JP2510332B2 - チタンクラッド鋼板の加工方法 - Google Patents

チタンクラッド鋼板の加工方法

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JP2510332B2
JP2510332B2 JP2159397A JP15939790A JP2510332B2 JP 2510332 B2 JP2510332 B2 JP 2510332B2 JP 2159397 A JP2159397 A JP 2159397A JP 15939790 A JP15939790 A JP 15939790A JP 2510332 B2 JP2510332 B2 JP 2510332B2
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章夫 山本
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、チタンクラッド鋼板の加工方法に関するも
のである。
チタンクラッド鋼板は、チタンの優れた耐食性を生か
して主として化学装置などの厚板用途に使用されてき
た。しかし、厚板における加工は、塑性変形による加工
では非常に軽い曲げ程度であり、大半は開先を取った溶
接加工が行なわれるため、加工性の向上に対して要求は
なかった。ところが、本発明者らは、最近後述するよう
に非常に安価にチタンクラッド薄鋼板の製造技術を開発
した。その結果、チタンクラッド薄鋼板を単に平板のま
ま使用するだけでなく、複雑な塑性加工を行なう薄板用
途に使用したいとの要望が高まってきた。本発明は、こ
れらの要求を背景になされたもので、チタンクラッド薄
鋼板の加工限界を拡大する加工方法に関するものであ
る。
(従来の技術) チタンクラッド鋼の製造は、チタンと鋼の界面に脆い
Fe−Ti金属間化合物やTiCなどの層が生成すると界面で
剥離することから、溶鋼レベルで行なう鋳包み法は適用
できず、固相レベルでの接合が採用されている。
特に、爆着による方法は、中間媒接材を使用せずしか
も接合強度に対して信頼性が高いことから、現在最も広
く使用されている方法である。圧延圧接による方法は、
生産性が高く板厚が比較的自由にとれることや鉄鋼など
の生産工程が適用できることなどから、爆着法に比べて
安価に製造できるので一部で適用されている。しかし、
圧接による方法では接合界面に金属間化合物等の脆い層
が生成する可能性が非常に高く、接合強度に対する信頼
性は爆着法に比べて劣っているのが実情である。特に熱
間圧接の場合、拡散速度が大きくなるので、この危険性
は著しく高くなる。界面の脆い中間層の生成を抑制して
接合強度を上げる方法として、特開昭62−6783号公報に
は熱延加熱条件の限定が、また例えば特開昭55−48468
号公報、特開昭57−109588号公報、特開昭57−112985号
公報や特開昭57−192256号公報には、クラッド界面に純
鉄やニッケル、銅などの板ないし箔を中間媒接材として
挟み込む方法が開示されている。しかし、これらの方法
でも、界面に酸化物が生ずると接合が不可能になるた
め、原則として接合前の表面を真空に保つことが不可欠
となっている。
チタンクラッド鋼板は、以上示したように製造に特殊
な設備や大きなコストを必要とするために、Tiの厚さを
低減するコストメリットの大きい厚板しか製造されてお
らず、主として化学装置などの特殊な用途に使用される
だけであった。このような厚板用途では、塑性加工を利
用した加工としてはせいぜい曲率半径の大きな軽い曲げ
加工だけであり(例えば「チタニウム・ジルコニウム」
Vol.35 No.1昭和62年1月p.23〜31)、薄板で行なわれ
るような、密着曲げやプレス加工などの厳しい加工は要
求されなかった。すなわち、チタンクラッド鋼にはこれ
まで薄鋼板がなく、また製造されていたチタンクラッド
鋼厚板の部材への加工は、ほとんどが開先を付けた溶接
で行なわれるために、加工性の良いチタンクラッド鋼板
の開発や加工方法の改善要求はなかったのである。
すなわち、従来は薄板のような低価格で加工が厳しい
用途に使用できるチタンクラッド薄鋼板はなかったた
め、加工方法そのものの改善は行なわれることがなかっ
たし、加工限界を高める加工方法もまた開示されていな
かった。
(発明が解決しようとする課題) これに対して本発明者らは、TiとCuの金属間化合物を
積極的に利用し真空を不要とするチタンクラッド薄鋼板
の製造方法を発明した(特開平1−122677号公報)。こ
の結果、従来の厚板のチタンクラッド鋼板に比べて飛躍
