JP2024098292A - 樹脂組成物 - Google Patents

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JP2024098292A JP2023001703A JP2023001703A JP2024098292A JP 2024098292 A JP2024098292 A JP 2024098292A JP 2023001703 A JP2023001703 A JP 2023001703A JP 2023001703 A JP2023001703 A JP 2023001703A JP 2024098292 A JP2024098292 A JP 2024098292A
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Figure 2024098292000001
【課題】誘電正接及び線熱膨張係数が低く且つ耐クラック性に優れる絶縁層を形成でき、柔軟性に優れた樹脂シートを得ることが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A-1)特定範囲の低い粘度を有する液状エポキシ樹脂を特定範囲の量で含む(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂、及び、特定の粒径分布を有する特定範囲の量の(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって;樹脂組成物を130℃30分間、170℃30分間及び200℃60分間の条件で硬化して得られる厚み80μmの硬化試料のデュポン衝撃試験による50%破壊エネルギーが、0.1J以上である、樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。また、本発明は、前記の樹脂組成物の硬化物、前記の樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート、並びに、前記の樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板及び半導体装置に関する。
プリント配線板には、一般に、絶縁層が設けられる。例えば、プリント配線板の一種としての多層プリント配線板には、絶縁層として層間絶縁層が設けられることがある。この絶縁層は、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物によって形成されうる(特許文献1~5)。
特開2022-60800号公報 特許第6844242号公報 特許第6950732号公報 特許第7087912号公報 特許第7119920号公報
絶縁層は、一般に、低い誘電正接を有することが求められる。誘電正接が低い絶縁層を得る方法の一つとして、エポキシ樹脂と活性エステル樹脂とを組み合わせる方法がある。
また、絶縁層には、一般に、小さい線熱膨張係数を有することが求められる。線熱膨張係数が小さい絶縁層を得る方法の一つとして、無機充填材を多く含む樹脂組成物を用いる方法が挙げられる。
ところが、誘電正接及び線熱膨張係数の改善のために、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂及び多くの無機充填材を組み合わせて樹脂組成物を調製した場合、その樹脂組成物から得られる絶縁層は、クラックが生じやすい傾向があった。例えば、樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を熱硬化させて絶縁層を形成した後、粗化処理を施した場合に、粗化処理後の絶縁層にクラックが生じ易かった。
また、エポキシ樹脂、活性エステル樹脂及び多くの無機充填材を組み合わせて含む樹脂組成物は、実用的な樹脂組成物層の形成が困難であった。具体的には、前記の樹脂組成物によって支持体上に樹脂組成物層を形成して樹脂シートを得た場合、樹脂組成物層の柔軟性が低かった。よって、樹脂組成物層が脆く、樹脂シートの巻き取り時に容易に破壊されてしまうので、ハンドリングに耐えうる実用的な樹脂シートを得ることが難しかった。
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、誘電正接及び線熱膨張係数が低く且つ耐クラック性に優れる絶縁層を形成でき、柔軟性に優れた樹脂シートを得ることが可能な樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート;並びに、前記樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板及び半導体装置;を提供することを目的とする。
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、(A-1)特定の低い粘度を有する液状エポキシ樹脂を特定範囲の量で含む(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂、及び、特定範囲の粒径分布を有する特定範囲の量の(C)無機充填材を含む樹脂組成物が、特定範囲の50%破壊エネルギーを有する硬化試料を得られるものである場合に、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂、及び、(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂が、(A-1)25℃において500mPa・s以下の粘度を有する液状エポキシ樹脂を含み、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、1質量%以上、15質量%以下であり、
(C)無機充填材の平均粒径が、0.01μm以上1.0μm以下であり、
(C)無機充填材に含まれる粒径1.5μm以上の粒子の割合が、(C)無機充填材の全量100体積%に対して、10体積%以下であり、
(C)無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、60質量%以上であり、
樹脂組成物を130℃30分間、170℃30分間及び200℃60分間の条件で硬化して得られる厚み80μmの硬化試料のデュポン衝撃試験による50%破壊エネルギーが、0.1J以上である、樹脂組成物。
[2] 樹脂組成物を190℃90分の条件で硬化させて得られる評価用硬化物の線熱膨張係数が、30ppm/℃以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 樹脂組成物を190℃90分の条件で硬化させて得られる評価用硬化物の誘電正接が、0.0050以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (D)ラジカル重合性樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] (D)ラジカル重合性樹脂が、マレイミド系ラジカル重合性樹脂及びスチレン系ラジカル重合性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[4]に記載の樹脂組成物。
[6] (B)活性エステル樹脂以外の(E)硬化剤を含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7] (F)硬化促進剤を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[8] (G)ポリマーを含む、[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[9] 絶縁層形成用である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
[11] 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
樹脂組成物層が、[1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
[12] [1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
[13] [12]に記載のプリント配線板を備える、半導体装置。
本発明によれば、誘電正接及び線熱膨張係数が低く且つ耐クラック性に優れる絶縁層を形成でき、柔軟性に優れた樹脂シートを得ることが可能な樹脂組成物;前記樹脂組成物の硬化物;前記樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート;並びに、前記樹脂組成物の硬化物を含むプリント配線板及び半導体装置;を提供できる。
図1は、デュポン衝撃試験の概要を説明するための模式的な正面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して説明する。ただし、本発明は、下記に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施されうる。
<樹脂組成物の概要>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂、及び、(C)無機充填材を含む。また、(A)エポキシ樹脂は、(A-1)25℃において500mPa・s以下の粘度を有する液状エポキシ樹脂を含む。以下の説明において、「(A-1)25℃において500mPa・s以下の粘度を有する液状エポキシ樹脂」を「(A-1)低粘度エポキシ樹脂」ということがある。(A)エポキシ樹脂は、前記の(A-1)低粘度エポキシ樹脂を、特定範囲の量で含む。
(C)無機充填材は、特定範囲の平均粒径を有する。また、一般に、(C)無機充填材の粒子の粒径には分布があるところ、(C)無機充填材に含まれる粒径1.5μm以上の粒子の割合は、特定範囲にある。以下の説明において、「(C)無機充填材に含まれる粒径1.5μm以上の粒子」を「巨大粒子」ということがある。さらに、樹脂組成物における(C)無機充填材の量は、特定範囲にある。
また、樹脂組成物をある条件で硬化して硬化試料を得た場合、その硬化試料のデュポン衝撃試験による50%破壊エネルギーは、特定範囲にある。ここで、前記の硬化試料は、樹脂組成物の属性を特定するための評価試験に供される試料を表し、必ずしも樹脂組成物層の用途の一つである絶縁層に含まれる硬化物と同じ条件で硬化されたものでなくてもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物を硬化させることにより、誘電正接及び線熱膨張係数が低い硬化物を得ることができる。よって、この樹脂組成物によれば、誘電正接及び線熱膨張係数の低い絶縁層を形成できる。また、こうして得られる前記の絶縁層は、高い耐クラック性を有することができる。さらに、本実施形態に係る樹脂組成物は、柔軟性に優れるので、柔軟性に優れた樹脂シートを得ることができる。
<(A)エポキシ樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分としての(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する硬化性樹脂でありうる。(A)エポキシ樹脂は、(B)活性エステル樹脂と反応して結合を形成できる。また、樹脂組成物が(B)活性エステル樹脂以外の(E)硬化剤を含む場合には、(A)エポキシ樹脂は(E)硬化剤と反応して結合を形成できる。よって、樹脂組成物は硬化することができる。以下の説明において、「(B)活性エステル樹脂以外の(E)硬化剤」を、「(E)任意の硬化剤」ということがある。
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、ラウリルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ステアリン酸グリシジル型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)エポキシ樹脂は、(A-1)成分としての(A-1)低粘度エポキシ樹脂を含む。(A-1)低粘度エポキシ樹脂によれば、樹脂組成物の柔軟性を高めることができる。また、(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、通常、分子量が小さく、よって硬化物の架橋密度を高くできる。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、25℃において液状である。そして、この(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、25℃において、特定の範囲の粘度を有する。(A-1)低粘度エポキシ樹脂の25℃における具体的な粘度の範囲は、通常500mPa・s以下、好ましくは400mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下、更に好ましくは200mPa・s以下、特に好ましくは100mPa・s以下であり、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは2mPa・s以上、更に好ましくは3mPa・s以上である。(A-1)低粘度エポキシ樹脂が25℃において前記範囲の粘度を有する場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂の粘度は、E型粘度計(東機産業製「RE-25U」、1° 34’×R24のコーンロータを使用)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定できる。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、1分子中に、1個のエポキシ基を含有していてもよく、2個以上エポキシ基を含有していてもよい。また、(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、非芳香族性のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、非芳香族性のエポキシ樹脂のみを含むことがより好ましい。非芳香族性のエポキシ樹脂とは、その分子中に芳香環を含有しないエポキシ樹脂を表す。また、「芳香環」は、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは0以上の整数)であるヒュッケル則に従う環を表し、単環式芳香環、及び2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合多環式芳香環を包含する。また、芳香環には、芳香族炭素環及び芳香族複素環が包含される。非芳香族性のエポキシ樹脂は、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。非芳香族性のエポキシ樹脂は、脂環式構造を含有していてもよい。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂としては、例えば、ラウリルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ヘキサンジオール型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、などが挙げられる。(A-1)低粘度エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販の(A-1)低粘度エポキシ樹脂としては、例えば、四日市合成社製のラウリルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂「エポゴーセーLA(D)」(25℃での粘度5mPa・s);ダイセル社製の脂環式エポキシ樹脂「セロキサイド2021P」(25℃での粘度240mPa・s);新日鉄住金化学社製のシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂「ZX1658GS」(25℃での粘度34mPa・s);アデカ社製のヘキサンジオール型エポキシ樹脂「ED-503」(25℃での粘度25mPa・s)、「ED-503G」(25℃での粘度15mPa・s);アデカ社製のトリメチロールプロパン型エポキシ樹脂「ED-505」(25℃での粘度150mPa・s);アデカ社製のポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂「ED-506」(25℃での粘度60mPa・s);アデカ社製のネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂「ED-523T」(25℃での粘度15mPa・s);などが挙げられる。(A-1)低粘度エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、5,000g/eq.以下、3,000g/eq.以下、2,000g/eq.以下、1,000g/eq.以下などでありうるが、小さいことが好ましい。具体的には、好ましくは500g/eq.以下、より好ましくは300g/eq.以下、更に好ましくは200g/eq.以下である。下限は、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは60g/eq.以上、更に好ましくは80g/eq.以上、更に好ましくは110g/eq.以上である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量を表す。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂の重量平均分子量は、小さいことが好ましい。(A-1)低粘度エポキシ樹脂の重量平均分子量の具体的な範囲は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは300以下である。下限は、特に制限はなく、例えば、50以上、80以上、100以上などでありうる。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
