JP2516602Y2 - スパイラル型モジュール - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、原液中の有用物質や有害物質の分離回収や
精製、原液の清浄化等に有用なスパイラル型モジュール
に関する。

［従来の技術と考案が解決しようとする課題］ 近年、気体や液体等の原液を分離精製する選択透過膜
が広く利用されている。この選択透過膜のモジュールと
して、平板型モジュール、チューブ型モジュールや、膜
面積が大きく、処理能力の高い中空糸型モジュールやス
パイラル型モジュールが知られている。

第５図は、従来のスパイラル型モジュールを示す概略
断面図であり、このモジュールは、中空管（31）と、こ
の中空管（31）に穿設された多数の孔（32）と、中空管
（31）の周囲に、メッシュ状又は波形状等のスペーサ
（33）を介して、スパイラル状に巻回された袋状分離膜
（34）とを有している。該袋状分離膜（34）は、２枚の
分離膜の巻回終端部及び両側端部が閉塞され、始端部で
中空管（31）と連通されて構成されており、該袋状分離
膜（34）内にはトリコット等のスペーサ（35）が配され
ている。上記メッシュ状又は波形状等のスペーサ（33）
と、袋状分離膜（34）と、トリコット等のスペーサ（3
5）とで、スパイラル型エレメント（36）を構成してい
る。

またハウジング（37）の側壁を構成する蓋体を中空管
（31）が貫通した状態で、上記スパイラル型エレメント
（36）がハウジング（37）内に収容保持され、スパイラ
ル型エレメント（36）とハウジング（37）との間には、
環状空間（38）が形成されている。ハウジング（37）の
一方の蓋体には、原液を供給する供給管（39）が設けら
れ、他方の蓋体には流出管（40）が設けられている。こ
の流出管（40）からは、供給管（39）から供給される原
液のうち袋状分離膜（34）間を通過した濃縮液が流出す
る。また中空管（31）の開口端部からは、供給管（39）
からの原液のうち袋状分離膜（34）を透過した透過液が
流出する。

そして、スパイラル型エレメント（36）のうち供給側
の端部には、断面Ｖ字状の環状封止部材（41）が配設さ
れ、前記環状空間（38）を封止している。

この構造のモジュールによると、上記環状封止部材
（41）により、供給管（39）から供給される原液が、環
状空間（38）を流れるのを阻止できる。しかしながら、
上記モジュールでは、袋状分離膜（34）間を通過した濃
縮液が、上記環状空間（38）に滞留する。環状空間に濃
縮液が滞留すると、細菌が繁殖するだけでなく、回収効
率が低下する。

上記の点に鑑み、種々の構造のモジュールが提案され
ている。例えば、米国特許第4064052号には、環状空間
に少量の原液を流通させるため、上記と同様に配設され
た環状封止部材に小孔を穿設したモジュールが提案され
ている。しかしながら、このモジュールでは、小孔を通
じて原液が流通するので、処理効率が低下する。

また小孔が穿設されていない環状封止部材を、上記ス
パイラル型エレメントの両端部に配し、環状空間の両端
を環状封止部材で封止することも考えられる。しかしな
がら、環状封止部材が断面Ｖ字状であるため、装脱着時
に、環状封止部材のうち挿入方向の先端部がハウジング
に引掛る。従って、スパイラル型エレメントの交換時に
環状封止部材を装脱着するのが困難である。

従って、本考案の目的は、環状封止部材の装脱着が容
易であり、かつスパイラル型エレメントとハウジングと
の間を確実に封止できるスパイラル型モジュールを提供
することにある。

［課題を解決するための手段および作用］ 本考案は、孔が穿設された中空管と、該中空管にスパ
イラル状に巻回されたスパイラル型エレメントと、該ス
パイラル型エレメントを収容するハウジングと、スパイ
ラル型エレメントの両端部に配され、スパイラル型エレ
メントとハウジングとの環状空間を封止する環状封止部
材とで構成された分離装置であって、上記封止部材が、
変態温度で、側方が開放した断面Ｖ字状に変態して環状
空間を封止するための形状記憶性部材を有するスパイラ
ル型モジュールにより、上記課題を解決するものであ
る。

