JP2505565B2 - 固体電解質燃料電池 - Google Patents

固体電解質燃料電池

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は固体電解質燃料電池の酸素極側および燃料極
側の通路構成膜およびインタコネクター膜膜の構造およ
び強度に関する。
[従来の技術] 従来の薄膜型固体電解質燃料電池を第9図に示す。
第9図に示すように、従来の 酸素極側通路構成膜4(LaSrMnO3またはLaMgCrO2)、 燃料極側通路構成膜5(NiO+YSZまたはLaMgCrO3)お
よび 酸素極側インタコネクター膜6(LaMgCrO3)、 燃料極側インタコネクター膜7(LaMgCrO3)、 は各々単独材料にて薄膜を構成することを考えていた。
そして、第9図に示すように電池を形成する膜、すな
わち 固体電解質膜1、 酸素側電極膜2、 燃料側電極膜3 はグリーンシート状態の3枚の薄膜を積層し、その他の
構成膜(4〜7)と同時に焼成することで全体を構成し
ている。
[発明が解決しようとする課題] 固体電解質燃料電池を構成する各材料は強度のない機
能性材料であり、強度のある実用的な薄膜型固体電解質
燃料電池を構成することが困難であった。
そして第10図に示す従来の構成で3層積層を焼成し、
常温まで降温する場合には、線膨張係数の差により各層
に熱応力が発生するため、各々の層にクラックが発生し
やすかった。
固体電解質膜1にクラックが発生した場合には燃料電
池としての機能を生じなくなる。
そのため熱応力と強度を検討する必要がある。
第11図に各層に生じる熱応力の計算値の1例を示す。
計算に使った各材料の線膨張係数αと膜厚δを以下に
示す。
・固体電解質(YSZ) α=10.6×10-6[1/℃] δ パラメータ ・燃料側電極膜(NiO+YSZ) α=16×10-6 δ=100[μm] ・酸素側電極膜(LaSrMnO3) α=12.3×10-6 δ=100[μm] である。他方、 固定電解質膜(YSZ)の許容応力σは σ=10〜20kg/mm2 である。
また、電池としての性能を満足するためには、 固体電解質膜の膜厚δを500[μm]以下 とする必要がある。
従って前記計算結果から従来構造では3層の同時焼成
が非常に困難である事がわかり、実験でもこの事が確認
されてきた。
本発明はこれらの問題を解決した燃料電池を提供する
ことを目的とする。
[課題を解決するための手段] (第1の手段) 本発明に係る燃料電池は、 (A)固体電解質膜と燃料側電極膜と酸素側電極膜を積
層してなる発電層と、 (B)強度のあるセラミックス薄膜および該薄膜にあけ
た帯状の穴の中に充填した電気伝導性のある物質で構成
した燃料極側通路構成膜および酸素極側通路構成膜と、 (C)強度と緻密性のあるセラミックス薄膜および該薄
膜にあけた帯状の穴の中に充填した電気伝導性のある物
質で構成した燃料極側インタコネクター膜および酸素極
側インタコネクター膜とから成り、 (D)前記発電層は、片方の面において燃料極側通路構
成膜を介して燃料極側インタコネクター膜に電気的に接
続するとともに、他方の面において酸素極側通路構成膜
を介して酸素極側インタコネクター膜に電気的に接続す
ることを特徴とする。
(第2の手段) 本発明に係る燃料電池は、前記第1の手段に記載した
燃料電池の電極膜に切り込みを設けたことを特徴とす
る。
[作 用] 前記のとおり、薄膜の強度を受け持つ構成部材の中に
あけた帯状の穴に電気伝導性を受け持つ機能部材を埋め
込む(塗り込む)ので強固な複合薄膜が製作できる。そ
して (1)燃料電池部(固体電解質膜1、酸素側電極膜2、
燃料側電極膜3)で発生した電圧、電流は、酸素極側通
路構成膜4の導電部4b、燃料極側通路構成膜5の導電部
5b、酸素極側インタコネクター膜6の導電部6b、燃料極
側インタコネクター膜7の導電部7bを通じて外部へ電流
が取り出せる。
(2)固体電解質膜1、各通路構成膜の強度用膜4a、5a
および各インタコネクター膜の気密性強度用薄膜6a、7a
