JP2024509280A - Kras阻害物質としてのピリドピリミジン誘導体 - Google Patents

Kras阻害物質としてのピリドピリミジン誘導体 Download PDF

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    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents

Abstract

本発明は、カーステン・ラット肉腫ウイルス(KRAS)の阻害物質に関し、より詳しくは、式I:JPEG2024509280000032.jpg7775の化合物、ならびに式Iを含む組成物および、KRAS、特にKRAS変異体G12Cを介して媒介される疾患、障害または医学的状態を処置または予防するための式Iの化合物を使用する方法に関する。

Description

本出願は、2021年3月10日出願の米国仮特許出願63/159,024の優先権を主張し、この全内容は引用により本明細書に包含される。
発明の分野
本発明は、カーステン・ラット肉腫ウイルス(KRAS)の阻害物質、より詳しくは、KRAS、特にKRAS変異体G12Cを介して媒介される疾患、障害または医学的状態を処置または予防するためのピリドピリミジン化合物、組成物および方法に関する。前記疾患には様々な癌が含まれる。
関連技術の簡単な説明
Rasは、様々なアイソフォームからなる小さなグアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質のスーパーファミリーである。Ras遺伝子は、肺癌、膵臓癌および結腸癌などの多くの癌に関連する癌遺伝子に変異することができる。Rasは、最も頻繁に変異する癌遺伝子の一つである。RasのアイソフォームであるKRAS(カーステン・ラット肉腫ウイルス(Kirsten Rat sarcoma virus))は、最も頻繁に変異するRas遺伝子の一つであり、全変異の約86%を占める。KRASは、細胞シグナル伝達のオン/オフスイッチとして機能する。KRASは、不活性(GDP結合型)状態と活性型(GTP結合)状態の間で作動することで、細胞増殖を含む様々な機能を制御する癌原遺伝子である。しかし、KRASの変異は、制御不能な細胞増殖および癌につながる。KRAS-4Bは、結腸癌(30~40%)、肺癌(15~20%)および膵臓癌(90%)における主要なアイソフォームである。(Liu, P. 2019, Acta Pharmaceutica Sinica B)。従って、KRAS-GTP結合の阻害物質は、様々な癌の処置のための潜在的な治療薬を象徴する。
KRAS阻害物質を設計しようとする過去の試みは、主にはKRASがGTPに対して親和性が高いこともあって、ほとんど成功していない。しかし、KRASのG12C変異を標的とする最近のアプローチは、比較的に有望であることが示されている。この変異は、肺癌の約50%に存在し、KRASのG12変異全体の約10~20%である。この変異のシステイン残基は、活性部位内に配置されており、スルフヒドリル官能性が適切に官能化された結合リガンドと共有結合を形成できる(Liu, P. 2019, Acta Pharmaceutica Sinica B)。このアプローチにより、KRAS G12C変異の不可逆的な共有結合性阻害物質が同定され、これは臨床試験に供されている。KRASが多くの悪性腫瘍の推進因子として顕著な役割を果たしていることを考えると、選択性、安全性および有効性が改善された新しいKRAS阻害物質の必要性が存在する。
一態様において、本発明は、式I:
[式中、
Aは、場合により一つまたはそれ以上の水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-(C0-C6アルキル)シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、NO2、シアノ、CO2H、PO(OR3)2、POR3(OR3)、PO(R4)2、NH2、NH(C1-6アルキル)またはN(C1-6アルキル)2によって置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールから選択され;
Xは、O、NR2、SまたはCH2から選択され;
Y、Gは、同じであってもよく異なっていてもよく、水素、ハロゲンまたはトリフルオロメチルから選択され;
Zは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1-6アルキルから選択され;
R1は、水素、C1-C6アルキル、-(C1-C6アルキル)C1-6アルコキシ、-C0-C6アルキル(シクロアルキル)、C1-C6ハロアルキル、-(C1-C6アルキル)CNまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
nは、1~3であり;
R2は、H、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
R3は、H、C1-6アルキルまたはC3-6シクロアルキルから選択され;
R4は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたはアリールから選択される]
の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグに関する。
別の態様において、本発明は、式Iの化合物または塩を、薬学的に許容できる担体とともに含む医薬組成物に関する。
別の態様において、本発明は、患者において疾患、障害または医学的状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に、式Iの化合物またはその塩を提供する工程を含む方法に関する。
これらおよび他の態様は、以下の発明の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
図1は、雄性CD-1マウスにおける実施例2(化合物1a)の薬物動態プロファイルを示すグラフである。
本発明の詳細な説明
用語
化合物は標準的な命名法を用いて記載される。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
用語「a」および「an」は、量の限定を示すものではなく、むしろ参照される項目の少なくとも一つの存在を示す。用語「または」とは、「および/または」を意味する。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」とは、開放式用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味)として解釈される。
値の範囲の列挙は、本明細書において特に断らない限り、単に範囲内に入る各別個の値を個別に参照するための省略法としての役割を果たすことを意図したものであり、各別個の値は、本明細書において個別に列挙されているかのように本明細書に包含される。すべての範囲の端点は範囲内に含まれ、独立に組み合わせ可能である。
本明細書中に記載の全ての方法は、本明細書中に特に断らない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実施され得る。全てのいずれかの例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、他に請求されない限り、本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書中のいかなる文言も、本明細書で使用される本発明の実施に必須であるとして請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
さらに、本開示は、列挙されている請求項の一つまたはそれ以上からの一つまたはそれ以上の限定、要素、節、および記述用語が別の請求項に導入されるすべての変形、組み合わせ、および順列を包含する。例えば、他の請求項に従属する請求項は、同じ基本請求項に従属する他の請求項に見出される一つまたはそれ以上の限定を含むように修正することができる。要素がリストとして、例えばMarkushグループ形式で示される場合、要素の各下位群も開示され、任意の要素を群から削除することができる。
すべての化合物は、化合物中に存在する原子のすべての可能な同位体を含むと理解される。同位体には、同じ原子番号であるが異なる質量数を有する原子が含まれ、重同位体および放射性同位体を包含する。一般的な例として、限定はしないが、水素の同位体にはトリチウムおよび重水素が含まれ、炭素の同位体には11C、13Cおよび14Cが含まれる。従って、本明細書に開示されている化合物は、化合物の構造中に、またはそれに結合した置換基として、重同位体または放射性同位体を含むことができる。有用な重同位体または放射性同位体の例としては、18F、15N、18O、76Br、125Iおよび131Iが挙げられる。
