JP2024526979A - 高強度複合改質アルミニウム合金部品及びその製造方法 - Google Patents

高強度複合改質アルミニウム合金部品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は高強度複合改質アルミニウム合金部品及びその製造方法を提供する。製造方法は、アルミニウム合金溶湯を提供するステップS1と、改質剤を提供するステップS2と、不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム合金溶湯に、前記改質剤を加えて溶錬し、改質アルミニウム合金溶湯を得るステップS3と、前記改質アルミニウム合金溶湯を用いて鋳造し、前記鋳造アルミニウム合金ブランクを得るステップS4と、前記改質アルミニウム合金ブランクを熱処理するステップS5であって、前記熱処理は、前記アルミニウム合金ブランクを530~550℃に加熱して、100~300min保温する固溶化処理と、固溶化処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを温度が60~70℃である水浴に入れて、2~4min水焼き入れする水焼き入れ処理と、水焼き入れ処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを150~165℃で120~280min保温し、この後、110~130℃に降温して30~120min保温し、この後、室温まで自然に冷却し、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品を得る時効処理と、を含むステップS5と、を含む。【選択図】図2

Description

本発明は合金材料及び製造技術分野に関し、特に、高強度複合改質アルミニウム合金部品及びその製造方法に関する。
アルミニウム合金は、工業的に最も広く適用されている非鉄金属構造材料であり、航空、宇宙飛行、自動車、機械製造、船舶及び化学工業において多く適用されている。鋳造アルミニウム合金は、鋳造流動性・気密性に優れ、収縮率が小さく、熱割れの傾向が小さい等の特徴を有し、自動車ハブの軽量化に好適な材料となる。
しかしながら、人々のアルミニウム合金に対する要求もますます高くなっており、本来の軽量な特徴を保持するだけでなく、特に自動車部品や工業的生産にも一定の強度を持つ必要がある。鋳造アルミニウム合金の大寸法の部品にとっては、高強度で中靭性、力学的特性の問題を解決可能であることを必要とする。
このために、アルミニウムストロンチウム合金のような変質剤を用いて改質するとともに、微細化剤を結合して微細化する工程が提案されている。しかしながら、従来の改質では、理想的な強度と可塑性を得ることができなかった。その上で、鋳造アルミニウム合金を熱処理する研究が展開されている。しかしながら、アルミニウム合金部品の成分の違いによって、熱処理の工程も異なり、現在の熱処理には高い温度が必要であり、消費エネルギーが大きく、時間がかかり、処理コストが増加し、かつ直接に高い温度で処理するため、各物質の状態の相互変換や溶出の均一性に不利であり、合金の機械的特性の不均一をもたらす。
このために、アルミニウム合金部品の機械的強度をさらに高めることができる製造工程を提供する必要がある。
これに鑑みて、本発明は、アルミニウム合金の機械的強度をより向上させることができる高強度複合改質アルミニウム合金部品及びその製造方法を提供する。
上記の技術課題を解決するために、本発明は以下の技術手段を用いる。
本発明の第1の実施例に係る高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法は、
アルミニウム合金溶湯を提供するステップS1と、
改質剤を提供するステップS2であって、
前記改質剤は希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、
又は、前記改質剤は複合希土類アルミニウム合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、前記複合希土類アルミニウム合金にはストロンチウム、チタン又はチタンボロン、及び希土類金属が含有され、
前記希土類アルミニウム合金、前記複合希土類アルミニウム合金中の希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムのうちのいずれか1種又は複数種であるステップS2と、
不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム合金溶湯に、前記改質剤を加えて溶錬し、改質アルミニウム合金溶湯を得るステップS3と、
前記改質アルミニウム合金溶湯を用いて鋳造し、前記改質アルミニウム合金ブランクを得るステップS4と、
前記改質アルミニウム合金ブランクを熱処理するステップS5であって、前記熱処理は、
前記改質アルミニウム合金ブランクを530~550℃に加熱して、100~300minに保温する固溶化処理と、
固溶化処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを温度が60~70℃である水浴に入れて、2~4min水焼き入れする水焼き入れ処理と、
水焼き入れ処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを150~165℃で120~280min保温し、この後、110~130℃に降温して30~120min保温し、この後、室温まで自然に冷却し、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品を得る時効処理と、を含むステップS5と、を含む。
さらには、前記ステップS1は、
アルミニウム合金マスターインゴットを提供することと、
前記アルミニウム合金マスターインゴットの表面のスケール層を除去して洗浄、乾燥を行うことと、
乾燥後のアルミニウム合金マスターインゴットを溶錬して、精錬、スラグ除去を行い、前記アルミニウム合金溶湯を得ることと、を含み、
前記アルミニウム合金マスターインゴットの成分は、亜共晶アルミニウム合金又は共晶アルミニウム合金である。
本発明の幾つかの実施例によれば、前記改質剤は希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、前記アルミニウムストロンチウム中間合金と前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金とが間隔をあけて加えられ、
前記希土類アルミニウム合金を一番先に加え、又は一番先に加えた一方と一緒に加え、或いは前記アルミニウムストロンチウム中間合金を加えるタイミングと前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えるタイミングとの間に加える。
