JP2024530036A - 抗体Fcバリアント - Google Patents

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Abstract

本発明は、低減された抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体媒介細胞傷害(CDC)を含む、低減されたエフェクター機能を有するコンパニオン動物のバリアントFcポリペプチドに関する。エフェクター機能ヌルIgGは、広範な疾患領域における、並びにFc融合タンパク質及び代替抗体フォーマットにおける多くの抗体の作用機序にとって重要である。【選択図】なし

Description

序論
抗体ベースの治療薬は、腫瘍学、炎症性疾患及び感染性疾患のような分野における増加する数のヒト悪性腫瘍に対する療法の重要な構成要素として浮上している。実際、抗体は、今日最も売れている薬物クラスのうちの1つであり、最も売れている上位10個の薬物のうちの5つは、抗体である。抗体療法は、イヌなどの家畜の治療のための獣医学にもますます使用されている。
米国だけでも毎年600万件のイヌのがんが診断され、ネコでも同様の数のがんが診断されているため、獣医学においてこれらの療法に対する必要性は非常に大きい(Cekanova and Rathore Animal models and therapeutic molecular targets of cancer:utility and limitations.Drug Des Devel Ther,8:1911-2,2014)“Animal models and therapeutic molecular targets of cancer:utility and limitations”Drug design,development and therapy 8:1911-1922)。更に、米国のイヌの4匹に1匹が何らかの形の関節炎と診断されている(Bland“Canine osteoarthritis and treatments:a review”Veterinary Science Development 5(2)),2015)。したがって、多くの慢性獣医学的疾患に対する抗体治療薬の適用の可能性がある。モノクローナル抗体はまた、寄生虫性疾患、細菌性疾患及びウイルス性疾患の検出、予防及び制御に有益であり得る。
ヒトにおける治療的使用のための最初のモノクローナル抗体は、25年前に市販承認を受け、それ以来80種が承認され、50種超が後期段階の臨床開発中である。対照的に、獣医学における抗体の使用は初期段階であり、開発中の抗体はごくわずかである。限られた進歩は、種特異的治療抗体の開発が技術的に困難であり、比較的最近の努力に過ぎないという事実を反映している。したがって、獣医学のための改良された抗体、及び獣医学のための抗体を作製するための方法を開発する必要がある。
抗体構造は、ヒトにおける疾患を標的とするために様々な異なるヒト抗体フォーマットを操作するために利用されている。一例は、ヒトFcドメインの最適化である。Fcの最適化の基礎は、Fc受容体、C1q、及びFcRnに結合するその能力を調節することである。Fcドメインは、有益な機能獲得改変を得るために改変され得るが、場合によっては、抗体Fc機能を消失させることが有益であり得る。これらの状況は、受容体を架橋し、シグナル伝達を誘導するために受容体アゴニストとして使用される抗体、(シグナル伝達を防止するために受容体:リガンド相互作用を遮断する受容体アンタゴニスト、又は抗原発現標的細胞に1つ以上の薬物を送達するための薬物送達ビヒクルを含む。これらの事例では、エフェクター細胞上の受容体のFc結合又はC1qの結合は、受容体を発現する生物学的に重要な細胞の望ましくない殺傷又はオフターゲット細胞への薬物コンジュゲート抗体の動員につながる可能性があるため、望ましくない。したがって、エフェクター機能ヌルIgGは、広範な疾患領域における多くの抗体の作用機序にとって重要である。加えて、これは、Fc融合タンパク質、及び二重特異性抗体又は多重特異性抗体などの代替抗体フォーマットにおいても重要である。Fc配列への変化及びグリコシル化を含む、ヒト抗体のFcγR結合及び補体タンパク質C1q結合を操作するためのいくつかの戦略は、Saunders Front.Immunol.,Article 1296,Volume 10,7 June 2019に記載されている。
しかしながら、Fc領域内のアミノ酸配列を編集することによるFc媒介機能の変化は、生体物理学的特性の変化をもたらし得、これは、Fcベースの治療薬の更なる開発のために、熱安定性の低下、凝集傾向の増加、及びインビボ薬物動態の低下などの望ましくない結果をもたらし得る。加えて、改変は、プロテインA及び新生児型受容体(FcRn)結合などの他の分子とのFc相互作用に影響を及ぼし得るコンフォメーション変化を引き起こし得る。これらの変化は、配列のみに基づいて予測不可能である。したがって、エフェクター機能を変化させるようにFc断片を改変する場合、安定性及び凝集、並びにプロテインA及びFcRnへの結合を含む、物理化学的特性に対する任意の変異の影響を考慮し、慎重に評価することが重要である。これは、臨床的に有用な分子を開発する上で重要である。
Fc結合が低減又は消失した獣医学のための改良された抗体、及び獣医学のためのそのような抗体を作製するための方法を開発する必要性がある。本発明は、特に、改変された免疫グロブリンFc領域を提供することにより、この必要性に対処することを目的とする。
細胞傷害及び食作用エフェクター機能を媒介する能力は、抗体が標的細胞を破壊する強力な機構である。Fc領域は、Fc受容体及びリガンドとの相互作用を介して、抗体の認識ドメインをこれらのエフェクター機能に連結する。Fc領域の変化によるこれらのエフェクター機能の操作は、多くの病状、例えば、がん、自己免疫疾患及び感染症の治療において重要な意味を有する。
本発明は、(wtと比較して)有利な特性を有する改変イヌ及び改変ネコFc領域を提供する。
イヌIgG-A及びIgG-Dはエフェクター機能が欠損しているが、IgG-B及びIgG-Cは、エフェクター機能に習熟していることが知られている。しかしながら、IgG-BはプロテインA結合能及び他のイヌIgGと比較して比較的長い半減期などの他の特徴のために、治療用抗体で現在使用されている主なIgGである。したがって、エフェクター機能ヌルイヌIgG-Bを生成することは、ある特定の治療領域にとって魅力的である。
本発明者らは、野生型IgG-B Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、イヌIgG-Bエフェクター機能を低減又は消失するように改変されたイヌIgG-Bを有する。構造解析に基づいて、改変のためのFcドメインのアミノ酸配列において標的化された領域は、アミノ酸配列モチーフに基づいて、下部ヒンジ、プロリン領域、及びSHED領域を含み、ここで、FcガンマR及びC1qとの潜在的な相互作用が生じる。完全にイヌ細胞に基づく機能アッセイにおけるFcバリアントの効果を実証した。
ネコIgGについてはあまり知られていないが、天然のネコIgGアイソフォームの特徴付けに関する以前の研究では、IgG1及びIgG2と呼ばれる2つのアイソフォームが同定されている。IgG1はエフェクター機能に習熟していることが示されているが、IgG2はエフェクター機能が欠損している。しかしながら、IgG2は、ヒトIgG4と同様に、ヒンジジスルフィド結合不安定性を発揮する。これは、治療用途に直接使用される野生型IgG2の適用を妨げる。したがって、そのエフェクター機能を消失させるためのネコIgG1の改変は、ある特定の治療領域について安定したエフェクター機能ヌルネコIgGバリアントを得るための魅力的な選択肢である。
イヌIgG-B改変に対する同じアプローチを使用して、本発明者らは、野生型ネコIgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、ネコIgG1エフェクター機能を低減又は消失するようにネコIgG1を改変した。構造解析に基づいて、改変のためのFcドメインのアミノ酸配列において標的化された領域は、アミノ酸配列モチーフに基づいて、下部ヒンジ、プロリン領域、及びSHED領域を含み、ここで、FcγR及びC1qとの潜在的な相互作用が生じる。Fcバリアントの効果は、細胞に基づく機能アッセイにおいて実証された。
したがって、本発明は、補体及びFcγR媒介エフェクター機能を低減させる、生物種化バリアントを含む、単離されたコンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ、及びウマ)のFcバリアントを提供する。Fcバリアントは、単離されたポリペプチド、例えば、抗体又は抗体断片の一部である。
本発明のFcバリアントは、野生型Fcと比較して1つ以上のアミノ酸置換を含み、当該置換(複数可)は、補体タンパク質C1qへの結合を変化させるか、又はCDC、ADCC及び/若しくはADCP活性を低下させる。したがって、本発明は、天然野生型配列と比較して、Fcドメインに1つ以上の改変を有するFcバリアント、例えば、イヌ、ウマ又はネコのバリアントであって、改変が、下部ヒンジ、プロリン領域及びSHED領域におけるアミノ酸置換である、バリアントに関する。
配列番号11に示される野生型イヌIgG-B定常領域配列及び配列番号31に示されるネコIgG1定常領域配列に関して、下部ヒンジは残基119~125を含み、プロリン領域は残基211~217を含み、SHED領域は残基151~156を含む。図2A及び図15Aは、それぞれ、イヌ定常領域及びネコ定常領域についてのドメイン及び残基の番号付けを示す。野生型と比較した下部ヒンジ、プロリン領域及びSHED領域における本発明によるイヌバリアント配列を図2Aに示し、野生型と比較した下部ヒンジ、プロリン領域及びSHED領域における本発明によるネコバリアント配列を図15Aに示す。残基の番号付けは、イヌFcについては配列番号11(図2B)、ネコFcについては配列番号31(図15B)を参照している。これらの参照配列は、それぞれ、イヌIgGB及びネコIgG1野生型定常領域アミノ酸配列を示す。図1は、イヌの完全なIgGアイソフォーム野生型配列を示し、図13は、以前に同定されたネコのIgG1及びIgG2アイソフォームを示す。また、本発明者によって同定、単離、及び特徴付けられた新規のアイソフォームIgG3も示している。
したがって、本発明は、以下に更に記載されるイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。本発明は、以下に更に記載されるネコ、キメラ若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域に関する。本発明は、単離されたネコIgG3ポリペプチド又はその一部分、及びIgG3ポリペプチド又はその一部分を含む組換え抗体分子に関する。
一態様では、本発明は、改変Fc領域を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/若しくは配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換、並びに/又は
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含み、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、以下の改変:
c1)配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換と組み合わせた、配列番号11の211位におけるHへの改変、
c2)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、
c3)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換、又は
c4)c1~c3の組み合わせのうちの1つから選択される、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一態様では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、以下のa)に記載されるアミノ酸置換、並びに、任意選択的に、以下のb)及び/又は以下のc)に記載されるアミノ酸置換を含み、
a)アミノ酸置換が、配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択され、
b)アミノ酸置換が、配列番号11の153位におけるGへの改変、配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択され、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、配列番号11の211位におけるHへの改変、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換から選択される、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一態様では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
1)
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
2)
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
3)
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
4)
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
5)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
6)
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
7)
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
8)
a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、及び
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含む、Fc領域、又は
9)
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、Fc領域を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一実施形態では、Fc領域は、上記に示される改変を含むが、任意の更なる改変を有しない。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、及び
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含む、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、上記態様の一実施形態では、本発明は、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、Fc領域を含む、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、本発明は、ポリペプチドが、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20、又はそれに対して少なくとも80%、85%、90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含み、この配列が、野生型配列ではない、イヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
本発明はまた、本明細書に記載のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域を含む、薬学的組成物に関する。
本発明はまた、本明細書に記載のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域をコードする、核酸に関する。
本発明は更に、上記のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-B核酸又はそのFc領域を含む、ベクターに関する。
本発明は更に、上記のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-B核酸を含む、宿主細胞に関する。
本発明は更に、疾患、例えば、炎症性疾患又は自己免疫疾患、の治療における使用のための、本明細書に記載のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はFc領域、あるいは本明細書に記載のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はFc領域を含む薬学的組成物に関する。
本発明は、対象における疾患を治療する方法であって、有効量の、上記のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域を含むポリペプチドあるいは薬学的組成物を、当該対象に含む、前記方法に関する。疾患は炎症性疾患又は自己免疫疾患であり得る。
本発明は、本明細書に記載のイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域、あるいは本明細書に記載の薬学的組成物、を含むキットに関する。
本発明は更に、エフェクター機能を抑制するためのインビトロ又はインビボ方法であって、細胞又は組織を、本明細書に記載のポリペプチド又はイヌ、キメラ若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域と接触させることを含む、方法に関する。
配列番号31に示されるネコIgG1定常領域配列に関して、下部ヒンジは残基119~125を含み、プロリン領域は残基211~217を含み、SHED領域は残基151~156を含む。図15Aは、ドメイン及び残基の番号付けを示す。配列番号31(IgG1)の野生型と比較した、下部ヒンジ、プロリン領域及びSHED領域における本発明によるネコバリアント配列を示す。残基の番号付けは、ネコIgG1野生型定常領域アミノ酸配列を示す配列番号31(図15B)を参照している。図13Aは、完全なネコIgGアイソフォーム野生型配列を示す。
したがって、別の態様では、本発明は、改変Fc領域を含む、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)以下の改変:配列番号31の217位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換のいずれかを更に含むか、又は
b)配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のいずれかを更に含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換、及び任意選択的に、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ポリペプチドは、野生型IgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する。
一実施形態では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である。
一実施形態では、エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)である。
一実施形態では、ポリペプチドは、野生型IgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、Fcγ受容体(FcγR)に対するより低い親和性を有する。
一実施形態では、ポリペプチド又はFc領域は、FcRn結合を保持する。
本発明はまた、上記のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域を含む、薬学的組成物に関する。
本発明はまた、エフェクター機能を抑制するためのインビトロ、エクスビボ又はインビボ方法であって、細胞又は組織を、上記のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域と接触させることを含む、前記方法に関する。
本発明は、更に、疾患、例えば、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療における使用のための、本明細書に記載のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域、あるいは本明細書に記載のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域を含む薬学的組成物に関する。
本発明は、対象における疾患を治療する方法であって、有効量の、上記のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域を含むポリペプチドあるいは薬学的組成物を、当該対象に含む、前記方法に関する。疾患は炎症性疾患又は自己免疫疾患であり得る。
一実施形態では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である。
一実施形態では、エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)である。
本発明はまた、上記のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域をコードする、核酸に関する。
本発明はまた、上記のネコ又はネコ化核酸を含む、ベクターに関する。
本発明はまた、上記のネコ若しくはネコ化核酸配列又はベクターを含む、宿主細胞に関する。
本発明はまた、上記のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域、あるいは薬学的組成物を含む、キットに関する。
本発明はまた、配列番号33を含む、単離されたIgG3ネコポリペプチド、又はそのFc領域に関する。
本発明はまた、上記のポリペプチド又はFc領域をコードする、単離されたIgG3ネコポリヌクレオチドに関する。
本発明はまた、上記のポリペプチド又はFc領域を含む、単離された組換え抗体に関する。
本発明は、以下の非限定的な図面において更に例示される。
