JP2503108Y2 - デイ―ゼルエンジンの始動進角制御装置 - Google Patents

デイ―ゼルエンジンの始動進角制御装置

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JP2503108Y2
JP2503108Y2 JP1988112760U JP11276088U JP2503108Y2 JP 2503108 Y2 JP2503108 Y2 JP 2503108Y2 JP 1988112760 U JP1988112760 U JP 1988112760U JP 11276088 U JP11276088 U JP 11276088U JP 2503108 Y2 JP2503108 Y2 JP 2503108Y2
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Description

【考案の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この考案は、デイーゼルエンジンの冷間始動時におい
て、燃料噴射時期を進角させるコールドスタート装置を
備えたデイーゼルエンジンに関する。
[従来の技術] 従来より、デイーゼルエンジンの冷間始動時におい
て、燃料噴射時期を進角させるコールドスタート装置
(以下、単に、CSDと呼ぶ。)を備えたデイーゼルエン
ジンとして、例えば、実開昭62-200136号公報に示され
る技術が知られている。この進角方法としては、ホツト
ワツクスを利用して、自動的に進角させる自動CSDと、
操作者が任意にワイヤを引つ張ることにより進角させる
手動CSDの2方式があるが、上述した公報には、自動CSD
に関する技術が開示されている。
ここで、手動及び自動のCSDにおいては、夫々、冷寒
始動時の進角量は、第12A図及び第12B図に示すように予
め設定されている。即ち、手動CSDにおいては、第12A図
に示すように、デイーゼルエンジンのクランク軸の回転
開始と同時に進角を開始するように設定されている。一
方、自動CSDにおいては、第12B図に示すように、始動前
の状態において、予め所定の進角量に設定しておき、ク
ランク軸の回転開始と同時に進角量を増すように設定さ
れている。
[考案が解決しようとする課題] ここで、始動完了後において、換言すれば、セルモー
タをオフして、エンジン回転数が600rpm以上になされた
状態においては、ガバナの調速機構を介して、燃料噴射
量はエンジン始動時と比較して減じられており、渦流の
流速が早くなつているため、着火遅れ期間が長くなるた
め、要求燃料噴射タイミングは、更に進角させておくこ
とが好ましいものである。
しかしながら、この燃料噴射時期の進角制御を、デイ
ーゼルエンジンの低回転数領域(即ち、アイドル回転数
未満の600rpmよりも低いエンジン回転数の領域)でも、
CSDにより、それが自動であろうが手動であろうが、高
回転領域と同様に進角させているので、第13図に示すよ
うに、セルモータを回してクランキングを開始してから
エンジン回転数Nが吹き上がるまでの時間tが長くかか
ることになり、冷寒始動時の始動性が悪い問題点が指摘
される。
特に、第13図に実線で示すように、エンジンに接続さ
れたトランスミツシヨンがオートマチツクトランスミツ
シヨンである場合には、第13図に破線で示すように、マ
ニユアルトランスミツシヨンである場合と比較して、ク
ランク軸にトルクコンバータが接続されていて、始動時
のエンジン負荷が大きいことから、この始動性が極端に
悪くなるものである。
この考案は上述した問題点に鑑みてなされたもので、
この考案の目的は、アイドル近似回転数以下である場合
の冷間始動時における始動性を向上させることの出来る
デイーゼルエンジンの始動進角制御装置を提供すること
である。
[課題を解決するための手段] 上述した課題を解決し、目的を達成するため、この考
案に係わるデイーゼルエンジンの始動進角装置は、デイ
ーゼルエンジンの冷間始動時において、燃料噴射時期を
進角させるコールドスタート装置を有する始動進角制御
装置において、エンジン回転数が、アイドル回転数より
低い値に設定されたアイドル近似回転数以下である場合
に、前記コールドスタート装置により設定される進角量
よりも遅角方向に設定される進角量で、燃料噴射時期を
設定する制御手段を具備する事を特徴としている。
[作用] 以上のように構成されるデイーゼルエンジンの始動進