さらには、前記ステップS3は、
前記アルミニウム合金溶湯に前記希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、第1の均一混合溶湯を得るステップS301と、
前記第1の均一混合溶湯に前記アルミニウムストロンチウム中間合金を加えて引き続き溶錬し、第2の均一混合溶湯を得るステップS302と、
前記第2の均一混合溶湯に前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて引き続き溶錬し、前記改質アルミニウム合金を得るステップS303と、を含む。
本発明の別の幾つかの実施例によれば、前記改質剤は複合希土類アルミニウム合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、前記ステップS3は、
前記アルミニウム合金溶湯に前記複合希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、第4の均一混合溶湯を得るステップS310と、
前記第4の均一混合溶湯に前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて引き続き溶錬し、前記改質アルミニウム合金を得るステップS320と、を含む。
さらには、前記複合希土類アルミニウム合金の製造は、
前記アルミニウム溶湯を提供するステップS211と、
アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金、及び希土類アルミニウム中間合金を提供するステップS212であって、前記希土類アルミニウム中間合金における希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムから選ばれる1種又は複数種であるステップS212と、
不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム溶湯に、順に前記希土類アルミニウム中間合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて溶錬し、前記複合希土類合金を得るステップS213と、を含む。
さらには、前記改質剤は前記改質アルミニウム合金溶湯総量の0.4~0.6wt%を占め、前記希土類金属:ストロンチウム:チタン又はチタンボロンの総量の質量比は1:(0.1~1.2):(0.1~1.2)である。
さらには、前記ステップS5では、前記固溶化処理中の昇温速度を1.5~3℃/minに制御し、保温時間を120~180minに制御する。
さらには、前記固溶化処理、前記水焼き入れ処理、及び前記時効処理は連続処理であり、前記水浴は循環水浴であり、前記水焼き入れ処理をした後、前記時効処理を行う前に、前記鋳造アルミニウム合金ブランクの温度を55℃以上に保持する。
さらには、前記時効処理段階では、150~165℃から110~130℃に降温する降温速度が2~5℃/minに制御される。
本発明の第2の実施例に係る高強度複合改質アルミニウム合金部品は、上記いずれか1つの実施例に記載の製造方法で製造して得られ、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品の引張強さは300MPa以上であり、降伏強度は230MPa以上であり、伸び率は6%以上である。
本発明の上記の技術手段は少なくとも次のような有益な効果の1つを有する。
本発明の実施例による高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法は、希土類金属を引き入れることでアルミニウム合金を改質して、特定の熱処理工程と結び付けて鋳造品を処理することにより、その機械的強度を高めて航空、宇宙飛行、自動車分野等のニーズを満たすと共に、その靭性を高め、脆化等の発生を減らすことができる。
図1は実施例で製造された高強度複合改質アルミニウム合金部品、即ちハブの写真である。 図2は図1に示されるハブのリブ部位の金属組織画像であり、その中、(a)は低倍率の画像、(b)は中倍率の画像、(c)は高倍率の画像である。
本発明実施例の目的、技術手段及び優れた点をよりはっきりさせるために、以下、本発明実施例を合わせて本発明の技術手段について明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。説明される本発明の実施例に基づき、当業者が取得したあらゆるその他の実施例のいずれも、本発明の保護範囲に属する。
別途定義されない限り、本発明に使用された技術用語又は科学用語は本発明の所属する分野内に通常の知識を有する者に理解される通常の意味でなければならない。本発明に使用された「第1」、「第2」及び類似の語句は如何なる順序、数量又は重要性を表すものではなく、ただ異なる構成部分を区分するためだけである。同様に、「1個」又は「1つ」等の類似語句も数量の制限を表すものではなく、少なくとも1つが存在することを表す。
以下、先ず、具体的な実施形態を参照しながら、本発明実施例による高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法について説明する。
本発明実施例に係る高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法は、次のようなステップを含む。
ステップS1、アルミニウム合金溶湯を提供する。
つまり、先ずアルミニウム合金溶湯を準備する。
なお、市販の高純度アルミニウム合金インゴットを直接加熱溶解してアルミニウム合金溶湯を製造してもよいし、アルミニウム合金インゴットをさらに精製してもよい。精製処理は、例えば、以下のステップ:
アルミニウム合金インゴットを提供するステップS11と、
前記アルミニウム合金インゴット表面のスケール層を除去するステップS12と、
前記スケール層を除去したアルミニウム合金インゴットに対して洗浄、乾燥を行うステップS13と、
乾燥後の前記アルミニウム合金インゴットを溶錬し、初期溶湯を得るステップS14と、
前記初期溶湯を精錬し、前記アルミニウム合金溶湯を得るステップS15と、を含むことができる。
つまり、アルミニウム合金インゴットについて、先ず、その表面のスケール層を除去し、この後、洗浄を行って表面スカムを除去し、乾燥後に溶錬し、溶湯を精錬する。具体的な精錬処理プロセスについては、後に詳述する。
上記の精製処理を経た後、その中に不要な不純物、例えば、Fe、酸化物等を除去することができる。希土類合金の変質及び微細化作用の更なる向上のためになる。
なお、その中のFe及びその酸化物について、例えば、マンガン又はアルミニウムマンガン合金を添加することで、表面スカムを形成することにより除去することができる。
