JP2024096931A - 発泡絶縁電線及びその製造方法 - Google Patents

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正浩 阿部
芳紀 鈴木
考信 渡部
直人 寺木
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Abstract

Figure 2024096931000001
【課題】静電容量を低減しながら、絶縁層と心線との密着性を向上させる発泡絶縁電線を提供する。
【解決手段】発泡絶縁電線4は、単線から構成される心線10と、心線10の外周を覆う発泡絶縁層11と、を備える。心線10と発泡絶縁層11から構成される発泡コアの静電容量は、50pF/m以上70pF/m以下であり、発泡絶縁層11から心線10を引き抜く力を示すボンドストレングスは、発泡絶縁電線11の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、発泡絶縁電線11の長さが10mmのときに1.0N以下である。
【選択図】図10

Description

本発明は、電線に関し、例えば、単線からなる心線の外周を覆う発泡絶縁層を有する発泡絶縁電線及びその製造方法に適用して有効な技術に関する。
特開2011-162721号公報(特許文献1)には、内部導体の外周を覆う発泡絶縁体を含む発泡絶縁電線に関する技術が記載されている。
特開2011-162721号公報
電線における信号の高速伝送を実現するためには、電線の静電容量を低減することが有効である。例えば、電線の静電容量を低減する方法として、導体から構成される心線の外周を覆う絶縁層の誘電率を低減することが考えられる。具体的には、絶縁層を発泡絶縁材料から構成することにより、絶縁層の誘電率を低減することが行われている。
また、電線においては、心線と絶縁層との密着性を向上させることも必要である。この点に関し、絶縁層と心線との密着性を向上しようとしても、例えば、押出機を使用して発泡絶縁電線を製造する場合には、絶縁層と心線との密着性を向上することが困難である。特に、心線が単線から構成されている場合には、絶縁層と心線との密着性を向上させることが困難であることを本発明者は新規に見出した。
したがって、発泡絶縁電線の静電容量を低減しながら、絶縁層と心線との密着性を向上するための工夫が望まれている。
本発明の目的は、発泡絶縁電線の静電容量を低減しながら、絶縁層と心線との密着性を向上することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
一実施の形態における発泡絶縁電線は、単線から構成される心線と、前記心線の外周に設けられた発泡絶縁層と、を備える、発泡絶縁電線であって、前記心線と前記発泡絶縁層を含む発泡コアの静電容量は、50pF/m以上70pF/m以下であり、前記発泡絶縁層から前記心線を引き抜く力を示すボンドストレングスは、前記発泡絶縁電線の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、前記発泡絶縁電線の長さが10mmのときに1.0N以下である。
別の実施の形態における発泡絶縁電線の製造方法は、単線からなる心線を所定の線速で動かしながら、押出機から発泡絶縁材料を所定の吐出流速で前記心線の外周を覆うように押し出すことにより、前記心線の外周を覆う前記発泡絶縁材料からなる発泡絶縁層を形成する、発泡絶縁電線の製造方法であって、 前記線速よりも前記吐出流速の方が大きい。
一実施の形態によれば、発泡絶縁電線の静電容量を低減しながら、絶縁層と心線との密着性を向上することができる。
発泡絶縁電線の模式的な構成を示す図である。 発泡絶縁層製造システムの一例を示す図である。 押出機によって心線の外周に発泡絶縁層を形成する様子を示す図である。 心線を撚線から構成した発泡絶縁電線を模式的に示す図である。 心線を撚線から構成した発泡絶縁電線の長手方向を模式的に示す図である。 心線を単線から構成した発泡絶縁電線を模式的に示す図である。 心線を単線から構成した発泡絶縁電線の長手方向を模式的に示す図である。 心線の突き出しを説明する図である。 心線が発泡絶縁電線の中心位置からずれることを説明する図である。 実施の形態における発泡絶縁電線の模式的な構成を示す断面図である。 押出機によって心線の外周に発泡絶縁層を形成する様子を示す図である。 実施の形態における発泡絶縁層の断面構造を示す写真である。 実施の形態における発泡絶縁層の断面構造を示す写真である。 心線を発泡絶縁層で被覆した断面構造を示す写真である。 (a)は図14のA-A線での断面写真であり、(b)は図14のB-B線での断面写真であり、(c)は図14のC-C線での断面写真である。 ボンドストレングスの評価方法を説明する図である。 静電容量の測定方法を説明する図である。
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<発泡絶縁電線の構成>
図1は、発泡絶縁電線の模式的な構成を示す図である。
図1では、特に、発泡絶縁電線の端部を加工した模式的な接続構造が示されているので、この接続構造に基づいて、発泡絶縁電線の構成を説明することにする。
図1に示すように、発泡絶縁電線1は、心線10を有する。この心線10は内部導体から構成されている。例えば、心線10を構成する内部導体としては、特に材質を限定するものではないが、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金を使用することができる。なお、この内部導体の表面にめっきが施されていてもよい。心線10の直径は、製品サイズ42AWG~46AWG(American Wire Gauge:アメリカ規格、以下AWGと略す)により異なるが、例えば、0.04mm以上0.06mm以下である。
