JP2024500001A - 生物学的試料を保存するための、キャピラリーを使ったガラス化方法および材料 - Google Patents

生物学的試料を保存するための、キャピラリーを使ったガラス化方法および材料 Download PDF

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Abstract

【課題】タンパク質や核酸を保存しながら、高速乾燥によって生物学的物質をガラス化するガラス化方法の改良を提供する。【解決手段】生物学的試料を保存する方法は、少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料を用意する過程と、前記生物学的試料を、ガラス化剤および溶解剤を含むガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する過程と、前記ガラス化混合物をガラス化して保存安定性を有する試料を生成する過程と、を備える。【選択図】図2

Description

関連出願
本願は、2020年2月28日に出願された米国仮出願第62/982,856号に由来し、かつ、その優先権を主張する。その内容全体は、参照をもって本明細書に取り込んだものとする。
本開示は、生物学的試料の保存に関し、特に、血液試料、唾液試料又は組織試料の保存又はその一部の保存のための生物学的物質のガラス化に関するものである。
ガラス化とは、液体からアモルファスのガラス状態に直接転移する過程のことであり、生物学的物質を急速な冷却速度で極低温まで冷却して行う保存によく利用される。極低温にすることで、ガラス化技術は、従来の凍結保存で形成されることが知られている氷晶による損傷効果を回避している。しかし、冷却中の氷核形成を避けるためには、毒性を示し得る極めて高濃度(6~8M)の凍結保護剤(CPA)が必要となる。最も一般的に使用されるCPAには、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、エチレングリコール(EG)、1,2-プロパンジオール(PROH)などがある。そのため、CPAを細胞に取り込ませたりCPAを細胞から取り出したりする際には、数多くの工程や複雑で精緻な手順が要求される。
常温での無水ガラス化は、生物学的物質を保存するための代替的戦略となり得る。自然界では、様々な生物が極度の脱水でも生存することができ、多くの場合、トレハロースやスクロースなどの大量(乾燥重量の20%にも及ぶ)のガラス形成糖類の細胞内空間での蓄積が関係している。しかし、乾燥保存による長期的保存は、細胞外空間のガラス化溶液が高濃度になることで生じる累積的な化学的ストレスによって生物学的物質が分解するという大きな制約がある。つまり、細胞やガラス化溶液がガラス状になる適度な低さの水分量に達する前に、タンパク質や核酸の損傷などの不可逆的な細胞損傷が生じることになる。したがって、タンパク質や核酸を保存しながら、高速乾燥によって生物学的物質をガラス化するガラス化方法の改良が望まれる。
以下の概要は、本明細書に記載の各種態様を理解し易くするためのものであって、完全な説明を意図したものではない。これらの各種態様は、明細書、特許請求の範囲、図面および要約の全てを総合的に捉えることで十分な理解に至るものである。
本明細書の各種態様では、生物の細胞、血液、唾液、組織又は同生物のその他の試料内由来の又は同生物学的試料内由来の、タンパク質(特に細胞内核酸)又はその他の生物学的物質を保存する方法が提供される。同方法は、核酸を含有する少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料を用意する過程と、前記生物学的試料を、ガラス化剤および溶解剤を含むガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する過程と、前記ガラス化混合物をガラス化する過程であって、これにより、保存安定性を有する試料を生成する過程と、を備える。各種態様において、前記保存安定性を有する試料は、室温や室温を超える温度などといった、極低温よりも高温の温度で保存することが可能であり、オプションとしては、20日以上保存することが可能である。
また、組織細胞を保存する方法であって、構造的サポートを提供するとともに、細胞を損傷するような物質を浸入させないことで、将来的に組織学的研究またはその他の組織研究を実施できるように細胞構造をより効果的に保存する方法も提供される。同方法は、標的生物学的組織を、高分子およびガラス化剤と接触させる、オプションとしては、当該標的生物学的組織を、同高分子と当該組織内の細胞の細胞外構造の少なくとも1つの成分とを繋ぎ合わせるのに適した架橋剤及び/又はエネルギーにも接触させる過程と、前記組織をガラス化させてガラス化組織試料を形成する過程と、を備え、オプションとしては、前記組織を(ガラス化の前または後に)少なくとも1つの組織薄片に切断する過程、も備える。任意で、同方法は、さらに、前記組織から前記高分子を放出させる放出剤及び/又はエネルギーを用いて前記ガラス化組織を再水和する過程であって、これにより、高度に保存された生存組織を分析に供することができるようにする過程、を備える。
図面は必ずしも縮尺通りではなく、特定の構成要素の細部を図示する目的で、一部の構造を誇張または縮小している場合がある。したがって、本明細書で開示している具体的な構造および機能の詳細は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、本発明の様々な利用方法を当業者に教えるための単なる代表例として解釈されるべきである。例示した態様は、詳細な説明および添付の図面を参酌することで理解が深まるであろう。
本明細書で図示説明する1つ以上の態様において採用され得るガラス化方法の一例を示す概略図である。 本明細書で図示説明する1つ以上の態様におけるガラス化方法の別の例を示す概略図であり、血球からなる生物学的試料と、メンブレン内のガラス化用ガラス化培地とが描かれている。 本明細書で図示説明する1つ以上の態様で生成された、保存安定性を有する試料から、RNAを抽出する方法の一例を示す概略図である。 所望の物質の単離を行う、オプションとしては、細菌またはその他の不要な生物などの混入物質からの分離も行うシステムの一例を示す図である。 従来の核酸保存技術を用いた比較例A~C、及び本明細書で図示説明する1つ以上の態様の核酸保存方法を用いた実施例1から抽出したRNAの分解度を示す電気泳動ゲルの画像である。 本明細書で図示説明する1つ以上の態様による実施例B、ならびに比較例DおよびEのGAPDHのサイクル閾値を示すグラフである。 本明細書で図示説明する1つ以上の態様による実施例B、ならびに比較例DおよびEのGAPDHのサイクル閾値倍率変化を示すグラフである。 本明細書で図示説明する1つ以上の態様による実施例B、ならびに比較例DおよびEのVEGF mRNAの倍率変化を示すグラフである。
本明細書に記載の各種態様では、ガラス化剤を含み、オプションとしては溶解剤も含むガラス化培地を用いた、細胞、組織、またはタンパク質(例えば、抗体もしくはその他のタンパク質物質)、核酸などの細胞物質の調製・保存の方法が提供される。各種態様では、核酸を含有する少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料をガラス化培地と接触させてガラス化することにより、保存安定性を有する試料が生成され得る。具体的に述べると、各種態様では、極低温よりも高温の温度、特には、室温以上の温度での核酸の保存や保存によって、生物学的物質を頑健に且つ高度に保存された状態で維持することができる。このような態様により、例えば、冷蔵や冷凍が不要となり、保存コストを大幅に下げることが可能になるだけでなく、核酸(例えば、DNA及び/又はRNA)の品質に悪影響を及ぼすことのない保存用試料調製を簡単に行うことが出来る。よって、将来、再構成した際に、高品質の組織、細胞、タンパク質、さらには、RNAやDNAなどの核酸が利用可能となる。
また、本明細書に記載の各種態様では、最小限の前処理で唾液、血液、組織、またはその他の生物学的試料を処理及び保存することが可能となり得る。保存した後の同試料は、多種多様な任意の目的に使用することが可能であり得る。例えば、腫瘍の組織試料を長期間保存し、後でRNAマッピング分析に用いるなど、適切な手順に従って処理することが可能である。別の例として、血漿を赤血球や白血球から分離させることなく全血試料を保存することができ、将来、保存試料の任意の少なくとも1つの成分を利用することが可能になる。
本明細書で使用される以下の用語または語句は、1つ以上の態様にて、以下に挙げる例示的な意味を有するものとする。
「アモルファス」または「ガラス」とは、原子位置のロング・レンジオーダが存在しない(オーダパラメータ:0.3以下の)非晶性物質のことを指す。液体からガラス質固体への変化は、ガラス転移温度Tで生じる。いくつかの態様において、前記ガラス化培地は、アモルファス物質であり得るかアモルファス物質を形成するものであり得る。他の態様において、前記生物学的物質は、アモルファス物質であり得る。
「ガラス転移温度」とは、その温度以上では液体のように振る舞っていた物質が、その温度以下では固相のように振る舞うようになる、アモルファス/ガラス状態となる温度のことを意味する。同温度は固定ではなく、使用する測定法のタイムスケールによって変化する。いくつかの態様において、ガラス状態とは、生物学的組成物がガラス転移温度未満に低下した際の状態のことを表し得る。他の態様において、ガラス状態とは、ガラス化混合物および/またはガラス化剤がガラス転移温度未満に低下した際の状態のことを表し得る。さらなる他の態様において、ガラス状態とは、結晶またはゲルの機械的剛性を有する一方で、分子同士のランダムで無秩序な配置形態によって液体的な特徴を備えている状態のことであり得る。
「結晶」とは、原子、イオン、または分子の三次元構造で、周期的に繰り返される特定の秩序をもった格子または単位胞とも称される幾何学的配置形態からなるものを意味する。
「結晶性」とは、ガラス状やアモルファスとは異なり、原子レベルの規則正しい構造で並べられた構成要素からなる物質形態のことを意味する。結晶性の固体は、結晶化温度
で固化する。
本明細書で用いる「ガラス化」とは、物質をアモルファス物質に変換する過程のことである。アモルファスの固体は、いかなる結晶性構造も持たないものであり得る。
本明細書で用いる「ガラス化混合物」とは、少なくとも1種の生物学的物質とガラス化培地との不均質混合物のことを意味し、同ガラス化培地は、少なくとも1種のガラス化剤を含み、オプションとしては溶解剤、オプションとしてはそれ以外の材料も含む。
本明細書で用いる「生物学的物質」や「生物学的試料」とは、少なくとも1つの生体から単離または誘導され得る物質のことを指す。生物学的物質の例としては、タンパク質、細胞、組織、臓器、細胞ベースの構築物、血液もしくはその分画、核酸、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、生物学的物質とは、哺乳類細胞のことを指し得る。他の態様において、生物学的物質とは、ヒト間葉系幹細胞、マウス繊維芽細胞、白血球、赤血球、血小板、細菌、ウイルス、哺乳動物細胞、リポソーム、酵素、組織(例えば、腸、肝臓、神経細胞など)、またはこれらの組み合わせのことを指し得る。他の態様において、生物学的物質とは、精子細胞、精母細胞、卵母細胞、卵子、胚、胚胞、これらの組み合わせなどといった、生殖細胞のことを指し得る。他の態様において、生物学的物質は、全血、赤血球、白血球、血小板、血液血漿、血液血清、藻類、菌類、またはこれらの組み合わせのことを指し得る。
