JP2024087963A - 電磁波の反射若しくは透過抑制構造体 - Google Patents

電磁波の反射若しくは透過抑制構造体 Download PDF

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Figure 2024087963000001
【課題】3~300GHzの周波数fの電磁波の反射若しくは透過を抑制する構造体、反射及び透過を何れも同時に抑制する構造体を提供すること。
【解決手段】ベース樹脂中に炭素質物群が分散状態で含有されてなる反射若しくは透過抑制構造体であって、該炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる「直径30~1000nm、長さ0.2~70μmの範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群であり、該構造体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R及び/又は該構造体1の厚みDを調整することで、3~300GHzの周波数fにおいて、反射波若しくは透過波を-14dB以上減衰させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波の反射若しくは透過を抑制した構造体に関するものであり、詳しくは、3GHz以上300GHz以下の電磁波において、反射波若しくは透過波を入射波に対して一定以上減衰させる、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体に関するものである。
自動車業界では、「EV(電気自動車)」と「自動運転」の開発が加速している。地球温暖化対策に向けた脱炭素社会やカーボンニュートラルへの動きは、EVを開発することの後押しとなっており、更に、「EV」そのものが、自動運転の開発へ追い風ともなっている。そして、EV自動運転の実用化により、消費電力の削減や安全性向上が見込まれている。
自動運転の最大のメリットは安全性向上にある。自動運転システムの応答速度は、人間の反応速度を遥かに凌ぐため、自動運転によって、運転者の過失による交通事故を未然に防ぐことが可能となる。
自動運転はレベル0~5の6段階に分けて定義され、各レベルに応じて運転タスクや走行領域が設定されている。そして、日本における「官庁・ITSロードマップ」では、レベル4に該当する「高速道路における自家用車での自動運転」を2025年までに実現することを目標としている。
自動運転においては、制御系やセンサ系が如何なる条件でも誤作動を起こさないシステムにより安全性を担保することが必要不可欠となる。しかし、現状のシステム・部品・材料等では問題・未達が多く、2025年までのレベル4実現に向け、早急な解決が望まれている。
一方、各自動車メーカーは、先のレベルを見据えた開発を行っており、レベル5に向けた問題解決も必要となる。
レベル5の自動運転の安全制御システムの1つに走行制御系レーダーが挙げられる。走行制御系レーダーは、前方用が77GHz帯(76~77GHz)、後側方用に24GHz帯(24.05~24.25GHz)が使用されている。更に、より高い周波数を利用した高機能レーダーや高速通信(5G/6G)も注目されている。
また、電波は、走行制御系のみならず、多岐にわたり利用されており、用途や部位により、それぞれ使用する周波数帯が異なる。
EV化・自動運転の開発が進み、レーダーのセンシング性能が向上する一方で、他の電波や、「標識・電柱・道路・自動車等の他の構造体で反射した電波」との干渉と言った「不要電波による影響」も問題となっている。特に、電波を用いてのセンシングでは、レーダーモジュール周辺での電波の反射や透過を制御する必要があり、この目的に沿った制御を実現できる材料の出現が切望されている。
炭素繊維や、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)(carbon fiber reinforced plastics)は、軽量であり、強靭さとしなやかさを合わせ持っているため、金属や金属含有物の代替として、種々の成形品に多く利用されている。
中でも最も短い炭素繊維は、ミルドファイバーとも言われ、一般には平均繊維長は70μm~200μmであり、平均繊維径は約3μm~20μm(3000nm~20000nm)であり、その形状(サイズ)の小ささから、研磨剤、補強・補助剤等に利用されることが多い。
ミルドファイバーより長い平均繊維長を持つチョップドファイバーや長繊維は、プリプレグ、フォージド等の成型品に用いられることが主流である。
また、これ以外のサイズとして、ミルドファイバーを更に粉砕し、繊維長を短くした微粒CFRPは、例えばコンクリートの補強材等に利用されている。
しかし、これらは、短くなるほど加工性が難しくなり、粉砕された後も凝集し易くなることから、良分散が要求される分野には、現在のところ利用価値は少ない(利用できていない)。
炭素繊維の実際の分散性(1本1本で存在しているか否か)や、該炭素繊維の利用価値(実際に利用できる状態で存在しているか否か)から離れて、単純にその形状(サイズ)から定義すると、現在の一般的定義では、「直径3μm~10μm、長さ500μm~10000μmと定義されているカーボンファイバー」;「直径50nm~1000nm、長さ0.2μm~200μmのカーボンナノファイバー」;「直径0.4nm~100nm、長さ50nm~20000nmのカーボンナノチューブ」が知られている。
炭素繊維の直径やアスペクト比が記載された文献はあるが、現在のところ、本発明における「カーボンナノファイバー群」のように、形状(サイズ)が実際に小さく、特にアスペクト比が非常に大きく、かつ、略1本ずつ単離(分離)可能な状態になっているか、又は、略1本ずつ分散媒等に(安定的に)分散可能な状態になっているカーボンナノファイバー群は存在しない。
現在のところ、カーボンナノファイバーとして上記で定義される形状(サイズ)であって、分離・分散良好なカーボンナノファイバー群は、厳密には存在しないことに加え、該カーボンナノファイバーサイズの炭素繊維の利用度は、その分散性又は再分散性が悪い等のために極めて低いのが現状である。
また、アスペクト比が大きいナノサイズの炭素繊維が分散している、又は、それが分散可能な状態になっているものは、少なくとも、市場には(商業的には)存在しない。その理由は、原料となる炭素繊維の粉砕時に、特異的に縦にきれいに割れる、言い換えれば、フィラメントから素フィラメントを好適に剥離させることができていないからだと考えられる。
従って、本発明における「カーボンナノファイバー群」のように、アスペクト比が大きい「カーボンナノファイバー等の炭素繊維」が、安定して良分散している組成物、又は、成型体若しくは塗膜、又は、分散液若しくは塗料は、何れも知られていない。
言い換えれば、アスペクト比が大きく、分散可能で分散安定性もあるカーボンナノファイバー群は、種々の広い需要(用途)が考えられるものの、従来は良好なものは実現できていなかった。
一方、電波吸収材料として、種々の「炭素繊維等の炭素質物」が使用されることは知られている。
特許文献1には、少なくとも90%以上(-10dB)の遮蔽性能が得られる電磁波シールド材が記載されている。そこには、熱可塑性樹脂を主成分とし、電磁波の反射損失を50%以上低下させる分量で樹脂に含有されるナノカーボンと分散剤を含む電磁波シールド材が記載されている。
しかしながら、特許文献1の技術(電磁波シールド材)では、炭素質物が特定されておらず、出願時の炭素質物の分散性は悪いことに加え、実際、電磁波シールド材の吸収性能(反射量)は-6dBから-8dBであり、-14dBに到達していない。
特許文献2には、熱可塑性樹脂とカーボンナノチューブを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されているが、分散されている炭素質物がカーボンナノチューブである上に、吸収性能(反射量)は-10dBであり、-14dBに到達していない。
特許文献3には、特定のサイズの炭素繊維を特定の質量範囲で含み、該炭素繊維は表面にCl基を有しており、該熱可塑性樹脂はカルボキシル基又はカルボニル基を有するポリプロピレンである熱可塑性樹脂成型品が記載されている。そして、該熱可塑性樹脂成型品は、偏波方向が異なってもシールド性能に大きな差がないとされている。