Aは、野生型イヌIgG(cIg-G)IgG-A(配列番号22)(a)、IgG-B(配列番号21)(b)、IgG-C(配列番号23)(c)、及びIgG-D(d)(配列番号24)のアミノ酸配列を示す。定常領域は、残基140から始まる。強調表示は、下部ヒンジ、プロリンサンドイッチ、及びSHED領域を識別する。 Bは、非還元SDS-PAGEによって視覚化されたオファツムマブ可変領域を有する、野生型イヌキメラ(cIg-G)IgG-A(配列番号22)(a)、IgG-B(配列番号21)(b)、IgG-C(配列番号23)(c)、及びIgG-D(d)(配列番号24)を示す。IgG-A及びIgG-Dはヒンジ不安定性を示し、HL半抗体種は可視であることに留意されたい。 Aは、本明細書に記載の野生型イヌIgG-A、-B、-C及び-D並びにDef IgG-B「def1~9」のアミノ酸配列を示す。変異は、下部ヒンジ(アミノ酸残基119~125)、プロリンサンドイッチ(211~217)、及び「SHED」領域(151~156)にある。太字は、野生型イヌIgG-B(cIgG-B)と比較してDef変異体内で変異しているアミノ酸である。残基の番号付けは、イヌIgG-B野生型定常領域アミノ酸配列を示す配列番号11を参照している。この配列を図2Bに示す。図2Aを参照すると、IgG-A、-B、-C、-Dの下部ヒンジは、それぞれ、配列番号48、49、50、51である。IgG-A、-B、-C、-Dのプロリンサンドイッチは、それぞれ、配列番号52、53、54、55である。IgG-A、-B、-C、-DのSHED領域は、それぞれ、配列番号56、57、58、59である。B-def1、B-def2、B-def3、B-def4、B-def5、B-def6、B-def7、B-def8、B-def9の下部ヒンジは、それぞれ、配列番号60、61、62、63、64、65、66、67、68である。B-def1、B-def2、B-def3、B-def4、B-def5、B-def6、B-def7、B-def8、B-def9のプロリンサンドイッチは、それぞれ、配列番号69、70、71、72、73、74、75、76、77である。B-def1、B-def2、B-def3、B-def4、B-def5、B-def6、B-def7、B-def8、B-def9のSHED領域は、それぞれ、配列番号78、79、80、81、82、83、84、85、86である。 IgG-B変異体のCDC活性を示す。全てのDefバリアントは、IgG-B CDC活性を抑制する。野生型(WT)イヌIgG-Bと比較した場合、エフェクター機能欠損IgG-B変異体Def1、2、3、5、6、7、8、及び9によるヒトCD20(CLBL1 hCD20)を発現するイヌT細胞の低減された補体依存性殺傷を示す補体依存性細胞傷害性アッセイ。このアッセイで使用される全ての抗体は、オファツムマブ可変領域を有する。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 キメラオファツムマブIgG-B及びリツキシマブIgG-BについてのADCC活性の比較を示し、可変領域配列がADCC活性の効力にも寄与しないことを示す。 野生型又はhCD20発現MDCK II細胞上のIgG-B変異体のADCC活性を示す。野生型(WT)イヌIgG-Bと比較した場合、ヒトCD20を発現するイヌ細胞の細胞依存性殺傷を誘導する、オファツムマブ可変領域を有するDef変異体1、2、3、5、6、7、8、及び9のイヌIgG-Bの低減された能力を示す、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性アッセイ。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は、全ての細胞が殺傷されることを意味し、0%は、シグナルが、対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。図5Aは、個々のDef変異体のグラフを示す。図5Bは、図5Aに示されるデータの組み合わせである。上パネルは、ヒトCD20 MDCK細胞を使用した変異体について得られた結果を示し、下パネルは、野生型MDCK細胞を使用した結果を示す。 野生型又はhCD20発現MDCK II細胞上のIgG-B変異体のADCC活性を示す。野生型(WT)イヌIgG-Bと比較した場合、ヒトCD20を発現するイヌ細胞の細胞依存性殺傷を誘導する、オファツムマブ可変領域を有するDef変異体1、2、3、5、6、7、8、及び9のイヌIgG-Bの低減された能力を示す、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性アッセイ。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は、全ての細胞が殺傷されることを意味し、0%は、シグナルが、対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。図5Bは、図5Aに示されるデータの組み合わせである。上パネルは、ヒトCD20 MDCK細胞を使用した変異体について得られた結果を示し、下パネルは、野生型MDCK細胞を使用した結果を示す。 野生型又はhCD20発現MDCK II細胞上のIgG-B変異体のADCC活性を示す。野生型(WT)イヌIgG-Bと比較した場合、ヒトCD20を発現するイヌ細胞の細胞依存性殺傷を誘導する、オファツムマブ可変領域を有するDef変異体1、2、3、5、6、7、8、及び9のイヌIgG-Bの低減された能力を示す、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性アッセイ。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は、全ての細胞が殺傷されることを意味し、0%は、シグナルが、対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。図5Bは、図5Aに示されるデータの組み合わせである。上パネルは、ヒトCD20 MDCK細胞を使用した変異体について得られた結果を示し、下パネルは、野生型MDCK細胞を使用した結果を示す。 野生型又はhCD20発現MDCK II細胞上のIgG-B変異体のADCC活性を示す。野生型(WT)イヌIgG-Bと比較した場合、ヒトCD20を発現するイヌ細胞の細胞依存性殺傷を誘導する、オファツムマブ可変領域を有するDef変異体1、2、3、5、6、7、8、及び9のイヌIgG-Bの低減された能力を示す、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性アッセイ。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は、全ての細胞が殺傷されることを意味し、0%は、シグナルが、対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。図5Bは、図5Aに示されるデータの組み合わせである。上パネルは、ヒトCD20 MDCK細胞を使用した変異体について得られた結果を示し、下パネルは、野生型MDCK細胞を使用した結果を示す。 Def2、3、及び7変異体のADCC活性を示す。エフェクター欠損変異体であるDef2、Def3、及びDef7は、IgG-B野生型(エフェクター有効)対応物と比較して、広い用量範囲でADCC機能を完全に消失する。異なる抗体濃度でヒトCD20を発現するイヌ細胞の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を誘導するオファツムマブ可変領域の能力を有する、Def2、Def3及びDef7変異体とのイヌIgG-B WTの直接比較。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 加速安定性試験(A)及びプロテインA結合(B)の結果を示す。A:WT及び全てのイヌDef変異体はいずれも、14日間の保管後4℃で%及びモノマーピークの面積の著しい減少を示さなかった(図示せず)。更に、全てのdef変異体は、40℃でインキュベートした14日後に、WTに対してより高い%及び同様のモノマーピーク面積を示し、これは、全体的なタンパク質安定性が、欠損変異体に影響を受けないことを意味する。 加速安定性試験(A)及びプロテインA結合(B)の結果を示す。B:動態及び定常状態親和性分析はいずれも、IgG-Bwtとdef変異体との、プロテインA及びFcRnへの結合親和性に統計的差異を示さなかった。 オファツムマブIgG-B WT対Def変異体のFcγR1結合能を示す。オファツムマブIgG-B WT及びDef変異体1~8のSPR測定は、FcγR1に対する結合親和性において統計的に有意な差を示した。これらの分子のSPRとADCCデータとの間には良好な相関がある(WT>Def5~8>Def1、2、3、6、7)ことは注目に値し、これは、FcγR1に対するより高い親和性が、インビトロアッセイにおいてより高い殺傷%に対応することを示している。 Rag1 KOマウスに1mg/kgのOfa-IgGB WT、Def2、Def3、又はDef7を単一用量で注射することによって得られたインビボPKを示す。(注射前血清によって得られた)検出のバックグラウンドレベルは、点線によって示される。Def2,3,7変異体は、WT IgG-B WTと比較して同様の薬物動態プロファイルを有する。 イヌDef変異体のDLS測定値を示す。全てのIgG-B変異体は、野生型IgG-Bと同様の半径を示した。これは、導入された変異がIgG-B Fcドメインの安定性を変化させなかったことを示している。 WTと比較したイヌDef変異体のTonset測定値を示す。全てのIgG-B変異体は、野生型IgG-Bと同様のTonsetを示した。これは、温度ストレスによって引き起こされる凝集傾向が、IgG-B Fc WTドメインと比較して、全ての欠損変異体において同様であることを示している。 鋳型としてTexas A&M Universityで入手可能なFACB-160A15商用BACライブラリを使用して生成されたPCR産物(1869bp)のサンガー配列決定によって確認された、ネコIGHG3の推定される遺伝子構造を示す。 Aは、野生型ネコIgG(fIgG)1(配列番号31)(a)、2(配列番号32)(b)、及び3(配列番号33)(c)のアミノ酸配列を示す。定常領域は、残基141で開始する。強調表示は、下部ヒンジ、プロリンサンドイッチ、及びSHED領域を識別する。(B)は、非還元SDS-PAGEによって視覚化されたオファツムマブ可変領域を有する、野生型ネコキメラfIgG1(配列番号31)(a)、2(配列番号32)(b)、及び3(配列番号33)を示す。IgG2がヒンジ不安定性を有し、HL半抗体バンドが約75kDaの低分子量で移動することに留意されたい。 ネコWT IgG1、2、及び3のADCC活性を示す。野生型(WT)ネコIgG1と比較した場合に、オファツムマブ可変領域を有するWT IgG2及び3がヒトCD20を発現するイヌ細胞の細胞依存性殺傷を誘導する能力の低下を示す、抗体依存性細胞媒介細胞傷害アッセイ。CD20以外の異なる抗原を標的とするWT IgG1が陰性対照として示される。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 本明細書に記載の野生型ネコIgG-1、2及び3、並びにDef IgG1「Def1~4」のアミノ酸配列を示す。変異は、下部ヒンジ(アミノ酸残基119~125)、プロリンサンドイッチ(211~217)、及び「SHED」領域(151~156)にある。太字では、野生型ネコIgG-1(fIgG-1)と比較してDef変異体内で変異している強調されたアミノ酸である。残基の番号付けは、ネコIgG-1野生型定常領域アミノ酸配列を示す配列番号31を参照している。この配列を図15Bに示す。図15Aを参照すると、IgG-1、-2、-3の下部ヒンジは、それぞれ、配列番号87、88、89である。IgG-1、-2、-3のプロリンサンドイッチは、それぞれ、配列番号90、91、92である。IgG-1、-2、-3のSHED領域は、それぞれ、配列番号93、94、95である。1-def1、1-def2、1-def3、1-def4の下部ヒンジは、それぞれ、配列番号96、97、98、99である。1-def1、1-def2、1-def3、1-def4のプロリンサンドイッチは、それぞれ、配列番号100、101、102、103である。1-def1、1-def2、1-def3、1-def4のSHED領域は、それぞれ、配列番号104、105、106、107である。 本明細書に記載の野生型ネコIgG-1、2及び3、並びにDef IgG1「Def1~4」のアミノ酸配列を示す。変異は、下部ヒンジ(アミノ酸残基119~125)、プロリンサンドイッチ(211~217)、及び「SHED」領域(151~156)にある。太字では、野生型ネコIgG-1(fIgG-1)と比較してDef変異体内で変異している強調されたアミノ酸である。残基の番号付けは、ネコIgG-1野生型定常領域アミノ酸配列を示す配列番号31を参照している。この配列を図15Bに示す。 WTと比較したネコDef1、2、3、及び4変異体のADCC活性を示す。エフェクター欠損変異体Def3は、野生型(エフェクター有効)の対応物と比較して、ADCC機能を完全に消失する。異なる抗体濃度でヒトCD20を発現するイヌ細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害性を誘導するオファツムマブ可変領域の能力を有するDef1、2、3、及び4変異体とのイヌIgG1 WTの直接比較。結果は、Def3バリアントに存在する変異によってネコIgG1のADCC活性が完全に消失したことを示す。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 WTと比較したネコDef1、2、3、及び4変異体のADCC活性を示す。エフェクター欠損変異体Def3は、野生型(エフェクター有効)の対応物と比較して、ADCC機能を完全に消失する。異なる抗体濃度でヒトCD20を発現するイヌ細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害性を誘導するオファツムマブ可変領域の能力を有するDef1、2、3、及び4変異体とのイヌIgG1 WTの直接比較。結果は、Def3バリアントに存在する変異によってネコIgG1のADCC活性が完全に消失したことを示す。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 WTと比較したネコDef1、2、3、及び4変異体のADCC活性を示す。エフェクター欠損変異体Def3は、野生型(エフェクター有効)の対応物と比較して、ADCC機能を完全に消失する。異なる抗体濃度でヒトCD20を発現するイヌ細胞の抗体依存性細胞媒介細胞傷害性を誘導するオファツムマブ可変領域の能力を有するDef1、2、3、及び4変異体とのイヌIgG1 WTの直接比較。結果は、Def3バリアントに存在する変異によってネコIgG1のADCC活性が完全に消失したことを示す。データは、殺傷パーセンテージとしてプロットされ、100%は全ての細胞が殺傷されたことを意味し、0%はシグナルが対照細胞で得られたものと同一であった(抗体は添加されなかった)ことを意味する。 全てのネコDef変異体の天然のSDS-Page画像を示しており、これはWT(A)との明確な差異を示していない。全てのdef変異体は、HPLC-SEC(B)によって決定されるように、%及びモノマーピークの面積の有意な減少を示さず、これは、全体的なタンパク質安定性は、Def変異体に導入された変異の影響を受けないことを意味する。 全てのネコDef変異体の天然のSDS-Page画像を示しており、これはWT(A)との明確な差異を示していない。全てのdef変異体は、HPLC-SEC(B)によって決定されるように、%及びモノマーピークの面積の有意な減少を示さず、これは、全体的なタンパク質安定性は、Def変異体に導入された変異の影響を受けないことを意味する。 オファツムマブIgG1 WT及びDef変異体1~4の動態及び定常状態親和性分析の両方のSPR測定値は、プロテインA(A)及びFcRn(B)への結合親和性において統計的差異を示さなかった。オファツムマブIgG1 WT及びDef変異体1~4のSPR測定値は、FcγR1への結合親和性に有意差を示し、def変異体1~3は、野生型fIgG2及び3(C)のものと同様の結合を示した。 オファツムマブIgG1 WT及びDef変異体1~4の動態及び定常状態親和性分析の両方のSPR測定値は、プロテインA(A)及びFcRn(B)への結合親和性において統計的差異を示さなかった。オファツムマブIgG1 WT及びDef変異体1~4のSPR測定値は、FcγR1への結合親和性に有意差を示し、def変異体1~3は、野生型fIgG2及び3(C)のものと同様の結合を示した。 A)ネコDef変異体のDLS測定値を示す。全てのIgG1変異体は、野生型IgG1と同様の直径を示した。これは、導入された変異が、IgG1 Fcドメインの安定性及び凝集特性を変化させないことを示す。B)Def変異体のTonset測定値を示す。全てのIgG1変異体は、野生型IgG1と同様のTonsetを示した。これは、温度ストレスによって引き起こされる凝集傾向が、IgG1 Fc WTドメインと比較して、全ての欠損変異体において同様であることを示す。
次に、本発明を更に記載する。次の節では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義された各態様は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様又は態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の1つ以上の特徴と組み合わせてもよい。
一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、病理学、腫瘍学、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、及びそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。別途示されない限り、本開示の方法及び技術は、一般に、当技術分野で周知の従来方法に従って実行され、本明細書全体を通じて引用され及び考察される様々な一般的及びより具体的な参照文献に記載されるように実行される。例えば、Green and Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2012)、Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic,Zhiqiang An(Editor),Wiley,(2009)、及びAntibody Engineering,2nd Ed.,Vols.1 and 2,Ontermann and Duebel,eds.,Springer-Verlag,Heidelberg(2010)を参照されたい。
酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、当技術分野で一般的に達成されるように、又は本明細書に記載されるように実行される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、並びに医薬的及び薬学的化学に関連して使用される命名法、並びにそれらの実験室の手順及び技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤、及び送達、並びに患者の治療に使用される。
本発明は、獣医学的使用のための生物学的治療薬、特にイヌの治療における使用のための抗体ベースの治療薬を提供する。
本発明で使用される「抗体」という用語は、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖で構成される、任意の免疫グロブリン(Ig)分子又はその抗原結合部分若しくは断片、あるいはIg分子の必須のエピトープ結合特徴を保持する、その任意の機能的断片、変異体、バリアント、又は誘導体を指す。そのような変異体、バリアント、又は誘導体の抗体フォーマットは当該技術分野で既知である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のみを包含する。
全長抗体では、各重鎖は、重鎖可変領域又はドメイン(本明細書ではHCVRと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つの定常重鎖ドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域又はドメイン(本明細書ではLCVRと略される)及び軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。
各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結し、一方、2つのH鎖はH鎖アイソタイプに応じて1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結する。各H鎖及びL鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に、可変ドメイン(VH)、続いてα鎖及びγ鎖のそれぞれについての3つの定常ドメイン(CH)、並びにμアイソタイプ及びεアイソタイプについての4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、続いてその他端に定常ドメインを有する。VLはVHとアラインメントされ、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアラインメントされる。特定のアミノ酸残基は軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の界面を形成すると考えられている。VH及びVLの対合は一緒に単一の抗原結合部位を形成する。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称することもある。これらのドメインは、一般に、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も可変な部分であり、抗原結合部位を含有する。「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なることを指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全スパンにわたって均一に分布していない。代わりに、それは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方において超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントにおいて濃縮される。可変ドメインのうちのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続するループを形成し、場合によってはその一部を形成する、3つのHVRによって接続された、ベータシート構造を主に採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して一緒に保持され、他の鎖からのHVRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
重鎖及び軽鎖可変領域はフレームワーク領域(FR)と称される、より保存されている領域とともに散在した、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分化することができる。各重鎖及び軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
