JP2517532B2 - ロジウム及びイリジウムを基とする触媒の存在下でカルボン酸又は対応するエステルを製造する方法 - Google Patents

ロジウム及びイリジウムを基とする触媒の存在下でカルボン酸又は対応するエステルを製造する方法

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    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ロジウム及びイリジ
ウムを基とする均質触媒の存在下で一酸化炭素とn個の
炭素原子を有する少なくとも1種のカルボニル化可能な
化合物との反応によって(n+1)個の炭素原子を有す
るカルボン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】メタノールのようなアルコールと一酸化
炭素とを反応させることによるカルボン酸、特に酢酸の
製造は、工業的に利用されている周知の方法であり、多
くの論文及び特許、例えば米国特許第3769329号
及び同第3813428号の主題となっている。これら
の文献に記載された方法は、ロジウム及びハロゲン含有
化合物を基とする触媒系を用いる。
【0003】かかる方法は通常、加圧下の反応器から成
る反応帯域と、生成した酸を反応混合物の残部から分離
するための帯域とから成る装置中で実施される。分離
は、前記混合物を部分的に蒸発させることによって達成
される。蒸発した部分は主として生成物の酸から成り、
これは次いで数個の蒸留塔から成る精製帯域に送られ
る。他方、特に触媒系を含む残りの部分は、液体の形で
残り、反応器に再循環される。
【0004】これらの方法の性能は認められているが、
しかし、これらの製造方法は反応の実施において重大な
制約を持つ。これら制約とは主として、用いる触媒の種
類、特に触媒系の金属元素の種類によるものである。前
記のように、メタノールのカルボニル化のための反応に
おいて工業的に用いられる金属はロジウムである。液相
反応においてはロジウムは代表的には、配位子が一酸化
炭素及び沃素である可溶性ロジウム錯体の形をとる。
【0005】しかしながら、かかる触媒は、反応媒体の
組成、特に水含有率の変化や、一酸化炭素の分圧の変化
に対して極めて過敏であるということが認識されてい
る。反応媒体中のこれらの成分の一方又は両方の含有率
が低減すると、ロジウムが不溶性で不活性な沈殿の形で
損失され、その結果、生産効率の低下をもたらすことが
ある。
【0006】一酸化炭素の不足に関連するプロセスの重
大な問題点は、分離に関するものであり、降下した圧力
下で反応混合物を部分的に蒸発させるということに関連
するものである。
【0007】この場合、COの分圧はかなり低下し、そ
の結果、貴金属の不可逆的な損失をもたらす。
【0008】一酸化炭素の不足の影響を補償するため
に、いくつかの解消策が推奨されている。1つの知られ
ている解消策はロジウムを補充することであるが、かか
る手段は経済的に見て実行可能ではない。
【0009】水含有率を増大させたり、反応媒体に安定
剤を添加したりというような、別のより満足できる手段
も提唱されている。特に、ヨーロッパ特許公開第556
18号はかかる化合物の使用を記載したものである。前
記安定剤は、N,N,N,N’−テトラメチル−o−フ
ェニレンジアミン、二置換ホスフィン、例えばビス(ジ
フェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジ−p−トリルホ
スフィノ)メタン、多酸、例えばくえん酸若しくは琥珀
酸のような有機化合物、又は、ゲルマニウム、アンチモ
ン若しくは錫を基とする無機化合物、又は、ハロゲン化
物、酢酸塩若しくは酸化物の形のアルカリ金属から選択
することができる。
【0010】媒体中の水含有率に関しては、これは、触
媒が存在する帯域のみではなく、装置全体に対して影響
を有する。
【0011】実際、水は、ロジウムの安定性に対してば
かりでなく、カルボニル化速度、ひいては装置の生産効
率に対しても有益な作用を有することが認められてい
る。そのために、先に開発されている方法においては、
非常に高い水含有率、一般的には混合物の総重量に対し
て約14〜20%の水含有率を有する反応組成が用いら
れている。しかしながら、生成した酸の分離帯域及び精
製帯域中に水がかかる含有率で存在することは、酸の充
分な脱水を得るためにかなりのエネルギーの消費を必要
とするという点で、制約を受けるものである。
【0012】かくして、水含有率に関連するファクター
