JP2024089786A - クーラント液評価装置、及びクーラント液評価方法 - Google Patents

クーラント液評価装置、及びクーラント液評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クーラント液の状態を正確に評価可能なクーラント液評価装置を提供する。【解決手段】本発明のクーラント液評価装置は、クーラント液が格納された検出容器11と、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である第1近赤外光を照射する第1発光部12と、第1近赤外光を受光する第1受光部13と、検出容器11に向けて、上述した波長の範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する第2発光部14と、第2近赤外光を受光する第2受光部15と、第1近赤外光から測定された第1測定値と、第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、クーラント液の状態を評価する評価部16とを備える。【選択図】図2

Description

本発明は、クーラント液評価装置、及びクーラント液評価方法に関する。
金属等の切削加工や、研磨加工等を実施する場合、その加工対象となる金属等の材料と、加工刃具との間の摩擦の軽減や、材料の冷却、加工具の保護を目的として、クーラント液を加工時に連続的に噴射するなどの方式によって使用している。当該クーラント液は、加工対象物に直接触れるため、当該クーラント液の特性や、性能によって、加工状態が変化することが懸念されている。
また、クーラント液は、加工対象材料や、加工方法によって、様々な種類の製品が提供されているが、クーラント液の性能が高品質であっても、適正に使用されない限り、クーラント液の機能を十分に発揮することはできない。特に、水溶性クーラント液はその殆どが水であることから、高効率の加工を必要とする場合では、クーラント液の状態を厳密に管理することが求められる。一方、従来の現場では、クーラント液の管理は、管理者の勘で行われていたり、目視による程度のものであったり、クーラント液の屈折率計を用いて、簡易的に当該クーラント液の濃度を測定することによって、管理されることが多かった。例えば、特許文献1には、溶液の濃度について、屈折率を用いた測定方法が開示されている。具体的には、アルカリ現像液中の炭酸系塩類の濃度を屈折率、導電率、及び吸光度を測定することにより、求めている。
特開2021-41487
しかしながら、クーラント液は、使用する過程において、その成分が変化を起こすことや、切削などの加工屑、又は工作機械に用いられる潤滑油成分などが混入することから、上述した屈折率計では、クーラント液の濃度が正確に測定することが困難であった。
具体的には、水溶性クーラント液の成分として、加工対象と加工刃具との摩擦を低減する成分(主に油脂成分)、水による錆を防止する成分、加工面に油脂成分等を作用させるための表面活性剤、腐敗防止剤、消泡材などの多くの化学成分が含まれている。また、クーラント液の成分が、経時とともに変化したり、加工時に発生する熱によって分解したり、異なる成分に変位したり、細菌によって腐敗したり、酸化などにより期待した成分による期待性能が得られない場合がある。このような場合であっても、上述した屈折率計では濃度として検出されており、この状態のクーラント液を使い続けると加工精度の低下を引き起こす要因となり、生産性の低下を招いていた。
本発明は、上記課題に鑑みて、クーラント液の状態を正確に評価可能なクーラント液評価装置、及びクーラント液評価方法を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明のクーラント液評価装置は、クーラント液が格納された検出容器と、前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である第1近赤外光を照射する第1発光部と、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第1近赤外光を受光する第1受光部と、前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、前記クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する第2発光部と、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第2近赤外光を受光する第2受光部と、前記第1受光部が受光した前記第1近赤外光から測定された第1測定値と、前記第2受光部が受光した前記第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、前記クーラント液の状態を評価する評価部と、を備えることを特徴する。
この構成により、クーラント液の状態を正確に評価することができる。
また、本発明のクーラント液評価装置は、前記第1近赤外光、及び前記第2近赤外光の形状が、コリメート状態で楕円であることを特徴とする。
この構成により、照射された第1近赤外光や、第2近赤外光の拡散状態を捉えることができる。