改質された母体、即ちアルミニウム合金溶湯としては、例えば、アルミニウムマグネシウム合金、アルミニウムシリコン合金、アルミニウムシリコンマグネシウム合金等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ステップS2、改質剤を提供する。
その中、前記改質剤は希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、或いは前記改質剤は複合希土類アルミニウム合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせであり、
前記複合希土類アルミニウム合金にはストロンチウム、チタン又はチタンボロン、及び希土類金属を含有し、
前記希土類アルミニウム合金、前記複合希土類アルミニウム合金における希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムのうちのいずれか1種又は複数種である。
つまり、次のような2つの実施形態が存在する。
実施形態1について、
前記改質剤は希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせである。
その中、前記アルミニウムストロンチウム中間合金が変質剤であり、前記アルミニウムチタン中間合金又はアルミニウムチタンボロン中間合金が微細化剤である。つまり、通常の変質剤と微細化剤を用いても良い。
さらには、前記変質剤及び/又は前記微細化剤について、市販されているものを採用してもよいし、対応する金属ストロンチウム、チタン、チタン&ボロンをそれぞれ秤量し、これをアルミニウム溶湯に溶融して均一な合金を形成することにより製造してもよい。
また、通常の変質剤と微細化剤のほか、さらに希土類アルミニウム合金を引き入れることで、変質剤と微細化剤との間の「被毒」反応による機械的性能の限制を克服する。希土類アルミニウム合金中の希土類金属としては、変質剤中のストロンチウム及び微細化剤中のチタン、ボロンを考慮すると、電子構造がその間に介在するIIIB族元素を選んでも良い。その安定性、資源等を総合的に考慮すると、好ましくは、イットリウム、ランタン系金属におけるランタン、セリウムのうちの1種又は複数種を用いる。希土類アルミニウム合金は、例えば、市販されているAl-10Ce、Al-20Ce、Al-20La、Al-10La、Al-20Y、Al-10Yのうちの1種又は複数種を用いても良い。
また、希土類アルミニウム合金を自ら製造してもよく、例えば、以下の方法で製造してもよい。
不活性雰囲気下で、前記アルミニウム溶湯に、前記希土類金属又は前記希土類金属を含有する中間合金を加え、加熱しながら完全に溶解するまで攪拌する。
完全に溶解させた後、引き続き10~20分間保温して均質化する。
均質化した溶湯を精錬する。
精錬後、所定時間静置し、注湯して、前記希土類アルミニウム合金を得る。
ここで、アルミニウム溶湯は、市販の高純度アルミニウムインゴットを用いて、上記アルミニウム合金インゴットの精製処理を参考して相応の処理を行ってもよいが、ここでは、説明を省略する。
この他、市販のアルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン中間合金又はアルミニウムチタンボロン中間合金、希土類アルミニウム合金について、それぞれ順に脱スケール層、超音波洗浄、精錬処理を行ってもよい。これにより、その中の望ましくない不純物、酸化物をさらに除去することができ、製品としての複合希土類合金の微細化と変質作用を高めるためになる。
実施形態2について、
前記改質剤は複合希土類アルミニウム合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせである。
複合希土類アルミニウム合金としては、上記の希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金、及びアルミニウム溶湯を用いて溶錬、精錬することで製造してもよい。
例えば、前記複合希土類アルミニウム合金の製造は、
アルミニウム溶湯を提供するステップS211と、
アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金、及び希土類アルミニウム合金を提供し、前記希土類アルミニウム合金中の希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムから選ばれる1種又は複数種であるステップS212と、
不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム溶湯に、前記希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて溶錬し、前記複合希土類合金を得るステップS213と、を含んでもよい。
ここで、前記アルミニウムストロンチウム中間合金及び前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金が間隔をあけて加えられ、前記希土類アルミニウム合金を前記アルミニウムストロンチウム中間合金及び前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の前に加え、又は一番先に加えた一方と一緒に加え、或いは前記アルミニウムストロンチウム中間合金を加えるタイミングと前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えるタイミングとの間に加える。
好ましくは、前記アルミニウム溶湯に、間隔をあけて前記希土類アルミニウム合金、前記アルミニウムストロンチウム中間合金、前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を順次加える。
ステップS3、不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム合金溶湯に、前記改質剤を加えて溶錬し、前記改質アルミニウム合金溶湯を得る。
つまり、アルミニウム溶湯、改質剤を準備しておいた後、不活性気体雰囲気下で、改質剤をアルミニウム溶湯に加えてさらに溶錬し、改質アルミニウム合金溶湯を得る。
本発明実施例による製造方法は、改質剤に希土類金属を引き入れることで、変質剤と微細化剤との間の相互被毒作用を極めて大きく克服し、変質剤と微細化剤の添加量を高めることができると共に、変質と微細化の効果を高めることができる。
上記の2つの組み合わせの改質剤について、それぞれ次のような溶錬を行う。
前記改質剤が希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせについて、具体的には、各希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金及びその前処理は上記のステップS2を参照してもよい。
