JP2511462B2 - 一成分組織接着剤およびその製造方法 - Google Patents

一成分組織接着剤およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明はフイブリノゲン、第XIII因子(F XIII)、ト
ロンビン阻害剤、プロトロンビン因子、カルシウムイオ
ンおよび適切な場合にはプラスミン阻害剤を含む組織接
着剤に関する。結合されるべき傷に自然に存在する促進
剤は、接着に必要なトロンビンを接着剤中のプロトロン
ビンから遊離させる。
人間または動物組織における病変部お修復に伴う生理
学的過程の結果として障害部の帯域にフイブリンが沈着
する。これは傷害を受けた細胞から流出するトロンボプ
ラスチンにより、そして血漿第VII因子形成第X因子活
性剤(これは次いで第V因子と共に、そして燐脂質およ
びカルシウムとの複合体としてプロトロンビンをトロン
ビンに変える)に接触すると開始される。更にトロンビ
ンの作用により、フイブリノゲンからのフイブリノペプ
チドAおよびBの除去を経てフイブリンモノマーが生じ
それらが凝集して共有結合的に架橋したフイブリンフイ
ラメントを形成する(同様にトロンビンにより活性化さ
れるトランスグルタミナーゼである第XIIIa因子による
イソペプチド結合の形成を伴う)。阻害剤、すなわちα
2−抗プラスミンは第XIII因子によりフイブリンフイラ
メントに結合されそしてそれらをプラスミンによる分解
から防護する。
この止血および傷の治癒の過程から基質としてのフイ
ブリノゲンの外に2種類の酵素すなわちトロンビンと第
XIII因子が必要であることは明白である。
この関連でのトロンビンの役目はフイブリノゲンおよ
び第XIIIの両者を活性化する、すなわちそれらを反応性
の形に変えることにある。これはフイブリノゲンについ
てはフイブリンモノマーであり、そして第XIII因子につ
いては触媒的に活性なトランスグルタミナーゼ(第XIII
a因子)である。
欧州特許第0,068,047号は、傷害部閉鎖剤として適
し、そしてフイブリノゲン、フイブリン溶解阻害剤およ
びトロンビンまたはプロトロンビンを無水系中に含む富
化血漿画分を開示している。この接着剤は水に溶解した
状態で適用することはできず、粉末としてしか適用でき
ないという使用上の欠点がある。その混合物を水に溶解
すると成分同士が反応して血餅が生じる。
水を溶媒とする一成分接着剤については、接着剤の製
造、溶媒による再構成、および使用待機状態保持の間に
機の熟していない望ましくない活性化が起こらずにしか
も一方で接着部位に適用後比較的迅速に十分高い強度が
得られるような方法で、またそのような量比で活性物質
を組み合わせることは困難である。
驚くべきことに、実際上、生理学的媒質中で操作する
ことのできる一成分接着剤の再現性ある製造を可能にす
る条件が見出された。
このタイプの一成分接着剤を製造し、そして処理しや
すいものとするための要件は、フイブリノゲン、プラス
ミン阻害剤、F XIII、プロトロンビン濃縮物、トロンビ
ン阻害剤およびカルシウムイオンの相対濃度を至適化す
ることである。カルシウムイオンは凝固因子の活性化に
不可欠であることから、このことは特にトロンビン阻害
剤としてのAT IIIおよびカルシウムイオンにあてはま
る。高濃度はトロンビン形成速度を高め、そして低濃度
はそれを低める。従って、カルシウムイオン濃度が至適
であることが必要である。そうだとすれば、トロンビン
形成は排除できないことからトロンビン阻害剤、好まし
くはAT IIIと組み合わせるのが得策である。これは一方
では接着剤製造の際にトロンビン形成が排除されねばな
らないこと、そして他方では凝固、すなわちフイブリン
フイルムの沈着が傷害部表面との接触の際に開始すると
きその接着が安定な血餅を迅速に形成しなければならな
いことによるものである。それ故に、トロンビン含有一
成分接着剤の製造、およびその水性溶液中での使用は考
えられあいことであり、更に製造中および使用準備中に
トロンビンへの活性化を妨げる条件においてのみプロト
ロンビンの使用が可能である。これらにはトロンビン阻
害剤およびカルシウムイオンの規定濃度の設定が含まれ
る。
従って、本発明は水性溶液中にフイブリノゲン、第XI
II因子、トロンビン阻害剤、プロトロンビン因子、カル
シウムイオンおよび適切な場合にはプラスミン阻害剤を
含む組織接着剤に関する。
いわゆる過凝固性(hypercoagulable)溶液としての