角装置においては、エンジン回転数が、アイドル回転数
より低い値に設定されたアイドル近似回転数以下である
場合に、コールドスタート装置により設定される進角量
よりも遅角方向に設定される進角量で、燃料噴射時期が
設定されている。この結果、アイドル近似回転数以下の
低回転領域において、燃料噴射量が多く、グロー温度が
高く、渦流の流速が遅いため、外気温が低くても、これ
らの条件によつて、着火遅れ時期が短い状態にあり、進
角量が大きく設定されていると、ピストン上死点前に燃
焼による最大圧力期間がくることにより、逆にこの燃焼
がブレーキとなるが、この状態において、進角量を遅角
方向に設定されるので、この最大圧力を発生させる燃焼
が上死点を過ぎて行なわれることになり、エンジンは良
好に始動することになる。
[実施例] 以下に、この考案に係わるデイーゼルエンジンの始動
進角制御装置の一実施例の構成を添付図面の第1図乃至
第9図を参照して、詳細に説明する。
第1図には、この一実施例の始動進角制御装置10を備
えた分配型燃料噴射装置12が示されている。この燃料噴
射装置12は、図示していないが、デイーゼルエンジン用
に構成されており、このデイーゼルエンジンの出力軸に
は、トルクコンバータ付きのオートマチツクトランスミ
ツシヨンが接続されているものである。
この分配型の燃料噴射装置12は、周知の構成であり、
概略的に説明すれば、第2図に示すように、ポンプ・ハ
ウジング14と、このポンプ・ハウジング14を貫通して配
設され、図示しないクランク軸の回転に応じて回転駆動
されるドライブ軸16と、このドライブ軸16の回転に応じ
て、このポンプ・ハウジング14内に燃料を所定の圧力で
導入するためのフイード・ポンプ18と、このドライブ軸
16にカム・デイスク20を介して回転往復運動するように
接続され、各気筒毎に燃料を圧縮するためのプランジヤ
22と、このプランジヤ22の回転往復運動により、ポンプ
・ハウジング14内の燃料が所定の圧力に達した状態で、
この高圧燃料を各気筒毎に設けられた燃料噴射ノズル
(図示せず)に分配するデリバリ弁24と、エンジンの回
転速度に応じて、燃料噴射量を規定するガバナ機構26
と、エンジンの負荷状態を制御するコントロール・レバ
ー28と、燃料噴射時期を規定するためのタイマ30とを備
えている。
以下に、このタイマ30について、詳細に説明する。
このタイマ10は、第3図に示すように、ドライブ軸16
に同軸状に相対回転可能に軸支された中空円筒状のロー
ラ・ホルダ32を備えている。即ち、このローラ・ホルダ
32は、ドライブ軸16が摺動自在に貫通された内芯部34a
と、この内芯部34aの外周に離間した状態で配設された
周壁部34bとを一体的に備えている。
この周壁部34bより内側部分には、上述したプランジ
ヤ22に連結されるカム・デイスク20の一端面で規定され
るカム・フエイスに転動自在に転接する4個のローラ36
が備えられている。これら4個のローラ36は、円周方向
に沿つて等間隔に配設されると共に、各々は、カム・デ
イスク20の直径方向に延出する支軸38回りに回転自在に
支持されている。
ここで、第3図において、ドライブ軸16は、矢印Aで
示す方向に沿つて、即ち、反時計方向に回転駆動されて
おり、ローラ・ホルダ32は、ドライブ軸16の回転状態と
は無関係に、矢印B,Cで示すように、時計方向、反時計
方向に沿つて自由に回転することが出来るよう設定され
ている。
尚、ローラ・ホルダ32が矢印Bで示すように時計方向
に回動することにより、各ローラ36は早い時期に対応す
るカム・フエイスに乗り上げて、燃料噴射時期が早まる
ように、換言すれば、進角されるように設定されてい
る。一方、ローラ・ホルダ32が矢印Cで示すように反時
計方向に回動することにより、逆に、燃料噴射時期が遅
くなるように、換言すれば遅角するように設定されてい
る。
このタイマ10には、このローラ・ホルダ32を回転させ
て、進角操作をするために、2種類の進角制御装置40,1
0が取り付けられている。即ち、このローラ・ホルダ32
には、エンジン回転数Nに応じて進角量を自動的に規定
する自動進角制御装置(以下、単にスピード・タイマと
呼ぶ。)40と、エンジンの冷間始動時において進角量を
制御する所の、この考案の特徴を構成する始動進角制御
装置(即ち、コールドスタート装置、以下、単にCSDと
呼ぶ。)10とが接続されている。
先ず、このスピード・タイマ40について説明する。
このスピード・タイマ40は、詳細には、デイーゼルエ