本明細書で用いる「ガラス化剤」とは、自身とそれ以外の少なくとも1つの材料とからなる混合物が温度低下または乾燥した際にアモルファス構造の形成を生じさせたり自身以外の材料の結晶形成を抑制したりする物質のことである。また、ガラス化剤(複数可)は、浸透圧に対する保護を行ったり脱水中の細胞の生存を可能にしたりし得る。いくつかの態様において、ガラス化剤(複数可)は、生物学的物質の保存に適したアモルファス構造を構築する任意の水溶性溶液のことであり得る。他の態様では、ガラス化剤が、細胞、組織または臓器の中へ取り込まれ得る。
本明細書で用いる「保存可能」や「保存」や「保存安定性」とは、生物学的物質を将来利用することができるように同生物学的物資を生存状態のまま保存することが出来る能力のことを指す。
本明細書で用いる「極低温を超える」とは、-80℃を超える温度のことを指す。本明細書で用いる「室温」とは、18℃以上~37℃以下の温度範囲のことを指す。
本明細書で用いる「親水性」とは、水分子を優先的に引き寄せたり、水分子と優先的にアソシエイトしたりすることを意味する。親水性物質は、水に対して特別な親和性を有することで、水と最大限に接触するとともに水との接触角が小さくなる。
本明細書で用いる「疎水性」とは、水との親和性が低いことを意味する。疎水性を有する物質は、自然と水をはじくことで水滴を形成するとともに、水との接触角が小さい。
本明細書で用いる「常温」とは、約16℃以上~約30℃以下の温度のことを指す。
本明細書に記載の各種態様では、生物学的試料由来の生物学的物質を保存する方法が提供される。各種態様では、少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料をガラス化培地と接触させることにより、ガラス化混合物が形成される。後で詳述するように、前記ガラス化培地は、ガラス化剤および任意の溶解剤を少なくとも含む。前記ガラス化混合物がガラス化されることにより、将来的な使用時まで保存することのできる保存安定性を有する試料が生成される。当該保存安定性を有する試料は、将来、生物学的物質又は生物学的物質の一部を抽出または特性評価するために再水和及び処理されることになり得る。同物質又はその一部は、定量分析および/または定性分析および/または臨床分析に利用され得る。
各種態様において、前記ガラス化培地は、ガラス化剤および溶解剤を少なくとも含む。ガラス化剤の例としては、ジメチルスルホキシド、グリセロール、糖類(例えば、トレハロース等)、多価アルコール類、メチルアミン類、ベタイン類、不凍タンパク質、合成抗核剤(anti-nucleating agents)、ポリビニルアルコール、シクロヘキサントリオール類、シクロヘキサンジオール類、無機塩、有機塩、イオン液体、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。態様によっては、1種、2種、3種、4種、または5種以上のガラス化剤が前記ガラス化培地に含まれる。
前記ガラス化剤は、ガラス化剤が何であるかに応じた濃度で前記ガラス化培地に含まれる。いくつかの態様において、前記ガラス化剤の濃度は、ガラス化される生物学的試料に対して毒性を示す濃度未満とされる。本明細書で用いる「毒性」とは、将来的な試料使用時に機能が維持されていなかったり生存機能がなかったりすることや、将来の分析時に生物学的試料が不適格なものになっていることを意味する。各種態様において、前記ガラス化剤の濃度は、500マイクロモル(μM)以上~6モル(M)以下、あるいは、その間の任意の数値または範囲にある。各種態様における一例として、トレハロースは、1ミリモル(mM)以上~6M以下、オプションとしては150mM以上~6M以下の濃度で含まれる。いくつかの態様では、全てのガラス化剤を合わせた合計濃度が、1mM以上~6M以下、オプションとしては1mM以上~6M以下とされる。
オプションとして、本明細書に提示のガラス化培地は溶解剤(lysing agent)を含む。溶解剤は、細胞膜に対して(オプションとしては、細胞核にも)部分的に又は全体的に孔を開けたり、細胞膜を(オプションとしては、細胞核も)有孔質なものにしたりすることで細胞内への前記ガラス化剤の輸送及び細胞からの水分排出を促し、それによって迅速なガラス化を可能にする目的で、前記ガラス化培地に含まれる。一例として、前記溶解剤は洗浄剤であり得るが、これに限定されない。使用に適した洗浄剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、Triton X-100)、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)(CHAPS)、グアニジン塩酸塩、他種の同様の薬剤、およびこれらの組合せが挙げられる。その他の溶解剤も、ガラス化過程に干渉しないことや目的の生物学的物質に対して毒性を示さないことが前提になるが可能である。各種態様において、前記溶解剤は、0.01重量%(wt%)~5wt%以上の量で前記ガラス化培地中に存在する。溶解剤の具体的な量は、特定の態様に応じて、より具体的には、目標とする細胞膜透過量に応じて異なり得る。例えば、ある態様では、溶解剤で細胞を完全に溶解してもよいが、他の態様では、細胞膜を介した前記ガラス化剤の移動向上を促す目的で、溶解剤で当該細胞膜に対して突き刺すか又は孔をあける程度に留めるようにしてもよい。
いくつかの態様では、前記ガラス化培地が、さらに、例えば水、その他の溶媒、緩衝剤、少なくとも1種の塩、RNase阻害剤、DNAse阻害剤、これらの組み合わせ等の(但し、それらに限定されない)他の成分を含み得ると考えられる。緩衝剤は、25℃で6~8.5のpKaを有する任意の薬剤である。緩衝剤の例としては、特に、コリン、ベタイン、HEPES、TRIS、PIPES、MOPSなどが挙げられる。いくつかの態様において、緩衝剤は、コリン、ベタイン、HEPESなどの、大型の(120kDaよりも大きい)有機イオンを含有する緩衝剤である。緩衝剤を含む場合の態様では、当該緩衝剤が、前記ガラス化培地のpHを所望のレベルに安定化させるのに適した濃度で設けられる。
前記塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、塩化物塩、またはこれらの組合せ等が挙げられるが、それらに限定されない。同塩が前記ガラス化培地に含まれる場合、同塩は、1ミリモル(mM)以上~500mM以下の濃度で設けられ得る。例えば、前記塩は、1mM以上~500mM以下、1mM以上~400mM以下、1mM以上~300mM以下、1mM以上~250mM以下、1mM以上~200mM以下、1mM以上~150mM以下、1mM以上~100mM以下、1mM以上~75mM以下、1mM以上~50mM以下、1mM以上~25mM以下、25mM以上~500mM以下、25mM以上~400mM以下、25mM以上~300mM以下、25mM以上~250mM以下、25mM以上~200mM以下、25mM以上~150mM以下、25mM以上~100mM以下、25mM以上~75mM以下、25mM以上~50mM以下、50mM以上~500mM以下、50mM以上~400mM以下、50mM以上~300mM以下、50mM以上~250mM以下、50mM以上~200mM以下、50mM以上~150mM以下、50mM以上~100mM以下、50mM以上~75mM以下、またはこれらの任意の全範囲もしくはこれらに含まれる部分的範囲の濃度で存在し得る。
いくつかの態様において、RNase阻害剤および/またはDNase阻害剤は、核酸の分解を防ぐ目的で前記ガラス化培地に含まれ得る。ガラス化の邪魔にならないという前提で、当技術分野で使用されている既知のあらゆるRNase阻害剤および/またはDNase阻害剤を用いることが可能である。ただし、各種態様において、核酸を保存するのにRNase阻害剤および/またはDNase阻害剤が必要でない場合もあるということを理解されたい。
前記ガラス化培地を血液試料に対して使用する場合などのいくつかの態様では、前記ガラス化培地が、さらに、少なくとも1種の抗凝固剤を含み得る。あるいは、血液試料を1種以上の抗凝固剤に採取した後で、同試料をガラス化培地と接触させるようにしてもよい。適切な抗凝固剤としては、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニ重シュウ酸塩、ヘパリン、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、これらの組合せ等が挙げられる(但し、それらに限定されない)。抗凝固剤が含まれる場合、当該抗凝固剤が0.1mg/mL~5mg/mLの量で前記ガラス化培地中に存在するか、あるいは、同量の当該抗凝固剤が他の方法で使用される。態様における抗凝固剤の量は、具体的に当該抗凝固剤に何を選択するのかによって異なる。例えば、EDTAは血液1mLあたり1~2mgの量で含まれ得て、ヘパリンは血液1mLあたり0.2mgの量で含まれ得て、シュウ酸塩は血液1mLあたり1~2mgの量で含まれ得て、フッ化ナトリウムは血液1mLあたり2mgの量で含まれ得る。別の例として、クエン酸ナトリウムは、血液を9、クエン酸ナトリウムを1として1:9の割合で含まれてもよい。当業者であれば分かるであろうが、抗凝固剤の配合量は、血液試料の凝結を防ぐような量であれば、その他の量であってもよいと考えられる。
各種態様では、少なくとも1種の生物学的物質を含む生物学的試料を前記ガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する。各種態様では、前記ガラス化混合物が、ガラス化に先立ってインキュベートされる。例えば、前記ガラス化混合物は、5分以上~60分以下、5分以上~45分以下、5分以上~30分以下、または5分以上~20分以下にわたってインキュベートされ得る。インキュベーションは、任意の適切な温度で実施され得る。各種態様では、インキュベーションが、室温(すなわち、18℃以上~37℃以下、オプションとしては約25℃)で行われる。インキュベーションを経て、前記生物学的試料及び前記ガラス化培地を含む前記ガラス化混合物がガラス化されることにより、保存安定性を有するサンプルが生成される。ガラス化は、任意の既知のガラス化方法に準じて実施され得る。
ガラス化物質は、液体材料を急速に冷却したり、少量の生物学的物質を液体窒素に直接
浸漬したりすることによって調製されることが多い。冷却することで、熱力学的に安定した(thermodynamically favorable)結晶性状態へと圧縮可能となるよりも先に、素材分子の運動性が低下する。添加剤によって主成分の結晶化を妨げることで、アモルファス/ガラス化物質が生成され得る。適切なガラス形成剤を配合することで、極低温よりも高温であっても、ガラス化マトリクス内に生物学的物質を収めることが可能となる。これを脱水することによって、ガラス化が得られる。