しかし、電波制御材料としては使用されていない。すなわち、電磁波の吸収ができていないため、入射した電磁波が反射してしまい、そのため、電磁波を放射した例えばレーダー等が誤作動を起こす可能性があった。
前記した通り、自動車業界では、特定の波長域の電磁波を用いる自動運転の開発が加速しており、航空機業界でも、特定の波長域の電磁波を吸収する素材の開発が急がれているが、優れたものは実現できておらず開発の余地があった。
国際公開第2019/235561号公報 特許第6927448号公報 特開2014-237749号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波の「反射若しくは透過」を抑制する構造体を提供することにある。
更には、上記のある特定範囲の周波数fの電磁波の「反射及び透過」を何れも同時に抑制する構造体を提供することにある。
また、かかる構造体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、「繊維状炭素を粉砕して得られるものであることを必須要件とし、更に、特定範囲の直径と長さに、全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群」をベース樹脂中に含有させれば、分散性が極めて良好で、ある特定範囲の周波数fの電磁波の反射及び/又は透過を好適に抑制できる構造体が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ベース樹脂中に炭素質物群が分散状態で含有されてなる電磁波の反射若しくは透過抑制構造体であって、
該炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群であり、
少なくとも、該電磁波の反射又は透過抑制構造体全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R、及び/又は、該電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の厚みDを調整することによって、
3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、前記含有率Rを0.1質量%以上15質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、
前記周波数fが特定範囲の周波数f1の電磁波において、反射波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、前記含有率Rを5質量%以上50質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、
前記周波数fが特定範囲の周波数f2の電磁波において、透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、少なくとも2つの層を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体であって、
入射波に向かって第1層が、前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体であり、
入射波に向かって第2層が、上記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体、又は、金属若しくは金属含有構造体であり、
前記周波数f1と前記周波数f2が共通している周波数f(=f1=f2)の電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記ある特定範囲においてシフトさせることができる前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、少なくとも、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整することによって、前記周波数fをシフトさせることができる上記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、前記カーボンナノファイバー群が、繊維状炭素を数平均長さが100μm以下になるまで乾式粉砕をした後に、湿式粉砕をすることによって得られるものである前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供するものである。
また、本発明は、何れもベース樹脂中に炭素質物群を分散状態で含有させることによって得る、少なくとも2つの層(A)と層(B)を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法であって、
該炭素質物群として、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群を用い、
該2つの層(A)と層(B)ごとに、それぞれ、該層全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R(A)とR(B)、及び/又は、該層の厚みD(A)とD(B)を調整することによって、
3GHz以上300GHz以下の、ある共通した周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を成形するためものであることを特徴とするコンパウンドを提供するものである。
また、本発明は、前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を具備したものであることを特徴とする送信装置、受信装置、又は、移動体を提供するものである。
また、本発明は、前記の電磁波の反射及び透過抑制構造体を具備したものであることを特徴とする送信装置、受信装置、又は、移動体を提供するものである。
本発明によれば、前記問題点と上記課題を解決し、3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波の「反射若しくは透過」を抑制する構造体を提供することができる。
個別に表現すると、上記周波数fが周波数f1である電磁波において、反射波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにした構造体を提供することができ、また、上記周波数fが周波数f2である電磁波において、透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにした構造体を提供することができる。
言い換えれば、減衰量を14dB以上にした構造体を提供することができる。
なお、「-14dB以上減衰させられる」とは、電磁波の減衰量の絶対値として14dB以上にまで減衰させられることを意味する。すなわち、「以上」とは絶対値での「以上」を意味する。
本発明によれば、例えば、「-15dB以上減衰させる」ことができ、更には、「-20dB以上減衰させる」ことができる。
本発明においては、減衰量「dB」は以下の式(1)のように定義される。
減衰量[dB]=10×log10(I/I) (1)
[Iは入射波の強度、Iは反射波若しくは透過波の強度を示す。]
例えば、-20dBは、I/Iでは、10-2 =1/100(1%、-99%)である。
例えば、-14dBは、I/Iでは、10-1.4=0.040(4%、-96%)である。
本発明において使用される炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群である。
そして、そのような特殊なカーボンナノファイバー群は、製造可能であり、製造されたかかるカーボンナノファイバー群は、ベース樹脂中に極めて良好に分散させることができるので、特定範囲の電磁波f1の反射を好適に抑制できる(減衰させる)「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体」を提供することができ、また、特定範囲の電磁波f2の透過を好適に抑制できる(減衰させる)「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体」を提供することができる。
更に、本発明におけるカーボンナノファイバー群を用いれば、該カーボンナノファイバー群のベース樹脂中への含有率Rや構造体の厚みDを変化させる(調整する)ことによって、反射波や透過波の強度を、所定の値まで、すなわち実用可能の領域にまで、下げることができる。
