JP2505094Y2 - 混合気吸入式頭上弁エンジンのくさび形燃焼室 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、混合気吸入式頭上弁エンジンのくさび形
燃焼室に係り、詳しくは混合気吸入式頭上弁エンジンの
シリンダヘッドの内側面に、縦断面がくさび形の燃焼室
の斜面と扁平なスキッシュ面とを互いに連続させてシリ
ンダ室に臨ませて形成した混合気吸入式頭上弁エンジン
のくさび形燃焼室に関する。

〔従来の技術〕

従来の頭上弁エンジンにおいては、第３図に示すよう
に、シリンダヘッド４の内側面に形成されたくさび形の
燃焼室５の急斜面に点火栓７が設けられるとともに緩斜
面８に吸・排気弁９が設けられ、この斜面８の一端側
に、ピストン頂面と平行な扁平なスキッシュ面12が連接
された構造となっており、圧縮行程においてピストン１
が上昇することによってスキッシュ面12下方の空間、つ
まりスキッシュ空間の混合気がスキッシュ流Ｓとなって
燃焼室５に押し流されて圧縮されるようになっている。

〔考案が解決しようとする課題〕 ところが、上記従来構造においては、スキッシュ面と
燃焼室斜面との接続部位で壁面方向が急変しているため
に、スキッシュ面の終端から出たスキッシュ流が斜面に
沿って円滑に流れず、対抗する斜面にぶつかって、その
流速が急激に低下し、上下に分流してしまう。このた
め、スキッシュ流は燃焼室内の上下２カ所において、流
速の小さい２つの渦流となる。この結果、火炎の伝播速
度の向上が図れないため、ガソリンノックを防止し易
く、燃焼騒音が大きくなるという問題があった。

本考案は、燃焼室の形状に簡単な改良を加えること
で、スキッシュ流を燃焼室内の鉛直面内で旋回する流速
の大きい渦流とすることによって、ガソリンノックを防
止し、燃焼騒音の低減が図れる混合気吸入式頭上弁エン
ジンのくさび形燃焼室を提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案は、例えば第１図
及び第２図に示すように、混合気吸入式頭上弁エンジン
のシリンダヘッド（４）の内側面に、縦断面がくさび形
の燃焼室（５）の斜面と扁平なスキッシュ面（12）とを
互いに連続させてシリンダ室（６）に臨ませて形成した
混合気吸入式頭上弁エンジンのくさび形燃焼室におい
て、圧縮工程でスキッシュ面（12）に臨むスキッシュ空
間から燃焼室（５）へ押し出されるスキッシュ流（Ｓ）
を燃焼室斜面（８）側へ流れ込み易くする変向用斜面
（13）を、スキッシュ面（12）と燃焼室斜面（８）との
連続部に角落とし状に形成した事を特徴としている。

〔作用〕

上記構成によると、圧縮工程においてスキッシュ空間
から燃焼室（５）へ押し出されてゆくスキッシュ流
（Ｓ）は、当初はピストン頂面と平行なスキッシュ面
（12）に沿って流れ、次に変向用斜面（13）によって少
し上向きに変向され、その後、燃焼室（５）の斜面
（８）に沿って流動し、燃焼室（５）の上部空間に流入
する。

続いて、スキッシュ流（Ｓ）は燃焼室の上部空間から
点火栓（７）の先端側に向けて下降しつつ進み、その
後、向きを変えてピストン頂面に沿って変向用斜面（1
3）側に流動する。即ち、このスキッシュ流（Ｓ）は燃
焼室（５）内において、鉛直面内で旋回する渦流にな
る。

ここで、燃焼室（５）は扁平なスキッシュ面（12）を
有する縦断面がくさび形の燃焼室であるため、圧縮工程
が終了した時点でこのスキッシュ面（12）はピストン１
の頂面によって閉塞される。従って、上記渦流はスキッ
シュ面（12）を除いた燃焼室（５）の領域内において、
鉛直面内で旋回する。

このため、本考案によれば、まず、第１に、扁平なス
キッシュ面（12）が形成されている分、火炎の伝播距離
を短くできる。

第２に、スキッシュ流（Ｓ）は、鉛直面内で旋回する
渦流であるため、その流速は衰えず、所定の速度で旋回
している。このため、火炎の伝播速度は、スキッシュ流
（Ｓ）が流速を有している分だけ増速されることにな
る。

ここで、ガソリンノックは、周知のように、火炎伝播
の末端部のガス、つまり端ガスが急激に燃焼することに
よって発生し、その理由を説明するための有力な説とし
て、RICARDO、WOODBURGらにより提唱された自発火説が
ある。

