト
時の平行状態が維持された状態で引き込まれ、繊維束の
全ての繊維の前端は、ガイド部材の周囲から、糸に形成
されつつある繊維束に引かれてスピンドル内に導かれ
る。また、繊維の後端側は、スピンドル入口から反転す
ると共に各繊維に分離される。後端の分離した繊維は、
ノズルから噴出する旋回気流にさらされ、糸の走行に伴
って、糸に形成されつつある繊維束の周囲にらせん状に
巻き付いて実撚状の紡績糸となる。

【０００８】

【実施例】図１ないし図３を参照し、この考案の紡績装
置の実施例について説明する。

【０００９】この紡績装置は、図１に示す紡績装置本体
と、そのノズルブロック２の入口部に固定され、複数本
の繊維束（粗糸）を１本つづ分割して供給する供給部
（図２及び図３参照）とよりなり、バックローラ、エプ
ロンを有するミドルローラ、フロントローラよりなるド
ラフトパートの次に配置されている。

【００１０】まず、図１を参照して、この紡績装置の本
体について説明する。

【００１１】これは、ケーシング１の内部に配された、
ノズル３を有するノズルブロック２と、その内部に位置
し、ガイド部材５を有するガイド部材支持体４と、入口
側がケーシング１内に挿入された回転スピンドル６とよ
りなっている。

【００１２】スピンドル６は３つのローラー７（１つは
図１の手前側にあり、図示されていない）に囲まれて外
接軸受けされている。その内の１つは駆動ローラーであ
り、スピンドル６をベルトで直接回転させるもの（３万
ｒｐｍ）に比べて５万〜２０万ｒｐｍものはるかに高速
の回転を得ることができる。

【００１３】スピンドル６の中心には繊維束通路８が貫
通形成してあり、この通路８の中心とケーシング１の各
中心は、共に繊維束の走行路と一致する同一直線上に位
置している。スピンドル６の入口６ａの外径は充分に小
さく、入口６ａに続く部分は、外径が下流側に向けて増
大する円錐状部６ｂとしている。

【００１４】ケーシング１のスピンドル円錐状部６ｂを
覆う部分は、スピンドル円錐状部６ｂの外径に沿ってラ
ッパ状に開いたテーパー部１ａとしてあり、スピンドル
円錐状部６ｂとの間に環状の空間９を形成している。

【００１５】ケーシング１の入口側には、ノズルブロッ
ク２が嵌め込まれており、その内部には繊維束通路１０
が貫通形成してある。この繊維束通路１０は、中間が狭
窄している。

【００１６】ケーシング１の内部には、ノズルブロック
２との間に中空の空気溜１１を形成している。ノズルブ
ロック２には、空気溜１１に連通し、スピンドル入口６
ａから僅か離れた下流に向き、かつ繊維束通路１０に対
して接線方向を向いた４つの空気噴射ノズル３が形成し
てあり、空気溜１１には、孔１２を介してエアホース１
３が接続してある。ノズル３の向きは、スピンドル６の
回転方向と同一に設定してある。

【００１７】ケーシング１の環状空間９の下流側には、
環状の中空室１４とそれに続く接線方向の空気逃し孔１
５が形成してある。この空気逃し孔１５には空気吸引パ
イプが連結されている。

【００１８】ホース１３から供給される圧縮空気は、空
気溜１１に流入した後、ノズル３からケーシング１の環
状空間９に噴出し、スピンドル入口６ａの近傍に高速の
旋回気流を生じさせる。この空気流は、環状空間９内部
で旋回した後、中空室１４から逃し孔１５へと導かれ、
排出される。同時に、この空気流は、前記供給部を介し
て、フロントローラーのニップ点からケーシング１の中
空部内へと流入する吸引空気流を発生させる。

【００１９】ノズルブロック２とガイド部材支持体４と
の間には、間隙１６が存在し、繊維束のガイド通路とし
ている。また、ガイド部材支持体４の長手方向には、ス
ピンドル６の通路８の中心線に合致する細孔を穿設し、
その細孔内にピン状のガイド部材５を挿通している。

【００２０】ガイド部材５は、ガイド部材支持体４の細
孔から突出して先端をフリー状態とし、スピンドル入口
６ａに臨ませている。その直径は、スピンドル入口６ａ
の通路直径よりも小さく、先端は滑らかな曲線で形成し
ている。

【００２１】ガイド部材５の先端は、図では、スピンド
ル入口６ａから通路８内部へ若干入った位置にある場合
を示しており、その状態が最も好ましく、製造される糸
も、最もリング糸に近い外観を呈している。しかしなが
ら、条件によっては入口６ａ端面から離反した位置をと
ることも可能であり、リング糸に近い外観を有する糸を
製造することができる。これらの糸は、強力特性におい
てもリング糸と比べて遜色がない。