免疫グロブリン分子は、一般に、任意のアイソタイプ、クラス又はサブクラスのものであり得る。本発明の様々な態様によるCH3ドメインは、イヌIgGサブタイプのCH3ドメイン、例えば、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dである。本発明の他の態様によれば、CH3ドメインは、ネコIgGサブタイプのCH3ドメイン、例えば、IgG1(配列番号31)、IgG2(配列番号32)及びIgG3(配列番号33)である。
イヌでは、A、B、C、及びDと称される4つのIgG重鎖が存在する。これらの重鎖は、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dと称される、イヌIgGの4つの異なるサブクラスを表す。これらの4つの重鎖のDNA及びアミノ酸配列は、Tang et al.(Vet.Immunol.Immunopathol.80:259-270(2001))によって最初に特定された。これらの重鎖についての例示的なアミノ酸及びDNA配列はまた、GenBankデータベースからも入手可能である(IgGA:受託番号AAL35301.1、IgGB:受託番号AAL35302.1、IgGC:受託番号AAL35303.1、IgGD:受託番号AAL35304.1)。本発明者によって並びに本発明の態様及び実施形態に従って使用されるイヌIgG-A、IgG-B、IgG-C及びIgG-Dのアミノ酸配列を、図1及び表1に示す(配列番号22、21、23及び24)。
イヌ抗体はまた、2つのタイプの軽鎖、カッパ及びラムダを含有する(GenBank受託番号カッパ軽鎖アミノ酸配列ABY57289.1、GenBank受託番号ABY55569.1)。
イヌでは、IgG-A、IgG-B、IgG-C、及びIgG-Dと呼ばれる4つのIgG重鎖アイソフォームがある。これらの4つの重鎖のDNA及びアミノ酸配列は、Tang et al.(Vet.Immunol.Immunopathol.80:259-270(2001))によって最初に特定された。これらの重鎖についてのアミノ酸及びDNA配列はまたGenBankデータベースからも入手可能である(IgG-A:受託番号AAL35301.1、IgG-B:受託番号AAL35302.1、IgG-C:受託番号AAL35303.1、IgG-D:受託番号AAL35304.1)。本発明者によって並びに本発明の態様及び実施形態に従って使用されるイヌIgG-A、IgG-B、IgG-C及びIgG-Dのアミノ酸配列を、図1及び表1に示す(配列番号22、21、23及び24)。
イヌ抗体はまた、2つのタイプの軽鎖、カッパ及びラムダを含有する(GenBank受託番号カッパ軽鎖アミノ酸配列ABY57289.1、GenBank受託番号ABY55569.1)。
ネコでは、IgG1の2つのバリアントは、Kanai et al(Vet.Immunol.Immunopathol.73:53-62(2001))によって最初に同定され、IgG1a及びIgG1bと称されている。第2のIgGは、Strietzel et al(Vet.Immunol.Immunopathol.158:214--223 (2014))によって同定され、IgG2(GenBank受託番号KF811175.1)と称されている。これらのアイソフォームは、転写されたRNA配列からRACEによって同定された。優性発現アイソフォームはIgG1であり、これはネコPBMCにおいて90%超の発現IgGを占める(Lu et al Scientific Reports 7:12713(2017)。発明者らは、ネコIgGH領域のゲノム遺伝子座をアノテーションすることによって、IgG3と称される第3のネコIgGを同定した。本発明者によって並びに本発明の態様及び実施形態に従って使用されるネコIgG1、IgG2、IgG3のアミノ酸配列を図13及び表1(配列番号31、32、及び33)に示す。
したがって、本発明の態様はまた、配列番号33を含む単離されたポリペプチド若しくはその一部分、配列番号33を含む単離された組換え抗体若しくはその一部分、配列番号33を使用した組換え抗体を産生するための方法、並びに組換え抗体を産生するための方法における配列番号33の使用に関する。
ネコ抗体は、2種類の軽鎖、カッパ及びラムダも含有する。カッパ定常鎖配列は、1999年にWeberらによって最初に同定された(GenBank受託番号AF198257.1)。ネコのラムダ定常領域は明確に定義されておらず、これまでに2つのバリアント(GenBank受託番号XM_003994910.1及びE07339.1)が記載されている。ネコのPBMC RNA試料からこれら2つの公開されたラムダ配列までのCDR領域外で検出されたcDNA配列の高い可変性は、より多くのアロタイプがネコに存在し、未定義であることを示唆している(Strietzel et al 2014及びLu et al 2017)。
「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域の各々において、可変領域の各々について、CDR1、CDR2、及びCDR3と示される3つのCDRが存在する。「CDRセット」という用語は、抗原に結合することができる単一の可変領域に生じる3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、当技術分野で既知の異なるシステムに従って異なって定義され得る。
Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列の可変性に基づいており、ヒト抗体のために最も一般的に使用される番号付けシステムのうちの1つである(Kabat et al.,(1971)Ann.NY Acad.Sci.190:382-391及びKabat,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。「Kabat番号付け」、「Kabat定義」、及び「Kabatラベリング」という用語は、本明細書では互換的に使用される。当該技術分野で認識されているこれらの用語は、抗体又は抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域における他のアミノ酸残基よりも可変(すなわち、超可変)であるアミノ酸残基の番号付けシステムを指す。
別段記載されない限り、ある特定の位置でのイヌ残基を参照する場合に本明細書で使用される番号付けは、配列番号11に示されるIgG-B定常領域を参照するものである(図2も参照されたい)。したがって、本明細書における「位置」は、例えば、図1を参照して、タンパク質の配列中の場所を意味する。対応する位置は、概略として、一般に、他の野生型配列とのアラインメントによって決定される。本明細書で使用される場合、「残基」、例えば、アミノ酸残基とは、タンパク質における位置及びその関連するアミノ酸同一性を意味する。例えば、グルタミン酸は、配列番号11を参照して、イヌIgG-Bの定常領域の119位の残基である。
抗体のタンパク質分解消化は、Fv(断片可変)、Fab(断片抗原結合)、及びFc(断片結晶化)と称される異なる断片を放出する。Fc断片は、ジスルフィドによって一緒に保持される両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。Fc断片の定常ドメインは、抗体のエフェクター機能を媒介することに関与する。
本発明において特に興味深いのはFc領域である。本明細書で使用される場合、「Fc」又は「Fc領域」又は「Fcドメイン」は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域、及び場合によってはヒンジの一部を含むポリペプチドを意味する。
ヒトにおいて、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMの場合、Fcは、J鎖を含み得る。IgGの場合は、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)、並びにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下部ヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシ末端に残基C226又はP230を含むと定義され、番号付けはKabatにおけるようなEUインデックスに従う。イヌアイソフォームを図1に示し、これらはFc領域を含む。Fcを含むIgG-Bのイヌ定常領域は、配列番号11及び図2Bに示される。
本明細書で使用される場合、Fcは、本明細書に記載されるように、単独でのこの領域、又はFc融合(「融合組成物」若しくは「融合構築物」)との関連でのこの領域を指し得る。Fcドメインは、Fc領域の全部又は一部を含み、すなわち、N又はC末端配列は、機能に影響を与えない限り、本明細書に記載の野生型又はバリアントFcドメインから除去され得る。
簡潔に述べると、IgG機能は、一般に、IgのFc領域と、Fcγ受容体(FcγR)又は別の結合分子との間の相互作用を介して、時にはエフェクター細胞上で達成される。これは、抗体がそれらの可変(V)領域を通して結合される標的細胞を殺傷するようにエフェクター細胞を誘発することができる。また、可溶性抗原に対する抗体は、免疫複合体の取り込み(オプソニン化)又はエフェクター細胞の誘発及びサイトカインの放出をもたらす、FcγRを標的とする免疫複合体を形成し得る。
本明細書で使用される場合、「Fcガンマ受容体」、「FcγR」、又は「FcガンマR」とは、IgG抗体Fc領域を結合し、かつFcγR遺伝子によってコードされるタンパク質ファミリーの任意のメンバーを意味する。
ヒトでは、FcγRの3つのクラスが特徴付けられているが、複数の受容体形態の発生によって状況は更に複雑になっている。3つのクラスは次の通りである:
(i)アイソフォームFcγRIa、FcγRIb、及びFcγRIcを含むFcγRI(CD64)は、高い親和性でモノマーIgGを結合し、マクロファージ、単球、並びに場合によっては好中球及び好酸球上で発現される;
(ii)FcγRII(CD32)は、複合体化IgGを中~低親和性で結合し、広く発現される。これらの受容体は、2つの重要なタイプ、FcγRIIa及びFcγRIIbに分類することができる。受容体の「a」形態は、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)上に見られ、殺傷プロセスを活性化させることができるようであり、2つの代替対立遺伝子として生じる。「b」形態は、阻害プロセスに役割を果たすようであり、B細胞、マクロファージ、並びに肥満細胞及び好酸球上に見られる。B細胞上では、b形態は、更なる免疫グロブリン産生、及び、例えば、IgEクラスへのアイソタイプ切り替えを抑制するように機能するようである。マクロファージ上では、b形態は、FcγRIIaを介して媒介されるような食作用を阻害するように作用する。好酸球及び肥満細胞上では、b形態は、IgEがその別個の受容体に結合することにより、これらの細胞の活性化を抑制するのに役立ち得る。
(iii)FcγRIII(CD16)は、中~低親和性でIgGを結合し、2つのタイプとして存在する。FcγRIIIaは、NK細胞、マクロファージ、好酸球、並びにいくつかの単球及びT細胞上に見られ、ADCCを媒介する。FcγRIIIbは、好中球上で高度に発現される。両方のタイプは、異なる同種の形態を有する。
イヌFc受容体は、Bergeron et al L.M.Bergeron et al.;Veterinary Immunology and Immunopathology 157(2014)31-41に記載されている。イヌはRI、RIIb、RIIIを持っているが、Riiaは持っていない。
イヌFc受容体は、Bergeron et al L.M.Bergeron et al.;Veterinary Immunology and Immunopathology 157(2014)31-41に記載されている。イヌはRI、RIIb、RIIIを持っているが、Riiaは持っていない。
ネコFc受容体は、Kanai et al;Veterinary Immunology and Immunopathology 73(2000)53-62、Strietzel et al;Veterinary Immunology and Immunopathology 158(2014)214-223、及びLu et al;scientific Reports 7(2017)12713に記載されている。
FcγRへの結合だけでなく、IgG抗体は補体を活性化させることができ、これはまた、細胞溶解、オプソニン化、又はサイトカイン放出及び炎症をもたらすことができる。Fc領域はまた、IgGの新生児への輸送(いわゆる「FcRn」を介して)、増加した半減期(FcRn型受容体を介してもたらされるとも考えられる)、及び自己凝集などの特性を媒介する。Fc領域はまた、プロテインA及びプロテインGとの相互作用を担っている(この相互作用はFcRnの結合に類似しているように見える)。
本明細書で使用される「エフェクター機能」とは、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドとの相互作用から生じる生化学的事象を意味する。エフェクター機能には、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、及び補体依存性細胞傷害(CDC)が含まれるが、これらに限定されない。
抗原結合又は他の断片も、本発明の態様及び実施形態に従って企図される。抗原結合断片としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、単一ドメイン抗体(sdAb)、例えば、VH単一ドメイン抗体、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びビスscFv、並びにポリペプチドに特異的な抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが挙げられる。本発明による断片は、Fcドメイン若しくはその一部、又は定常領域を含み得る。したがって、本明細書に記載の改変Fcポリペプチドを含む定常領域も本発明の範囲内である。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小限の抗体断片である。この断片は、密接な非共有性会合における、1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から各々3つのループ)が発生する。しかしながら、単一可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性にあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。「単鎖Fv」は、「sFv」又は「scFv」とも略され、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。
「抗原結合部位」という用語は、抗原に特異的に結合する領域を含む抗体又は抗体断片の部分を指す。抗原結合部位は、1つ以上の抗体可変ドメインによって提供され得る。好ましくは、抗原結合部位は抗体又は抗体断片の関連するVH及びVL内に含まれる。
「キメラ抗体」は、1つの種に由来する抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含有する組換えタンパク質であり、一方、抗体分子の定常ドメインは、別の種、例えば、イヌ抗体の定常ドメインに由来する。例示的なキメラ抗体は、キメラヒト-イヌ抗体である。
「ヒト化抗体」は、1つの種に由来する抗体、例えば、げっ歯類抗体由来のCDRが、げっ歯類抗体の重鎖可変鎖及び軽鎖可変鎖からヒト重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメイン(例えば、フレームワーク領域配列)に移される組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。ある特定の実施形態では、親(げっ歯類)抗体からの限られた数のフレームワーク領域アミノ酸残基が、ヒト抗体フレームワーク領域配列内に置換され得る。
本明細書で使用される場合、「イヌ化抗体」又は「ネコ化抗体」という用語は、それぞれ、イヌ及び非イヌ(例えば、マウス)抗体の両方から、又はネコ及び非ネコ(例えば、マウス)抗体の両方からの配列を含有する組換え抗体の形態を指す。一般に、イヌ化抗体は、少なくとも1つ以上、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非イヌ(又は非ネコ)免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全て又は実質的に全て(及び典型的には、残りのフレームの全て又は実質的に全て)がイヌ(又はネコ)免疫グロブリン配列のものである。イヌ化又はネコ化抗体は、マウス又はヒト抗体からの3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRの両方を、イヌ若しくはネコフレーム又は改変されたイヌ若しくはネコフレームと一緒に含み得る。改変されたイヌ又はネコフレームは、例えば、その標的への結合を増加させるために、イヌ化又はネコ化抗体の有効性を更に最適化し得る1つ以上のアミノ酸変化を含む。
「生物種化」抗体(例えば、ヒト化、イヌ化、ネコ化、キメラ)は、それを標的種の抗体に類似させるように操作されたものである。一実施形態では、「生物種化」抗体は、標的種の抗体と約80%、85%又は90%よりも類似している。そのような生物種化抗体は、本発明の範囲内である。
好ましい実施形態では、抗体又は抗体断片は、完全イヌである。
生物種化抗体とは対照的に、本発明の完全イヌ抗体又はネコ抗体は、イヌ可変領域又はネコ可変領域を有し、別の種からの完全又は部分的なCDR又はFRを含まない。有利には、本明細書に記載の完全イヌ又はネコ抗体は、イヌ又はネコ免疫グロブリン配列を含むトランスジェニックマウスから得られている。これらの免疫化されたマウスにおいて産生された抗体は、インビボV(D)J組換え、インビボ接合多様化、重鎖及び軽鎖のインビボ対合、並びにインビボ超変異を含む天然親和性成熟を可能にするために、インビボB細胞シグナル伝達及び発達を通じて開発される。このようにして産生された完全イヌ又はネコ抗体は、開発可能性のための最適な特性を有する抗体を生成し、大規模な産生前の長時間のリード最適化を最小限に抑える。有利には、そのような完全イヌ又はネコ抗体は、患者動物に導入された場合に免疫原性の最も低い可能性のリスクを提示し、これにより、反復投薬レジメンが容易になる。有害なインビボ免疫原性は、例えば、抗薬物抗体(ADA)の産生を同定するためのアッセイ、又はインビボでの経時的な有効性の喪失によって評価され得る。エクスビボでのmAb操作は、開発ライアビリティ、免疫原性、及び低減された親和性(上記で概説したように)を導入するリスクを冒すことを考慮すると、したがって、本発明の完全イヌ又はネコ抗体は臨床的文脈において有効な治療薬である可能性が最も高い。
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、単一のB細胞又は形質細胞に由来する抗体を指す。モノクローナル抗体調製物中の全ての抗体分子は、少量で存在し得る、可能な天然に存在する翻訳後改変(例えば、異性化、アミド化、炭水化物添加)を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向している。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向した異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向している。
「エピトープ」又は「抗原決定基」という用語は、免疫グロブリン、抗体又は抗体断片が特異的に結合する抗原の表面上の部位を指す。一般に、抗原は、いくつか又は多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。この用語は、具体的には、直鎖状エピトープ及び立体配座エピトープを含む。タンパク質抗原内のエピトープは、タンパク質の三次的折り畳み(通常は、立体配座エピトープ)によって並置された隣接アミノ酸(通常は、直鎖状エピトープ)又は非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、常にではないが、変性溶媒への曝露時に保持されるのに対して、三次的折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理時に喪失される。エピトープは、典型的には、特有の空間立体配座内に、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ酸を含む。所与の抗体又は抗体断片によって結合されるエピトープを決定するための方法(すなわち、エピトープマッピング)は、当技術分野で周知であり、例えば、免疫ブロット及び免疫沈降アッセイを含み、重複又は隣接ペプチドは、所与の抗体又は抗体断片との反応性について試験される。抗体は、2つの抗体が同一又は立体的に重複するエピトープを認識するとき、参照抗体と「本質的に同じエピトープ」に結合する。2つのエピトープが同一又は立体的に重複するエピトープに結合するかどうかを決定するための最も広く使用され、かつ迅速な方法は、競合アッセイであり、これは標識された抗原又は標識された抗体のいずれかを使用して、異なるフォーマットで構成され得る。
「単離された」タンパク質又はポリペプチドという用語は、異なる抗原特異性を有する、他のタンパク質又はポリペプチドを実質的に含まないタンパク質又はポリペプチドを指す。更に、タンパク質又はポリペプチドは、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含み得ない。したがって、本明細書に記載のタンパク質、核酸、及びポリペプチドは、好ましくは単離されている。したがって、本明細書で使用される場合、「単離された」タンパク質又はポリペプチドは、その天然の細胞培養環境の構成要素から同定され、分離され、かつ/又は回収されたタンパク質又はポリペプチドを意味する。その天然の環境の混入構成要素は、タンパク質又はポリペプチドのための診断的又は治療的使用を妨げるであろう物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を挙げることができる。
本明細書における「アミノ酸」とは、特定の定義された位置に存在し得る20個の天然に存在するアミノ酸又は任意の非天然類似体のうちの1つを意味する。アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸の両方を包含する。ただし、ほとんどの場合、タンパク質が組換え的に産生される場合、天然に存在するアミノ酸のみが使用される。
本発明は、バリアントFc領域を含むタンパク質を提供する。本明細書における「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、及びペプチドを含む、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸を意味する。タンパク質は、天然に存在するアミノ酸及びペプチド結合、又は合成ペプチド模倣構造、例えば、ペプトイドなどの類似体から構成され得る。繰り返すが、タンパク質が組換え的に産生される場合、天然に存在するアミノ酸のみが使用される。
