JP2024094789A - TNF-α産生量減少剤 - Google Patents

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Abstract

Figure 2024094789000001
【課題】 ヒト由来マクロファージのTNF-αの産生量を減少させることができるTNF-αの産生量減少剤を提供する。
【解決手段】 VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有するヒト由来マクロファージ用のTNF-α産生量減少剤。
【選択図】 図1

Description

本発明は、TNF-α産生量減少剤に関する。
炎症とは、異物や組織の障害等により、生体にとって有害な刺激が侵入又は内部で形成された場合に生じる局所的な生体防御反応であり、生体にとって有害な刺激を認識、排除することで、局所の機能や構造を回復して正常に保ちつづけるために重要な役割を果たしている。しかしながら、活性化されたさまざまな生体反応システムは、自己免疫疾患等に見られるように、ときに正常な組織や機能に障害を与える場合もあることから、過剰なものは病的現象として治療の対象となる。これらの疾患に対しては抗炎症剤として従来、ステロイド性又は非ステロイド性薬剤等が使用されている。しかしながら、これらの抗炎症剤には、白血球異常や血小板異常等の副作用があるため、使用が制限されることもある(特許文献1、特許文献2)。
特開2008-69111号公報 特開2009-263308号公報
炎症因子の一つとしてTNF-αが知られている。また、TNF-αはマクロファージにより生産されることが知られている。
本発明は、ヒト由来マクロファージのTNF-αの産生量を減少させることができるTNF-αの産生量減少剤を提供することを目的とする。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有するヒト由来マクロファージ用のTNF-α産生量減少剤である。
本発明によれば、ヒト由来マクロファージのTNF-αの産生量を減少させることができるTNF-αの産生量減少剤を提供することができる。
図1は、ヒト由来M1マクロファージを培養している培地に製造例1のSELP8Kを所定の濃度となるように加えた際の、ヒト由来M1マクロファージのTNF-αの生産量の経時変化を示すグラフである。 図2は、マウス由来M1マクロファージを培養している培地に製造例1のSELP8Kを所定の濃度となるように加えた際の、マウス由来M1マクロファージのTNF-αの生産量の経時変化を示すグラフである。
以下、本発明のTNF-α産生量減少剤について具体的な実施形態を示しながら説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有する。
本発明のTNF-α産生量減少剤が、上記構成であることにより、ヒト由来マクロファージのTNF-αの産生量を減少させることができる。
したがって、炎症部の炎症を抑制できることが期待される。
まず、本発明のTNF-α産生量減少剤に含有されるポリペプチド(A)について説明する。
ポリペプチド(A)は、天然物からの抽出、有機合成法(酵素法、固相合成法及び液相合成法等)及び遺伝子組み換え法等によって得られる。有機合成法に関しては、「生化学実験講座1、タンパク質の化学IV(1981年7月1日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」又は「続生化学実験講座2、タンパク質の化学(下)(昭和62年5月20日、日本生化学会編、株式会社東京化学同人発行)」に記載されている方法等が適用できる。遺伝子組み換え法に関しては、特許第3338441号公報に記載されている方法等が適用できる。天然物からの抽出、有機合成法及び遺伝子組み換え法はともに、ポリペプチド(A)を得られるが、アミノ酸配列を簡便に変更でき、安価に大量生産できるという観点等から、遺伝子組み換え法が好ましい。
ポリペプチド(A)は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有する。また、ポリペプチド(A)は、TNF-αの産生量の減少の観点から、上記アミノ酸配列を合計1~150個有することが好ましく、1~100個有することがさらに好ましい。
ポリペプチド(A)が、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計2個以上有する場合、各アミノ酸配列は同一でも異なっていてもよい。また、同一のアミノ酸配列を複数含む場合、連続していてもよい。具体的には、(VGVPG)配列、(GVGVP)配列及び(VPGVG)配列からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであってもよい。
なお、上記においてa~cは、それぞれアミノ酸配列の連続する数であり、2~200の整数である。
各アミノ酸配列が連続する数は、TNF-αの産生量の減少の観点から、2~100(上記a~cが2~100)が好ましく、さらに好ましくは2~50(上記a~cが2~50)であり、特に好ましくは2~10(上記a~cが2~10)である。
また、ポリペプチド(A)において、各アミノ酸配列が連続するものである場合、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列の連続する個数は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
すなわち、(VGVPG)配列、(GVGVP)配列及び(VPGVG)配列の、a、b及びcが同一であってもよく、異なっていてもよい。
ポリペプチド(A)は、TNF-αの産生量の減少の観点から、GAGAGS配列(4)を1~200個有していることが好ましい。