次に、発泡絶縁電線1は、心線10の外周に設けられた発泡絶縁層11を有している。この発泡絶縁層11は、内部に気泡を含む絶縁材料から構成されている。これにより、発泡絶縁層11の誘電率は、気泡を含まない構成に比べて低くなる。発泡絶縁層11は、例えば、発泡核剤を含有するフッ素樹脂から構成することができる。ここで、発泡核剤は、気泡の成長の核として機能し、フッ素樹脂に分散されて混入されていることから、フッ素樹脂の内部に形成される気泡を分散させる機能を有している。
例えば、フッ素樹脂は、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、または、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含む一方、発泡核剤は、例えば、窒化ホウ素から構成することができる。
ここで、本明細書では、心線10と発泡絶縁層11から構成される構成要素を発泡コアと呼ぶことにする。
続いて、発泡絶縁電線1は、発泡絶縁層11の外周に設けられたスキンテープ12と、このスキンテープ12の外周に設けられた外部導体13とを有する。スキンテープ12は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレートから構成することができ、スキン層の厚さは、例えば0.01mm以上0.02m以下とすることができる。
外部導体13は、例えば、シールド編組構造やシールド横巻構造から構成されており、外部からの電磁ノイズをシールドする機能を有している。外部導体13に用いる導体は、例えば、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金を使用することができる。外部導体13に用いる導体の直径は、例えば、0.02mm以上0.03mm以下とすることができる。なお、この導体の表面にめっきが施されていてもよい。
さらに、発泡絶縁電線1は、外部導体13の外周に設けられたシース14を有している。このシース14は、例えば、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタンゴム、又はシリコーンゴム等の絶縁樹脂材料から構成されている。また、シース14(発泡絶縁電線1)の外径は、例えば、0.21mm以上0.37mm以下とすることができる。
このように構成されている発泡絶縁電線1には、例えば、以下に示す特性が要求される。
<発泡絶縁電線に要求される特性>
発泡絶縁電線1は、例えば、高速伝送用電線として使用されることから、信号遅延を抑制するために静電容量が小さいことが要求される。例えば、発泡絶縁電線1の発泡コアに要求される静電容量は、50pF/m以上70pF/m以下である。より詳細には、表1に示す2種類の要求仕様がある。
Figure 2024096931000002
発泡絶縁電線1は、発泡絶縁電線1の静電容量を低減するために、発泡絶縁層11に気泡を有する。この結果、気泡の存在によって発泡絶縁層11の誘電率が小さくなることから、発泡絶縁電線1の静電容量を低減することができる。すなわち、発泡絶縁電線1は、静電容量が小さい特性がある。
一方、発泡絶縁電線1には、心線10と発泡絶縁層11との密着性も要求される。なぜなら、発泡絶縁電線1の端部に接続構造を形成する際に端末加工が施されるが、心線10と発泡絶縁層11との密着性が小さい(気泡が多い)と、端末加工時(発泡絶縁層11を切断するために切断刃によって押圧された時)に心線10の突き出しが生じるからである。また、心線10と発泡絶縁層11との密着性が小さいと、発泡絶縁電線1を屈曲させた場合にも、心線10だけが突き出る不具合が生じる可能性が高くなるからである。
逆に、心線10と発泡絶縁層11との密着性が高すぎる(気泡が少ない)と、静電容量を低減することが困難となるとともに、端末加工時に発泡絶縁層11を引き剥がしにくくなる結果、端末加工に支障をきたすことになる。したがって、発泡絶縁電線1には、心線10と発泡絶縁層11との密着性に関し、密着性が低すぎず、かつ、密着性が高すぎないことが要求される。具体的に、発泡絶縁層11から心線10を引き抜く力を示すボンドストレングスは、発泡絶縁電線1の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、発泡絶縁電線1の長さが10mmのときに1.0N以下であることが要求される。
このように発泡絶縁電線1には、静電容量の低減と適度な密着性の向上が要求されており、発泡絶縁電線1の性能を向上させるためには、如何にして、静電容量の低減と適度な密着性の向上とを両立することができるかが重要となる。
ここで、今までの発泡絶縁電線1の心線10は、撚線から構成されていることが多い。この場合、上述した静電容量の範囲に含まれる静電容量を有するとともに、上述した適度な密着性を有する発泡絶縁電線1が実現できている。つまり、心線10を撚線から構成している今までの発泡絶縁電線1では、静電容量の低減と適度な密着性の向上とを両立することができている。ところが、近年では、発泡絶縁電線1の心線10を単線から構成することが検討されている。そして、本発明者は、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線1では、静電容量の低減と適度な密着性の向上とを両立することが困難であることを新規に見出した。以下では、本発明者が見出した新規な知見について説明する。
<発泡絶縁電線の細線化の要求>
例えば、静電容量が小さい発泡絶縁電線1は、医療用プローブケーブルに使用される。詳細には、超音波撮像装置のプローブケーブルとして、発泡絶縁電線1が使用される。このとき、超音波撮像装置の画像を表示する表示装置の各画素素子に対して、発泡絶縁電線1がそれぞれ接続される。したがって、画像の解像度を高めるためには、より多くの発泡絶縁電線1が必要となり、例えば、数百本の発泡絶縁電線1の束が必要となる。
一方、発泡絶縁電線1から構成されるプローブケーブルは、例えば、検査員によって患者のあらゆる部位にあてがわれるため、プローブケーブルを構成する発泡絶縁電線1には、柔軟性も要求される。このことから、プローブケーブルに使用される発泡絶縁電線1は、細線化して柔軟性を高めながら電線密度も高めることが望まれている。