的にコストが低いチタンクラッド薄鋼板を開発したので
ある。このため、Tiの圧倒的に優れた耐食性を生かして
建材や自動車部品、家電部品などへ適用する動きが高ま
ってきた。これらの用途に適用する場合、チタンクラッ
ド鋼板といえども薄鋼板と同様の加工性が不可欠であ
る。このような背景から、チタンクラッド薄鋼板の加工
性改善要求とともに、加工方法の改善要求が高まってき
たのである。
ところで、チタンクラッド薄鋼板は、母材の鋼や合わ
せ材のTiの薄板と較べて加工性が劣っているのが実情で
ある。このひとつの理由として、チタンクラッド鋼板を
加工した場合、通常の薄板の加工損傷である割れ(チタ
ンクラッド鋼板の場合は、Tiの破れとして現れる)や延
性破断の他に、界面の剥離による損傷が現れる。
本発明は、この界面剥離による損傷に着目し、それを
回避し得る加工方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段) 前記特開平1−122677号に示されたTiとCuの金属間化
合物を積極的に利用し大気中で全厚5mm、クラッド比10
%のチタンクラッド薄鋼板を製造した。このチタンクラ
ッド鋼板を用い、Ti面を外面として曲げ試験を行なっ
た。
Tiを外側にした外曲げ試験において、種々の曲げ角度
での試験片断面を観察したところ、表面のTiの破れに先
行してTi層直下に亀裂が発生することが認めた。すなわ
ち、チタンクラッド鋼板の加工損傷はTi層直下の界面の
加工性が支配していることを見出した。ところで、Tiと
その直下の鋼あるいは中間媒接材の金属との界面には、
わずかではあるが金属間化合物やβ−Tiのいわゆる硬質
層が存在する。表面に出現する加工損傷に先行して発生
する界面の破壊は、この界面硬質層から発生しているこ
とが考えられる。従って、これらの硬質層の加工性特に
延性を向上させることが、チタンクラッド鋼板の加工性
を向上させることになると判明した。金属間化合物等の
加工性は、加工温度の影響が大きいことから、本発明で
はチタンクラッド鋼板の加工温度を高くすることを指向
した。
第1図に、曲げ性に及ぼす加工温度の影響を示した。
図中において、×印はTi面の破れの発生有り、○印は破
れ発生なしを示し、▲印はエッジ部分の剥離を示した。
図から明らかなとおり、曲げ温度が高温になるほど小さ
な曲げ半径での良好な曲げが可能であった。一般に金属
は、高温ほど延性が良好である。従って、高温ほど加工
性が良好であり、加工温度が低温では高温より加工限界
が狭いのが通常である。この傾向がチタンクラッド鋼板
でも認められたのである。
さらに第1図の結果から、加工温度が50℃未満では、
まずエッジ損傷が発生して曲げ性を低下させていたのに
対して、50℃以上となるとまず通常の曲げによる割れに
相当するTi面の破れが発生し曲げ加工限界となることを
見出した。すなわち、チタンクラッド鋼板では加工温度
が50℃以下の常温付近の温度の場合、母材や合わせ材の
個々の金属単独での加工性の限界よりはるかに狭い範囲
でしか加工ができないのがわかったのである。言換える
と、チタンクラッド鋼板の加工は、常温付近の温度では
母材と合わせ材の界面の加工性が全体の加工性を支配し
ているが、50℃以上になると母材ないし合わせ材個々の
金属が単独で有している加工性の限界まで加工が可能と
なるのである。
本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
すなわち、 (1)Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンクラッド
鋼板を50℃以上400℃以下に加熱して加工することを特
徴とするチタンクラッド鋼板の加工方法。
を発明した。さらに曲げの場合用いられる曲げ型を加熱
することで、またプレスの場合金型およびポンチを加熱
することで同じ効果が得られるため、その点を考慮し、 (2)Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンクラッド
鋼板の曲げ加工に際し、曲げ型を50℃以上400℃以下に
加熱して加工することを特徴とするチタンクラッド鋼板
の曲げ加工方法。
(3)Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンクラッド
鋼板のプレス加工に際し、プレスの金型及びポンチを50
℃以上400℃以下に加熱して加工することを特徴とする
チタンクラッド鋼板のプレス加工方法。
を発明した。
次に、本発明の限定条件を示す。