また、ポリペプチド(A)は、TNF-αの産生量の減少の観点から、GAGAGS配列(4)を、1~100個有することが好ましく、1~60個有することがさらに好ましい。
また、ポリペプチド(A)が、GAGAGS配列(4)を2個以上有する場合、GAGAGS配列(4)は連続していてもよい。具体的には、ポリペプチド(A)は(GAGAGS)配列を含むものであってもよい。
なお、上記においてdはGAGAGS配列(4)の連続する数であり、整数である。
GAGAGS配列(4)が連続する数は、TNF-αの産生量の減少の観点から、2~100(上記dが2~100)が好ましく、さらに好ましくは2~50(上記dが2~50)であり、特に好ましくは2~10(上記dが2~10)である。
ポリペプチド(A)は、TNF-αの産生量の減少の観点から、GVGVPGAGAGS配列(5)を1~50個有することが好ましい。
また、ポリペプチド(A)は、TNF-αの産生量の減少の観点から、GVGVPGAGAGS配列(5)を、1~40個有することが好ましく、さらに好ましくは1~20個有することである。
また、ポリペプチド(A)が、GVGVPGAGAGS配列(5)を2個以上有する場合、GVGVPGAGAGS配列(5)は連続していてもよい。具体的には、ポリペプチド(A)は(GVGVPGAGAGS)配列を含むものであってもよい。
なお、上記においてeはGVGVPGAGAGS配列(5)が連続する数であり、整数である。
GVGVPGAGAGS配列(5)が連続する数は、TNF-αの産生量の減少の観点から、2~30(上記eが2~30)が好ましく、さらに好ましくは2~10(上記eが2~10)である。
ポリペプチド(A)は、さらに、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)、GAGAGS配列(4)及びGVGVPGAGAGS配列(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列同士の間に、介在アミノ酸配列(Z)を有していてもいい。介在アミノ酸配列(Z)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したアミノ酸配列である。介在アミノ酸配列(Z)を構成するアミノ酸の数は、細胞及び組織への親和性の観点から、1~30個が好ましく、さらに好ましくは1~15個、特に好ましくは1~10個である。
介在アミノ酸配列(Z)の具体例としては、VAAGY配列(8)、GAAGY配列(9)及びLGP配列等が挙げられる。
ポリペプチド(A)のN及び/又はC末端には、末端アミノ酸配列(S)があってもよい。末端アミノ酸配列(S)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したペプチド配列である。末端アミノ酸配列(S)を構成するアミノ酸の数は、細胞及び組織への親和性の観点から、1~100個が好ましく、さらに好ましくは1~50個、特に好ましくは1~40個である。
末端アミノ酸配列(S)の具体例としては、MDPVVLQRRDWENPGVTQLNRLAAHPPFASDPM配列(10)等が挙げられる。
ポリペプチド(A)は、上記末端アミノ酸配列(S)以外に、発現させたポリペプチド(A)の精製又は検出を容易にするために、ポリペプチド(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV-Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu-Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等がある。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i-1)グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GTS) (ii-1)グルタチオン
(i-2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii-2)アミロース
(i-3)HQタグ (ii-3)ニッケル
(i-4)Mycタグ (ii-4)抗Myc抗体
(i-5)HAタグ (ii-5)抗HA抗体
(i-6)FLAGタグ (ii-6)抗FLAG抗体
(i-7)6×Hisタグ (ii-7)ニッケル又はコバルト
上記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるポリペプチド(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
ポリペプチド(A)がVGVPG配列(1)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)のアミノ酸数の割合は、TNF-αの産生量の減少の観点から、35~100%であることが好ましく、さらに好ましくは40~100%であり、次にさらに好ましくは40~95%であり、特に好ましくは45~80%である。
ポリペプチド(A)がGVGVP配列(2)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGVGVP配列(2)のアミノ酸数の割合は、TNF-αの産生量の減少の観点から、35~100%であることが好ましく、さらに好ましくは40~100%であり、次にさらに好ましくは40~95%であり、特に好ましくは45~80%である。
ポリペプチド(A)がVPGVG配列(3)を含む場合、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVPGVG配列(3)のアミノ酸数の割合は、TNF-αの産生量の減少の観点から、35~100%であることが好ましく、さらに好ましくは40~100%であり、次にさらに好ましくは40~95%であり、特に好ましくは45~80%である。