が強固に接着されているため、 および全ての材料をYSZ,PSZに統一可能のため、 熱膨張に対しても強固であり、大型の燃料電池を構成
してもクラック等の発生が無くなる。
(3)各電極膜の厚さと各膜の熱応力計算値は第8図に
示すようになるので、各電極膜の残存厚さが各々 δNiO+YSZ=10μm、 δLaSrMnO3=30μm の時には固体電解質膜の膜厚を δYSZ=50〜200μm にすることにより σYSZ≦20kg/mm2 にすることができる(すなわち、σYSZを20kg/mm2以下
に収めることができる)。
そして、3層を同時に焼成した燃料電池の製作が可能
になる。
なお各々の膜厚が前述の条件の場合に対しては、実験
によって、固体電解質膜にクラックを生じないことが確
認されている。
[実施例] (第1実施例) 本発明の第1実施例を、第1図〜第6図、および第12
図〜第14図に示す。
第1図は本発明の第1実施例の構成を示す図、 第2図は第1実施例の酸素極側通路構成膜を示す図、 第3図は第1実施例の燃料極側通路構成膜を示す図、 第4図は第1実施例の酸素極側インタコネクター膜を
示す図、 第5図は第1実施例の燃料極側インタコネクター膜を
示す図、 第6図は第1実施例の複合化薄膜の製法を示す図、 第12図は第1実施例の通路構成膜の製作方法の説明
図、 第13図は第1実施例の通路構成膜と固体電解質膜の接
着方法の説明図、 第14図は第1実施例の通路構成膜とインタコネクター
膜膜の接着方法の説明図である。
第1図〜第6図において、 固体電解質膜1は、薄膜平板でYSZにより構成する。
酸素極側通路構成膜4は、第2図に示すように、強度
を持つ薄膜(YSZ,PSZまたはAl2O3,SiO2等で構成)4a
と、その薄膜の中にあけた帯状の穴に埋め込まれた(充
填された)導電性物質4b(LaSrMnO3またはPtAu)により
複合化した平板を製作後、全体を波形に加工し、第1図
に示すように、YSZスラリーにて、固体電解質膜1に直
接接着する。
同様に燃料極側通路構成膜5も、第3図に示すよう
に、強度を持つ薄膜(YSZ,PSZまたはAl2O3,SiO2等で構
成)5aと、その薄膜の中にあけた帯状の穴に埋め込まれ
た(充填された)導電性物質5b(NiO+YSZまたはNiPtA
u)により複合化した平板を製作後、全体を波形に加工
し、YSZスラリーにて、第1図に示すように固体電解質
膜1に直接接着する。
酸素側電極膜2および燃料側電極膜3は、各々の通路
構成膜4,5の導電性物質4b,5bを包み込む形で、第12図に
示すように固体電解質膜1に接着する。
通路構成膜4,5の導電性物質4b,5bは、第12図(A)、
(B)、(C)に示すように、それぞれ強度用薄膜4a,5
aにあけた帯状の穴に埋め込まれている。
そのため波形に加工するときも、固体電解質膜に接着
するときも、導電性物質を包み込む形で行うことにな
る。
固体電解質膜に通路構成膜を接着するときは、第13図
に示す方法で行う。
まず、第13図(A)に示すように、かき板工法により
固体電解質膜に電極膜を塗布する。
その場合に、電極膜を塗布しない筋状の所を残すため
に、かき板に、凹凸部をつけておく。
次ぎに、第13図(B)示すように、電極膜を塗布しな
かった筋状の所に、接着用YSZスラリーをディスペンサ
ーを用いて充填する。
そして、第13図(C)に示すように、接着用YSZスラ
リーと電極膜が塗布された固体電解質膜に、通路構成膜
の波形の底部が接するように、接着用YSZスラリーによ
り接着する。
酸素極側インタコネクター膜6は、第4図に示す構造
にする。
燃料極側インタコネクター膜7は、第5図に示す構造
にする。
そして、通路構成膜とインタコネクター膜との接着
は、第14図に示す方法による。
インタコネクター膜6,7も、強度を持つ気密性薄膜と
導電性物質により構成する。
ここで、酸素極側インタコネクター膜6の気密性強度
用薄膜6a(YSZ,PSZまたはAl2O3,SiO2等)は、気密性を
保つため緻密に形成し、導電性物質6bとしては、LaMgCr
O3,Pt,Au等を使用する。
燃料極側インタコネクター膜7も、酸素極側インタコ