また、本発明におけるカーボンナノファイバー群を用いれば、同一種類のカーボンナノファイバー群の使用で、(分散)含有率Rや構造体の厚みDを変化させる(調整する)だけで、反射抑制体も透過抑制体も製造が可能である。
ベース樹脂中の炭素質物群の含有率が多くなると、一般には、分散安定性や構造体の物理的強度が低下する。しかし、本発明におけるカーボンナノファイバー群を用いれば、分散性が良いので、好適分散(安定性)や構造体強度等が担保された範囲で、優れた反射抑制及び/又は透過抑制が可能となり、優れた電磁波の反射若しくは透過抑制構造体が提供できる。
本発明におけるカーボンナノファイバー群を用いれば、前記した通り、入射波の強度に対する反射波や透過波の強度を抑制する(減衰させる)ことができるが、減衰量[dB]の調整ができることに加えて、更に、「反射波や透過波の強度を抑制することができる(減衰させられる)電磁波の周波数f」をシフトさせることができる。
すなわち、本発明におけるカーボンナノファイバー群を用いれば、「反射波や透過波の強度を低下させる周波数f」を変化させる(調整する)ことができる。具体的には、少なくとも、「本発明におけるカーボンナノファイバー群」の「構造体中の含有率R、及び/又は、該構造体の厚みD」を調整することによって、前記周波数fをシフトさせることができる。
例えば、前記した通り、自動運転の走行制御系レーダーは、前方用が77GHz帯(76~77GHz)、後側方用に24GHz帯(24.05~24.25GHz)が使用されているが、上記含有率Rや上記厚みDを調整することで、反射波や透過波に関し抑制すべき周波数fを、それぞれの周波数に合わせることができる。
言い換えると、上記含有率Rや上記厚みDを調整することで、与えられた(決められた)入射波の周波数(帯)に合わせた「電磁波の反射抑制構造体若しくは透過抑制構造体」を提供することができる。なお、該周波数(帯)は、用途に応じて複数設定されており、また、将来、新たに設定されることもあり得る。
更に、本発明によれば、上記含有率Rや上記厚みDを調整することで、反射波を抑制する(減衰させる)周波数f1と、透過波を抑制する(減衰させる)周波数f2を一致させることができる(f1=f2=f)。
一致させることができる周波数f(=f1=f2)は、1点に限られる訳ではなく、範囲を有していることがあるので、言い換えれば、ある周波数範囲の全域の周波数f(=f1=f2)の範囲で、反射波を抑制する(減衰させる)周波数f1と、透過波を抑制する(減衰させる)周波数f2を一致させることができる(f1=f2=f)。
すなわち、3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波も透過波も、-14dB以上の抑制(減衰)が可能である。
具体的には、例えば、反射波の減衰に関しては、該含有率Rを0.1質量%以上15質量%以下のある含有率R1とし、透過波の減衰に関しては、該含有率Rを5質量%以上50質量%以下のある含有率R2とすることによって、同一周波数f(=f1=f2)で、反射も透過も抑制できる構造体が得られる。同一周波数f(=f1=f2)のある範囲に亘って、反射も透過も抑制できる構造体が得られる。
本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体」では、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記「ある特定範囲」においてシフトさせることができる。具体的には、少なくとも、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整することによって、前記周波数fをシフトさせることができる(図1参照)。
このことによって、同一種類のベース樹脂と炭素質物群を用いる場合であっても、単に、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整するだけで、前記周波数fを、前記ある特定範囲において(に亘って)シフトさせることができるので、容易に用途先が指定する周波数fに(範囲をもって)適応させることができる。
本発明の「電磁波の反射及び透過抑制構造体」では、反射波及び透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記ある特定範囲においてシフトさせることができる(図2参照)。
具体的には、入射波に向かって第1層を、本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造」のうちの「電磁波の反射抑制構造」とし、入射波に向かって第2層を、本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造」のうちの「電磁波の透過抑制構造」とすることによって、反射波及び透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記ある特定範囲において(に亘って)シフトさせることができる(図2参照)。
このことによって、同一種類のベース樹脂と炭素質物群を用いる場合であっても、第1層と第2層ごとに、単に、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整するだけで、前記周波数fを、前記ある特定範囲において(に亘って)シフトさせることができるので、容易に用途先が指定する周波数fに(範囲をもって)適応させることができる。
入射波に向かって第1層を、該周波数fで反射が抑制できる反射抑制構造体とし、入射波に向かって第2層を、該周波数fで透過が抑制できる透過抑制構造体とし、第1層と第2層を積層することによって、ある共通の(同じ)周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも減衰(抑制)させられる電磁波の反射及び透過抑制構造体を得ることが可能である。
すなわち、従来、反射及び透過を同時に抑制することはできていなかったところ、本発明によれば、3GHz以上300GHz以下のある周波数fにおいて、反射及び透過抑制構造体を提供することが可能である。
言い換えれば、従来、反射及び透過を同時に抑制する構造体はなかったが、本発明によれば、ある(特定範囲の)周波数fにおいて、反射波と透過波の何れの強度をも抑制する(減衰させる)積層構造体を提供することが可能である。反射及び透過の両方で-14dB以上の抑制(減衰)が可能である。
前記した通り、従来技術では、透過減衰量と反射減衰量の両方で-14dBに到達している例はない。本発明では、周波数3GHz~300GHzの電磁波の反射及び/又は抑制が可能である(両方で-14dBに到達している)。
従って、上記周波数範囲の電磁波の送信装置や受信装置等に好適に付帯・具備される。
すなわち、周波数3GHz~300GHz(のある周波数帯)において、優れた電磁波の吸収材料(反射抑制材料)、及び、該材料を使用した優れた吸収体(反射抑制構造体)を提供でき、それと同時に、優れた電磁波の遮蔽材料(透過抑制材料)及び該材料を使用した優れた遮蔽体(透過抑制構造体)を提供できる。
具体的には、例えば、周辺環境からレーダーを保護し、レーダーの信号伝達を阻害させないためのレーダーカバー等に、特に好適に使用される。
なお、一般に、また本明細書においても、「吸収」は反射損失(反射抑制)の意味として、「遮蔽」は透過損失(透過抑制)の意味として使用される。
本発明は、特に、自動車・航空機等の移動体に設置される送信装置や受信装置等において、その効果を発揮する。
具体的には、例えば、自動運転の走行系レーダー(制御系やセンサ系レーダー)や、移動通信システム(5G/6G)等に対して、例えば、レーダーカバー等として使用されて、電磁波の漏洩や干渉を好適に防止することができる。