一部の動物や数多くの植物は、完全な脱水でも生存することができる。乾燥状態でも生存するというこの能力[無水生活(anhydrobiosis)]は、細胞内の幾つかの複雑な生理化学的メカニズムや遺伝学的メカニズムによるものである。これらのメカニズムの中でも特に挙げられるのは、乾燥時に保護剤として作用する糖類(例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類等)の細胞内蓄積である。トレハロースは、乾燥耐性生物が自然に産生する二糖類の一例である。
トレハロースのような糖は、幾つかの様々な方法によって乾燥耐性生物を保護し得る。トレハロース分子は、当該トレハロース分子上におけるヒドロキシ基の特殊配置により、折り畳みタンパク質の立体配座形状(conformational geometry)やその折畳みを変化させることなく、同タンパク質の表面に水素結合している水分子と効果的に置き換わり得る。また、糖分子が脂質二重層のリン脂質頭部と結合することにより、再水和時の細胞質漏出を阻止し得る。さらに、多くの糖は高いガラス転移温度を有していることから、低含水量であっても、極低温よりも高温や室温でガラスを形成することが可能である。高粘性の「ガラス」状態は、分子の運動性を低下させることで、細胞機能の低下や細胞死、さらには、タンパク質や核酸の分解を招く分解性生化学的反応を阻止する。
いくつかの態様では、生物学的試料のガラス化が、N Chakraborty, et al., Biopreservation and Biobanking, 2010, 8 (2), 107-114に開示されているようなガラス形成糖トレハロース存在下での脱水からなる。図1を参照するが、システム10は、生物学的物質を脱水させる最も一般的なアプローチである。固着液滴(sessile droplet)11を基材12上に配し、低湿度環境13のエンクロージャ16内で蒸発乾燥させる。同エンクロージャ内の湿度、圧力および温度は、調整装置17で操作可能に調整することができる。しかしながら、蒸発乾燥によるシステム10の付着液滴の乾燥は、本質的に遅く且つ非一様な性質のものである。ガラス形成溶媒中で生物学的物質の乾燥を行った場合には、試料の液体/蒸気界面14にガラス状の膜(skin)が形成される。このガラス状の膜は、同試料が所定の乾燥度を超えて乾燥するのを遅らせる(最終的には、そのような乾燥を防ぐ)。すると、試料全体の含水量は、空間的に著しく非一様なものとなる。その結果、ガラス状の膜よりも中側にある部分的に乾燥した試料内に閉じ込められている細胞は、ガラス化せずに、分子運動性の高さから分解される可能性がある。
他の態様では、前記生物学的試料のガラス化が、米国特許第10,433,540号に開示されているような、ガラス形成糖トレハロース存在下のキャピラリーを使った乾燥による脱水からなる。図2に、このような方法を実行するための装置の一例を示す。
ガラス化のプロセスは、内部に1つまたは複数の毛細管(キャピラリー)チャネル(オプションとしては、連続した毛細管チャネル)を具備し得るメンブレン上または同メンブレン内でガラス化を実行することによって行われ得る。キャピラリーは、高速な蒸発が生じるインターフェイスとなり得る。メンブレンは、複数のキャピラリーチャネル(オプションとしては、隣接する複数のキャピラリーチャネル)で構成され得る。メンブレンのような多孔質材料からなるキャピラリーネットワークは、生体物質や生物学的試料に対して毒性や反応性を示さず、前記ガラス化培地とも化学的又は物理的に反応しない材料によって形成されたものとされ得る。メンブレンは、親水性であるか又は親水性を示すように修飾された材料からなるものとされてもよい。いくつかの態様において、メンブレンは、前記ガラス化混合物又は再溶解用溶液に対して部分的可溶性又は時間/刺激依存型の可溶性を示し得るものであり、オプションとしては、後述の支持構造によってそのような可溶性を示すものとされ得る。前記メンブレンの材料は、適切な高分子、金属、セラミック、ガラス、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様において、連続したキャピラリーネットワークは、特に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)などの材料によって形成される。本明細書で提示する装置や方法での、好適な表面部としてのメンブレンを具備したキャピラリーチャネルの例としては、EMD Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ)から販売されているような親水性ろ過膜が挙げられる。特定の態様において、前記多孔質材料は、生物学的試料及び/又はガラス化培地の成分と実質的に結合したり同成分を実質的に変化させたりしないか、あるいは、同成分と化学的または物理的に会合したりしないものとされる。任意で、前記多孔質材料は、誘導体化されていないものとされる。オプションとして、キャピラリーチャネルは、PDMS形成技術、レーザー穿孔、または当該技術分野で知られているその他の孔形成技術によって所望の素材および厚さの基材(例えば、乾燥空間の壁部)に形成され得る。
いくつかの態様において、多孔質材料によって提供される前記キャピラリーネットワークは、ガラス化を支援する内部キャピラリーとなる約100μm以下、オプションとしては20μm以下の断面寸法の孔を有する。オプションとして、組織のガラス化にキャピラリーネットワークが使用される場合には、約100μm以下の断面寸法などの大きめの孔径が用いられ得る。いくつかの態様において、(組織以外の)細胞試料を対象とする場合には、約20μm以下の断面寸法が用いられ得る。いくつかの態様において、前記孔は、平均開口が、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、約19μm、約18μm、約17μm、約16μm、約15μm、約14μm、約13μm、約12μm、約11μm、約10μm、約9μm、約8μm、約7μm、約6μm、約5μm、約4μm、約3μm、約2μm、約1.0μm、約0.9μm、約0.8μm、約0.7μm、約0.6μm、約0.5μm、約0.4μm、約0.3μm、約0.2μmなどのように、約100μm~約0.1μmのものであり得る。任意で、キャピラリーチャネルの長さは、流路を形成する基材の厚さで定まる長さ、あるいは、1つまたは複数の個々の流路で定まる長さであり得る。任意で、キャピラリーチャネルの長さは、約1ミリメートル以下とされる(但し、そのような寸法に限定されると解釈されるべきではない)。任意で、キャピラリーチャネルの長さは、約0.1ミクロン~約1000ミクロン、又はその間の任意の数値もしくは範囲とされる。任意で、キャピラリーチャネルの長さは、約5~約100ミクロン、オプションとしては約1~約200ミクロン及び/又はオプションとしては約1~約100ミクロンとされる。任意で、キャピラリーチャネルの長さは、約5ミクロン、約10ミクロン、約15ミクロン、約20ミクロン、約25ミクロン、約30ミクロン、約35ミクロン、約40ミクロン、約45ミクロン、約50ミクロン、約55ミクロン、約60ミクロン、約65ミクロン、約70ミクロン、約75ミクロン、約80ミクロン、約85ミクロン、約90ミクロン、約95ミクロンまたは約100ミクロンとされる。いくつかの態様において、前記キャピラリーチャネルの長さは、複数のキャピラリーチャネル間で変化し、オプションとしては非一様なばらつきで変化する。
1つまたは複数の前記キャピラリーチャネルの断面積は、約8000μm以下、オプションとしては2000μm以下とされ得る。任意で、断面積は、約0.01μm~約8000μm、オプションとしては約100μm~約2000μm、またはその間の任意の数値もしくは範囲とされる。オプションとしては、1つまたは複数の前記キャピラリーチャネルの断面積は、約100μm以下、約200μm以下、約300μm以下、約400μm以下、約500μm以下、約600μm以下、約700μm以下、約800μm以下、約900μm以下、約1000μm以下、約1100μm以下、約1200μm以下、約1300μm以下、約1400μm以下、約1500μm以下、約1600μm以下、約1700μm以下、約1800μm以下、約1900μm以下、約2000μm以下、約3000μm以下、約4000μm以下、約5000μm以下、約6000μm以下、約7000μm以下、または約8000μm以下とされる。
図2に示すように、キャピラリー支援ガラス化装置20は、エンクロージャ28内に配置されたキャピラリープレート/メンブレン22を備える。同図では、生物学的試料が同メンブレンの孔内に存在している様子が描かれている。オプションとして、いくつかの態様におけるキャピラリーメンブレンは、複数のろ過層に置き換えられてもよし、複数の明確なチャネルが形成されていない別のメンブレンに置き換えられてもよい。他の態様では、互いに積層されることで前記生物学的試料のガラス化に適したガラス化メンブレンを形成する複数のメンブレンが、当該メンブレン間に生物学的試料を挟み込むようにして又は当該複数のメンブレン内に生物学的試料を収めるようにして使用され得る。任意で、プレート/メンブレン22は、第1の開口部23及び第2の開口部25をそれぞれ含む複数のキャピラリーチャネル、オプションとしては略平行なキャピラリーチャネルを有する。第1の開口部23にガラス化混合物24を配すると、同ガラス化混合物24が前記キャピラリーチャネルを流通すると共に、第2の開口部25をとおして同ガラス化混合物24の表面が周囲雰囲気29に曝される。各種態様において、周囲雰囲気29は、前記ガラス化混合物の湿度よりも低い湿度を有する。毛細管現象によってガラス状態になるまで前記ガラス化混合物が乾燥することにより、ガラス化が達成される。エンクロージャ28内のケミストリー、湿度、圧力および温度は、1つまたは複数の制御機構21によって調整される。
調整機構21を簡略図示しているが、これは例示に過ぎず、乾燥やガラス化の最も望ましい条件を達成するための複数のシステムや機構からなり得る。オプションとして、いくつかの態様では、構成要素22と同様の2つのプレート/メンブレン間に、ガラス化混合物24がサンドイッチされる。これにより、ガラス化混合物24の上面及び下面の両方にて、キャピラリーを使った乾燥法の恩恵が得られる。
いくつかの態様では、低湿度ガス流(相対湿度:30%未満)が前記キャピラリープレート/メンブレンの第2の開口部25から、あるいは、ガラス化培地である前記メンブレンの反対側から供給されることにより、毛細管効果が高められる。低湿度ガスとしては、窒素、アルゴン、キセノンなどの不活性ガス又は比較的不活性なガスが使用され得る。いくつかの態様では、エンクロージャ28内が減圧又は真空に維持される。いくつかの態様では、乾燥速度を高速化するために、第2の開口部25から吸込力/吸込圧が供給される。乾燥実施後の再水和(rehydration)を防ぐには、周囲を低湿度(オプションとしては、相対湿度5%以下)に維持することが不可欠であるという点に留意されたい。キャピラリーを使った乾燥のさらなる詳細については、米国特許第10,433,540号を参照されたい。
前記ガラス化方法は、-80℃~+60℃の温度で実行され得る。場合にもよるが、この温度範囲は、前記試料中の水分子の運動性が高くなるものの生物学的物質の健全性や生存性には有害とならない温度の範囲である。これは、物質ごとで異なるし、前記ガラス化培地の組成によっても異なる。いくつかの態様において、ガラス化温度は、0.1℃~40℃である。オプションとして、前記ガラス化温度は、4℃~26℃である。オプションとして、前記ガラス化温度は、約25℃である。