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列のアミノ酸数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<アミノ酸の数の割合の測定方法1>
特定のアミノ酸残基でポリペプチドを切断するプロテアーゼを2種類以上用いてポリペプチド(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と記載する)にて切断したポリペプチドを分離し、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、ポリペプチド(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合を算出する。
VGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合(%)={VGVPG配列(1)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
GVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合(%)={GVGVP配列(2)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
VPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合(%)={VPGVG配列(3)の数×5/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
TNF-αの産生量の減少の観点から、ポリペプチド(A)は、GVGVP配列(2)を含むことが好ましく、「ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGVGVP配列(2)のアミノ酸数の割合」が上記の好ましい範囲を満たすことで、TNF-αの産生量の減少効果が大きく向上する。
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合は、TNF-αの産生量の減少の観点から、0~65%であることが好ましく、さらに好ましくは0~60%であり、次にさらに好ましくは5~60%であり、特に好ましくは20~55%である。
ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合は、プロテインシークエンサーによって求めることができる。具体的には、下記の測定法により求めることができる。
<アミノ酸の数の割合の測定方法2>
特定のアミノ酸残基でポリペプチドを切断するプロテアーゼを2種類以上用いてポリペプチド(A)を30残基以下程度まで分解する。その後、HPLCにて切断したポリペプチドを分離し、プロテインシークエンサーにてアミノ酸配列を読み取る。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、ポリペプチド(A)の全配列を決定する。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸数の割合を算出する。
GAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合(%)={GAGAGS配列(4)の数×6/ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数}×100
ポリペプチド(A)のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法による分子質量は、TNF-αの産生量の減少の観点から、0.4~200kDaが好ましく、さらに好ましくは0.4~120kDaである。
なお、GPC法による分子質量の測定条件は以下の通りである。
装置:ACQUITY UPLCシステム
カラム:Shodex OHpak SB-806M HQ
移動相:0.15M リン酸緩衝液 pH7.0
流速:0.5ml/min
検出器:ACQUITY UPLC RID検出器
温度:40℃
好ましいポリペプチド(A)の例を以下に示す。
(i)VGVPG配列(1)からなるポリペプチド。
(ii)GVGVP配列(2)からなるポリペプチド。
(iii)VPGVG配列(3)からなるポリペプチド。
(iv)GVGVPGAGAGS配列(5)からなるポリペプチド。
(v)(GAGAGS)配列(6)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を有するポリペプチド。
具体例としては、(GAGAGS)配列(6)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を13個有し、これらが交互に化学結合してなるポリペプチドに、さらに、(GAGAGS)配列(11)が1個化学結合した、分子質量が約80kDaの配列(12)のポリペプチド(SELP8K);(GAGAGS)配列(11)を17個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を17個有し、これらが交互に化学結合してなる、分子質量が約82kDaの配列(13)のポリペプチド(SELP0K)等が挙げられる。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有していてもよい。
ポリペプチド(A’)のアミノ酸配列と、ポリペプチド(A)のアミノ酸配列の相同性は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