本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の、入射波に対する反射波と透過波の強度を示す概略図である。 (a)電磁波の反射抑制構造体の反射抑制効果(吸収効果)を示す概略図 (b)電磁波の透過抑制構造体の透過抑制効果(遮蔽効果)を示す概略図 本発明の電磁波の反射及び透過抑制構造体の、入射波に対する反射波と透過波の強度を示す概略図である。 (a)第1層を本発明の電磁波の反射抑制構造体とし、第2層を本発明の電磁波の透過抑制構造体としたときの概略図 (a)第1層を本発明の電磁波の反射抑制構造体とし、第2層を金属若しくは金属含有構造体としたときの概略図 粉砕前の原料であるメソフェーズピッチ系繊維状炭素の横断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 (左)ラジアル型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 (中)本発明において原料として使用するランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 (右)オニオン型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 メソフェーズピッチ系繊維状炭素の横断面の概略図である。 (a)(a’)本発明において原料として使用するランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 (b)ラジアル型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 (c)オニオン型メソフェーズピッチ系繊維状炭素 本発明において原料として使用するランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素1本の横断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 原料として使用することが好ましいランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素(粉砕前)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。(a)400倍 (b)1300倍 本発明における乾式粉砕後の繊維状炭素の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。(a)600倍 (b)1500倍 本発明における湿式粉砕の途中の光学顕微鏡(生物顕微鏡)による700倍の写真である(参考図)。 本発明における湿式粉砕後の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。(a)1500倍 (b)6500倍 本発明において、原料として使用する(ランダム型)メソフェーズピッチ系繊維状炭素のフィラメントの製造工程を示す模式図である。 本発明において、乾式粉砕に用いられる装置の一例を示す概略図である。 本発明におけるカーボンナノファイバーの含有率の変化による体積抵抗率(Ω・cm)の変化を示す概念図である。 誘電体領域における「反射抑制(吸収効果)」の作用・原理を示す、ベース樹脂内のカーボンナノファイバーの状態(変化)を示した模式図である。 導電体領域における「透過抑制(遮蔽効果)」の作用・原理を示す、ベース樹脂内のカーボンナノファイバーの状態(変化)を示した模式図である。 製造例3で得られた構造体の評価例2における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例3と同様にして得られた構造体の評価例3における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例3と同様にして得られた構造体の評価例4における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 評価例2~4の構造体の反射減衰量を同じグラフに示し、厚みDを統一したときに、含有率Rによって反射減衰量が大きくなる(反射が抑制される)周波数がシフトすることを示したグラフである(評価例5)。 「2.3-A5」、「3.8-A5」及び「1-A5」の反射減衰量を同じグラフに示し、含有率Rを統一したときに、厚みDによって反射減衰量が大きくなる(反射が抑制される)周波数がシフトすることを示したグラフである(評価例6)。 「2.5-A0.5」、「2.5-A0.75」、「2.5-A1.0」及び「2.5-A1.25」の反射減衰量を同じグラフに示し、厚みDを統一したときに、含有率Rによって反射減衰量が大きくなる(反射が抑制される)周波数がシフトすることを示したグラフである(評価例7)。 製造例3と同様にして製造例4で得られた構造体の評価例8における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例5で得られた電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例9における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例6で得られた構造体の評価例10における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例7で得られた構造体の評価例11における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例8で得られた電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例12における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例13における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 「1-A3+1.5-A12」(製造例5、評価例9)と、「1-A5+1.5-A12」(評価例13)の反射量の測定結果を重ねて示したグラフである(評価例14)。 製造例5と同様にして得られた「1.5-A6.5+1.5-A30」、「1.5-A7.0+1.5-A30」及び「1.5-A7.5+1.5-A30」の反射減衰量及び透過減衰量を示し、第1層の含有率Rによって反射減衰量の周波数の変化を示すグラフである(評価例15)。(a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例5と同様にして得られた「1.5-A6.5+1.5-A30」及び「2.5-A6.5+1.5-A30」の反射減衰量及び透過減衰量を示し、第1層の厚みDによって反射減衰量の周波数の変化を示すグラフである(評価例16)。(a)反射減衰量 (b)透過減衰量 製造例5と同様にして得られた「2.5-A6.5+0.85-A30」及び「2.5-A6.5+1.5-A30」の反射減衰量及び透過減衰量を示し、第2層の厚みDによって反射減衰量の周波数の変化を示すグラフである(評価例17)。(a)反射減衰量 (b)透過減衰量 評価例18のグラフであり、横軸に周波数を取ったときの構造体の反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 評価例19のグラフであり、横軸に周波数を取ったときの構造体の反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例20における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例21における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 電磁波の反射及び透過抑制構造体の評価例22における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量及び透過減衰量の変化を示すグラフである。 (a)反射減衰量 (b)透過減衰量 第2層を金属としたときの「電磁波の反射及び透過抑制構造体」の評価例23における、横軸に周波数を取ったときの反射減衰量の変化を示すグラフである(透過減衰量は、60~90GHzの全域で-70dB以上減衰なので図示せず)。
[電磁波の反射若しくは透過抑制構造体]
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体は、ベース樹脂中に炭素質物群が分散状態で含有されてなる電磁波の反射若しくは透過抑制構造体であって、
該炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群であり、
少なくとも、該電磁波の反射又は透過抑制構造体全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R、及び/又は、該電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の厚みDを調整することによって、
3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする。