前記ガラス化方法は、乾燥した雰囲気又は乾燥した環境下で実行され得る。乾燥した環境とは、飽和湿度未満の湿度レベルの環境のことである。いくつかの態様において、同環境(例えば、キャピラリーチューブ部分の第2の側の環境等)の湿度レベルは、相対湿度30%以下、オプションとしては20%以下、オプションとしては10%以下、オプションとしては5%以下とされる。オプションとして、乾燥した環境の湿度は、1%~30%、またはその間の任意の数値もしくは範囲、オプションとしては1%~5%とされる。
前記ガラス化方法は、低圧環境[1atm(760mmHg)未満]で実行され得る。低圧環境は、ガラス化速度に良好な影響がある。オプションとして、同環境の圧力は、100mmHgまたは0.1atmとされる。オプションとして、同環境の圧力は、10mmHg~760mmHg、またはその間の任意の数値もしくは範囲とされる。オプションとして、同環境の圧力は、10mmHg~200mmHgとされる。
前記ガラス化方法は、乾燥時間にわたって実行され得る。乾燥時間とは、前記ガラス化培地のガラス化にとって適切な乾燥を促すための十分な時間のことである。オプションとして、乾燥時間は、1秒~1時間とされる。オプションとして、乾燥時間は、1秒~50分、さらにオプションとしては5秒~60分とされる。乾燥時間は、試料の種類または物性、さらには、前記キャピラリーチャネルの詳細に応じて異なり得る。
さらなる他の態様では、ガラス化が、メンブレン上もしくはメンブレン間、または1つもしくは複数のフィルターペーパ上もしくはフィルターペーパ間で実施され得る。特定の態様に応じて、他のガラス化方法が用いられてもよい。
ガラス化後の試料は、保存安定性を有しており、生存したまま且つ実質未分解のまま極低温よりも高温で保存されて将来的に使用することが可能となっている。いくつかの態様において、ガラス化後の前記ガラス化混合物は、水・空気不透過性の保護エンクロージャ内にてガラス状態で封入保存され得る。いくつかの態様において、前記保存安定性を有する試料は、未使用のあいだ-196℃以上~+60℃以下もしくは+60℃以上、16℃以上~60℃以下もしくは60℃以上、または18℃以上~60℃以下もしくは60℃以上の温度で保存され得る。いくつかの態様において、保存期間は、1日以上、5日以上、10日以上、20日以上、30日以上、45日以上、60日以上、またはそれを超える日数以上である。
種々の態様において、前記保存安定性を有する試料を使用したい際に、同試料の使用対象に応じた特定の手順に従って、同試料が再水和(または再構成)[rehydrated (or reconstituted)]かつ処理される。いくつかの態様では、前記保存安定性を有する試料が再水和溶液によって再水和されて、同溶液によってタンパク質や1種以上の核酸が析出し得る。態様によっては、細胞物質を完全に溶解させる目的で抽出キット及び/又は精製キットに含まれ得るような溶解バッファーを用いて前記保存安定性を有する試料を処理することにより、当該保存安定性を有する試料の再構成が行われる。
前記試料は、様々なプロトコルで用いられ得るものである。しかし、いくつかの態様では、DNA及び/又はRNAなどの核酸を抽出する目的で前記試料が処理される。例えば、DNA及び/又はRNAは、使用する具体的な抽出方法にもよるが、再水和後にペレット処理及び/又は結合処理及び/又は洗浄処理及び/又は溶出処理及び/又は乾燥処理及び/又は溶液化処理を受け得る。
いくつかの態様において、RNAは、GITCベースの方法で抽出される。つまり、前記保存安定性を有する試料が再水和・相分離されて、その上澄みにプロパノールが添加される。この混合物を遠心分離することにより、RNAを含有するペレットが形成される。次に、このRNAペレットが洗浄処理、乾燥処理及び溶液化処理されることで、分析に利用される。
いくつかの態様において、RNAは、TRIspin法で抽出される。つまり、前記保存安定性を有する試料が再水和・相分離されて、その上澄みにエタノールが添加される。このRNAが結合処理、洗浄処理及び溶出処理されることで、分析に利用され得る。
いくつかの態様において、RNAは、カラムベースの方法を用いて抽出される。この態様では、前記保存安定性を有する試料が再水和されてから、エタノールの添加が行われる。このRNAが結合処理、洗浄処理及び溶出処理されることで、分析に利用され得る。
別の抽出方法も考えられる。つまり、いくつかの態様では、使用する具体的な抽出方法が何であるのかに関係なく、そのようなあらゆる抽出方法の典型的な第1段階である細胞溶解工程が前述のガラス化過程中に実施され得て、残りの工程については再水和後に実施され得る。以上のように、本明細書に記載の態様では、迅速なガラス化が可能であるほか、保存後に様々な任意の処理に使用することができる保存安定性を有する試料を提供することができる。
いくつかの態様では、ガラス化細胞からDNA又はRNAが抽出され得る。例えば、前記保存安定性を有する試料からDNA又はRNAを抽出するのに、市販されている数多くのDNA抽出キットもしくはRNA抽出キットまたは同様の方法のうちの任意のものを利用することができる。各種態様では、抽出キットで利用される溶解バッファー(lysis buffer)を用いて、前記試料の再構成が行われ得る。
また、本明細書に記載の各種態様では、全血又はその一部を極低温よりも高温で保存・
保管することが可能であり得る。例えば、全血及び/又は血清及び/又は血漿及び/又は赤血球及び/又は血小板及び/又はリンパ球をチューブ(オプションとしては、抗凝固剤付き)内又はメンブレン上に採取して前記ガラス化培地と接触させ、常温で5~20分間
インキュベートすることでガラス化が行われ得る。同試料は、使用時まで常温で保存することが可能である。DNA及び/又はRNA及び/又はタンパク質の抽出は、同試料をトリゾールで処理することで行われ得る。これにより、保存コストを下げることができるだけでなく、保存された血液試料を保存後に様々な任意の処理に利用することが可能となるので、試料の汎用性が向上する。例えば、前記保存安定性を有する試料の再水和処理が可能となって、溶解バッファーでの白血球-溶解物の抽出が可能となる。エタノールで当該溶解物がスピンカラムに移され得ると共に、洗浄バッファーで同溶解物が洗浄され得る。そして、トータルRNAがRNaseフリー水で溶出され得て、RNAの定量分析、定性分析および臨床分析が行われ得る。
いくつかの態様では、全血が採取・遠心分離され得て、かつ、その1つまたは複数の層[例えば、血漿層、バフィーコート(buffy coat)、赤血球層等]が前記ガラス化培地のマトリクスに移されてガラス化され得る。保存後の試料は、希釈剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤を含む又は含まないPBS液等)で再構成されて定性分析及び/又は定量分析に供され得る。
また、全血の形態の生物学的試料を使用する場合の各種態様を本明細書で説明したが、本明細書に一般的に記載しているように、その他の種類の生物学的試料が使用されてもよいことが分かるであろう。いくつかの態様において、前記生物学的試料は、組織の形態であり得る。そのようないくつかの態様では、組織が、溶解液を用いて均質化処理され得るか、粉砕処理され得るか、または酵素消化処理され得る。代替的な態様において、組織は凍結切断法(cryosection method)に供され得る。同切断法は、各種態様に応じたかたちで用いられ得る。
いくつかの態様において、生物学的試料は不均質である。不均質な試料とは、それ自体も核酸を有する少なくとも1つの混入(対象生物由来でない)生物を含有した試料のことである。そのような核酸は、前記生物学的試料と一緒に保存されてしまう場合があり、同試料の下流分析の結果を汚染する可能性がある。そのため、不所望の混入物質から所望の生物学的試料成分を選択的に単離するための追加の調製過程が求められる場合がある。本発明を限定するものでない一例として、生物学的試料は、唾液であり得る。唾液は、その唾液を産生している生物(host organism)と汚染物質としての細菌又はウイルスとの両方の細胞を含むことが知られている。
不均質な試料は、当該試料中の混入生物(オプションとしては、細菌、ウイルス、酵母等)を除去又はその量を減らすために前処理過程に供され得る。前処理過程は、ガラス化過程と一緒に行われてもよい。しかし、いくつかの態様では、前処理過程が、実際のガラス化に先立って行われる。前処理過程は、生物学的試料を、少なくとも1つの混入生物(オプションとしては、細菌及び/又はウイルス及び/又は酵母及び/又はその他の非対象生物)に対して選択的に作用する(selective)分子を含むか又は同分子と結合している分離培地(isolation medium)(オプションとしては、粒子状又は膜状のもの)に接触させることであり得る。いくつかの態様では、試料が、少なくとも1種の非対象生物に特異的な分離剤、オプションとしてはマンノース結合型レクチン(MBL)、オプションとしてはNCBI参照配列(配列:NP_000233)を有するマンノース結合型レクチンを含んだ分離培地の表面と接触させられる。MBLとは、細菌や酵母や一部の寄生虫やウイルスのN-アセチルグルコサミン残基やマンノースと結合するC型レクチンのことである。MBLを備えた表面に生物学的試料を接触させることにより、非対象生物が対象細胞から選択的に隔離され得る。これにより、前記方法に関して、生物学的試料中の対象細胞を選択的に単離するという機能の向上、オプションとしては、同細胞をガラス化するという機能についても向上が得られる。
図4を参照するが、いくつかの態様では、少なくとも1つの分離メンブレン32を用いて混入生物を除去するメンブレン系に試料が供される。図4には、分離剤を表面に結合してなる複数の粒子36が描かれている。同粒子は、ガラス化混合物及び/又は生物学的試料と共にインキュベートされ得る。同粒子は、少なくとも1種の分離剤を介して、オプションとしてはマンノース結合型レクチン(MBL)が結合した少なくとも1種の分離剤を介して、混入生物に選択的に結合する。分離メンブレン32上に、前記粒子を配合した前記試料が配される。分離メンブレン32は、生物的試料の通過は可能にするが前記粒子については表面上に残すような孔径を有している。
上記の構成に代えて又は上記の構成に加えて、分離メンブレン自体に、少なくとも1種の分離剤が結合している。これにより、当該分離メンブレンは、生物学的試料又はガラス化混合物と接触した際に、混入生物を分離メンブレンに結合させる一方で、生物学的試料中の所望の物質を透過させてガラス化メンブレンに接触させることで同生物学的試料のガラス化を行う。分離メンブレンは、当該分離メンブレン内又は当該分離メンブレン上の分離剤に結合しなかった細胞物質を透過させ得るような実質的に多孔質のメンブレン系であれば、どのようなものであってもよい。
