JP2501716Y2 - プレストロ―ク制御式燃料噴射装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［考案の目的］ （産業上の利用分野） この考案は、不等速に往復運動するプランジャに制御
スリーブを摺動自在に嵌合し、この制御スリーブを機関
の運転状態に応じて制御することにより、プレストロー
クを変えられることにしたプレストローク制御式燃料噴
射装置に関する。

（従来の技術） 列型燃料噴射ポンプにおいて、プランジャに制御スリ
ーブを摺動自在に嵌合し、この制御スリーブの摺動方向
の位置を変えるプレストロークを調整する調整機構を備
え、燃料の噴射時期を制御するものは公知である。この
プレストローク制御式燃料噴射装置は、不等速に往復運
動するプランジャに制御スリーブを摺動自在に嵌合し、
この制御スリーブを摺動方向の位置を変えると、噴射時
期のみならず、プランジャの上昇速度としてとらえられ
る噴射率も同時に変えられることになる。この噴射率
は、例えば低速時には高く、高速時には低く保つことに
よって、燃費の向上、排ガス低減および騒音低減等の問
題に対して噴射時期とともにその制御が有効な対策とな
ることが知られている。

一般に、プレストローク制御式燃料噴射ポンプは、第
６図に示すように構成されている。すなわち、ポンプ本
体１には縦穴２が形成され、この縦穴２内にプランジャ
バレル３が前記ポンプ本体１に固定され、このプランジ
ャバレル３にプランジャ４が回動かつ摺動自在に挿入さ
れている。このプランジャ４の上端は、前記ポンプ本体
１に固定された弁ハウジング５に挿入され、この弁ハウ
ジング５には送出弁６が設けられている。さらに、プラ
ンジャ４と送出弁６との間に燃料圧室７が構成され、さ
らに送出弁６の上方には燃料出口８が形成されている。
また、プランジャ４の下端は、カムシャフト９に形成さ
れたカム10にタペット11を介して当接している。このカ
ムシャフト９はクランクシャフトとカップリング（図示
しない）を介して連動しており、機関からの回転を受け
て等速回転運動する。前記カム10は、たとえば第５図に
示すようなカム特性を有し、タペット11がスプリング12
によってカム10に押し付けられているので、プランジャ
４がカム10に追従して不等速に往復運動する。

また、前記プランジャ４に形成されたフェース部13に
は噴射量制御用のスリーブ14が嵌合され、さらにスリー
ブ14に固着された係合突起15にガバナからの出力ロッド
16が係合し、出力ロッド16の動きに対応してプランジャ
４の回転方向の位置が定まるようになっている。

制御スリーブ17は、前記プランジャバレル３の上方に
形成された燃料溜り室19にあって、前記プランジャ４に
摺動自在に嵌合されている。そして、前記プランジャ４
には燃料吸排気孔20が半径方向に形成されているととも
に、この吸排孔20と前記燃料圧室７とを連通する燃料通
路21が軸方向に形成され、さらにプランジャ４の外面に
は、一端が前記吸排孔20に通じる傾斜溝22が形成されて
いる。一方、前記制御スリーブ17の半径方向にはカット
オフ孔23が形成されている。したがって、今、第６図に
示すように、プランジャ４が下死点から上昇する当初に
あっては、前記吸排孔20が燃料溜り室19に開口して燃料
圧室７と燃料溜り室19とが前記吸排孔20と燃料通路21と
を介して連通しているので、燃料圧室７の圧力は上昇せ
ず、送出弁６が開き、このようにプランジャ４の下死点
から前記吸排孔20が閉じるまでの寸法がプランジャ４の
プレストロークであり、前記吸排孔20が閉じられた時が
噴射始めとなる。そして、さらにプランジャ４が上昇す
ると、傾斜溝22がアットオフ孔23に開口して燃料圧室７
と燃料溜り室19とが燃料通路21とカットオフ孔23とを介
して連通するので、燃料圧室７の圧力が下降し、送出弁
６が閉じる。このように傾斜溝22がカットオフ孔23に開
口した時が噴射終りとなり、噴射始めから噴射終りまで
の寸法がプランジャ４の有効ストロークである。

また、前記制御スリーブ17の摺動方向の位置は電気的
駆動手段としてのステッピングモータ24により制御され
る。すなわち、ステッピングモータ24の出力ロッド25に
は係合突起26が設けられ、この係合突起26が前記制御ス
リーブ17に設けられた係合溝27に係合しており、ステッ
ピングモータ24が駆動すると、出力ロッド25を支点とし
て係合突起26が回動して制御スリーブ17を摺動方向に動
かすものである。