【００２２】次に、複数本繊維束の分割供給部について
説明する。

【００２３】図２に示す分割供給部は、ノズルブロック
２の入口部に固定される２本（何本でもよい）の繊維束
供給管２０よりなっている。

【００２４】ガイド部材支持体４の基部は、図２（２）
に示すように、ノズルブロック２に固定され、且つ、内
部空間を２つに区切っており、２つの繊維束通路１６を
形成している。しかしながら、その下流側の繊維束通路
１６は環状になっている。従って、独立した複数の繊維
束供給管２０より供給される繊維束は、ガイド部材支持
体４の下流側の環状繊維束通路にいたるまでドラフト時
の平行状態が維持され、後端が無拘束状態となる繊維の
挙動がそろい、繊維の分離及び旋回がスムーズに行われ
る。

【００２５】ドラフトパートのフロントローラーのニッ
プ点からスピンドル入口６ａまでの距離は、供給繊維束
の平均繊維長よりいくぶん長めに設定される。

【００２６】図３に示す分割供給部は、ノズルブロック
２入口部に固定される円錐状筒体１７と、その内部に環
状の繊維束通路１９となる間隙を空けて収容され、先端
にガイド部材支持体４が固定された繊維束導入体１８
と、繊維束通路１９に連通する２本（何本でもよい）の
繊維束供給管２０とよりなっている。

【００２７】繊維束導入体１８は、図３（２）の断面図
に示すように、繊維束入口で円錐状筒体１７に固定され
ており、その部分は、繊維束供給管２０の取付け部を除
いて、閉鎖されている。結局、繊維束供給管２０をから
繊維束通路１９内に入ると、繊維束導入体１８の全周が
糸道となっており、図２に示すものと同様に、独立した
複数の繊維束供給管２０より供給される繊維束は、加撚
部のかなり近くまでドラフト時の平行状態が維持され、
繊維の分離及び旋回がスムーズに行われる。

【００２８】ドラフトパートのフロントローラーのニッ
プ点からスピンドル入口６ａまでの距離は、図２に示す
ものと同様である。

【００２９】このように構成された紡糸装置において
は、ドラフト装置のフロントローラーを出た複数本の繊
維束が、ノズル３から噴出する旋回空気流の作用によっ
て、その作用位置近くまでそれぞれ別々に引き込まれ
る。繊維束の全ての繊維の前端は、ガイド部材５の周囲
から、糸に形成されつつある繊維束に引かれてスピンド
ル内に導かれる。また、繊維の後端側は、スピンドル入
口６ａから反転すると共に各繊維に分離される。後端の
分離した繊維は、ノズル３から噴出する旋回気流にさら
され、糸の走行に伴って、糸に形成されつつある繊維束
の周囲にらせん状に巻き付いて実撚状の紡績糸となる。
このときのガイド部材５は、糸形成過程における撚の伝
播の阻止し、あるいは中心繊維束の代わりを一時的に果
たす、いわゆる疑似芯の働きをなし、従来の空気式結束
紡績糸に顕著に現れる無撚の芯繊維束の形成を阻止して
事実上巻付繊維のみによって糸を形成する働きをなすも
のである。

【００３０】以上、スピンドル６を回転させる例を説明
したが、スピンドル６は糸に撚りを掛ける補助をするも
のであって、これが回転しなくても糸によっては製造可
能であるので、スピンドル６は必ずしも回転するもので
ある必要はない。

【００３１】

【発明の効果】この発明は、以上説明したように構成さ
れているので、以下に記載するような効果を奏する。

【００３２】即ち、紡績装置本体の入口部に、分離した
繊維束を旋回気流作用位置近くまで分離状態を維持して
供給する複数の繊維束供給管を固定したので、繊維後端
の挙動がそろえられ、繊維の分離及び旋回がスムーズに
なされる。従って、綿糸紡績の場合と同様に、巻付繊維
量が極めて多く、外観、強力特性共にリング糸に遜色の
ない糸を製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】紡績装置本体部の縦断面図である。

【図２】分割供給部の、（１）は縦断面図、（２）はそ
の矢印位置における横断面図である。

【図３】他の分割供給部の、（１）は縦断面図、（２）
はその矢印位置における横断面図である。

【符号の説明】

１ ケーシング ２ ノズルブロック ３ ノズル ４ ガイド部材支持体 ５ ガイド部材 ６ スピンドル ６ａ スピンドル入口 ２０ 繊維束供給管

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ドラフト装置を出た繊維束に旋回気流を
   作用させるノズルを有するノズルブロックと、回転又は
   非回転の中空スピンドルと、その入口へ先端を向けて突
   出するガイド部材とよりなる本体、及び本体入口部に固
   定され、分離した繊維束を旋回気流作用位置近くまで分
   離状態を維持して供給する複数の繊維束供給管とよりな
   る紡績装置。