この組み合わせの場合には、前記アルミニウムストロンチウム中間合金及び前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を間隔をあけて加え、前記希土類アルミニウム合金を一番先に加え、一番先に加えた一方と一緒に加え、或いは前記アルミニウムストロンチウム中間合金を加えるタイミングと前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えるタイミングとの間に加える。
より好ましくは、前記ステップS3は、具体的に、
前記アルミニウム溶湯に前記希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、第1の均一混合溶湯を得るステップS301と、
前記第1の均一混合溶湯に前記アルミニウムストロンチウム中間合金を加えて引き続き溶錬し、第2の均一混合溶湯を得るステップS302と、
前記第2の均一混合溶湯に前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて引き続き溶錬し、前記改質アルミニウム合金を得るステップS303と、を含んでもよい。
つまり、まず希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、この上で、さらに間隔を開けて変質剤としてのアルミニウムストロンチウム中間合金、微細化剤としてアルミニウムチタン中間合金又はアルミニウムチタンボロン中間合金を順次加えることで、ストロンチウム、ボロンの被毒作用をよりよく解決することができ、より微細化、より均一で、機械的性能がより高い改質アルミニウム合金を得ることができる。
また、改質剤が複合希土類アルミニウム合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせについて、前記ステップS3は、
前記アルミニウム溶湯に前記複合希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、第4の均一混合溶湯を得るステップS310と、
前記第4の均一混合溶湯に前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて引き続き溶錬し、前記改質アルミニウム合金を得るステップS320と、を含む。
つまり、事前に希土類アルミニウム合金、変質剤、微細化剤、アルミニウムを溶錬して複合希土類アルミニウム合金を得た場合に、一回に上記のアルミニウム溶湯に加えて製造することができる。勿論、高温溶錬の場合には、結晶粒子の異常な成長が発生し易く、その機械的性能の向上のためにならないことを考慮すると、好ましくは、複合希土類アルミニウム合金が全部溶解されてアルミニウム合金と均一に混合された場合に、その中に微細化剤、即ちアルミニウムチタン中間合金又はアルミニウムチタンボロン中間合金をさらに加え、結晶粒子の成長を制御する。
改質剤としては、その添加量は使用のニーズに応じて、中間合金中の各有効成分としての異なる含有量によって相応に設計されている。1つの例示として、例えば、複合希土類合金(その中に含まれた希土類元素:ストロンチウム:チタン又はチタンボロン総量の質量比=1:(0.1~1.2):(0.1~1.2))で引き入れた場合には、前記改質剤は、前記改質アルミニウム合金の総量の0.4~0.6wt%を占めることが好ましい。
さらには、上記いずれか1つのステップにおける精錬、即ちアルミニウム溶湯を精製するプロセスにおける精錬、希土類アルミニウム合金を製造するプロセスにおける精錬、及び複合希土類アルミニウム合金における各溶湯の精錬のいずれも、次のような方式で行っても良い。
精錬剤を不活性気体で吹き込み、3~10分間保持し、この後、スラグ除去剤を加えて5~10分間撹拌し、表面スカムを除去した。
さらには、前記精錬剤の添加量は添加された溶湯の質量の0.1~0.3%を占め、前記スラグ除去剤の添加量は添加された溶湯の質量の0.1~0.3%を占める。
前記精錬剤の成分は質量で計算すると、
塩化カリウム:10~15質量部、塩化ナトリウム:15~25質量部、フッ化カルシウム:8~15質量部、炭酸ナトリウム:15~25質量部、硫酸ナトリウム:8~12質量部、フルオロアルミン酸ナトリウム:10~20質量部、ヘキサクロロエタン:8~12質量部を含有する。
前記スラグ除去剤の成分は質量で計算すると、
塩化ナトリウム:25~30質量部、塩化カリウム:25~30質量部、炭酸ナトリウム:5~10質量部、硫酸ナトリウム:5~10質量部、フルオロアルミン酸ナトリウム:1~5質量部、フルオロケイ酸ナトリウム:5~10質量部、フッ化カルシウム:5~10質量部、硝酸カリウム:1~5質量部、フルオロケイ酸カリウム:5~10質量部を含有する。
さらには、溶湯の水素含有量をモニタリングすることにより、精錬を継続するか否かを確定してもよい。本発明では、溶湯の密度を試験することにより水素含有量を推定し、つまり、溶湯密度が理論密度に近ければ近いほど(合金中に含まれる成分の違いにより若干異なり、概ね2.7g/cm程度)、含有されている水素が低くなることを表明している。例えば、溶湯の密度が2.65g/cm未満であると、前記精錬処理を行い、溶湯密度が2.65g/cm以上であると、前記精錬処理を行わなかったり、前記精錬処理を終了したりするように設定してもよい。
ステップS4、前記改質アルミニウム合金溶湯を鋳込み、鋳造アルミニウム合金ブランクを得る。
つまり、溶錬した後、得られた改質アルミニウム合金溶湯を金型に鋳込んで、前記鋳造アルミニウム合金ブランクを得る。
具体的な鋳造プロセスは、通常の鋳造工程を用いても良い、ここではその詳細な記載を省略する。
ステップS5、前記アルミニウム合金ブランクを熱処理する。
つまり、鋳造でアルミニウム合金ブランクを得た後、その機械的強度をさらに高めるために、発明者は繰り返し研究した上で、次のような熱処理工程を開発した。
具体的に言えば、前記熱処理は、
前記アルミニウム合金ブランクを530~550℃に加熱して、100~300min保温する固溶化処理と、
固溶化処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを温度が60~70℃である水浴に加えて、2~4min水焼き入れする水焼き入れ処理と、
水焼き入れ処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを150~165℃で120~280min保温し、この後、110~130℃に降温して30~120min保温し、この後、室温まで自然に冷却し、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品を得る時効処理と、を含む。
つまり、アルミニウム合金ブランクに対して相次いで固溶化処理、水焼き入れ処理、及び時効処理を行う。