分離培地は、適切な高分子[例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等]、金属、セラミック、ガラス、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様において、分離培地は、PVDF、セルロースエステル、ニトロセルロース、またはその他の所望の材料からなり得る。少なくとも1種の分離剤が、適切な分離培地に結合しているか又は何らかのかたちで関連付けられたものとされ得る。生物学的試料を同分離培地と接触させると、混入細胞/生物は同分離剤に選択的に結合し得る。これにより、対象の細胞が前記系を通過することとなり、本明細書で別途提示するような捕集又は収集、さらには、ガラス化が行われ得る。
分離メンブレン(オプションとして分離剤を具備している)は、生物学的試料のガラス化に適した本明細書で別途提示するガラス化メンブレンに積層されたものであってもよい。ガラス化メンブレンは、キャピラリーネットワークを具備するか又は形成しているものであれば、どのようなものであってもよい。オプションとして、そのような多孔質材料のメンブレンは、生体物質や生物学的試料に対して毒性や反応性を示さず前記ガラス化培地とも化学的又は物理的に反応しない材料によって形成されたものとされ得る。同材料は、適切な高分子、金属、セラミック、ガラス、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの態様において、連続したキャピラリーネットワークが、特に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)などの材料によって形成される。本明細書で提示する装置や方法での、好適な表面部としてのメンブレンを具備したキャピラリーチャネルの例としては、EMD Millipore社(米国マサチューセッツ州ビレリカ)から販売されているような親水性ろ過膜が挙げられる。特定の態様において、前記多孔質材料は、生物学的試料及び/又はガラス化培地の成分と実質的に結合したり同成分を実質的に変化させたりしないか、あるいは、同成分と化学的または物理的に会合しないものとされる。任意で、前記多孔質材料は、誘導体化されていないものとされる。任意で、キャピラリーチャネルは、PDMS形成技術、レーザー穿孔、または当該技術分野で知られているその他の孔形成技術によって所望の素材および厚さの基材(例えば、乾燥空間の壁部)に形成され得る。
分離剤を具備した分離メンブレンを生物学的試料が通過することで非対象生物の細胞物質が分離した又は除去された後のそれ以外の細胞物質は、メンブレン内又はメンブレン上で収集されてガラス化され、さらに、オプションとしては保存される。分離メンブレンは、ガラス化メンブレンの上に積層されたものであってもよい。生物学的試料と接触した後の前記分離メンブレンについては、取り外されて分析対象とされ得るか又は廃棄され得て、それ以外の生物学的試料については、本明細書に記載の方法によって前記ガラス化メンブレン上又は前記ガラス化メンブレン内でガラス化され得る。あるいは、前記分離メンブレンが前記ガラス化メンブレンに連結した状態のまま、同メンブレン系の全体を本明細書で提示するガラス化に供するようにしてもよい。その後、分離メンブレンについては、生物学的物質の再溶解を行う前に、ガラス化メンブレンから剥離又は取り外すようにしてもよい。上記の前処理過程の結果、非対象生物の細胞物質の大半が除去されることになるので、対象の生物学的試料物質の単離及び保存が向上する。
オプションとして、前記分離剤は、ビーズ又は粒子に結合したものとされ得る。いくつかの態様では、分離剤を結合してなるビーズが前記生物学的試料及びガラス化混合物と混合された後、同ガラス混合物が前記メンブレン系に注がれ得る。このような過程により、対象の混入病原体を捕捉するための前記ビーズと前記ガラス化混合物との十分な接触時間が得られることが分かるであろう。図4を参照するが、前記ガラス化混合物を前記メンブレン系に注ぐと、病原体を捕捉した状態の前記ビーズが前記ガラス化混合物から分離され、前記メンブレン系の上面に残ることになる。これを実現するには、前記メンブレン系の孔径を、前記ビーズの大きさよりも小さく、かつ、前記ガラス化メンブレンへと流通させなければならない細胞の大きさよりも大きくする必要がある。前記ビーズの大きさは、6ミクロン~500ミクロン、オプションとしては10ミクロン~500ミクロンとされ得る。前記ビーズは、ポリスチレンなどの高分子、または前記分離剤と結合するように機能化されたマグネタイト(Fe)などの鉄酸化物類からなるものとされ得る。
本明細書にも提示しているように、各種態様における生物学的試料は、生物の組織またはその他の部分であり得る。組織試料を非凍結性条件下で保存することは、典型的に困難である。組織試料を単にガラス化するだけでは、乾燥が非一様であったり組織構造が十分に維持されなかったりすることで、組織物質の安定性が不十分になってしまう。そこで、組織の分子物質を保存するだけでなく組織全体の構造やその他の性質も維持することで将来的な組織分析の有効性や実行性を劇的に向上させるような組織ガラス化方法が提供される。本明細書に提示の方法において生物学的試料に用いられ得る組織としては、神経細胞、肝臓、心臓、腎臓、血管、腎臓、肺、喉頭、胃、食道、膵臓、甲状腺、筋肉、上皮、毛、または生物学的組織として認知されているその他のあらゆる組織種由来の組織が挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書に提示のガラス化方法では、組織試料に対してガラス化剤(オプションとしては、糖)が導入され得るほか、当該組織試料が高分子又は高分子形成剤(例えば、PEGヒドロゲル)と接触させられ得る。例えば、同組織に対し、トレハロース-PEGヒドロゲル前駆体と、組織又はその一部を高分子と共有結合で結合させるか又はイオン結合で結合させるか又は会合させるのに適した付着剤(attachment agent)とが注入され得る。
高分子は、極低温よりも高温で組織を保存するのに適した高分子として用いられ得る高分子であれば、あるいは、そのような高分子の生成に用いられ得る分子であれば、どのような分子であってもよい。このような高分子としては:ポリオキシエチレンやポリオキシエチレン誘導体のようなポリアルキルアルコール類およびグリコール類;ネオフェニルグリコールジアクリレート(NPGDA);ポリエチレンオキシド(PEO);ポリアクリルアミド(PAAm);ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA);ポリアクリル酸(PAA);ポリビニルアルコール(PVA);ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM);ポリビニルピロリドン(PVP);ポリ乳酸(PLA);ポリグリコール酸(PGA);ポリカプロラクトン(PCL);ゼラチン;アルギネート;カラギーナン;キトサン;ヒドロキシアルキルセルロース;アルキルセルロース;シリコーン;ゴム;寒天;カルボキシビニル共重合体;ポリジオキソラン;ポリアクル酢酸;ポリ塩化ビニル;無水マレイン酸;スチレン-スチレン重合体類;デキストラン類;ヘパリンおよびヘパリンのポリマー;グルタミン酸のポリペプチド;アスパラギン酸塩;またはこれらの組み合わせ;が挙げられるが、それらに限定されない。
高分子は、オプションとして直鎖状、分岐状、ライアブル(liable)またはこれらの組み合わせである。オプションとして前記高分子は、ホモマー性(homomeric)またはヘテロマー性(heteromeric)である。高分子部位の例としては、少なくとも1種の炭水化物分子又はポリオキシエチレン(別称、ポリエチレングリコールまたは「PEG」)分子が挙げられる。
オプションとして高分子はポリエチレングリコールである。オプションとして、ポリエチレングリコールは、2~20000個のエチレングリコール単位を含む。オプションとしてエチレングリコール単位の数は、2~10000個、オプションとしては2~5000個、オプションとしては2~2000個である。各種態様において、ポリエチレングリコール(PEG)は、ポリエチレングリコール-ビニルスルホン(但し、これに限定されない)などのポリエチレングリコール誘導体である。前記PEGは、直鎖状または分枝鎖状のPEG分子であり得る。任意で、分岐鎖状PEGは、2個、4個、6個、8個又は他の個数のアーム部分を有するPEG分子であり得る。
いくつかの態様において、方法は、さらに、前記高分子形成剤と共に架橋剤を添加する過程を備える。架橋剤は、2つ以上のモノマー/ポリマーを繋ぎ合わせるのに適した薬剤であれば、どのようなものであってもよい。任意で、架橋剤は、1つ以上のアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を有する。架橋剤の例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、アクリル酸、メタクリル酸、アジピン酸ヒドラジドジアミドアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキル-(メタ)アクリルアミド、N-モノ(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-C1-C4アルキル-(メタ)アクリルアミド(N,N-ジ-C1-C4アルキル-(メタ)アクリルアミド)、N-ブチル(メタ)アクリレート、N-ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、キッズ、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド[N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド]、N-メチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、2-アクリルアミドグリコール酸、2-カルボキシエチル2-カルボキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-5-メトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシエチルセルロース、2-ヒドロキシエチルジスルフィドなど、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない
オプションとして、方法は、さらに、ガラス化混合物内に存在する少なくとも1種の付着剤(attachment agent)を含む。オプションとして、付着剤はボロン酸である。特定の理論によるものではないが、ボロン酸は、高分子を組織の細胞の膜タンパク質に共有結合させる可能性があると考えられている。これにより、組織の細胞間にヒドロゲルが形成されることで、ガラス化時や切断時に細胞や組織が収縮したり崩壊したりしないような支持が行われる。ヒドロゲルが形成されてから、組織のガラス化が行われ得る。そして、ガラス化した試料は、必要に応じて実質切断され得る。組織の切断後、グルコースと水の混合物を添加することでボロン酸を脱離させることが可能であり、前記ヒドロゲルを膜タンパク質から取り除くことができる。そして、ボロン酸とヒドロゲルを洗い流すことで、ガラス化方法で保存した本来の構造を有する組織試料が得られる。