また、本発明のクーラント液評価装置は、前記評価部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差分を算出し、また前記第2測定値に対する前記第1測定値の比を算出し、前記クーラント液の状態を評価することを特徴とする。
この構成により、クーラント液の状態を適切に評価することができる。
また、本発明のクーラント液評価装置は、前記検出容器に向けて、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長である可視光を照射する第3発光部と、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記可視光を受光する第3受光部と、を備えることを特徴とする。
この構成により、クーラント液における潤滑油の混入状態を把握することができる。
また、本発明のクーラント液評価方法は、クーラント液が格納された検出容器を保持部にセットし、前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である、第1近赤外光を照射し、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第1近赤外光を受光し、前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、前記クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射し、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第2近赤外光を受光し、前記第1受光部が受光した前記第1近赤外光から測定された第1測定値と、前記第2受光部が受光した前記第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、前記クーラント液の状態を評価することを特徴する。
この構成により、クーラント液の状態を正確に評価することができる。
また、本発明のクーラント液評価方法は、前記第1近赤外光、及び前記第2近赤外光の形状が、コリメート状態で楕円であることを特徴とする。
この構成により、照射された第1近赤外光や、第2近赤外光の拡散状態を捉えることができる。
また、本発明のクーラント液評価方法は、前記評価部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差分を算出し、また前記第2測定値に対する前記第1測定値の比を算出し、前記クーラント液の状態を評価することを特徴とする。
この構成により、クーラント液の状態を適切に評価することができる。
また、本発明のクーラント液評価方法は、第3発光部が、前記検出容器に向けて、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長である可視光を照射し、第3受光部が、前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記可視光を受光することを特徴とする。
この構成により、クーラント液における潤滑油の混入状態を把握することができる。
本発明のクーラント液評価装置は、クーラント液の状態を正確に評価することができる。また、本発明のクーラント液評価方法は、クーラント液の状態を正確に評価することができる。
本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置の概略図である。 本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置の機能ブロック図である。 本発明に係る実施形態の検出容器に照射されたビーム形状を示す説明図である。 本発明に係る実施形態の第1近赤外光の波長と第2近赤外光の波長との関係を示したグラフである。 本発明に係る実施形態の保持部を示す平面図である。 本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置の別の概略図である。 本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置を用いたクーラント液の評価方法の一例を示すフローチャートである。 使用済みクーラント液と未使用のクーラント液との測定結果を示すグラフである。 使用済みクーラント液と未使用のクーラント液との測定結果を示す別のグラフである。 本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置を用いたクーラント液の評価方法の別例を示すフローチャートである。
以下、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置について、図1~2に基づいて、以下説明する。図1は、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置の概略図である。また、図2は、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置の機能ブロック図である。