なお、本発明のTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及びポリペプチド(A’)の内、ポリペプチド(A)のみを含有していてもよく、ポリペプチド(A’)のみを含有していてもよく、ポリペプチド(A)及びポリペプチド(A’)の両方を含有していてもよい。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、上記ポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A’)を含有するものである。
ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量は、TNF-αの産生量の減少の観点から、TNF-α産生量減少剤の重量を基準として、0.0001~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~20重量%である。
本発明のTNF-α産生量減少剤には、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)以外に、水、生体材料の培地を含んでもよい。
水としては、特に限定するものではなく、滅菌されたものが好ましい。滅菌方法としては、0.20μm以下の孔径を持つ精密ろ過膜を通した水、限外ろ過膜を通した水、逆浸透膜を通した水及びオートクレーブで121℃20分加熱して過熱滅菌したイオン交換水等が挙げられる。
TNF-α産生量減少剤中の水の含有量(重量%)は、細胞及び組織への親和性の観点から、下限は、好ましくは68.40重量%であり、次にさらに好ましくは68.62重量%であり、次にさらに好ましくは68.79重量%であり、次にさらに好ましくは70.00重量%であり、次にさらに好ましくは78.40重量%であり、特に好ましくは78.62重量%であり、次に特に好ましくは78.79重量%であり、最も好ましくは80.00重量%である。また、上限は、好ましくは99.9999重量%であり、さらに好ましくは99.9900重量%であり、次にさらに好ましくは99.3999重量%であり、次にさらに好ましくは99.3900重量%であり、次にさらに好ましくは99.1799重量%であり、特に好ましくは99.1700重量%であり、次に特に好ましくは99.0099重量%であり、最も好ましくは99.0000重量%である。
また、TNF-α産生量減少剤が水や生体材料の培地を含む場合、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)は、TNF-α産生量減少剤に溶解していることが好ましい。
この場合、TNF-α産生量減少剤に溶解しているポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計重量は、TNF-α産生量減少剤の重量を基準として、0.0001~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~20重量%である。
なお、TNF-α産生量減少剤が水や生体材料の培地を含む場合、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)は、TNF-α産生量減少剤に溶解していなくても良い。
ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)が、TNF-α産生量減少剤に溶解していない場合、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)は、スポンジ状、シート状、繊維状であっても良い。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、さらに無機塩及び/又はリン酸(塩)を含んでもいい。
無機塩として、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム及び炭酸水素マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩は無機塩に含まない。
TNF-α産生量減少剤中の無機塩の含有量(重量%)は、人間の体液と同等にするという観点から、TNF-α産生量減少剤の重量を基準として0.5~1.3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.7~1.1重量%、特に好ましくは0.85~0.95重量%である。
リン酸(塩)は、リン酸及び/又はリン酸塩を意味する。
リン酸(塩)としては、リン酸及びリン酸塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。
TNF-α産生量減少剤中のリン酸(塩)の含有量(重量%)は、皮膚弾性を向上する観点から、TNF-α産生量減少剤の重量を基準として0.10~0.30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.12~0.28重量%、特に好ましくは0.14~0.26重量%である。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、さらに抗炎症作用を奏する化合物、アスコルビン酸、グルタチオン、α-トコフェロール、ポリフェノール、トリプトファン、レズベラトロール等を含有していてもよい。
TNF-α産生量減少剤のpHは、TNF-α産生量減少剤の安定性の観点から、6.8~8.8が好ましく、さらに好ましくは7.3~8.3である。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、ヒト由来マクロファージのTNF-αの生産量を減少させることができるので、ヒト由来の細胞や、組織等の生体材料を培養する際に、該生体材料の炎症を抑える目的で、該生体材料の培地に加えてもよい。
生体材料の培地としては、特に限定されないが、例えば、RPMI1640培地、DMEM培地及びαMEM培地等が挙げられる。
また、本発明のTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及びポリペプチド(A’)の合計含有量が0.00001~30重量%となるように培地に加えられることが好ましく、0.001~80重量%となるように加えられることが望ましい。