本発明は、図1(a)に示したような、上記要件を満たすことを特徴とする電磁波の反射抑制構造体1aであり、また、本発明は、図1(b)に示したような、上記要件を満たすことを特徴とする電磁波の透過抑制構造体1bである。
上記「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」の「若しくは」の意味は、本発明は「電磁波の反射抑制構造体1a」(図1(a)参照)であり、また、本発明は「電磁波の透過抑制構造体1b」(図1(b)参照)でもあると言う意味である。
本発明の「電磁波の反射抑制構造体1a」と「電磁波の透過抑制構造体1b」は、後記する「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」に用いることができる。
<カーボンナノファイバー(群)の(数平均)直径、(数)平均長さ、サイズ・分布>
本発明は、ベース樹脂中に炭素質物群が分散状態で含有されてなる構造体であるが、該炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群であることが必須である。
該炭素質物は、所謂カーボンナノファイバーでも極めて特殊なものであり、繊維状炭素を粉砕して得られるものであることが必須である。繊維状炭素を粉砕して得られるものではない場合は、上記分布のカーボンナノファイバー群が得られなかったり、ベース樹脂に対して分散性のあるものが得られなかったりして、結果として、好適な電磁波の反射若しくは透過抑制構造体が得られない。
原料となる上記繊維状炭素の種類、繊維状炭素の粉砕方法、粉砕時又は粉砕前後の処理、カーボンナノファイバー群の製造中に使用する化学物質やその使用量等の好ましい範囲については後述する。本発明におけるカーボンナノファイバー群の好ましい製造方法については後述する通りである。
なお、本発明における上記特定のカーボンナノファイバー群は、分散性に影響する個々のカーボンナノファイバーの表面状態等を含め、分析では特定できず、製造方法によってしか特定できない。すなわち、「不可能・非実際的事情」がある。
上記カーボンナノファイバー群の「全体の50個数%以上が分布している直径や長さ」、数平均直径、数平均長さ、数平均アスペクト比等、形状・サイズに関しても、後述する通りである。
<構造体に対するカーボンナノファイバー群の含有率R、構造体の厚みD>
本発明の「電磁波の反射抑制構造体1a」、「電磁波の透過抑制構造体1b」においては、少なくとも、該構造体全体に対するカーボンナノファイバー群の含有率R、及び/又は、該構造体の厚みDを調整することによって、好適な効果を奏するようになる。
言い換えれば、該含有率R、及び/又は、該厚みDを変化させることによって、「電磁波の反射抑制構造体1a」にしたり、「電磁波の透過抑制構造体1b」にしたりすることができる。また、電磁波の反射率・吸収性能や、透過率・遮蔽性能を制御・調整することが可能である。
更に、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる周波数fを、該含有率R、及び/又は、該厚みDを変化させることによって、シフトさせることができる。3GHz以上300GHz以下の範囲の周波数であれば、該含有率R、及び/又は、該厚みDを変化させることによって、-14dB以上減衰させることに対応することができる。すなわち、入射波に対して-14dB以上減衰させるような反射抑制構造体や透過抑制構造体を提供することができる。
なお、「-14dB以上減衰させる周波数f」のところに、減衰量[dB]のピーク(極小値)がある場合も、ピークはなく該周波数fを含んでブロードに-14dB以上減衰している場合もある。
本発明の構造体は、用途によって使用される(使用できる)電磁波の周波数が規定されているが、該規定された周波数に、該含有率R及び/又は該厚みDを変化させることによって容易に対応することができ、優れた「電磁波の反射抑制構造体」又は「電磁波の透過抑制構造体」を得ることができる。すなわち、用途に応じて、減衰量が大きくなる周波数を、容易にシフト(調整)させることが可能である。
本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」全体に対するカーボンナノファイバー群の含有率Rは、「電磁波の反射抑制構造体1a」(電磁波の吸収体)では、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、0.3質量%以上13質量%以下がより好ましく、1.0質量%以上12質量%以下が更に好ましく、2質量%以上10質量%以下が特に好ましく、3質量%以上8質量%以下が最も好ましい。
また、該含有率Rは、「電磁波の透過抑制構造体1b」(電磁波の遮蔽体)では、5質量%以上50質量%以下が好ましく、6質量%以上45質量%以下がより好ましく、8質量%以上40質量%以下が更に好ましく、10質量%以上35%質量%以下が特に好ましく、12質量%以上30質量%以下が最も好ましい。
含有率Rが上記範囲であれば、優れた「電磁波の反射抑制構造体1a」や「電磁波の透過抑制構造体1b」が得られる。すなわち、入射波に対して反射波や透過波を好適に減衰(大きく減衰)させることができる周波数fが存在する。
また、該周波数fをシフトさせて用途先の周波数に適応させることができる。具体的には、含有率Rを上記範囲にすることによって、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにできる。
「カーボンナノファイバー群がベース樹脂に分散されたコンパウンド」を調製し、それを本発明の構造体に成形するときは、該コンパウンド中のカーボンナノファイバー群の好ましい含有率等は上記範囲である。また、上記含有率Rの範囲の構造体を成形するためのコンパウンドも本発明の範囲に含まれる。
本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」の厚みDは、「電磁波の反射抑制構造体1a」(電磁波の吸収体)では、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上8mm以下がより好ましく、0.6mm以上6mm以下が更に好ましく、1.0以上4mm以下が特に好ましく、0.8mm以上3mm以下が最も好ましい。
また、該厚みDは、「電磁波の透過抑制構造体1b」(電磁波の遮蔽体)では、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.15mm以上7mm以下がより好ましく、0.2mm以上4mm以下が更に好ましく、0.25mm以上3mm以下が特に好ましく、0.3mm以上2.5mm以下が最も好ましい。
厚みDが上記範囲であれば、用途に対応した好適な厚みDであり、該厚みDの範囲において、それぞれ優れた「電磁波の反射抑制構造体1a」や「電磁波の透過抑制構造体1b」が得られる。すなわち、入射波に対して反射波や透過波を好適に減衰(大きく減衰)させることができる周波数fが存在する。
また、該周波数fをシフトさせて用途先の周波数に適応させることができる。具体的には、厚みDを上記範囲にすることによって、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにできる。
<減衰率>
本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」では、3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させることができるので、-14dB以上減衰させるようにしたものであることが必須であるが、好ましくは-15dB以上、より好ましくは-16dB以上、更に好ましくは-18dB以上、特に好ましくは-20dB以上、最も好ましくは-22dB以上減衰させるようにしたものである。
本発明の構造体によれば、反射波若しくは透過波を、入射波に対して上記減衰率[dB]以上減衰させることができる。
<<電磁波の反射抑制構造体>>
本発明は、前記含有率Rを0.1質量%以上15質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、前記周波数fが特定範囲の周波数f1の電磁波において、反射波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1であることが好ましい。