本明細書に開示されるすべての式は、そのような式のすべての薬学的に許容できる塩を含む。
開放式用語「含む(comprising)」は、中間および閉鎖式用語「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」を含む。
用語「置換されている」とは、指定された原子の通常の原子価を超えないことを条件として、指定された原子または基上のいずれかの一つまたはそれ以上の水素が、示された基からの選択肢によって置き換えられていることを意味する。置換基および/または変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にのみ許容される。安定な化合物または安定な構造とは、反応混合物からの単離、およびそれに続く有効な治療薬への製剤化に耐えるのに十分な堅牢性を有する化合物を意味する。
二つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の付着点を示すために使用される。
「アルキル」には、分枝鎖および直鎖の飽和脂肪族炭化水素基の両方が含まれ、特定の数の炭素原子、一般に1~約8個の炭素原子を有する。本明細書で使用される用語C1-C6アルキルとは、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施態様としては、1~8個の炭素原子、1~4個の炭素原子または1個もしくは2個の炭素原子を有するアルキル基、例えばC1-C8アルキル、C1-C4アルキルおよびC1-C2アルキルが挙げられる。本明細書において、C0-Cnアルキルが別の基、例えば-C0-C2アルキル(フェニル)と共に使用される場合、そのような基は、この例ではフェニルは、単一の共有結合(C0アルキル)によって直接結合されるか、または特定の数の炭素原子、この場合1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル鎖によって結合される。アルキルは、-O-C0-C4アルキル(C3-C7シクロアルキル)のように、ヘテロ原子などの他の基を介して結合することもできる。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、3-メチルブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびsec-ペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
「アルコキシ」は、酸素架橋(-O-)によって置換されている基に共有結合している炭素原子の数が示された、上記で定義されているアルキル基である。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、2-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、2-ペントキシ、3-ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、n-ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシおよび3-メチルペントキシが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、「アルキルチオ」または「チオアルキル」基は、硫黄架橋(-S-)によって置換されている基に共有結合している炭素原子の数が示された、上記で定義されているアルキル基である。同様に、「アルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」および「シクロアルキルオキシ」とは、アルケニル基、アルキニル基およびシクロアルキル基を意味し、それぞれの例において、酸素架橋(-O-)によって置換されている基に共有結合している。
「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味し、本明細書では、重同位体および放射性同位体を含むすべての同位体を含むように定義される。有用なハロ同位体の例には、18F、76Brおよび131Iが含まれる。追加の同位体も当業者には容易に理解されるであろう。
「ハロアルキル」とは、特定の数の炭素原子を有し、1個またはそれ以上のハロゲン原子によって置換されている分岐鎖および直鎖アルキル基の両方を意味し、一般にハロゲン原子の最大許容数までである。ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2-フルオロエチルおよびペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
「ハロアルコキシ」は、酸素架橋(アルコール基の酸素)を介して結合している上記定義のハロアルキル基である。
「ペプチド」とは、アミド結合(ペプチド結合とも称される)を介して結合したアミノ酸の鎖である分子を意味する。
「医薬組成物」とは、式IIの化合物または塩などの少なくとも一つの活性物質、および担体などの少なくとも一つの他の物質を含む組成物を意味する。医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト薬物に関する米国FDAのGMP(適正製造規範)基準を満たす。
「担体」とは、活性化合物とともに投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを意味する。「薬学的に許容できる担体」とは、一般に安全で、毒性がなく、生物学的にもその他の点でも望ましくないことのない医薬組成物を調製するのに有用な物質、例えば、賦形剤、希釈剤、またはビヒクルを意味し、ヒトの医薬用途と同様に獣医学的用途にも許容できる担体を含む。「薬学的に許容できる担体」には、そのような担体が一つである場合と一つを超える場合の両方が含まれる。
「患者」とは、医学的治療を必要とするヒトまたは非ヒト動物を意味する。医学的処置には、疾患または障害のような既存の状態の処置または診断的処置が含まれ得る。いくつかの実施態様において、患者はヒト患者である。
「提供」とは、与えること、投与すること、販売すること、頒布すること、譲渡すること(営利を目的とするか否かを問わない)、製造すること、配合すること、または調合することを意味する。
「処置」または「処置する」とは、いずれかの疾患症状を測定可能に軽減するか、疾患の進行を遅らせるか、または疾患の退縮を引き起こすのに十分な量の活性化合物を患者に提供することを意味する。特定の実施態様において、疾患の処置は、患者が疾患の症状を呈する前に開始され得る。
医薬組成物の「治療有効量」とは、患者に投与した場合に、症状の改善、疾患の進行の軽減、または疾患の退縮を引き起こすような治療上の利益を提供するのに有効な量を意味する。
「治療用化合物」とは、疾患の診断または処置に使用できる化合物を意味する。該化合物は、小分子、ペプチド、タンパク質または他の種類の分子であり得る。
有意な変化とは、Student's T-testのような統計的有意性の標準パラメトリック検定において統計的に有意である(p<0.05)検出可能な変化である。
化学的記載
本明細書に開示される式で示される化合物は、化合物が異なる立体異性体形態で存在できるように、不斉中心、不斉軸などの一つまたはそれ以上の非対称要素、例えば、非対称炭素原子を含み得る。これらの化合物は、例えば、ラセミ体、アトロプ異性体または光学活性形態であってもよい。二つまたはそれ以上の非対称要素を有する化合物の場合、これらの化合物はさらにジアステレオマーの混合物となり得る。非対称中心を有する化合物については、純粋な形態のすべての光学異性体およびそれらの混合物が包含される。これらの状況では、単一のエナンチオマー、すなわち光学活性形態は、非対称合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分離によって得ることができる。ラセミ体およびアトロプ異性体の分離は、例えば、分離剤の存在下での結晶化、または、例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィーなどの従来の方法によっても達成することができる。全ての形態は、それらを得るために使用される方法に関係なく、本明細書において企図される。
活性物質の全ての形態(例えば、溶媒和物、光学異性体、エナンチオマー形態、アトロプ異性体形態、多形体、遊離化合物および塩)を単独でまたは組み合わせて採用することができる。
用語「キラル」とは、鏡像相手の非重畳性(non-superimposability)という性質を有する分子を意味する。
「立体異性体」は、化学的構成は同一であるが、空間における原子または基の配置が異なる化合物のことである。