以上のことから、近年では、発泡絶縁電線1の細線化が望まれている。
そして、発泡絶縁電線1の細線化を進めるにあたって、心線10の構造を撚線構造から単線構造に変更することが検討されている。以下に、この理由について説明する。
例えば、発泡絶縁電線1の心線10を構成する撚線は、7本の単線を撚ることにより実現されている。ところが、撚線から構成される心線10の細線化を進めるためには、撚線を構成する単線の径を単純に小さくする必要があり(例えば、1/3)、撚線を構成する単線の製造が困難となる。さらには、単線を細線化すると、撚り合わせする際の張力に起因する断線などが顕在化すると考えられる。さらには、撚線を使用する発泡絶縁電線1は、単線を使用する発泡絶縁電線1よりも撚り合わせ工程の分だけ製造コストが高くなる。ただし、撚線は、単線よりも柔軟性があるが、細線化が進むと単線と撚線との柔軟性の差は小さくなる。
このことから、発泡絶縁電線1の細線化を進めるにあたって、発泡絶縁電線1を構成する心線10の構造を撚線構造から単線構造にすることが検討されているのである。
この点に関し、本発明者は、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線1では、静電容量の低減と適度な密着性の向上とを両立することが困難であることを新規に見出した。特に、本発明者は、発泡絶縁層11の製造工程に着目して、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線1には、心線10と発泡絶縁層11との適度な密着性を確保することが困難である原因を突き止めたので、以下では、この点について説明する。
<発泡絶縁層製造システム>
まず、心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成する発泡絶縁層製造システムについて図面を参照しながら説明する。
図2は、発泡絶縁層製造システムの一例を示す図である。
図2において、発泡絶縁層製造システム100は、送出機101と、心線予熱機102と、押出機103と、水槽104と、外径測定機105と、引取機106と、巻取機107とを有している。図2に示す発泡絶縁層製造システム100では、まず、送出機101から心線10が送り出される。その後、送出機101から送り出された心線10は、心線予熱機102で加熱される。その後、加熱された心線10は、所定の線速で押出機103に送り込まれる。そして、押出機103においては、ガスボンベ103aから供給される発泡剤(炭酸ガスなど)が溶け込んだ発泡絶縁材料が混練されて、所定の線速で移動している心線10の外周に吐出される。この結果、心線10の外周を覆う発泡絶縁層11が形成される。その後、発泡絶縁層11で覆われた心線10は水槽104に搬入されて、静電容量測定機104aによって静電容量が測定される。次に、発泡絶縁層11で覆われた心線10は、外径測定機105において外径が測定される。その後、発泡絶縁層11で覆われた心線10は、引取機106を介して、最終的に巻取機107に巻き取られる。以上のようにして、心線10の外周に発泡絶縁層11が形成される。
続いて、図2に示す押出機103において心線10の外周に発泡絶縁層11が形成される詳細について図面を参照しながら説明する。
図3は、押出機によって心線10の外周に発泡絶縁層11を形成する様子を示す模式図である。
押出機103においては、発泡剤として炭酸ガスや窒素ガスまたはこれらの混合ガスに代表される不活性ガスが押出機103のバレル部から注入された後、スクリュでフッ素樹脂と混練される。すなわち、押出機103においては、発泡剤を含有するフッ素樹脂から構成される発泡絶縁材料20が混練される。その後、図3に示すように、心線10をy方向に所定の線速で動かしながら、押出機103の口金103bから混練された発泡絶縁材料20が心線10の外周に吐出される。このとき、口金103bからの発泡絶縁材料20の吐出速度は、心線10の線速と同等である。そして、口金103bから発泡絶縁材料20が心線10の外周に押し出される際、高圧状態の押出機103の内部と大気圧状態(低圧状態)の押出機103の外部との圧力差によって、発泡絶縁材料20に含まれる発泡剤が過飽和状態となる。これにより、口金103bから吐出された発泡絶縁材料20に気泡30が発生し、この発生した気泡30が成長することにより、心線10の外周に発泡絶縁層11が形成されることになる。このとき、図3に示すように、気泡30は、外側に向かって外径が大きくなるように成長する。この結果、心線10と発泡絶縁層11との間には隙間が生じ、この隙間が空隙部40として大きくなる。
このことから、押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成すると、必然的に心線10と発泡絶縁層11との間に空隙部40が形成されることになる。このことは、空隙部40の存在によって心線10と発泡絶縁層11との間の密着性が低下することを意味する。すなわち、押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成すると必然的に心線10と発泡絶縁層11との間に空隙部40が形成される結果、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性が低下する課題が生じるのである。
<心線10が撚線から構成される場合>
この点に関し、例えば、心線10が撚線から構成される場合には、上述したように押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成しても、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性の低下が改善の余地として顕在化することは少ない。
以下に、この理由について説明する。
図4は、心線を撚線から構成した発泡絶縁電線を模式的に示す図である。