ネクター膜6と同様気密性強度用薄膜厚7a(YSZ,PSZま
たはAl2O3,SiO2)と導電性物質7b(LaMgCrO3,Ni,Pt,A
u)により構成する。
セラミックス系導電物質のうち、LaSrMnO3,NiO,NiO+
YSZ、をドクターブレード法にて薄膜化、焼成し、強度
をあげることは難しい。(特にLaSrMnO3が困難であ
る)。
しかし、YSZ,PSZ,Al2O3,SiO2の薄膜は、それほど困難
ではない。
これらは、導電性に関しては、全体を導電性物質にて
構成する場合よりも悪くなるが、上記の溝巾とピッチ程
度の電気通路があれば、十分な電気特性の保持が可能で
ある。
そして、これらのセラミックスは、一般の強度メンバ
ーとしても使用されていることからわかるように、導電
物質の数倍の強度を持っている。
通路構成膜、および、インタコネクター膜は、次のよ
うにして製作する。
まず、ドクターブレード法により、平板強度用薄膜
(YSZ,PSZ,Al2O3,SiO2等で構成)のグリーンシートを作
成する。
ここでグリーンシートとは、未乾燥の柔らかいセラミ
ックスをいう。
次ぎに、前記グリーンシートに、巾2〜5mmの帯状の
穴をピッチ4〜10mmで加工する。
そして、前記穴に導電性物質(LaSrMnO3,Pt,Au,NiO+
YSZ,NiO,Ni等)を塗り込む。
通路構成膜の場合は、さらに第6図に示すように、全
体を波板状に曲げる。
つぎに、第1図に示すように、各インタコネクター膜
6,7と、各通路構成膜4,5の各々の導電性物質(6bと4b,5
bと7b)を接着する。
インタコネクター膜に通路構成膜を接着するときは、
第14図に示す方法で行う。
まず、第4図、第5図、および第14図に示すように、
波形をした通路構成膜のインタコネクター膜と接触する
側の波形の頂点に、導電性物質(LaMgCrO3,Pt,Au,NiO+
YSZ,NiO、Ni等)をスラリー化したものを、ディスペン
サーにより塗布する。
つぎに、第14図(B)に示すように、導電性物質が塗
布された通路構成膜の波形の底部が、インタコネクター
膜の導電性物質に接する位置で、通路構成膜をインタコ
ネクター膜に接着する。
(第2実施例) 本発明の第2実施例を第7図〜第8図に示す。
第7図は本発明の第2実施例の構成を示す図、 第8図は第2実施例による切り込みを入れた第3層電
池膜に生じる燃焼時の膜の応力分布を示す図である。
先ず本発明の概要として、本発明の電極膜の切り込み
の設置効果について述べる。
固体電解質燃料電池膜の基本的考え方は、電解質膜
(YSZ)が気密(クラックの無い状態)で、電極膜(Ni
O,LaSrMnO3)はポーラスで気体を通すこと(クラック
可)である。
したがって、電極膜はクラックがあっても良く、電解
質膜(YSZ)よりも強度が弱く、熱応力が発生した時、
電極膜に初期クラックを発生し、電解質膜(YSZ)の熱
応力を解放することが望まれる。
しかし、電極膜(NiO,LaSrMnO3)は、電気的特性を満
足するためには50μm以上の膜厚が必要である。
したがって、電気的特性を満足し(膜厚100μm)、
電解質膜(YSZ)よりも強度を下げる一手段として、電
極膜に切り込みを入れ、電極膜に初期クラックを発生さ
せるようにしたのが本発明である。
第7図に示すように、固体電解質膜1、酸素側電極膜
2および燃料側電極膜3をグリーンシート状態の3枚の
薄膜を積層する。
その後、カッタ等の機械的手段で、酸素側電極膜2a及
び燃料側電極膜3aに夫々δLaSrMnO3NiO+YSZの膜厚を
残した切り込み2b,及び3bを互いに直交するように入れ
る。
この積層薄膜の一面には前記燃料極側通路構成膜5を
切り込み溝3bが波形の谷間にくるように、又、他面には
酸素極側通路構成膜4を切り込み溝2bが波形の谷にくる
ように配置し、全体を同時に焼成して薄膜固体電解質燃
料電池を構成している。
上記のように構成された燃料電池において、3層積層
を焼成し常温まで降温した場合、この切り込み部によっ
て電極膜の強度が低下し、初期クラックは電極側に生じ