本明細書で「バリアント」又は「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸改変により野生型配列のそれとは異なるポリペプチド配列を意味する。本明細書で使用される場合、本明細書に記載のタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列における別のアミノ酸残基による「アミノ酸残基の置換」は、別のアミノ酸残基による「アミノ酸残基を置き換えること」と等価であり、元の(例えば、野生型/生殖系列)アミノ酸配列における特定の位置での特定のアミノ酸残基が異なるアミノ酸残基によって置き換えられている(又は置換されている)ことを示す。これは、当業者に利用可能な標準的な技術、例えば、組換えDNA技術を使用して行うことができる。アミノ酸は、野生型(wt)における自然界に見出されるような天然の(野生型/生殖系列)配列と比較して変化するが、天然の配列と比較して他の変化を含有するIgG分子において作製され得る。
アミノ酸改変は、一般に、置換、挿入、及び欠失を含み、多くの場合、前者が好ましい。本発明のバリアントはFcドメイン内のアミノ酸置換を含み、本明細書に記載されるように、タンパク質の機能が依然として存在する限り、それらは任意の数の更なる改変を含むことができる。しかしながら、一般に、最小数の改変で機能を変更することが目標である場合が多いため、Fc改変に加えて、1から2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の改変が一般的に利用される。いくつかの場合において、1~5個の改変が存在し、1~2個、1~3個及び1~4個の改変もまた、多くの実施形態では使用される。アミノ酸改変の数は、機能ドメイン内にあり得ることに留意されたい:例えば、野生型タンパク質又は操作タンパク質のFc領域に1~6個の改変、並びにFv領域に1~5個の改変を有することが望ましい場合もある。バリアントポリペプチド配列は、好ましくは、野生型配列又は親配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、又は最大98%若しくは99%の同一性を有する。配列のサイズに応じて、同一性パーセントはアミノ酸の数に依存することに留意すべきである。
本明細書における「タンパク質バリアント」又は「バリアントタンパク質」とは、少なくとも1つのアミノ酸改変により野生型タンパク質とは異なるタンパク質を意味する。親ポリペプチドは、天然に存在するか、又は野生型(WT)ポリペプチドであってもよく、又はWTポリペプチドの改変されたバージョンであってもよい。バリアントポリペプチドとは、ポリペプチド自体、ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ配列を指し得る。好ましくは、バリアントポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して少なくとも1つのアミノ酸改変、例えば、親と比較して約1~約10個のアミノ酸改変、好ましくは約1~約5個のアミノ酸改変を有する。本明細書のバリアントポリペプチド配列は、好ましくは、親ポリペプチド配列と少なくとも約80%の同一性、及び最も好ましくは少なくとも約90%の同一性、より好ましくは少なくとも約95%の同一性を有する。
本明細書で使用される場合、「親ポリペプチド」、「親タンパク質」、「前駆体ポリペプチド」、又は「前駆体タンパク質」とは、バリアントを生成するようにその後に改変される非改変ポリペプチドを意味する。当該親ポリペプチドは、天然に存在するポリペプチド、又は天然に存在するポリペプチドのバリアント若しくは操作されたバージョンであってもよい。親ポリペプチドとは、ポリペプチド自体、親ポリペプチドを含む組成物、又はそれをコードするアミノ酸配列を指し得る。
したがって、本明細書で使用される場合、「親Fcポリペプチド」とは、バリアントを生成するように改変されるFcポリペプチドを意味し、本明細書で使用される「親抗体」とは、バリアント抗体を生成するように改変される抗体を意味する。別途指定されない限り、親ポリペプチドは、例えば、定常領域アミノ酸配列の配列番号11に示されるような、野生型IgG-B Fcドメインを含む。
本明細書における「野生型」又は「WT」、「wt」又は「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界に見出されるアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を意味する。WTタンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリンIgGなどは、意図的に改変されていないアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有する。イヌ野生型IgGを図1に示す。IgG-Bのイヌ野生型定常領域を図2Bに示す。ネコ野生型IgGを図13Aに示す。IgG1のネコ野生型定常領域を図15Bに示す。
本明細書で「バリアント又は変異体Fc領域」とは、少なくとも1つのアミノ酸改変により野生型Fc配列のそれとは異なるFc配列を意味する。好適な置換は本明細書に記載されている。Fcバリアントは、Fc領域のみを包含し得るか、又はFcによって実質的にコードされる抗体、抗体断片、Fc融合物、単離されたFc、Fc断片、又は他のポリペプチドとの関連で存在し得る。Fcバリアントとは、Fcポリペプチド自体、Fcバリアントポリペプチドを含む組成物、又はアミノ酸配列を指し得る。野生型と比較した下部ヒンジ、プロリン領域及びSHED領域における改変を伴う本発明によるイヌバリアント配列を図2Aに示す。残基の番号付けは、イヌIgG-B野生型定常領域アミノ酸配列を示す配列番号11を参照している。ネコFcについて、番号付けは、IgG1(配列番号33)を参照している。
Fcバリアントは、野生型Fcポリペプチドと比較して1つ以上のアミノ酸改変を含み、アミノ酸改変(複数可)は、1つ以上の最適化された特性を付与する。アミノ酸改変は、ポリペプチド配列中のアミノ酸の置換、挿入、又は欠失であり得、複数の改変は、これらから独立して選択される。本明細書における「アミノ酸置換」又は「置換」とは、親ポリペプチド配列中の特定の位置のアミノ酸の別のアミノ酸との置換を意味する。例えば、置換E119Gとは、IgG-Bにおける119位のグルタミン酸がグリシンで置き換えられるバリアントポリペプチドを指す。番号付けは、配列番号11を参照している。本明細書で使用される場合、「アミノ酸挿入」又は「挿入」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸の付加を意味する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸欠失」又は「欠失」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。
本明細書に開示されるFcバリアントは、親と比較して複数のアミノ酸改変、例えば、親と比較して約1~50個のアミノ酸改変、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸改変、約1~約5個のアミノ酸改変などを有し得る。本明細書のバリアントFcバリアント配列は、親Fcバリアント配列と約80%の同一性、例えば、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性などを有する。本明細書に開示される改変には、以下に記載されるグリコフォーム改変及び他の翻訳後改変も含まれる。改変は、分子生物学を使用して遺伝的に行われ得るか、又は酵素的若しくは化学的に行われ得る。
bsAbを作製するための多くのプラットフォームの中で、制御されたFab-アーム交換(cFAE)は、天然Ab構造への最小限の変化及びbsAbが2つの親Abから形成され得る単純さに基づいて有用であることが証明されている(Labrijn et al,(2013)Efficient generation of stable bispecific IgG1 by controlled Fab-arm exchange.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,5145-5150)。制御されたFab-アーム交換は、最小限の変異セットを使用し、正しい重鎖-軽鎖相互作用を妨害することなく半Abの交換を実行することができるため、軽鎖対合の問題を回避する。したがって、cFAEはまた、本明細書に記載される変異に加えて、本発明で使用することもできる。
したがって、一態様では、本発明は、天然野生型配列と比較してFcドメインにおける1つ以上の改変を有する、単離されたFcバリアント、例えば、イヌ、ウマ又はネコバリアントであって、改変が、下部ヒンジ、プロリン領域及び/又はSHED領域におけるアミノ酸置換であり、配列番号11を参照して、下部ヒンジが残基119~125を含み、プロリン領域が残基211~217を含み、SHED領域が残基151~156を含む、バリアントに関する。
変異領域及びそれらの配列識別子を図2及び15に示す。
以下は、イヌIgG-B野生型定常領域アミノ酸配列を示す、配列番号11に示される野生型イヌIgG-B Fcを参照して、本発明の態様を提供する。
一態様では、本発明は、改変Fc領域を含む、単離されたイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/若しくは配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)配列番号11の153位におけるGへの改変、配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換、並びに/あるいは
c)配列番号11の211位におけるHへの改変、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換を含むか、又はそれからなる、単離されたイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
例えば、a)について、アミノ酸置換は、配列番号11の120位におけるS又はAへの、及び配列番号11の121位におけるAへのものである。
例えば、c)の場合、アミノ酸置換は、配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換であり、その結果、3個の置換が存在する。一実施形態では、更に、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換が存在する。c)の一実施形態では、アミノ酸置換は、配列番号11の213位におけるGへのものである。
一実施形態では、Fc領域は、2つの置換、すなわち、配列番号11の120位におけるAへの、及び配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換のみを有するFc領域ではなく、当該Fc領域は、イヌCD20を結合するイヌ抗体のFc領域である。一実施形態では、Fc領域は、CD20を結合するFc領域ではない。
一実施形態では、Fc領域は、2つの置換、すなわち、配列番号11の120位におけるAへの、及び配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換のみを有するFc領域ではない。
CD20という用語はBリンパ球抗原CD20を指す。抗体及びその抗原結合部分は、配列番号26(ヌクレオチド配列)及び配列番号27(アミノ酸配列)において定義される野生型イヌCD20に特異的に結合する。別途明記されない限り、本明細書で使用されるCD20という用語はイヌCD20を指す。Bリンパ球抗原CD20又はCD20は全てのB細胞の表面上で発現され、プロB期(CD45R+、CD117+)で始まり、成熟まで濃度が漸進的に上昇する。ヒト及びイヌではCD20はMS4A1遺伝子によってコードされる。
したがって、イヌIgG-B定常領域(配列番号11)内の野生型残基を参照して、以下の位置における以下のアミノ酸置換は本発明の範囲内である:
E119G、
M120S又はA、
L121A、
D153G、
P154R、
D156N、
N211H、
K212I、
A213G、
P215G、及び/又は
P217S。
したがって、(配列番号11を参照して)野生型IgG-B定常領域配列における119位のEは、Gなどで置換される。上に列挙されたこれらの置換の様々な組み合わせは、本発明の範囲内である。したがって、変異体は、上に列挙されたような1~11個の置換、例えば、1、2、3、4、5、又は6つの置換を有し得る。
したがって、一態様では、本発明は、改変Fc領域を含む、単離されたイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/若しくは配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含み、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、以下の改変:
c1)配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換と組み合わせた、配列番号11の211位におけるHへの改変、
c2)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、
c3)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換、又は
c4)c1)~c3)の組み合わせのうちの1つから選択される、単離されたイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、以下のa)に記載されるアミノ酸置換、並びに、任意選択的に、以下のb)及び/又は以下のc)に記載されるアミノ酸置換を含み、
a)アミノ酸置換が、配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択され、
b)アミノ酸置換が、配列番号11の153位におけるGへの改変、配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択され、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、配列番号11の211位におけるHへの改変、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換から選択される。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換を含み、Fc領域は、2つの置換、すなわち、配列番号11の120位におけるAへの、及び配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換のみを有するFc領域ではなく、当該Fc領域は、イヌCD20を結合するイヌ抗体のFc領域である。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、
a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、及び
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はFc領域は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、Fc領域は、上記に示される改変を含むが、任意の更なる改変、例えば、下部ヒンジ、shed領域、又はプロリンサンドイッチ内の他の位置における任意の他のアミノ酸置換若しくは置換を有しない。
一実施形態では、ポリペプチド又はFcドメインは、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれからなり、その配列は、野生型配列ではない。
したがって、本発明はまた、図2Aに示され、本明細書で提供される配列、例えば、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、及び20に示される改変を有するイヌIgG-B-defバリアント1、2、3、4、5、6、7、8、又は9として本明細書で定義されるFcバリアントに関する。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19、及び20、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれらからなり、その配列は、配列番号11に示される野生型配列ではない。一実施形態では、定義されるイヌFcバリアントは、イヌIgG-B-def変異体2、3又は7である。IgG-B-def変異体2、3又は7は、特に、図5に示されるADCC活性について、エフェクター機能を完全に不活性化させる。
一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれからなり、その配列は、配列番号1又は11に示される野生型配列ではない。
上記の実施形態は、改変されたイヌFcドメインに関する。本発明の範囲内には、ネコ及びウマの改変Fcドメインも含まれる。当業者は、イヌ、ネコ及びウマのFcドメインのアラインメントに基づいて、ネコ及びウマのFcドメインにおける改変用等価位置を決定することができるであろう。
したがって、本発明はまた、改変ネコFc領域に関する。これらは、下部ヒンジ及び/又はプロリンサンドイッチ領域に改変を有する。以下は、ネコIgG1野生型定常領域アミノ酸配列を示す、配列番号31に示される野生型ネコIgG1 Fcを参照して、本発明の態様を提供する。下部ヒンジ領域は、残基119~125にあり、プロリンサンドイッチは、残基211~217にあり、SHED領域は、残基151~156にある。
したがってネコIgG1定常領域(配列番号31)内の野生型残基を参照して、以下の位置における以下のアミノ酸置換は、本発明の範囲内である:
M120A、
M120I、
I121A、
I121P、
G123A、
P215G、
P217S、及び/又は
P217A。
有利には、P217Aの置換は、本明細書に示すように、下部ヒンジの他の置換と組み合わせることができる。
したがって、別の態様では、本発明は、改変Fc領域を含む、ネコgIG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域であって、当該Fc領域が、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)以下の改変:配列番号31の217位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域に関する。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換のいずれかを更に含むか、又は
b)配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のいずれかを更に含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換、及び任意選択的に、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、ポリペプチドは、野生型IgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する。
一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号、38、39、40若しくは41、又はそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、又はそれからなり、その配列は、例えば、配列番号31に示されるような野生型配列ではない。
一実施形態では、定義されるネコFcバリアントは、ネコIgG1-def変異体2又は3である。IgG-1def変異体2及び3は、エフェクター機能を完全に不活性化させる。
一実施形態では、Fc領域は、上記に示される改変を含むが、任意の更なる改変、例えば、下部ヒンジ、shed領域、又はプロリンサンドイッチ内の他の位置における任意の他のアミノ酸置換若しくは置換を有しない。
実施形態は、それぞれ改変Fcドメインを含む単離されたポリペプチド、例えば、イヌIgG-Bポリペプチド又はネコIgG1ポリペプチド、及び上記に記載される1つ以上の改変を含む単離されたFcドメインに関する。したがって、当業者は、本明細書に記載される改変されたFcドメインが、それぞれ任意の抗体、例えば、イヌ抗体又はネコ抗体において使用され得ることを理解するであろう。したがって、Fcドメインは、特異的な抗原結合を提供する可変ドメインに連結され得る。好適な例を、実施例の章に示す。
一実施形態では、ポリペプチド又はFcドメインは、1つ以上の追加の改変を有し得る。一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド又はFcドメインは、本明細書に特定されたもの以外、Fcドメイン内に任意の追加の改変、例えば、アミノ酸置換を有していない。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、野生型IgG-B Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する。一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、野生型IgG-1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する。
本明細書で使用される場合、低減は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上であり得る。
一実施形態では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)である。
本明細書で使用される場合、「ADCC」又は「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」は、FcvRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を意味する。ADCCは、FcYRIIIaへの結合と相関し、FcYRII Iaへの結合の増加はADCC活性の増加をもたらす。
本明細書で使用される場合、「ADCP」又は抗体依存性細胞媒介性細胞食作用は、FcvRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の食作用を引き起こす細胞媒介反応を意味する。
一実施形態では、ADCC活性の低減がある。一実施形態では、ADCC活性の消失がある。
一実施形態では、Fc変異体は、完全にCDC及びADCC欠損である。
有利には、図7、8、18及び19に示されるように、本明細書に記載のFcバリアントは、良好な生物物理学的特性を保持する。