のみを考えた場合、2つの相反する関心が見出される。
一方は、反応について良好な生産効率を得るために触媒
を媒体中に可溶の形に保つという要求に関連し、従っ
て、水の量を増大させるということであり、もう一方
は、生成した酸を存在する水から後に分離するための経
費を最少にするために、水の量を減少させるということ
である。
【0013】上記の相容れない関心の間の折衷点を与え
る新たな方法が現れている。
【0014】ヨーロッパ特許公開第161874号に
は、通常の触媒系を用いてメタノールをカルボニル化し
て酢酸にする方法であって、正確に規定された反応混合
物の成分を、カルボニル化の間、非常に特定的な割合に
保つことを特徴とする方法が記載されている。この方法
は14%以下の含有率の水の存在下で実施され、この水
の含有率は1%ほど低くてもよいが、この方法は、さら
に、ロジウムを安定化させる可溶性沃化物塩、好ましく
は沃化リチウムをかなりの量、即ち20%までの量で使
用することを必要とする。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主題は、ロジ
ウム及びイリジウムを基とする触媒系を用いる液相中で
のカルボン酸の製造方法にあり、本発明に従う方法は、
広い範囲の反応混合物中の水含有率で操作することがで
き、しかも低い水含有率でも沈殿による貴金属の損失は
観察されない。さらに、本発明に従う方法は、標準的な
方法に匹敵する生産効率を達成することができる。
【0016】さらに、触媒を安定化させるために多量の
添加剤を使用する必要なく前記した結果を得ることがで
き、これは全く予期しなかった利点である。さらに、本
発明に従う方法は、かかる化合物を用いる必要なく有効
に実施することができるということまでわかった。
【0017】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明に従う
方法は、一酸化炭素と次式 (1)R(OH)m (2)RX (3)ROR’ (4)ROCOR’ (これら式中、R及びR’は同一であっても異なってい
てもよく、それぞれC1〜C10炭化水素基を表わし、R
はn個の炭素原子を有し、Xは塩素、臭素又は沃素を表
わし、mは1又は2である)の化合物から選択される少
なくとも1種の反応成分とを反応混合物中で一緒にする
ことによって(n+1)個の炭素原子を有するカルボン
酸又は対応するエステルを製造することに関し、この反
応は、少なくとも1種のロジウム化合物及び少なくとも
1種のイリジウム化合物又はこれら2種の金属を含有す
る少なくとも1種の化合物と、少なくとも1種のハロゲ
ン含有促進剤とを含む触媒系の存在下で実施される。
【0018】前記したように、本発明は、ロジウム及び
イリジウムという2種の金属を基とする触媒系を用いて
実施される。
【0019】これら2種の元素の組合せは、一方の金属
のみを用いる方法と比較して2つの利点をもたらす。
【0020】実際、触媒系の金属成分としてロジウム及
びイリジウムを同時に用いると、全く予期しなかったこ
とに、カルボニル化速度を高めることができるというこ
とがわかった。換言すると、本発明に従う方法は、同じ
条件下で一方の金属のみを用いる触媒系によって得られ
るカルボニル化速度(モル数で表わされる)と少なくと
も同等のカルボニル化速度を達成することができ、他
方、本発明の方法において用いられる金属の合計モル数
は、同じ条件下で一方の金属のみを用いる触媒系の金属
のモル数より小さくてよい。
【0021】触媒を少ないモル数で使用しながら匹敵し
得る速度を得るという事実は、生産効率の増大の他に、
さらに、経済性に関する利点、即ち触媒の経費を低減さ
せるという利点を構成する。
【0022】さらに、本発明に従う方法は、従来技術に
おいて必要とされた相当量の触媒安定剤を媒体に加える
ことを必要としないで、標準的な方法において使用され
る媒体中の水含有率より少ない水含有率でカルボニル化
反応を効率的に行なうことができる。上述した通りに、
本発明に従う方法は、このような化合物を存在させない
で行なうことができる。
【0023】その他の利点は、下記の記載を読む際に一
層明瞭になるものと思う。
【0024】本発明に従う反応は液相で行う。従って、
用いる触媒系は、反応媒体に可溶性の形態である。
【0025】本発明を実施するのに適した触媒系は、少
なくとも1種のロジウム化合物、少なくとも1種のイリ
ジウム化合物及び少なくとも1種のハロゲン含有促進剤
を基とする。
【0026】カルボニル化反応において通常用いられる
