JP2504861Y2 - テ―パ状工作物の支持装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、内面研削盤等において外形がテーパ状にな
った工作物を支持するためのテーパ状工作物の支持装置
に関するものである。

〔従来の技術〕

従来より、テーパ状工作物の支持装置として、第４図
および第５図に示すものが知られている。

この支持装置は、外形がテーパ状になった工作物Ｗを
回転させながら砥石Ｂによって工作物Ｗの内面を研削す
る内面研削盤等の支持装置であって、１個のシュー（支
持部材）1Aと上下一対のローラ2A,3Aとを備えている。

シュー1Aと一対のローラ2A,3Aとは工作物Ｗを挿入す
る工作物挿入部10Aの回りに配置されていて、これらシ
ュー1Aおよび一対のローラ2A,3Aで工作物挿入部10Aに挿
入された工作物Ｗを径方向に動かないように規制して保
持することができるように構成されている。

各ローラ2A,3Aは、それぞれ駆動軸4A,5Aに固定されて
いる。各駆動軸4A,5Aは、工作物挿入部10Aに挿入された
工作物Ｗの軸線αからなる等距離の位置に、かつ、工作
物Ｗの軸線αに対して平行に設けられ、共に同一駆動源
（図示省略）に連結されている。このため、この装置に
おいては、各ローラ2A.3Aを共に上記駆動源の駆動力に
よって同一回転数で回転駆動させることができ、２個の
ローラ2A,3Aに伝達された駆動源の駆動力によって工作
物Ｗを確実に回転させることができるようになってい
る。

また、この装置においては、上側のローラ2Aで工作物
Ｗの軸方向の中央部を支持するとともに、工作物Ｗを軸
方向のおよび径方向に安定させるために、下側のローラ
3Aの軸方向両端部でそれぞれ工作物Ｗの軸方向両端部を
支持するように構成している。なお、7Aは、工作物Ｗの
軸方向への動きを規制するフロントプレートである。

〔考案が解決しようとする課題〕

上記従来の装置は、外形がテーパ状になった工作物Ｗ
の軸方向に異なる部位をローラ2A,3Aで支持するように
していたため、ローラ2A,3Aと工作物Ｗとの接触部位
P₁，P₂，P₃におけるローラ2A,3Aの外径D₁，D₂，D₃およ
び工作物Ｗの外径d₁，d₂，d₃がそれぞれ異なり、各接触
部位P₁，P₂，P₃におけるローラ2A,3Aの外周と工作物Ｗ
の外周との外周比k₁（＝D₁／d₁），k₂（＝D₂／d₂），k₃
（＝D₃／d₃）に違いが生じ、各接触部位P₁，P₂，P₃にお
いてスリップが発生していた。

例えば、接触部位P₁，P₂，P₃におけるローラ2A,3Aの
外径D₁，D₂，D₃を50mm,48.75mm,47.48mmとし、接触部位
P₁，P₂，P₃における工作物Ｗの外径d₁，d₂，d₃を10mm,1
1.25mm.12.52mmとすると、ローラ2A,3Aが１回転した場
合、工作物Ｗの回転数は、接触部位P₁で５回、接触部位
P₂で4.33回、接触部位P₃で3.79回となり、スリップが発
生する。

このため、従来は、工作物Ｗにローラ2A,3Aのスリッ
プ傷（ローラマーク）が付いたり、工作物Ｗの回転不良
やローラ2A,3Aの寿命低下を招いたりしていた。

なお、下側のローラ3Aも工作物Ｗと１箇所のみで接触
させるようにすれば、上側のローラ2Aと下側のローラ3A
との回転数を変えたり、工作物Ｗの中心から駆動軸4Aの
中心までの中心距離と工作物Ｗの中心から駆動軸5Aの中
心までの中心間距離とを異ならせて上下ローラ2A,3A間
で工作物Ｗとの接触部位における外周比を合わせたりす
ることで、スリップの発生を防止することができるが、
工作物Ｗの支持が不安定になる。

以上の事情に鑑みて、本考案は、ローラと工作物との
接触部位においてスリップが発生するのを防止すること
ができるテーパ状工作物の支持装置を提供しようとする
ものである。

〔課題を解決するための手段〕 本考案にかかるテーパ状の工作物の支持装置は、１個
の支持部材と、一対の駆動軸にそれぞれ支承された一対
のローラとを備え、これら支持部材と一対のローラとで
外形がテーパ状になった工作物を支持するとともに、前
記一対のローラの少なくとも一方がその軸方向の複数個
の部位で前記工作物の軸方向の複数個の部位をそれぞれ
支持するように構成されたテーパ状工作物の支持装置に
おいて、前記工作物の軸方向の複数個の部位を支持する
ローラと工作物との各接触部位におけるローラ側の外径
と工作物側の外径との比が全て等しくなるように、前記
工作物の軸方向の複数個の部位を支持するローラがその
軸線の前記工作物の軸線に対して傾斜させて設けられた
ものである。