本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、クーラント液が格納された検出容器11と、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である第1近赤外光を照射する第1発光部12と、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した第1近赤外光を受光する第1受光部13と、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する第2発光部14と、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した第2近赤外光を受光する第2受光部15と、第1受光部13が受光した第1近赤外光から測定された第1測定値と、第2受光部15が受光した第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、クーラント液の状態を評価する評価部16と、を備える。
また、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、図2に示す通り、第1発光部11から照射される第1近赤外光の照射タイミング、第2発光部14から照射される第2近赤外光の照射タイミング等を制御する制御部17、各種処理に用いられるプログラムや各種データ等を記憶する記憶部18、及び各種データをPCやスマートフォン等に無線、又は有線で出力する出力部19を有する。さらに、キーボード等の入力装置、ディスプレイ等の表示装置等他のハードウェアを備えていてもよい。なお、後述する各記憶部は、データベース、データファイル等様々なデータ保存形式で記憶されるとよく、データベース、データファイルのデータ保存形式に限定されず、いかなるデータの保存形式であってもよい。
近赤外分光分析では、均一で広域の波長を含む光源を使用し、波長に対する吸光度を連続的に測定し、その波長に対する吸光度の変化、いわゆるスペクトラムの包絡状態によって物質を同定する。科学物質の近赤外での吸光特性は含まれる分子とその結合状態によって異なる。また波長に対して、吸光特性はブロードであることが特徴である。このブロードである特性は、本来の吸光を示す波長から少し離れた波長であっても吸光を示すことになる。このように、クーラント液評価装置10は、吸光特性および、近赤外での特徴でもあるブロード特性を活用するものである。
上述した通り、水溶性クーラント液は、水以外に、多くの化学物質が添加されている。添加されている主な化学物質は、例えば加工対象との摩擦を低減するための油脂成分や、その油脂成分を加工対象に密着させるための表面活性剤である。これら主な化学物質は、基本的に、エステル基を基に生成された高分子である。さらに言えば、これら主な化学物質は、化学基本基のCH基を含む分子と言える化学物質である。なお、他の化学物質としては、腐敗を防止するための腐敗防止剤や、泡を消す消泡材が挙げられる。
検出容器11は、その内部にクーラント液を格納することができ、近赤外光、及び可視光を透過する素材から形成された円筒管であると好ましい。
ここで、検出容器11が、円筒管である場合、第1近赤外光等の中心からずれた光束に対しては、光路長が短くなることになり、中心から外れることからビーム輝度の低下に対して光路長を短くすることができるため、効率的に光を透過させることができる。一方、光路上が短くなることで、その光束に対しての吸光は小さくなる。しかしながら、検出容器11が、円筒管であるため、検出容器11自体が集光する機能を有することになるため、照射した光を有効に使用できる。
また、検出容器11が、その円筒管の径は使用される可能性がある円筒の内径よりは小さく、円筒管を透過して来たコリメート成分を含む拡散光の想定するビーム径は、使用される可能性のあるクーラント液を入れる円筒管の外形と等しくしておくと良い。この様な関係にしておけば、様々な径を持つクーラント液を入れる円筒管が使えることになるため、多くの種類の使用されるクーラント液の物性に対応することができる。
第1発光部12は、検出容器11に向けて波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である第1近赤外光を照射する。
また、第1発光部12は、単一波長であるレーザ光源を用いると好ましい。レーザ光源は、非常に狭い発光スペクトラムであることから、選択性を高めることができる。仮に、この発光波長の帯域が広い場合、隣接する波長に対する吸光度に影響を受けやすくなるからである。
さらに、第1発光部12が照射した第1近赤外光は、ミラーによる反射やレンズによる屈折を用いてビーム光が平行状態になるよう光学調整されたコリメート光であると好ましい。ここで、第1近赤外光をコリメート光とする構成として、図1に示すように、コリメートレンズ121を設けてもよい。第1発光部12が照射した第1近赤外光がコリメートレンズ121を透過することによって、コリメート状態となる。そして、図3に示すように、検出容器11に照射される第1近赤外光の照射光は、中央部に輝度の重心があるような楕円ビームとなる。
本実施形態では、第1発光部12は、例えば中心波長1550nmの近赤外レーザダイオードである。ここで、第1発光部12は、水溶性クーラント液の主成分であるエステル類に対して、吸光度を持つ波長を有する第1近赤外光を照射する。具体的には1000nm~1700nmの間で単一波長であると好ましい。