「ジアステレオマー」は、二つまたはそれ以上のキラリティーの中心を持ち、分子が互いに鏡像ではない立体異性体のことである。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば融点、沸点、スペクトル性質、反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動、分離剤存在下での結晶化、またはキラルHPLCカラムなどを用いたクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順で分離することができる。
「エナンチオマー」とは、化合物の二つの立体異性体のことで、互いに重畳不可能な鏡像体である。エナンチオマーの50:50の混合物は、ラセミ混合物またはラセミ体と称され、化学反応またはプロセスにおいて立体選択性または立体特異性がない場合に生じることがある。
本明細書で使用される立体化学的定義および慣例は、一般に、S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York; and Eliel, E. and Wilen, S., Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに従う。多くの有機化合物は光学活性形態、すなわち直線偏光の平面を回転させる能力を有している。光学活性化合物を説明する場合、DとL、またはRとSという接頭辞は、キラル中心に関する分子の絶対配置を示すのに使用される。dとl、または(+)と(-)という接頭辞は、化合物による直線偏光の回転の符号を示すのに使用され、(-)または1は化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を持つ化合物は、右旋性性である。
「ラセミ混合物」または「ラセミ体」は、光学活性のない二つのエナンチオマー種の等モル(または50:50)混合物である。ラセミ混合物は、化学反応またはプロセスにおいて立体選択性または立体特異性がない場合に生じることがある。
「キレート基」または「キレート剤」は、通常金属イオンである単一の中心原子に二つまたはそれ以上の別個の配位結合を形成することができる配位基(ligand group)である。本明細書に開示されているキレート基は、複数のN、O、またはSのヘテロ原子を有し、二つまたはそれ以上のヘテロ原子が同じ金属イオンに結合を形成できる構造を有する有機基である。
「塩」には、親化合物がその無機および有機の非毒性の酸または塩基付加塩を作ることによって修飾される、開示されている化合物の誘導体が含まれる。本発明の化合物の塩は、通常の化学的方法により塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論的量の適切な塩基(Na、Ca、Mg、またはKの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させることによって、あるいはこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論的量の適切な酸と反応させることによって調製することができる。このような反応は、一般に、水中または有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で行われる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体が、可能な場合には使用される。本発明の化合物の塩には、さらに、本発明の化合物および本発明化合物の塩の溶媒和物が含まれる。実施態様において、本発明の化合物は、トリフルオロ酢酸(TFA)塩として合成または単離される。
一実施態様において、上記の本発明の化合物の塩形態は、薬学的に許容できる塩を含み得る。薬学的に許容できる塩の例としては、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩または有機酸塩、などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容できる塩には、従来の非毒性塩および、例えば非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の第4級アンモニウム塩が含まれる。例えば、従来の非毒性酸塩には、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸から誘導されるもの;および有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸塩、メシル酸、エシリル酸(esylic acid)、ベシル酸(besylic acid)、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)n-COOH(nは0~4)から調製される塩が挙げられる。追加の適切な塩のリストは、例えば、G. Steffen Paulekuhn, et al., Journal of Medicinal Chemistry 2007, 50, 6665 and Handbook of Pharmaceutically Acceptable Salts: Properties, Selection and Use, P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, Editors, Wiley-VCH, 2002から得られる。
本発明の化合物は、式I:
で示される、4-アミノ基がブト-3-エン-2-オンなどの官能性を含む、置換ピリドピリミジン誘導体またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグに関する。
式I中、Aは、場合により一つまたはそれ以上の水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-(C0-C6アルキル)シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、NO2、シアノ、CO2H、PO(OR3)2、POR3(OR3)、PO(R4)2、NH2、NH(C1-6アルキル)またはN(C1-6アルキル)2によって置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールから選択され;
Xは、O、NR2、SまたはCH2から選択され;
Y、Gは、同じであってもよく異なっていてもよく、水素、ハロゲンまたはトリフルオロメチルから選択され;
Zは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1-6アルキルから選択され;
R1は、水素、C1-C6アルキル、-(C1-C6アルキル)C1-6アルコキシ、-C0-C6アルキル(シクロアルキル)、C1-C6ハロアルキル、-(C1-C6アルキル)CNまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
nは、1~3であり;
R2は、H、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
R3は、H、C1-6アルキルまたはC3-6シクロアルキルから選択され;
R4は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたはアリールから選択される。
好ましい実施態様において、式Iの化合物は、1a-1z、2a-2zおよび3a-3b:
で示される化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグで示される。
本発明の特に好ましい化合物は、化合物1a、1e、2jおよび2m:
である。
一実施態様において、本発明は、化合物1a、化合物2mもしくはそれらの混合物、またはそれらの塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを、薬学的に許容できる担体とともに含む、医薬組成物を包含する。
本明細書に開示されている化合物は、そのままの化学物質として投与することができるが、好ましくは医薬組成物として投与される。従って、本発明は、式Iの化合物などの化合物または化合物の薬学的に許容される塩を、少なくとも一つの薬学的に許容できる担体とともに含む医薬組成物を包含する。医薬組成物は、唯一の活性物質として式Iの化合物または塩を含んでもよいが、好ましくは少なくとも一つの追加の活性物質を含む。当業者には理解されるように、式Iによって記載される種々の化合物の組み合わせもまた、本発明の組成物および方法において実施され得る。特定の実施態様において、医薬組成物は、約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mg、または約200mg~約600mgの式Iの化合物および任意に約0.1mg~約2000mg、約10mg~約1000mg、約100mg~約800mgまたは約200mg~約600mgの追加の活性物質を単位剤形で含む剤形である。医薬組成物は、約0.5:1、約1:1、約2:1、約3:1または約1.5:1~約4:1の、式Iの化合物などの化合物および追加の活性物質のモル比を含むこともできる。