〔作用〕

以上の構成によれば、工作物の軸方向の複数個の部位
を支持するローラと工作物との各接触部位におけるロー
ラ側の外周と工作物側の外周と工作物側の外周比が全て
等しくなり、この結果、ローラを回転させた時、ローラ
と工作物との全接触部位において、ローラ側と工作物側
との周速が一致するようになり、スリップが発生しなく
なる。

〔実施例〕

第１図（ａ），（ｂ）および第２図は、本考案にかか
るテーパ状工作物の支持装置の一実施例を示している。

この支持装置は、外形がテーパ状になった工作物Ｗを
支持対象とした装置であって、１個のシュー（支持部
材）１と一対のローラ2,3とを備えている。

これらシュー１と一対のローラ2,3とは、工作物Ｗを
挿入可能とする空間部（工作物挿入部）10の回りに配置
されている。すなわち、一対のローラ2,3のうちの一方
のローラ２が工作物挿入部10の下方に配置され、他方の
ローラ３が工作物挿入10の左斜め上方に配置され、シュ
ー１が工作物挿入部10の右側に固定されている。

工作物挿入部10の前方には、フロントプレート７が配
置されている。なお、工作物挿入部10には、工作物Ｗが
大径部側を前にして挿入される。

上側のローラ２は、円盤状に形成され、工作物Ｗの軸
方向の中間部（中間径部分）を支持するように構成され
ている。一方、下側のローラ３は、円錐台状に形成さ
れ、その軸方向の両端部では工作物Ｗの軸方向の両端部
（小径部分と大径部分）をそれぞれ支持するように構成
されている。

ローラ2,3はそれぞれ駆動軸4,5の一端部に固定されて
いる。上側のローラ２を支持する駆動軸４は、工作物挿
入部10に挿入された工作物Ｗの軸線αに対して平行に設
けられているとともに、加圧手段（後で詳述する）９に
よって上下動されるように構成されている。一方、下側
のローラ３を支持する駆動軸５は、工作物Ｗの軸線αに
対して傾斜して設けられている。このため、下側のロー
ラ３の軸線βは、工作物Ｗの軸線αに対して所定の角度
θで傾斜している。この傾斜角度θは、次のように設定
されている。すなわち、ローラ2,3と工作物Ｗとの各接
触部位P₄，P₅，P₆におけるローラ2,3の外径をそれぞれD
₄，D₅，D₆とし、工作物Ｗの外径をそれぞれd₄，d₅，d₆
とすると、各接触部位P₄，P₅，P₆におけるローラ2,3の
外径D₄，D₅，D₆と工作物Ｗの外径d₄，d₅，d₆との外径比
k₄（＝D₄／d₄），k₅（＝D₅／d₅），k₆（＝D₆／d₆）が全
て等しく（k₄＝k₅＝k₆）なるように設定されている。ま
た、上記傾斜角度θは、角度調整手段（後で詳述する）
６によって調整可能となっている。

駆動軸4,5の他端部側には上下一対のプーリ81,82が設
けられ、上側のプーリ81は上側の駆動軸４の他端部に直
結され、下側のプーリ82は、このプーリ82に対して下側
の駆動軸５を揺動可能にするために、下側の駆動軸５の
他端部に自在継手（ユニバーサルジョイント等）84を介
して連結されている、上記プーリ81,82にはベルト83が
巻き掛けれ、このベルト83はモータ（図示省略）の出力
軸に設けられたモータプーリ85および中間プーリ86にも
巻き掛けられていて、モータを駆動すると、モータの回
転力がベルト83、プーリ81,82、自在継手84を介して駆
動軸4,5に伝達され、駆動軸4,5が共に同一回転数で回転
するように構成されている。

角度調整手段６は、第３図に示すように、下ローラ用
ホルダー61とスライド板62とを備えている。スライド板
62は、その裏面に形成されたキー溝62aに基盤71に固定
されたキー63が嵌め込まれることにより、基盤71に上下
方向にスライド可能に取付けられている。このスライド
板62の上下位置は、上下位置調整ねじ64によって調整で
きるようになっている。下ローラ用ホルダー61は、スラ
イド板62に旋回ピン65を介して旋回可能に取付けられて
いる。この下ローラ用ホルダー61には駆動軸５が挿通さ
れ、これにより、駆動軸５は下ローラ用ホルダー61に保
持されている。そして、スライド板62の上下位置を調整
しながら下ローラ用ホルダー61をスライド板62に対して
旋回させて駆動軸５を揺動させることで、傾斜角度θの
調整ができるようになっている。