燃料噴射量の制御は、ガバナによって行われ、所定の
ガバナ特性にしたがって出力ロッド16が摺動し、係合突
起15およびスリーブ14を介してプランジャ４が回動す
る。これによりプレストロークは一定であるが、傾斜溝
22の位置が変わるので、この傾斜溝22がカットオフ孔23
に開口する噴射終りが制御されて有効ストロークが終
り、噴射量が制御される。

また、燃料噴射率の制御は、機関の回転数が低いとき
には高く、高いときには低く保つことによって、コント
ロールユニット28から出力された出力信号に基づいてス
テッピングモータ24が駆動し、出力ロッド25を介して制
御スリーブ17を上下することにより調節される。すなわ
ち、制御スリーブ17が上下すると、第５図a,bに示すよ
うに、噴射始めと噴射終りとが平行に移動し、カム曲線
の傾きが変わるので、噴射率が調節されるものである。

（考案が解決しようとする課題） 前述のように構成されたプレストローク制御式燃料噴
射装置は、高噴射率が得られる反面、ポンプの駆動トル
クの変動が大きく、タイミングギャの騒音を発生しやす
いという問題がある。すなわち、プレストローク制御式
燃料噴射ポンプの場合には噴射圧を上げて燃焼をよくす
るために、第５図に示すように、カム速度が大きい部分
を使用している。したがって、カム速度が大きい部分を
使用したときには燃料圧室７の圧力が高く、燃料噴射ポ
ンプの駆動トルクの変動が大きく、タイミングギャの騒
音が発生する。

この考案は、前記事情に着目してなされたもので、そ
の目的とするところは、ポンプの駆動トルク変動を低減
させるとともに、騒音を低減できるプレストローク制御
式燃料噴射装置を提供することにある。

［考案の構成］ （課題を解決するための手段及び作用） この考案は、前述した目的を達成するために、不等速
に往復運動するプランジャに制御スリーブを摺動自在に
嵌合し、プレストロークを変えられるようにしたプレス
トローク制御式燃料噴射装置における燃料噴射ポンプの
カムシャフトと機関と連動して回転するカップリングと
の間に遠心式進角機構を備えた進角装置を設けたことに
ある。

遠心式進角機構を備えた進角装置は機関の回転数に応
じた進角特性によるトルク緩衝作用によってトルク変動
を緩衝する。

（実施例） 以下、この考案の一実施例を図面に基づいて説明す
る。

第１図はプレストローク制御式燃料噴射装置の全体を
示すもので、30は燃料噴射ポンプであり、この燃料噴射
ポンプ30にはガバナ31、燃料フィードポンプ32およびプ
レストロークアクチュエータ33を備えている。燃料噴射
ポンプ30に設けられるポンプ本体は第６図に示したもの
と同一構造であり、そのカムシャフト９が燃料噴射ポン
プ30の端面から突出している。

一方、34は機関と連動するシャフトであり、このシャ
フト34にはカップリング35が設けられ、このカップリン
グ35は後述する遠心式進角機構を備えた進角装置（以
下、メカニカルタイマという）36を介して前記カムシャ
フト９に連動している。

前記カップリング35は、シャフト34からの駆動力をメ
カニカルタイマ36に伝達させる薄板を重ね合わせた公知
のラミネート型カップリングであり、薄板のもつ可逆性
によって回転力以外の余分な力を吸収し、燃料噴射ポン
プ30に必要以上の力が加わらないように保護している。

前記メカニカルタイマ36は、第２図〜第４図に示すよ
うに構成されている。すなわち、37はタイマハウジング
であり、前記カップリング35に連結されている。38はタ
イマホルダであり、前記燃料噴射ポンプ30のカムシャフ
ト９に直結されている。タイマハウジング37には相対し
て圧入された２本のハウジングピン39、39が圧入され、
このハウジングピン39、39にはこれに対して偏心した内
側エキセントリックカム40、40が挿入され、この外周に
は外側エキセントリックカム41、41が嵌合されている。
この外側エキセントリックカム41、41はタイマホルダ38
の嵌合孔42、42に挿入されている。そして、タイマハウ
ジング37が回転することにより、タイマホルダ38と同時
に同方向に回転してカムシャフト９を回転駆動するよう
になっている。

前記タイマホルダ38の軸部43にはこれを挟持するよう
に一対のフライウエイト44、44が設置され、これは両側
からタイマスプリング45、45によって均一に一定のセッ
ト力を持って組み込まれている。フライウエイト44、44
には中央部に下向きに圧入されたピン46、46が設けら
れ、これは前記外側エキセントリックカム41、41の小孔
47、47に挿入されている。そして、静止時や低速回転時
ではタイマスプリング45、45のセット力に負け、フライ
ウエイト44、44はタイマホルダ38の軸部43に押し付けら
れている（第３図参照）。