また、本発明のTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量が、ヒト由来マクロファージを含有する培地の重量に対して、0.00001~30重量%となるように添加されることが好ましい。また、本発明のヒト由来マクロファージのTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量が、培地の重量に対して、0.1重量%以下の低濃度(例えば、0.00001~0.1重量%)となるように添加された場合でも、十分な効果を発揮できる点で特に優れている。
また、本発明のTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量が、ヒト由来マクロファージ細胞1個に対して、0.001~200ngとなるように添加されることが好ましい。また、本発明のヒト由来マクロファージのTNF-α産生量減少剤は、ポリペプチド(A)及び/又はポリペプチド(A’)の合計含有量が、ヒト由来マクロファージ細胞1個に対して、低濃度(例えば2.5ng/個以下、より好ましくは、0.001~2.5ng/個)となるように添加された場合でも、十分な効果を発揮できる点で特に優れている。
培養対象の生体材料としては、特に限定されないが、移植用細胞、移植用組織等が挙げられる。また、本発明のTNF-α産生量減少剤を培地に加え、該培地を生体の創傷部位に適用してもよい。すなわち、生体に直接使用してもよい。
なお、本発明のTNF-α産生量減少剤は、特に、ヒト由来マクロファージの中でM1型マクロファージからTNF-αが生産されるのを抑制することができるので、M1型マクロファージが存在する環境で用いられることが好ましい。
本明細書には、以下の開示が記載されている。
本開示(1)は、VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有するヒト由来マクロファージ用のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(2)は、上記ポリペプチド(A)は、VGVPG配列(1)を含んでおり、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合が35~100%である本開示(1)に記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(3)は、上記ポリペプチド(A)は、GVGVP配列(2)を含んでおり、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合が35~100%である本開示(1)に記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(4)は、上記ポリペプチド(A)は、VPGVG配列(3)を含んでおり、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合が35~100%である本開示(1)に記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(5)は、上記ポリペプチド(A)が、さらにGAGAGS配列(4)を1~200個有する本開示(1)~(4)のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(6)は、上記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合が0~65%である本開示(5)に記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(7)は、上記ポリペプチド(A)が、GVGVPGAGAGS配列(5)を1~50個有するポリペプチドである本開示(1)~(6)のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(8)は、上記ポリペプチド(A)が、(GAGAGS)配列(6)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を有するポリペプチドである本開示(1)~(7)のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(9)は、上記ポリペプチド(A)が、配列番号12のアミノ酸配列を含む本開示(1)に記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(10)は、上記ポリペプチド(A)のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法による分子質量が0.4~200kDaである本開示(1)~(9)のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤である。
本開示(11)は、上記TNF-α産生量減少剤の重量を基準として、上記ポリペプチド(A)及び/又は上記ポリペプチド(A’)の合計含有量が0.0001~30重量%である本開示(1)~(10)のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤である。
以下に実施例として本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特記しない限り「部」は重量部を意味する。
<製造例1>
[SELP8Kの作製]
○SELP8K生産株の作製
特許第4088341号公報の実施例記載の方法に準じて、SELP8KをコードしたプラスミドpPTS0345を作製した。