また、加圧手段９は、第３図に示すように、上ローラ
用ホルダー91および加圧シリンダ92を備えている。上ロ
ーラ用ホルダー91は、工作物挿入部10に挿入された工作
物Ｗの軸線αと平行に設けられた支持軸94によってこの
軸94回りに揺動可能に支持されている。上ローラ用ホル
ダー91の一端部には上側のローラ２を支承する駆動軸４
が保持され、駆動軸４は上ローラ用ホルダー91が支持軸
94回りに揺動することによって上下動されるようになっ
ている。

加圧シリンダ92は、基盤71に固定されている。この加
圧シリンダ92のロッド92aの先端の部と上ローラ用ホル
ダー91の他端部との間には加圧用スプリング93が介在さ
れ、この加圧用スプリング93のばね力によって、上ロー
ラ用ホルダー91は図中、左回りに付勢されている。ま
た、この上ローラ用ホルダー91の回動は、ロッド92aの
先端の拡大部92bと上ローラ用ホルダー91の他端部に一
体的に取付けられた被係合部材95とが互いに係合するこ
とにより、規制されるようになっている。

この装置において、加圧シリンダ92のロッド92aを縮
めると、拡大部92bが被係合部材95に引掛かり、上ロー
ラ用ホルダー91の他端部が被係合部材95を介してロッド
92aに引張られるようになる。これにより、上ローラ用
ホルダー91が第３図中、右回りに回動し、この結果、駆
動軸４が上方に動かされ、上側のローラ２が下側のロー
ラ３から遠ざかるようになる。このため、この状態にな
ると、工作物Ｗを工作物挿入部10から抜出したり工作物
挿入部10に挿入したりすることが容易に行えるようにな
る。

一方、上側のローラ２と下側のローラ３とが離れた状
態から、工作物挿入部10に工作物Ｗを挿入すると、工作
物Ｗの下部で、かつ軸方向の両端部に下側のローラ３の
軸方向両端部が当てられ、工作物Ｗの右側部にシュー１
が当てられ、工作物Ｗの前端面にフロントプレート７が
当てられて、これら下側のローラ３、シュー１およびフ
ロントプレート７によって、工作物Ｗは、上下左右方向
および前後方向に位置決めされるようになる。

この状態から、ロッド92aを伸ばすと、上ローラ用ホ
ルダー91の他端部が加圧用スプリング93を介してロッド
92aによって押されるようになる。これにより、上ロー
ラ用ホルダー91が、第３図中、左回りに回動し、この結
果、駆動軸４が上下方に動かされ、上側のローラ２が工
作物Ｗの左斜め上部で、かつ軸方向の中間部に当接する
ようになる。

この状態になると、上ローラ用ホルダー91の左回りの
回動が工作物Ｗによって規制されるようになるために、
ロッド92aを伸ばしても上ローラ用ホルダー91が回動せ
ずに加圧用スプリング93が圧縮されるようになる。この
ため、上記状態から、さらにロッド92aを伸ばすと、加
圧用スプリング93に復帰力が生じ、この復帰力が上ロー
ラ用ホルダー91の他端部に掛かって、上ローラ用ホルダ
ー91が第３図中、左回りに付勢され、上側のローラ２が
工作物Ｗに押し付けられるようになる。この結果、工作
物Ｗは、上側のローラ２の押付け力によってシュー１と
下側のローラ３とに押しつけられて、上下左右（径方
向）に動かないように保持されるようになる。

また、上側のローラ２が工作物Ｗに押し付けられるよ
うになると、工作物Ｗが外形のテーパ状になっているた
めに、工作物Ｗは、前方に付勢されてフロントプレート
７に押し付けられ、前後（軸方向）に動かないように保
持されるようになる。

このようにこの装置の構成によれば、工作物Ｗを確実
に保持することができる。しかも、下側のローラ３で工
作物Ｗの軸方向に異なる２箇所を支持するようにしてい
るため、工作物Ｗを軸方向および径方向に安定させた状
態で保持することができる。

また、この装置において、工作物Ｗを保持した状態か
ら、モータを駆動して駆動軸4,5を同一回転数で回転さ
せると、駆動軸4,5に固定された駆動ローラ2,3が駆動軸
4,5と同一回転数で回転し、これに伴い、各ローラ2,3と
接触する工作物Ｗが、ローラ2,3と工作物Ｗの各接触部
位P₄，P₅，P₆においてローラ2,3の外周２πD₄,2πD₅,2
πD₆と工作物Ｗの外周２πd₄,2πd₅,2πd₆との外周比m₄
（＝２πD₄/2πd₄），m₅（＝２πD₅/2πd₅），m₆（＝２
πD₆/2πd₆）に応じた回転数で回転駆動される。すなわ
ち、上記外周比m₄，m₅，m₆は外径比k₄，k₅，k₆と等しい
（k₄＝m₄，k₅＝m₅，k₆＝m₆）ため、工作物Ｗは、各接触
部位P₄，P₅，P₆において外径比k₄，k₅，k₆に応じた回転
数で回転駆動されるようになる。