プロトロンビン(該溶液は更にカルシウムイオンおよび
AT IIIをも含有する)と共にフイブリノゲンをパツク
し、そして組織接着剤として用いることができることは
驚くべきことであった。
この本発明のタイプの接着剤は、固体剤型に変える、
例えば凍結乾燥し、そして水で再構成することができ
る。それらはすべての活性物質を低温殺菌された形で含
むことができ、またそうすれば肝炎およびHTLV IIIの伝
染の危険が無くなる。
活性物質のフイブリノゲン、プラスミン阻害剤、第XI
II因子、カルシウムイオンおよびATIIIの混合比は、時
機尚早の活性化が起きることがなく、しかも傷害部との
接触時にその混合物が自発的に凝固しそしてフイブリン
を沈着するような比である。
これが生起するのに要する時間は臨床上の要件に合致
する。本発明の一成分接着剤はその作用においては従来
技術の二成分系と異ならない。
この接着剤中の活性物質混合物は、使用溶液中にあっ
て、フイブリノゲン濃度が70〜90mg/mlであり、そして
プロトロンビン因子濃度がF IIに基づき10〜30U/mlであ
るようなものである。一部が接着剤中でタンパク結合し
ているカルシウムイオンの濃度は、使用溶液中0.5〜1
ミリモル/lとなるようにする。トロンビン阻害剤の例は
ATIII、ヒルジンおよびヘパリンであり、そしてATIIIは
好ましくは0.1〜1U/ml(組織接着剤)の濃度で用いられ
るが、この濃度においてそれはプロトロンビン因子とカ
ルシウムイオンが前述の濃度のとき、時機尚早のフイブ
リン形成を防止する。しかしながら他方において、後者
を促すことも(このことが指示に基づき望ましいと思わ
れるときには)可能である。このためには、凍結乾燥接
着剤を0.5〜1ミリモル/l以上のカルシウムイオン最終
濃度となるよう溶解することができる。しかしながら、
その場合には再構成後速やかに用いることが必要であ
る。
接着剤を製造するには、可及的に高い活性を有し、そ
して適切な場合には低温殺菌した可溶性の形の活性物質
をまず製造する。フイブリノゲン濃度はなるべく高くす
べきである。何故ならば接着強度は濃度が高い程大きい
からである。フイブリノゲンは例えば、欧州特許第0,10
3,196号の記載の如くに製造し低温殺菌することがで
き、また欧州特許第0,085,923号の記載の如くに尿素ま
たはグアニジン残基を含むタイプの化合物の添加剤によ
り所望の溶解度を付与することができる。第XIII因子は
欧州特許第0,018,561号の記載の如くに低温殺菌するこ
とができ、またプロトロンビン因子は欧州特許第0,056,
629号の記載の如くに低温殺菌することができる。
本発明の好ましい接着剤における活性物質は原則的に
ヒト・フイブリノゲンを可及的高濃度に含み、第XIII因
子およびプロトロンビン複合体の因子(第II、VII,IXお
よびX因子)、カルシウムイオンおよび抗トロンビンII
Iで富化されている。組織接着剤またはプラスミノゲン
活性化剤および/またはプラスミンを阻害し、従って生
成フイブリンをプラスミンによる分解から守る阻害剤を
も含有する。この阻害剤は結合のために選択されたフイ
ブリノゲンの随伴物質の形であってもよいが、好ましく
はアプロチニンの形で接着剤に添加するのが好ましい。
凍結乾燥後の組織接着剤再構成を向上させるために、そ
の組織接着剤にアルブミンおよび/または尿素および/
またはグアニジン残基を含有するほか、適切な場合には
疎水性側鎖を有するアミノ酸または水溶性脂肪酸、そし
て更にヘパリンをも含む物質を含ませることもできる。
組織接着剤の調製に適しかつ好ましいフイブリノゲン
は精製され、そして既に第XIII因子を含有する。しかし
ながらこれとは別に(経験的に分かっていることである
が)第XIII因子に加えてα2−抗プラスミンおよびヒト
・アルブミンを含有する低温沈殿(cryoprecipitate)
も適している。しかしながら個々の成分、すなわちヒト
・フイブリノゲン、第XIII因子(血漿または胎盤からの
もの)、プラスミン阻害剤、プロトロンビン因子(第I
I、VII、IXおよびX因子)、アルブミン、ATIIIおよび
カルシウムイオン、尿素残基またはグアニジン残基を有
する化合物、または疎水性側鎖を有するアミノ酸または
水溶性脂肪酸を混合することによっても同等の作用を有
する接着剤を製造することもできる。
接着剤のための活性化合物混合物は固体、好ましくは
凍結乾燥物の形態にあるのが有利である。
組織接着剤は好ましくは使用溶液1mlあたり次の量の