本明細書に開示されている化合物は、従来の薬学的に許容できる担体を含む投与単位製剤において、経口投与、局所投与、非経腸投与、吸入もしくは噴霧による投与、舌下投与、経皮投与、頬投与、直腸投与、点眼液として、または他の手段によって投与され得る。医薬組成物は、任意の薬学的に有用な形態、例えば、エアロゾル、クリーム、ゲル、丸剤、カプセル、錠剤、シロップ、経皮パッチ、または点眼液として製剤化され得る。錠剤やカプセルのようないくつかの剤形は、適切な量の活性成分、例えば所望の目的を達成するのに有効量を含む、適切な大きさの単位用量に細分化される。
担体には賦形剤および希釈剤が含まれ、処置される患者への投与に適するように、十分に純度が高く、十分に毒性が低いものでなければならない。担体は不活性であってもよく、それ自体が医薬上の利点を有していてもよい。化合物と共に使用される担体の量は、化合物の単位用量あたりの投与に実用的な量を提供するのに十分である。
担体のクラスには、結合剤、緩衝剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、香料、流動促進剤、滑沢剤、防腐剤、安定化剤、界面活性剤、打錠剤および湿潤剤が含まれるが、これらに限定されない。一部の担体は複数のクラスに分類される場合があり、例えば、植物油は、一部の製剤では滑沢剤として使用され、他の製剤では希釈剤として使用される。例示的な薬学的に許容できる担体には、糖、デンプン、セルロース、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルクおよび植物油が含まれる。医薬組成物には、本発明の化合物の活性を実質的に阻害しない任意の活性物質を含めることができる。
医薬組成物/組合せ物は、経口投与用に製剤化することができる。これらの組成物は、0.1~99重量%(wt%)の式IIIの化合物、および通常少なくとも約5wt%式Iの化合物を含む。いくつかの実施態様は、約25wt%~約50wt%または約5wt%~約75wt%の式Iの化合物を含有する。
処置方法
式Iの化合物、および該化合物を含む医薬組成物は、KRAS、特にKRAS変異体G12Cを介して媒介される、神経膠腫(神経膠芽腫)、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性ミエロイド白血病(acute myeloid leukemia)、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、肉腫、慢性骨髄単球性白血病、非ホジキンリンパ腫、星状細胞腫、黒色腫、非小細胞性肺癌、胆管細胞癌(cholangiocarcinomas)、軟骨肉腫、結腸癌または膵臓癌などの様々な癌を含む疾患、障害、または医学的状態の診断または処置に有用である。
本発明によれば、KRAS介在疾患または状態の方法は、そのような処置を必要とする患者に、治療有効量の式Iの化合物を提供することを含む。一実施態様において、患者は哺乳動物、より具体的にはヒトである。当業者には理解されるように、本発明はまた、伴侶動物、例えばネコ、イヌ、および家畜動物のような非ヒト患者を処置する方法を包含する。
医薬組成物の治療有効量は、好ましくは、疾患または状態の症状を軽減または改善するのに十分な量である。例えばKRAS介在疾患の場合、治療有効量は、癌を軽減または改善するのに十分な量である。治療有効量の本明細書に記載の化合物または医薬組成物はまた、患者に投与される場合、式Iの化合物の十分な濃度を提供する。十分な濃度とは、好ましくは、障害を予防またはそれに対抗するのに必要な患者の体内の化合物の濃度である。このような量は、例えば化合物の血中濃度を測定することによって実験的に、またはバイオアベイラビリティを計算することによって理論的に確認することができる。
本発明によれば、本明細書に開示されている処置方法は、式Iの化合物または化合物の特定の投与量を患者に提供することを含む。1日当たり体重1kg当たり約0.1mg~約140mgの各化合物の用量レベルが、上記で示した状態の処置に有用である(1日当たり患者1人当たり約0.5mg~約7g)。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わされ得る化合物の量は、処置される患者および特定の投与様式によって異なる。投与単位剤形は一般に、各活性化合物を約1mg~約500mg含有する。特定の実施態様において、25mg~500mg、または25mg~200mgの式Iの化合物が、患者に毎日投与される。投与頻度もまた、使用される化合物および処置される特定の疾患に応じて変化し得る。しかし、ほとんどのKRAS介在疾患および障害の処置には、1日4回またはそれ以下の投与レジメンを使用することができ、特定の実施態様において、1日1回または2回の投与レジメンが使用される。
しかし、特定の患者に対する特定の用量レベルは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および排泄速度、薬物の組み合わせ、ならびに治療中の特定の疾患の重症度を含む様々な要因に依存することが理解される。
式Iの化合物は、様々な癌のようなKRAS介在疾患および状態を処置または予防するために単独で(すなわち、レジームの唯一の治療薬)投与されてもよく、別の活性物質と組み合わせて投与されてもよい。式Iの一つまたはそれ以上の化合物は、抗癌細胞毒性物質などの一つまたはそれ以上の他の活性物質のレジームと協調して投与することができる。一実施態様において、哺乳動物においてKRAS介在癌を処置または診断する方法は、治療有効量の式Iの化合物を、任意に一つまたはそれ以上の追加の活性成分と組み合わせて、前記哺乳動物に投与することを含む。
当業者には理解されるように、本明細書で提供される処置方法は、ヒト以外の哺乳動物の処置にも有用であり、例えば、ウマおよび家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタなど、ならびにイヌおよびネコなどのペット(伴侶動物)を処置するような獣医学的用途にも有用である。
診断または研究用途の場合、齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、および近親交配のブタなどのブタを含む多種多様な哺乳動物が適当な対象である。さらに、インビトロ診断および研究用途のようなインビトロ用途には、上記対象の体液(例えば、血液、血漿、血清、細胞間質液、唾液、糞便および尿)ならびに細胞および組織試料が好適に使用される。
一実施態様において、本発明は、そのような処置が必要であると同定された患者において、様々な癌を含む、KRAS、特にKRAS変異体G12Cを介して媒介される疾患、障害、または医学的状態を処置する方法であって、有効量の式Iの化合物を患者に提供することを含む方法を提供する。本明細書で提供される式Iの化合物は、単独で、または一つまたはそれ以上の他の活性物質と組み合わせて投与され得る。
別の実施態様において、KRAS介在疾患または状態を処置または診断する方法は、式Iの化合物を一つまたはそれ以上の追加の化合物と組み合わせて投与することをさらに含み得、ここで、追加の化合物の少なくとも一つはこのような処置を必要とする患者への活性物質である。一つまたはそれ以上の追加の化合物は、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、カンプトテシン、テモゾロミド、アバスチン、ハーセプチン、アービタックスなどの抗癌治療化合物を含む、追加の治療化合物を含み得る。
化学合成
本発明の化合物の合成は、スキーム1~5に示す一連の工程によって例示する。スキーム1は、式I[ここで、GおよびYは水素であり、XはO、NR2またはSである(すなわち、10a~10c)]の例の合成を例示する。スキーム1において、アセトニトリルのような溶媒中、DIPEAのような塩基の存在下、市販の化合物3と4を反応させると、5が生成する。6a-6cを水素化ナトリウム、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)、K2CO3またはCs2CO3/DABCO混合物などの塩基と反応させ、次いでN-メチル-2-ピロリドンなどの極性非プロトン性溶媒中、RTまたは高温で5で処理すると、それぞれ化合物7a-7cが生成する。化合物9a-9cを調製するには、1,4-ジオキサンおよび水などの溶媒混合物中で、化合物7a-7cと8との間の標準的な鈴木カップリング手順を採用することができる。1,4-ジオキサン中の無水HClのような酸性条件下で9a-9cのBoc保護基を除去し、次いでトリエチルアミンのなどの塩基を含有する塩化メチレンのような溶媒中で、塩化アクリロイルのなどのα,β-不飽和酸クロリドで脱保護生成物をアシル化すると、式I[ここで、GおよびYは水素であり、XはO、NR2、またはSのいずれかである]の対応する化合物10a-10cが生成する。