樹脂組成物中の(A-1)低粘度エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、通常1質量%以上、好ましくは1.3質量%以上、更に好ましくは1.8質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは14質量%以下、更に好ましくは13質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。樹脂組成物の樹脂成分とは、樹脂組成物の不揮発成分のうち、(C)無機充填材を除いた成分を表す。(A-1)低粘度エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
樹脂組成物中の(A-1)低粘度エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。(A-1)低粘度エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
(A)エポキシ樹脂は、任意のエポキシ樹脂として、(A-2)25℃において500mPa・sより高い粘度を有する液状エポキシ樹脂を含んでいてもよい。以下の説明において、「(A-2)25℃において500mPa・sより高い粘度を有する液状エポキシ樹脂」を「(A-2)高粘度エポキシ樹脂」ということがある。
(A-2)成分として(A-2)高粘度エポキシ樹脂は、25℃において液状である。そして、この(A-2)高粘度エポキシ樹脂は、25℃において、(A-1)低粘度エポキシ樹脂の粘度よりも高い粘度を有する。(A-2)高粘度エポキシ樹脂の25℃における具体的な粘度の範囲は、通常500mPa・sより大きく、好ましくは1,000mPa・s以上、より好ましくは5,000mPa・s以上、更に好ましくは10,000mPa・s以上であり、好ましくは20,000mPa・s以下、より好ましくは18,000mPa・s以下、更に好ましくは16,000mPa・s以下である。
(A-2)高粘度エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A-2)高粘度エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する高粘度エポキシ樹脂の割合の範囲は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
(A-2)高粘度エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香環を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
(A-2)高粘度エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有する液状エポキシ樹脂が挙げられる。(A-2)高粘度エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販の(A-2)高粘度エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂「828EL」;三菱ケミカル社製のグリシジルアミン型エポキシ樹脂「604」;などが挙げられる。(A-2)高粘度エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A-2)高粘度エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、(A-1)低粘度エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲と同じでありうる。
(A-2)高粘度エポキシ樹脂の重量平均分子量の範囲は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。
樹脂組成物中の(A-2)高粘度エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。(A-2)高粘度エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(A-2)高粘度エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(A-2)高粘度エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(A-1)低粘度エポキシ樹脂と(A-2)高粘度エポキシ樹脂との質量比((A-2)成分/(A-1)成分)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは1.0以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。前記の質量比((A-2)成分/(A-1)成分)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
(A)エポキシ樹脂は、任意のエポキシ樹脂として、(A-3)25℃において固体状のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。以下の説明において、「(A-3)25℃において固体状のエポキシ樹脂」を「(A-3)固体状エポキシ樹脂」ということがある。
(A-3)固体状エポキシ樹脂は、25℃において固体状である。この(A-3)固体状エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することがより好ましい。(A-3)固体状エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂の割合の範囲は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
(A-3)固体状エポキシ樹脂は、耐熱性に優れる硬化物を得る観点から、芳香環を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
(A-3)固体状エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、ステアリン酸グリシジル等の一官能型の固体状エポキシ樹脂、などが挙げられる。(A-3)固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR-991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂);東京化成社製のステアリン酸グリシジル;等が挙げられる。(A-3)固体状エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A-3)固体状エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲は、(A-1)低粘度エポキシ樹脂のエポキシ当量の範囲と同じでありうる。
(A-3)固体状エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。
樹脂組成物中の(A-3)固体状エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。(A-3)固体状エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(A-3)固体状エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、特に好ましくは6.5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。(A-3)固体状エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(A-1)低粘度エポキシ樹脂と(A-3)固体状エポキシ樹脂との質量比((A-3)成分/(A-1)成分)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは2.0以上、特に好ましくは5.0以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下である。前記の質量比((A-3)成分/(A-1)成分)が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
(A-1)低粘度エポキシ樹脂、(A-2)高粘度エポキシ樹脂及び(A-3)固体状エポキシ樹脂を含めた(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の全量100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する(A)エポキシ樹脂の量の範囲は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、通常100質量%以下である。
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、通常1質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは13質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは18質量%以下である。(A)エポキシ樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
前述のように、(A)エポキシ樹脂は、(B)活性エステル樹脂及び(E)任意の硬化剤と反応して結合を形成し、樹脂組成物を硬化させることができる。このとき、硬化後の架橋密度を適切に調整して本発明の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂及び(E)任意の硬化剤に含まれる低当量樹脂の割合は、特定の範囲にあることが好ましい。ここで、低当量樹脂とは、エポキシ当量が300g/eq.以下の(A)エポキシ樹脂、活性エステル基当量が300g/eq.以下の(B)活性エステル樹脂、及び、活性基当量が300g/eq.以下の(E)任意の硬化剤を表す。また、活性エステル基当量は、活性エステル基1当量あたりの活性エステル樹脂の質量を表す。さらに、活性基当量は、活性基1当量あたりの硬化剤の質量を表す。低当量樹脂の割合の具体的な範囲は、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂及び(E)任意の硬化剤の合計100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは36質量%以上であり、通常100質量%以下である。
また、硬化後の架橋密度を適切に調整して本発明の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂及び(E)任意の硬化剤に含まれる低当量樹脂の量は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
<(B)活性エステル樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)成分としての(B)活性エステル樹脂を含む。(B)活性エステル樹脂は、(A)エポキシ基が有するエポキシ基と反応して結合を形成できる反応活性の高いエステル基を有する硬化性樹脂でありうる。この(B)活性エステル樹脂には、上述した(A)成分に該当するものは含めない。(B)活性エステル樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)活性エステル樹脂は、(A)エポキシ樹脂と反応して結合を形成して樹脂組成物を硬化させる機能を有するから、「(B)活性エステル系硬化剤」と呼ばれることがある。通常、(A)エポキシ樹脂と(B)活性エステル樹脂との反応によっては、水酸基等の高い極性を有する極性基が生成しない。よって、(B)活性エステル樹脂は、樹脂組成物の硬化物の極性を小さくして、誘電正接等の誘電特性を改善する作用を発揮できる。また、活性エステル樹脂を含む従来の樹脂組成物の硬化物は耐クラック性が低い傾向があったが、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、高い耐クラック性を達成することができる。
(B)活性エステル樹脂としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル樹脂は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応を含む製造方法によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル樹脂が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、(B)活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂、並びに、イミド基を含有する活性エステル樹脂、が好ましく;ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、ナフタレン型活性エステル樹脂、及び、イミド基を含有する活性エステル樹脂がより好ましい。イミド基を含有する活性エステル樹脂は、チオエーテル基を含有することが好ましい。前記の中でも、(B)活性エステル樹脂は、ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂、及び、イミド基を含有する活性エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましい。ジシクロペンタジエン型活性エステル樹脂としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂が好ましい。
(B)活性エステル樹脂の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65M」、「EXB-8000L-65TM」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-60T」、「EXB-8150-62T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-60T」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);アリル基を含有する活性エステル樹脂として、「NE-V-1100-70T」(DIC社製);りん含有活性エステル樹脂として、「EXB9401」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル樹脂として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル樹脂として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル樹脂として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
(B)活性エステル樹脂の活性エステル基当量の範囲は、好ましくは50g/eq.~600g/eq.、より好ましくは50g/eq.~500g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~400g/eq.である。活性エステル基当量は、前述の通り、活性エステル基1当量あたりの活性エステル樹脂の質量を表す。中でも、樹脂組成物の柔軟性の向上の観点では、(B)活性エステル樹脂の活性エステル基当量は350g/eq.以下が好ましい。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)活性エステル樹脂の活性エステル基数の範囲は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で割り算した値を全て合計した値を表す。また、「(B)活性エステル樹脂の活性エステル基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)活性エステル樹脂の不揮発成分の質量を活性エステル基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。(B)活性エステル樹脂の活性エステル基数が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(B)活性エステル樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。(B)活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(B)活性エステル樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。(B)活性エステル樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