この自発火説によれば、火炎の伝播距離を短くする
か、又は伝播速度を大きくすれば、ガソリンノックが防
止されることになる（例えば、株式会社 養賢堂より昭
和51年９月10日に発行された「第３次改善 内燃機関講
義」（長尾 不二夫著）の第203頁〜第204頁の記載参
照）。

従って、本考案によれば、上述のように、火炎の伝播
距離を短くでき、かつ火炎の伝播速度を増大できるの
で、この２つの作用の相乗的効果によってガソリンノッ
クを防止することができる。即ち、本考案では、火炎の
伝播距離を短くすること、及び火炎の伝播速度を増大す
ることの２点を同時に達成することで、ガソリンノック
を防止しているのである。そして、ガソリンノックを防
止できる結果、燃焼騒音の低減が図れる。

〔実施例〕

第１図は、混合気吸入式頭上弁エンジンのシリンダヘ
ッド部付近の縦断面が示されている。

ピストン１を内嵌したシリンダ２の上端には、ガスケ
ット３を介してシリンダヘッド４が連結され、このシリ
ンダヘッド４の内側面に縦断面がくさび形の燃焼室５が
シリンダ室６に対して一側方に片寄せて形成されてい
る。

くさび形燃焼室５の急傾斜の斜面には点火栓７が設け
られるとともに、燃焼室５の緩傾斜の斜面８に吸・排気
弁９を備えた吸気口10と排気口11が形成されている。

前記燃焼室５の側部にはガスケット３の挟圧面に連ら
なるスキッシュ面12がピストン１の頂面１と平行に形成
され、このスキッシュ面12と燃焼室５の緩傾斜斜面８の
下端との連結部にこの斜面８より緩い角度のスキッシュ
流変向用斜面13が角落し状に形成されている。従って圧
縮行程においてピストン１の上昇に伴ってスキッシュ面
12とピストン１頂面との間の空間、つまりスキッシュ空
間から燃焼室５へ押し出されるスキッシュ流Ｓがスキッ
シュ面12、変向用斜面13及び燃焼室斜面８に沿って円滑
に流動して燃焼室５上部に流入してしゆくよう構成され
ている。

尚、前記変向用斜面13を滑らかな弯曲斜面に形成する
とスキッシュ流Ｓが一層円滑に燃焼室５に流入するもの
である。

〔考案の効果〕

以上説明したように、本考案によれば、まず第１に、
燃焼室として、扁平なスキッシュ面を有する縦断面がく
さび形の燃焼室を採用しているため、火炎の伝播距離を
短くできる。

第２に、変向用斜面を用いてスキッシュ流を円滑に燃
焼室斜面に沿わせながら燃焼室上部に流入させることに
より、スキッシュ流を燃焼室内において、鉛直面内で旋
回する流速の大きい渦流とすることができるので、その
分、火炎の伝播速度の向上が図れる。

このため、本考案によれば、ガソリンノックを防止で
き、燃焼騒音を低減できる。

しかも、スキッシュ流の円滑な流動を促進するため
に、燃焼室斜面とスキッシュ面との半径方向における連
結部を少し角落としするだけでよいので、吸・排気弁の
取付けにも特に変更を加える必要がない。このため、従
来とほとんど同じ圧縮比を維持できるとともに、従来と
同様の開弁リフト量を確保しながら上記効果を発揮でき
る利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は混合気吸入式頭上弁エンジンのシリンダヘッド
部位の縦断面図、第２図はシリンダヘッドの下面図、第
３図は従来構造の要部縦断面図である。 ４……シリンダヘッド、５……燃焼室、６……シリンダ
室、８……燃焼室斜面、12……スキッシュ面、13……変
向用斜面。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】混合気吸入式頭上弁エンジンのシリンダヘ
   ッド４の内側面に、縦断面がくさび形の燃焼室５の斜面
   ８と扁平なスキッシュ面12とを互いに連続させてシリン
   ダ室６に臨ませて形成した混合気吸入式頭上弁エンジン
   のくさび形燃焼室において、 圧縮行程でスキッシュ面12に臨むスキッシュ空間から燃
   焼室５へ押し出されるスキッシュ流Ｓを燃焼室斜面８側
   へ流れ込み易くする変向用斜面13を、スキッシュ面12と
   燃焼室斜面８との連続部に角落し状に形成した事を特徴
   とする混合気吸入式頭上弁エンジンのくさび形燃焼室