同様に、スキーム2は、式I[式中、GおよびYは両方ともに水素であり、Xはメチレンである]の例の合成を示す(14)。アセチレン11を水素化ナトリウムなどの強塩基と反応させると、対応するアセチリドアニオンが生成し、次にこれを5と反応させることで12を得ることができる。あるいは、Pd(dppf)2Cl2などのPd触媒を用いて、11と5を薗頭カップリングさせると、化合物12を得ることできる。化合物13を調製するには、1,4-ジオキサンおよび水などの溶媒混合物中で、化合物12と8との間の標準的な鈴木カップリング手順を採用することができる。ジクロロメタン中、TFAのような酸性条件下で13を触媒水素化し、次いでBoc基を除去すると、対応するアミンが得られ、続いて、トリエチルアミンなどの塩基を含む塩化メチレンのような溶媒中で、塩化アクリロイルと反応させることで、式[GおよびYは両方ともに水素であり、Xがメチレンである]の化合物を生成することができる(14)。
スキーム3は、式I[式中、Gはフッ素であり、Yは水素であり、XはO、NR2またはSのいずれかである]の例(すなわち、15a~15c)の合成を示す。P. S. Fier (J. Am. Chem. Soc. 2017, 139(28), 9499-9736)に記載の一般的手順に従って、市販の3,5-ジブロモ-4-フルオロピリジンまたは3,5-ジクロロ-4-フルオロピリジン(16)のいずれかと、(1Z)-N-[(メチルスルホニル)オキシ]-エタニミドイルクロライド(17; CAS# 1228558-17-5)とを反応させることで、3,5-ジハロ-4-フルオロピコリノニトリル(18)を提供する。あるいは、化合物18は、トリフルオロ酢酸無水物の存在下、16をH2O2-尿素錯体で酸化し、次いでジクロロメタンのような溶媒中、ジメチルカルバモイルクロリドの存在下、対応するN-オキシドをトリメチルシリルシアニドで処理することによって調製することができる。WO2021117767A1に一般的に記載されているように、18とボロン酸8との位置選択的鈴木カップリングにより、生成物19を得る。続いて、1,4-ジオキサンなどの適切な溶媒中で加熱しながら、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)の存在下、WO2021041671A1に記載の手順に従って19を2,4-ジメトキシベンジルアミン(20)と反応させることで、化合物21を得る。あるいは、21は、標準的な条件下で、19と20の間のバックワルド・ハートウィグ(Buchwald-Hartwig)アミノ化手順によって調製することができる。HCl存在下、メタノール中で21のピナー反応を-78℃~0℃で行い、次いで飽和水性NaHCO3存在下で中間体イミノエステルを加水分解することで、化合物22を得る。22を0℃でトリクロロアセチルイソシアネートと反応させ、次いでメタノール中の無水アンモニアで処理し、室温まで加温することで、化合物23を得る。ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)の存在下、23をPOCl3と高温で反応させることで、対応する2,4-ジクロロ-8-フルオロピリド[3,2-d]ピリミジン誘導体24を得る。アセトニトリルなどの溶媒中、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)の存在下、化合物24と4を反応させることで25を得る。6a-6cを、フッ化カリウム、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)、K2CO3またはCs2CO3/DABCO混合物などの適当な塩基で、ニートの6a-6cまたは適当なアプロティック溶媒中で処理し、次いで高温で25と反応させることで、それぞれ化合物26a-26cを得る。あるいは、6aおよび25を、トルエン中、BINAPおよびCs2CO3の存在下で、高温でPd(OAc)2とカップリングさせることで26bを製造することもできる。1,4-ジオキサン中、無水HClのような酸性条件下で26a-26cのBoc保護基を除去する。対応する脱保護生成物を、トリエチルアミンなどの塩基を含有する塩化メチレンなどの非プロトン性溶媒中で、塩化アクリロイルなどのα,β-不飽和酸クロライドでアシル化することで、式I[式中、Gはフッ素であり、Yは水素であり、XはO、NR2またはSである]の化合物(すなわち、15a~15c)が生成する。
スキーム4は、式I[式中、GまたはYのいずれかはフッ素であり、Xはメチレンである]の例(27aおよび27b)の合成を例示する。Pd(dppf)2Cl2などのPd触媒を用いたアセチレン11と25aまたは25bとの薗頭カップリングにより、カップリング生成物28aおよび28bを得る。ジクロロメタン中、TFAなどの酸性条件下で、28aまたは28bを触媒水素化し、次いでBoc基を除去することで、対応するアミンを得て、続いて、トリエチルアミンなどの塩基を含有する塩化メチレンなどの溶媒中で、塩化アクリロイルと反応させることで、式I[式中、GまたはYのいずれかはフッ素であり、Xはメチレンである]の化合物(すなわち、それぞれ27aおよび27b)を生成することができる。
同様に、式Iの実施例29a~dの合成は、化合物16の代わりに3-ブロモ-5-クロロ-2-フルオロピリジンから出発して、スキーム3および4に描かれている反応に従って類似の様式で調製することができる。
スキーム5は、式I[式中、YまたはGはフッ素であり、XはO、NR2またはSである]の例(すなわち、15a~cおよび29a~c)の代替合成を例示する。トリフルオロ酢酸無水物存在下、0℃で、市販の7-ブロモピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4-ジオール(30)を、DMFなどの無プロトン溶媒中で尿素-過酸化水素錯体で酸化することで、N-オキシド31を得る。続いて、31をヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)の存在下でPOCl3と反応させることで、トリクロロ化合物32aと32bのほぼ1:1の混合物を生成する。アセトニトリルなどの溶媒中、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)の存在下、32a/32b混合物を4で処理することで、対応する生成物33aおよび33bを得て、これらはクロマトグラフィーで分離し得る。6a~6cを水素化ナトリウム、ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)、K2CO3またはCs2CO3/DABCO混合物などの塩基で処理し、次いで常温または高温でN-メチル-2-ピロリドンなどの極性非プロトン性溶媒中で、33aおよび33bと反応させることで、それぞれ化合物34aおよび34bを得る。高温で、34aおよび34bをDMSOなどの極性非プロトン性溶媒中、フッ化カリウムまたはフッ化セシウムなどのフッ化物源と反応させることで、対応するフッ素生成物35aおよび35bを得る。化合物36aおよび36bを調製するには、1,4-ジオキサンおよび水のような溶媒混合物中で、化合物35aおよび35bと8との間で標準的な鈴木カップリング手順を採用することができる。1,4-ジオキサン中、無水HClなどの酸性条件下で、36aおよび36bのBoc保護基を除去する。続いて、トリエチルアミンなどの塩基を含有する塩化メチレンなどの溶媒中で、塩化アクリロイルなどのα,β-不飽和酸クロライドで脱保護生成物をアシル化することで、式I[式中、YまたはGのいずれかはフッ素であり、XはO、NR2またはSのいずれかである]の対応する化合物15a~cおよび29a~cを得る。
同様に、化合物29dも、スキーム2および5に記載の方法を組み合わせることにより、33bから調製することができる。
略語および頭字語
本出願では、以下の略語および頭字語を使用することがある:
ACN=アセトニトリル;
anhyd.=無水;
aq.=水性;
B2pin2=ビス(ピナコラト)ジボロン;
Boc=tert-ブトキシカルボニル;
n-Bu3P=トリ-n-ブチルホスフィン;
Compd=化合物;
d=日(複数可);
DABCO=1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;
DCM=ジクロロメタン;
DIEA=DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン=ヒューニッヒ塩基(Hunig’s base);
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド;
DMSO=ジメチルスルホキシド;
DMA=N,N-ジメチルアセトアミド;
dppf=1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)
EtOAc=酢酸エチル;
equiv=当量;
Ex=例;
h=時間;
LiHMDS=リチウムビス(トリメチルシリル)アミド[LiN(SiMe3)2];