ンジンの始動後において、エンジンのクランク軸の回転
に伴ないフイード・ポンプ18が駆動されて、エンジン回
転数に対応した油圧が発生している状態において、この
油圧により自動的に所定の進角操作を行なうよう構成さ
れている。即ち、このスピード・タイマ40は、ポンプ・
ハウジング14に一体的に設けられたタイマ・シリンダ44
を備えている。このタイマ・シリンダ44は、内部にシリ
ンダ室を有し、このシリンダ室内には、タイマ・ピスト
ン46が摺動自在に収容されている。
このタイマ・ピストン46により左右に分割されたシリ
ンダ室部分の中で、図中、右方に位置するシリンダ室部
分は、図示していないが、上述したフイード・ポンプ18
に連通されており、ここにおいて加圧された燃料が圧力
媒体として供給されている。また、図中、左方に位置す
るシリンダ室部分には、タイマ・ピストン46を矢印Dで
示すように、図中右方に常時付勢するタイマ・スプリン
グ48が配設されている。
一方、このタイマ・ピストン46とローラ・ホルダ32の
内芯部34aとは、周壁部34bに形成された第1のスリツト
50を貫通した連結ロツド52を介して互いに連結されてい
る。ここで、タイマ・ピストン46が矢印Dで示すように
図中右方に移動すると、この連結ロツド52を介して、ロ
ーラ・ホルダ32は全体として矢印Cで示すように反時計
方向に回動して、遅角されるようなされている。また、
タイマ・ピストン46が矢印Eで示すように図中左方に移
動すると、同様に連結ロツド52を介して、ローラ・ホル
ダ32は全体として矢印Bで示すように時計方向に回動し
て、進角するようなされている。ここで、この運動は、
双方向的に、即ち、可逆的に伝達されるようなされてい
る。
尚、第3図に示す状態において、タイマ・ピストン46
は最も右方に変位しており、この結果、燃料噴射時期
は、最も遅角側に偏倚した状態、即ち、その進角量を最
小にした状態に設定されている。
ここで、タイマ・スプリング48の付勢力に抗すべく右
方のシリンダ室部分に作用するフイード・ポンプ18によ
り発生する油圧Pと、ポンプ回転数NP(即ち、ドライブ
軸16の回転数)とは、第4図に示すような関係に規制さ
れている。一方、タイマ・ピストン46に作用するタイマ
・スプリング48の付勢力は、第5図に示すように、エン
ジン回転数がアイドル回転数N1より高い値の第1の設定
回転数NHに至ることにより発生されるフイード・ポンプ
18における油圧Pと均衡するよう設定されている。
この結果、エンジン回転数が第1の設定回転数NHに上
昇するまでは、このスピード・タイマ40により規定され
る進角量は零であり、エンジン回転数がこの第1の設定
回転数NHを越えると、このタイマ・スプリング48の付勢
力より油圧Pの方が大きな値となるので、タイマ・ピス
トン46は矢印Eで示すように図中左方に移動する。従つ
て、第5図に破線で示すように、第1の設定回転数NH
越える範囲において、エンジン回転数の上昇に応じて進
角量が大きくなることになる。
次に、この考案の特徴となるCSD10について、詳細に
説明する。
このCSD10は、エンジン冷機状態での始動(冷間始
動)時において、アイドル回転数NIよりも低い値に設定
された第2の設定回転数NL(即ち、アイドル近似回転数
として定義される回転数)以下のエンジン回転領域にお
いて、燃料の噴射時期を進角させないことにより、エン
ジンの始動性を向上し、第2の設定回転数NL以上の回転
領域においては、回転数の上昇に応じて進角させること
により、エンジンの半失火を防止する目的で設けられて
いる。
即ち、このCSD10は、この一実施例においては手動に
より起動されるものであり、第3図に示すように、ロー
ラ・ホルダ32の側方に位置するポンプ・ハウジング14の
部分に回動自在に支持された回動軸54を備えている。こ
の回動軸54は、ドライブ軸16の回転軸線と直交するよう
軸線回りに回動するよう設定されている。この回動軸54
のポンプ・ハウジング14側の内端縁には、回動軸54の回
転軸線と偏心した位置に偏心ピン56が固設されている。
この偏心ピン56は、ローラ・ホルダ32の周壁部34bに形
成された第2のスリツト58中に挿通されている。
ここで、この第2のスリツト58は、ローラ・ホルダ32
の周方向に関しては、偏心ピン56の直径より大きな幅を
有し、軸方向に関しては、偏心ピン56が回動軸54の回転
に応じて偏心運動する際において、これの動きを許容す
る長さに設定されている。このように偏心ピン56は第2