<(C)無機充填材>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(C)成分としての(C)無機充填材を含む。(C)無機充填材は、通常、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(C)無機充填材には、別に断らない限り、上述した(A)~(B)成分に該当するものは含めない。(C)無機充填材は、一般に、樹脂成分よりも低い誘電正接及び線熱膨張係数を有する。よって、この(C)無機充填材を特定範囲の多い量で含む樹脂組成物の硬化物によれば、誘電正接及び線熱膨張係数が低い絶縁層を形成できる。また、この(C)無機充填材の粒子が特定の粒径分布を有する場合に、樹脂組成物の柔軟性を高めたり、樹脂組成物の硬化物の耐クラック性を高めたりできる。
樹脂組成物中の(C)無機充填材の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、通常60質量%以上、好ましくは62質量%以上、更に好ましくは64質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。(C)無機充填材の量が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
(C)無機充填材は、特定の範囲の平均粒径を有する。(C)無機充填材の平均粒径の範囲は、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、通常1.0μm以下、より好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.6μm以下である。(C)無機充填材の平均粒径が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
(C)無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、(C)無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、(C)無機充填材100mg、メチルエチルケトン10g及び分散剤(例えば、サンノプコ社製「SN9228」)0.1gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、回分セル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば島津製作所社製「SALD-2200」等が挙げられる。
(C)無機充填材は、粒径1.5μm以上の巨大粒子を、含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。(C)無機充填材に含まれる巨大粒子の割合の範囲は、(C)無機充填材の全量100体積%に対して、通常10体積%以下、好ましくは5体積%以下、更に好ましくは1体積%以下であり、理想的には0体積%である。(C)無機充填材に含まれる巨大粒子(粒径1.5μm以上の粒子)の割合が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性の改善が可能であり、更に通常は、硬化物の機械的強度を高めることができる。
(C)無機充填材に含まれる巨大粒子の割合は、前記のミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定される体積基準の粒径分布から測定することができる。粒径分布は、平均粒径の測定方法と同じ方法で測定できる。
(C)無機充填材は、無機化合物の粒子でありうる。(C)無機充填材に含まれる材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカ、アルミナが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した平均粒径及び巨大粒子の割合の要件を満たす(C)無機充填材は、例えば、平均粒径及び巨大粒子の割合が上述した範囲にある市販の無機充填材を購入して用いてもよい。また、例えば、市販の無機充填材を分級して、平均粒径及び巨大粒子の割合が上述した範囲にある(C)無機充填材を得てもよい。
(C)無機充填材の比表面積の範囲は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは2m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下、50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで測定できる。
(C)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、(C)無機充填材の分散性向上の観点から、特定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%の表面処理剤で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%の表面処理剤で表面処理されていることがさらに好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
<(D)ラジカル重合性樹脂>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(D)ラジカル重合性樹脂を更に含んでいてもよい。(D)成分としての(D)ラジカル重合性樹脂には、別に断らない限り、上述した(A)~(C)成分に該当するものは含めない。(D)ラジカル重合性樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)ラジカル重合性樹脂は、エチレン性不飽和結合を含有しうる。よって、(D)ラジカル重合性樹脂は、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性基を有しうる。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロペンテニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基等の不飽和炭化水素基;アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)等のα,β-不飽和カルボニル基等が挙げられる。(D)ラジカル重合性樹脂は、ラジカル重合性基を2個以上有することが好ましい。
(D)ラジカル重合性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系ラジカル重合性樹脂、スチレン系ラジカル重合性樹脂、アリル系ラジカル重合性樹脂、マレイミド系ラジカル重合性樹脂などが挙げられる。(D)ラジカル重合性樹脂は、マレイミド系ラジカル重合性樹脂及びスチレン系ラジカル重合性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。(D)ラジカル重合性樹脂は、マレイミド系ラジカル重合性樹脂及びスチレン系ラジカル重合性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種をのみを含んでいてもよい。
(メタ)アクリル系ラジカル重合性樹脂は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリル系ラジカル重合性樹脂としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートなどの低分子量(分子量1000未満)のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂などの高分子量(分子量1000以上)のアクリル酸エステル化合物などが挙げられる。(メタ)アクリル系ラジカル重合性樹脂の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル)などが挙げられる。
スチレン系ラジカル重合性樹脂は、例えば、芳香族炭素原子に直接結合した1個以上、好ましくは2個以上のビニル基を有する化合物である。スチレン系ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン、2,4-ジビニルトルエン、2,6-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテルなどの低分子量(分子量1000未満)のスチレン系化合物;ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの高分子量(分子量1000以上)のスチレン系化合物などが挙げられる。スチレン系ラジカル重合性樹脂の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ODV-XET(X03)」、「ODV-XET(X04)」、「ODV-XET(X05)」(スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)が挙げられる。
アリル系ラジカル重合性樹脂は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のアリル基を有する化合物である。アリル系ラジカル重合性樹脂としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリルなどの芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパンなどのエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタンなどのベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼンなどのエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシランなどのアリルシラン化合物などが挙げられる。アリル系ラジカル重合性樹脂の市販品としては、例えば、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)などが挙げられる。
マレイミド系ラジカル重合性樹脂は、例えば、1個以上、好ましくは2個以上のマレイミド基を有する化合物である。マレイミド系ラジカル重合性樹脂は、脂肪族アミン骨格を含む脂肪族マレイミド化合物であっても、芳香族アミン骨格を含む芳香族マレイミド化合物であってもよい。マレイミド系ラジカル重合性樹脂の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「SLK-2600」、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、「BMI-689」、「BMI-2500」(ダイマージアミン構造含有マレイミド化合物)、デジクナーモレキュールズ社製の「BMI-6100」(芳香族マレイミド化合物)、日本化薬社製の「MIR-5000-60T」、「MIR-3000-70MT」(ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物)、ケイ・アイ化成社製の「BMI-70」、「BMI-80」、大和化成工業社製「BMI-2300」、「BMI-TMH」などが挙げられる。また、マレイミド系ラジカル重合性樹脂として、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に開示されているマレイミド樹脂(インダン環骨格含有マレイミド化合物)を用いてもよい。
(D)ラジカル重合性樹脂のエチレン性不飽和結合当量は、好ましくは20g/eq.~3,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,500g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~2,000g/eq.、特に好ましくは90g/eq.~1,500g/eq.である。エチレン性不飽和結合当量は、エチレン性不飽和結合1当量あたりのラジカル重合性樹脂の質量を表す。
(D)ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000以下、より好ましくは10,000以下、さらに好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,000以下である。下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150以上などとしうる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
樹脂組成物中の(D)ラジカル重合性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。(D)ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(D)ラジカル重合性樹脂の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.8質量%以下である。(D)ラジカル重合性樹脂の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
特に低い誘電正接を有する絶縁層を得る観点では、(D)ラジカル重合性樹脂の量は、(A-1)低粘度エポキシ樹脂と(D)ラジカル重合性樹脂との質量比((A-1)成分/(D)成分)が特定の範囲に収まるように設定されることが好ましい。具体的には、前記の質量比((A-1)成分/(D)成分)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.6以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
また、特に低い誘電正接を有する絶縁層を得る観点では、(D)ラジカル重合性樹脂の量は、(C)無機充填材と(D)ラジカル重合性樹脂との質量比((C)成分/(D)成分)が特定の範囲に収まるように設定されることが好ましい。具体的には、前記の質量比((C)成分/(D)成分)は、好ましくは65以上、より好ましくは70以上、更に好ましくは80以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは105以下である。
<(E)任意の硬化剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(B)活性エステル樹脂以外の(E)任意の硬化剤を更に含んでいてもよい。(E)成分としての(E)任意の硬化剤には、上述した(A)~(D)成分に該当するものは含めない。よって、(E)任意の硬化剤は、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる硬化剤のうち、(B)活性エステル樹脂以外の成分を表す。(E)任意の硬化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)任意の硬化剤は、(A)エポキシ樹脂と反応して結合を形成して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(E)任意の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びチオール系硬化剤が挙げられる。中でも、フェノール系硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤としては、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤を用いうる。耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「TD-2090-60M」等が挙げられる。