るため、固体電解質膜1のクラック発生を防止できる。
第8図は本発明による切り込みを入れた3層電極膜に
生じる焼成時の膜の応力の分布を示す。
(燃料電池の焼成時期) 本発明の燃料電池の焼成時期は、 (A)全ての部品を組み立てた後でも、 (B)あるいは、各々の部分を、あらかじめ焼成してお
いて、組み立て後に、再度焼成してもよい。
実施例1および実施例2は、前記(A)、(B)のど
ちらの方法でも可能である。
[発明の効果] 本発明は前述のように構成されているので、次に記載
されるような効果を奏する。
(1)強度が不足し電池を構成することが困難であった
酸素極側通路構成膜4、燃料極側通路構成膜5およびイ
ンタコネクター膜6,7を、強度を受け持つ気密性強度用
薄膜(4a,5a,6a,7a)と導電性を受け持つ導電性物質(4
b,5b,6b,7b)で構成することで、薄膜一体型(モノリシ
ック型)固体電解質燃料電池の製作が可能になる。
(2)固体電解質膜の熱応力を許容応力内に収め、燃料
電池として十分な電気出力が可能な、薄膜型固体電解質
燃料電池の製作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例の構成を示す図、 第2図は第1実施例の酸素極側通路構成膜の構成を示す
図、 第3図は第1実施例の燃料極側通路構成膜の構成を示す
図、 第4図は第1実施例の酸素極側インタコネクター膜の構
成を示す図、 第5図は第1実施例の燃料極側インタコネクター膜の構
成を示す図、 第6図は第1実施例の通路構成膜の複合化薄膜の波板形
状を示す図、 第7図は本発明の第2実施例構成をを示す図、 第8図は第2実施例による切り込みを入れた第3層電池
膜に生じる、燃焼時の膜の応力分布を示す図、 第9図は従来の薄膜型固体電解質燃料電池を示す図、 第10図は従来の薄膜型固体電解質膜燃料電池の鳥瞰図、 第11図は従来の燃料電池の3層電極膜に生じる焼成時の
膜応力を示す図、 第12図は第1実施例の通路構成膜の制作方法の説明図、 第13図は第1実施例の通路構成膜と固体電解質膜の接着
方法の説明図、 第14図は第1実施例の通路構成膜とインタコネクター膜
の接着方法の説明図である。 (符号の説明) 1……固体電解質膜、 2……酸素側電極膜、 3……燃料側電極膜、 4……酸素極側通路構成膜、 4a……4の気密性強度用薄膜、 4b……4の導電性物質、 5……燃料極側通路構成膜、 5a……5の気密性強度用薄膜、 5b……5の導電性物質、 6……酸素極側インタコネクター膜、 6a……6の気密性強度用薄膜、 6b……6の導電性物質、 7……燃料極側インタコネクター膜、 7a……7の気密性強度用薄膜、 7b……7の導電性物質、 8……酸化剤ガス、 9……燃料ガス、 100……発電層。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)固体電解質膜(1)と燃料側電極膜
    (3)と酸素側電極膜(2)を積層してなる発電層(10
    0)と、 (B)強度のあるセラミックス薄膜および該薄膜にあけ
    た帯状の穴の中に充填した電気伝導性のある物質で構成
    した燃料極側通路構成膜(5)および酸素極側通路構成
    膜(4)と、 (C)強度と緻密性のあるセラミックス薄膜および該薄
    膜にあけた帯状の穴の中に充填した電気伝導性のある物
    質で構成した燃料極側インタコネクター膜(7)および
    酸素極側インタコネクター膜(6)とから成り、 (D)前記発電層(100)は、片方の面において燃料極
    側通路構成膜(5)を介して燃料極側インタコネクター
    膜(7)に電気的に接続するとともに、他方の面におい
    て酸素極側通路構成膜(4)を介して酸素極側インタコ
    ネクター膜(6)に電気的に接続することを特徴とする
    固体電解質燃料電池。
  2. 【請求項2】電極膜に切り込みを設けたことを特徴とす
    る請求項(1)記載の固体電解質燃料電池。
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