MeOH=メタノール;
NMP=N-メチル-2-ピロリドン;
min=分;
Pd(dppf)Cl2= [1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II);
PE=石油エーテル;
RT=室温;
satd.=飽和溶液;
TEA=トリエチルアミン;
TFA=トリフルオロ酢酸;
TFAA=トリフルオロ酢無水物;
THF=テトラヒドロフラン;
TMSCN=トリメチルシリルシアニド。
実施例
本発明の概念は、例示的な原理および実施態様の観点から説明されてきたが、当業者であれば、以下の実施例によって定義される本開示の範囲および精神から逸脱することなく、記載されているものに変形を加え、等価物を代用することができることを認識するであろう。
実施例1
2-((S)-1-アクリロイル-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(2j)
実施例1(2j)を以下のスキーム6に示すように調製した。
2,4,7-トリクロロピリド[3,2-d]ピリミジン(38)。窒素雰囲気下、120℃で、POCl3(20mL)中のピリド[3,2-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(37;CAS#37538-68-4;1.00g、6.13mmol)およびPCl5(7.66g、36.8mmol)の溶液を4h攪拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮し、粗残留物をDCM/MeOH(10:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで2,4,7-トリクロロピリド[3,2-d]ピリミジン(38;470mg、33%)を淡黄色の固体として得た:1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.02 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 2.2 Hz, 1H).
tert-ブチル (S)-2-(シアノメチル)-4-(2,7-ジクロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(40)。室温で1,4-ジオキサン(5mL)中の2,4,7-トリクロロピリド[3,2-d]ピリミジン(38;470mg、2.01mmol)およびtert-ブチル (S)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(39;CAS # 1589565-36-5;497mg、2.21mmol)の攪拌混合物にDIEA(777mg、6.02mmol)を添加した。得られた混合物を室温で2h攪拌し、次に、減圧下で濃縮した。粗残留物を石油エーテル/EtOAc(1:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することでtert-ブチル (S)-2-(シアノメチル)-4-(2,7-ジクロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(40;780mg、92%)を淡黄色の固体として得た:HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 423。
tert-ブチル (S)-4-(7-クロロ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(42)。1,4-ジオキサン(0.5mL)中のtert-ブチル (S)-2-(シアノメチル)-4-(2,7-ジクロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-カルボキシレート(40;350mg、0.827mmol)および(S)-(1-メチルピロリジン-2-イル)メタノール(41;CAS # 34381-71-0;105mg、0.910mmol)の攪拌混合物にK2CO3(343mg、2.48mmol)を滴下した。得られた混合物を90℃で16h攪拌し、得られた混合物を減圧下で濃縮した。粗残留物を石油エーテル/EtOAc(5:1)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することでtert-ブチル (S)-4-(7-クロロ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(42;310mg、75%)を淡黄色の固体として得た:HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 502。
tert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(44)。窒素雰囲気下、室温で、1,4-ジオキサン(2.0mL)中のtert-ブチル (S)-4-(7-クロロ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(42;310mg、0.618mmol)および2-(8-クロロナフタレン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(43;214mg、0.742mmol)の攪拌混合物に、Pd(PPh3)4(71.4mg、0.062mmol)およびK2CO3(171mg、1.24mmol)を添加した。得られた混合物を窒素雰囲気下、80℃で一晩攪拌し、減圧下で濃縮した。粗残留物を石油エーテル/EtOAc(10:1)を溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することでtert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(44;156mg、40%)を淡黄色の固体として得た。HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 628。
2-((S)-1-アクリロイル-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル ヒドロクロライド(1:3)(45)。tert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(44;156mg、0.248mmol)およびHCl(1,4-ジオキサン中4M、2 mL)の混合物を室温で2h攪拌し、減圧下で濃縮した。粗生成物をさらに精製することなく次の工程で直接使用した。HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 528。
2-((S)-1-アクリロイル-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(2j)。窒素雰囲気下、室温で、乾燥DCM(5.0mL)中の2-((S)-1-アクリロイル-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルヒドロクロライド(1:3)(45;102mg)およびEt3N(58.6mg、0.579mmol)の攪拌混合物にアクリロイルクロライド(19.2mg、0.212mmol)滴下した。得られた混合物を窒素雰囲気下、室温で2h攪拌し、次に、減圧下で濃縮した。粗残留物を、0.1%NH4HCO3を含有する水中の10~50%ACNの勾配で溶出するC18 シリカゲルカラム上で逆相フラッシュクロマトグラフィーにより精製することで、2-((S)-1-アクリロイル-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(2j;35mg、31%)を白色の固体として得た: HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 582; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.55 (dd, J = 5.3, 2.2 Hz, 1H), 8.18 (dd, J = 8.3, 1.3 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.87 (m, 1H), 7.73-7.65 (m, 2H), 7.61-7.53 (m, 2H), 7.01-6.81 (m, 1H), 6.41-4.81 (m, 5H), 4.62 - 4.10 (m, 3H), 3.78-3.46 (m, 2H), 3.25-3.12 (m, 1H), 2.96 (m, 3H), 2.58 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.18 (m, 1H), 2.03-1.89 (m, 1H), 1.76-1.56 (m, 3H).