樹脂組成物中のフェノール系硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。フェノール系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中のフェノール系硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.6質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは2.4質量%以下である。フェノール系硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤を用いうる。カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤を用いることができ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、例えば、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」;三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」;日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」;クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤を用いうる。アミン系硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤の市販品としては、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」;日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」;三菱ケミカル社製の「エピキュアW」;住友精化社製「DTDA」等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
(E)任意の硬化剤の活性基当量の範囲は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、更に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。活性基当量は、前述の通り、活性基1当量あたりの硬化剤の質量を表す。
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(E)任意の硬化剤の活性基数の範囲は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。「(E)任意の硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(E)任意の硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で割り算した値を全て合計した値を表す。
樹脂組成物中の(E)任意の硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは5.0質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。(E)任意の硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
樹脂組成物中の(E)任意の硬化剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.6質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは2.4質量%以下である。(E)任意の硬化剤の量が前記範囲にある場合、樹脂組成物の柔軟性の向上、並びに、硬化物の誘電正接、線熱膨張係数、耐クラック性及び機械的強度の改善といった効果を顕著に得ることができる。
<(F)硬化促進剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(F)硬化促進剤を更に含んでいてもよい。(F)成分としての(F)硬化促進剤には、別に断らない限り、上述した(A)~(E)成分に該当するものは含めない。(F)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。
(F)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、イミダゾール系硬化促進剤及びアミン系硬化促進剤が好ましい。(F)硬化促進剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルジメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp-トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤の市販品としては、例えば、四国化成工業社製の「1B2PZ」、「2E4MZ」、「2MZA-PW」、「2MZ-OK」、「2MA-OK」、「2MA-OK-PW」、「2P4MZ」、「2PHZ」、「2PHZ-PW」、「Cl1Z」、「Cl1Z-CN」、「Cl1Z-CNS」、「C11Z-A」;三菱ケミカル社製の「P200-H50」等が挙げられる。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社製の「MY-25」等が挙げられる。
樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
<(G)ポリマー>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として、(G)ポリマーを更に含んでいてもよい。(G)成分としての(G)ポリマーには、上述した上述した(A)~(F)成分に該当するものは含めない。また、(G)ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(G)ポリマーとしては、例えば、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」、「YL7482」及び「YL7891BH30」;等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート構造を含有する樹脂が挙げられる。アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート構造を、主鎖に含有していてもよく、側鎖に含有していてもよい。ここで、用語「(メタ)アクリレート構造」は、アクリレート構造及びメタクリレート構造の両方を包含する。アクリル樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製のテイサンレジン「SG-70L」、「SG-708-6」、「WS-023」、「SG-700AS」、「SG-280TEA」、「SG-80H」、「SG-80H-3」、「SG-P3」、「SG-600TEA」、「SG-790」;根上工業社製の「ME-2000」、「W-116.3」、「W-197C」、「KG-25」、「KG-3000」等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂等が挙げられる。
(G)ポリマーは、当該(G)ポリマー以外の樹脂成分と相溶して樹脂組成物に含まれていてもよい。このように相溶した(G)ポリマーは、通常、(G)ポリマー以外の樹脂成分と相溶して樹脂組成物の硬化物に含まれる。また、(G)ポリマーは、当該(G)ポリマー以外の樹脂成分と相溶せずに粒子の状態で樹脂組成物に含まれていてもよい。このような粒子状の(G)ポリマーは、通常、(G)ポリマー以外の樹脂成分と相溶せずに粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。さらに、(G)ポリマー以外の樹脂成分と相溶しうる(G)ポリマーと粒子状の(G)ポリマーとを組み合わせて用いてもよい。
粒子状の(G)ポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂粒子が挙げられる。アクリル樹脂粒子の具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴムなどのゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体が挙げられる。その市販品の具体例としては、XER-91(日本合成ゴム社製);スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業社製);パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業社製);等が挙げられる。
(G)ポリマーは、通常、大きい分子量を有する。具体的には、(G)ポリマーの重量平均分子量Mwの範囲は、好ましくは5000より大きく、より好ましくは8000以上、さらに好ましくは10000以上、更に好ましくは20000以上であり、好ましくは100000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下、更に好ましくは50000以下である。重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値で測定できる。
樹脂組成物中の(G)ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
樹脂組成物中の(G)ポリマーの量の範囲は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
<(H)任意の添加剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、任意の成分として(H)任意の添加剤を更に含んでいてもよい。(H)任意の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤等の難燃剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤、が挙げられる。(H)任意の添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<(I)溶剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述した(A)~(H)成分といった不揮発成分に組み合わせて、任意の揮発性成分として(I)溶剤を更に含んでいてもよい。(I)溶剤としては、通常、有機溶剤を用いる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(I)溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(I)溶剤の量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全成分100質量%に対して、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等でありえ、0質量%であってもよい。
<樹脂組成物の硬化試料の50%破壊エネルギー>
本実施形態に係る樹脂組成物を特定の条件で硬化して得られる硬化試料は、特定の範囲の50%破壊エネルギーを有する。前記の50%破壊エネルギーの具体的な範囲は、通常0.10J以上、より好ましくは0.15J以上、更に好ましくは0.20J以上である。上限は、大きいほど好ましいが、通常は10J以下である。
樹脂組成物の硬化試料は、樹脂組成物を130℃30分間、170℃30分間及び200℃60分間の条件で硬化して得られる。硬化試料の厚みは、80μmである。硬化試料は、基板の表面に樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を前記の条件で硬化させて得ることができる。硬化試料は、具体的には、後述する実施例に記載の方法によって用意できる。
硬化試料の50%破壊エネルギーは、デュポン衝撃試験によって測定できる。図1は、デュポン衝撃試験の概要を説明するための模式的な正面図である。図1に示すように、デュポン衝撃試験では、図示しない支持台上に硬化試料10を設置し、その硬化試料10上に撃ち型20を載せる。そして、撃ち型20を基準とした所定の高さhから、錘30を矢印A1に示すように撃ち型20上に落下させる。そして、落下した錘30が撃ち型20に衝突し、その衝突のエネルギーによって硬化試料10が破壊されたときに、硬化試料10の破壊に用いられたエネルギーを求める。前記のエネルギーは、具体的には、錘30の重さm、撃ち型20から錘30の落下開始時点までの高さh、及び重力加速度gを用いて「mgh」で計算できる。そして、サンプルとしての硬化試料10のうち50%が破壊された時の前記エネルギーを、50%破壊エネルギーとして測定できる。デュポン衝撃試験は、JIS K5600-5-3に則って行うことができ、また、その試験結果からJIS K7211に基づき50%破壊エネルギーを計算できる。硬化試料の50%破壊エネルギーの具体的な測定方法は、後述する実施例の<試験4:50%破壊エネルギーの測定>に記載の方法を採用しうる。
50%破壊エネルギーは、一般には、外部からの衝撃に対する耐性(耐衝撃性)の程度を示すパラメーターの一つであると認識されている。本発明者が検討したところ、この50%破壊エネルギーは、樹脂組成物の硬化物の耐クラック性に相関を有することが判明した。樹脂組成物の硬化物のクラックは、通常、樹脂組成物の硬化時に生じる硬化応力などの硬化物の内在応力によって生じるものであるから、従来は、外部からの衝撃に対する耐性を示す50%破壊エネルギーと相関があることは知られていなかった。このように硬化試料の50%破壊エネルギーが樹脂組成物の硬化物の耐クラック性と相関があることは、本発明者が初めて見出したものである。
硬化試料の50%破壊エネルギーは、例えば、(A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂等の樹脂成分の組成;(C)無機充填材の粒径分布;によって調整できる。詳細には、(C)無機充填材を多く含む樹脂組成物は、(C)無機充填材の平均粒径が小さいほど、その硬化試料の50%破壊エネルギーを大きくできる。また、(C)無機充填材に含まれる巨大粒子が少ないほど、硬化試料の50%破壊エネルギーを大きくできる。ただし、硬化試料の50%破壊エネルギーは、(C)無機充填材の粒径分布のみによって決定されるものでは無く、樹脂成分の組成、並びに、樹脂成分と(C)無機充填材との相性によっても変化しうる。一般的には、樹脂成分の硬化後の靭性が高いほど、硬化試料の50%破壊エネルギーを大きくできる。また、一般的には、樹脂成分と(C)無機充填材との親和性が高いことにより、樹脂組成物中における(C)無機充填材の分散性が高いほど、硬化試料の50%破壊エネルギーを大きくできる。よって、当業者であれば、これらの指針に従って50%破壊エネルギーを調整することは可能である。
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上述した成分を混合することによって、製造することができる。上述した成分は、一部又は全部を同時に混合してもよく、順に混合してもよい。各成分を混合する過程で、温度を適宜設定してもよく、よって、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。
<樹脂組成物及びその硬化物の特性>
本実施形態に係る樹脂組成物は、柔軟性に優れる。よって、この樹脂組成物を用いることにより、柔軟性に優れた樹脂シートを得ることができる。一例において、支持体としてのプラスチックフィルム上に樹脂組成物層を形成して樹脂シートを得る。この樹脂シートを支持体が内側になるように直径3mmの軸に沿わせて90°折り曲げた場合に、樹脂組成物層の割れを抑制することができる。フィルム柔軟性の測定は、具体的には、後述する実施例の<試験6:フィルム柔軟性の評価>に記載の方法によって行いうる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱によって硬化できる。よって、樹脂組成物を熱硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物を得ることができる。通常、樹脂組成物に含まれる成分のうち、(I)溶剤等の揮発性成分は、熱硬化時の熱によって揮発しうるが、(A)~(H)成分といった不揮発成分は、熱硬化時の熱によっては揮発しない。よって、樹脂組成物の硬化物は、樹脂組成物の不揮発成分又はその反応生成物を含みうる。
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、低い誘電特性を有することができる。よって、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によれば、低い誘電特性を有する絶縁層を形成できる。例えば、硬化物の誘電正接は、好ましくは0.0050以下、より好ましくは0.0040以下、更に好ましくは0.0035以下である。誘電正接の下限は、特に制限は無く、例えば、0.0005以上でありうる。硬化物の誘電正接は、空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃の測定条件で測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を190℃90分の硬化条件で硬化させて得られる評価用硬化物が、前記範囲の誘電正接を有することが好ましい。硬化物の誘電正接の測定は、具体的には、後述する実施例の<試験2:硬化物の誘電正接および線熱膨張係数(CTE)の測定>に記載の方法によって行いうる。