Fcバリアントの活性を測定するための様々なアッセイを実施例に示す。
一実施形態では、エフェクター機能は、補体依存性細胞傷害(CDC)である。「CDC」という用語は、本明細書で使用される場合、補体依存性細胞傷害、すなわち、補体系によって媒介される標的細胞破壊の生化学的事象を指す。
図7及び18は、プロテインA結合を示す。イヌIgG-Bにおける改変は、プロテインA及びFcRn結合を変化させない。ネコIgG1における改変は、プロテインA及びFcRn結合を変化させない。
一実施形態では、野生型IgG-B Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、Fcガンマ受容体(FcγR)に対するより低い親和性を有する。親和性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、又はそれ以上低減され得る。
一実施形態では、FcγRは、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIからなる群から選択される。
一実施形態では、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域は、FcRn結合を保持するが、エフェクター機能を低減又は消失する。一実施形態では、ネコIgG1ポリペプチド若しくはネコ化IgG1ポリペプチド又はそのFc領域は、FcRn結合を保持するが、エフェクター機能を減少又は消失する。
ポリペプチドは、完全長抗体又は抗体断片の一部であり得る。一実施形態では、抗体は多重特異性抗体又はその断片である。多重特異性タンパク質、例えば、多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる標的に結合する、すなわち、少なくとも二重特異性である。したがって、一実施形態では、抗体は、二重特異性抗体又はその断片である。他の実施形態では、多重特異性抗体又はその断片は、3つ、4つ以上の標的に結合する。
2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むIgGフォーマットに基づく本発明の二重特異性抗体は、当該技術分野で既知の様々な方法によって産生され得る。例えば、二重特異性抗体は、2つの抗体分泌細胞株を融合させて新しい細胞株を作製することによって、又は組換えDNA技術を使用して単一の細胞内で2つの抗体を発現させることによって産生され得る。これらのアプローチは、各抗体からのそれぞれの重鎖が、同じ特異性を有する2つの同一の対合した重鎖を含有する単一特異性二量体(ホモ二量体とも呼ばれる)、及び異なる特異性を有する2つの異なる対合した重鎖を含有する二重特異性二量体(ヘテロ二量体とも呼ばれる)を形成し得るため複数の抗体種をもたらす。更に、各抗体からの軽鎖及び重鎖はランダムに対合して不適切で非機能的な組み合わせを形成する場合がある。この問題は、重鎖及び軽鎖の誤対合として知られており、二重特異性としての発現のための共通の軽鎖を共有する抗体を選択することによって解決することができる。軽鎖重鎖の誤対合問題に対処する方法は、単一の軽鎖を使用して二重特異性抗体を生成することを含む。これには、多様性を制限する単一の軽鎖を利用する重鎖操作又は新規の抗体ライブラリが必要である。加えて、共通の軽鎖を有する抗体が、単一の軽鎖を有するトランスジェニックマウスから同定されている。別のアプローチは、1つの重鎖のCH1ドメインを、その同族の軽鎖のCLドメインと交換することである(Crossmab技術)。scFv形式もカバーされている。
一実施形態では、特にがんの治療のために、タンパク質はCD3を標的としてもよく、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)のフォーマットで提供される。
一実施形態では、タンパク質は、多重パラトピック(multiparatopic)である、すなわち、同じ標的上の2つ以上のエピトープに結合する。
二重特異性抗体は2つ以下のエピトープに対する特異性を有する。二重特異性抗体は、第1のエピトープに対する結合特異性を有する第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列と、第2のエピトープに対する結合特異性を有する第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列とによって特徴付けられる。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、同じ抗原、例えば、同じタンパク質(又は多量体タンパク質のサブユニット)上にある。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは重複する。実施形態では、第1及び第2のエピトープは重複しない。一実施形態では、第1及び第2のエピトープは、異なる抗原、例えば、異なるタンパク質(又は多量体タンパク質の異なるサブユニット)上にある。別の実施形態では、二重特異性抗体は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列、並びに第2のエピトープに対して結合特異性を有する重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。更なる実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する抗体と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する抗体とを含む。一実施形態では、二重特異性抗体分子は、第1のエピトープに対して結合特異性を有する抗体又はその断片と、第2のエピトープに対して結合特異性を有する半分の抗体又はその断片とを含む。一実施形態では、二重特異性抗体又はその断片は、第1のエピトープに対する結合特異性を有するFabと、第2のエピトープに対する結合特異性を有するFabとを含む。
scFvフォーマットも本発明の範囲内である。
別の実施形態では、ポリペプチド、Fcポリペプチド若しくは抗体、又はその断片は、更なる構成部分を含む。
例えば、タンパク質はFc受容体融合タンパク質である。本明細書における「Fc融合タンパク質」又は「イムノアドヘシン」とは、一般に(任意選択的に、本明細書に記載のリンカー部分を介して)異なるタンパク質、例えば本明細書に記載の標的タンパク質への結合部分に連結したFc領域を含むタンパク質を意味する。
例えば、本明細書に記載のFcポリペプチドは、標的分子に特異的に結合することができる結合ドメインと組み合わされ得る。したがって、本発明の態様において、本発明は、本明細書に記載されるFc領域を含む融合タンパク質に関する。融合タンパク質において、1つ以上のポリペプチドが本発明のFc領域に作動可能に連結されている。例えば、FcドメインはFab結合ドメインに連結されていてもよい。結合ドメインは、例えば、共有結合又は他の結合(例えば、疎水性相互作用、イオン性相互作用、又は硫化物橋を介して連結される)において、2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る。
本明細書に記載の改変はまた、任意の他のFc改変と、例えば、改変エフェクター機能と組み合わせることができる。
一般に、本発明のFc領域に作動可能に連結された1つ以上のポリペプチドは、任意のタンパク質又は小分子、例えば、別の分子に対して特異性を有し、当該分子を結合することができる任意の分子に由来する結合ドメインであり得る。結合ドメインは、好ましくは別のポリペプチドであるが、任意の標的(例えば、炭水化物、脂質(リン脂質など)又は核酸)であり得る標的分子と相互作用する能力を有する。好ましくは、相互作用は特異的であろう。典型的には、標的は、細胞上に存在する抗原、又は可溶性リガンドを有する受容体である。これは、治療標的であるとして選択されてもよく、それによって、上記の特性を有する分子とそれを結合することが望ましい。標的は、標的細胞、例えば、溶解することが望ましい標的細胞、又はアポトーシスを誘導することが望ましい標的細胞上又は標的細胞内に存在し得る。したがって、タンパク質融合パートナーは、任意の抗体の可変領域、受容体の標的結合領域、接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、抗原、ケモカイン、又は任意の他のタンパク質若しくはタンパク質ドメインを含み得るが、これらに限定されない。低分子融合パートナーは、Fc融合を治療標的に誘導する任意の治療剤を含んでもよい。かかる標的は、疾患に関与する任意の分子、好ましくは細胞外受容体であり得る。
別の実施形態では、本発明の抗体は更なる構成部分を含む。例えば、構成部分は半減期延長部分であり、例えば、イヌ血清アルブミン若しくはイヌ化血清アルブミン又はそのバリアント、あるいはネコ血清アルブミン若しくはネコ化血清アルブミン又はそのバリアントである。抗体はまた、例えば、化学修飾、特にPEG化、又はリポソームへの組み込みによって半減期を増加させるように改変され得る。
半減期は、半減期延長を伴わない対応する抗体の半減期よりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍、例えば、少なくとも5倍、例えば、少なくとも10倍、又は20倍超延長されてもよい。例えば、延長された半減期は、半減期延長部分を伴わない対応する抗体と比較して、1時間超、好ましくは2時間超、より好ましくは6時間超、例えば12時間超、又は更に24時間、48時間若しくは72時間超であり得る。
別の実施形態では、この構成部分は、薬物、酵素、又は毒素などの治療要素である。一実施形態では、治療要素は、毒素、例えば、細胞傷害性放射性核種、化学毒素又はタンパク質毒素である。したがって、本発明は、免疫複合体、例えば、第2の分子、通常は毒素、放射性同位体又は標識にコンジュゲート(接合)された抗体も包含する。これらのコンジュゲートは、しばしば抗体-薬物コンジュゲート(ADC)として知られている場合、免疫療法において使用され、標的化された形態の化学療法としてモノクローナル抗体療法を開発することに使用される。
毒性ペイロードは、小分子(例えば、メイタンシノイド、アウリスタチン)、タンパク質毒素(例えば、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素)、標的細胞を殺傷するための細胞溶解性免疫調節タンパク質(例えば、Fasリガンド)、天然ペプチドの薬理学的半減期を延長するための生物学的に活性なペプチド(例えば、GLP-1)、標的微小環境の生化学を改変するための酵素(例えば、ウレアーゼ)、又は腫瘍細胞の殺傷又は撮像のための放射性核種(例えば、90Y、111In)から選択され得る。
別の実施形態では、抗体は、検出可能又は機能的標識で標識される。標識は、フルオロフォア、蛍光体、放射性標識、酵素、化学発光体、核磁気共鳴活性標識、又は光増感剤を含むが、これらに限定されない、シグナルを産生するか、又はシグナルを産生するように誘導することができる任意の分子であり得る。したがって、結合は、蛍光又は発光、放射能、酵素活性、又は光吸光度を検出することによって検出及び/又は測定され得る。
この構成部分は、例えば、化学リンカー又はペプチドリンカーを介して、当該技術分野で既知のリンカーを使用して、ポリペプチド、例えば、抗体に連結することができる。結合は共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例示的な共有結合は、ペプチド結合を介してである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリペプチドリンカー(L)である。好適なリンカーとしては、例えば、(Gly4Ser)nなどのGS残基を有するリンカーが挙げられ、nは1~20であり得る。他の連結/コンジュゲーション技術としては、例えば、毒性ペイロードへのシステインベースの部位特異的抗体コンジュゲーションのためのシステインコンジュゲーションが挙げられる。
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。核酸は単離された核酸であることが好ましい。
「単離された核酸分子」とは、ゲノム、mRNA、cDNA、若しくは合成起源のDNA若しくはRNA、又はそれらのある組み合わせであって、単離されたポリヌクレオチドが自然界に見出されるポリヌクレオチドの全て若しくは一部と会合していないか、又は単離されたポリヌクレオチドが自然界では連結されていないポリヌクレオチドに連結されているものを意味する。
更に、上記で定義される少なくとも1つの核酸を含む単離された核酸構築物が提供される。構築物は、プラスミド、ベクター、転写、又は発現カセットの形態であってもよい。したがって、本発明はまた、本発明の核酸を含むプラスミド、ベクター、転写又は発現カセットに関する。本発明で使用する発現ベクターは市販のベクターなどの出発ベクターから構築され得る。ベクターが構築され、重鎖、又は軽鎖及び重鎖配列をコードする核酸分子がベクターの適切な部位に挿入された後、完成したベクターは、増幅及び/又はポリペプチド発現のために好適な宿主細胞に挿入され得る。
「ベクター」という用語は、宿主細胞において目的の1つ以上の遺伝子又は配列を送達することができ、いくつかの態様では、発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、限定されないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に関連するDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、並びにプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
本発明はまた、上記の1つ以上の核酸分子プラスミド、ベクター、転写又は発現カセットを含む、単離された組換え宿主細胞に関する。発現ベクターの選択された宿主細胞への形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈殿、電気穿孔、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、又は他の既知の技術を含む既知の方法によって達成され得る。選択される方法は、部分的には、使用される宿主細胞のタイプの関数である。
宿主細胞は、真核性又は原核性、例えば、細菌、ウイルス、植物、真菌、哺乳動物、又は他の好適な宿主細胞であり得る。一実施形態では、細胞は大腸菌細胞である。別の実施形態では、細胞は酵母細胞である。別の実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、又は当業者に明らかであろう他の細胞である。発現用の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な不死化細胞株を含むが、これらに限定されず、当技術分野で周知の発現システムで使用される任意の細胞株を使用して、本発明の組換えポリペプチドを作製することができる。
一般に、宿主細胞は、所望の二重特異性抗体をコードするDNAを含む組換え発現ベクターで形質転換される。使用され得る宿主細胞の中には、原核生物、酵母又は高等真核細胞がある。原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、E.coli又は桿菌が含まれる。高等真核細胞には、昆虫細胞及び哺乳動物起源の樹立細胞株が含まれる。好適な哺乳動物宿主細胞株の例としては、COS-7細胞、L細胞、CI27細胞、3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はそれらの誘導体、及び血清遊離培地中で成長する関連細胞株、HeLa細胞、BHK細胞株、CVIIEBNA細胞株、293、293EBNA又はMSR293などのヒト胎児腎臓細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、一次組織のインビトロ培養に由来する細胞株、一次外植物、HL-60、U937、HaK又はJurkat細胞が挙げられる。任意選択的に、例えば、HepG2/3B、KB、NIH 3T3又はS49などの哺乳動物細胞株は、様々なシグナル伝達又はレポーターアッセイでポリペプチドを使用することが望ましい場合に、ポリペプチドの発現のために使用することができる。
他の好適な宿主細胞としては、バキュロウイルスなどの発現系を用いた昆虫細胞、ウイルス及び核酸ベクターによる発現系を用いた植物細胞、トランスジェニック植物及びトランスジェニック動物が挙げられる。
あるいは、真菌細胞株及び酵母などの低級真核生物、又はバクテリアなどの原核生物中でポリペプチドを産生することが可能である。好適な酵母としては、S.cerevisiae、S.pombe、Kluyveromyces株、Pichia pastoris、Candida、又は異種ポリペプチドを発現することができる任意の酵母株が挙げられる。好適な細菌株としては、E.coli、B.subtilis、S.typhimurium、又は異種ポリペプチドを発現することができる任意の細菌株が挙げられる。二重特異性抗体が酵母又は細菌中で作製される場合、機能的生成物を得るために、例えば、適切な部位のリン酸化又はグリコシル化によって、その中で産生される生成物を改変することが望ましい場合がある。そのような共有結合は、既知の化学的又は酵素的方法を使用して達成することができる。
宿主細胞は、適切な条件下で培養すると、二重特異性抗体を発現させるために使用することができ、二重特異性抗体は、その後、培養培地から収集することができる(宿主細胞が培地中に分泌する場合)か、又は宿主細胞から直接収集することができる(分泌されていない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましい又は必要なポリペプチド修飾(グリコシル化又はリン酸化など)、及び生物学的に活性な分子への折り畳みの容易さなどの様々な因子に依存する。
当業者は、インビトロ及びインビボ発現ライブラリを含む、本明細書に記載のポリペプチドを同定し、取得し、最適化するための異なる方法が存在することを知っているであろう。ディスプレイ(例えば、リボソーム及び/又はファージディスプレイ)及び/又は変異誘発(例えば、エラーが発生しやすい変異誘発)などの当技術分野で既知の最適化技術が使用され得る。
このような方法では、アミノ酸配列のセット、コレクション、又はライブラリは、例えば、スクリーニングを容易にするように、ファージ、ファージミド、リボソーム、又は好適な微生物(酵母など)上に表示され得る。アミノ酸配列(のセット、コレクション、又はライブラリ)を表示及びスクリーニングするための好適な方法、技術、及び宿主生物は、当業者には明白であろう(例えば、Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press;1st edition,Brian K.Kay,Jill Winter,John McCafferty,1996を参照されたい)。
ライブラリ、例えばファージライブラリは、抗体又は重鎖を発現する細胞又は組織を単離し、単離された細胞又は組織に由来するmRNAからの遺伝子をコードする配列をクローニングし、ライブラリを使用してコードされたタンパク質を表示することによって生成される。重鎖は、哺乳動物、細菌、酵母、又は他の発現系において発現され得る。
したがって、別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載される複数のポリペプチド、Fcドメイン又は抗体を含む、発現ライブラリに関する。ファージディスプレイライブラリスクリーニングは、単一のファージディスプレイライブラリに含まれ得る膨大な数の異なるポリペプチド(典型的には109を超える)に起因して、いくつかの他のスクリーニング方法よりも有利である。これにより、単一のスクリーニングステップにおける非常に多様なライブラリのスクリーニングが可能になる。一般に、ライブラリは、糸状バクテリオファージの表面上に関連する重鎖及び軽鎖可変ドメインを表示するためにクローニングされるV遺伝子(例えば、リンパ球集団から収穫されるか、又はインビトロで組み立てられる)のレパートリーを含む。ファージは抗原に結合することによって選択される。可溶性抗体は、ファージ感染細菌から発現され、抗体は、例えば、変異誘発によって改良され得る。抗体及び抗体ライブラリを作製、スクリーニング、及び進化させることによって抗体を産生する方法が確立される。
更なる態様において、本発明は、本明細書に記載のイヌバリアントFcドメインを作製するための方法であって、IgG-B Fcドメインにアミノ酸置換を導入することを含み、
当該アミノ酸置換が、
a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/若しくは配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択され、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、以下の改変:
c1)配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換と組み合わせた、配列番号11の211位におけるHへの改変、
c2)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、
c3)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換、又は
c4)c10~c30の組み合わせのうちの1つから選択される、前記方法に関する。
一態様では、アミノ酸置換は、以下のa)に記載されるものであり、任意選択的に、以下のb)及び/又は以下のc)に記載されるアミノ酸置換であり、
a)アミノ酸置換が、配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択され、
b)アミノ酸置換が、配列番号11の153位におけるGへの改変、配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択され、かつ/あるいは
c)アミノ酸置換が、配列番号11の211位におけるHへの改変、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換から選択される。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
b)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、及び
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換である。
一態様では、アミノ酸置換は、
a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、
b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換、並びに
c)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換である。