この装置においては、外径比k₄，k₅，k₆が全て等しく
（k₄＝m₅＝ k₆）なるように駆動軸５が傾斜して設けら
れているために、工作物の各接触部位P₄，P₅，P₆におけ
る回転数は等しくなり、上下のローラ2,3と工作物Ｗと
の各接触部位P₄，P₅，P₆において、ローラ2,3側と工作
物Ｗ側との周速が一致し、スリップが発生しなくなる。

しかも、この装置では、加圧手段９によってローラ2,
3を工作物Ｗに押付けながら、ローラ2,3を回転させるよ
うにしている。このため、ローラ2,3から工作物Ｗに回
転力を確実に伝達することができる。

また、上記実施例では、上側のローラ２と下側のロー
ラ３とを同一回転数で回転させるようにしているが、減
速装置等を用いて上側のローラ２の回転数の下側のロー
ラ３の回転数とを異ならせるようにしてもよい。この場
合、ローラ2,3と工作物Ｗとの接触部位における外径比
は、同一ローラ内のみで等しくすればよく、異なるロー
ラ間では異なっていてもよい。ただし、上側のローラ２
との接触部位における工作物Ｗの周速と下側のローラ３
との接触部位における工作物Ｗの周速とが一致するよう
に、各ローラ2,3の回転数を調整するか、あるいは上ロ
ーラ用ホルダー91に対して駆動軸４を軸方向に移動調整
して上側のローラ２と工作物Ｗとの接触部位における外
周比を下側のローラ３と工作物Ｗとの接触部位における
外周比と等しくする必要がある。

また、上記実施例では、上側のローラ２に工作物Ｗの
１箇所のみを支持されるようにしているが、下側のロー
ラ３と同様に上側のローラ２に工作物Ｗの軸方向の複数
箇所の部位を支持させるようにしてもよい。ただし、こ
の場合は、上側のローラ２も、下側のローラ３と同様に
軸線を工作物Ｗの軸線に対して傾斜させて設ける必要が
ある。

また、ローラの軸方向３箇所以上の部位で工作物Ｗの
軸方向の３箇所以上の部位を支持するようにしてもよ
い。さらに、支持部材は、回転可能になったローラであ
ってもよい。

〔考案の効果〕

本考案にかかるテーパ状工作物の支持装置は、工作物
の軸方向の複数個の部位を支持するローラを工作物との
各接触部位におけるローラ側と工作物側との外径比が全
て等しくなるように、工作物の軸方向の複数個の部位を
支持するローラがその線軸を工作物の軸線に対して傾斜
させて設けられている。このため、工作物の軸方向の複
数個の部位を支持するローラと工作物との各接触部位に
おけるローラ側と工作物側との外周比が全て等しくな
り、この結果、ローラを回転させた時、ローラ側と工作
物との全接触部位において、ローラ側と工作物側との周
速が一致するようになり、スリップが発生しなくなる。

したがって、工作物にローラのスリップ傷が付かなく
なるとともに、工作物を安定して回転させることがで
き、かつ、ローラの高寿命化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ）は本考案にかかるテーパ状工作物の支持装
置の一実施例を示す縦断面図、第１図（ｂ）は第１図
（ａ）のIB矢視図、第２図は第１図（ａ）のII−II線矢
視図、第３図は第１図（ａ）のIII−III線断面図、第４
図は従来のテーパ状工作物の支持装置を示す縦断面図、
第５図は第４図のＶ−Ｖ線矢視図である。 １……シュー、（支持部材）、2,3……ローラ、4,5……
駆動軸、Ｗ……工作物、α……工作物の軸線、β……ロ
ーラの軸線。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】１個の支持部材と、一対の駆動軸にそれぞ
   れ支承された一対のローラとを備え、これら支持部材と
   一対のローラとで外形がテーパ状になった工作物を支持
   するとともに、前記一対のローラの少なくとも一方がそ
   の軸方向の複数個の部位で前記工作物の軸方向の複数個
   の部位をそれぞれ支持するように構成されたテーパ状工
   作物の支持装置において、前記工作物の軸方向の複数個
   の部位を支持するローラと工作物との各接触部位におけ
   るローラ側の外径と工作物側の外径との比が全て等しく
   なるように、前記工作物の軸方向の複数個の部位を支持
   するローラがその軸線を前記工作物の軸線に対して傾斜
   させて設けられていることを特徴とするテーパ状工作物
   の支持装置。