図4において、心線10は、例えば、7本の単線10aを撚り合わせることにより形成されている。このとき、撚線を構成する心線10と発泡絶縁層11との間には空隙部40が形成されているが、撚線を構成する単線10a間には発泡絶縁層11が入り込んでいる。つまり、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2では、空隙部40が形成されても部分的に心線10と発泡絶縁層11とが接触する部分が形成される。これにより、撚線から構成される心線10と発泡絶縁層11との間の密着性の低下が抑制される。
さらに、図5は、心線を撚線から構成した発泡絶縁電線の長手方向(y方向)を模式的に示す断面図である。図5においては、発泡絶縁電線2の心線10は、複数の単線10aを撚り合わせた撚線構造から構成されている結果、長手方向(y方向)に撚線構造に起因する凹凸構造が形成される。そして、心線10の撚線構造に合わせて発泡絶縁層11が形成されることから、発泡絶縁層11の内周面にも凹凸構造が形成される。これにより、例えば、図5の領域ARに示すように、心線10の撚線構造に起因する凹凸構造と、心線10の撚線構造に合わせて形成された発泡絶縁層11の凹凸構造とがかみ合うことになる。したがって、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2では、発泡絶縁層11から心線10を引き抜く際、撚線構造の心線10と発泡絶縁層11が互いにかみ合っている場所(領域AR)が存在するため、発泡絶縁層11から心線10を引き抜きにくくなる。つまり、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2では、ボンドストレングスが大きくなる。
このように、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2では、押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成しても、撚線に特有の構造に起因して心線10と発泡絶縁層11との間の密着性の低下が改善の余地として顕在化しないのである。
<心線10が単線から構成される場合>
これに対し、例えば、心線10が単線から構成される場合には、上述したように押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成すると、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性の低下が改善の余地として顕在化してしまうのである。
以下に、この理由について説明する。
図6は、心線を単線から構成した発泡絶縁電線を模式的に示す図である。
図6において、発泡絶縁電線3は、単線10bからなる心線10と、この心線10の外周を覆うように設けられた発泡絶縁層11とを有しているが、押出機103を使用して発泡絶縁層11が形成された結果、心線10と発泡絶縁層11との間に空隙部40が形成される。ここで、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線3では、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2とは異なり、撚線を構成する単線10a間に発泡絶縁層11が入り込むという特有の事情が存在しない。このことから、図6に示すように、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線3では、心線10と発泡絶縁層11とが直接密着する部分が存在することなく、心線10と発泡絶縁層11との間のすべての部分で空隙部40が介在することになる。このように、心線10を単線から構成した発泡絶縁電線3では、心線10と発泡絶縁層11とが直接接触する部分が存在しないことから、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性を確保することが困難になるのである。
さらに、図7は、心線を単線から構成した発泡絶縁電線の長手方向(y方向)を模式的に示す断面図である。図7においては、発泡絶縁電線3の心線10は、単線10bから構成されている結果、長手方向(y方向)に撚線構造に起因する凹凸構造が形成されることなく、心線10の表面は平坦となる。そして、心線10の表面形状に合わせて発泡絶縁層11が形成されることから、発泡絶縁層11の内周面も平坦になる。これにより、心線10を単線10bから構成した発泡絶縁電線3では、発泡絶縁層11から心線10を引き抜きやすくなる。つまり、心線10を単線10bから構成した発泡絶縁電線3では、ボンドストレングスが小さくなる。したがって、心線10を単線10bから構成した発泡絶縁電線3では、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性の低下が改善の余地として顕在化する。
例えば、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性が低下すると、図8に示すように、発泡絶縁電線3の端部に接続構造を形成する際の端末加工時に、心線10の突き出しが生じる可能性が高まるだけでなく、発泡絶縁電線3を屈曲させた場合にも、心線10だけが突き出る不具合が生じる可能性が高くなるのである。また、心線10と発泡絶縁層11との間の密着性が低下すると、図9に示すように、心線10が発泡絶縁電線3の中心位置からずれやすくなる。そして、心線10が発泡絶縁電線3の中心位置からずれると、発泡絶縁電線3の静電容量が長手方向でばらつくことになり、発泡絶縁電線の静電容量を規定の範囲内に収めることが困難となる。このように、心線10を単線10bから構成することを前提として、押出機103を使用して心線10の外周を覆う発泡絶縁層11を形成する場合、心線10と発泡絶縁層11との密着性を確保することが困難となり、これによって、発泡絶縁電線3の性能低下を招くことになる。すなわち、心線10を単線10bから構成した発泡絶縁電線3においては、心線10を撚線から構成した発泡絶縁電線2では顕在化しなかった発泡絶縁電線3に特有の改善の余地が存在する。