このような態様により、試料の組織学的分析が可能となり得る。組織学的分析のための従来の組織処理では、組織試料の切断前の試料凍結やガラス化に先立って、低融点パラフィンやアガロースを組織に注入することが行われている。パラフィンは、細胞の構造を維持するのに必要な剛性を与えるものの、組織の汚染に繋がる。アガロースは、RNA抽出に影響があるほか、組織壁に付着する。そこで、トレハロース-PEGヒドロゲル(本明細書で提示する一例)を用いると、グルコース-水による洗浄過程でヒドロゲルを脱結合させて洗い流すことができるので、汚染を生じさせたり下流処理に悪影響を及ぼしたりすることなく細胞構造を支持しつつ組織のガラス化を可能にすることができる。当業者であれば、その他の利点についても明らかであろう。
オプションとして、ガラス化培地は、2種類の異なる刺激によって比較的高粘性状態と比較的低粘性状態とを切り替えることが可能な状態転換型支持材料(switchable support material)を含む。刺激を加える前の状態転換型材料は、流動性に優れた低粘性液体として振る舞うことから、本明細書に提示の方法を用いた組織マトリックスへのin situ灌流(in situ perfusion)に利用することができる。第一の刺激が加えられると、前記材料は低粘性液体(ゾル状態)から降伏応力流体(ゲル状態)に切り替わり、ガラス化時に組織及び/又は膜の構造形状を実質維持するための十分な剛性や支持を提供するようになる。第二の刺激が加えられると、前記支持材料は剛性材料から低粘性液体に戻ることから、容易に除去できるようになる。
いくつかの態様では、様々な波長の光が刺激として用いられ得る。オプションとして、
紫外線(UV)や可視光が、転換刺激として用いられる。いくつかの態様において、光転換型ヒドロゲル支持材料は、可視光下で剛性を示すが、UV光下では完全に脱会合して溶液状態になることが可能である。光転換型材料の例としては、アゾベンゼン(azo)とシクロデキストリン(CD)とのホストゲスト錯体(host-guest complexes)で構成される超分子ヒドロゲル、オプションとしてはVapaavuori, et al., J. Mat. Chem. C., 2018; 6:2168-2188 or Rosales, et al., Bioconjugate Chem., 2018; 29: 905-913に記載のものが挙げられる。シクロデキストリンには、キャビティサイズが異なるα-CD、β-CDおよびγ-CDの主な3種類が存在し、それぞれ6個、7個、8個リンクしたグルコピラノースサブユニットを有するコーン構造を形成しており、当該コーンの外側に位置したヒドロキシル基によって親水性を呈している。しかし、当該コーンの内側は疎水性であるため、水溶液中でアゾベンゼン(azo)などの疎水性分子を受け入れてホストゲスト錯体を形成することが可能である。アゾベンゼンは、光応答性分子としてよく知られている。可視光(<520nm)下では、熱力学的に安定なトランス状態になる。UV(<375nm)を照射すると、シス異性体に光異性化する。トランス-azoは、水溶液中での疎水性相互作用によってCDのキャビティに入り込んでホストゲスト錯体を形成することが可能な形状を有している。光異性化してシス-azoになると、その形状はCDの前記コーンに収まらなくなるので、錯体が脱会合する。この光可逆的なazo-CD錯体を架橋剤として利用することにより、可視光下でゲル化しUV光下で容易に脱会合して液体(ゾル)になる光転換型ヒドロゲルを調製することができる。このゾル-ゲルの転換は可逆的であり、2分以内に完了することができる。状態転換型支持材料を形成するためのその他の方法や素材については、Koopmans and Ritter, Macromolcules, 2008; 41:7418-7422を参照されたい。
オプションとして、本明細書に提示の方法は、さらに、ガラス化培地内に状態転換型支持材料を含むと共に、刺激を加えて当該状態転換型支持材料を粘性状態に変換する過程を備え、オプションとしては、当該過程の後に、さらに、前記ガラス化培地を本明細書で提示の真空ガラス化方法(vacuum vitrification process)に供することで前記生物学的試料の他の物理的特性及び/又は化学的特性を維持するための十分な支持を行いながら組織又はその他の細胞物質をガラス化状態で保存する過程、を備える。
以下の実施例は、各種態様の説明目的で提示しているが、特許請求の範囲を限定するものではない。下記の様々な実施例、比較例、および実施例と比較例で使用する材料の特性、性質、パラメータなどは、近似的なものである。
(実施例1)
細胞培養:LINTERNA Jurkat T細胞(G418耐性遺伝子でtGFPを安定発現)は、Innoprot社(スペイン)から入手した。細胞は、RPMI 1640(Gibco社)、10%熱不活性化牛胎児血清(Hyclone社)、1X Glutamax(Gibco社)およびG418(Gibco社)において、37℃および5%COで培養された。培養は、25cmT-flasks(Corning Incorporated社(米国ニューヨーク))で37℃、10%CO-90%空気で平衡化された状態で維持された。細胞を維持するために、3日ごとに新鮮な培養培地に交換した。
実施例Aでは、5×10個のJurkat T細胞の試料を、600mMトレハロース、5%グリセロールおよび0.01%Triton X-100を含む250μLガラス化培地で10-15分間インキュベートした。次に、試料を孔径1.2マイクロメートルの2枚のPESメンブレン足場(scaffolds)に挟み、水分残存率(MRR)が0.01になるように-29mmHgの真空中で約6分間にわたってガラス化させた。その後、同試料を25℃または55℃で3日間保存してから、RNA抽出を行った。
PureLink RNA Mini Kit(Invitrogen社)を用いてRNAを抽出した。ガラス化細胞を1%の2-メルカプトエタノールを含む溶解バッファー0.6mLで再水和し、室温で15分間インキュベートした。溶解物を21ゲージ注射針に10回通すことにより、均質な溶解物を得た。同溶解物に対し、等量の70%エトナール(ethonal)を添加した。そして、溶解物/上澄みを遠心分離(12,000×g;15秒;室温)で抽出し、遠心分離(12,000×g;15秒;室温)によってRNA結合スピンカラムを通した。次に、カラム(PureLink DNase Set;Invitrogen社)上でのDNase消化によってDNA混入物を取り除いた後、エタノールを含む700μLWash Buffer-Iと500μLWash Buffer-IIの2段階洗浄(遠心分離:12,000×g;15秒)で同混入物と阻害剤を除去した。結合RNAを含むスピンカラムを2分間乾燥させ、同スピンカラムに50μLRNaseフリー水を投入して2分間インキュベートを行った。新しいチューブで遠心分離(12,000×g;室温)を行うことにより、純粋なRNAを溶出させた。
対照として、同数の新鮮な細胞からなる試料から、先ほどのガラス化細胞と同じ手法でRNAを抽出した(比較例A)。
比較例Bでは、同数の細胞を含む試料を極低温凍結し、-80℃で2時間保存した。細胞を解凍し、実施例Aと同じRNA抽出方法でRNAを抽出した。
比較例Cでは、5X10個のJurkat T細胞を、600mMトレハロースおよび5%グリセロールを含む250μLガラス化培地で10~15分間インキュベートした。ただし、同ガラス化培地には、Triton X-100が含まれていない。同試料を、MRRが0.01になるように約6分間にわたってガラス化させた。その後、同試料を室温で3日間保存した。そして、細胞を溶解バッファーで再水和し、先ほどのガラス化細胞と同じ手法でRNAの抽出を行った。
比較例Cのガラス化手順には、実施例Aと同じガラス化手順を用いた。細胞を25℃および55℃のいずれかで3日間保存してから、RNA抽出を行った。
全ての試料について、1ウェルにつき5μgのRNAを1.2%アガロースゲル(Native Sybrsafe社)に取り付けて、電気泳動で分離させた。図5に、同ゲルの画像を示す。変性ゲル上のトータルRNAが無傷であれば、28SrRNAと18SrRNAの鮮明なバンドが得られるはずである(真核生物試料)。28SrRNAのバンドは、18SrRNAのバンドの約2倍の強度であるのが望ましい。この2:1(28S:18S)の比は、RNAが無傷であることを表す良い指標である。比較例A(レーン1)や比較例C(レーン3)に見受けられるように、一部が分解した状態のRNAは、スメア状の外観(smeared appearance)を呈したり、rRNAバンドが鮮明でなかったり、先ほどの2:1の比を示さなかったりする。完全に分解した状態のRNAは、超低分子量スメアの外観を呈する(比較例B;レーン2)。図5Aに見受けられるように、本明細書に記載の各種態様に従ってガラス化・保存(55℃で1週間保存)した実施例A(レーン4)は、鮮明な28SrRNAのバンドと18SrRNAのバンドを良好な強度比で有していることから、ガラス化及び室温保存を経てもRNAが無傷であることを示唆している。
RNA定量によっても同様の結果が得られる。表1に、前述のようにして各試料について調製したRNAの、分光光度計で得られた定量結果を示す。
Figure 2024500001000002
溶解剤Triton-X100の存在下でガラス化を行った場合、溶解剤の不在下でガラス化した細胞と比べて無傷のRNAが明らかに増加することが立証された。比較例Bは、ほぼ完全に分解していた。ガラス化培地に溶解剤を含めることで、3日間のあいだ25℃で保存するのか、それともより高温の55℃で保存するのかにかかわらずRNA品質の向上が確認されたことから、本明細書に記載のように調製した細胞試料に、堅固な保存能力があることが分かる。
(実施例2)
LINTERNA Jurkat T細胞を入手し、実施例1と同じように培養した。
5X10個のJurkat T細胞の試料を、600mMトレハロース、5%グリセロールおよび0.01%Triton X-100を含む250μLガラス化培地で10-15分間インキュベートした。その後、同試料を約6分間にわたってガラス化し、MRRが0.01になるようにした。そして、同試料を25℃および55℃のいずれかで3日間保存してから、RNA抽出を行った。RNAの抽出は、実施例1と同じように行った。
比較対象として、4℃で保存した新鮮な細胞からなる試料に対し、先ほどのガラス化細胞と同様のRNA抽出と分析を実施した。
各試料から抽出したRNAを、VEGF(PDGF/VEGF成長因子ファミリーのメンバー)又はGAPDHのRNAテンプレートを用いてRT-PCRに供した。図6Aに、各調製・保存技術による細胞のGADPH mRNAのサイクル閾値(Ct値)を示す。図6Bに、各調製・保存技術による細胞のGADPH mRNAのCt値の倍率変化値を示す。図6Cに、各調製・保存技術による細胞のVEGF mRNAの倍率変化を示す。図6A及び図6Bに示すように、GAPDH遺伝子については、25℃、55℃のいずれの保存温度であっても、新鮮な細胞のCt値とガラス化細胞のCt値との間に大きな変化はなかった。また、剛健なVEGF mRNAが観察された(図6C)。したがって、本明細書に記載のガラス化方法は、VEGF mRNAを分解させることなく、細胞をガラス化・保存するのに利用可能であるとの結論に至った。
(実施例3)