ロジウム及びイリジウムを基とする化合物を本発明に従
う方法において用いることができる。
【0027】用いられるロジウム及びイリジウムを基と
する化合物は一般的に、これらの金属の、反応条件下で
媒体中に可溶性の配位錯体から選択される。より特定的
には、配位子が一方で一酸化炭素であり、かつ他方で塩
素、臭素又は沃素のようなハロゲン、より特定的には沃
素である配位錯体を用いる。もちろん、前記したもの以
外の配位子、例えば特に有機燐又は窒素含有配位子を含
む可溶性錯体を用いることも本発明の範囲から逸脱する
ものではない。しかし、本発明は、有利なことに、この
タイプのロジウム及びイリジウムの錯体を用いることを
必要とはしない。
【0028】本発明において用いられる配位錯体のより
特定的な例としては、特に、Ir4(CO)12、Ir
(CO)22 -+ 、Ir(CO)2 Br2 -+ 、Rh
4 (CO)12、Rh(CO)22 -+ 、Rh(CO)
2 Br2 -+ のタイプの錯体、又は、これら2種の金属
を基とする錯体、例えばRh3 Ir(CO)12、Rh2
Ir2 (CO)12を挙げることができる。これら式中、
Qは特に水素、NR4 又はPR4 基を表わすことがで
き、ここで、Rは水素及び炭化水素基から選択される。
【0029】また、これらの元素の単純な塩、例えば特
にIrI3 、IrBr3 、IrCl3 、IrI3 ・4H
2 O、IrBr3 ・4H2 O、RhI3 、RhBr3
RhCl3 、Rh・4H2 O、RhBr3 ・4H2 O、
又は金属状態のロジウム及びイリジウムから選択される
化合物も、本発明に従う方法において用いることができ
る。
【0030】ロジウム及びイリジウムを基とする化合物
の上記のリストは、全てを網羅したものと考えるべきで
はない。上述した2種の金属の化合物の追加の例とし
て、米国特許第3769329号及び同第377238
0号を参照することができるということにも留意すべき
である。
【0031】一方の金属対他方の金属の割合は広い範囲
内で変えることができる。即ち、本発明に従う触媒系に
おけるロジウム/イリジウム原子比は0.01〜0.9
9の範囲である。反応媒体中の全金属濃度は一般的に
0.1〜100ミリモル/リットルの範囲であり、1〜
10ミリモル/リットルの範囲であるのが好ましい。
【0032】本発明に従う触媒系は、上述したロジウム
及びイリジウムを基とする化合物の外に、ハロゲン含有
促進剤を含む。ハロゲン含有促進剤は、ハロゲン自体の
形態を取ってもよく、また、例えば水素、C1 〜C10
ルキル基、C1 〜C10アシル基、又はC6 〜C10アリー
ル基のような他の元素と組み合わせた形態を取ってもよ
い。ハロゲンは一般的に塩素、臭素又は沃素から選択さ
れ、沃素であるのが好ましい。
【0033】本発明の特別の実施態様に従えば、用いら
れる促進剤は、水素又はC1 〜C10アルキル基を含むも
のである。より特定的には、本発明において用いられる
促進剤は、ハロゲン及びC1 〜C10アルキル基を含むも
のである。上述したハロゲン含有促進剤の基は、本発明
に従う反応の間にカルボニル化される反応成分の炭化水
素基に対応するものが好ましい。促進剤として使用する
ことができるハロゲン含有化合物としては、沃素、沃化
水素酸、臭化水素酸、沃化メチル、臭化メチル、沃化エ
チル、1,1−ジヨードエタン、臭化ベンジル又は沃化
アセチルを挙げることができる。
【0034】本発明の変法に従えば、ハロゲン含有促進
剤の一部又は全部を先駆体の形態で反応混合物に導入す
る。そのような場合、該先駆体は一般的に、ハロゲン又
は特にハロゲン化水素酸の作用の下で上述したハロゲン
含有促進剤の炭化水素基を反応媒体中に放出することが
できる化合物の形態を取る。これらのハロゲン又はハロ
ゲン化水素酸は、媒体中に存在するものであってもよ
く、また、この目的のために導入してもよい。
【0035】好適な先駆体の非限定的な例としては、式
(1)ROHのアルコール、式(2)ROR’のエーテ
ル、又は式(3)R’COORのエステルから選択され
る化合物を挙げることができ、これらは単独で用いても
よく、また、混合して用いてもよい。これら式中、R及
びR’基は同一であっても異なっていてもよく、それぞ
れC1 〜C10飽和炭化水素基又はC6 〜C10芳香族炭化
水素基を表わし、R基はハロゲン含有促進剤の基に相当
する。従って、メタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノール、ジメチルエーテル及び酢酸メチルが該