作製したプラスミドを大腸菌にトランスフォーメーションし、SELP8K生産株を得た。以下、このSELP8K生産株を用いて、ポリペプチド(A)の一種である(GAGAGS)配列(6)を12個及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を13個有し、これらが交互に化学結合した構造を有する分子質量が約80kDaの配列(12)のポリペプチドであるSELP8K(ポリペプチド(A1))を生産する方法を示す。
○SELP8K生産株の培養
30℃で生育させたSELP8K生産株の一夜培養液を使用して、250mlフラスコ中のLB培地50mlに接種した。該LB培地に、カナマイシンを最終濃度50μg/mlとなるように加え培養液とし、該培養液を30℃で攪拌しながら(200rpm)インキュベートした。培養液の濁度がOD600=0.8(吸光度計UV1700:島津製作所製を使用)となった時に、該培養液40mlを、42℃に温められた別のフラスコに移し、42℃で約2時間培養した。その後、培養した培養液を氷上で冷却し、培養液の濁度OD600を測定し、遠心分離にて大腸菌を集菌した。
○SELP8Kの精製
集菌した大腸菌を用い、下記工程1:菌体溶解、工程2:遠心分離による不溶性細片の除去、工程3:硫安沈殿、工程4:限外濾過、工程5:陽イオン交換クロマトグラフィー、工程6:限外濾過、工程7:凍結乾燥により大腸菌バイオマスからタンパク質を精製した。このようにして、分子質量が約85kDaの精製したSELP8K(ポリペプチド(A1))を得た。
工程1:菌体溶解
集菌した大腸菌100gに対して、脱イオン水200gを加えて、高圧ホモジナイザー(55MPa)にて菌体溶解し、溶解した菌体を含む菌体溶解液を得た。その後、菌体溶解液を氷酢酸にてpH4.0に調整した。
工程2:遠心分離による不溶性細片の除去
さらに菌体溶解液を遠心分離(6300rpm、4℃、30分間)して、上清を回収した。
工程3:硫安沈殿
工程2で回収した上清に硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解した。次に、溶解した液に対して、硫安濃度が25重量%となるように飽和硫安溶液を投入した。その後、8~12時間静置した後、遠心分離にて沈殿物を回収した。回収した沈殿物を脱イオン水に溶解し、溶液を得た。
工程4:限外濾過
工程3で得た溶液を分子質量30,000カットの限外濾過装置(ホロファイバー:GEヘルスケア製)に供した。工程3で得た溶液に対して、20倍量の脱イオン水を用いて、限外濾過を実施し、限外濾過後のポリペプチド溶液を得た。
工程5:陽イオン交換クロマトグラフィー
ポリペプチドの濃度が20g/Lとなるように限外濾過後のポリペプチド溶液を、10mM酢酸ナトリウム緩衝液に加え、その後、陽イオン交換カラムHiPrepSP XL16/10(GEヘルスケア社製)をセットしたAKTAPilot(GEヘルスケア社製)に供した。溶出液として500mM酢酸ナトリウム緩衝液を用いて、溶出画分を回収した。
工程6:限外濾過
工程5で得た溶出画分を上記「4:限外濾過」と同様にして処理し、限外濾過後のポリペプチド溶液を得た。
工程7:凍結乾燥
ポリペプチド濃度が3g/Lとなるように、工程6で得たポリペプチド溶液を脱イオン水で希釈し、水位が10mm以下となるようにステンレス製のバットに入れた。その後、凍結乾燥機(日本テクノサービス社製)に入れて、-30℃、24時間かけて凍結させた。凍結後、真空度が5Pa以下、-30℃で、110時間かけて1次乾燥、真空度が5Pa以下、30℃で、48時間かけて2次乾燥させ、スポンジ状のSELP8K(ポリペプチド(A1))を得た。また、得られたSELP8Kを用いて、下記「アミノ酸の数の割合の測定方法」により、SELP8K中のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を測定した。結果を表1に示す。
<アミノ酸の数の割合の測定方法>
トリプシン(プロメガ(株)製)又はエラスターゼ(ブタ膵臓由来、和光純薬(株)製)を用いて工程7で得られたスポンジ状のSELP8Kを37℃で24時間反応し、30残基以下程度まで分解した。その後、HPLCにて分離し、BiopharmaLynx 1.2(日本ウォーターズ(株)製)にてアミノ酸配列を読み取った。得られたアミノ酸配列からペプチドマッピングして、SELP8Kの全配列を決定した。その後、以下記載の式により、ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)、VPGVG配列(3)及びGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合を算出した。
VGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合(%)={VGVPG配列(1)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
GVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合(%)={GVGVP配列(2)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
VPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合(%)={VPGVG配列(3)の数×5/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
GAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合(%)={GAGAGS配列(4)の数×6/SELP8Kのアミノ酸の総数}×100
Figure 2024094789000002
<ヒトマクロファージの調整>