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、小さい線熱膨張係数を有することができる。よって、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によれば、小さい線熱膨張係数を有する絶縁層を形成できる。例えば、硬化物の線熱膨張係数は、好ましくは30ppm/℃以下、より好ましくは29ppm/℃以下であり、28ppm/℃以下であってもよい。下限は、理想的には0ppm/℃以上であり、通常は10ppm/℃以上である。硬化物の線熱膨張係数は、25℃から150℃までの測定範囲において、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件で熱機械分析を行うことで測定できる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を190℃90分の硬化条件で硬化させて得られる評価用硬化物が、前記範囲の線熱膨張係数を有することが好ましい。硬化物の線熱膨張係数の測定は、具体的には、後述する実施例の<試験2:硬化物の誘電正接および線熱膨張係数(CTE)の測定>に記載の方法によって行いうる。
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、通常、高い耐クラック性を有することができる。よって、本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物によれば、高い耐クラック性を有する絶縁層を形成できる。例えば、樹脂組成物の硬化物によって絶縁層を形成し、当該絶縁層に粗化処理を施した場合に、当該絶縁層でのクラック(割れ)の発生を抑制できる。具体例を挙げると、後述する実施例の<試験5:耐クラック性の評価>に記載の方法で耐クラック性の指標として歩留まりを測定した場合に、その歩留まりを、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは80%以上にできる。
本実施形態に係る樹脂組成物の硬化物は、好ましくは、高い機械的強度を有することができる。例えば、硬化物は、高い剛性および靭性を有することが好ましい。一例において、硬化物に室温(23℃)中にて50mm/分の速度で直径1mmのニードルを突き刺した場合、ニードルに突き刺された硬化物の破断時の強度(突き刺し強度)を、好ましくは1.0N以上にできる。試料が硬化前の樹脂組成物である場合、その樹脂組成物を190℃90分の硬化条件で硬化させて得られる評価用硬化物が、前記範囲の突き刺し強度を有することが好ましい。硬化物の突き刺し強度の測定は、具体的には、後述する実施例の<試験3:突き刺し強度の測定>に記載の方法によって行いうる。
<樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物として使用でき、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物(絶縁層形成用の樹脂組成物)として好適に使用することができる。例えば、本実施形態に係る樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。特に、樹脂組成物は、複数の導体層を備える多層プリント配線板において導体層と導体層との間に設けられる層間絶縁層を形成するために好適である。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも使用しうる。
さらに、前記の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
<シート状積層材料>
樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用してもよいが、工業的には、該樹脂組成物を含むシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、樹脂組成物を含み、好ましくは樹脂組成物のみを含む。
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点、及び、樹脂組成物によって薄くても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、5μm以上、10μm以上等でありうる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
支持体として、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミの付着及びキズを抑制することができる。
樹脂シートは、例えば、液状(ワニス状)の樹脂組成物をそのまま、或いは溶剤に樹脂組成物を溶解して液状(ワニス状)の樹脂組成物を調製し、これを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した(I)溶剤と同様のものが挙げられる。溶剤は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の乾燥方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の溶剤の含有量が通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物中の溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の溶剤を含む樹脂組成物を用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に上述した樹脂組成物を含浸させて形成される。
プリプレグに用いるシート状繊維基材は、例えば、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されず、通常10μm以上である。
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の方法により製造することができる。
プリプレグの厚さは、上述した樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲でありうる。
シート状積層材料は、例えば、プリント配線板の製造において絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に使用できる。特に、シート状積層材料は、多層プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(多層プリント配線板の層間絶縁層用)に好適である。
<プリント配線板>
本発明の一実施形態に係るプリント配線板は、樹脂組成物の硬化物を含む。通常、プリント配線板は、樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を備える。絶縁層は、上述した樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは上述した樹脂組成物の硬化物のみを含む。このプリント配線板は、例えば、下記の工程(I)及び工程(II)を含む製造方法によって、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(II)樹脂組成物層を硬化して、絶縁層を形成する工程。
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基材となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、前記の「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
内層基板が備える導体層がパターン加工されている場合、耐クラック性に優れるという利点を活用する観点から、その導体層の最小ライン/スペース比は、小さいことが好ましい。「ライン」とは、導体層の配線幅を表し、「スペース」とは配線間の間隔幅を表す。最小ライン/スペース比の範囲は、好ましくは100μm/100μm以下(即ち、ピッチが200μm以下)、より好ましくは50μm/50μm以下、更に好ましくは30μm/30μm以下、更に好ましくは20μm/20μm以下、更に好ましくは10μm/10μm以下である。下限は、例えば、0.5μm/0.5μm以上でありうる。ピッチは、導体層の全体にわたって均一でもよく、不均一でもよい。導体層の最小ピッチは、例えば、100μm以下、60μm以下、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
内層基板上への樹脂組成物層の形成は、例えば、内層基板と樹脂シートとを積層することによって行いうる。内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施される。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化は、通常、熱硬化によって行う。樹脂組成物層の具体的な硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なりうる。一例において、硬化温度は、好ましくは120℃~240℃、より好ましくは150℃~220℃、さらに好ましくは170℃~210℃である。硬化時間は、好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間でありうる。
プリント配線板の製造方法は、樹脂組成物層の熱硬化の前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱することを含むことが好ましい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃~150℃、好ましくは60℃~140℃、より好ましくは70℃~130℃の温度にて、樹脂組成物層を通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(I)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層構造を有する多層プリント配線板を製造してもよい。
他の実施形態において、プリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様でありうる。
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法及び形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。よって、前記の粗化処理は「デスミア処理」と呼ばれることがある。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
粗化処理に用いる膨潤液としては、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
粗化処理に用いる酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法が好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層(無電解メッキ層)を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより電解メッキ層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
<半導体装置>
半導体装置は、上述したプリント配線板を備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)であった。以下の説明において「L/S」とは、別に断らない限り、導体層の配線パターンのライン(配線幅)/スペース(間隔幅)比を表す。
<水酸基当量の測定方法>
後述する合成例では、JIS-K0070に従い、無水酢酸-ピリジンで試料中の水酸基をアセチル化した後、加水分解を行い、残った酢酸を逆滴定することで水酸基当量を定量した。
<マススペクトル測定条件>
後述する合成例では、試料をテトラヒドロフラン(THF)で1mg/mLに希釈し、下記条件で液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を測定した。
HPLC:ACQUITY UPLC(日本ウォーターズ社製)
MS:SQ Detector2(日本ウォーターズ社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C8 1.7μm、2.1mm×50mm(日本ウォーターズ社製)
移動相A:2mmol酢酸アンモニウム水溶液
移動相B:2-プロパノール/THF(80:20)
移動相混合時間及び混合比率(A%):0分(50%)→5分(5%)→12分(5%)→12.1分(50%)→14分(50%)
流速:0.25mL/分
分析時間:14分
カラム温度:40℃
イオンモード:ESI(電子スプレーイオン化法)ポジティブまたはネガティブ
イオン極性:Positive検出モードまたはNegative検出モード
脱溶媒ガス流量:700L/hr、250℃
コーンガス:70L/hr
イオン源ヒーター:150℃
<合成例1:活性エステル樹脂B-1の合成>
(1-1)α―メチルベンジル基を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物(1x)の合成
Figure 2024098292000002
攪拌装置、温度計及びコンデンサーが装着された四つ口丸フラスコに、前記式(1x)に示す理論構造においてm値が2.0になるような組成比として、2,7-ジヒドロキシナフタレン(試薬)224.0g(1.4モル)、スチレンモノマー(試薬)291.2g(2.8モル)、酸触媒としてとしてパラトルエンスルホン酸・一水和物(試薬)5.2g、及び、反応溶媒としてトルエン1300gを仕込み、発熱に注意しながら100℃まで昇温させた。その後、100℃で6時間反応させた。その後、温度を60℃まで下げて、蒸留水300gと中和に適量の48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に、加熱して共沸脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、最高温度120℃でトルエンを減圧蒸留して、固形物490gを得た。
前記の測定方法に従って、この固形物の水酸基当量を測定し、187g/eq.(理論値184g/eq.)という値を得た。
また、前記の測定方法に従って、この固形物のマススペクトル(ネガティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m=1体に相当するm/z=263、m=2体に相当するm/z=367、m=3体に相当するm/z=471の各スペクトルピークが検出された。
これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(1x)で示される理論構造に係るα-メチルベンジル変性芳香族ジヒドロキシ化合物(1x)の構造を有していることが確認された。
(1-2)イミド基含有フェノール化合物(1y)の合成:
Figure 2024098292000003
攪拌装置及び温度計が装着された四つ口丸フラスコに、p-メルカプトフェノール(試薬)126.2g(1.0モル)、及び、N-フェニルマレイミド(試薬)173.2g(1.0モル)を仕込み、発熱に注意しながら90℃まで昇温させた。その後、90℃で6時間反応させ、固形物292gを得た。
前記の測定方法に従って、この固形物の水酸基当量を測定し、197g/eq.(理論値299g/eq.)という値を得た。
また、前記の測定方法に従って、この固形物のマススペクトル(ネガティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m/z=298のスペクトルピークが検出された。
これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(1y)で示される理論構造に係るイミド基含有フェノール化合物(1y)の構造を有していることが確認された。
(1-3)エステル化反応:活性エステル樹脂B-1の合成:
Figure 2024098292000004
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(1a)に示す理論構造においてn値が1.0に、活性エステル基当量が307g/eq.になるような組成比として、上記工程(1-1)で得たα-メチルベンジル変性芳香族ジヒドロキシ化合物(1x)184.3g(水酸基1.0モル)、上記工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)299.3g(1.0モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)203.0g(1.0モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.69g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌した。30℃で25%苛性ソーダ水溶液320.0g(2.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物525gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m=2/n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1227、m=2/n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=1726の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(1a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-1の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は25質量%であった。