のスリツト58に挿通されているので、回動軸54の回転に
応じて、偏心ピン56を介してローラ・ホルダ32は回動さ
れること、換言すれば、進角動作が実行されることにな
ると共に、ローラ・ホルダ32の回動により連結ロツド52
を介して、スピード・タイマ40のタイマ・ピストン46が
矢印Eで示す図中左方に、タイマ・スプリング44の付勢
力に抗して偏倚することになる。
一方、この回動軸54の、ポンプ・ハウジング14から外
方に突出した外端部には、エンジンの冷間始動時におい
て、この回動軸54を手動により強制的に回動させるため
の外部操作部材としてのCSDケーブル60(第6図に示
す)の一端が、連結機構62を介して連結されている。こ
のCSDケーブル60の他端は、図示しない運転席のインス
ツルメント・パネルまで延出しており、ここには、図示
していないが、操作者、即ち、運転者が容易にこのCSD
ケーブル60を引き出して、CSD10を起動することが出来
るように、操作ノブが取着されている。
ここで、この連結機構62は、エンジン回転数が、アイ
ドル近似回転数(第2の設定回転数)NL以下である場合
に、CSD10により設定される進角量よりも小さい値の進
角量で、燃料噴射時期を設定する制御手段として機能す
るものである。
この連結機構62は、第3図及び第6図に示すように、
回動軸54の外端部に回動自在に取着され、上述したCSD
ケーブル60の一端が接続される第1のCSDレバー64と、
この第1のCSDレバー64よりも僅かに外方において、回
動軸54に一体に固着された第2のCSDレバー66と、これ
ら第1及び第2のCSDレバー64,66間に介設され、両者を
後述するように弱い弾性力で互いに結合するトーシヨン
・スプリング68とから構成されている。
このトーシヨン・スプリング68は、その中間部を、第
1及び第2のCSDレバー64,66間に位置する回動軸54の外
周に捲回され、一端部を第1のCSDレバー64に、他端部
を第2のCSDレバー66に夫々係止した状態で、装着され
ている。
尚、第1のCSDレバー64は、CSDケーブル60に連結され
ており、このCSDケーブル60の戻し位置により、その初
期位置を規定されている。一方、第2のCSDレバー66
は、第3図に示すように、偏心ピン56が第2のスリツト
58の上端面に押されることにより、第6図において時計
方向に付勢されることになるが、第1のストツパ69aに
当接することにより、初期位置に規制されることにな
る。この第2のCSDレバー66が初期位置にもたらされる
た状態で、CSD10による進角量は、零に設定されてい
る。
ここで、このトーシヨン・スプリング68の設定弾性力
が、この考案において重要なポイントとなるものであ
り、以下、これについて詳述する。
即ち、このトーシヨン・スプリング68の弾性力FSは、
タイマ・スプリング48の弾性力をFTとし、フイード・ポ
ンプ18によりタイマ・シリンダ44に作用する内圧をPと
すると、 (I) エンジン停止状態(N=0)において、 FS<|P−FT|; (II) エンジン始動後、アイドル近似回転数NL以下の
エンジン始動状態(0≦N≦NL)において、 FS≦|P−FT|; (III) エンジン完爆後(N>NL)において、 FS>|P−FT|; となるよう設定されている。
以上のように構成される分配型燃料噴射装置12におけ
るタイマ30による燃料噴射時期の進角制御動作を、以下
に詳細に説明する。
先ず、第5図に示すように、符合Iで示すエンジン停
止状態において、フイード・ポンプ18による内圧Pは零
であるので、先ず、タイマ・ピストン46は、タイマ・ス
プリング48により矢印Dで示す方向に図中右方に最大量
偏倚され、スピード・タイマ40による進角量は零に設定
される。更に、このトーシヨン・スプリング68の弾性力
FSは、タイマ・スプリング48の弾性力FTよりも小さい値
となるよう設定されている。ここで、CSDケーブル60を
引き出さない限り、このトーシヨン・スプリング68は弾
性力を生じないものである。即ち、CSD10による進角量
も零に設定されることになる。
この結果、エンジン停止状態において、CSD10のCSDケ
ーブル60を引き出さない状態においては、タイマ30は、
第3図に示すように、タイマ・スプリング48の弾性力FS
により、ローラ・ホルダ32を矢印Cで示す方向に最も回
動偏倚した状態に付勢され、従つて、燃料噴射時期は最
も遅角側に設定された状態、即ち、タイマ30による進角