各種動物組織を入手し、ガラス化に供した。マウスの腸と肝臓の試料を、承認済み動物プロトコルで人道的に収集した。組織を小切片(厚さ:約1mm、重量:15mg)に切断し、600mMトレハロース、5wt%グリセロールおよび0.5wt%Triton X-100を含むガラス化培地で20分間インキュベートした。同試料を、実施例1と同じくMRRが0.01になるように5分間にわたってガラス化し、25℃および55℃のいずれかで1週間保存した。
第2の試料群を、先ほどと同じガラス化培地にトレハロースポリマーをさらに含ませたものでガラス化する。同トレハロースポリマーは、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(5.28mg、3.22x10-2mmol)およびスチレニルエーテルトレハロースモノマー(634mg、1.38 mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(2.31mL)とHO(4.61mL)との混合液に溶解することによって合成する。凍結-吸引-解凍の3サイクルによって酸素を除去し、75℃で重合を行う。同重合は、8.5時間後にバイアルを液体窒素に浸して停止させる。
第3の試料群を、600mMトレハロース、5wt%グリセロールおよび0.5wt% Triton X-100を含み、ボロン酸に結合した8アーム・ポリエチレングリコールを含むガラス化媒体でガラス化される。このポリマーは、8アーム PEGアミン(400mg、10kDa、4×10-2mmol)および4-ホルミルフェニルボロン酸(96mg、6.40×10-1mmol)を2.8mL MeOHに溶解することによって合成する。そして、NaBH3CN(37.7 mg、6.00×10-1mmol)を投入し、25℃で攪拌する。残りのガラス化および保存のプロトコルについては変えない。
保存後、組織試料を溶解バッファーで再構成し、実施例1と同じようにmRNAを単離する。RNAは、Synergy H1 Hybrid MF(BioTek Instrument社)のTake3 Plateを用いた分光分析によって定量分析する。簡単に説明すると、1ウェルあたり2μLの各試料をTake3に加え、超純RNaseフリー水をブランクとして使用した。Gen5ソフトウェアを用いたA260の読取値に基づき、トータルRNA濃度を算出した(1.0は40μg/mL未満のssRNAに相当)。A260/A280比を、RNAの品質尺度に用いる(A260/A280比:1.8~2.1+は高純度RNAを示唆する)。表2に、無傷のmRNAの収量が豊富であることを裏付ける結果を示す。
Figure 2024500001000003
ボロン酸に結合したポリエチレングリコールで培養した試料や、トレハロースポリマーで培養した試料を用いることにより、より確実な結果が期待される。
(実施例4)
非無菌環境由来の生物学的試料を保存する場合、非対象生物由来の物質が混入する可能性は常にある。対策として、生物試料の選択的分離を行って、不所望の細菌混入を排除するための手順を作成した。
マンノース結合型タンパク質(MBL)を結合させた8μmニトロセルロース膜と上市形態のままの8μmニトロセルロース膜のいずれか片方のみの2層をPES膜の上部に組み付けて3層系とし、これを用いて実施例1と同じようにガラス化を行った。
細菌の核酸よりも所望の核酸を選択的に単離する能力をテストするために、前記組み付け系について実施するために、各種細菌株の3種類の試料を構築した。
試験に用いたのは、E. coli(大腸菌)、Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)およびPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)であった。各細菌を、培地で10コロニー形成単位(CFU)に希釈した。100μL菌体物質を、10の各細菌を含むペレットに加えた。そして、菌体ペレットを再懸濁させた。次に、再懸濁液を、前記組み付け3層膜系のニトロセルロース膜表面に加え、室温で30分間培養した。その後、3枚の膜を別々にし、PBSで洗浄した。次に、洗浄液を細胞計数に供し、寒天プレートにプレーティングした後、37℃で2日間培養した。表3に、E. coliについて3回ずつ行った2回の実験の平均値としての結果を示す。
Figure 2024500001000004
表4に、S. epidermidisについて3回ずつ行った2回の実験の平均値としての結果を示す。
Figure 2024500001000005
以上の結果から、MBL結合フ 「ィルターが試料中の細菌を選択的かつ確実に結合することが分かり、同系によってmRNAを含む試料から混入細菌を選択的に除去できることが裏付けられる。
また、PES膜の細胞数についても分析を行った。PES膜をPBSで洗浄し、細胞を細胞計数にかけた。表5に、3回ずつ行った2回の実験の平均値としての結果を示す。
Figure 2024500001000006
いずれの場合においても、PES膜は本来の細胞量の84%を上回る回収率を示し、Jurkat細胞の量はニトロセルロース層にMBLが設けられているか否かとは無関係であった。以上の結果は、細菌細胞に対して選択性を示すと共に生物細胞の選択的保存に利用することのできる頑健なフィルター系を実証している。
[応用例]
(応用例1)
生物学的試料を保存する方法であって、
少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料を用意する過程と、
前記生物学的試料を、ガラス化剤および溶解剤を含むガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する過程と、
前記ガラス化混合物をガラス化する過程であって、これにより、保存安定性を有する試料を生成する過程と、を備える、方法。
(応用例2)
応用例1に記載の方法において、さらに、
前記保存安定性を有する試料を、16℃以上~30℃以下(オプションとしては、30℃超(オプションとしては、50℃超))の温度で保存する過程、を備える、方法。
(応用例3)
応用例1または2に記載の方法において、前記生物学的試料が、核酸(オプションとしては、RNA)を含む、方法。
(応用例4)
応用例1から3のいずれか一例に記載の方法において、前記生物学的試料が、全血、血漿、または血清を含む、方法。
(応用例5)
応用例4に記載の方法において、前記生物学的試料が、全血、血清、または血漿を含み、前記ガラス化混合物が、さらに、抗凝固剤を含む、方法。
(応用例6)
応用例1から5のいずれか一例に記載の方法において、前記ガラス化混合物が、さらに、緩衝剤を含む、方法。
(応用例7)
応用例1から6のいずれか一例に記載の方法において、前記ガラス化剤が、ジメチルスルホキシド、グリセロール、糖類、多価アルコール類、メチルアミン類、ベタイン類、不凍タンパク質、成核防止剤、ポリビニルアルコール、シクロヘキサントリオール類、シクロヘキサンジオール類、無機塩、有機塩、イオン液体、またはこれらの組み合わせを含む、 方法。
(応用例8)
応用例7に記載の方法において、前記ガラス化剤が、トレハロースを含む、方法。
(応用例9)
応用例1から8のいずれか一例に記載の方法において、前記溶解剤が、洗浄剤からなる、方法。
(応用例10)
応用例9に記載の方法において、前記洗浄剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、Triton X-100)、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸)(CHAPS)、塩酸グアニジン、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
(応用例11)
応用例1から10のいずれか一例に記載の方法において、さらに、
前記保存安定性を有する試料を、水・空気不透過性の保護エンクロージャに封入する過程と、
前記保護エンクロージャを-196℃~+60℃の温度で20日以上の保存期間のあいだ保存する過程と、
を備える、方法。
(応用例12)
応用例1から11のいずれか一例に記載の方法において、前記ガラス化混合物をガラス化する過程が、当該ガラス化混合物がガラス状態になるまで当該ガラス化混合物を極低温よりも高温で乾燥させることを含む、方法。
(応用例13)
応用例12に記載の方法において、前記ガラス化培地が、1つまたは複数のキャピラリーチャネル内にある、方法。
(応用例14)
応用例1から13のいずれか一例に記載の方法において、前記ガラス化する過程は、1秒~1時間(オプションとしては、10分以内)の乾燥時間にわたって実行される、方法。
(応用例15)
応用例1から14のいずれか一例に記載の方法において、さらに、
ガラス化に先立って前記ガラス化混合物を5分以上~30分以下のあいだ培養する過程、を備える、方法。
(応用例16)
応用例15に記載の方法において、前記培養が、18℃以上~37℃以下の温度で行われる、方法。
(応用例17)
応用例1から16のいずれか一例に記載の方法において、前記生物学的試料が、少なくとも1種の分離剤を含む分離培地と接触させられることによって前処理される、方法。
(応用例18)
応用例17に記載の方法において、前記分離剤が、マンノース結合型レクチンである、方法。
(応用例19)
応用例17に記載の方法において、前記分離培地が、ニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオライドからなる、方法。
(応用例20)
応用例1から19のいずれか一例に記載の方法において、前記生物学的試料が、組織を含み、前記ガラス化混合物が、さらに、支持材料(オプションとして、支持材料はポリマー支持材料を備える)を含む、方法。
(応用例21)
応用例20に記載の方法において、前記ポリマーが、ヒドロゲルの形成に適したものである、方法。
(応用例22)
応用例20に記載の方法において、前記ポリマーが、ポリエチレングリコールである、方法。
(応用例23)
応用例20から22のいずれか一例に記載の方法において、前記ガラス化培地が、さらに、少なくとも1種の付着剤を含む、方法。
(応用例24)
応用例23に記載の方法において、前記付着剤が、ボロン酸である、方法。
(応用例25)
応用例20から24のいずれか一例に記載の方法において、前記支持材料が、状態転換型支持材料(switchable support material)であり、当該方法は、さらに、
前記ガラス化混合物に刺激を与えて前記状態転換型支持材料をゲル状態に変換するプロセス、を備える、方法。
本明細書では様々な態様が開示されているが、開示された態様は、様々な代替形態で具現化され得る本発明の単なる例示に過ぎないことが理解されよう。したがって、本明細書に開示された特定の詳細は、限定的に解釈されるものではなく、単に本発明の任意の態様の代表的な基礎として、及び/又は本明細書に開示された教示を様々に採用することを当業者に教えるための代表的な基礎として解釈されるものである。さらに、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の態様を説明する目的でのみ使用され、いかなる意味でも限定することを意図しない。