ハロゲン含有促進剤についての適した先駆体である。
【0036】反応混合物中に存在するハロゲン含有促進
剤の量は、該混合物の総重量に対して0〜20%(0%
は除く)の範囲である。ハロゲン含有促進剤の含有量
は、0〜15%(0%は除く)の範囲であるのが好まし
い。上述した促進剤の一部又は全部を先駆体の形態で導
入する場合、先駆体又は促進剤/先駆体混合物の量は、
上述した量と同等の量を得るのを可能にするようにする
ことに留意すべきである。
【0037】本発明に従うカルボン酸或は対応するエス
テルの製造は、最終生成物の酸又はエステルに比べて炭
素原子が1個少ない反応成分から出発して行なう。この
反応成分は、次のものから選択される1種以上の化合物
である。 (1)R(OH)m ; (2)RX; (3)ROR’; (4)ROCOR’; (これら式中、R及びR’は同一であっても異なってい
てもよく、それぞれC1〜C10炭化水素基を表わし、R
はn個の炭素原子を有し、Xは塩素、臭素又は沃素を表
わし、mは1又は2である)
【0038】従って、本発明に従うカルボニル化反応
は、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、エ
チレングリコール、1,4−ブタンジオール、沃化メチ
ル、臭化メチル、沃化エチル、1,1−ジヨードエタ
ン、エチレンオキシド、酢酸メチル、酢酸エチル又は沃
化アセチルの存在下で実施することができる。
【0039】本発明の好適な実施態様に従えば、本方法
において用いられる反応成分は、モノヒドロキシル化ア
ルコール及びハロゲン化アルキルから選択される。反応
混合物中の反応成分の含有量は、媒体の総重量に対して
0〜40重量%(0%は除く)の範囲である。反応成分
の含有量は、0〜30%(0は除く)の範囲であるのが
好ましい。
【0040】カルボン酸を得るのに必要なその他の反応
成分は一酸化炭素である。これは純粋な形態で用いても
よく、また、水素、メタン、二酸化炭素又は例えば窒素
のような任意の他のタイプのガスで希釈して用いてもよ
い。本発明の特別の実施態様に従えば、純度少なくとも
99%の一酸化炭素を使用する。一酸化炭素の分圧は一
般的に10〜50バールの範囲であり、10〜20バー
ルの範囲であるのが好ましい。
【0041】本発明に従うカルボニル化反応は、さら
に、水の存在下において実施される。これにより、本発
明に従う方法は、上述したように、触媒金属を沈殿によ
って失わないで、少ない水含有量で良好な生産効率を得
るのを可能にする。すなわち、本発明の主題である方法
は、広い範囲の反応媒体中の水濃度、例えば反応媒体の
総重量に対して0〜14%(0%は除く)の範囲の水濃
度で実施することができる。反応媒体中の水含有量は、
より特定的には、0〜10%(0%は除く)の範囲であ
る。
【0042】上述した通り、本発明の顕著な利点の内の
一つは、可溶性沃化物塩を存在させずに又はそれらを少
量使用するだけで、カルボニル化反応を実施することが
できるということにある。
【0043】すなわち、反応媒体中に存在する可溶性沃
化物塩の含有量は、混合物の総重量に対して0〜5重量
%である。ここで、可溶性塩は標準的な有機又は無機化
合物から、より特定的にはアルカリ金属又は沃化アルカ
リ土類金属沃化物から選択されることを想起する。この
含有量は0〜2%が好ましい。
【0044】本発明に従うカルボニル化反応は、上述し
た化合物及び反応成分に加えて、エステルの存在下で実
施される。使用するエステルは、生成した酸と媒体中に
存在するアルコール(これは、反応成分としてそのまま
の形態で又はハロゲン化物、エーテル又はエステルのよ
うなマスクされた形態で用いられる)との反応に対応す
るものであるのが好ましい。本発明の一実施態様に従え
ば、エステル含有量は、反応混合物の重量に対して0〜
40重量%(0%は除く)の範囲である。この含有量
は、より特定的には0〜30%(0%は除く)の範囲で
ある。
【0045】最後に、カルボニル化反応は溶媒の存在下
で実施される。本発明に従う方法においては、生成する
カルボン酸又はエステルを溶媒として用いるのが有利で
ある。もちろん、他の溶媒を用いることもでき、例え
ば、特に、反応混合物に対して不活性であり且つ生成す
る酸より高い沸点を有する化合物、例えばベンゼンを用
いることができる。カルボニル化反応は一般的に、15
0°〜250℃の範囲の温度において実施する。全圧は
一般的に5〜200バールの範囲であり、5〜100バ
ールの範囲であるのが好ましい。