なお、第1発光部12は、発光と消灯を繰り返すように制御すると好ましい。仮に、電気信号で言うならば、AC駆動、又はPulse駆動とし、第1発光部12以外の発光を排他的に行う構成にすれば、異なる波長による測定に干渉することはない。また、AC駆動、又はPulse駆動とすることにより、自然光による影響を排除することができる。自然光は、電気信号で例えるとDC信号であり、ハイパスフィルタ(High Pass Filter)によって排除することができる。また、人工的に点滅する光が混入するような場合、電気的フィルタ回路を用いることにより排除することが可能である。
第1受光部13は、受光した第1近赤外光を電気信号に変換する受光素子であり、変換した電気信号を評価部16に送信する。第1受光部13を構成する受光素子は、その面積ができる限り小さい方が、検出感度が上昇するため好ましい。
また、第1受光部13は、図1に示すように、検出容器11を挟んで、第1発光部12と同一軸上に設置されている。
さらに、第1受光部13は、第1発光部から照射された第1近赤外光が検出容器11内のクーラント液を透過した透過光を集光する光学回路を設けてもよい。例えば、当該光学回路として、集光レンズ131を用いてもよい。集光レンズ131は、高NAであると好ましく、第1近赤外光を第1受光部13上に焦点を結ぶように配置する。
集光レンズ131は、コリメート光である第1近赤外光のみを第1受光部13上に焦点を結ぶように設けられており、第1近赤外光の拡散光が入射された場合、当該拡散光中のコリメート成分のみが結果的に第1受光部13によって電気信号に変換される。一方、第1近赤外光のコリメート状態ではない光束が入射された場合、収束方向の光束は、第1受光部13に対して、前方に焦点を結びことになり、また拡散方向の光束の場合、第1受光部13に対して、後方に焦点を結ぶことになるため、第1受光部13上では電気信号として検出されない。
水溶性クーラント液は、その殆どが水であることから、水以外の物質の成分は少ない。吸光度は、検出する物質の持つ吸光係数と光路長との比例関係を持つが、水溶性クーラント液から検出される吸光量は非常に小さい。そこで、検出する感度を上げることが必要である。検出感度を上げることにより、水溶性クーラント液に照射する光の出力を小さくすることが可能となり、検出するための電子回路精度の向上を図ることができる。
第2発光部14は、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する。
また、第2発光部14は、第1発光部13と同様に、単一波長であるレーザ光源を用いると好ましい。
さらに、第2発光部14が照射した第2近赤外光は、第1近赤外光と同様に、コリメート光であると好ましい。ここで、第2近赤外光をコリメート光とする構成として、図1に示すように、コリメートレンズ141を設けてもよい。第2発光部14が照射した第2近赤外光がコリメートレンズ141を透過することによって、コリメート状態となる。また、検出容器11に照射される第2近赤外光の照射光は、第1近赤外光と同様に、中央部に輝度の重心があるような楕円ビームとなる(図3を参照)。
本実施形態では、第2発光部14は、例えば中心波長1300nmの近赤外レーザダイオードである。ここで、第2発光部14は、水溶性クーラント液の主成分のエステル類に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する第2近赤外光を照射する。具体的には1000nm~1700nmの間で単一波長であると好ましい。
なお、第2発光部14は、第1発光部12と同様に、発光と消灯を繰り返すよう制御すると好ましい。
第2受光部15は、第1受光部14と同様に、受光した第2近赤外光を電気信号に変換する受光素子であり、変換した電気信号を評価部16に送信する。
また、第2受光部15は、図1に示すように、検出容器11を挟んで、第2発光部14と同一軸上に設置されている。
さらに、第2受光部15は、第2発光部12から照射された第2近赤外光が検出容器11内のクーラント液を透過した透過光を集光する集光レンズ151を設けてもよい。なお、集光レンズ151は、上述した集光レンズ131と同様な構成であるから、説明を省略する。
ここで、第1近赤外光と第2近赤外光について、上述した特性とした理由は、以下の通りである。
一般的に、光が水溶液を透過する際、その一部が吸収されると共に、光の一部は反射される。この反射は照射面に対してある角度を持って起こるが、多くの分子が含まれる水溶液に対して、例えばコリメート光を照射した場合、その水溶液を透過した光は弱くなると同時に拡散した光となる。
この拡散状態は、水溶液に含まれる分子量とほぼ比例するため、水溶液に含まれる分子量あるいは濃度によって変わることになる。この拡散は、水溶液中に含まれる分子によっても異なる。すなわち、水溶液中の分子が変位した場合には全分子量が同じであっても拡散状態は変位することになる。よって、変位後の状態と変位前の状態とを比較することにより、拡散状態の変化が、分子の様態の変化として捉えることができる。