すなわち、言い換えれば、本発明は、例えば図1(a)に示したように、本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」が、上記要件を満たす「電磁波の反射抑制構造体1a」であることが好ましい。
なお、本発明の「電磁波の反射抑制構造体1a」は、「電磁波の吸収体」と読み換えることもできる。
実施例に示したように、上記周波数f1は、そこで反射波に減衰ピーク(極小値)を与える場合もあれば、反射波の減衰がブロードであって広い周波数範囲で、(-14dB以上)減衰させる場合の該範囲内のある周波数である場合もある。
<<電磁波の透過抑制構造体>>
本発明は、前記含有率Rを5質量%以上50質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、前記周波数fが特定範囲の周波数f2の電磁波において、透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1であることが好ましい。
すなわち、言い換えれば、本発明は、例えば図1(b)に示したように、本発明の「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」が、上記要件を満たす「電磁波の透過抑制構造体1b」であることが好ましい。
なお、本発明の「電磁波の透過抑制構造体1b」は、「電磁波の遮蔽体」と読み換えることもできる。
実施例に示したように、上記周波数f2は、そこで透過波に減衰ピーク(極小値)を与える場合もあれば、透過波の減衰がブロードであって広い周波数範囲で、(-14dB以上)減衰させる場合の該範囲内のある周波数である場合もある。
[電磁波の反射及び透過抑制構造体]
本発明は、少なくとも2つの層を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体3であって、入射波に向かって第1層が、前記した「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」のうちの「電磁波の反射抑制構造体1a」であり、
入射波に向かって第2層が、前記した「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1」のうちの「電磁波の透過抑制構造体1b」であるか、又は、金属若しくは金属含有構造体2であり、
「電磁波の反射抑制体1a」における前記周波数f1と、「電磁波の透過抑制構造体1b」における前記周波数f2が共通している周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体3でもある。
図2(a)(b)に、本発明の「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」の概略側面図を示す。
「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」とは、電磁波の反射も抑制し、かつ、電磁波の透過も抑制する構造体を意味する。
また、前記した通り、「周波数f1」とは、反射波を入射波に対して-14dB以上減衰させる周波数を言い、「周波数f2」とは、透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる周波数を言う。
実施例に示したように、反射波と透過波を両方とも-14dB以上減衰させる周波数である周波数f(=f1=f2)は、減衰ピーク(極小値)を与える場合もあれば、減衰がブロードであって広い周波数範囲で、(-14dB以上)減衰させる場合の該範囲内のある周波数である場合もある。反射波又は透過波のどちらか一方がピークを与え、他方がブロードである場合もあり、反射波及び透過波の両方が減衰ピーク(極小値)を与える場合もある。
本発明は、前記「電磁波の反射抑制構造体1a」と前記「電磁波の透過抑制構造体1b」の前記含有率R及び/又は前記厚みDを、それぞれ別々に調整し、両者を併用する(例えば、直列に並べる)ことによって、意外にも、反射波と透過波を両方とも-14dB以上減衰させる周波数f(=f1=f2)が存在することを見出してなされたものである。
「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」において併用(接合等)されて用いられる「電磁波の反射抑制構造体1a」と「電磁波の透過抑制構造体1b」の、それぞれの含有率R及び/又は厚みDの好ましい範囲等は、前記した「電磁波の反射抑制構造体1a」又は「電磁波の透過抑制構造体1b」におけるそれぞれの好ましい含有率Rや厚みDの範囲と同様である。
<反射抑制構造体と透過抑制構造体の併用方法>
上記「両者を併用する」方法、上記「直列に並べる」方法としては、減衰させる電磁波が両者に入射すれば、特に限定はないが、単に直列に並べる、接合させる(重ね合わせる)、接着剤等で接着する、多色成形(二色成形)する等が挙げられる。
図2(a)に示したように、入射波の向かってくる側に「電磁波の反射抑制構造体1a」を設置し(第1層)、その反対側に「電磁波の透過抑制構造体1b」を設置する(第2層)。
<透過抑制構造体としての「金属若しくは金属含有構造体」>
透過抑制構造体として、本発明の前記した「カーボンナノファイバー群が分散してなる電磁波の透過抑制構造体1b」に代えて、「金属若しくは金属含有構造体2」を用いることもできる。
該「金属若しくは金属含有構造体2」としては、3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波を好適に反射させるものであれば、特に限定はないが、金属板;金属を蒸着、スパッタリング、めっき等してなる金属被覆板;金属粉が分散された構造体;等が挙げられる。
本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1は、繊維状炭素を粉砕して得られる「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に、カーボンナノファイバー全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群を、ベース樹脂中に分散状態で含有してなるものである。
本発明におけるカーボンナノファイバーの直径や長さ;該カーボンナノファイバー製造途中の直径や長さ;本発明におけるカーボンナノファイバー群の数平均直径や数平均長さ;等、直径や長さの測定、及び、その平均値の算出は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、無作為に100本選択し、1本ずつその直径と長さを測定して、それらの相加平均をとることによって求める。
本発明における、直径、長さ、アスペクト比等のサイズと、それらの平均サイズは、上記のように測定・算出したものとして定義される。
本発明におけるカーボンナノファイバーは、アスペクト比が大きいので、粒度分布計による測定より、顕微鏡を用いて1本ずつその直径と長さを測定する。自動の粒度分布計では、直径と長さを好適には測定できないので、上記のようにせざるを得ない。
[カーボンナノファイバー(群)]
本発明におけるカーボンナノファイバー(群)は、上記した通り、繊維状炭素を粉砕して得られる「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に、カーボンナノファイバー全体の50個数%以上が分布しているものであることが必須である。
本発明において、「繊維状炭素」とは、グラフェン構造を有するあらゆる炭素質物(炭素材)のうち細長いものを言い、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、及び、それらに近似するサイズの炭素質物(炭素材)等が含まれる。また、「繊維状炭素」には、グラフェン構造を有する炭素質物(炭素材)のフィラメント10、それを構成する素フィラメント20、該フィラメント10が縦に並列してなるストランド等が含まれる。
本発明におけるカーボンナノファイバー群は、直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲に、カーボンナノファイバー群全体の50個数%以上が分布しているものである。
上記範囲に全体の50個数%以上が分布していることが必須であるが、好ましくは70個数%以上、より好ましくは80個数%以上、更に好ましくは90個数%以上、特に好ましくは95個数%以上、最も好ましくは98個数%以上が分布しているものである。本発明によれば、上記個数%以上のものは製造することができるので、分散性やそれを含有する成型体や塗料の特性等を考えると分布はシャープなほど好ましいが、生産性等を考えるとブロードでもよい。