ヒト由来単球THP-1細胞を48wellプレート(コーニング社製)にて、20ng/mLホルボール-12-ミリスタート-13アセテート(PMA)含有RPMI1640培地(10wt%FBS,1wt%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)含有)500μL中に2×10cells/wellの密度で懸濁し、1日間M0マクロファージ(naive macrophage)分化刺激を与え培地を吸引除去した。その後PMAフリーのRPMI1640培地で4時間培養しヒト由来M0マクロファージを得た。
ヒト由来M0マクロファージの培養液を除去し、20ng/mLのLPS(LPS,Sigma-Aldrich Co.LLC,Missouri,USA)を含有するRPMI1640培地(10wt%FBS,1wt%PS含有)300μLを加えて1日間培養することで、ヒト由来M1マクロファージを得た。
<マウスマクロファージの調整>
C57BL/6Nマウス(週齢6、メス)の大腿骨、脛骨を、セルストレイナー(40μm)上で、IMDM(#21056-023: GIBCO, thermos Fisher Scientific Inc., Massachusetts, USA)[1wt%ペニシリン/ストレプトマイシン(PS)含有]により洗浄し、ろ過することで、細胞を含むIMDMを回収した。
その後、赤血球溶解バッファー(4.15gNHCl,0.5gNaHCO,0.0186gEDTAを再蒸留水に溶解)1mLを加えて1分間25℃で反応させた。赤血球溶解バッファー1mLに対してIMDM(1wt%PS含有)を7.5mL加えた後、遠心分離機による遠心(200G、3min)を実施し、細胞を回収した。
その後、細胞を再度適量のIMDM(1wt%含有)で懸濁し洗浄し、遠心分離機による遠心(200G、3min)を実施し、細胞を回収した。
その後、遠心分離をして得た細胞(骨髄由来のマクロファージ単球)を、48wellプレート(コーニング社製)にて、IMDM[20wt%FBS,50ng/mLマウスマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)(Biolegend Inc.,California,USA),1wt%PS含有]500μL中に2×10cells/wellの密度で懸濁し、培養した。
3日後、培地[IMDM(20wt%FBS,50ng/mLM-CSF,1wt%PS含有)]を交換しさらに三日間培養し、マウス由来M0マクロファージを得た。
マウス由来M0マクロファージの培養液を除去し、20ng/mLのLPS(LPS, Sigma-Aldrich Co.LLC,Missouri,USA)を含有するIMDM(5wt%FBS,1wt%PS含有)300μLを加えて1日間培養することで、マウス由来M1マクロファージを得た。
<マクロファージの細胞形態への影響評価>
SELP8Kの濃度が0wt%又は5wt%となるように製造例1の工程7で得られたポリペプチドを、各ヒト由来M1マクロファージ及び各マウス由来M1マクロファージの培地に加え、72時間培養した。
72時間培養後のマクロファージの形態を、イメージJ(National Institutes of Health,USA)で観察し、形状を以下の通り評価した。
ヒト由来M1マクロファージに濃度が5%となるようにSELP8Kを添加した場合、マクロファージの面積は558μm/個(SELP8K濃度が0%の場合、596μm/個)であった。
また、ヒト由来M1マクロファージに濃度が5%となるようにSELP8Kを添加した場合、マクロファージの真円度は0.73(SELP8K濃度が0%の場合、0.74)であった。
一方、マウス由来M1マクロファージに濃度が5%となるようにSELP8Kを添加した場合、マクロファージの面積は843μm/個(SELP8K濃度が0%の場合、416μm/個)であった。
また、マウス由来M1マクロファージに濃度が5%となるようにSELP8Kを添加した場合、マクロファージの真円度は0.76(SELP8K濃度が0%の場合、0.64)であった。
なお、上記のマクロファージの面積及び真円度は、それぞれ100個のマクロファージ細胞の平均値である。
上記の通り、SELP8Kの添加により、マウス由来M1マクロファージは形状が大きくなり真円形状に近くなる変化が見られた一方で、ヒト由来M1マクロファージでは、マウス由来M1マクロファージではそのような変化が見られなかった。この結果より、SELP8Kの添加によってマウス由来M1マクロファージで生じる現象と、SELP8Kの添加によってヒト由来M1マクロファージで生じる現象は異なるものであることが示唆された。
<腫瘍壊死因子(TNF-α)の産生量測定>
上記の<ヒトマクロファージの調整>で得た48wellプレート[ヒト由来M1マクロファージを2.0×10cells/wellの細胞密度となるように、48wellプレート(コーニング社製)に播種]から、培地を吸引除去した。
その後、製造例1の工程7で得られたポリペプチドを、SELP8Kが、0.0wt%、0.001wt%、0.1wt%、1.0wt%及び5.0wt%の濃度となるように、LPSを20ng/mLの濃度で含有するRPMI1640培地に加え、さらに当該培地500mgを、各wellに加えた。
その後、炭酸ガスインキュベータ(5%二酸化炭素、95%空気環境下)を用いて37℃で、6、24、72時間インキュベートした。各培養時間後のRPMI培地中の上清のTNF-αをTNF-α定量ELISAキット(R&D Systems社製)を用いて定量したと。結果を図1に示す。
図1は、ヒト由来M1マクロファージを培養している培地に製造例1のSELP8Kを所定の濃度となるように加えた際の、ヒト由来M1マクロファージのTNF-αの生産量の経時変化を示すグラフである。
なお、図1において「*」はp<0.05を意味する。
上記の<マウスマクロファージの調整>で得た48wellプレート[マウス由来M1マクロファージを2.0×10cells/wellの細胞密度となるように、48wellプレート(コーニング社製)に播種]から、培地を吸除去した。