実施例2
2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-1-(2-フルオロアクリロイル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(1a)。
実施例1(1a)は、以下のスキーム7に示すように調製した:
tert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-クロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(47)。無水1,4-ジオキサン(9.0mL)中の7-ブロモ-2,4-ジクロロピリド[3,2-d]ピリミジン(46;CAS# 1215074-41-1;1.00g、3.61mmolおよびtert-ブチル (2S)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(39;CAS # 1589565-36-5;0.90g、3.97mmol)を攪拌しながらRTでジイソプロピルエチルアミン(1.90mL、10.8mmol)をゆっくりと滴下して処理した。1h後、反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物をヘキサン中の5~50%EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで1.64g(98%)のtert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-クロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(47)を淡黄色の固体として得た:HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 467。
tert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(48)。無水1,4-ジオキサン(6.0mL)中のtert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-クロロピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(47;500mg、1.07mmol)および(S)-(1-メチルピロリジン-2-イル)メタノール(34;CAS # 34381-71-0;0.20mL、1.60mmol)の混合物を、K2CO3(443mg、3.21mmol)で処理し、反応混合物をN2雰囲気下、90℃で16h攪拌した。反応混合物をRTに冷却し、減圧下で濃縮し、粗生成物をDCM中の0~10%MeOHの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで370mg(63%)のtert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(48)を灰白色の固体として得た:HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 546。
tert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(49)。1,4-ジオキサン(7.0mL)および水(0.9mL)中のtert-ブチル (S)-4-(7-ブロモ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(48;450mg、0.825mmol)、2-(8-クロロナフタレン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(43;950mg、3.30mmol)およびK2CO3(494mg、3.30mmol)の混合物を20分間撹拌しながらN2を散布することによって脱気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(143mg、0.123mmol)を添加し、反応混合物を、さらに15分間攪拌しながらN2を散布することによって脱気した。反応混合物をN2雰囲気下、80℃で16h攪拌しながら加熱し、RTに冷却し、EtOAcで希釈し、次に、セライトで濾過した。濾液を飽和aq.NaCl(3X)、乾燥(MgSO4)で洗浄し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物をDCM中の0~15%MeOHの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで130mg(25%)のtert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(49)をベージュ色の固体として得た: HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 628; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 8.54 (dd, J = 3.2, 1.2 Hz, 1H), 7.97 (dd, J = 8.2, 1.1 Hz, 1H), 7.91 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 7.0, 1.2 Hz, 1H), 7.60-7.53 (m, 2H), 7.47-7.40 (m, 2H), 5.97 (br s, 1H), 5.35 (br s, 1H), 4.69 (br s, 1H), 4.55-4.47 (m, 1H), 4.35-4.25 (m, 1H), 4.15 (br s, 1H), 3.62 (br s, 1H), 3.26 (br s, 2H), 3.14-3.08 (m, 1H), 2.94-2.86 (m, 1H), 2.79-2.61 (m, 2H), 2.50 (s, 3H), 2.35-2.24 (m, 1H), 2.15-2.00 (m, 1H), 1.92-1.76 (m, 3H), 1.52 (s, 9H).
2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルヒドロクロライド(1:3)(50)。N2雰囲気下、RTで、1,4-ジオキサン(2.0mL)の中のtert-ブチル (S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-2-(シアノメチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(42;160mg、0.255mmol)および4M HClの混合物を攪拌した。1h後、反応混合物を減圧下で濃縮することで180mg(93%)の2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルヒドロクロライド(1:3)(50)をベージュ色の固体として得た: HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 528; 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ11.1 (br s, 1H), 10.3 (br s, 2H), 8.68 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.22 (dd, J = 7.2, 1.1 Hz, 1H), 8.14 (dd, J = 8.1, 1.2 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.77-7.67 (m, 2H), 7.65-7.53 (m, 2H), 4.91-4.74 (m, 2H), 4.23 (br s, 2H), 3.92-3.83 (m, 2H), 3.74-3.66 (m, 1H), 3.51-3.43 (m, 2H), 3.28 (br s, 4H), 3.18-3.05 (m, 1H), 2.96 (d, J = 4.7 Hz, 3H), 2.36-2.22 (m, 1H), 2.14-1.77 (m, 4H).
2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-1-(2-フルオロアクリロイル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(1a)。EtOAc(2.0mL)中の2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリルヒドロクロライド(1:3)(50;100mg、0.157mmol)、2-フルオロプロプ-2-エン酸(51;CAS # 430-99-9;28mg、0.314mmol)、および炉内乾燥させた4Åモレキュラー・シーブ(132mg)の混合物を、ジイソプロピルエチルアミン(0.22mL、1.26mmol)で処理し、反応混合物をRTで攪拌した。5分後、1-プロパンホスホン無水物溶液(T3P、0.33mL、0.471mmol、EtOAc中50%)を添加し、反応混合物をRTで攪拌した。20分後、反応混合物をEtOAcで希釈し、5% aq.NaHCO3(3X)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、DCM中の1% Et3N(v/v)を含有する10~100% EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、40mg(35%)の2-((S)-4-(7-(8-クロロナフタレン-1-イル)-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)ピリド[3,2-d]ピリミジン-4-イル)-1-(2-フルオロアクリロイル)ピペラジン-2-イル)アセトニトリル(1a)を灰白色の固体として得た: HPLC-MS (ES+) m/z MH+ = 600; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ8.57 (dd, J = 2.1, 1.3 Hz, 1H), 7.98 (dd, J = 8.2, 1.2 Hz, 1H), 7.93 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.90 (dd, J = 8.1, 1.2 Hz, 1H), 7.60-7.54 (m, 2H), 7.48-7.40 (m, 2H), 5.44 (d, J = 47.8 Hz, 1H), 5.26 (dd, J = 13.3, 3.6 Hz, 1H), 4.65-4.54 (m, 1H), 4.42-4.31 (m, 1H), 3.25-3.14 (m, 1H), 3.12-2.97 (m, 1H), 2.91-2.75 (m, 2H), 2.56 (s, 3H), 2.44-2.30 (m, 1H), 2.18-2.03 (m, 1H), 1.95-1.52 (m, 10H).