上記構成のモジュールによれば、環状封止部材が、変
態温度で、側方が開放し、環状空間を封止可能な断面Ｖ
字状に変形する形状記憶性部材を含んでいるので、形状
記憶性材料の変態温度を原液処理時の温度等に応じて、
原液処理時の温度等よりも低く、又は高く設定すること
により、変態温度以下又はそれ以上の温度では封止部材
を偏平状等とし、容易に装脱着できる。また装着後や原
液処理時の温度で、封止部材を断面Ｖ字状の封止可能な
形状に変形できる。また原液処理時には、封止部材によ
りスパイラル型エレメントとハウジングとの間が封止さ
れるので、原液や濃縮液がスパイラル型エレメントとハ
ウジングとの間に形成された環状空間に流入したり、滞
留したりすることがない。従って、封止部材と、スパイ
ラル型エレメント及びハウジングと間に隙間等が生ずる
ことなく、環状空間を確実に封止できる。

［実施例］ 以下に、添付図面に基づいて本考案をより詳細に説明
する。

第１図は本考案の一実施例を示す概略断面図であり、
第２図は第１図のII-II線断面図である。この例では、
スパイラル型モジュールとして、前記と同様に巻回終端
部及び両側端部が閉塞された袋状分離膜が用いられてい
る。すなわち、このモジュールは、周壁に多数の孔
（２）が穿設された中空管（１）と、この中空管（１）
の周囲に、メッシュ状又は波板状等のスペーサ（３）を
介して、巻回始端部からスパイラル状に巻回された袋状
分離膜（４）とを有している。上記袋状分離膜（４）間
に原液を供給するため、メッシュ状又は波板状等のスペ
ーサ（３）は、袋状分離膜（４）の間にあって、原液及
び濃縮液の流路を確保する。袋状分離膜（４）の内部に
は、トリコット等のスペーサ（５）が配されており、こ
のスペーサ（５）は、分離膜（４）を透過した透過液の
流路を確保する。上記スペーサ（３）と、袋状分離膜
（４）と、トリコット等のスペーサ（５）とで、スパイ
ラル型エレメント（６）を構成している。なお、スパイ
ラル型エレメント（６）の外周面は、被覆カバー（７）
で被覆されている。

またスパイラル型エレメント（６）を収容するハウジ
ング（８）は、中空筒状のハウジング本体（8a）と、該
ハウジング本体（8a）の両側開口部を閉塞する蓋体（8
b）（8c）とで構成されている。上記スパイラル型エレ
メント（６）は、中空管（１）が蓋体（8b）（8c）を貫
通した状態で、ハウジング（８）内に収容保持され、ス
パイラル型エレメント（６）とハウジング本体（8a）と
の間には、環状空間（９）が形成されている。

ハウジング（８）の一方の蓋体（8b）には、原液を供
給する供給管（10）が設けられ、他方の蓋体（8c）には
流出管（11）が設けられている。この流出管（11）から
は、供給管（10）から供給された原液のうち、袋状分離
膜（４）間を通過した濃縮液が流出する。また中空管
（１）の開口端部からは、供給管（10）から供給された
原液のうち、袋状分離膜（４）を透過した透過液が中空
管（１）の孔（２）を通じて流出する。