量は零の状態に設定されることになる。
一方、エンジン停止状態において、CSD10を起動しよ
うとして、第7A図に示すように、CSDケーブル60を引き
出した場合においても、依然としてタイマ・スプリング
48の弾性力FTがトーシヨン・スプリング68の弾性力FS
り勝つているので、このCSDケーブル60の引き出しに応
じて、第7B図に示すように、第1のCSDレバー64のみが
回動して、トーシヨン・スプリング68に弾性力がチヤー
ジされるのみで、第2のCSDレバー66は停止している。
この結果、第7B図に示すように、ローラ・ホルダ32は回
動せずに、タイマ30による燃料噴射時期の進角量は零に
維持されることになる。
尚、第5図においては、上述したように、スピード・
タイマ40のみにより達成される進角量は破線で示される
ものであるが、CSD10のみにより達成される進角量は、
一点鎖線で示すものとする。
このようにCSD10が起動された状態において、図示し
ないセル・モータが起動してデイーゼル・エンジンが回
転し始めると、エンジン回転数Nが徐々に上昇すること
になる。ここで、このエンジン回転数の上昇に伴ない、
上述したように、タイマ・ピストン46に作用する油圧P
は零値から上昇することになり、この油圧Pは、タイマ
・スプリング48の対向力として作用することになる。こ
の結果、タイマ・ピストン46をトーシヨン・スプリング
68に抗して矢印Dで示すように図中右方に偏倚しようと
する力は、相対的に弱められることになる。
しかしながら、上述したように、第5図において符合
IIで示すように、エンジン始動後、アイドル近似回転数
(第2の設定回転数)NL以下のエンジン始動状態におい
ては、依然として、油圧Pの作用により弱められたタイ
マ・ピストン46を図中右方に偏倚する力は、第7A図に示
すように、トーシヨン・スプリング68の弾性力FSより勝
つているので、トーシヨン・スプリング68に弾性力がチ
ヤージされたままの状態で、第2のCSDレバー66は回転
せず、且つ、タイマ・ピストン46も矢印Eで示すように
図中左方に変位しないので、第7A図に示すように、燃料
噴射時期の進角量は零に維持されることになる。
このように、この一実施例においては、エンジン始動
状態においては、ガバナ機構26により燃料噴射量が多く
設定され、グロー温度が高く設定され、渦流の流速が遅
いために、着火遅れ期間が短くなされるものの、燃料噴
射時期の進角量が零に設定されているので、ピストンの
上昇前に着火して、ピストンの駆動力に対してブレーキ
となる事が確実に防止され、デイーゼルエンジンにトル
クコンバータが接続されてエンジン負荷が大きくなされ
ているものの、始動時間が極めて短くなり、始動性が顕
著に向上することになる。
そして、エンジン回転数Nがアイドル近似回転数NL
上昇した時点で、油圧Pとタイマ・スプリング48の弾性
力FTとの差により規定されるタイマ・ピストン48を図中
右方に偏倚しようとする力は、トーシヨン・スプリング
68のチヤージされた弾性力FPと均衡することになる。
この後、エンジン回転数Nがアイドル近似回転数NL
上に上昇し、第5図において符合IIIで示すエンジン完
爆領域に至ると、油圧Pとタイマ・スプリング48の弾性
力FTとの差により規定されるタイマ・ピストン48を図中
右方に偏倚しようとする力は、トーシヨン・スプリング
68の弾性力FPより弱くなり、従つ、てトーシヨン・スプ
リング68のチヤージされた弾性力FPに基づいて、第2の
CSDレバー66は、第8A図に示すように回動することにな
る。この結果、タイマ30のローラ・ホルダ32は、第8B図
において矢印Bで示すように時計方向に回動駆動され、
燃料噴射域の進角量がエンジン回転数Nに上昇に応じて
徐々に増すことになる。
尚、この状態において、スピード・タイマ40では、エ
ンジン回転数Nが第1の設定回転数NH以下の領域におい
て、依然としてタイマ・スプリング48の弾性力FTが、油
圧Pよりも勝つているので、スピード・タイマ40による
進角量は零のままである。しかしなから、上述したよう
に、CSD10によりローラ・ホルダ32が図中時計方向に回
動することに応じて、ローラ・ホルダ32に連結ロツド52
を介して連結されているタイマ・ピストン46は、強制的
に、図中左方に移動されることになる。
一方、このエンジン完爆状態において、エンジン回転
数Nが第1の設定回転数NHより高い領域になると、油圧
Pがタイマ・スプリング48の弾性力FTに勝ることになる