(適切な場合には低温殺菌された)活性化合物を含有す
る。
65〜115、好ましくは70〜90mgの高度精製ヒト・フイ
ブリノゲン、 40〜80Uの第XIII因子、 1〜50、好ましくは10〜30IUのPPSB(プロトロンビン
因子)(F II(プロトロンビン)に基づく)、 0〜10,000KIUのアプロチニン、 0.01〜50、好ましくは0.1〜1IUの抗トロンビンIII、 0〜5USP Uのヘパリン、および 0.1〜5、好ましくは0.5〜1ミリモル/lのカルシウム
イオン(好ましくは塩化カルシウムとして)。
接着剤は安定化剤および可溶化剤として、例えばグル
タメート、L−イソロイシン、L−アルギニンまたはヒ
ト・アルブミンを含有することができる。
組織接着剤の固体活性化合物の混合物は、水またはカ
ルシウムイオン含有溶液に20℃で短時間に溶解すること
ができる。一体化または結合されるべき組織に適用され
ると、その接着剤は第二成分としてトロンビンを必要と
することなく、十分短い時間内に高い結合力を発現す
る。
従って、接着剤は1個のシリンジを用いて液状で適用
できるため、調製、操作および使用が簡素化する。この
接着剤は生体に許容されるものであり、また完全に吸収
される。
ラツト皮膚の刺し傷モデルにおける結合試験および豚
の小腸吻合部の結合において認められるように、この一
成分接着剤は結合時間においてあるいはひき裂き強度に
おいて二成分接着剤と異ならない。凍結乾燥活性化合物
の溶解に用いらる溶液の至適カルシウムイオン濃度を選
択することにより、結合強度を増大させることが可能で
さえある。
次の実施例は本発明を例示するためのものである。
実施例1 500mlの組織接着剤を製造するために、1モルあたり2
g原子のカルシウムイオンを含みそして欧州特許第0,10
3,196号に記載の方法で得た580gの低温殺菌され高度に
精製されたヒト・フイブリノゲンを下記の組成を有する
580mlの緩衝液、pH7.5(透析緩衝液)に溶解した: 0.05モル/l NaCl 0.005モル/l クエン酸三ナトリウム 0.3g/100ml L−アルギニン このようにして得られたフイブリノゲン溶液を4℃で
16時間ずつ2回および8時間にわたり1回、それぞれに
ついて36lの同一組成の緩衝液に対して透析した。透析
後のフイブリノゲン溶液の容量は1.53lであった。次に
その溶液を8000×gで20分間遠心分離した。280nmで測
定された溶液の光学密度は47であった。この溶液を他の
接着剤成分を添加してある(下記参照)前記緩衝液で35
〜37の光学密度(280nm)となるように、すなわち約20g
/lのヒト・フイブリノゲンとなるように希釈した。
このための特定の手順は次のとおりであった:透析を
終えそして遠心分離されたヒト・フイブリノゲン溶液
(1.53l)を35〜37℃で0.65および0.2μの孔径を有する
フイルタを通して順次過した。生理食塩水1mlあたり3
50UのF XIIIを含む117.5mlの低温殺菌F XIII濃縮物を0.
2μの孔径のフイルタを通して過して上で得られた滅
菌フイブリノゲン溶液に導入した。
次に515,000KIU(カリクレイン阻害剤単位)のアプロ
チニン、5.13gのグルタイミン酸ナトリウム、33.9mlの
ヒト・アルブミン溶液(20g/100mlを含有)、6.68gのイ
ソロイシンおよび10,000Uの低温殺菌PPSB濃縮物(プロ
トンビン因子濃縮物;F IIに基づく活性単位)、100Uの
(低温殺菌)ATIIIおよび3.1mlの0.1モル/lCaCl2溶液を
添加した。
次にその容量を透析緩衝溶液を用いて407.5mlとし
た。この溶液を0.2μの孔径を有するフイルタを通して
過して、F XIII含有フイブリノゲン溶液に導入した。
約2,055mlの以下の組成を有するpH7.5の溶液が得られ
た: ヒトフイブリノゲン 2.0g/100ml ヒトアルブミン 0.33g/100ml アルギニン 0.3g/100ml グルタミン酸ナトリウム 2.5g/l イソロインシン 3.3g/l 第XIII因子 20,000U/l アプロチニン 250,000KIU/l プロトロンビン 5,000U/l(F IIとして計算) 抗トロンビン 50U/l NaCl 0.05モル/l クエン酸三ナトリウム 0.005モル/l 塩化カルシウム 0.15ミリモル/l この滅菌溶液を4mlずつパックしてそして凍結乾燥し
た。無色で速溶性の凍結乾燥物が得られた。
組織接着剤として用いるために、1パック分を1mlの