上記の固溶化処理を設計することにより、鋳物構造(例えば、肉厚が不均一で、中継箇所の厚さが大きい)等に起因して鋳造品が結晶凝固時に冷却速度によって生じる応力を解消し、合金の機械的強度及び硬さを向上させ、金属組織を改善し、結晶粒間及び成分偏析を解消し、組織を均一化させることができる。
この他、上記の水焼き入れ処理を設計することにより、鋳物を急冷させ、合金中に強化元素を最大限に溶解させて室温に固定して保存する。
上記の時効処理を設計することにより、温度の上昇及び時間の延長に従って、およそ過飽和固溶体格子内の原子が再結合し、溶質原子の濃縮領域(G-PI領域という)を生成すること、及びG-PI領域が消失し、第2の相の原子が一定の規則で偏在してG-PII領域を生成すること、準安定した第2の相(遷移相)を生成すること、多量のG-PII領域と少量の準安定相とが結合すること、及び準安定相が安定相に転換され、第2の相の質点が凝集することのようにいくつかの段階が経由する。
また、本発明の製造方法によれば、先ず高温時効処理を用い、より相転移をβ′領域とβ″領域の間に生じさせることによって、高い強度を確保することができる。
好ましくは、前記固溶化処理における昇温速度を1.5~3℃/minに制御し、保温時間を120~180minに制御する。固溶化処理の昇温速度と保温時間を制御することにより、バラ状α-Al相と丸められた球状α-Al相をさらに増加させて、初晶α-Al相を細分化し、樹枝状結晶の数を減らすことができる。
さらには、前記固溶化処理、前記水焼き入れ処理、及び前記時効処理は連続処理であり、かつ前記水浴は循環水浴であり、前記水焼き入れ処理後、前記時効処理を行う前に、前記鋳造アルミニウム合金ブランクの温度を55℃以上に保持する。連続処理により、生産の効率を向上できるだけでなく、工程中断による不必要な欠陥を避けることができる。かつ期間の最低温度を制御し、急速な降温による欠陥を避ける。
さらには、前記時効処理段階は、150~165℃から110~130℃まで降温する降温速度が2~5℃/minにに制御される。時効処理段階の降温速度を制御することにより、欠陥の引き入れを極めて大きく減らすことができ、その機械的強度を更に高め、属性も高いレベルに保持されるためになる。以下、具体的な実施例により本発明に係る製造方法をさらに詳しく説明する。
実施例1
アルミニウム合金:アルミニウムシリコンマグネシウム合金(A356)(山東魏橋鑢業から購入)を用いた。
高純度アルミニウムインゴット(中国鑢業集団から購入、成分:Al(99.99%)、Fe<0.1%、不純物<0.05%)
精錬剤:
成分:塩化カリウム:15質量部、塩化ナトリウム:20質量部、CaF:10質量部、NaCO:20質量部、NaSO:10質量部、NaAlF:15質量部、CCl:10質量部。
スラグ除去剤:
成分:塩化ナトリウム:25質量部、塩化カリウム:25質量部、炭酸ナトリウム:5質量部、硫酸ナトリウム:5質量部、フルオロアルミン酸ナトリウム:5質量部、フルオロケイ酸ナトリウム:10質量部、フッ化カルシウム:10質量部、硝酸カリウム:5質量部、フルオロケイ酸カリウム:10質量部。
1)アルミニウム合金溶湯の製造
溶解:先ず、予熱したアルミニウムシリコンマグネシウム合金A356を事前に昇温した溶錬炉内に加え、760度の範囲内に加熱して溶解させ、アルミニウム溶湯とした。
脱ガス・スラグ除去:アルミニウム溶湯になった後、窒素ガス(またはアルゴンガス)を通入した後、精錬剤(0.3wt%精錬剤)をアルミニウム溶湯に吹き込み、通気時間を15分間に制御した。
静置:S3でのアルミニウム溶湯を10分間静置し、温度を760度以下に制御して、アルミニウム溶湯の表層のスラグ不純物をきれいに引き上げた。
この間、静置したアルミニウム溶湯をサンプリングして化学成分を測定して水素ガス量を推定した。
密度法で水素含有量を推定し、密度が2.65g/cm以上であることが要求される。密度が大きければ大きいほど(2.7g/cmに近ければ近いほど)、水素含有量が少なくなると考えられる。
2)中間合金の精製処理
2.1)アルミニウムストロンチウム中間合金:南通昂申金属材料有限会社から購入、成分:Al-10Sr、Fe<0.05。
前処理:グラインダーでアルミニウムストロンチウム中間合金のスケールと表層をきれいに処理した。
超音波洗浄:前処理後のアルミニウムストロンチウム中間合金を超音波洗浄槽に入れて超音波処理を行った。
乾燥:洗浄後のアルミニウムストロンチウム中間合金をオーブンに入れて60~100℃で30~60分間乾燥した。
溶錬:アルミニウムストロンチウム中間合金を予熱した坩堝に入れて760~780℃で溶解処理した。
精錬処理:アルミニウムストロンチウム中間合金が溶解した後に精錬処理を行った。Ar+黒鉛自動脱気撹拌棒を導入して溶解した高純度アルミニウムを精錬処理した。5~10分間730~750℃のときArで精錬剤を吹き込み、吹き込んだ精錬剤の量が0.1~0.3%溶湯であり、3~5分間保持し、精錬プロセスでアルミニウム溶湯の表面に沸騰気泡があってはならない。
表面スカム除去:15~20分間で0.1~0.3%のスラグ除去剤を入れて均一に分散させ、表面スカムを除去した。
静置:除滓後、740~760℃で8~15分間静置した。
2.2)微細化剤:アルミニウムチタンボロン中間合金の精錬処理
アルミニウムチタンボロン中間合金:南通昂申金属材料有限会社から購入(成分及び含有量:Ti:5%、B:1%、残部:Al)
微細化剤としてのアルミニウムチタンボロン中間合金について、上記と同様の処理を行った。
3)複合希土類アルミニウム合金の製造
3.1)高純度希土類アルミニウム中間合金の溶錬
a)高純度アルミニウム溶湯の製造
前処理:グラインダーで高純度アルミニウムインゴット表面のスケールと表層をきれいに処理した。
超音波洗浄:前処理後の高純度アルミニウムインゴットを洗浄剤に入れて超音波処理を行った。
乾燥:超音波洗浄後の高純度アルミニウムインゴットをオーブンに入れて60~100℃で30~60分間乾燥した。
溶錬:乾燥後高純度アルミニウムを予熱した坩堝に入れて760~780℃で加熱溶解した。
精錬処理:高純度アルミニウムが溶解した後に精錬処理を行った。具体的に、Ar+黒鉛自動脱気撹拌棒により溶解した高純度アルミニウムを精錬処理した。5~10分間740~760℃のときArで精錬剤を吹き込み、吹き込んだ精錬剤の量が0.1~0.3%溶湯であり、3~5分間保持した。この後、10~20分間静置し、その中に0.1~0.3%のスラグ除去剤を入れてそれを均一に分散させ、表面スカムを除去した。
静置:除滓後、740~760℃で8~15分間静置した。
b)希土類アルミニウム合金の溶錬:
上記a)で得られた高純度アルミニウムの温度を780~820℃に調整し、加熱して完全に溶解した後、設定された質量%で、即ち希土類アルミニウム合金中のランタン含有量が0.2±0.02wt%となるように希土類アルミニウムランタン合金(包頭希土類研究院から購入、成分:Al-10La、Fe<0.05)を添加した。アルゴン雰囲気下で780~820℃で加熱してそれを完全に溶解させた。