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載のネコバリアントFcドメインを作製するための方法であって、IgG1 Fcドメインにアミノ酸置換を導入することを含み、当該アミノ酸置換が、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、並びに/あるいは
b)以下の改変:配列番号31の217位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のうちの1つ以上から選択される、前記方法に関する。
一実施形態では、置換は、
a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択され、配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換のいずれかを更に含むか、又は
b)配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換から選択され、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のいずれかを更に含む。
一実施形態では、ネコIgG-1ポリペプチド若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域は、改変Fc領域を含み、当該Fc領域は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む。
一実施形態では、置換は、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換から選択される。
一実施形態では、置換は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換、及び任意選択的に、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換から選択される。
一実施形態では、置換は、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換から選択される。
親ポリペプチドは、野生型ポリペプチド、例えば、Fcドメイン若しくはFcドメインを含むポリペプチド、又は野生型配列と比較して改変を有するポリペプチドであり得る。
別の態様では、本発明のポリペプチド又はFcドメイン、例えば、本明細書に記載のFcドメインと、任意選択的に、薬学的に許容可能な担体と、を含むイヌ、イヌ化、ネコ、又はネコ化Fcドメイン又はポリペプチドを含む、薬学的組成物が提供される。本明細書に記載のポリペプチド又は薬学的組成物は、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣、眼、鼻腔内、肺、皮内、硝子体内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、脳内、経皮、経粘膜、吸入による、又は局所、特に耳、鼻、眼、又は皮膚に対して、又は吸入によるものを含むが、これらに限定されない、任意の便利な経路によって投与され得る。別の実施形態では、送達は、薬物をコードする核酸のものであり、例えば、本発明の分子をコードする核酸が送達される。
非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、直腸、膀胱内、皮内、局所、又は皮下投与を含む。好ましくは、組成物は非経口投与される。
薬学的に許容される担体又はビヒクルは、組成物が、例えば、錠剤又は粉末形態であるように、粒子状であり得る。「担体」という用語は、本発明の薬物抗体コンジュゲートとともに投与される希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような薬学的担体は、液体、例えば、水及び油であってもよく、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む。担体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用してもよい。一実施形態では、動物に投与される場合、本発明のポリペプチド又は組成物及び薬学的に許容される担体は、無菌である。水は、本発明の薬物抗体コンジュゲートが静脈内に投与される場合、好ましい担体である。生理食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール溶液もまた、液体担体として、特に注射用溶液に用いることができる。好適な薬学的担体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤も含まれる。所望な場合、本組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。
薬学的組成物は、液体の形態、例えば、溶液、シロップ、溶液、エマルション又は懸濁液であり得る。液体は、経口投与に、又は注射、注入(例えば、IV注入)、若しくは皮下による送達に有用であり得る。
経口投与を意図する場合、組成物は、固体又は液体の形態であり得、半固体、半液体、懸濁液及びゲル形態は、本明細書において固体又は液体のいずれかとして考慮される形態内に含まれる。
経口投与用の固体組成物として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、ピル、カプセル、チューインガム、ウエハーなどの形態で製剤化され得る。そのような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤を含有する。加えて、以下のうちの1つ以上が存在し得る:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、又はゼラチンなどの結合剤、デンプン、ラクトース、又はデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロース又はサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ風味などの風味剤、及び着色剤。組成物がカプセルの形態(例えば、ゼラチンカプセル)にある場合、それは、上記のタイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油などの液体担体を含有することができる。
経口投与を意図する場合、組成物は、甘味剤、保存剤、染料/着色剤、及び風味増強剤のうちの1つ以上を含み得る。注射による投与のための組成物において、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤、及び等張剤のうちの1つ以上も含まれ得る。
組成物は、1つ以上の投薬単位の形態をとっていてもよい。
特定の実施形態では、組成物を、治療を必要としている領域に局所的に、又は静脈内注射若しくは注入によって投与することが望ましい場合がある。
特定の疾患又は状態の治療に有効/活性である本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物の量は、疾患又は状態の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、最適な投薬範囲を特定するのに役立つように、インビトロ又はインビボアッセイを任意選択的に用いてもよい。組成物において用いられる正確な用量はまた、投与経路、及び疾患又は疾患の重篤度に依存し、医師の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。年齢、体重、性別、食生活、投与時間、排泄速度、宿主の状態、薬物の組み合わせ、反応感受性、及び疾患の重症度などの要因を考慮する必要がある。
典型的には、この量は、組成物の重量に対して、本発明のポリペプチド、Fcドメインの少なくとも約0.01%である。経口投与を意図する場合、この量は、組成物の約0.1重量%~約80重量%の範囲で変化させることができる。好ましい経口組成物は、組成物の重量に対して、約4%~約50%の本発明のポリペプチドを含み得る。
非経口投薬単位が、約0.01重量%~約2重量%の本発明のポリペプチド又はFcドメインを含有するように、組成物を調製することができる。
注射による投与のために、組成物は、およそ典型的には、動物の体重の約0.1mg/kg~約250mg/kg、好ましくは、動物の体重の0.1mg/kg~約20mg/kg、及びより好ましくは、動物の体重の約1mg/kg~約10mg/kgを含み得る。一実施形態では、組成物は、約1~30mg/kg、例えば、約5~25mg/kg、約10~20mg/kg、約1~5mg/kg、又は約3mg/kgの用量で投与される。投薬スケジュールは、例えば、週に1回から2、3、4週間に1回まで変化し得る。
本発明はまた、本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン、例えば、抗体若しくはその断片、又は薬学的組成物の療法的治療用途に関する。
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、疾患又は疾患を阻害又は緩和することを意味する。例えば、治療は、疾患若しくは疾患に関連する症状の発症の延期、及び/又は当該疾患とともに発症するであろう、又は予想されるそのような症状の重症度の低減を含み得る。これらの用語には、既存の症状の改善、追加の症状の予防、及びそのような症状の根底にある原因の改善又は予防が含まれる。したがって、これらの用語は、治療される哺乳動物、例えば、イヌ患者の少なくとも一部に有益な結果が付与されていることを示す。多くの医学的治療は、治療を受ける一部の患者に有効であるが、全ての患者に有効ではない。
「対象」又は「患者」という用語は、治療、観察、又は実験の対象である動物、好適にはコンパニオン動物、具体的にはイヌを指す。
本発明はまた、疾患の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物に関する。
別の態様では、本発明は、疾患の治療又は予防における、本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物の使用に関する。別の態様では、本開示は、本明細書に列挙される疾患の治療又は予防のための医薬品の製造における、本明細書に記載されるポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物の使用に関する。本発明は、対象における疾患を治療する方法であって、有効量の、本明細書に記載されるポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物を、当該対象に含む、前記方法に関する。
例えば、疾患は、炎症性疾患又は自己免疫疾患から選択される。
この疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、掻痒症、乾癬、強皮症、又は湿疹を含む炎症性皮膚疾患;炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)に関連する応答;虚血性再灌流;成人呼吸困難症候群;喘息;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、血管炎などの自己免疫疾患;白血球の血管外漏出を伴う疾患;中枢神経系(CNS)炎症性障害、敗血症又は外傷に続く多臓器損傷症候群、細菌性肺炎、抗原抗体複合体媒介性疾患;胸膜症、肺胞炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支炎、及び嚢胞性線維症を含む肺の炎症であり得る。
一実施形態では、抗体又は断片、結合分子、薬学的組成物は、1つ以上の治療剤とともに投与される。
例えば、当該1つ以上の治療剤は、ラパマイシン(シロリムス)、タクロリムス、シクロスポリン(例えば、Atopica(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン)、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、抗CD28抗体、抗IL12/IL-23抗体、抗CD20抗体、抗CD30抗体、CTLA4-Fc分子、CCR5受容体アンタゴニスト、抗CD40L抗体、抗VI_A4抗体、抗LFA1抗体、フルダラビン、抗CD52抗体、抗CD45抗体、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、抗補体C5抗体、抗a4b7インテグリン抗体、抗IL6抗体、抗IL6-R抗体、抗IL2R抗体、抗CD25抗体、抗TNFa/TNFa-Fc分子、HDAC阻害剤、JAK-1及びJAK-3阻害剤などのJAK阻害剤、抗IL-31抗体、SYK阻害剤、抗IL-4Ra抗体、抗IL-13抗体、抗TSLP抗体、抗PDE4阻害剤、ロキエトマブ(Cytopoint(登録商標))、並びにオクラシチニブ(Apoquel(登録商標))などから選択される。
本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物は、他の療法又は治療化合物又は療法と同時に、又は異なる時間に、例えば、同時に、別個に、又は逐次的に投与され得る。
本発明はまた、エフェクター機能を抑制するためのインビトロ又はインビボ方法であって、細胞又は組織を、上記のポリペプチド又はそのFc領域と接触させることを含む、前記方法を提供する。エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)又は補体依存性細胞傷害(CDC)であり得る。
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物を含む、疾患の治療若しくは予防、診断、予後、又は疾患のモニタリングのためのキットを提供する。そのようなキットは、他の構成要素、包装、及び/又は説明書を含み得る。
キットは、本明細書に記載の標識されたポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物と、標識を検出するための1つ以上の化合物と、を含んでもよい。
別の態様において、本発明は、凍結乾燥形態で包装されているか、又は水性媒体中に包装されている本発明の本明細書に記載のポリペプチド、Fcドメイン又は薬学的組成物を提供する。
別の態様では、本明細書に記載のポリペプチド又はFcドメインは、診断試験及びアッセイなどの非治療目的で使用される。
本発明の更なる態様及び実施形態は、以下の実験的例示を含む本開示を考慮すると、当業者には明白であろう。
別途本明細書で定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。前述の開示は、本発明の範囲内に包含される主題の一般的な説明を提供し、本発明を作製及び使用する方法、並びにその最良のモードを含むが、一方、以下の実施例は、当業者が本発明を実施し、その完全な書面による説明を更に提供できるようにするために提供される。しかしながら、当業者であれば、これらの実施例の詳細が本発明を限定するものとして読まれるべきではないことを理解するであろう。本発明の範囲は、本開示に添付された特許請求の範囲及びその等価物から理解されるべきである。本発明の種々の更なる態様及び実施形態は、本開示を考慮して、当業者には明らかであろう。
本明細書において言及される全ての文書は、遺伝子受託番号に対する任意の参照及び特許刊行物に対する参照を含む参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、他方を伴うか若しくは伴わない2つの特定の特徴又は構成成分の各々の具体的な開示としてみなされるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々が本明細書で個別に記載されるのと同様に、(i)A、(ii)B、及び(iii)A及びBの各々の特定の開示とみなされるべきである。文脈が別途指示しない限り、上記の特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、記載される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
本発明は、非限定的な実施例によって更に説明される。
方法:
1.イヌ抗体構築物
野生型イヌIgGA、B(配列番号1)、C及びDのアミノ酸配列を図1Aに示す。図2は、エフェクター機能欠損イヌIgGBバリアントを生成するためのアミノ酸置換を示す表である。
抗体産生のために、抗ヒトCD20抗体、リツキシマブ(US5,736,137を参照されたい)又はオファツムマブ(Drugbank https://go.drugbank.com/drugs/DB06650で入手可能な配列)の可変領域に融合された選択されたイヌ及びIgG定常領域を含むキメラ抗体をコードするDNA構築物を生成した。野生型イヌ免疫グロブリンをSDS-PAGE(4~12% Bis-Tris NuPAGEゲル、MES SDS泳動用緩衝液、及びSeeBlue Plus 2標準物を使用(全てThermoFisher製))によって評価し、図1Bに示す。
イヌIgG-Bバリアント(Def1~9、配列番号2~10、及び12~20)は、部位特異的変異誘発によって生成された。具体的には、ヒトオファツムマブ又はリツキシマブ可変領域及びイヌIgG-Bバリアントを、Q5高忠実度DNAポリメラーゼを使用してPCR増幅し、NEBuilder HIFI DNA Assembly(New England Biolabs)を使用して、哺乳動物類発現ベクターPetML5に組み立てる。発現ベクターでは、重鎖及び抗生物質耐性遺伝子発現単位にDNAトランスポゾンpiggyBac末端反転反復が隣接しており、piggyBacトランスポザーゼの存在下で宿主細胞への安定した組み込みを媒介している。重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを、PiggyBacトランスポザーゼとともにCHO細胞などの好適な哺乳動物細胞株に共トランスフェクションして、安定した発現を得る。抗体産生のために、3×106個の選択されたCHO細胞を3mlの培養培地中に播種し、200rpmで振盪しながら32℃、5%のCO2でインキュベーションする。4% HyClone Cell Boost 7aサプリメント+0.4% HyClone Cell Boost 7bサプリメント+1%グルコースを1、4、7、及び10日目に培地に添加する。培養上清を12日目に収集し、プロテインAチップを使用する表面プラズモン共鳴(Biacore 8K、Cytiva Life Sciences)を使用してIgG濃度を決定する。
2.ネコ抗体構築物
IGHG1及びIGHG2の可溶性アイソフォームを包含するゲノム領域を、PacBio配列決定によって社内で検証した。Texas A&M Universityで入手可能な市販のBACライブラリから調達した細菌人工染色体(BAC)クローンFCAB-160A15は、ネコ免疫グロブリン重鎖遺伝子を包含することが見出された。BACのPacBio配列決定により、既知のアイソフォームIGHG1及びIGHG2の遺伝子構造及び配列が明らかになった。興味深いことに、可溶性アイソフォームがエクソンCH1、H、CH2、及びCH3-CHSで構成される、ここでIGHG3として指定される、以前は知られていなかった第3のIgGファミリーメンバーも、ネコのIGHG1及びIGHG2遺伝子構造に対する相同性検索によって同定された。IGHG3遺伝子構造は、IGHG1とIGHG2との間に位置し、IGHG3エクソンCH1は、IGHG1エクソンM2のおよそ13kb下流に位置し、IGHG3エクソンCH3-CHSは、IGHG2エクソンCH1のおよそ17kb上流に位置する。PacBio配列決定に加えて、可溶性IGHG1、IGHG2、及びIGHG3アイソフォームのエクソンを包含するゲノム領域は、FCAB-160A15を鋳型として使用するサンガー配列決定によって確認されている。IGHG1 PCR及び配列決定に使用されるオリゴ(1895bp):順方向:TGCAGCCGCAGAAACACAAG(配列番号42)、逆方向:ATGGTGACCCCTGAGCCTCG(配列番号43)。IGHG2 PCR及び配列決定に使用されるオリゴ(1895bp):順方向:TGCAGCCGCAGAAACACGAG(配列番号44)、逆方向:ATGGTGACCCCTGAGCCTCA(配列番号45)。IGHG3 PCR及び配列決定に使用されるオリゴ(1869bp):順方向:CAGCCGCAGAAACATGAGGTC(配列番号46)、逆方向:ATGGTGACCCCTGAGCCTTG(配列番号47)。
可溶性IGHG3の推定される遺伝子構造は、図12に見出すことができる。ネコIGHG1、IGHG2、及びIGHG3の可溶性アイソフォームを包含するゲノム配列は、配列番号28、29、及び30で提供され、コード領域は太字で下線が引かれている。野生型ネコIgG1、2及び3のアミノ酸配列(配列番号31~33)を図13Aに示す。野生型ネコ免疫グロブリンをSDS-Page(4~12% Bis-Tris NuPAGEゲル、MES SDS泳動用緩衝液、及びSeeBlue Plus 2標準物を使用(全てInvitrogen製))によって評価し、図13Bに示す。図15Aは、エフェクター機能欠損ネコIgG1バリアントを生成するためのアミノ酸置換を示す表である。
ネコIgG WT及びIgG1変異体バリアント(Def1~4、配列ID34~37及び38~41)は、ヒトオファツムマブ可変領域を使用して、イヌバリアントと同じ方法で生成した。
3.補体依存性細胞傷害(CDC)活性
CLBL1(University of Veterinary Medicine Vienna)又はCLC(Umeki S.et al J.Vet.Med.Sci.,75:467-474(2013)PubMed=23196801;DOI=10.1292/jvms.12-0448)などのイヌリンパ球腫瘍細胞株を標的細胞として使用し得る。これらの細胞に、ヒトCD20タンパク質(配列ID25)をコードする発現構築物を安定的にトランスフェクトするか、又はヌクレオフェクトして、hCD20発現細胞を生成する。発現構築物は、抗体発現について上述したのと同じ方法を使用して生成した。
トランスフェクトされた細胞をピューロマイシン耐性について選択し、hCD20(上位5%)細胞を、抗ヒトCD20抗体(クローン:2H7、BioLegend)を使用してhCD20発現について染色することによってFACSソートした。
CDC活性を評価するために、トランスフェクトされていない(野生型)標的リンパ球又は同等のhCD20発現細胞を細胞殺傷アッセイで使用し、96ウェルプレートのウェル当たり5000個の標的細胞を、上述の抗ヒトCD20イヌ又はネコFcキメラ抗体と、イヌ補体保存血清(BioIVT)とともに、1:12の最終希釈で、37℃、5%CO2で2時間インキュベートした。アッセイは、イヌ補体保存血清が補体の唯一の供給源となるように、熱不活性化血清を使用して作製したCLBL-1細胞用培地(RPMI+1% L-グルタミン+20%ウシ胎仔血清を使用して設定した。