この水溶液における拡散状態の変位を本発明に係るクーラント液に当てはめれば、主成分の濃度、又は変位を検出することにより、拡散状態を把握することができる。すなわち、拡散を光子における光跡で見た場合、ある入射した光子は、クーラント液を構成する分子によって吸収され、ある光子は、分子によって反射されながら出口に到達するものや、そのまま通過するものなどが混在した状態になる。ここで、そのまま通過する場合は、入射と同様にコリメート状態を保ち、ある光子は反射されるもコリメート状態となる。このコリメート状態にて出口に到達する光子の量は分子量あるいは密度に異なる。この拡散状態は光の波長によっても異なる。コリメート光の光量を検出することは拡散状態を捉えたことになり、また検出される光量は分子によって吸収された状態でもあるため、結果的にこのコリメート光として検出される値は吸光度計測において、検出感度を増感したことになる。
ここで、第1発光部12から発光される第1近赤外光の波長が、評価対象とする分子の吸光特性のピークの波長に近い波長を選択し、また第2発光部14から発光される第2近赤外光の波長は、評価対象とする分子による吸光度を殆どなく、水に対しても影響が少ない波長を選択しており、これらの関係性を示すと、図4に示す通りである。
評価部16は、第1受光部13が受光した第1近赤外光から測定された第1測定値と、第2受光部15が受光した第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、クーラント液の状態を評価する。
ここで、第1測定値は、CH基に対して、特にエステル類に対して、感応が高い波長であることから、クーラント液の主成分に対する変位を反映している。
また、第2測定値は、水に対する吸光度が低く、エステルを含むCH基に対する感応力も小さいため、感応のない成分の量(すなわち、汚れ)の状態を示している。
上述した第1測定値と第2測定値とから、第2測定値/第1測定値は、クーラント液中のエステル類の濃度である。また、未使用のクーラント液のおける第2測定値/第1測定値と第2測定値-第1測定値とが同じ値を示すことから、クーラント液の状態を示している。
すなわち、第1測定値は、クーラント液における主成分の構成分子に対する検出値が大きく表れるのに対し、第2測定値は主成分の構成分子に対しては殆ど影響が表れない。また、第2発光部14から発光された第2近赤外光の波長は水に対しても殆ど影響されない関係であることから、第1測定値と第2測定値とを対比した場合、主成分の構成分子の濃度に相当することになる。
例えば、評価対象のクーラント液において、劣化がない状態であれば、単純にクーラント液の濃度を示すことになる。一方、クーラント液の主成分の分子が分解され、クーラント液が劣化したような場合、第2測定値は影響されず、第1測定値は影響が反映されることになるため、クーラント液の劣化状態を反映することになる。また、クーラント液は使用される際、切削屑などが混入することが考えられるが、この場合、切削屑等の大きさは、第1近赤外光の波長、及び第2近赤外光の波長に対して非常に大きいことや、吸光しないことから、第1測定値、及び第2測定値が変化することになるので、第1測定値、及び第2測定値が小さくなった場合、クーラント液が劣化状態であると判断できる。
このように、第2測定値を、第1測定値に対する基準として扱うことにより、水が大部分を占めるクーラント液における、水による影響を排除し、クーラント液の主成分の劣化状態を把握することが可能となる。
本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、水溶性クーラント液に含まれるエステル類の検出をするため、2つの異なる波長の近赤外光を使うことにより、その2つの測定値から当該水溶性クーラント液の状態を判断することができる。
さらに、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、上述した検出容器11を、当該容器の径を変更したとしても容易に保持することができ、その都度に径を変えた容器を使用することが可能な保持部41によって保持されると好ましい。
保持部41は、図5に示すように、基本的な形状はいわゆるV字ブロックと似た構造であり、検出容器11の径が変わったとしても、その中心で支えることが可能である。その中心には、検出容器11の径(内径)と同じ大きさの貫通口411が設けられている。この貫通口は集光レンズ131に入射する光束に対して絞りの機能を兼用することになるが別途設置する構成であってもよい。絞り部を配置する構成にすることにより、集光レンズ131に効率的にコリメート成分を導くことが可能になる。また、本発明の光学回路のように、検出容器11に照射する近赤外光等をコリメート光とし、透過した拡散光の中のコリメート光のみを扱うことによって、機構設計の自由度が高めることができる。
また、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長で検出容器11に向けて可視光を照射する第3発光部21と、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した可視光を受光する第3受光部22と、を備えると好ましい。