そこで、本実施の形態では、心線10を単線10bから構成した発泡絶縁電線3に存在する特有の改善の余地に対する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明することにする。
<実施の形態における発泡絶縁電線の構成>
図10は、本実施の形態における発泡絶縁電線の模式的な構成を示す断面図である。
図10において、y方向は、発泡絶縁電線4が延在する長手方向を示している。
図10に示すように、発泡絶縁電線4は、単線から構成される心線10と、心線10の外周に設けられた発泡絶縁層11とを備える。そして、この発泡絶縁層11には、気泡30が含まれている。ここで、発泡絶縁層11は、心線10と部分的に接触している。例えば、図10に示すように、領域BRにおいては、発泡絶縁層11と心線10とが接触している。一方、図10において、領域BR以外の領域では、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する。このように、本実施の形態における発泡絶縁電線4には、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分(領域BR)と、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが存在していることになる。
<実施の形態における構造上の特徴>
続いて、本実施の形態における特徴点について説明する。
本実施の形態における特徴点は、発泡絶縁電線4の心線10を単線から構成することを前提として、例えば、図10に示すように、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分と、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが存在している点にある。これにより、本実施の形態における発泡絶縁電線4によれば、発泡絶縁層11と心線10との密着性を向上することができる。なぜなら、本実施の形態における発泡絶縁電線4では、図10の領域BRに示すように、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分が存在することから、この部分における接触力によって発泡絶縁層11と心線10との密着力が向上するからである。すなわち、本実施の形態によれば、発泡絶縁層11と心線10との接触部分が適度な接触抵抗(摩擦抵抗)として機能することから、ボンドストレングスを規定範囲に収めることができる。具体的に、本実施の形態における発泡絶縁電線4によれば、発泡絶縁層11から心線10を引き抜く力を示すボンドストレングスを発泡絶縁電線4の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、発泡絶縁電線4の長さが10mmのときに1.0N以下である範囲に収めることができる。
特に、本実施の形態では、発泡絶縁層11と心線10とが部分的に接触していることが重要なポイントである。なぜなら、例えば、発泡絶縁層11と心線10とがまったく接触していない場合には、図7と同様に発泡絶縁層11と心線10との間に接触抵抗(摩擦抵抗)がまったく働かない結果、ボンドストレングスが極めて小さくなる一方、発泡絶縁層11と心線10とが全体的に接触していると、発泡絶縁層11と心線10との間に働く接触抵抗(摩擦抵抗)が極めて大きくなる結果、ボンドストレングスが大きくなり過ぎるからである。すなわち、発泡絶縁層11と心線10とが部分的に接触していることが規定範囲内のボンドストレングスを得る観点から重要なのである。
さらに、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分と発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが存在しているという本実施の形態の特徴点は、発泡絶縁電線4の細線化を図りながら発泡絶縁電線4の発泡コアの静電容量を規定範囲(50pF/m以上70pF/m以下)に収める観点からも重要な技術的意義を有している。
例えば、発泡絶縁層11と心線10とが部分的に接触している構成ではなく、発泡絶縁層11と心線10とが全体的に接触している構成について考える。この構成の場合、発泡絶縁電線4の発泡コアの静電容量を50pF/m以上70pF/m以下に収めるためには、発泡絶縁層11の発泡度を45%以上60%以下にする必要がある。ところが、発泡絶縁電線4の外径φがφ≦0.37mmとなるように細線化を図るためには、例えば、発泡絶縁層11の厚さを70μm程度に薄くしなければならない。このような厚さの発泡絶縁層11において45%以上60%以下の発泡度を実現することは非常に困難である。なぜなら、発泡絶縁層11の厚さが70μm以下の場合に45%以上60%以下の発泡度を実現しようとすると、発泡絶縁層11に含まれる気泡30のサイズが60μm以上と大きくなる。その結果、発泡絶縁層11に被覆破れなどが生じるおそれがあるからである。
これに対し、発泡絶縁層11と心線10とが部分的に接触している部分を有する構成では、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分も存在する。この場合、発泡絶縁層11に含まれる気泡30の誘電率と同様に空隙部40の誘電率も低い。したがって、本実施の形態では、発泡絶縁層11の内部に形成される気泡30だけでなく、発泡絶縁層11と心線10との間に介在する空隙部40も静電容量の低減に寄与することになる。このことは、発泡絶縁電線4の発泡コアの静電容量を、例えば、50pF/m以上70pF/m以下に収めるために発泡絶縁層11の発泡度を45%以上60%以下にする必要がなくなることを意味する。すなわち、空隙部40が静電容量の低減に寄与することから、発泡絶縁層11の発泡度を45%よりも低くしても、発泡絶縁電線4の発泡コアの静電容量を、例えば、50pF/m以上70pF/m以下に収めることができるのである。このことから、本実施の形態によれば、例えば、発泡絶縁電線4の外径φをφ≦0.37mmとするために、例えば、発泡絶縁層11の厚さを70μm程度に薄くする場合であっても、発泡度を大きくする場合に生じる発泡絶縁層11の被覆破れなどを抑制できる。