次いで、アッセイプロトコルに従って、CellTitre-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を使用して生細胞を定量した。このアッセイは、細胞生存率の指標として生細胞のATP含有量を使用する。CLARIOstar(BMG Labtech)上で発光を測定した。データをMARSソフトウェア(BMG Labtech)を使用して分析し、残存する生細胞の数を使用して、Microsoft Excelを使用して抗体の存在下での殺傷パーセンテージを計算した。バックグラウンドシグナルを、1% tritonで処理した細胞の試料(生存細胞はなかった)から得て、各試験試料から得たシグナルから差し引いた。同一に処理されたが、抗体が省略された細胞の試料から、最大シグナル(0%殺傷)を得た。グラフを、Microsoft Excel又はGraphPad Prismでプロットした。
図3は、CLBL1細胞及びWT CLBL1細胞並びにイヌIgG-B WTを発現するか、又はDef1、2、3、5、6、7、8、9の変異を含むhCD20を使用して実行される例示的なCDCアッセイの結果を示す。抗体を、10μg/ml~0.01 10μg/mlの範囲の1:3連続希釈で使用した。試験した全てのDef変異体(Def1、2、3、5、6、7、8、9)は、補体依存性細胞傷害性によって、イヌIgGB WTがhCD20 CLBL1細胞を死滅させる能力を完全に消失させた(図3)。試験した全てのバリアントはCDC活性の完全な抑制を示し、これは、FcとのC1q相互作用が、Fc、下部ヒンジ、SHED領域及びプロリンサンドイッチの3つの領域全てからの配列文脈の厳格な要件を有することを示唆している。
4.抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性
MDCK II細胞(ATCC)などのイヌ細胞株に、上記のように、ヒトCD20タンパク質をコードする構築物及び蛍光タンパク質(すなわち、GFP)を発現する構築物を安定的にトランスフェクト又はヌクレオフェクトした。野生型MDCK II細胞を対照として使用した。イヌ末梢血単核細胞(PBMC、Envigo)をエフェクター細胞の供給源として使用した。PBMCを、Ficoll-Paque plus(Cytiva、GE17-1440-02)密度勾配遠心分離を使用して、ヘパリンナトリウム抗凝固剤を用いて、新たに採取した全血から単離した。手短に言えば、10mlの血液をリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)で1:1に希釈し、15mlのFicoll-paque plusの上に慎重に層化し、800rcfで20’の間、ゆっくりと加速しながら遠心分離し、最後に切断しなかった。最上層及び相間ディスクをPBSで希釈し、1300rpmで10’の間遠心分離して、PBMCをペレットに収集し、PBSで2回洗浄して、Ficollの残留物を全て除去した。2回目の遠心分離後、PBMCを、50ng/mlの組換えイヌIL-2(R&D systems)を補充した培地(PBMC培地=RPMI+10%熱不活性化ウシ胎仔血清+1%ペニシリン-ストレプトマイシン+1%非必須アミノ酸+1% L-グルタミン+1%ピルビン酸ナトリウム+1%HEPES)中に再懸濁し、37℃、5% CO2で24時間インキュベーションした後、ADCCアッセイで使用した。
まず、WTイヌIgG-Bとして製剤化された、2つの周知の抗ヒトCD20抗体、オファツムマブ及びリツキシマブのADCC活性を比較した(図4)。我々のデータは、ヒトFc上で製剤化されたオファツムマブ及びリツキシマブについて生成された公開されたADCCデータに匹敵する。オファツムマブ:Bleeker WK,et al.Br J Haematol 2008;140:303-312。リツキシマブ:https://clean-cells.com/activities/bioassay-and-rd/cytotoxicity-assays/
アッセイ設定と標的細胞間で多少の相違が予想され、許容される。次に、ADCC活性を評価した。イヌADCC活性を評価するために、10,000個(図5、アッセイ設定1)又は5,000個の細胞(図6、アッセイ設定2)の野生型又はhCD20を発現するMDCK II細胞を、MDCK II培地(DMEM+1% L-グルタミン+10%ウシ胎仔血清)とPBMC培地との1:1の混合物中で、37℃、5% CO2で24時間、図5及び6に示すように、50:1(アッセイ設定1)又は100:1(アッセイ設定2)のエフェクター:標的比及び抗体滴定でPBMCと共培養した。
ネコADCC活性を評価するために、10,000個(図14、アッセイ設定3)の野生型又はhCD20を発現するMDCK II細胞を、MDCK II培地(DMEM+1% L-グルタミン+10%ウシ胎仔血清)とPBMC培地との1:1の混合物中で、37℃、5% CO2で24時間、図14に示すように、25:1(アッセイ設定3)のエフェクター:標的比及び抗体滴定でPBMCと共培養した。
ウェル当たりの生細胞の数に比例するGFPシグナルを、24時間のインキュベーションの終了時にウェルに残存する生細胞の数の尺度として使用した。GFPシグナルをCLARIOstar(BMG Labtech)上で測定した。データをMARS(BMG Labtech)を使用して分析し、Microsoft Excelを使用して抗体の存在下での殺傷のパーセンテージを計算した。バックグラウンドシグナルを、1% tritonで処理した細胞の試料(生存細胞はなかった)から得て、各試験試料から得たシグナルから差し引いた。同一に処理されたが、抗体が省略された細胞の試料から、最大シグナル(0%殺傷)を得た。グラフを、Microsoft Excel又はGraphPad Prismでプロットした。
イヌDef変異体2、3、及び7は、最大10μg/mlでIgG-B ADCC活性を完全に抑制する。このアッセイでは、他の変異体の部分的なエフェクター機能を観察した。結果を、図5a)及びb)に示す。図5b)は、図5a)に示されるデータの組み合わせである。左パネルはヒトCD20 MDCK細胞を使用した変異体について得られた結果を示し、右パネルは野生型MDCK細胞を使用した結果を示す。
図5は、野生型IgG-Bと比較した個々のイヌバリアントのADCC活性の抑制の程度を示すだけでなく、変異体間を比較することによって、個々の領域及び変異に関する配列及び機能相関に関する知識を更に導き出すことができる。
Def1対Def2:Def2はDef1と比較して追加の「SHED」領域変異を持っている。ADCCアッセイでは、Def1は部分的に不活性であるが、Def2はADCC活性が完全に欠損している。これは、下部ヒンジにおけるM120S及びプロリンサンドイッチ領域におけるN210H+K212I+A213Gトリプル変異が、ADCC活性を不活性化させるために重要であるが、D153G+P154R二重変異が、ADCC活性の完全な不活性化に必要であることを示唆する。
Def2対Def3:Def3は、Def2と比較してP217Sの追加の変異を持っている。Def2とDef3はいずれも、ADCC活性の完全な欠損を示している。これは、Def2変異の組み合わせがADCC機能を不活性化させるのに十分であるが、この組み合わせではP217Sの効果を利用できなかったことを示唆している。
Def5対Def6及びDef7:Def5は、ヒト同等の「LALA」変異、イヌIgG-Bの場合にはM120L+L121Aを有する。Def6及びDef7は、それぞれ、プロリンサンドイッチ領域、P217S及びP215Gに追加の単一変異を有する。Def5及びDef6はいずれも、ADCC活性に対して同様の範囲で部分的に機能し、追加のP217S変異がADCC活性抑制に寄与していないことを示唆している。対照的に、Def7は、Def5の部分的な効果と比較してADCC活性を完全に抑制し、P215GがADCC抑制において役割を果たすことを示唆している。
Def6対Def7:同じM120L+L121A下部ヒンジ変異を共有しているにもかかわらず、プロリンサンドイッチ領域内の異なる変異は、これら2つの変異体の異なる機能的結果をもたらす。先に検討したように、P215GはADCC活性の抑制において重要であるが、P217Sは影響を及ぼさない。
WTネコIgG ADCC活性の事前の知識が報告されていないため、全てのIgGアイソフォームをADCC活性について評価した。図14に示すように、ネコIgG1はエフェクター機能に習熟していることが示されたが、IgG2及びIgG3の両方がエフェクター機能欠損であり、最大3μg/mlでほとんどADCC活性が観察されなかった。
全てのネコDefバリアントはエフェクター機能の低下をもたらし、Def3及びDef2は、WT IgG2及びIgG3の両方で観察されるレベルまでIgG1 ADCC活性を大きく低下させた。結果を図16に示す。イヌと同様に、図16で生成された結果に基づいて個々の領域及び変異に関する配列及び機能の相関関係に関する知識を更に導き出すことができる。
Def1対Def2:Def1及びDef2は、ヒト同等の「LALA」変異、ネコIgG1の場合にはM120A+L121Aを共有する。これらは、それぞれ、プロリンサンドイッチ領域、P217S及びP215Gにおける追加の単一の変異によって異なる。したがって、これらは、それぞれ、イヌDef6及びDef7変異体のものと同等である。イヌ系と同様に、追加のP217S変異は、ADCC活性抑制への寄与が最小限であったが、P215GはADCC活性の60%の低下をもたらし、P215GがADCC抑制において役割を果たすことを示唆している。
Def3対Def4:Def3及びDef4は同様に、下部ヒンジ領域内に、ネコIgG1の場合にはM120位及びL121位にアミノ酸変異を有する。「LALA」変異を利用するのではなく、ネコIgG1を、天然エフェクター機能欠損のネコIgG2及びIgG3(図15A)、M120I及びL121Pで観察されるものに戻した。Def3は、WT IgG2に類似したこの下部ヒンジ領域内にG123Aの追加の変異を有するが、Def4は、WT IgG1及びIgG3の両方で観察されたものと同様にG123を保持する。Def4は、WT IgG2及びIgG3の両方で観察されたような、追加のプロリンサンドイッチ変異P217Aを有する。ADCCアッセイでは、Def4は部分的に不活性(WTと比較して32%低下)である一方で、Def3はADCC活性が欠損しているため、WT IgG2及び3で観察されたものと同等である(図14、図16)。これは、下部ヒンジ内のG123Aの追加の変異がADCC活性の不活性化に必要であり、P217の改変のADCC活性抑制への寄与が再び最小限であったことを示唆している。
まとめると、これらの観察により、個々の変異及び領域寄与は、ADCC機能抑制の程度という観点で、配列のみから予測できないことが実証された。完全に機能不全のイヌ変異体、すなわち、完全にCDC及びADCCが欠損しているのは、Def2、3、7である。ADCC機能は、エフェクター機能欠損のより感度の高い尺度であることが示されたので、これだけをネコ変異体とともに利用した。完全に機能不全のネコ変異体、すなわちADCCが欠損しているのは、Def2及びDef3である。
5.安定性と熱ストレス
PBS中の5mg/mLのイヌIgG-B重量及びDef2、Def3及びDef7の6×50uLのアリコートを調製し、4℃(1分子当たり2アリコート)又は40℃(1分子当たり4アリコート)のいずれかで、密封PCRチューブ中で1、4又は14日間保管した。
HPLC-SECクロマトグラフィー(カラム:BioResolve SEC mAb 200A、2.5umカラム WATERS)を、イソクラティックな0.575mL/分の流速を有する移動相としてPBSを使用するWATERS製のACQUITY H-class Bioを使用して実行した。各時点(0日目、1日目、4日目、及び14日目)で、上記の全ての分子を5’、20000gで遠心分離して(標準テーブルトップ遠心分離機を使用して)あらゆる沈殿物を除去し、次いで、上記のプロトコルを使用して、10uLの各試料をH-SECに注入した。各分子/時点についてモノマー種及び面積(抗体濃度を示す)の割合を決定し、参照ラン(0日目)と比較した。結果は、図7Aに要約し、イヌIgGB Def2、3、及び7の熱安定性がWT IgGBの熱安定性に匹敵することを示している。
ネコ用IgG1 WT(図13B)及びDef1、Def2、Def3、及びDef4バリアント(図17A)を、4~12%のBis-Tris NuPAGEゲル、MES SDS泳動用緩衝液、及びSeeBlue Plus 2標準物を使用して、SDS-Pageにより全てThermoFisher製のものを非還元条件下で評価した。明確な差異は観察されなかった。HPLC-SECクロマトグラフィーは、IgG1 WT及びDef変異体について上述の方法を使用しても実行された。図17Bは、全てのIgG1 WT及び変異体が、無傷のモノマー種の高い割合(96%を超える)を示したことを示す。
6.プロテインA結合親和性検証
PBS中の精製イヌ抗体(図2を参照して、上述のオファツムマブイヌIgG-B wt並びに欠損変異体「IgG-B wt」及び「Def-2.」、「Def3」、及び「Def7」)を、遠心濃縮器(Sartorious-VS02H22)を使用して5mg/mLに濃縮した。タンパク質濃度を、標準IgGパラメータを使用して、NanoDrop(商標)One(Thermo Scientific(商標))を用いて、280nmでのUV吸光を使用して評価した。
IgGのプロテインAへの結合親和性を、Biacore 8K(Cytiva)を使用して評価した。手短に言えば、Sensor Chip Protein A(Cytiva)をBiacore 8Kにドッキングし、室温で30分の間平衡化し、次いで、泳動用緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.005%のTween20)をSPRチップ表面に適用した。
IgG-B WT、Def2、Def3、及びDef7を1uMから4nMに希釈する抗体希釈液(1:3希釈で6濃度)を泳動用緩衝液中で調製し、単一サイクル動態法(Biacore Assay Handbook、Cytiva)を使用して動態を評価した。 動態及び/又は親和性定量化は、標準分析方法に従ってBiacore Insightを使用して実行されている。
結果は、プロテインAの結合がイヌIgG-B Def2、3、及び7において維持されることを示す(図7B上パネル)。
抗体(図15を参照して、上述のオファツムマブネコIgG1 WT並びに欠損変異体「IgG1 WT」及び「Def1.」、「Def2」、「Def3」及び「Def4」)のプロテインAへの結合親和性を同様にBiacore 8K(Cytiva)を使用して評価した。イヌIgGについては上述した方法を使用して。
抗体希釈液を、IgG1 WT」並びに「Def1」、「Def2」、「Def3」及び「Def4」を、500nM~31.25nM(1:2希釈で5濃度)の泳動用緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA及び0.005%のTween20)中で希釈することによって調製し、単一サイクル動態法(Biacore Assay Handbook、Cytiva)を使用して動態を評価した。動態及び/又は親和性定量化は、標準分析方法に従ってBiacore Insightを使用して実行されている。
結果は、プロテインAの結合がネコIgG1 Def1、2、3及び4で維持されていることを示している(図18A)。
7.FcRn結合親和性検証
PBS中の精製イヌ抗体(図2を参照して、上述のオファツムマブイヌIgG-B wt並びに欠損変異体-「IgG-B wt」及び「Def2」、「Def3」及び「Def7」)を、遠心濃縮器(Sartorious-VS02H22)を使用して5mg/mLに濃縮した。タンパク質濃度を、標準IgGパラメータを使用して、NanoDrop(商標)One(Thermo Scientific(商標))を用いて280nmでのUV吸光を使用して評価した。
Biacore 8K(Cytiva)を使用して、イヌIgGのFc新生児型受容体への結合親和性を評価した。手短に言えば、CM5 Sensor Chip(Cytiva)をBiacore 8Kにドッキングし、室温で30分の間平衡化し、次いで、泳動用緩衝液(10mMのHEPES、pH6、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.005%のTween20)をSPRチップ表面に適用した。
イヌFcRn-B2M組換えタンパク質(Immunitrack、ITF12)を4nM(ストックから1:2000希釈)でpH4.5の10mMの酢酸緩衝液に希釈し、標準的なアミンカップリング反応を使用して固定化した。
IgG-B WT、Def2、Def3、及びDef7を3uMから37nMに希釈する抗体希釈液(1:3希釈で5濃度)を泳動用緩衝液中で調製し、多サイクル動態法(120秒の会合-300秒の解離)を使用して動態を評価した。動態及び/又は親和性定量化は、標準分析方法に従ってBiacore Insightを使用して実行されている。
IgG-B Def2、3及び7のFcRnへの親和性は、IgG-B WTの親和性に匹敵した(図7B下パネル)。
ネコ抗体(図15を参照して、上述のオファツムマブネコIgG1 WT並びに欠損変異体「IgG1 WT」及び「Def1.」、「Def2」、「Def3」及び「Def4」)のFc新生児型受容体への結合親和性を同様にBiacore 8K(Cytiva)を使用して評価した。手短に言えば、CAP Series S Sensor Chip(Cytiva)をBiacore 8Kにドッキングし、室温で一晩の間平衡化し、次いで、泳動用緩衝液(1×PBS及び0.05%のTween20)をSPRチップ表面に適用した。
ネコFcRn-B2M組換えタンパク質(Acro Biosystems)を、連続緩衝液中で0.5ug/mLに希釈し、Biotin CAPtureキット標準プロトコルを使用して固定化した。
IgG1 WT、Def1、Def2、Def3、及びDef4を25nMから0.781nMに希釈する抗体希釈液(1:2希釈で6濃度)を泳動用緩衝液中で調製し、多サイクル動態法(60秒の会合-120秒の解離)を使用して動態を評価した。動態及び/又は親和性定量化は、標準分析方法に従ってBiacore Insightを使用して実行されている。
ネコIgG1 Def1、2、3及び4のFcRnに対する親和性は、IgG1 WTの親和性に匹敵した(図18B)。
8.FcγR1a(CD64)結合親和性の決定
PBS中の精製イヌ抗体(図2を参照して、上述のオファツムマブイヌIgG-B WT及び欠損変異体-「IgG-B wt」及び「Def1~「Def8」)を0.5mg/mLに正規化し、タンパク質濃度を、標準IgGパラメータを使用して、NanoDrop(商標)One(Thermo Scientific(商標))を用いて280nmの紫外線吸光度を使用して評価した。
Fcガンマ1受容体(CD64)へのイヌIgGの結合親和性をBiacore 8K(Cytiva)を使用して評価した。
手短に言えば、Protein A Sensor Chip(Cytiva)をBiacore 8Kにドッキングし、室温で30分の間平衡化し、次いで、泳動用緩衝液(10mMのHEPES、pH7.4 150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.005%のTween20)をSPRチップ表面に適用した。
オファツムマブイヌIgG-B WT又はDef変異体を、6nMの濃度で泳動緩衝液に希釈した。これらは、捕捉ステップとして10uL/分で90秒の会合を使用して固定化され、続いて泳動用緩衝液を注入して、結合していない生成物を除去した。
ヒトCD64/FCGR1Aタンパク質(Stratech製-カタログ番号:10256-H08H-SIB)を、9.375nMまで1:2の更なる希釈で、150nMの泳動用緩衝液中で希釈した。捕捉ステップ法(60秒間の会合-450秒間の解離)、続いて再生ステップ(0.1Mグリシン、pH2.2、接触時間60秒、FR 30uL/分)を用いて、多サイクル動態を使用して動態を評価した。動態定量化は、標準的な分析方法に従ってBiacore Insightを使用して実行した。
Def変異体のCDC活性の低下の確認として、IgG-B Def1、2、3、5、6、7、及び8のFcγR1aに対する親和性は、WT IgGBの親和性と比較して低下した(図8)。
ネコ抗体(図15を参照して、上述のオファツムマブネコIgG WT並びに欠損変異体-「IgG1 WT」、「IgG2 WT」、「IgG3 WT」及び「Def1」~「Def4」)のFcガンマ1受容体(CD64)への結合親和性を同様にBiacore 8K(Cytiva)を使用して、イヌに記載されている方法に従って評価した。Def変異体の低下したエフェクター機能活性の確認として、IgG1 Def1、2、3及び4のFcγR1aに対する親和性は、WT IgG1の親和性と比較して低下した(図18C)。
合わせて考慮すると、FcγR1a相互作用はエフェクター機能と相関する、すなわち、機能的欠損は、より低いFcγR1a親和性を有する傾向がある。しかしながら、FcγR1a相互作用は、図8及び図18Cに示すイヌ及びネコの両方の症例における完全なADCCヌル変異体バリアントを予測することができない。
8.変異体バリアントの抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)活性検証
フローサイトメトリーベースのADCPアッセイは、ヒトモノクローナル抗体のADCP機能を試験するために記載される同等のプロトコルに基づいて開発され得る。FcγRIIaを発現するイヌ及びネコ食細胞を同定し、エフェクター細胞として使用する。これらは、ヒト単球由来マクロファージ(Jin and Kruth, J Vis Exp(112);2016 54244)、又はそれぞれDH82(ATCC)若しくはFcwf-4(ATCC)のようなイヌ又はネコマクロファージ細胞株のために樹立されたプロトコルを適合させることによって、PBMC由来単球から分化された一次イヌ又はネコマクロファージであり得る。好適な標的は、例えば、hCD20の目的の抗原を発現するCLBL-1、MDCK II又はCRFKなどの細胞株、又は抗原でコーティングされたビーズ/粒子(すなわち、ウイルス様粒子)であり得る。エフェクター及び標的を、フローサイトメーター上で測定することができる異なる蛍光(例えば、GFP、RFP)の好適な組み合わせでそれらを標識することによって区別する。
エフェクター:標的比、培養期間、エフェクター細胞の事前活性化等のアッセイ条件を最適化する。エフェクター及び標的細胞は、最適化されたアッセイ条件下で抗体の滴定の存在下で共培養する。抗体又は適切なアイソタイプコントロール抗体の不在を陰性対照として使用する。エフェクター細胞の蛍光は、好適なフローサイトメーターを使用して測定し、データは、FlowJoソフトウェアを使用して解析する。ADCPのパーセンテージ、すなわち食作用は、標的細胞に関連する蛍光が陽性になったエフェクター細胞(生細胞、単一細胞にゲーティング)のパーセンテージとして決定される。
9.イヌ変異体バリアントのFcRn結合検証