第3発光部21は、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長で検出容器11に向けて可視光を照射する。
第3発光部21から照射される可視光の波長は、第1、2近赤外光の波長と比べて短く、クーラント液における潤滑油の混入状態を把握するために最適である。実際のクーラント液の運用では、工作機械に用いられる潤滑油の混入が生じやすい。潤滑油の分子は波長に対して小さいと考えられるので、近赤外領域では影響をされないと考えられるため、この潤滑油の状態を検出するためには、別の波長による測定を行うことにより、潤滑油の混入状態を把握することができる。混入された潤滑油の検出のためには、近赤外線より短い波長の光源が使用されると好ましい。
また、第3発光部21から照射される可視光は、第1、2近赤外光と同様に、コリメート光であると好ましい。ここで、可視光をコリメート光とする構成として、図1に示すように、コリメートレンズ211を設けてもよい。第3発光部21が照射した可視光がコリメートレンズ211を透過することによって、コリメート状態となる。また、検出容器11に照射される可視光の照射光は、第1、2近赤外光と同様に、中央部に輝度の重心があるような楕円ビームとなる(図3を参照)
本実施形態では、第3発光部21は、例えば中心波長660nmの可視光レーザダイオードである。
第3受光部22は、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した可視光を受光する。
第3受光部22は、図1に示すように、検出容器11を挟んで、第3発光部21と同一軸上に設置されている。
さらに、第3受光部22は、第3発光部21から照射された可視光が検出容器11内のクーラント液を透過した透過光を集光する集光レンズ221を設けてもよい。なお、集光レンズ221は、上述した集光レンズ131と同様な構成であるから、説明を省略する。
上述した本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、第1発光部12、第2発光部14、及び第3発光部21に対して、それぞれ第1受光部13、第2受光部15m及び第3受光部22が設けられた構成であるが、図6に示すように、特定の波長域の光を反射するダイクロイックミラー122、ダイクロイックミラー142、及びミラー212を用いた構成とし、第1発光部12から照射された第1近赤外光、第2発光部14から照射された第2近赤外光、及び第3発光部21から照射された可視光を、集光レンズ311を介して集光し、全て一つの受光部31で受光する構成としてもよい。
ダイクロイックミラー122は、第1発光部12から照射された第1近赤外光を透過させる一方、第2発光部14から照射された第2近赤外光や、第3発光部21から照射された可視光を、検出容器11に向けて反射する。また、ダイクロイックミラー142は、第2発光部14から照射された第2近赤外光を、ダイクロイックミラー121に向けて反射する一方、第3発光部21から照射された可視光を透過させる。さらに、ミラー212は、第3発光部21から照射された可視光をダイクロイックミラー121に向けて反射する。
本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、工作機械とは独立した装置としてもよく、また工作機械に直接取り付けてもよい。
上述した通り、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10は、クーラント液の主成分である分子に対して吸光特性を有する波長の第1近赤外光における吸光度と、評価対象となる物質、分子による吸光度が殆どない波長の第2近赤外光における吸光度と、を組み合わせることにより、クーラント液の濃度、及びその劣化状態を検出し、切削屑などの混入状態を同時に検出することができる。
次に、上述した構成を有する本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10によるクーラント液評価方法について、図7に基づき、以下説明する。
先ず、クーラント液が格納された検出容器11を保持部41にセットする。
ステップS101において、第1発光部12は、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である、第1近赤外光を照射する。そして、ステップS102において、第1受光部13は、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した第1近赤外光を受光する。なお、第1近赤外光の照射光は、コリメート状態で楕円である。また、ステップS101における第1近赤外光の照射、及びステップS102における第1近赤外光の受光は一連の動作である。
ステップS103において、第2発光部14が、検出容器11に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する。そして、ステップS104において、第2受光部15が、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した第2近赤外光を受光する。なお、第2近赤外光の照射光は、コリメート状態で楕円である。また、ステップS103における第2近赤外光の照射、及びステップS104における第2近赤外光の受光は一連の動作である。