そして、供給管（10）から供給された原液及び濃縮液
が前記環状空間（９）に流入したり、滞留するのを防止
するため、環状空間（９）のうちスパイラル型エレメン
ト（６）の両端部には、断面Ｖ字状の環状封止部材（1
2）が配設され、前記環状空間（９）を封止している。
より詳細には、環状封止部材（12）は、変態温度で断面
Ｖ字状となる形状記憶合金（12a）と、該形状記憶合金
（12a）と一体化した柔軟性パッキン（図示せず）とで
構成されていると共に、環状空間（９）の側方に開放し
た状態で、スパイラル型エレメント（６）とハウジング
本体（8a）との間に配設されている。なお、形状記憶合
金（12a）の変態温度は原液が処理される室温に設定さ
れている。従って、上記形状記憶合金（12a）の変態温
度以下の温度（例えば、５℃程度以下）の温度で、環状
封止部材の形状を偏平状とすることにより、容易に装脱
着できると共に、原液処理時には、５℃程度を越える温
度とすることにより、前記断面Ｖ字状の封止部材（12）
により環状空間（９）を確実に封止できる。またモジュ
ールを、例えば80℃以上の熱湯で滅菌する用途では、変
態温度を、使用温度（例えば、５〜60℃）以上に設定
し、かつ変態温度以上では偏平状の形状を記憶させた形
状記憶合金を用いると、モジュールの装着が容易となる
と共に、熱滅菌時には環状空間（９）も同時に滅菌でき
る。しかも、膜分離において、供給管（10）から原液は
加圧下で供給されるとともに、分離膜（４）を透過する
透過成分の量は僅かであり、流出管（11）からは多量の
濃縮液が流出する。そのため、ハウジング（８）の両側
部の空間では原液又は濃縮液が複雑に流動し、ハウジン
グ（８）の両側部の空間と環状空間（９）との間には圧
力勾配が生じる。すなわち、ハウジング（８）の両側部
の空間（原液や濃縮液が流動状態の空間）に比べて、環
状空間（９）は低圧となる。

そして、断面Ｖ字状の環状封止部材（12）が環状空間
（９）の側方に解放した状態で配設されているので、断
面Ｖ字状の封止部材（12）で封止して原液を供給する
と、流動する原液又は濃縮液による圧力は、断面Ｖ字状
の封止部材（12）の内壁面に作用し、封止部材（12）を
環状空間（９）の内方へ移動させる力と、断面Ｖ字状の
封止部材（12）を押し拡げる力とに分力される。一方、
前記のように、前記封止部材（12）は形状記憶合金（12
a）と柔軟性パッキンとで構成されているとともに変態
温度では断面Ｖ字状への変態に伴って柔軟性パッキンが
ハウジング本体（8a）およびスパイラル型エレメント
（６）と密着するので、封止部材（12）により環状空間
（９）を封止できるとともに、封止部材（12）の環状空
間（９）の内方への移動も規制されている。また、原液
又は濃縮液による圧力は、断面Ｖ字状の封止部材（12）
を押し拡げる力、すなわち封止部材（12）をハウジング
（８）およびエレメント（６）に密着させる力となる。
従って、原液、濃縮液による圧力が作用することによ
り、封止部材（12）により環状空間（９）をより確実に
封止できる。

なお、分離膜は、例えば、袋状分離膜内に中空管を収
容してくるみ、袋状分離膜内と中空管の中空部とを孔を
介して連通させた状態で、袋状分離膜を中空管にスパイ
ラル状に巻回してもよい。より具体的には、第３図
（Ａ）に示されるように、袋状分離膜（4a）の内部にト
リコット等のスペーサ（５）を配し、かつ袋状分離膜
（4a）内に中空管（１）を収容すると共に、スペーサ
（３）を介して一辺の袋状分離膜（4a）をくるんだり、
第３図（Ｂ）に示されるように、袋状分離膜（4b）内に
中空管（１）を収容すると共に、スペーサ（３）を介し
て、二辺の袋状分離膜（4b）でくるむことにより、袋状
分離膜（4a）（4b）内と中空管（１）の中空部とを、孔
（２）を介して連通させてもよい。

環状封止部材（12）は、変態温度で、環状空間を封止
可能な断面Ｖ字状に変態する形状記憶性部材、特に形状
記憶合金製部材を含んでいればよい。すなわち、封止部
材は、例えば、変態温度で断面Ｖ字状などに変態する形
状記憶性材料自体で構成されていてもよく、芯材として
の線状形状記憶性部材と柔軟性パッキンとの一体化物
や、断面Ｖ字状の形状記憶性部材とゴム等の柔軟性パッ
キンとの積層体のように、形状記憶性部材と複合化して
いてもよい。また封止性を高めるため、変態温度で変形
する形状記憶性部材の少なくとも端部に柔軟性パッキン
が一体化していればよい。なお、形状記憶性部材の変態
温度は原液処理温度に応じて適宜設定できる。形状記憶
性部材は、形状記憶合金に限らず、所定形状を記憶しう
る材料、例えば、ポリノルボルネン等の形状記憶性ポリ
マーなどで形成してもよい。また形状記憶性部材は、複
数の変態温度、例えば、低温及び高温の双方で形状を記
憶し、可逆的に変形してもよく、１つの変態温度で変形
してもよい。