イヌIgG-BがマウスFcRnに結合することができるという事実を考慮すると、変異体バリアントのインビボ半減期検証は、免疫不全マウス(すなわち、RAG1KOマウス)において実行することができる。イヌIgG-B野生型及びDef変異体抗体をそのようなマウスに(腹腔内又は静脈内に)注射し、注射された抗体の血清力価を経時的に測定することができる。異なる時点(すなわち、注射の7日前、10分後、24時間後、72時間後、7日後、14日後、21日後、及び28日後)で、伏在静脈から少量の血液(20~50ul)を収集する。血清は、血液を遠心分離することによって細胞成分から分離する(5’の場合は7000rcf)。マウス血清中のイヌIgGは、抗イヌIgG ELISA(すなわち、Abcam ab193768)を使用することによって定量化することができる。これにより、薬物動態プロファイル(pK)の決定が可能になる。
図9に示す実施例では、Rag1 KOマウスに、Ofa-cIgGB-WT、Ofa-cIgGB-Def2、Ofa-cIgGB-Def3、又はOfa-cIgGB-Def7のいずれか(1mg/Kg、抗体当たり5匹のマウス)を静脈内注射した。抗体注入から30分、1日、3日、1週間、2週間、3週間、及び4週間後に採取した全血から血清を作製した。検出のバックグラウンドレベルを決定するために、抗体注射の1週間前に血液も採取した。イヌIgG血清力価は、抗イヌIgG ELISAキット(Biorbyt)を使用して決定した。CLARIOstarプレートリーダー(BMG)を使用して、650nm補正で450nmにてELISAプレートを読み取った。キットに存在する標準曲線を使用し、希釈係数を掛け合わせて、MARSソフトウェア(BMG)を使用して血清中の血清濃度を計算した。GraphPadを使用してデータを解析した。
10.Tonset及び半径の測定
PBS中の精製イヌ抗体(図2を参照して、上述のオファツムマブ イヌIgG-B wt及び欠損変異体-「IgG-B wt」及び「Def1~「Def8」)を5mg/mLに正規化し、標準IgGパラメータを使用して、タンパク質濃度をNanoDrop(商標)One(Thermo Scientific(商標))を用いて280nmの紫外線吸光度を使用して評価した。
動的光散乱実験並びに温度誘導凝集のモニタリングを使用してこれらの分子のサイズを推定し、欠損変異体によって誘導される任意のタンパク質折り畳み不安定化を強調するためにDynaPro(登録商標)(WYATT)プレートリーダーIIIを使用した。
端的には、10uLの各抗体を96ウェルプレートに添加し、室温で平衡化したプレートリーダーに配置した。各DLS測定は、10×10秒の取得で構成された。同じパラメータを、℃=+1℃/分のΔTでの温度ランプ実験に使用した。測定値は、DYNAMICSソフトウェアによって評価した。値を分析し、GraphPadを使用してプロットした。
UNcle安定性プラットフォーム(Unchained Labs、Norton,MA)を用いて、ネコIgG1 WT及びDef変異体1、2、3、及び4の一般的な安定性を評価した。示差走査蛍光定量法(DSF)及び動的光散乱法(DLS)を使用して、25℃から95℃への2℃/分の温度上昇後のタンパク質サイズ及び構造分布の変化を監視した。各試料の合計9μLを、DLS及び3回の固有蛍光試験のために試料ウェルに充填した。測定は、UNcle分析プラットフォーム(Unchained Labs、Norton,MA)を使用して評価した。
ネコ抗体(図15を参照して、上述のオファツムマブネコIgG1 WT及び欠損変異体「IgG1 WT」及び「Def1」、「Def2」、「Def3」及び「Def4」)は、Tonset及び直径測定の両方において最小限の変化を示した(図19A及びB)。
11.考察
巨視的に、異なる種からのIgGは構造について大部分が保存されているが、異なる種からの配列前後関係の違いがIgGの特性に影響を与えるという証拠が増えている。ヒトとイヌ又はネコIgGの間の構造保存に基づいて、C1q及びFcR受容体と相互作用し、エフェクター機能を媒介するIgGの主な相互作用パートナーである下部ヒンジ、プロリンサンドイッチ、及びSHED領域の周りの位置をマッピングすることができた。エフェクター機能調節のためにヒトにおいて異なる変異の組み合わせが特定されているが、変異の性質、位置及び組み合わせは、完全なエフェクター機能欠損を達成するために重要であり、種依存性である。したがって、一次配列に基づく予測のみでエフェクター機能に影響を及ぼす位置の特定につながることができるが、完全なエフェクター機能欠損バリアントを生じる変異の組み合わせを予測することは十分ではない。更に、FcのFcγR1a相互作用親和性は、完全なエフェクター機能欠損バリアントを予測するのに十分ではなく、CDC及びADCC活性のインビトロでの(可能であればインビボでの)実験が、エフェクター機能欠損を決定する唯一の信頼できる方法であることを強調している。
我々の設計戦略は、ヒトドメインからの知識と種内の天然IgGアイソフォームの特性に基づいている。全ての変異バリアントがエフェクター機能にある程度の影響を有するという事実は、種とアイソフォームとの間の保存が設計を導くことができ、機能に対する配列の影響をある程度予測することができることを明確に示唆している。しかしながら、例えば全ての設計のうちのイヌの場合では、この結果が予測可能ではなく、厳格な機能評価を使用した検証を必要とすることを実証する完全なエフェクター機能欠損であるのはDef2、3、7のみである。同様に、ネコの場合、ヒト及びイヌ系の両方においてエフェクター機能欠損IgGを生成するために使用される設計戦略を利用すると、試験された4つの変異体のうちの1つのみが完全に機能欠損となる。ネコの場合、このことは、配列保存のみからの予測を使用するのではなく、機能検証の重要性を更に強調する。
機能の観点に加えて、変異が抗体配列に導入されるとき、その生物物理学的特性並びにプロテインA及び新生児型受容体(FcRn)への結合能などの他の特性を評価する必要がある。これらの特性は、導入された変異によって変化し得、変異が、改変領域以外の領域に影響を及ぼし得る抗体構造への確認的変化を引き起こす可能性があるため、しばしば予測不可能である。この目的のために、エフェクター機能(CDC及びADCC)を完全に消失したイヌIgG-B変異バリアント、特にDef2、3、7を、それらの生物物理学的特性(図7)並びにプロテインA及びFcRn結合能(図8)の観点から広範囲に特徴付けた。ネコ、変異体バリアントについて、同様に、それらの生物物理学的特性(図16)並びにプロテインA、FcガンマR1及びFcRn結合能(図17)の観点から、変異体バリアントを特徴付けた。データは、変異バリアントが、研究及び治療の文脈で考慮すべき重要なパラメータであるこれらの特性を変化させないことを実証した。これらの特性の結果に基づいて、発見した変異体バリアントは本発明のものであり、既存のイヌ、ネコ、又はヒトについての文献に基づいて予測可能ではない。

Claims (49)

  1. 改変Fc領域を含む、イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域であって、前記Fc領域が、
    a)配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/若しくは配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択されるアミノ酸置換、並びに/又は
    b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含み、かつ/あるいは
    c)アミノ酸置換が、以下の改変:
    c1)配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換と組み合わせた、配列番号11の211位におけるHへの改変、
    c2)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、
    c3)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換、又は
    c4)c1~c3の組み合わせのうちの1つから選択され、
    前記Fc領域が、2つの置換、すなわち、配列番号11の120位におけるAへの、及び配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換のみを有するFc領域ではなく、前記Fc領域が、イヌCD20を結合するイヌ抗体のFc領域である、前記イヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  2. 前記Fc領域が、以下のa)に記載されるアミノ酸置換、並びに、任意選択的に、以下のb)及び/又は以下のc)に記載されるアミノ酸置換を含み、
    a)前記アミノ酸置換が、配列番号11の119位におけるGへの改変、配列番号11の120位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の121位におけるAへのアミノ酸置換から選択され、
    b)前記アミノ酸置換が、配列番号11の153位におけるGへの改変、配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換から選択され、かつ/あるいは
    c)前記アミノ酸置換が、配列番号11の211位におけるHへの改変、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換から選択される、請求項1に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  3. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
    b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
    c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  4. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
    b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
    c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  5. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、
    b)配列番号11の153位におけるGへのアミノ酸置換及び配列番号11の154位におけるRへのアミノ酸置換、並びに
    c)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換、及び配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  6. 前記Fc領域が、配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  7. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
    b)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  8. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、並びに
    b)配列番号11の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  9. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の119位におけるGへのアミノ酸置換、
    b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  10. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるAへの、及び121位におけるAへのアミノ酸置換、
    b)配列番号11の156位におけるNへのアミノ酸置換、並びに
    c)配列番号11の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  11. 前記Fc領域が、
    a)配列番号11の120位におけるSへのアミノ酸置換、並びに
    b)配列番号11の211位におけるHへのアミノ酸置換、配列番号11の212位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号11の213位におけるGへのアミノ酸置換を含む、請求項1又は2に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  12. 前記ポリペプチドが、配列番号12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20、又はそれに対して少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  13. 前記ポリペプチドが、野生型IgG-B Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する、先行請求項に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  14. 前記エフェクター機能が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である、請求項13に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  15. 前記エフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)である、請求項13に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  16. 前記ポリペプチドが、野生型IgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、Fcガンマ受容体(FcγR)に対するより低い親和性を有する、先行請求項に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  17. 前記ポリペプチド又はFc領域が、FcRn結合を保持する、先行請求項に記載のイヌIgG-Bポリペプチド若しくはイヌ化IgG-Bポリペプチド又はそのFc領域。
  18. 請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド又はそのFc領域を含む、薬学的組成物。
  19. エフェクター機能を抑制するためのインビトロ、エクスビボ、又はインビボ方法であって、細胞又は組織を、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド又はそのFc領域と接触させることを含む、前記方法。
  20. 前記エフェクター機能が抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である、請求項19に記載の方法。
  21. 前記エフェクター機能が補体依存性細胞傷害(CDC)である、請求項19に記載の方法。
  22. 請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド又はそのFc領域をコードする、核酸。
  23. 請求項22に記載の核酸又はそのFc領域を含む、ベクター。
  24. 請求項22に記載の核酸又は請求項23に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  25. 請求項1~17のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくはそのFc領域、又は請求項18に記載の薬学的組成物を含むキット。
  26. 改変Fc領域を含む、ネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域であって、前記Fc領域が、
    a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、及び配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、並びに/あるいは
    b)以下の改変:配列番号31の217位におけるS若しくはAへのアミノ酸置換、配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換、及び/又は配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のうちの1つ以上を含む、ネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  27. 改変Fc領域を含み、前記Fc領域が、
    a)配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換のいずれかを更に含むか、又は
    b)配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換を含み、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換、若しくは配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換のいずれかを更に含む、請求項26に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  28. 前記Fc領域が、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるSへのアミノ酸置換を含む、改変Fc領域を含む、請求項26又は27に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  29. 前記Fc領域が、配列番号31の120位におけるAへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるAへのアミノ酸置換、及び配列番号31の215位におけるGへのアミノ酸置換を含む、請求項26又は27に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  30. 前記Fc領域が、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の123位におけるAへのアミノ酸置換、及び任意選択的に、配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む、請求項26又は27に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  31. 前記Fc領域が、配列番号31の120位におけるIへのアミノ酸置換、配列番号31の121位におけるPへのアミノ酸置換、及び配列番号31の217位におけるAへのアミノ酸置換を含む、請求項26又は27に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  32. 前記ポリペプチドが、野生型IgG-1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、低減されたFc媒介性エフェクター機能を有する、請求項26~31のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  33. 前記エフェクター機能が抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である、請求項26~31のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  34. 前記エフェクター機能が補体依存性細胞傷害(CDC)又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)である、請求項33に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  35. 前記ポリペプチドが、野生型IgG1 Fcドメインを含む同じポリペプチドと比較した場合、Fcガンマ受容体(FcγR)に対するより低い親和性を有する、請求項26~34のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  36. 前記ポリペプチド又はFc領域がFcRn結合を保持する、請求項26~35のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化IgG-1ポリペプチド又はそのFc領域。
  37. 請求項26~36のいずれか一項に記載のポリペプチド又はそのFc領域を含む、薬学的組成物。
  38. エフェクター機能を抑制するためのインビトロ、エクスビボ、又はインビボ方法であって、細胞又は組織を、請求項26~36のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくはそのFc領域、又は請求項37に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、前記方法。
  39. 前記エフェクター機能が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である、請求項38に記載の方法。
  40. 前記エフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)である、請求項39に記載の方法。
  41. 請求項26~36のいずれか一項に記載のポリペプチド又はそのFc領域をコードする核酸。
  42. 請求項41に記載の核酸を含むベクター。
  43. 請求項41に記載の核酸又は請求項42に記載のベクターを含む、宿主細胞。
  44. 請求項26~36のいずれか一項に記載のポリペプチド若しくはそのFc領域、又は請求項37に記載の薬学的組成物を含む、キット。
  45. 疾患、例えば、炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療における使用のための、請求項26~36のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域、あるいは請求項37に記載の薬学的組成物。
  46. 対象における疾患を治療する方法であって、有効量の請求項26~36のいずれか一項に記載のネコ若しくはネコ化ポリペプチド又はそのFc領域、あるいは請求項37に記載の薬学的組成物を含み、前記疾患が炎症性疾患又は自己免疫疾患であり得る、前記方法。
  47. 配列番号33を含む、単離されたIgG-3ネコポリペプチド又はそのFc領域。
  48. 請求項47に記載のポリペプチドをコードする、単離されたIgG-3ネコポリヌクレオチド。
  49. 請求項47に記載のポリペプチド又はそのFc領域を含む、単離された組換え抗体。
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