ステップS105において、評価部16が、第1受光部13が受光した第1近赤外光から測定された第1測定値と、第2受光部15が受光した第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、クーラント液の状態を評価する。
ここで、第1測定値は、CH基に対して、特にエステル類に対して、感応が高い波長であることから、クーラント液の主成分に対する変位を反映している。また、第2測定値は、水に対する吸光度が低く、エステルを含むCH基に対する感応力も小さいため、感応のない成分の量(すなわち、汚れ)の状態を示している。
本実施形態では、評価部16は、第1測定値と第2測定値との差分を算出し、また第2測定値に対する第1測定値の比を算出し、クーラント液の状態を評価する。具体的には、第2測定値/第1測定値は、クーラント液中のエステル類の濃度である。また、未使用のクーラント液のおける第2測定値/第1測定値と第2測定値-第1測定値とが同じ値を示すことから、クーラント液の状態を示している。
例えば、図8に示すグラフ中の実線は、工作機械で一定期間使用したクーラント液の測定結果を示し、当該グラフ中の破線は、同一製品で、未使用のクーラント液の測定結果を示す。これらの測定結果から、工作機械で一定期間使用したクーラント液は、全体的に上昇しており、クーラント液が汚れた状態にあることを示している。一方、波長が1300nm付近の変位は、波長が1550nm付近の変位と比べると、殆ど変化していないことから、第2発光部における測定値は基準値として適切である。
また、図8は、未使用のクーラント液の測定値と一定期間使用したクーラント液の測定値との差分を2次微分した結果を示す。波長1400nm付近から波長1700nmにおいて、いくつかのピークが存在している。このことから何等かの成分が現れていると考えられ、また1300nmでは、殆ど変化がないことも見てとれることから、第1発光部12から照射する第1近赤外光の波長を1550nmと選択し、第2発光部14から照射する第2近赤外光の波長を1300nmと選択することは妥当である。
ここで、クーラント液が劣化状態にある場合の測定値は、図9に示す結果となる。例えば、クーラント液は、熱等によって、分子が分解された状態にあると考えらえる。しかしながら、分子量が変わるまでに完全に分解されるわけではなく、同類の分子類に変位すると考えられる。そのため、本来、波長に対して1つのスペクトラムであったものが、複数のスペクトラムが存在するような状態になると考えられる。この状態において、クーラント液評価装置10により検出される測定値は対象の分子量が減った状態での測定値と一致しない。その理由は、元々の分子が分解されて生成された分子毎に対しての吸光特性を統合したものとなるからである。したがって、元の分子から分解され生成された分子、及びその質量に応じて測定値が変化するからである。当然、その濃度も下がれば、その下がった様子によって測定値も変化する。
このように、波長の異なる2種類の近赤外光をクーラント液が格納された検出容器に向けて照射し、当該検出容器を透過した近赤外光を受光して得られた測定値から、クーラント液の状態、すなわちクーラント液の劣化状態を評価することができる。
なお、図7に示した本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10を用いたクーラント液評価方法のフローチャートにおいて、ステップS101~ステップS104は同時に行ってもよい。
また、本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10によるクーラント液評価方法は、図10に示すように、検出容器11に向けて、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長である可視光を照射するステップS205と、検出容器11に格納されたクーラント液を透過した可視光を受光するステップS206と、を備えてもよい。また、ステップS205における可視光の照射、及びステップS206における可視光の受光は一連の動作である。
ステップS205において、第3発光部21から照射される可視光の波長は、第1、2近赤外光の波長と比べて短く、クーラント液における潤滑油の混入状態を把握するために最適である。
また、ステップS207において、評価部16は、第1~3測定値からクーラント液の評価を正規化してもよい。具体的には、クーラント液の種類、工作機械の運用基準等から定められる基準値(REF)、重み付け(m1、m2)から算出されるABS値は下記の式(1)から算出する。なお、重み付け(m1、m2)は、クーラント液の種類によって定まる係数である。
Figure 2024089786000002
そして、第1~3測定値と式(1)から算出されたABS値との総計を、クーラント指数と定義し、当該指数の値によって、クーラント液の状態を評価してもよい。クーラント指数は、下記の式(2)から算出する。
Figure 2024089786000003
ここで、重み付け(mi1、mi2、mr)は、クーラント液の種類によって定まる係数である。
なお、ステップS201~S204は、ステップS101~S104と同様な処理であるから、説明は省略する。