【0046】もちろん、本発明に従う方法は、連続様式
で行なうこともでき、バッチ様式で行なうこともでき
る。本方法を連続様式で行なう場合、プロセスの安定な
操作条件に対応する反応混合物の種々の成分の含有量は
上に挙げた濃度の範囲内であり、反応の間そのままに保
たれる。反応開始の際に、各種の成分を、気体−液体移
動をもたらすのに充分な撹拌手段を備えた好適な反応器
中に導入する。反応器が反応混合物を機械的に撹拌する
ための手段を備えていることは好ましいことではある
が、この場合でも、かかる手段を用いない操作が除外さ
れるわけではないということに留意すべきである。何故
ならば、反応器に一酸化炭素を導入することによって混
合物の均質化を達成することができるからである。反応
混合物の成分は、それら自体の形態で及び(又は)1種
以上の先駆体の形態で導入され、特に好適な順序はな
い。
【0047】本発明に従う方法は、ロジウムを基とする
触媒を使用する既存の設備で工業的に実施し得ることに
留意すべきである。本発明に従う方法は、炭素原子を少
なくとも2個含むすべてのタイプのカルボン酸又は対応
するエステルを製造するのに適している。すなわち、該
方法は、エタノールからプロピオン酸を、エチレンオキ
シドから琥珀酸を、又は1,4−ブタンジオールからア
ジピン酸を製造するために、実施することができる。し
かし、この方法は、特にメタノールから、酢酸メチル、
水及びハロゲン含有促進剤としての沃化メチルの存在下
において酢酸又は酢酸メチルを得るのに極めて特に適し
ている。
【0048】
【実施例】以下、本発明の具体例を提示するが、これら
は本発明を何ら限定するものではない。 例1 本例の目的は、ロジウム及びイリジウムを使用する際に
もたらされる相乗作用を、これら金属の一方又は他方を
基とする触媒を使用した場合と比較して例示することに
ある。手順は下記の通りである:丸底ガラスフラスコに
下記を逐次に導入する: 酢酸16.5g; 沃化メチル2.3g; 酢酸メチル0.5g; メタノール1.3g; 水1.9g。
【0049】上述した成分より前に、触媒を、沃化ロジ
ウム及び/又は塩化イリジウムを酢酸に溶解した溶液の
形態で導入する。すなわち、用いたロジウム溶液及びイ
リジウム溶液は、それぞれ金属を酢酸中に1.5%及び
1.75%含有する。さらに、ロジウム及び/又はイリ
ジウムの量は、全金属濃度が4ミリモル/リットルにな
るように調整する。これら成分を装入したら、このフラ
スコをオートクレーブに入れ、このオートクレーブを、
撹拌手段を備え、加圧下のCO供給源に接続されたオー
ブンに入れる。オートクレーブを、初期圧5バール下
で、185℃の温度にし、全圧を30バールに調節す
る。反応媒体中に酢酸メチルおよそ2%が残った際に、
オートクレーブを冷却する。得られた結果を下記の表1
にまとめる:
【0050】
【表1】 RCARB はカルボニル化速度を表わす。示す百分率はモル
%である。
【0051】この表は、水含有量が全反応混合物のおよ
そ10重量%でありかつ沃化メチル含有量がおよそ9重
量%である条件下で、2種の金属の存在下におけるメタ
ノールのカルボニル化速度が、常に、一方の金属だけを
使用する場合に得られるカルボニル化速度に等しい又は
それより大きいことを明瞭に示す。
【0052】例2 本例の目的は、例1と異なる条件下で、ロジウム及びイ
リジウムを使用する際にもたらされる相乗作用を、一方
又は他方の金属を基とする触媒を使用する場合と比較し
て例示することにある。丸底ガラスフラスコに下記を逐
次に導入する: 酢酸19.6g; 沃化メチル1.15g; 酢酸メチル0.5g; メタノール1.3g; 水0.5g。
【0053】上述した成分より前に、触媒を、該金属の
両方について金属を酢酸に溶解した溶液の形態で導入す
る。使用するロジウム溶液及びイリジウム溶液は例1と
同じである。さらに、ロジウム及び/又はイリジウムの
量は、全金属濃度が4ミリモル/リットルになるように
調整する。手順を例1に記載する方法に従って行う。得
られた結果を下記の表2にまとめる:
【0054】
【表2】
【0055】得られたカルボニル化速度は、依然、水含
有量がおよそ5重量%(混合物の総重量に対して)であ
りかつ沃化メチル含有量がおよそ5重量%である条件下
で、反応の際にこれら2種の金属を同時に存在させた場
合の相乗効果を示す。
【0056】例3 下記の試験を、反応に必要な反応成分を導入する手段を
装着したオートクレーブで連続様式で行なった。反応溶
液はロジウム及びイリジウムを平均で5.5ミリモル/