加工温度が50℃未満では、界面の剥離損傷が発生し
て、合わせ材や母材個々の金属の加工性の限界よりはる
かに狭い範囲でしか加工ができないため下限とした。ま
た、400℃を超えると、鋼側の酸化が進行するだけでな
くTi中への酸素の侵入が起こり、加工性が劣化するため
に上限とした。
(作用) 本発明では、加工温度を常温より高くすることで、母
材と合わせ材の界面の加工性を母材ないし合わせ材単独
の加工性レベルまで向上させることができた。その結
果、常温加工では先行して発生する界面部材の剪断応力
によって引起こされる界面の加工損傷が抑制され、母材
ないし合わせ材の加工限界近傍までの加工が可能となっ
た。さらに、加工温度を常温より高くして加工すること
で、一般の金属と同様に常温加工より厳しい加工が可能
となる。
本発明では、これらの効果が相乗して、チタンクラッ
ド鋼板の加工限界が拡大し、曲げや絞り加工により器物
への加工が可能となった。
(実 施 例) 前記した特開平1−122677号公報に開示された方法に
基づき、TiとCuの金属間化合物を積極的に利用し大気中
で全厚5mm、クラッド比10%のチタンクラッド薄鋼板を
製造した。このチタンクラッド鋼板を用い、Ti面を外面
とする外曲げ試験を行なった。その結果を第1表に示
す。本発明方法の加熱曲げでは、曲げ半径5mmの180゜曲
げが完了しているが、常温曲げでは曲げ半径10mmの180
゜曲げも界面で剥離(界面のずれ)が発生し不可能であ
った。
さらに同じ方法で製造した全厚1mm、クラッド比10%
のチタンクラッド鋼板を用い、Ti面を外面として先端40
Rの円筒絞りを行なった。この際、金型及びポンチを種
々の温度に加熱した。その結果を第2表に示した。本発
明方法では、Ti面の破れなどなく絞り加工が完了した
が、比較の室温加工では、コーナー部分でTi面の破れが
生じ、そこからTiが剥離した。
(発明の効果) 本発明方法により、耐食性の優れたチタンクラッド鋼
板の複雑な形状への加工が可能となった。その結果、複
雑な形状の器物にチタンクラッド鋼を適用することが可
能になり、それらの器物の耐食性が著しく向上して寿命
が延びるなど、資源的工業的利益ははかりしれない。ま
た、従来定期的な塗装などのメンテナンスが不可欠であ
った用途では、事実上不要となり、この面からも大幅な
経済的効果が期待できる。また、表面の汚損がなくなる
だけでなく発銹に伴う保護衛生上の懸念が払拭されるこ
とから、社会的な利益も併せ得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図はチタンクラッド鋼板の曲げ性に及ぼす曲げ温度
の影響を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−203378(JP,A) 特開 昭56−164855(JP,A) 特開 昭57−192256(JP,A) 特開 昭57−146489(JP,A) 特開 昭62−176617(JP,A) 特公 昭57−49212(JP,B2) プレス加工ノウハウ編集委員会編「プ レス加工ノウハウ100題」(昭50−1− 30日、日刊工業新聞社発行第138,139頁

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンク
    ラッド鋼板を50℃以上400℃以下に加熱して加工するこ
    とを特徴とするチタンクラッド鋼板の加工方法。
  2. 【請求項2】Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンク
    ラッド鋼板の曲げ加工に際し、曲げ型を50℃以上400℃
    以下に加熱して加工することを特徴とするチタンクラッ
    ド鋼板の曲げ加工方法。
  3. 【請求項3】Tiを合わせ材とし鋼を母材としたチタンク
    ラッド鋼板のプレス加工に際し、プレスの金型及びポン
    チを50℃以上400℃以下に加熱して加工することを特徴
    とするチタンクラッド鋼板の加工方法。
JP2159397A 1990-06-18 1990-06-18 チタンクラッド鋼板の加工方法 Expired - Lifetime JP2510332B2 (ja)

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プレス加工ノウハウ編集委員会編「プレス加工ノウハウ100題」(昭50−1−30日、日刊工業新聞社発行第138,139頁

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