ので、タイマ・ピストン46は、この油圧Pに基づいて、
矢印Eで示すように図中左方に偏倚する力を受けること
になる。しかしながら、スピード・タイマ40による進角
量は、領域IIIにおいては、CSD10により達成される進角
量より小さいので、タイマ30全体により達成される進角
量は、CSD10により規定される進角量となる。
ここで、更に、エンジン回転数Nが上昇し、上述した
設定回転数NHよりも更に高い第3の設定回転数NSを越え
ると、第5図において符合IVで示す領域に達すると、第
2のCSDレバー66の回動量は、第9A図に示すように、第
2のストツパ69bに当接して、それ以上の回動を阻止さ
れることになる。この結果、CSD10により達成される進
角量は一定の値に保持されることになる。
一方、スピード・タイマ40により達成される進角量
は、エンジン回転数Nが第1の設定回転数NHを越えた時
点から、エンジン回転数の上昇に応じて、CSD10による
場合よりも急な傾きで進角量を増すよう設定されてい
る。この結果、第5図において、点O(即ち、回転数NR
である点)において、スピード・タイマ40により達成さ
れる進角量は、CSD10により達成される進角量よりも上
回る事になる。この結果、第9B図に示すように、タイマ
30により達成される進角量は、以後、このスピード・タ
イマ40により達成される進角量により規定されることに
なる。
このように、この一実施例においては、タイマ30によ
り達成される進角量は、エンジン回転数Nの変化に伴な
い、第5図中、実線で示すように変化することになる。
以上詳述したように、この一実施例においては、エン
ジンの冷間始動時において、CSD10を作動させた場合に
おいて、アイドル回転数NIよりも低く設定されたアイド
ル近似回転数NLまでエンジン回転数が上昇するまでの範
囲で、燃料噴射時期の進角量を零に維持している。この
結果、始動時間がかなり短くなり、始動性が顕著に向上
することになる。
また、この一実施例においては、エンジン回転数Nが
アイドル近似回転数NLを越える範囲において、当初は、
このCSD10により達成される進角量がタイマ30により規
定される進角量となるが、エンジン回転数Nが回転数NR
を越える時点から、スピード・タイマ40により達成され
る進角量により規定されることになる。この結果、高い
エンジン回転数における半失火状態が確実に防止され、
良好な出力が得られることになる。
この考案は、上述した一実施例の構成に限定されるこ
となく、この考案の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可
能であることは言うまでもない。
例えば、上述した一実施例においては、トランスミツ
シシヨンとして、オートマチツク・タイプであるとして
説明したが、この考案は、このような構成に限定される
ももでなく、マニユアル・タイプのトランスミツシヨン
に同様に適用出来るものである。この場合においては、
オートマチツク・タイプの場合のように顕著な始動性の
向上は認められないものの、程度の差はあれ、始動性の
向上自体は達成されるものである。
また、上述した一実施例においては、CSD10として手
動タイプの構成を採用するよう説明したが、この考案
は、このような構成に限定されることなく、例えば、ホ
ツト・ワツクスを用いた自動タイプのCSDにも、全く同
様に適用出来るものである。
更に、上述した一実施例においては、エンジン回転数
が、アイドル回転数より低い値に設定されたアイドル近
似回転数以下である場合に、CSDにより設定される進角
量よりも小さい値の進角量で、燃料噴射時期を設定する
制御手段として、CSDケーブル60と、回動軸54との間に
介設された連結機構62により機械的に達成されるように
説明したが、この考案は、このような構成に限定される
ことなく、第10図乃至第11B図に他の実施例として示す
ように構成しても良いものである。
以下に、他の実施例の構成を詳細に説明する。
第10図に示すように、この考案における他の実施例の
制御手段は、タイマ・ピストン46により左右に分割され
たタイマ・シリンダ44の両室を互いに連通させる連通路
72と、この連通路72の開口度を数値的に制御するための
タイマ・コントロール・バルブ(以下、単に、TCVと呼
ぶ。)74と、ローラ・ホルダ32の回動角度、即ち、進角
量を検出するためのアングル・センサ76と、ローラ・ホ
ルダ32の回転数を検出するための回転数センサ78と、こ