その後、製造例1の工程7で得られたポリペプチドを、SELP8Kが、0.0wt%、0.001wt%及び0.1wt%の濃度となるように、LPSを20ng/mLの濃度で含有するIMDM(5wt%FBS,1wt%PS含有)に加え、さらに当該培地300mgを各wellに加えた。
その後、炭酸ガスインキュベータ(5%二酸化炭素、95%空気環境下)を用いて37℃で、6、24、72時間インキュベートした。各培養時間後の培地中の上清のTNF-αをTNF-α定量ELISAキット(R&D Systems社製)を用いて定量した。結果を図2に示す。
図2は、マウス由来M1マクロファージを培養している培地に製造例1のSELP8Kを所定の濃度となるように加えた際の、マウス由来M1マクロファージのTNF-αの生産量の経時変化を示すグラフである。
なお、図2において「*」はp<0.05を意味する。
図1に示すように、ヒト由来M1マクロファージのTNF-αの生産量は、SELP8Kの濃度が高いほど減少していた。
これにより、SELP8Kには、濃度依存的にヒト由来M1マクロファージのTNF-αの生産量を減少させる効果があることが判明した。
一方、図2に示すように、72時間インキュベートした際のマウス由来M1マクロファージのTNF-αの生産量は、製造例1のSELP8Kの濃度に寄らず有意な差が無かった。
また、図2に示すように、6時間及びインキュベート24時間インキュベートした際のマウス由来M1マクロファージのTNF-αの生産量は増えていた。これは、マウス由来M1マクロファージが、SELP8Kを異物として認識して、反応したためと考えられる。
これらの結果から、製造例1に係るSELP8Kを含有する液(本実施例では培地)は、ヒト由来マクロファージのTNF-α産生量を減少させるヒト由来マクロファージ用のTNF-α産生量減少剤として機能することが判明した。
本発明のTNF-α産生量減少剤は、ヒト由来マクロファージのTNF-α産生量を減少させることができる。そのため、炎症部位に使用することで炎症作用を抑制することができる。
従って、医薬品等や創傷被覆材、細胞移植用基材等の医療機器として有用である。
また、本発明のTNF-α産生量減少剤の対象疾患としては、熱傷、皮膚剥削創、難治性皮膚潰瘍、褥瘡、筋疾患、自己免疫疾患、関節疾患等が挙げられる。

Claims (11)

  1. VGVPG配列(1)、GVGVP配列(2)及びVPGVG配列(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸配列を合計1~200個有するポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A)のアミノ酸配列との相同性が85%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチド(A’)を含有するヒト由来マクロファージ用のTNF-α産生量減少剤。
  2. 前記ポリペプチド(A)は、VGVPG配列(1)を含んでおり、
    前記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVGVPG配列(1)のアミノ酸の数の割合が35~100%である請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  3. 前記ポリペプチド(A)は、GVGVP配列(2)を含んでおり、
    前記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGVGVP配列(2)のアミノ酸の数の割合が35~100%である請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  4. 前記ポリペプチド(A)は、VPGVG配列(3)を含んでおり、
    前記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するVPGVG配列(3)のアミノ酸の数の割合が35~100%である請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  5. 前記ポリペプチド(A)が、さらにGAGAGS配列(4)を1~200個有する請求項1~4のいずれかに記載のTNF-α産生量減少剤。
  6. 前記ポリペプチド(A)のアミノ酸の総数に対するGAGAGS配列(4)のアミノ酸の数の割合が0~65%である請求項5に記載のTNF-α産生量減少剤。
  7. 前記ポリペプチド(A)が、GVGVPGAGAGS配列(5)を1~50個有するポリペプチドである請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  8. 前記ポリペプチド(A)が、(GAGAGS)配列(6)及び(GVGVP)GKGVP(GVGVP)配列(7)を有するポリペプチドである請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  9. 前記ポリペプチド(A)が、配列番号12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  10. 前記ポリペプチド(A)のゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)法による分子質量が0.4~200kDaである請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。
  11. 前記TNF-α産生量減少剤の重量を基準として、前記ポリペプチド(A)及び/又は前記ポリペプチド(A’)の合計含有量が0.0001~30重量%である請求項1に記載のTNF-α産生量減少剤。

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