このように、波長の異なる2種類の近赤外光に加え、可視光をクーラント液が格納された検出容器に向けて照射し、当該検出容器を透過した可視光を受光して得られた測定値から、クーラント液中の潤滑油の混入状態を評価することができることから、クーラント液中の潤滑油の混入状態を含めた、クーラント液の劣化状態を評価することができる。
なお、図10に示した本発明に係る実施形態のクーラント液評価装置10を用いたクーラント液評価方法のフローチャートにおいて、ステップS201~S206は同時に行ってもよい。
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
本発明に係るクーラント液評価装置は、クーラント液の状態を評価する装置として、好適である。
10…クーラント液評価装置
11…検出容器
12…第1発光部
13…第1受光部
14…第2発光部
15…第3受光部
16…評価部
17…制御部
18…記憶部
19…出力部
21…第3発光部
22…第3受光部
31…受光部
41…保持部
121、141、211…コリメートレンズ
122、142…ダイクロイックミラー
131、151、221、311…集光レンズ
212…ミラー
411…貫通孔

Claims (8)

  1. クーラント液が格納された検出容器と、
    前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である第1近赤外光を照射する第1発光部と、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第1近赤外光を受光する第1受光部と、
    前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、前記クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射する第2発光部と、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第2近赤外光を受光する第2受光部と、
    前記第1受光部が受光した前記第1近赤外光から測定された第1測定値と、前記第2受光部が受光した前記第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、前記クーラント液の状態を評価する評価部と、
    を備えることを特徴するクーラント液評価装置。
  2. 前記第1近赤外光、及び前記第2近赤外光の形状が、コリメート状態で楕円であることを特徴とする請求項1に記載のクーラント液評価装置。
  3. 前記評価部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差分を算出し、また前記第2測定値に対する前記第1測定値の比を算出し、前記クーラント液の状態を評価することを特徴とする請求項1、又は2に記載のクーラント液評価装置。
  4. 前記検出容器に向けて、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長である可視光を照射する第3発光部と、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記可視光を受光する第3受光部と、
    を備えることを特徴とする請求項1、又は2に記載のクーラント液評価装置。
  5. クーラント液が格納された検出容器を保持部にセットし、
    前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有する単一波長である、第1近赤外光を照射し、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第1近赤外光を受光し、
    前記検出容器に向けて、波長1000nm~1700nmの範囲内で、前記クーラント液の主成分の構成分子に対する吸光特性を有さず、且つ水に対して最も低い吸光度特性を有する単一波長である第2近赤外光を照射し、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記第2近赤外光を受光し、
    前記第1受光部が受光した前記第1近赤外光から測定された第1測定値と、前記第2受光部が受光した前記第2近赤外光から測定された第2測定値とに基づき、前記クーラント液の状態を評価することを特徴するクーラント液評価方法。
  6. 前記第1近赤外光、及び前記第2近赤外光の形状が、コリメート状態で楕円であることを特徴とする請求項5に記載のクーラント液評価方法。
  7. 前記評価部は、前記第1測定値と前記第2測定値との差分を算出し、また前記第2測定値に対する前記第1測定値の比を算出し、前記クーラント液の状態を評価することを特徴とする請求項5、又は6に記載のクーラント液評価方法。
  8. 前記検出容器に向けて、波長500nm~700nmの範囲内で、単一波長である可視光を照射し、
    前記検出容器に格納されたクーラント液を透過した前記可視光を受光することを特徴とする請求項5、又は6に記載のクーラント液評価方法。
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