れらアングル・センサ76と回転数センサ78とからの検出
結果に基づいて、上述したTCV74を駆動制御するための
コントロール・ユニット80とから構成されている。
ここで、TCV74は、デユーテイ比を可変になされたデ
ユーテイ電磁ソレノイドから構成され、これのデユーテ
イ比を任意に設定することにより、連通路72の開口度を
任意に設定することが出来るものである。また、ローラ
・ホルダ32は、エンジンのクランク軸により同期して回
転駆動されているので、回転数センサ78により検出され
るローラ・ホルダ32の回転数は、エンジン回転数と同一
の値となるものである。
一方、コントロール・ユニツト80においては、第11A
図に示す制御手順に従つて、TCV74を駆動制御するよう
設定されている。以下に、この制御手順を、図示するフ
ローチヤートに基づいて説明する。
即ち、先ず、ステツプS10において、図示しないスタ
ート・スイツチのオン動作が判別される。このステツプ
S10において、NOと判断された場合、即ち、スタート・
スイツチがオフされている限りは、この制御手順は実質
的に実行されずに、YESと判断された場合、即ち、スタ
ート・スイツチがオンされた時点から、この制御手順が
実行されることになる。
そして、ステツプS12において、TCV74のデユーテイ比
が、0%に初期設定される。このように、TCV74のデユ
ーテイ比が0%に設定されることにより、連通路72は完
全に遮蔽され、この連通路72を介してのフイード・ポン
プ18からの圧力は、タイマ・スプリング48の対向力とし
て、タイマ・ピストン46に作用しないことになる。
そして、引き続き、ステツプS14において、アングル
・センサ76を介して、現時点におけるローラ・ホルダ32
の回動角度、即ち、進角量が検出される。そして、ステ
ツプS16において、回転数センサ78を介してローラ・ホ
ルダ32の回転数が検出される。
この後、ステツプS18において、検出されたローラ・
ホルダ32の回動角度と回転数との関係が、第11B図に示
す相関関係により示されるライン上にあるか否かが判別
される。ここで、第11B図に示す相関関係は、第5図に
おいて実線で示された進角量とエンジン回転数との関係
を示す状態と同様に設定されている。
このステツプS18において、YESと判別された場合、即
ち、検出されたローラ・ホルダ32の回動角度と回転数と
の関係が、第11B図に示されるラインにより規定される
関係に一致すると判別される場合には、TCV74のデユー
テイ比は正しく設定されており、変更する必要が無いの
で、引き続くステツプS20において、ローラ・ホルダ32
の回転数が所定の回転数、例えば、エンジン回転数にお
いて、第5図に示す回転数NRに相当する回転数より大き
いか否かが判別される。
このステツプS20において、YESと判別された場合、即
ち、ローラ・ホルダ32の回転数が、エンジン回転数NR
りも大きい領域であると判断される場合には、この領域
においては、スピード・タイマ40による進角制御に支配
されることになるので、TCV74による制御動作は終了す
る。一方、ステツプS20において、NOと判断された場
合、即ち、ローラ・ホルダ32の回転数が、エンジン回転
数NR以下の領域であると判断される場合には、このTCV7
4による制御動作を実行しなければならないので、上述
したステツプS14に戻り、上述したTCV74の制御動作が継
続される。
また、上述したステツプS18において、NOと判断され
た場合、即ち、検出されたローラ・ホルダ32の回動角度
と回転数との関係が、第11B図に示されるラインにより
規定される関係に一致しないと判別される場合には、TC
V74のデユーテイ比は正しく設定されておらず、変更す
る必要が有るので、ステツプS22において、現在の関係
が図示するラインの関係と一致するようにTCV74のデユ
ーテイ比が変更される。そして、このステツプS22が実
行された後、上述したステツプS14に戻り、上述した制
御動作が継続される。
このようにして、一連の制御手順が終了する。
以上詳述したように、この考案の他の実施例において
は、上述した一実施例における機械的な制御手段とは異
なり、電気的に構成された制御手段で、燃料噴射時期を
制御することが可能であり、一実施例と同様な効果を奏
する事が出来るものである。
[考案の効果] 以上詳述したように、この考案に係わるデイーゼルエ
ンジンの始動進角装置は、デイーゼルエンジンの冷間始
動時において、燃料噴射時期を進角させるコールドスタ