また、エンジン回転を上昇させていくとフライウエイ
ト44、44の遠心力とタイマスプリング45、45のセット力
が釣り合い、さらに回転が上昇するとフライウエイト4
4、44は外側にリフトする。この動きはタイマハウジン
グ37のハウジングピン39、39を支点（Ｃ点）として内側
エキセントリックカム40、40を介し、外側エキセントリ
ックカム41、41の中心部（Ｂ点）は、メカニカルタイマ
36の中心部（Ａ点）を支点に回転方向に移動する。外側
エキセントリックカム41、41はタイマホルダ38に嵌合さ
れているため、その動きはタイマホルダ38に伝達され
る。フライウエイト44、44の背部がタイマハウジング37
の内壁に当たったときが最大進角度である（第４図参
照）。

このように構成されたメカニカルタイマ36は、エンジ
ンの回転の上昇とともに、タイマスプリング45、45が圧
縮される量だけ進角するので進角度は回転数に比例する
が、このメカニカルタイマ36は同時に緩衝作用があり、
燃料噴射ポンプ30の駆動トルクの変動を低減させる働き
がある。すなわち、プレストローク制御式燃料噴射ポン
プの場合には噴射圧を上げて燃焼をよくするために、第
５図に示すように、カム速度が大きい部分を使用してい
る。したがって、カム速度が大きい部分を使用したとき
には燃料圧室７の圧力が高く、燃料噴射ポンプ30の駆動
トルクの変動が大きく、タイミングギャの騒音が発生す
るが、この考案のように、メカニカルタイマ36をカップ
リング35とカムシャフト９との間に介在させることによ
って燃料噴射ポンプ30の駆動トルクの変動を低減させて
騒音を低減させることができる。

［考案の効果］ 以上説明したように、この考案によれば、燃料噴射ポ
ンプが、プランジャのリフト速度が単調に増加する形状
のカムを有すると共に、プランジャに摺動自在に嵌合さ
れた制御スリーブを機関の運転状態に応じてプランジャ
に摺動方向に移動させることにより燃料噴射時期を制御
している。さらに、機関の特定運転領域で、制御スリー
ブを燃料噴射時期の遅角側に移動して燃料噴射率を高く
なるように制御する構成、並びにカップリングとカクシ
ャフトとの間に、タイマスプリング、及び前記クランク
シャフトの回転数増大に伴って前記タイマスプリングの
付勢力に抗して前記カムシャフトを進角側に回転位相を
変更するフライウエイトにより構成されるトルク変動緩
衝用の遠心式進角機構を備えた進角装置を設けている。

したがって、前記遠心式進角機構におけるタイマスプ
リングの弾性により駆動トルク変動を吸収すると共に、
フライウエイトが微少変位し、駆動トルクをより減衰で
き、駆動側ギャと非駆動側ギャとの間の歯打ち騒音を大
幅に低減できる効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第４図はこの考案の一実施例を示すもので、第
１図はプレストローク制御式燃料噴射装置の全体の構成
を示す側面図、第２図はメカニカルタイマの分解斜視
図、第３図および第４図はメカニカルタイマの作用説明
図、第５図はカム回転角とカム速度との関係を示すグラ
フ、第６図はプレストローク制御式燃料噴射ポンプの縦
断側面図である。 ４…プランジャ、９…カムシャフト、17…制御スリー
ブ、30…燃料噴射ポンプ、34…シャフト、35…カップリ
ング、36…メカニカルタイマ。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】クランクシャフトの回転をカップリングを
   介して燃料噴射ポンプのカムシャフトに伝達させ、プラ
   ンジャを不等速に往復運動させるとともに、前記プラン
   ジャに制御スリーブを摺動自在に嵌合し、この制御スリ
   ーブを機関の運転状態に応じて少なくとも前記プランジ
   ャの摺動方向に移動させることにより、燃焼噴射時期を
   制御するプレストロークを変えられるようにしたプレス
   トローク制御式燃料噴射装置において、 上記制御スリーブは、前記カムシャフトに設けられたカ
   ムの回転によって得られる前記プランジャのリスト速度
   が単調に増加する範囲を少なくとも含んで燃料噴射時期
   の変更が行われるように前記プランジャに対して嵌挿さ
   れ、 前記機関の特定運転領域で、上記制御スリーブを燃料噴
   射時期の遅角側に移動して燃料噴射率を高くなるように
   制御すると共に、 前記カップリングとカムシャフトとの間に、タイマスプ
   リング、及び前記クランクシャフトの回転数増大に伴っ
   て前記タイマスプリングの付勢力に抗して前記カムシャ
   フトを進角側に回転位相を変更するフライウエイトによ
   り構成されるトルク変動緩衝用の遠心式進角機構を備え
   た進角装置を設けたことを特徴とするプレストローク制
   御式燃料噴射装置。