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションを説明するために「第1」、「第2」、「第3」等の用語を使用することができるが、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションは、これらの用語によって限定すべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを他の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、後述する「第1の要素」、「コンポーネント」、「領域」、「層」、または「セクション」は、本明細書の教示から逸脱することなく、第2の(または他の)要素、コンポーネント、領域、層、またはセクションと称することが可能である。
本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確にそうでないことを示していない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むことを意図している。「または」は、「及び/又は」を意味する。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及び全ての組合せを含む。本明細書で使用される場合、用語「comprise」及び/又は「comprising」、又は「includes」及び/又は「including」は、述べられた特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は成分の存在を規定するが、1以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分、並びにそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。用語「又はその組合せ」は、前述の要素の少なくとも1つを含む組合せを意味する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
本出願を通じて、刊行物が参照される場合、これらの刊行物の開示は、その全体が、本開示が関連する技術の状態をより完全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
本発明の態様を図示し、説明したが、これらの態様が本発明のすべての可能な形態を図示し、説明することを意図するものでない。むしろ、本明細書で使用される言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および置換がそれに対してなされ得ることが理解される。

Claims (36)

  1. 生物学的試料を保存する方法であって、
    少なくとも1つの細胞を含む生物学的試料を用意する過程と、
    前記生物学的試料を、ガラス化剤および溶解剤を含むガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する過程と、
    前記ガラス化混合物をガラス化する過程であって、これにより、保存安定性を有する試料を生成する過程と、
    を備える、方法。
  2. 請求項1に記載の方法において、さらに、
    前記保存安定性を有する試料を、16℃以上~30℃以下、オプションとして30℃より高く、さらにオプションとして50℃より高い温度で保存する過程、
    を備える、方法。
  3. 請求項1に記載の方法において、前記生物学的試料が、核酸を含み、オプションとして
    前記拡散はRNAを含む、方法。
  4. 請求項1に記載の方法において、前記生物学的試料が、全血、血漿、または血清を含む、方法。
  5. 請求項4に記載の方法において、前記生物学的試料が、全血を含み、前記ガラス化混合物が、さらに、抗凝固剤を含む、方法。
  6. 請求項1に記載の方法において、前記ガラス化混合物が、さらに、緩衝剤を含む、方法。
  7. 請求項1に記載の方法において、前記ガラス化剤が、ジメチルスルホキシド、グリセロール、糖、ポリアルコール、メチルアミン、ベタイン、不凍タンパク質、合成抗核剤、ポリビニルアルコール、シクロヘキサントリオール類、シクロヘキサンジオール類、無機塩、有機塩、イオン液体、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
  8. 請求項7に記載の方法において、前記ガラス化剤が、トレハロースを含む、方法。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、前記溶解剤が、洗浄剤からなる、方法。
  10. 請求項9に記載の方法において、前記洗浄剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、Triton X-100)、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸)(CHAPS)、グアニジン塩酸塩、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
  11. 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、さらに、
    前記保存安定性を有する試料を、水・空気不透過性の保護エンクロージャに封入する過程と、
    前記保護エンクロージャを-196℃~+60℃の温度で20日以上の保存期間のあいだ保存する過程と、を備える、方法。
  12. 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化混合物をガラス化する過程が、当該ガラス化混合物がガラス状態になるまで当該ガラス化混合物を極低温よりも高温で乾燥させることを含む、方法。
  13. 請求項12に記載の方法において、前記ガラス化培地が、1つまたは複数の毛細管チャンネル内にある、方法。
  14. 請求項12に記載の方法において、前記ガラス化する過程は、1秒~1時間(オプションとして、10分以内)の乾燥時間にわたって実行される、方法。
  15. 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、さらに、
    ガラス化に先立って前記ガラス化混合物を5分以上~30分以下のあいだインキュベートする過程、を備える、方法。
  16. 請求項15に記載の方法において、前記インキュベーションが、18℃以上~37℃以下の温度で行われる、方法。
  17. 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、前記生物学的試料が、少なくとも1種の分離剤を含む分離培地と接触させられることによって前処理される、方法。
  18. 請求項17に記載の方法において、前記分離剤が、マンノース結合型レクチンである、方法。
  19. 請求項17に記載の方法において、前記分離培地が、ニトロセルロースまたはポリビニリデンジフルオライドからなる、方法。
  20. 極低温よりも高温で組織を保存する方法であって、
    少なくとも1つの細胞を含む生物学的組織を用意する過程と、
    前記生物学的組織を、ガラス化剤および支持材料(オプションとしては、ポリマー支持材料)を含むガラス化培地と接触させて、ガラス化混合物を形成する過程と、
    前記ガラス化混合物をガラス化する過程であって、これにより、保存安定性を有する試料を生成する過程と、を備える、方法。
  21. 請求項20に記載の方法において、前記ポリマーが、ヒドロゲルの形成に適したものである、方法。
  22. 請求項20に記載の方法において、前記ポリマーが、ポリエチレングリコールである、方法。
  23. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化培地が、さらに、少なくとも1種の付着剤を含む、方法。
  24. 請求項23に記載の方法において、前記付着剤が、ボロン酸である、方法。
  25. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記支持材料が、切り替え可能な支持材料であり、当該方法は、さらに、
    前記ガラス化混合物に刺激を与えて前記切り替え可能な支持材料をゲル状態に変換する過程、を備える、方法。
  26. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化混合物が、さらに、バッファーを含む、方法。
  27. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化剤が、ジメチルスルホキシド、グリセロール、糖類、多価アルコール類、メチルアミン類、ベタイン類、不凍タンパク質、合成抗核剤、ポリビニルアルコール、シクロヘキサントリオール類、シクロヘキサンジオール類、無機塩、有機塩、イオン性液体、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
  28. 請求項27に記載の方法において、前記ガラス化剤が、トレハロースを含む、方法。
  29. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、さらに、
    前記保存安定性を有する試料を、水・空気不透過性の保護エンクロージャに封入する過程と、
    前記保護エンクロージャを-196℃~+60℃の温度で20日以内又は20日以上の保存期間のあいだ保存する過程と、
    を備える、方法。
  30. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化混合物をガラス化する過程が、当該ガラス化混合物がガラス状態になるまで当該ガラス化混合物を極低温よりも高温で乾燥させることを含む、方法。
  31. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化混合物が、1つまたは複数のキャピラリー・チャンネル内にある、方法。
  32. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化する過程は、1秒~1時間(オプションとしては、10分以内)の乾燥時間にわたって実行される、方法。
  33. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、さらに、
    ガラス化に先立って前記ガラス化混合物を5分以上~30分以下のあいだ培養する過程、を備える、方法。
  34. 請求項33に記載の方法において、前記培養が、18℃以上~37℃以下の温度で行われる、方法。
  35. 請求項20から22のいずれか一項に記載の方法において、前記ガラス化混合物が、さらに、溶解剤を含む、方法。
  36. 請求項35に記載の方法において、前記溶解剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、Triton X-100)、(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホンホナート)(CHAPS)、グアニジン塩酸塩、またはこれらの組み合わせを含む、方法。
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