撹拌と保温:溶解後の溶湯を3~5分間撹拌してそれを均一化させ、760~780℃のとき溶湯を10~20分間保温した。
精錬処理:プロセス全体では、アルゴン雰囲気による保護下で、希土類アルミニウムランタン合金が溶解した後に精錬処理を行った。Ar+石墨自動脱気撹拌棒を導入して溶解したものを精錬処理した。5~10分間760~780℃のときArで精錬剤を吹き込み、吹き込んだ精錬剤の量を0.1~0.3%溶湯であり、3~5分間保持し、精錬プロセスでアルミニウム溶湯の上面に沸騰気泡があってはならない。溶湯表面スカムの除去:15~20分間で0.1~0.3%のスラグ除去剤を入れて均一に分散させ、表面スカムを除去した。
静置:除滓後、720~730℃で10~15分間静置した。
3.2)複合希土類合金の製造
上記のように、アルミニウム溶湯、希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、及びアルミニウムチタンボロン中間合金をそれぞれ準備し、次に、複合希土類合金を得るように、それらに対して混合溶錬を行った。
本実施例では、添加順序として、先ず、アルミニウム溶湯に希土類アルミニウム合金を添加し、続いて、アルミニウムストロンチウム合金を添加し、最後に、アルミニウムチタンボロン合金を添加した。具体的には次の通りである。
ステップ1、原料を配合する:上記で得られた高純度アルミニウム、アルミニウムチタンボロン中間合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、希土類アルミニウム合金を要求された質量%で秤量した後に予熱した。
総量100重量部に対して、高純度アルミニウム:4.8重量部と、アルミニウムチタンボロン中間合金:0.2重量部と、アルミニウムストロンチウム中間合金:60重量部と、希土類アルミニウム合金:35重量部と、を含有する。
ステップ2、希土類アルミニウム合金を添加・溶解する:上記アルミニウム溶湯に対して、先ず、上記精製処理を経た希土類アルミニウム合金を780~820℃に加熱して溶融前に軟化させた後、アルミニウム溶湯全体の温度を760~780℃に制御し、希土類アルミニウム合金をアルミニウム溶湯に加えて保温した。
全プロセスにおいて、アルゴン雰囲気で保護し、希土類アルミニウム合金を溶解させた。
ステップ3、希土類アルミニウム合金が完全に溶解した後、温度を750~770℃に制御した時、5~10分間撹拌した。
全プロセスにおいて、アルゴン雰囲気で保護し、攪拌棒に黒鉛材料を用いて、攪拌の前に400~500℃に予熱させた。
つまり、希土類アルミニウム合金が完全に溶解した後、温度を少し低下させることで、過熱による続いてくる結晶粒子の粗大化等を防止することができる。
ステップ4、溶解後の溶湯を740~760℃で、保温時間を5~20分間に制御するように保温処理を行った。この段階では、合金化反応が発生した。
ステップ5、精錬:保温終了後、精錬を行い、脱気・スラグ除去をした。溶湯中にアルゴンガスで0.3%の精錬剤を吹き込み、通気時間を3~8分間に制御し、その後、さらに0.2%のスラグ除去剤を加えて、5分間撹拌し、静置して溶湯表層のスラグ及び不純物を除去した。全プロセスにおいて、アルゴン雰囲気で保護した。
精錬前及び精錬中においてアルミニウム溶湯をサンプリングし、その密度を測定して水素含有量を推定した。測定方法は密度法(アルミニウムの理論値2.70g/cmで対比)を用い、測定したサンプルは2.7g/cmに近ければ近いほど、アルミニウム内部の水素含有量が低くなることを示す。通常は2.7g/cm未満であり、試料の密度試験は、約2.65g/cm程度であると、水素含有量を推定することができる。その過程で真空引き処理が必要であり、水素含有量が不合格であれば、さらに精錬を行い、即ち精錬剤、スラグ除去剤を繰り返し添加し、再度精錬する。
ステップ6、静置:希土類アルミニウム合金を加えて精錬した後の溶湯を3~5分間静置し、温度を740~760度に制御した。
ステップ7、アルミニウムストロンチウム中間合金を添加・溶解する:上記精錬後のアルミニウムストロンチウム中間合金をステップ6の溶湯に添加し、温度を780~820℃に制御して、アルミニウムストロンチウム中間合金を完全に溶解させた。全プロセスにおいて、アルゴン雰囲気で保護し、アルミニウムストロンチウム中間合金を溶解させた。
ステップ8、アルミニウムストロンチウム中間合金が溶解した後、温度を740~760℃に制御し、3~8分間撹拌し、均質化を図った。全プロセスにおいて、アルゴン雰囲気で保護し、撹拌棒に石墨材料を用い、撹拌前に400~500℃に予熱した。
ステップ9、次に、725~750℃で、保温処理を行った。保温時間を15~30分間に制御した。
ステップ10、精錬、脱気・スラグ除去:溶湯の保温終了後、アルゴンガスを導入した後に、精錬剤0.3%をアルミニウム希土類複合溶湯に吹き込み、通気時間を5~10分間に制御し、0.2%の除滓剤をアルミニウム溶湯に入れ、5分間撹拌して、アルミニウム希土類複合溶湯表層のスラグ及び不純物を引き上げた。全プロセスにおいてアルゴン雰囲気で保護した。
精錬前及び精錬中でアルミニウム溶湯をサンプリングし、水素含有量を測定した(水素含有量:2.65g/cm以上でることが要求される)。水素を測定するプロセスで真空引き処理を必要とし、水素含有量が不合格であれば、さらに精錬を行い、即ち精錬剤、スラグ除去剤を繰り返し添加し、再度精錬する。
ステップ11、アルミニウムチタンボロン中間合金を添加する:上記ステップ10で処理した後の溶湯に、アルミニウムチタンボロン中間合金を加え、加熱して完全に溶解させ、3~5分間均一に撹拌して均質化させた。
ステップ12、保温:撹拌した後、溶湯を8~12分間保温し、温度を715~725℃に制御した。
ステップ13、精製、脱気・スラグ除去:溶湯の保温終了後、アルゴンガスを導入した後に、精錬剤0.3%をアルミニウム希土類複合溶湯に吹き込み、通気時間を5~10分間に制御し、0.2%の除滓剤をアルミニウム溶湯に入れ、5分間撹拌して、アルミニウム希土類複合溶湯の表層のスラグ及び不純物を引き上げた。全プロセスにおいてアルゴン雰囲気で保護した。
精錬前及び精錬中でアルミニウム溶湯をサンプリングし、水素含有量を測定した(水素含有量:2.65g/cm以上であることが要求される)。水素を測定するプロセスで真空引き処理を必要とし、水素含有量が不合格であれば、合格するまで、さらに精錬を行い、即ち精錬剤、スラグ除去剤を繰り返し添加し、再度精錬する。
ステップ14、鋳造:金型を300~400℃に予熱した。上記ステップ13で得られた複合希土類合金溶湯の温度を715~725℃に制御して鋳造すればよい。
好ましくは、鋳造時、アルミニウム希土類複合溶湯表層の酸化物はガラス繊維の濾過網を用いてきれいに濾過され、毎回の鋳造前にアルミニウム希土類複合溶湯の表面層に対して濾過処理が施された後に鋳造する。