以上のことから、本実施の形態における特徴点によれば、心線10を単線から構成する発泡絶縁電線4の外径を0.37mm以下に細線化する場合であっても、発泡絶縁層11と心線10との密着性の向上と、発泡絶縁電線4の静電容量の低減との両立を図ることができる。具体的に、本実施の形態における特徴点によれば、発泡絶縁層11から心線10を引き抜く力を示すボンドストレングスを発泡絶縁電線4の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、発泡絶縁電線4の長さが10mmのときに1.0N以下である範囲に収めることができるとともに、発泡絶縁電線4の発泡コアの静電容量を50pF/m以上70pF/m以下に収めることができる。したがって、本実施の形態によれば、心線10を単線から構成する発泡絶縁電線4の細線化と性能向上を両立できる。
<発泡絶縁層11の製造工程>
上述したように、本実施の形態における発泡絶縁電線4では、発泡絶縁電線4の心線10を単線から構成することを前提として、例えば、図10に示すように、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分と、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが併存している。以下では、この構成を実現するために、心線10の外周に発泡絶縁層11を形成する発泡絶縁層11の製造工程について説明する。
図11は、押出機によって心線の外周に発泡絶縁層を形成する様子を示す模式図である。
押出機103においては、発泡剤として炭酸ガスや窒素ガスまたはこれらの混合ガスに代表される不活性ガスが押出機103のバレル部から注入された後、スクリュでフッ素樹脂と混練される。すなわち、押出機103においては、発泡剤を含有するフッ素樹脂から構成される発泡絶縁材料20が混練される。その後、図11に示すように、心線10をy方向に所定の線速で動かしながら、押出機103の口金103bから混練された発泡絶縁材料20が心線10の外周に吐出される。そして、口金103bから発泡絶縁材料20が心線10の外周に押し出される際、高圧状態の押出機103の内部と大気圧状態(低圧状態)の押出機103の外部との圧力差によって、発泡絶縁材料20に含まれる発泡剤が過飽和状態となる。これにより、口金103bから吐出された発泡絶縁材料20に気泡30が発生し、この発生した気泡30が成長することにより、心線10の外周に発泡絶縁層11が形成されることになる。
<実施の形態における製法上の特徴>
ここで、本実施の形態における特徴点は、例えば、図11に示すように、心線10の外周に発泡絶縁層11を被覆する工程において、心線10の線速(引出速度)に対して、発泡絶縁材料20の吐出流速を速くする点にある。これにより、例えば、発泡絶縁材料20は、心線10に対して余剰に供給されることになる。この結果、図11に示すように、口金103bから吐出された発泡絶縁材料20は、波打つように心線10の外周上に押し出される。このため、本実施の形態によれば、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分と、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが併存するように、心線10の外周を被覆する発泡絶縁層11を形成することができる。すなわち、本実施の形態における製法上の特徴点は、例えば、図3に示すように、心線10の線速(引出速度)と発泡絶縁材料20の吐出流速とを等しくするのではなく、図11に示すように、心線10の線速(引出速度)に対して、発泡絶縁材料20の吐出流速を速くする点にある。
このように本実施の形態における製法上の特徴点は、例えば、図11に示すように、単線からなる心線10を所定の線速で動かしながら、押出機103から発泡絶縁材料20を所定の吐出流速で心線10の外周を覆うように押し出すことにより、心線10の外周を覆う発泡絶縁材料20からなる発泡絶縁層11を形成する製造工程において、発泡絶縁材料20の吐出流速が心線10の線速よりも速い点にある。具体的に、本実施の形態では、心線10の線速に対する発泡絶縁材料20の吐出流速の比(吐出流速/線速)は、1.1以上1.3以下である。これにより、本実施の形態における製法上の特徴点によれば、発泡絶縁層11を心線10と部分的に接触させることができる。
<発泡絶縁電線の写真>
図12および図13は、本実施の形態における発泡絶縁層11の断面構造を示す写真である。図14は、心線10を発泡絶縁層11で被覆した断面構造を示す写真である。さらに、図15(a)は、図14のA-A線での断面写真であり、図15(b)は、図14のB-B線での断面写真であり、図15(c)は、図14のC-C線での断面写真である。
図12および図13に示すように、発泡絶縁層11の内部に気泡30が形成されているとともに、発泡絶縁層11の内周が波打っていることがわかる。また、図14に示す写真から図10および図11に示す構造が実現されていることがわかる。さらに、図15(a)および図15(c)では、発泡絶縁層11が部分的に心線10と接触する部分が存在しており、心線10は発泡絶縁層11に固定されている一方、図15(b)では、発泡絶縁層11が完全に心線10と接触しておらず、心線10は発泡絶縁層11に固定されていないことがわかる。なお、ここで心線10は発泡絶縁層11に固定されていない状態は、後述のボンドストレングス評価方法で、ボンドストレングスがゼロになる状態である。