ヌクレオチド交換アッセイ
実施例の生物学的活性を、Reaction Biology Corporation (RBC), 1 Great Valley Parkway, Suite 2 Malvern, PA 19355, USAにより実施されたKRAS G12C/SOS1ヌクレオチド交換アッセイにおいて決定した。このアッセイは、KRAS G12Cで観察されるSOS1を介したBodipy-GDPからGTPへの交換を評価する。
化合物について、実施例およびMRTX-849(参照標準)においては10μM、ARS-1620(参照標準)においては5μMの開始濃度で、3倍連続希釈による10濃度IC50モードで試験した。化合物のプレインキュベーション時間はRTで30分とし、化合物の最高濃度での活性が65%未満となった時点でカーブフィット(curve fit)を行った。
反応緩衝液:40mM HEPES 7.4、10mM MgCl2、1mM DTT 0.002% トリトン X100、0.5 DMSO。
タンパク質:SOS1(RBC cat# MSC-11-502)。組み換えヒトSOS1(Genbank accession# NM_005633.3; aa 564-1049、C末端StrepIIで大腸菌で発現。MW=60.59kDa)。
KRAS G12C:組み換えヒトKRAS(Genbank accession# NM_033360.3、aa 2-169、大腸菌で発現、N末端TEV切断可能なhis-タグを持つ。MW21.4kDa)KRASを、5倍過剰のBodipy-GDPで前負荷する(pre-loaded)。過剰のBodipy-GDPをスピンデサルティングカラムを用いて負荷タンパク質から分離する。
最終濃度:KRAS-bodipy-GDPを0.125μMとし、SOS1を70nMとし、GTPを25μMとした。
反応手順:
1.新しく調製した反応緩衝液中の1.5xKRAS溶液10μLを反応ウェルに添加する。
2.音響技術(Echo550; ナノリットル範囲)を用いて、100% DMSO中の化合物を緩衝液に添加する。
3.化合物を室温で30分間インキュベートする。
4.反応緩衝液中で3x(SOS1+GTP)溶液を調製する。
5.SOS1+GTP溶液5μLを反応ウェルに添加する(SOS1無添加対照の場合はGTPのみをカラム1に添加する)。
6.PHERAstarプレートリーダー(BMG Labtech、Ex/Em=485/520)で蛍光シグナルの減少を測定し、リアルタイムで反応モニターを行う。
データ分析(共有結合性化合物の場合):各化合物濃度におけるdRFU値は、SOS1/GTP混合物を添加する直前に測定した初期蛍光から、30分間の反応終了時の蛍光(RFU)を差し引くことにより算出した。蛍光データは以下の式で正規化し、GraphPad prismソフトウェアを用いて「一相指数関数的減衰」式に当てはめた。プラトーは無拘束とし、dRFU値をIC50値の算出に用いた。
ここで、Yrawは時間tにおける蛍光と、AoはSOS1がない場合の平均初期蛍光と、MはSOS1が最大となる反応終了時の最小蛍光と定義される。
バックグラウンドを差し引いたシグナル(SOS1タンパク質ウェルはバックグラウンドとして使用しなかった)を、DMSO対照に対する活性%に変換させた。データは、GraphPad Prism 4を用いて、「シグモイド用量反応(可変勾配)」で分析した(坂の勾配を持つ4つのパラメータ)。制約は下(bottom)(定数は0に等しい)と上(top)(120未満でなければならない)とした。

雄性CD-1マウスにおける実施例2の薬物動態
実施例2(化合物1a)の雄性CD-1マウスにおける薬物動態プロフィールは、WuXi AppTec Co, Ltd., 1318 Wuzhong Avenue, Wuzhong District, Suzhou, China, 215104により測定した。以下の表および図1に示す結果では、実施例2が雄性CD-1マウスにおいて28.8%の経口バイオアベイラビリティを有することを明確に示している。

Claims (15)

  1. 式I:
    [式中、
    Aは、場合により一つまたはそれ以上の水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、-(C0-C6アルキル)シクロアルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、NO2、シアノ、CO2H、PO(OR3)2、POR3(OR3)、PO(R4)2、NH2、NH(C1-6アルキル)またはN(C1-6アルキル)2によって置換されていてよいアリールまたはヘテロアリールから選択され;
    Xは、O、NR2、SまたはCH2から選択され;
    Y、Gは、同じであってもよく異なっていてもよく、水素、ハロゲンまたはトリフルオロメチルから選択され;
    Zは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはC1-6アルキルから選択され;
    R1は、水素、C1-C6アルキル、-(C1-C6アルキル)C1-6アルコキシ、-C0-C6アルキル(シクロアルキル)、C1-C6ハロアルキル、-(C1-C6アルキル)CNまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
    nは、1~3であり;
    R2は、H、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたは-(C1-C6アルキル)P(O)R2R3から選択され;
    R3は、H、C1-6アルキルまたはC3-6シクロアルキルから選択され;
    R4は、C1-6アルキル、C3-6シクロアルキルまたはアリールから選択される]
    の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
  2. 式Iの化合物が、1a-1z、2a-2zおよび3a-3b:
    から選択される化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
  3. 請求項1~2のいずれか一項に記載の化合物またはその塩、溶媒和物ましくはプロドラッグを、薬学的に許容できる担体とともに含む医薬組成物。
  4. 患者において疾患、障害または医学的状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に治療薬を提供することを含み、該治療薬は、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを含む、方法。
  5. 患者における疾患、障害または医学的状態が、様々な癌を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 患者における疾患、障害または医学的状態が、KRASを介して媒介される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記疾患、障害または医学的状態が、KRAS、特にKRAS変異体G12Cを介して媒介される、請求項6に記載の方法。
  8. 癌が、神経膠腫(神経膠芽腫)、急性骨髄性白血病、急性ミエロイド白血病、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、肉腫、慢性骨髄単球性白血病、非ホジキンリンパ腫、星状細胞腫、黒色腫、非小細胞性肺癌、胆管細胞癌、軟骨肉腫、結腸癌または膵臓癌から選択される、請求項6に記載の方法。
  9. それを必要とする患者に、少なくとも一つの追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 式Iの化合物が、1a、1e、2jおよび2m:
    から選択される化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項2に記載の化合物。
  11. それを必要とする患者に、請求項11に記載の医薬組成物を提供する工程を含む、請求項4に記載の方法。
  12. 患者における前記疾患、障害または医学的状態が、様々な癌を含む、請求項4に記載の方法。
  13. 前記疾患、障害または医学的状態が、KRASを介して媒介される、請求項12に記載の方法。
  14. 前記疾患、障害または医学的状態が、KRAS変異体G12Cを介して媒介される、請求項13に記載の方法。
  15. 癌が、神経膠腫(神経膠芽腫)、急性骨髄性白血病、急性ミエロイド白血病、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、肉腫、慢性骨髄単球性白血病、非ホジキンリンパ腫、星状細胞腫、黒色腫、非小細胞性肺癌、胆管細胞癌(cholangiocarcinomas)、軟骨肉腫、結腸癌または膵臓癌から選択される、請求項13に記載の方法。
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