上記「50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー」の直径は、30nm以上1000nm以下であるが、50nm以上850nm以下が好ましく、100nm以上700nm以下が特に好ましい。本発明によれば上記範囲の直径のものならば収率良く製造することができる。
直径が小さ過ぎると、製造が難しくなる場合や、同時に長さも短くなってしまうためにアスペクト比が小さくなってしまう場合等がある。一方、直径が大き過ぎると、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の性能が劣る場合がある。
上記「50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー」の長さは、0.2μm以上70μm以下であるが、1μm以上50μm以下がより好ましく、2μm以上30μm以下が更に好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。本発明によれば上記範囲の長さのものならば収率良く製造することができる。
長さが短過ぎると、アスペクト比が小さくなる場合、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の性能が劣る場合、凝集を防止し難くなる場合等がある。一方、長さが長過ぎると、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の性能が劣る場合、アスペクト比を大きく保ったままでの製造が難しくなる場合等がある。
上記は、カーボンナノファイバー群の中の多くの(例えば、50個数%以上、70個数%以上等の)カーボンナノファイバーが分布している直径範囲と長さ範囲から、サイズ分布を特定したものであるが、平均で特定すると、数平均直径は30nm以上1000nm以下であり、数平均長さは0.2μm以上70μm以下であることが好ましい。
言い換えると、本発明の電磁波制御材料においては、カーボンナノファイバー群に含有されているカーボンナノファイバーの数平均直径が30nm以上1000nm以下であり、かつ、数平均長さが0.2μm以上70μm以下であることが好ましい。
数平均直径は、50nm以上850nm以下がより好ましく、100nm以上700nm以下が特に好ましい。
数平均長さは、1μm以上50μm以下がより好ましく、2μm以上30μm以下が更に好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。
本発明における単離・分散可能なカーボンナノファイバーは、直径と長さが前記範囲であるので(前記範囲が望ましいので)、そのアスペクト比が大きいことが特徴の一つである。
該カーボンナノファイバーの数平均アスペクト比は、3以上200以下が好ましく、5以上160以下がより好ましく、7以上130以下が更に好ましく、15以上100以下が特に好ましく、20以上70以下が最も好ましい。
アスペクト比が小さ過ぎると、カーボンナノファイバー群が含有されている電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の性能が劣る場合がある。
一方、アスペクト比が大き過ぎると、製造が難しくなる場合、製造コストが無駄になる場合等がある。
ピッチ系繊維状炭素を原料とし、乾式粉砕をした後に湿式粉砕をすれば、原料となる繊維状炭素の粉砕時に、特異的に縦にきれいに割れる、言い換えれば、長さをあまり短くさせずに、フィラメント10から素フィラメント20を好適に剥離させることができる。本発明では、そのことによって、今までになかった分散可能でありつつ好適な平均アスペクト比を有するカーボンナノファイバー群が得られたが、このアスペクト比が大きいことやカーボンナノファイバー(群)の好適なサイズ・形状によって、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の所定の性能が実現できたと推認される。
カーボンナノファイバー群をベース樹脂に含有・分散させるときには、固体(粉末)で含有させても、一旦分散液として含有させてもよい。
本発明によれば、固体(粉末)で存在している場合であっても、例えば、図9に示したように、カーボンナノファイバーが1本ずつ単離可能な状態になっているか、又は、1本ずつの分散が可能な状態になっている。
本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の内に存在している場合、カーボンナノファイバーは実質的に1本ずつの分散状態になっている。なお、後述する素フィラメントにまでは1本ずつに分離可能であるとは限らないが、カーボンナノファイバーは1本1本に分散可能である。
上記「実質的に1本ずつの分散状態になっている」、「分散状態で含有されている」とは、「略1本ずつの分散状態になっている」ことであり、並列して強く凝集していない状態で、カーボンナノファイバー間にベース樹脂が入り込んだ状態を言う。
本発明におけるカーボンナノファイバー群は、上記したような分散性や分散状態にすることが可能である。
<カーボンナノファイバー(群)の製造>
本発明における、上記したような形状(直径と長さ)を有するカーボンナノファイバー、及び、上記したような分布を有するカーボンナノファイバー群は、少なくとも、乾式粉砕を行い、それに次いで湿式粉砕することによって得られる。更に、原料となる繊維状炭素を特定のものとすることによって、上記形状と分布を有する、(再)分散可能なカーボンナノファイバー群が得られる。
該乾式粉砕の前、上記2種の粉砕の間若しくは途中、又は、該湿式粉砕の後に、必要に応じて他の処理(操作)を加えることも好ましい。また、上記乾式粉砕と上記湿式粉砕は、それぞれ1段階でも2段階以上で行ってもよい。
本発明におけるカーボンナノファイバー群の「特に好ましい製造工程」を以下に示すが、本発明におけるカーボンナノファイバー群は、下記する「好ましい製造工程で実際に製造されたもの」のみに限定される訳ではない。
ただし、本発明におけるカーボンナノファイバー群は、下記する「好ましい製造方法」で特定した、原料となる繊維状炭素(炭素素材)、粉砕方法・粉砕条件、使用する分散剤や界面活性剤等の種類、処理の種類等の製造項目や製造項目を、適宜、設定又は最適化させることで製造することができる。
製造工程については、下記の処理を行う場合は、下記順番で行うことが特に好ましいが、必要なければ抜いてもよく、途中に他の処理を挟んでもよい。
すなわち、原料繊維状炭素用意、前粉砕、乾式粉砕、加熱処理、湿潤処理、湿式粉砕、凝集防止処理、水除去処理である。
上記のうち、少なくとも、特定の原料繊維状炭素を用意すること、乾式粉砕、及び、湿式粉砕は、本発明におけるカーボンナノファイバー群を得るために特に重要であり、そうすれば、本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体、電磁波の反射及び透過抑制構造体が好適に得られる。
上記のうち、前粉砕、加熱処理、湿潤処理、凝集防止処理、水除去処理は、何れも必須ではないが、良好に製造するために、必要に応じて、そのうちの幾つか又は全部を行うことが好ましい。特に加熱処理は、原料がサイジング材等の樹脂を含有するときは行うことが好ましく、原料がサイジング処理等されていないときは行わなくてもよい。
以下、好ましい処理順に各処理工程を説明する。
<<原料繊維状炭素>>
本発明は、粉砕前の繊維状炭素(原料の繊維状炭素)として、特に限定はないが、ピッチ系繊維状炭素を使用することが好ましく、メソフェーズピッチ系繊維状炭素を使用することがより好ましく、ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素を使用することが特に好ましい(図6参照)。
PAN系繊維状炭素では、どのような粉砕方法を用いても、直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下のカーボンナノファイバー群であって、前記したような高い数平均アスペクト比を有するものは得られ難い。
また、ピッチ系繊維状炭素であっても等方性ピッチ系繊維状炭素では、上記サイズ・形状・分布のカーボンナノファイバー群が得られ難い場合がある。