以上のことから、図12~図15に示す実際の写真から、発泡絶縁層11と心線10とが接触している部分と、発泡絶縁層11と心線10との間に空隙部40が介在する部分とが存在しているという本実施の形態における特徴点が実現されていることがわかる。
<実施例>
以下では、発泡絶縁電線の心線を単線から構成することを前提として、本実施の形態における発泡絶縁電線によれば、心線と発泡絶縁層との密着性向上と発泡絶縁電線の静電容量の低減とを両立できるという有用な効果の検証結果を実施例に基づいて説明する。
<<試験の内容>>
心線と発泡絶縁層との密着性を評価する手法として、ボンドストレングス評価方法を使用する。以下では、ボンドストレングスの評価方法について説明する。
図16は、ボンドストレングスの評価方法を説明する図である。
まず、図16(a)に示すように、全体の長さが100mmから120mmの導体からなる心線10の一部(被覆部50mm(試料長50mmともいう)または被覆部10mm(試料長10mmともいう))を発泡絶縁層11で被覆した試料(発泡コア)を用意する。
次に、図16(b)に示すように、試料の心線をプルゲージ200に縛り付けるとともに、発泡絶縁層11で被覆された被覆部(50mmまたは10mm)をテープ210で挟む。なお、被覆部をテープ210で挟む際に、発泡絶縁層11の部分を押さえず、テープ210の自重によって被覆部とテープ210とが接着するようにする。
プルゲージ200は、例えば、IMADA製のDS2-50Nが使用される。また、テープ210は、例えば、NITTO TAPE製のマスキングテープN-300 12×30が使用される。テープ210の幅は12mmである。
続いて、図16(c)に示すように、発泡絶縁層11を押さえずにテープ210だけを押さえながら発泡絶縁層11を心線10から引き抜く。この引き抜き時にプルゲージ200にかかる最大値をボンドストレングスとして記録する。なお、テープ210の引き抜き速度は、約1m/minである。
次に、静電容量の測定方法 について説明する。
静電容量の測定は、図17に示すように、1mの発泡コア300a、またはこの発泡コア300aの外周にスキンテープからなるスキン層を形成したもの(部材300b)を、水302を満たした金属製パイプ301に入れ、一方の端を金属製パイプ301と接続し、他方の端を横河ヒューレットパッカッード製のLCRメータ303と接続し、1MHzでの静電容量を測定した。
<<評価結果>>
評価結果を表2に示す。なお、各種試験は10試料の評価を行った。試料長50mmの試料のボンドストレングスについては最小値を、試料長10mmの試料のボンドストレングスについては最大値を記載している。また、発泡コアの静電容量については、最大値と最小値を記載している。
Figure 2024096931000003
発泡絶縁体材料としてPFA(MFR70g/10分)またはFEP(MFR36g/10分)に発泡核剤として窒化ホウ素を0.5質量部ブレンドしたフルコンパウンドを使用した。発泡絶縁層の製造に使用した押出機は、シリンダ部に発泡剤である炭酸ガス、窒素ガスあるいはこれらの混合ガスを注入できるノズルを備える。また、発泡剤は、ボンベ側の1次圧力を2次側の減圧弁で減圧して使用した。ここで、「PFA」は、フッ素樹脂の1つであり、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体を示し、「FEP」はテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体を示している。また、「MFR」とは、メルトフローレートであり、樹脂の流動性を示す指標である。「MFR」が大きいほど溶融時の流動性が高くなる。
実施例1~実施例3(要求静電容量:60pF/m以上70pF/m以下)は、心線の線速に対して発泡絶縁材料の吐出流速の比率が1.1倍から1.3倍の例である。ここでは、線速を一定にし、押出機のスクリュ回転数を大きくして吐出流速を大きくすることによって、この比率の調整を行った。実施例1~実施例3においては、試料長50mmおよび試料長10mmの時のボンドストレングスの値が規定範囲内であった。また、実施例1~実施例3においては、発泡コアの静電容量も63pF/m~69pF/mで規定範囲内であり、スキン層工程終了後の発泡コアの静電容量も63pF/m~68pF/mで規定範囲内であった。
実施例4(要求静電容量:60pF/m以上70pF/m以下)は、心線の径が46AWG(0.04mm)の例である。実施例4においても、心線の線速に対して発泡絶縁材料の吐出流速の比率が1.1倍であり、ボンドストレングスおよび静電容量がともに規定範囲内であった。
実施例5および実施例6(要求静電容量:60pF/m以上70pF/m以下)は、それぞれ発泡剤として窒素ガスあるいは窒素ガスと炭酸ガスを1:1で混合したガスを使用する例を示している。このとき、炭酸ガスに対して窒素ガスはフッ素樹脂に対する溶解度が低いため、発泡コアの静電容量が高くなる傾向があるが、実施例5および実施例6のいずれの場合も、ボンドストレングスおよび発泡コアの静電容量はともに規定範囲内であった。
実施例7(要求静電容量:60pF/m以上70pF/m以下)は、発泡絶縁材料としてFEP(MFR36g/10分)を使用した例である。PFAのMFRがFEPに対して2倍程度大きいため、溶融時のFEPの粘度がPFAに対して大きくなる。このため、気泡の成長が遅くなることから発泡コアの静電容量が若干高くなる傾向があるが、ボンドストレングスおよび発泡コアの静電容量はともに規定範囲内であった。ここで、「FEP」とは、フッ素樹脂の1つであり、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体を示している。