さらには、封止性を高めるため、環状封止部材の端部
がスパイラル型エレメント及びハウジング本体のうち少
なくとも一方と係合しているのが好ましい。また環状封
止部材の端部がスパイラル型エレメントと係合又は固定
しているのがさらに好ましい。第４図（Ａ）（Ｂ）は本
考案の他の実施例を示す要部断面図であり、第４図
（Ａ）に示す例では、スパイラル型エレメント（16）の
両端部とハウジング（18）とに、形状記憶合金（22b）
を含む断面Ｖ字状の環状封止部材（22a）の端部と係合
する段部（23）が形成されている。また第４図（Ｂ）に
示す例では、形状記憶合金（22d）を含む断面Ｖ字状の
環状封止部材（22c）のうちスパイラル型エレメント（1
6）側の端部から固定片（24）が延出し、該固定片（2
4）が、スパイラル型エレメント（16）の両端部の段部
で接着固定されている。また環状封止部材（22c）の他
方の端部は、ハウジング（18）の段部（23）で係合して
いる。従って、原液処理時に大きな圧力が環状封止部材
（22a）（22c）に作用しても、環状封止部材（22a）（2
2c）を、接着固定や段部（23）との係合状態で確実に保
持でき、スパイラル型エレメント（16）とハウジング
（18）との間に形成された環状空間（19）を確実に封止
できる。また上記環状封止部材（22a）（22c）を変態温
度以下の温度に冷却、又は変態温度以上に加温すること
により、環状封止部材（22a）（22c）を偏平状などに容
易に変形できるので、環状封止部材（22a）（22c）が段
部（23）で係合していても、環状封止部材（22a）（22
c）を容易に装脱着できる。

なお、封止部材の端部は前記段部（23）に限らず、凹
部や環状溝等と係合してもよく、環状封止部材の端部
に、係合凸部等が形成されていてもよい。

［考案の効果］ 以上のように、本考案のスパイラル型モジュールによ
れば、スパイラル型エレメントの両端部とハウジングと
の環状空間を封止する環状封止部材が、変態温度で、環
状空間を封止可能な断面Ｖ字状に変形する形状記憶性部
材で構成されているため、環状封止部材の装脱着が容易
であると共に、スパイラル型エレメントとハウジングと
の間を確実に封止できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示す概略断面図、 第２図は第１図のII-II線断面図、 第３図（Ａ）（Ｂ）はそれぞれスパイラル型エレメント
の巻回状態を示す概略断面図、 第４図（Ａ）（Ｂ）はそれぞれ本考案の他の実施例を示
す要部断面図、 第５図は従来のスパイラル型モジュールを示す概略断面
図である。 （１）……中空管、（２）……孔、（４）（4a）（4b）
……分離膜、（６）（16）……スパイラル型エレメン
ト、（８）（18）……ハウジング、（９）（19）……環
状空間、（12）（22a）（22c）……環状封止部材、（12
a）（22b）（22d）……形状記憶合金

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】孔が穿設された中空管と、該中空管にスパ
   イラル状に巻回されたスパイラル型エレメントと、該ス
   パイラル型エレメントを収容するハウジングと、スパイ
   ラル型エレメントの両端部に配され、スパイラル型エレ
   メントとハウジングとの環状空間を封止する環状封止部
   材とで構成された分離装置であって、上記封止部材が、
   変態温度で、側方が開放した断面Ｖ字状に変態して環状
   空間を封止するための形状記憶性部材を有することを特
   徴とするスパイラル型モジュール。
2. 【請求項２】封止部材の端部が、スパイラル型エレメン
   ト及びハウジングのうち少なくとも一方と係合している
   請求項１記載のスパイラル型モジュール。