溶媒にとった。
実施例2 125mlの組織接着剤を製造するために、欧州特許第0,1
03,196号に記載の方法により得られた100gの低温殺菌さ
れ高度に精製されたヒト・フイブリノゲン画分を112ml
の透析緩衝剤に溶解しそしてそれぞれ実施例1と同じ緩
衝液10lに対して3回透析した。透析後の濃縮フイブリ
ノゲン溶液の容量は269mlであった。それを8,000×gで
20分間遠心分離した。280nmでの溶液の光学密度は69.2
であった。その溶液を透析緩衝液の組成に相当する組成
を有し、そして他のすべての接着剤成分が混合されてい
る緩衝液で希釈してフイブリノゲンに基づく280nmでの
光学密度を35〜37とした。
このための手順は次のとおりとした: 127mlの緩衝液を容器に導入し、次いで溶液100mlあた
り20gのヒト・フイブリノゲンを含む8.2mlのヒト・アル
ブミン溶液、125,000KIUに達する6mlのアプロチニンお
よび2,500Uの第II因子と25UのATIIIを含む50mlのプロト
ロンビン濃縮物を添加した。1.65gのL−イソロイシン
および1.25gのグルタミン酸ナトリウムをこれに溶解し
た後、10,000UのF XIIIを含む40mlのF XIII濃縮物を添
加し、その混合物をホモジナイズそしてその溶液のpHを
pH7.5に調整した。
次にこの溶液を前述のフイブリノゲン溶液および0.75
mlの0.1M CaCl2溶液と混合しホモジナイズし、そして35
〜37℃で孔径0.2μのフイルタを通して過することに
より滅菌した。約500mlの実施例1と同様の組成の滅菌
溶液が得られた。この溶液を4mlずつパツクし、そして
凍結乾燥した。無色の速溶性乾燥物が得られた。
組織接着剤として用いるには、1パツク分を1mlの溶
媒にとる。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水性溶液中に、65〜115mg/mlのフィブリノ
    ゲン、40〜80U/mlの第XIII因子(F XIII)、1〜50IU/m
    l(F IIに基づく)のプロトロンビン因子、0.01〜50IU/
    mlのトロンビン阻害剤および0.1〜5ミリモル/lのカル
    シウムイオンからなる組織接着剤。
  2. 【請求項2】固体状の特許請求の範囲第1項記載の組織
    接着剤。
  3. 【請求項3】含まれるすべての活性物質が低温殺菌され
    た特許請求の範囲第1項記載の組織接着剤。
  4. 【請求項4】トロンビン阻害剤として抗トロンビンII
    I、ヒルジンまたはヘパリンを含む特許請求の範囲第1
    項の組織接着剤。
  5. 【請求項5】プラスミン阻害剤をさらに含む特許請求の
    範囲第1項記載の組織接着剤。
  6. 【請求項6】プラスミン阻害剤としてアプロチニンまた
    はα2−抗プラスミンを含む特許請求の範囲第5項記載
    の組織接着剤。
  7. 【請求項7】水溶液1ml中に、 65〜115mgのヒト・フィブリノゲン、 40〜80Uの第XIII因子、 1〜50IUのプロトンビン因子(PPSB)〔F II(プロトロ
    ンビンに基づく〕、 0.01〜50IUのトロンビン阻害剤および 0.1〜5ミリモル/lのカルシウムイオン を含む特許請求の範囲第1項記載の組織接着剤。
  8. 【請求項8】1〜10,000KIU/mlのアプロチニンをさらに
    含む特許請求の範囲第7項記載の組織接着剤。
  9. 【請求項9】7.5のpHを有し、少なくとも16g/lのヒト・
    フィブリノゲン、フィブリノゲン1モルあたり2グラム
    原子のカルシウムおよび1〜6g/lのL−アルギニンモノ
    塩酸塩を含む水性等張溶液に、ヒト・第XIII因子、ヒト
    ・アルブミン、プロトロンビン濃縮物、抗トロンビンII
    Iを加えて凍結乾燥し、容器の1/4量に再構成したときに
    以下の濃度範囲の成分を有する組織接着剤の製造方法: 65〜115mg/mlのヒト・フィブリノゲン、 40〜80U/mlの第XIII因子、 4〜40mg/mlのヒト・アルブミン、 1〜50IU/mlのプロトロンビン因子(PPSB)〔F II(プ
    ロトロンビンに基づく〕、 0.01〜50IU/mlの抗トロンビンIIIおよび 0.1〜5ミリモル/lのカルシウムイオン。
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