好ましくは、鋳造するための金型の冷却制御は、金型に鋳込んだアルミニウム希土類複合溶湯を水冷方式で冷却し、冷却中では、50~100℃/sでアルミニウム溶湯の凝固速度を制御し、凝固方式を順番に凝固させることにする。
複合希土類アルミニウム合金中の具体的な希土類金属:ストロンチウム:チタンまたはチタンボロンの重量の量は、上記実施例に限定されるものではなく、例えば、前記希土類金属:ストロンチウム:チタンまたはチタンボロンの重量の質量比が1:(0.1~1.2):(0.1~1.2)となってもよい。
4)改質アルミニウム合金ブランクの製造
アルミニウム合金:複合希土類アルミニウム合金:アルミニウムチタンボロン中間合金の質量比が99.4:0.4:0.2の割合で、上記アルミニウムシリコンマグネシウム合金、複合希土類アルミニウム合金、及びアルミニウムチタンボロン中間合金を準備した。
この後、次のようなステップで溶錬した。
混合:上記の割合で、上記1)で処理した後のアルミニウムシリコンマグネシウム合金溶湯において、温度を740±5度に制御したときに、まず3)で得られた複合希土類アルミニウム合金を添加した。
撹拌:複合希土類アルミニウム合金を添加して溶解した溶湯を、グラファイトミキサーで撹拌し、撹拌プロセスにおいて均一に撹拌し、8分間連続撹拌する必要がある。
保温:撹拌した後、温度を735度に制御して保温し、保温時間を20分間に制御した。
精錬:保温終了後、アルゴンガスを導入した後、スラグ除去剤をアルミニウム溶湯に吹き込み、通気時間を15分間に制御した。
微細化剤の添加:0.2%アルミニウムチタンボロン中間合金を精錬したアルミニウム溶湯に加えて、溶解した後、撹拌を行い、精錬を継続した。
保温静置:精錬終了後、アルミニウム溶湯が保温セルに流入した後、温度を710±3度に制御したところ、10±2分間静置した後、アルミニウム溶湯の表層のスラグや不純物を除去した。
鋳造:予熱金型が250~400度のとき、上記温度を700±5に制御した精錬後の改質アルミニウム合金を金型に鋳込んで、冷却することにより、改質アルミニウム合金ブランクを得た。ここで、この改質アルミニウム合金ブランクの厚さは30mmであった。
5)熱処理
固溶化処理:上記改質アルミニウム合金ブランクを加熱炉に入れ、2℃/minの加熱速度で540℃まで加熱し、120min保温した。
水焼き入れ処理:上記固溶化処理後の改質アルミニウム合金ブランクを温度が65℃である循環水浴に加え、3min水焼き入れした。
時効処理:水焼き入れ処理を経た後の改質アルミニウム合金ブランクを150℃の保温箱に直接入れて120min保温した後、2℃/minの降温速度で110℃まで降温して30min保温した後、室温まで自然に冷却し、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品を得た。
図1は実施例で製造された高強度複合改質アルミニウム合金部品、即ちハブの写真である。図2は図1に示されるハブのリブ部位の金属組織画像であり、その中、(a)は低倍率の画像、(b)は中倍率の画像、(c)は高倍率の画像である。図2から分かるように、本実施例の改質、熱処理後のアルミニウム合金の金属組織は、比較的に丸められた球状α-Al相がさらに増加し、初晶α-Al相及び樹枝状結晶がほとんど見えない。つまり、結晶粒子がさらに均質化し、微細構造がより均一となった。また、球状α-Al相は粒界に均一に分布している。
また、A356アルミニウム合金(改質前と記す)、改質後ブランク(改質合金1と記す)、及び熱処理後の部品(実施例1と記す)の機械的性能を評価した。評価結果を下記表1に示す。
Figure 2024526979000002
表1から分かるように、本実施例1の熱処理により、熱処理を行っても、その強度を大きく向上させることができる。熱処理を合わせた上で、その降伏強度、及び引張強さ(未改質、熱処理されていないアルミニウム合金マスターインゴットに対して、降伏強度及び引張強さがそれぞれ約4倍、約3倍に増加)を大きく高めたと共に、高いレベルの伸び率(未処理のアルミニウム合金マスターインゴットに対して、5倍超に高めた)も保持し、総合的な機械的性能を大幅に向上させた。
実施例2
本実施例では、上記実施例1と比較して、改質剤として、希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金の組み合わせを用いた点以外は、実施例1と同じである。
以下、改質アルミニウム合金溶湯の処理のうち、異なる部分についてのみ説明する。
4)改質アルミニウム合金ブランクの製造
アルミニウム合金:希土類アルミニウム合金(希土類アルミニウム合金の精製処理は、実施例1と同じ):アルミニウムストロンチウム合金:アルミニウムチタンボロン中間合金の質量比が99.4:0.2:0.2:0.2の割合で、上記アルミニウムシリコンマグネシウム合金、希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、及びアルミニウムチタンボロン中間合金を準備した。
この後、次のようなステップで溶錬した。
混合:上記の割合で、上記1)で処理された後のアルミニウムシリコンマグネシウム合金溶湯において、温度を740±5度に制御したところ、先ず、希土類アルミニウム合金を加えた。
撹拌:希土類アルミニウム合金を入れて溶解した溶湯をグラファイトミキサーで撹拌し、撹拌プロセスにおいて均一に撹拌し、8分間連続撹拌する必要がある。
保温:撹拌後、温度を735度に制御して保温し、保温時間を20分間に制御した。
精錬:保温終了後、アルゴンガスを導入した後、スラグ除去剤をアルミニウム溶湯に吹き込み、通気時間を15分間に制御した。
アルミニウムストロンチウム中間合金の添加:0.2%のアルミニウムストロンチウム中間合金を精錬したアルミニウム溶湯に加え、溶解撹拌して精錬を継続した。
均質化:アルミニウムストロンチウム中間合金が完全に溶解した後、温度を740~760℃に制御し、3~8分間撹拌し、均質化を図った。
保温:次に、725~750℃で、保温処理を行い、保温時間を15~30分間に制御した。
微細化剤の添加:0.2%アルミニウムチタンボロン中間合金を精錬したアルミニウム溶湯に加え、溶解した後、撹拌を行って精錬を継続した。
保温静置:精錬終了後、アルミニウム溶湯が保温セルに流入した後、温度を710±3度に制御したところ、10±2分間静置した後、アルミニウム溶湯表層のスラグや不純物を除去した。
鋳造:予熱金型が250~400度であるとき、上記温度を700±5に制御した精錬後の改質アルミニウム合金を金型に流し込み、冷却することにより、改質アルミニウム合金ブランクを得た。
本実施例で得られた製品の金属組織画像は、実施例1と似ているため、ここでは詳しく説明しない。
Figure 2024526979000003
ここで、改質合金2は改質後ブランクを表し、熱処理は行わなかった。