<合成例2:活性エステル樹脂B-2の合成>
Figure 2024098292000005
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(2a)に示す理論構造においてn値が2.0に、活性エステル基当量が288g/eq.になるような組成比として、上記工程(1-1)で得たα-メチルベンジル変性芳香族ジヒドロキシ化合物(1x)184.3g(水酸基1.0モル)、上記工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)149.7g(0.5モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)152.3g(0.75モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.49g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液240.0g(1.5モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物386gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m=2/n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1227、m=2/n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=1726の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(2a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-2の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は9質量%であった。
<合成例3:活性エステル樹脂B-3の合成>
(3-1)ベンジル基を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物(2x)の合成:
Figure 2024098292000006
攪拌装置、温度計及びコンデンサーが装着された四つ口丸フラスコに、2,7―ジヒドロキシナフタレン224.0g(1.4モル)、ベンジルアルコール302.4g(2.8モル)、酸触媒としてとしてパラトルエンスルホン酸・一水和物(試薬)5.2gを仕込み、発熱に注意しながら180℃まで昇温させ、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した。その後、温度を60℃まで下げて、蒸留水300gと中和に適量の48%水酸化ナトリウム水溶液を加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に、加熱して共沸脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、最高温度120℃でトルエンを減圧蒸留して、固形物454gを得た。
前記の測定方法に従って、この固形物の水酸基当量を測定し、174g/eq.という値を得た。
また、前記の測定方法に従って、この固形物のマススペクトル(ネガティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、2,7-ジヒドロキシナフタレンにベンジル基が1個付加した構造に相当するm/z=249、ベンジル基が2個付加した構造に相当するm/z=339、ベンジル基が3個付加した構造に相当するm/z=429のスペクトルピークが確認された。
これらの分析データから、得られた固形物は、式(2x)で示すように、ベンジル変性ジヒドロキシナフタレン化合物(2x)の構造を有していることが確認された。
(3-2)エステル化反応:活性エステル樹脂B-3の合成:
Figure 2024098292000007
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(3a)に示す理論構造においてn値が1.0に、活性エステル基当量が300g/eq.になるような組成比として、上記工程(3-1)で得たベンジル変性芳香族ジヒドロキシ化合物(2x)170.2g(水酸基1.0モル)、上記合成例1の工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)299.3g(1.0モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)203.0g(1.0モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.67g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液320.0g(2.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物535gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m=2/n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1199、m=2/n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=1670の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(3a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-3の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は26質量%であった。
<合成例4:活性エステル樹脂B-4の合成>
Figure 2024098292000008
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(4a)に示す理論構造においてn値が1.0に、活性エステル基当量が295g/eq.になるような組成比として、ジシクロペンタジエンジフェノール(JFEケミカル社製「J-DPP-85」、水酸基当量165g/eq.)165.0g(水酸基1.0モル)、上記合成例1の工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)299.3g(1.0モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)203.0g(1.0モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.67g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液320.0g(2.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物530gを得た。
得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した結果、n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1179、n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=1630の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(4a)で示される理論構造に係るイミド構造含有ポリエステル樹脂(B-4)の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は25質量%であった。
<合成例5:活性エステル樹脂B-5の合成>
(5-1)イミド基含有フェノール化合物(2y)の合成:
Figure 2024098292000009
攪拌装置及び温度計が装着された四つ口丸フラスコに、p-メルカプトフェノール(試薬)252.4g(2.0モル)、及び、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(試薬)442.5g(1.0モル)を仕込み、発熱に注意しながら90℃まで昇温させた。その後、90℃で6時間反応させ、固形物655gを得た。
前記の測定方法に従って、この固形物の水酸基当量を測定し、350g/eq.(理論値347g/eq.)という値を得た。
また、前記の測定方法に従って、この固形物のマススペクトル(ネガティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m/z=694のスペクトルピークが検出された。
これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(2y)で示される理論構造に係るイミド基含有フェノール化合物(2y)の構造を有していることが確認された。
(5-2)エステル化反応:活性エステル樹脂B-5の合成:
Figure 2024098292000010
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(5a)に示す理論構造においてn値が1.0に、活性エステル基当量が311g/eq.になるような組成比として、前記工程(5-1)で得られたイミド基含有フェノール化合物(2y)347.0g(水酸基1.0モル)、1-ナフトール(試薬)144.0g(1.0モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)203.0g(1.0モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.69g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液320.0g(2.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物555gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1243、n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=2068の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(5a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-5の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は23質量%であった。
<合成例6:活性エステル樹脂B-6の合成>
Figure 2024098292000011
前記式(6a)に示す理論構造において活性エステル基当量が324g/eq.になるような組成比となるように、1-ナフトール(試薬)144g(1.0モル)を2-フェニルフェノール(試薬)170.2gに変更したこと以外は合成例5の工程(5-2)と同様にして、固形物560gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1295、n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=2120の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(6a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-6の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は24質量%であった。
<合成例7:活性エステル樹脂B-7の合成>
(7-1)イミド基含有フェノール化合物(3y)の合成:
Figure 2024098292000012
攪拌装置及び温度計が装着された四つ口丸フラスコに、p-メルカプトフェノール(試薬)252.4g(2.0モル)、及び、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド(試薬)358.3g(1.0モル)を仕込み、発熱に注意しながら90℃まで昇温させた。その後、90℃で6時間反応させ、固形物598gを得た。
前記の測定方法に従って、この固形物の水酸基当量を測定し、308g/eq.(理論値305g/eq.)という値を得た。
また、前記の測定方法に従って、この固形物のマススペクトル(ネガティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、m/z=610のスペクトルピークが検出された。
これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(3y)で示される理論構造に係るイミド基含有フェノール化合物(3y)の構造を有していることが確認された。
(7-2)エステル化反応:活性エステル樹脂B-7の合成:
Figure 2024098292000013
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(7a)に示す理論構造においてn値が2.0に、活性エステル基当量が368g/eq.になるような組成比として、前記工程(7-1)で得られたイミド基含有フェノール化合物(3y)305.0g(水酸基1.0モル)、合成例1の工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)149.7g(0.5モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)152.3g(0.75モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.61g、及び、トルエン800gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液320.0g(2.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後に、トルエンを減圧蒸留して、固形物988gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、n=1体のプロトン付加体に相当するm/z=1469、n=2体のプロトン付加体に相当するm/z=2209の各スペクトルピークが検出された。これらの分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(7a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-7の構造を有していることが確認された。また、固形物中のn=0体の割合は8質量%であった。
<合成例8:活性エステル樹脂B-8の合成>
Figure 2024098292000014
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス吹込み口が装着された四つ口丸フラスコに、前記式(8a)に示す理論構造において活性エステル基当量が364g/eq.になるような組成比として、合成例1の工程(1-2)で得たイミド基含有フェノール化合物(1y)299.3g(1.0モル)、イソフタル酸クロリド(試薬)101.5g(0.5モル)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(試薬)0.40g、及び、トルエン600gを仕込み、窒素ガスを吹き込みながら攪拌して完全に溶解させた。30℃で25%苛性ソーダ水溶液160.0g(1.0モル)を、発熱に注意しながら、最終的に60℃まで昇温するように2時間要して滴下した。その後、さらに60℃で2時間攪拌を続けた。その後、蒸留水200gを加えて静置分液し、下層の副生食塩水層を棄却した。さらに、同量の蒸留水を添加して2回水洗精製した後に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水した。得られた溶液を精密ろ過して不純物を除去した後にトルエンを減圧蒸留して、固形物310gを得た。
前記の測定方法に従って、得られた固形物のマススペクトル(ポジティブイオンモード)を測定した。マススペクトルでは、プロトン付加体に相当するm/z=729のスペクトルピークが検出された。この分析データから、得られた固形物は、目的の分子構造、すなわち上記式(8a)で示される理論構造に係るイミド基を含有する活性エステル樹脂B-8の構造を有していることが確認された。