リットル含有する。反応装置における滞留時間はおよそ
10分である。オートクレーブを出る混合物をガス抜き
しかつ冷却する。反応混合物の組成を気相クロマトグラ
フィーによって分析する。オートクレーブの全圧は30
バールであり、温度を190℃に保つ。手順を、反応混
合物の組成を下記の表3に示す通りに保つように行う。
カルボニル化速度は、COの消費速度を測定し、加えて
二酸化炭素を生成するのに伴うCOの量を勘定に入れる
ことによって得る。
【0057】
【表3】
【0058】この表において、混合物の種々の成分につ
いて示す含有量は混合物の総重量に対する重量により表
わし、カルボニル化速度は生成する酢酸のモル/時間・
リットルで表わす。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 53/126 C07C 53/126 67/36 67/36 69/14 69/14 69/24 69/24 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一酸化炭素と次式: (1)R(OH) (2)RX (3)ROR’ (4)ROCOR’ (これら式中、R及びR’は同一であっても異なってい
    てもよく、それぞれC〜C10炭化水素基を表わし、
    Rはn個の炭素原子を有し、 Xは塩素、臭素又は沃素を表わし、 mは1又は2である)の化合物から選択される少なくと
    も1種の反応成分とを反応混合物中で一緒にすることに
    よって(n+1)個の炭素原子を有するカルボン酸又は
    対応するエステルを製造する方法であって、 少なくとも1種のロジウム化合物及び少なくとも1種の
    イリジウム化合物又はこれら2種の金属を含有する少な
    くとも1種の化合物と、少なくとも1種のハロゲン含有
    促進剤とを含む触媒系の存在下で反応を実施する、前記
    方法。
  2. 【請求項2】 ロジウム対イリジウムの原子比が0.0
    1〜0.99の範囲である触媒系を用いることを特徴と
    する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 ロジウム及びイリジウムを反応媒体中で
    0.1〜100ミリモル/リットルの範囲の合計濃度で
    用いることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 反応媒体の総重量に対して0〜14重量
    %(0%を除く)の範囲の含有率の水の存在下で反応を
    実施することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに
    記載の方法。
  5. 【請求項5】 水素又はC〜C10アルキル基、C
    〜C10アシル基若しくはC〜C10アリール基を有
    するハロゲン含有促進剤を反応混合物の総重量に対して
    0〜20重量%(0%を除く)の範囲の含有率で存在さ
    せた下で反応を実施することを特徴とする、請求項1〜
    4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記反応成分を反応混合物の総重量に対
    して0〜40重量%(0%を除く)の範囲の含有率で存
    在させた下で反応を実施することを特徴とする、請求項
    1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 存在するカルボン酸とアルコールの形又
    はマスクされたアルコールの形の前記反応成分との反応
    に対応するエステルを反応混合物の総重量に対して0〜
    40重量%(0%を除く)の範囲の含有率で存在させた
    下で反応を実施することを特徴とする、請求項1〜6の
    いずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 生成したカルボン酸又は対応するエステ
    ルを溶媒として用いて反応を実施することを特徴とす
    る、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 【請求項9】 沃化メチル、酢酸メチル及び水の存在下
    でメタノールを用いて反応を実施すること並びに溶媒と
    して酢酸を選択することを特徴とする、請求項1〜8の
    いずれかに記載の方法。
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