表2から分かるように、本実施例2の熱処理により、上記実施例1と類似した結果を得ることもできる。
同時に、実施例2と比較して、まず、希土類アルミニウム合金とアルミニウムストロンチウム中間合金とを溶錬することで複合希土類アルミニウム合金を製造し、この複合希土類アルミニウム合金で改質した複合改質アルミニウム合金部品は、より高い総合的な機械的性能を有していることが分かった。
実施例3
本実施例では、上記実施例1と比較して、A356の代わりにZL111を用いた点以外は、同じである。
具体的な製造は実施例1を参照し、ここではその詳細な説明を省略する。
また、ZL111アルミニウム合金(改質前と記す)、改質後ブランク(改質合金3と記す)、及び熱処理後の部品(実施例3と記す)の機械的性能を評価した。評価結果を下記表3に示す。
Figure 2024526979000004
表3から分かるように、本実施例3の熱処理により、上記実施例1、2と類似した結果を得ることもできる。つまり、本発明の製造工程は、同様に共晶型アルミニウム合金に適用することができ、より良い強度とより高い靭性を得ることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、当業者にとっては、本発明の前記原理から逸脱しない前提下で、若干の改良や修飾も可能であり、これらの改良や修飾も本発明の保護範囲に入ると見なされるべきである。

Claims (7)

  1. 高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法において、
    アルミニウム合金溶湯を提供するステップS1と、
    改質剤を提供するステップS2であって、前記改質剤は前記改質アルミニウム合金溶湯総量の0.4~0.6wt%を占め、
    前記改質剤は複合希土類アルミニウム合金とアルミニウムチタン中間合金との組み合わせ又は複合希土類アルミニウム合金とアルミニウムチタンボロン中間合金との組み合わせであり、前記複合希土類アルミニウム合金にはストロンチウム、チタン又はチタンボロン、及び希土類金属が含有され、前記複合希土類アルミニウム合金における前記希土類金属: ストロンチウム:チタン又はチタンボロン総量の質量比は1:(0.1~1.2):(0.1~1.2)であり、
    前記複合希土類アルミニウム合金における希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムのうちのいずれか1種又は複数種であり、
    前記複合希土類アルミニウム合金の製造は、
    前記アルミニウム溶湯を提供するステップS211と、
    アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金、及び希土類アルミニウム中間合金を提供するステップS212であって、前記希土類アルミニウム中間合金における希土類金属はランタン、セリウム、イットリウムから選ばれる1種又は複数種であるステップS212と、
    不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム溶湯に、前記希土類アルミニウム合金、アルミニウムストロンチウム中間合金、アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を順次加えて溶錬し、前記複合希土類合金を得るステップS213と、を含むステップS2と、
    不活性気体雰囲気下で、前記アルミニウム合金溶湯に、前記改質剤を加えて溶錬し、改質アルミニウム合金溶湯を得るステップS3と、
    前記改質アルミニウム合金溶湯を用いて鋳造し、改質アルミニウム合金ブランクを得るステップS4と、
    前記改質アルミニウム合金ブランクを熱処理するステップS5であって、
    前記熱処理は、前記改質アルミニウム合金ブランクを530~550℃に加熱して、100~300min保温する固溶化処理と、
    固溶化処理を経た後の改質アルミニウム合金ブランクを温度が60~70℃である水浴に入れて、2~4min水焼き入れする水焼き入れ処理と、
    水焼き入れ処理を経た後のアルミニウム合金ブランクを150~165℃で120~280min保温し、この後、110~130℃に降温して30~120min保温し、この後、室温まで自然に冷却し、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品を得る時効処理と、を含むステップS5と、を含むことを特徴とする高強度複合改質アルミニウム合金部品の製造方法。
  2. 前記ステップS1は、
    アルミニウム合金マスターインゴットを提供することと、
    前記アルミニウム合金マスターインゴットの表面のスケール層を除去して洗浄、乾燥を行うことと、
    乾燥後のアルミニウム合金マスターインゴットを溶錬して、精錬、スラグ除去を行い、前記アルミニウム合金溶湯を得ることと、を含み、
    前記アルミニウム合金マスターインゴットの成分は亜共晶アルミニウム合金又は共晶アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ステップS3は、
    前記アルミニウム合金溶湯に前記複合希土類アルミニウム合金を加えて溶錬し、第4の均一混合溶湯を得るステップS310と、
    前記第4の均一混合溶湯に前記アルミニウムチタン又はアルミニウムチタンボロン中間合金を加えて引き続き溶錬し、前記改質アルミニウム合金を得るステップS320と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記ステップS5では、前記固溶化処理中の昇温速度を1.5~3℃/minに制御し、保温時間を120~180minに制御することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記固溶化処理、前記水焼き入れ処理、及び前記時効処理は連続処理であり、
    前記水浴は循環水浴であり、前記水焼き入れ処理をした後、前記時効処理を行う前に、前記鋳造アルミニウム合金ブランクの温度を55℃以上に保持することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記時効処理段階では、150~165℃から110~130℃まで降温する降温速度が2~5℃/minに制御されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法で製造して得られた、前記高強度複合改質アルミニウム合金部品の引張強さは300MPa以上であり、降伏強度は230MPa以上であり、伸び率は6%以上であることを特徴とする高強度複合改質アルミニウム合金部品。
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