ート装置を有する始動進角制御装置において、エンジン
回転数が、アイドル回転数より低い値に設定されたアイ
ドル近似回転数以下である場合に、前記コールドスター
ト装置により設定される進角量よりも遅角方向に設定さ
れる進角量で、燃料噴射時期を設定する制御手段を具備
する事を特徴としている。
従つて、この考案によれば、アイドル近似回転数以下
である場合の冷間始動時における始動性を向上させるこ
との出来るデイーゼルエンジンの始動進角制御装置が提
供される事になる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの考案に係わる始動進角制御装置の一実施例
が適用される分配型燃料噴射装置の構成を示す斜視図; 第2図は第1図に示す燃料噴射装置の内部構成を示す正
面断面図; 第3図はタイマの構成を示す側断面図; 第4図はフイード・ポンプの回転数とこれから吐出され
る燃料の圧力との関係を示す線図; 第5図はエンジン回転数とスピード・タイマによる進角
量と、CSDによる進角量との関係と、これらからタイマ
により達成される進角量との関係を示す線図; 第6図はCSDの取り付け状態を示す側面図; 第7A図及び第7B図は、CSDよる進角量が零の状態を夫々
示すCSDの正面図及びタイマの断面図; 第8A図及び第8B図は、CSDよる進角量がある程度設定さ
れた状態を夫々示すCSDの正面図及びタイマの断面図; 第9A図及び第9B図は、CSDよる進角量が最大の状態を夫
々示すCSDの正面図及びタイマの断面図; チヤート; 第10図はこの考案に係るデイーゼルエンジンの始動進角
制御装置の他の実施例の構成を概略的に示す断面図; 第11A図は他の実施例におけるコントロール・ユニツト
の制御手順を示すフローチヤート; 第11B図はコントロール・ユニツトにおいて規制される
ローラ・ホルダの回転数と回動位置との相関関係を示す
線図; 第12A図は従来における手動CSDにおけるデイーゼルエン
ジンの回転数と進角量との関係を示す線図; 第12B図は従来における自動CSDにおけるデイーゼルエン
ジンの回転数と進角量との関係を示す線図; 第13図は従来におけるクランキングを開始してからエン
ジン回転数Nが吹き上がるまでの時間tの関係を、トラ
ンスミツシヨンのタイプ別に示す線図である。 図中、10……始動進角制御装置(CSD)、12……分配型
燃料噴射装置、14……ポンプ・ハウジング、16……ドラ
イブ軸、18……フイード・ポンプ、20……カム・デイス
ク、22……プランジヤ、24……デリバリ弁、26……ガバ
ナ機構、28……コントロール・レバー、30……タイマ、
32……ローラ・ホルダ、34a……内芯部、34b……周壁
部、36……ローラ、38……支軸、40……自動進角制御装
置(スピード・タイマ)、44……タイマ・シリンダ、46
……タイマ・ピストン、48……タイマ・スプリング、50
……第1のスリツト、52……連結ロツド、54……回動
軸、56……偏心ピン、58……第2のスリツト、60……CS
Dケーブル、62……連結機構、64……第1のCSDレバー、
66……第2のCSDレバー、68……トーシヨン・スプリン
グ、69a……第1のストツパ、69b……第2のストツパ、
70……ストツパ、72……連通路、74……TCV、76……ア
ングル・センサ、78……回転数センサ、80……コントロ
ール・ユニツトである。

Claims (1)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】デイーゼルエンジンの冷間始動時におい
    て、燃料噴射時期を進角させるコールドスタート装置を
    有する始動進角制御装置において、 エンジン回転数が、アイドル回転数より低い値に設定さ
    れたアイドル近似回転数以下である場合に、前記コール
    ドスタート装置により設定される進角量よりも遅角方向
    に設定される進角量で、燃料噴射時期を設定する制御手
    段を具備する事を特徴とするデイーゼルエンジンの始動
    進角制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS58143138A (ja) * 1982-02-17 1983-08-25 Toyota Motor Corp デイ−ゼルエンジンの燃料噴射時期制御方法

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