<実施例1>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、25℃での粘度13500mPa・s)18部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)20部、ラウリルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(四日市合成社製「エポゴーセーLA(D)」、ラウリルグリシジルエーテル、エポキシ当量約247g/eq.、25℃での粘度5mPa・s)2部にメチルエチルケトン(MEK)35部及びシクロヘキサノン15部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物にトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)8部、ナフトール型硬化剤(日鉄ケミカル&マテリアル社製「SN-485」、水酸基当量約205g/eq.)2部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)50部、ビフェニルアラルキルノボラック型マレイミド樹脂(マレイミド系ラジカル重合性樹脂;日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、不揮発成分率70%のMEK/トルエン混合溶液)3部、アミン系硬化促進剤(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)4部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)180部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、液状の樹脂組成物としての樹脂ワニスを調製した。
離型面を有する支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。また、平滑面を有する保護フィルムとして、ポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)を用意した。支持体の離型面上に、樹脂ワニスを均一にダイコーターで塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層に、保護フィルムの平滑面を貼り合わせながらロール状に巻き取り、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
前記の樹脂シートの製造方法を、樹脂ワニスの塗布厚みを調整して行って、厚み40μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、厚み80μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、を製造した。
<実施例2>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、25℃での粘度13500mPa・s)8部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)10部、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC7000L」、エポキシ当量約228g/eq.)10部、一官能の固形エポキシ樹脂(東京化成社製、ステアリン酸グリシジル、エポキシ当量約341g/eq.)2部、脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製「セロキサイド2021P」、エポキシ当量約137g/eq.、25℃での粘度240mPa・s)10部にメチルエチルケトン(MEK)35部及びシクロヘキサノン15部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物にトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8150-62T」、活性エステル基当量約220g/eq.、不揮発成分率62質量%のトルエン溶液)50部、ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル(スチレン系ラジカル重合性樹脂;三菱瓦斯化学社製「OPE-2St 2200」、不揮発成分率65%のトルエン溶液)3部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、固形分10質量%のMEK溶液)1部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(デンカ社製「UFP-30」、平均粒径0.3μm)120部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
離型面を有する支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。また、平滑面を有する保護フィルムとして、ポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)を用意した。支持体の離型面上に、樹脂ワニスを均一にダイコーターで塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層に、保護フィルムの平滑面を貼り合わせながらロール状に巻き取り、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
前記の樹脂シートの製造方法を、樹脂ワニスの塗布厚みを調整して行って、厚み40μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、厚み80μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、を製造した。
<実施例3>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、25℃での粘度13500mPa・s)8部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「604」、エポキシ当量約120g/eq.、25℃での粘度15000mPa・s)10部、ナフタレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)10部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC社製「HP-6000」、エポキシ当量約250g/eq.)5部、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「WHR-991S」、エポキシ当量約265g/eq.)5部、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、25℃での粘度34mPa・s)2部にメチルエチルケトン(MEK)40部及びシクロヘキサノン30部を加え、攪拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂溶解組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物にトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部、合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部、マレイミド樹脂(マレイミド系ラジカル重合性樹脂;DESIGNER MOLECULES社製「BMI-1700」)2部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「2P4MZ」、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、固形分5質量%のMEK溶液)2部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)200部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)5部、及びゴム粒子(アイカ工業社製「スタフィロイドAC3816N」)2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを調製した。
離型面を有する支持体として、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を用意した。また、平滑面を有する保護フィルムとして、ポリプロピレンフィルム(王子特殊紙社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)を用意した。支持体の離型面上に、樹脂ワニスを均一にダイコーターで塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層に、保護フィルムの平滑面を貼り合わせながらロール状に巻き取り、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。
前記の樹脂シートの製造方法を、樹脂ワニスの塗布厚みを調整して行って、厚み40μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、厚み80μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、を製造した。
<実施例4>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例2で得られた活性エステル樹脂B-2(活性エステル基当量約288g/eq.)43部に変更した以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例5>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例3で得られた活性エステル樹脂B-3(活性エステル基当量約300g/eq.)44部に変更した以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例6>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例4で得られた活性エステル樹脂B-4(活性エステル基当量約295g/eq.)44部に変更した以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例7>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例5で得られた活性エステル樹脂B-5(活性エステル基当量約311g/eq.)46部に変更した以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例8>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例6で得られた活性エステル樹脂B-6(活性エステル基当量約324g/eq.)48部に変更した以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例9>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例7で得られた活性エステル樹脂B-7(活性エステル基当量約368g/eq.)54部に変更した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を200部から220部に変更した。以上の事項以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例10>
合成例1で得られた活性エステル樹脂B-1(活性エステル基当量約307g/eq.)45部を合成例8で得られた活性エステル樹脂B-8(活性エステル基当量約364g/eq.)54部に変更した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を200部から220部に変更した。以上の事項以外は実施例3と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例11>
実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<実施例12>
実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<比較例1>
シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)180部をシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C5」、平均粒径1.6μm)180部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<比較例2>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、25℃での粘度13500mPa・s)の量を18部から5部に変更した。また、ラウリルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(四日市合成社製「エポゴーセーLA(D)」、エポキシ当量約247g/eq.、25℃での粘度5mPa・s)2部をシクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、25℃での粘度34mPa・s)15部に変更した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<比較例3>
シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を180部から108部に変更した。また、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C5」、平均粒径1.6μm)72部を樹脂ワニスに追加した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<比較例4>
シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm)の量を180部から100部に変更した以外は実施例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<比較例5>
シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.、25℃での粘度34mPa・s)2部を使用しなかった。また、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「WHR-991S」、エポキシ当量約265g/eq.)の量を5部から7部に変更した。以上の事項以外は実施例10と同様の方法で、樹脂ワニスを製造した。
次いで、実施例10と同様に、得られた樹脂ワニスを支持体の離型面上に塗布し乾燥させて樹脂組成物層を形成した。そして、その樹脂組成物層に、保護フィルムの平滑面を貼り合わせながらロール状に巻き取ろうと試みたものの、樹脂組成物層が割れてしまい、樹脂シートを得ることができなかった。
そこで、平板上に支持体(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)を置き、支持体の湾曲によって樹脂組成物層に応力が加わらないように支持体を支持した状態を維持しながら、下記の方法で樹脂シートの製造を行った。具体的には、平板上に置かれた支持体の離型面上に樹脂ワニスを均一にフィルムアプリケーターで塗布した。平板で支持体を支持した状態で、樹脂ワニスを80℃~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂組成物層を形成した。樹脂組成物層に、保護フィルム(王子特殊紙社製「アルファンMA-411」、厚み15μm)の平滑面を貼り合わせて、支持体/樹脂組成物層/保護フィルムの層構成を有する樹脂シートを得た。この樹脂シートの製造方法を、樹脂ワニスの塗布厚みを調整して行って、厚み40μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、厚み80μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートと、を製造した。
<比較例6>
シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C5」、平均粒径1.6μm)の量を180部から100部に変更した以外は比較例1と同様の方法で、樹脂ワニス及び樹脂シートの製造を行った。
<試験1:無機充填材の平均粒径及び1.5μm以上の粒子の割合の測定>
無機充填材100mg、分散剤(サンノプコ社製「SN9228」)0.1g及びメチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散した。レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD-2200」)を使用して、回分セル方式で、無機充填材の体積基準の粒径分布を測定した。得られた粒径分布データから、メディアン径としての平均粒径、および、粒径1.5μm以上の粒子の割合、を算出した。
<試験2:硬化物の誘電正接および線熱膨張係数(CTE)の測定>
(1)評価用硬化物の作製:
離型処理を施された処理面と離型処理を施されていない未処理面とを有するPETフィルム(リンテック社製「501010」、厚み50μm、240mm角)を用意した。このPETフィルムの未処理面に、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(パナソニック社製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)を重ね、四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
続いて、実施例および比較例で製造した樹脂ワニスを、前記PETフィルムの処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmとなるようにフィルムアプリケーターで塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で10分間乾燥して、樹脂シートを得た。次いで、190℃のオーブンに投入し、90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた。熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥離し、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板を取り外し、更にPETフィルムを剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
(2)硬化物の誘電正接Dfの測定:
評価用硬化物を長さ80mm、幅2mmに切り出し、評価サンプルを得た。この評価サンプルについてアジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies)製HP8362B装置を用いた空洞共振摂動法により、測定周波数5.8GHz、測定温度23℃にて、誘電正接Dfを測定した。2つ試験片について測定を行い、平均値を算出し、以下の判断基準で判定を行った。
○:誘電正接Dfが0.0050以下である。
×:誘電正接Dfが0.0050を超える。
(3)硬化物の線熱膨張係数(CTE)の測定:
評価用硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmに切り出し、試験片を得た。この試験片について、熱機械分析装置(リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を使用して、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回、熱機械分析を行った。そして2回目の測定において、ガラス転移温度(Tg;℃)と、25℃から150℃までの範囲における平均線熱膨張係数(CTE;ppm/℃)とを算出し、以下の判断基準で判定を行った。
○:平均熱膨張係数が30ppm/℃以下である。
×:平均熱膨張係数が30ppm/℃を超える。
<試験3:突き刺し強度の測定>
直径20mmの穴を形成された平面状の支持面を有するフィルム突き刺し試験治具を用意した。評価用硬化物を、幅400mm、長さ400mmに切り出し、試験片を得た。この試験片を、フィルム突き刺し試験治具の支持面に固定した。テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製「RTC-1250A」)を用い、室温(23℃)中にて、50mm/分速度で直径1mmのニードルを試験片に突き刺し、破断時の強度(突き刺し強度)を測定した。測定された突き刺し強度を、以下の判断基準で判定した。
○:突き刺し強度が1.0N以上である。
×:突き刺し強度が1.0N未満である。
<試験4:50%破壊エネルギーの測定>
(1)下地処理内層基板の作製:
内層基板として、表面に銅箔を有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.8mm、パナソニック社製「R1515A」)を用意した。この内層基板は、詳細には、ガラス布にエポキシ樹脂を含浸させて硬化させて得られる基材と、この基材の両面に形成された銅箔とを備える積層板であった。この内層基板の表面の銅箔に、マイクロエッチング剤(メック社製「CZ8101」)を用いて、銅エッチング量1μmにてエッチングして、粗化処理を行った。その後、190℃にて30分乾燥を行い、下地処理内層基板を得た。
(2)樹脂シートの積層および硬化:
実施例および比較例で得た厚み80μmの樹脂組成物層を備える樹脂シートから保護フィルムを剥離した。その樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、樹脂組成物層が前記の下地処理内層基板と接合するように、下地処理内層基板の両面にラミネートした。このラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、温度100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着することにより、実施した。次いで、ラミネートされた樹脂シートを、大気圧下、100℃、圧力0.5MPaにて60秒間、熱プレスして平滑化した。さらにこれを、130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化させた。樹脂組成物層の熱硬化により、支持体/硬化物層/内層基板/硬化物層/支持体の層構成を有する硬化樹脂付き基板を得た。
(3)粗化処理:
硬化樹脂付き基板から支持体を剥離して、中間積層体を得た。
実施例1~9、11及び12並びに比較例については、この中間積層体を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スエリングディップ・セキュリガントP」;水酸化ナトリウム及び界面活性剤を含むアルカリ溶液;溶媒はブチルカルビトール及びプロピレングリコール)に60℃で10分間浸漬した。次に、中間積層体を、粗化液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」;KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。その後、中間積層体を中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」;硫酸水溶液)に40℃で5分間浸漬した。中間積層体を純水にて洗浄し、さらに熱処理を行って、破壊強度測定用の試料基板を得た。熱処理の条件は、実施例1~9及び比較例1~6については200℃60分間とした。また、実施例11については、熱処理の条件は、180℃30分間とした。さらに、実施例12については、熱処理の条件は、210℃90分間とした。
実施例10については、膨潤液、粗化液及び中和液への浸漬並びに純粋による洗浄を行うことなく、中間積層体を200℃60分間熱処理することで、破壊強度測定用の試料基板を得た。
(4)50%破壊エネルギーの測定:
前記の破壊強度測定用の試料基板は、内層基板と、この内層基板の両面それぞれに樹脂組成物を硬化して得られた厚み80μmの硬化試料を備えていた。そこで、試料基板を50mm×50mmに切り出し、デュポン衝撃試験機(上島製作所社製「IM-4520」)を用いて、JIS K5600-5-3に則り硬化試料のデュポン衝撃試験を実施した。試験に用いた錘は300g、撃ち型は先端半径R=3/16インチのものを用いた。得られた結果からJIS K7211に基づき50%破壊エネルギー(J)を算出し、以下の判断基準で判定を行った。
○:50%破壊エネルギーが0.1J以上である。
×:50%破壊エネルギーが0.1J未満である。
<試験5:耐クラック性の評価>
(1)樹脂シートのラミネート:
ライン/スペース比(L/S)=8μm/8μmの配線パターンにて形成された回路導体(銅)を両面に有する内層基板(日立化成社製「MCL-E700G」、導体層の厚さ35μm、計0.4mm厚、残銅率40%)を用意した。実施例及び比較例で得られた厚さ40μmの樹脂シートから保護フィルムを剥離し、樹脂組成物層が内層基板と接するように、前記内層基板の両面に、樹脂シートをラミネートした。ラミネートは、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用い、温度100℃にて30秒間真空吸引後、温度100℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体上から、耐熱ゴムを介して30秒間プレスすることにより行った。次に、大気圧下で、SUS鏡板を用いて、温度100℃、圧力0.55MPaの条件で60秒間プレスを行った。
(2)樹脂組成物層の熱硬化:
ラミネートされた樹脂シートから支持体を剥離した。130℃のオーブンに投入して30分間加熱し、次いで170℃のオーブンに移し替えて30分間加熱することで、樹脂組成物層を熱硬化させて、絶縁層を形成した。よって、絶縁層/内層基板/絶縁層の層構成を有する試料基板を得た。次に、試料基板を放置し、室温(25℃)まで冷却させた。
(3)粗化処理:
試料基板を、膨潤液(アトテックジャパン社製「スエリングディップ・セキュリガントP」)に60℃で10分間浸漬した。次に、試料基板を、粗化液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトP」;KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬した。さらに、試料基板を、中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」)に40℃で5分間浸漬した。その後、試料基板を、80℃で30分間乾燥した。
(4)耐クラック性の評価方法:
粗化処理後の試料基板の絶縁層表面のうち、内層基板の配線パターン上を観察した。内層基板のパターン上の100個の部分において、パターン形状に沿って表面に割れが発生しているか確認し、割れの発生していないパターン上の部分の数をカウントした。100個の部分のうち、割れの発生していない部分の割合を「歩留まり」として算出した。歩留まりが高いほど、耐クラック性に優れることを表す。そこで、算出した歩留まりを、以下の基準で点数をつけた。
1点:0%以上20%未満。
2点:20%以上40%未満。
3点:40%以上60%未満。
4点:60%以上80%未満。
5点:80%以上。
4点以上を「○」、3点を「△」、2点以下を「×」と判定した。
<試験6:フィルム柔軟性の評価>
厚み40μmの樹脂組成物層を有する樹脂シートを、支持体が内側になるように直径3mmの軸に沿わせて90°折り曲げ、樹脂組成物層の割れがない場合を「〇」と評価し、割れがある場合を「×」と評価した。
<結果>
上述した実施例及び比較例の樹脂組成物の組成及び測定結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
(A-1)成分の量:樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対する(A-1)低粘度エポキシ樹脂の量。
(C)成分の量:樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対する(C)無機充填材の量。
(C)成分の平均粒径:(C)無機充填材の平均粒径。
巨大粒子の割合:(C)無機充填材100体積%に対する当該(C)無機充填材中の巨大粒子の割合。
Df:樹脂組成物の硬化物の誘電正接。
CTE:樹脂組成物の硬化物の線熱膨張係数。
硬化条件:50%破壊エネルギー測定用の硬化試料を得るための樹脂組成物の硬化条件。
Figure 2024098292000015
Figure 2024098292000016
Figure 2024098292000017
Figure 2024098292000018
Figure 2024098292000019
Figure 2024098292000020
<検討>
比較例1~3は、硬化物が耐クラック性に劣る。また、比較例4及び6は、硬化物が誘電正接及び線熱膨張係数に劣る。さらに、比較例5は、樹脂組成物の柔軟性に劣るので、一般的な製造方法では樹脂シートを製造することができず、樹脂シートの製造のために特殊な方法を要したので、実用的でなかった。これに対し、実施例においては、柔軟性に優れる樹脂組成物が得られたので、本発明の樹脂組成物によれば柔軟性に優れた樹脂シートを得られることが確認できる。また、実施例では、誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性に優れた硬化物が得られるので、本発明の樹脂組成物の硬化物によれば、誘電正接、線熱膨張係数及び耐クラック性に優れる絶縁層を形成できることが理解できる。
実施例11及び12では、実施例1と同様にして製造した樹脂組成物を、実施例1とは異なる硬化条件で硬化して、50%破壊エネルギーの測定用の硬化試料を得ている。実施例11及び12では実施例1とは異なる50%破壊エネルギーが測定されことから、50%破壊エネルギーは硬化条件によって変化しうることが把握される。よって、樹脂組成物の硬化物について50%破壊エネルギーを対比するためには、その硬化条件を一致させて対比を行うべきであることが理解できる。
なお、上述した実施例1~9、11及び12並びに比較例では、樹脂組成物層を熱硬化させる過程において粗化処理をおこなって破壊強度測定用の硬化試料を得た。発明者は、粗化処理を省略したこと以外は実施例1~9、11及び12並びに比較例と同様の方法で破壊強度測定用の試料基板を用意した場合でも、上述した実施例1~9、11及び12並びに比較例と同じ50%破壊エネルギーが測定されることを確認している。
また、上述した実施例10では、樹脂組成物層を熱硬化させる過程において粗化処理を行わずに破壊強度測定用の硬化試料を得た。発明者は、実施例1~9、11及び12と同じ方法で粗化処理を行うこと以外は実施例10と同様の方法で破壊強度測定用の試料基板を用意した場合でも、上述した実施例10と同じ50%破壊エネルギーが測定されることを確認している。
10 硬化試料
20 撃ち型
30 錘

Claims (13)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)活性エステル樹脂、及び、(C)無機充填材を含む樹脂組成物であって、
    (A)エポキシ樹脂が、(A-1)25℃において500mPa・s以下の粘度を有する液状エポキシ樹脂を含み、
    (A-1)成分の量が、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、1質量%以上、15質量%以下であり、
    (C)無機充填材の平均粒径が、0.01μm以上1.0μm以下であり、
    (C)無機充填材に含まれる粒径1.5μm以上の粒子の割合が、(C)無機充填材の全量100体積%に対して、10体積%以下であり、
    (C)無機充填材の量が、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、60質量%以上であり、
    樹脂組成物を130℃30分間、170℃30分間及び200℃60分間の条件で硬化して得られる厚み80μmの硬化試料のデュポン衝撃試験による50%破壊エネルギーが、0.1J以上である、樹脂組成物。
  2. 樹脂組成物を190℃90分の条件で硬化させて得られる評価用硬化物の線熱膨張係数が、30ppm/℃以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 樹脂組成物を190℃90分の条件で硬化させて得られる評価用硬化物の誘電正接が、0.0050以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. (D)ラジカル重合性樹脂を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. (D)ラジカル重合性樹脂が、マレイミド系ラジカル重合性樹脂及びスチレン系ラジカル重合性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の樹脂組成物。
  6. (B)活性エステル樹脂以外の(E)硬化剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. (F)硬化促進剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  8. (G)ポリマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  9. 絶縁層形成用である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  10. 請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
  11. 支持体と、当該支持体上に形成された樹脂組成物層と、を備え、
    樹脂組成物層が、請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂シート。
  12. 請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
  13. 請求項12に記載のプリント配線板を備える、半導体装置。
JP2023001703A 2023-01-10 樹脂組成物 Pending JP2024098292A (ja)

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