実施例8(要求静電容量:50pF/m以上60pF/m以下)は、実施例1~7と比較して発泡コアの静電容量を小さくしたものである。発泡絶縁体層の厚さを大きくする(発泡コアの外径を大きくする)および/または発泡絶縁体層の発泡度を高くすることにより、静電容量を小さくすることができる。実施例8は42AWGの結果であり、発泡度を高くするため炭酸ガス注入圧を1MPaと高くし、また発泡絶縁層の径もφ=0.267mmと大きくした。発泡絶縁材料の吐出流速の比率を既定した1.1倍にすることで、ボンドストレングスおよび静電容量は規定範囲以内となった。同様に、実施例9(要求静電容量:50pF/m以上60pF/m以下)は46AWGの場合であるが、ボンドストレングスおよび静電容量が規定範囲以内であった。
このように、本実施の形態における製法上の特徴点を有する実施例1~実施例9では、ボンドストレングスおよび発泡コアの静電容量はともに規定範囲内であったため、実施例1~実施例9のそれぞれの総合評価は合格となった。したがって、実施例1~実施例9によれば、発泡絶縁電線の心線を単線から構成することを前提として、心線と発泡絶縁層との密着性向上と発泡絶縁電線の静電容量の低減とを両立できることがわかる。
一方、比較例1は、心線の線速に対して発泡絶縁材料の吐出流速の比率が1.0倍の例である。比較例1では、発泡絶縁層の内面が平坦な状態となって心線と接触しない構成であり、ボンドストレングスがゼロとなった。また、発泡コアの静電容量も心線の位置が固定されない結果、規定範囲以外となるものもあり、不合格であった。
比較例2は、心線の線速に対して発泡絶縁材料の吐出流速の比率が1.4倍の例である。比較例2では、発泡絶縁材料の吐出速度が速すぎて心線を引っ張るため、心線が断線して製造することができなかった。
比較例3は、未発泡絶縁電線の例である。比較例3では、未発泡であるため、発泡絶縁材料の押出後の内径拡大は発生しなかった。そのため、ボンドストレングスは心線強度以上に大きくなり、心線切れ(導体切れ)となった。また、未発泡のため発泡コアの静電容量は規定範囲外であり不合格であった。
以上のことから、比較例1~比較例3は、本実施の形態における製法上の特徴点が具現化されておらず、この場合、各種試験のいずれかにおいて不合格となっている。このことは、本実施の形態における特徴点を具現化する条件が満たされていない場合には、発泡絶縁電線の心線を単線から構成することを前提として、心線と発泡絶縁層との密着性向上と発泡絶縁電線の静電容量の低減とを両立することが困難であることを意味している。したがって、実施例1~実施例9と比較例1~比較例3との対比によって、本実施の形態における特徴点によれば、発泡絶縁電線の心線を単線から構成することを前提として、心線と発泡絶縁層との密着性向上と発泡絶縁電線の静電容量の低減とを両立できることが裏付けられていることになる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
前記実施の形態は、以下の形態を含む。
(付記1)
単線からなる心線を所定の線速で動かしながら、押出機から発泡絶縁材料を所定の吐出流速で前記心線の外周を覆うように押し出すことにより、前記心線の外周を覆う前記発泡絶縁材料からなる発泡絶縁層を形成する、電線の製造方法であって、
前記線速に対する前記吐出流速の比(吐出流速/線速)は、1.1以上1.3以下である、電線の製造方法。
1 発泡絶縁電線
2 発泡絶縁電線
3 発泡絶縁電線
4 発泡絶縁電線
10 心線
10a 単線
11 発泡絶縁層
12 スキンテープ
13 外部導体
14 シース
20 発泡絶縁材料
30 気泡
40 空隙部
100 発泡絶縁層製造システム
101 送出機
102 心線予熱機
103 押出機
103a ガスボンベ
103b 口金
104 水槽
104a 静電容量測定機
105 外径測定機
106 引取機
107 巻取機
200 プルゲージ
210 テープ
300a 発泡コア
300b 部材
301 金属製パイプ
302 水
303 LCRメータ
AR 領域
BR 領域



















Claims (7)

  1. 単線から構成される心線と、
    前記心線の外周に設けられた発泡絶縁層と、
    を備える、発泡絶縁電線であって、
    前記心線と前記発泡絶縁層を含む発泡コアの静電容量は、50pF/m以上70pF/m以下であり、
    前記発泡絶縁層から前記心線を引き抜く力を示すボンドストレングスは、前記発泡絶縁電線の長さが50mmのときに0.1N以上であり、かつ、前記発泡絶縁電線の長さが10mmのときに1.0N以下である、発泡絶縁電線。
  2. 請求項1に記載の発泡絶縁電線において、
    前記発泡絶縁電線の外径φは、φ≦0.37mmの関係を満たす、発泡絶縁電線。
  3. 請求項1または2に記載の発泡絶縁電線において、
    前記発泡絶縁層と前記心線との間には、部分的に空隙部が介在する、発泡絶縁電線。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡絶縁電線において、
    前記発泡絶縁層は、発泡核剤を含有するフッ素樹脂を含む、発泡絶縁電線。
  5. 請求項4に記載の発泡絶縁電線において、
    前記フッ素樹脂は、4フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、または、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体を含み、
    前記発泡核剤は、窒化ホウ素である、発泡絶縁電線。
  6. 単線からなる心線を所定の線速で動かしながら、押出機から発泡絶縁材料を所定の吐出流速で前記心線の外周を覆うように押し出すことにより、前記心線の外周を覆う前記発泡絶縁材料からなる発泡絶縁層を形成する、発泡絶縁電線の製造方法であって、
    前記線速よりも前記吐出流速の方が大きい、発泡絶縁電線の製造方法。
  7. 請求項6に記載の発泡絶縁電線の製造方法において、
    前記線速に対する前記吐出流速の比(吐出流速/線速)は、1.1以上1.3以下である、発泡絶縁電線の製造方法。









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