一方、メソフェーズピッチ系繊維状炭素は、その断面形状(すなわち内部形状)から、少なくとも、ラジアル型(図3(左)、図4(b))、ランダム型(図3(中)、図4(a)(a’)、図5)、オニオン型(図3(右)、図4(c))に分類されている。「ランダム型」とは、繊維断面がランダム型になっているものである。そのことから、ランダム型と名付けられた。
本発明において、メソフェーズピッチ系繊維状炭素であっても、ラジアル型メソフェーズピッチ系繊維状炭素又はオニオン型メソフェーズピッチ系繊維状炭素では、上記サイズ・形状・分布のカーボンナノファイバー群がやや得られ難い場合がある。原料となる繊維状炭素として、ラジアル型やオニオン型を用いると、前記形状・形態・分布のものは、好適には得られない場合もあり、特に個数平均アスペクト比が大きいカーボンナノファイバー群が好適には得られない(例えばアスペクト比が3未満のものしか得られない)場合がある。
「上記ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素を構成するフィラメント」は、棒状又は板状(シート状)の更に小さいサイズのものが集合してできている。例えば、図5では、板状(シート状)のものが縦に集合している。
本明細書では、フィラメント10を構成する該「棒状又は板状(シート状)の更に小さいサイズのもの」を「素フィラメント」20と略記する。
1つの素フィラメント(内で)は、ベンゼン環の縮合したグラフェン構造が同方向を向いて積み重なって1つとなっているか、カーボンナノチューブの1本又は2本以上が同方向を向いて束ねられて1つとなっている、等と考えられる。
本発明において原料である繊維状炭素は、フィラメント10を構成する該素フィラメント20の数平均厚さ又は数平均太さが、10nm以上200nm以下のものであることが好ましい。より好ましくは15nm以上150nm以下であり、更に好ましくは20nm以上100nm以下であり、特に好ましくは30nm以上70nm以下である。
図10に、メソフェーズピッチ系繊維状炭素のフィラメント10の製造工程の概略を示す。ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素も、図10において、紡糸粘度、ノズル形状、原料ピッチの流動状態等を調整することで得られる。
メソフェーズピッチ系繊維状炭素の製造工程には延伸工程が存在しない。紡糸工程で制御されたミクロ構造が、ほぼそのままフィラメント10の結晶構造となり、結晶構造の向きが異なる境界ができ、素フィラメント20が見られる(存在する)ようになる。
図10において、原料となるフィラメント10の太さは、通常4000nm~20000nm、多くは5000nm~12000nmであり、一方、本発明において原料となる繊維状炭素フィラメント10中の素フィラメント20の数平均厚さ又は数平均太さは、好ましくは10nm以上200nm以下、より好ましくは15nm以上100nm以下であるので、原料となる繊維状炭素において、1本のフィラメント10中に、通常40~700本、殆どの場合60~400本の素フィラメント20が存在している。
結晶構造の向きが異なる境界で、1本の素フィラメント20を分ける(定義する)と、上記本数の素フィラメント20が束ねられて1本のフィラメント10ができている。なお、図10では、概略的に見易いように、前面から見て、たまたま3本の素フィラメントで、1本のフィラメントができているように描かれている。
本発明において、原料としてランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素を用いるときは、限定はされないが、上記のような態様のものであることが特に好ましい。
本発明におけるカーボンナノファイバー群の形状・分布等は、及び、そもそもそのようなカーボンナノファイバー群ができるか否かを含めて、原料である繊維状炭素の種類が何であるかに依存する。
<<<本発明におけるカーボンナノファイバーと素フィラメントの関係>>>
本発明におけるカーボンナノファイバーは、「原料となる上記フィラメントを構成する上記素フィラメント」が2本以上20本以下の範囲で集合して構成されていることが好ましい。より好ましくは3本以上16本以下、特に好ましくは4本以上12本以下である。上記素フィラメントの数は、カーボンナノファイバー群において、カーボンナノファイバー毎に平均を採った値である。
カーボンナノファイバーを製造する際に、該素フィラメントの結晶性や外形等が若干崩れる場合もあるが、それを含めて上記のように「本数」と言う。また、素フィラメントがもともと板状の場合であっても、粉砕後には細長くなるので、上記のように「本数」と言う。
<<前粉砕>>
原料となる繊維状炭素は、チョップドファイバー形状でも、ミルドファイバー形状でもよいが、チョップドファイバー形状であることが好ましい。ミルドファイバー形状の場合、長さが1μm程度の短いものが多く混在するので、アスペクト比の大きいカーボンナノファイバーを得るために、チョップドファイバー形状であることが好ましい。ミルドファイバー形状の場合、例えば「平均長さ70μm」と言って(公表して)いても、長さが1μm程度の短いものが多く混在する場合がある。
限定はされないが、前粉砕で原料となる繊維状炭素を、平均で1mm~15mmにすることが好ましく、2mm~10mmにすることがより好ましく、5mm~8mmにすることが特に好ましい。例えば、長繊維ボビンタイプの場合は、前粉砕する必要が生じる場合がある。最初から、上記範囲であれば、前粉砕は行わないことも好ましい。
前粉砕の粉砕方式は特に限定はなく、市販の乾式粉砕機が何れも使用可能であるが、例えば装置としてカッターミル等が挙げられる。
<<乾式粉砕>>
本発明において、「乾式粉砕」は、特に限定はないが、気流式粉砕、カッター式粉砕、又は、「気流式粉砕とカッター式粉砕の両方を同時に行う粉砕」であることが好ましい。「気流式粉砕とカッター式粉砕の両方を同時に行う粉砕」とは、「気流式粉砕機構・機能とカッター式粉砕機構・機能の両方を同時に有しているような粉砕」の意味である。
<<<気流式粉砕>>>
気流式粉砕としては、例えば、サイクロンミル等の気流粉砕機や、ジェットミル等を用いた粉砕が挙げられる。
サイクロンミルによる気流式粉砕は、インペラ(回転翼)の回転によって気流を発生させ、気流中に投入された対象物を乾式で粉砕して微粒子を製造するものである。また、ジェットミルによる気流粉砕は、衝突板に対象物を衝突させて対象物を乾式で粉砕して微粒子を製造するものである。
インペラ、回転翼、ブレード、回転刃等の回転体を有さない粉砕機(ジェットミル等)より、それらを有する気流粉砕機や、<<気流式粉砕とカッター式粉砕の両方を同時に行う粉砕>>で後述する粉砕機の方が、湿式粉砕で所定の形状のカーボンナノファイバー群を得るために、「湿式粉砕の前の乾式粉砕」として好ましい。
サイクロンミルとしては、市販されている装置も好適に使用できる。市販品としては、例えば、静岡製機株式会社製のサイクロンミル、株式会社西村機械製作所製のスーパーパウダーミル、三庄インダストリー株式会社製のトルネードミル、古河産機システムズ株式会社製のドリームミル等が挙げられる。
上記サイクロンミルの構造は、特に限定はないが、1個又は2個以上のインペラを有し、該インペラが発生させる旋回気流によって主に粉砕対象物同士を衝突させて粉砕するものであることが、前記気流粉砕機を使用することによる前記効果を奏し易い;金属コンタミが非常に少ない;等の点から特に好ましい。
ジェットミルとしては、市販されている装置も好適に使用できる。市販しているメーカーとしては、例えば、株式会社セイシン企業、ホソカワミクロン株式会社、日本ニューマチック株式会社、日清エンジニアリング株式会社が挙げられる。
<<<カッター式粉砕>>>
また、カッター式粉砕としては、例えば、クラッシャーミル、ピンミル、カッターミル、ハンマーミル、軸流ミル等を用いた粉砕が挙げられる。
<<<気流式粉砕とカッター式粉砕の両方を同時に行う粉砕>>>
本発明における乾式粉砕としては、気流式粉砕とカッター式粉砕の両方を同時に行う粉砕であることが特に好ましい。
特に、本発明における乾式粉砕は、ブレードを有し、剪断と衝撃とを与える乾式粉砕機で行うことが好ましい。又は、「ブレードによる剪断と衝撃」とを加える乾式粉砕機で行うことが好ましい。
かかる乾式粉砕機の一例の概略図を図11に示す。
ジェットミル、サイクロンミル、トルネードミル、ドリームミル(登録商標)等の「インペラ等で粉砕させない全気流式粉砕機」の場合は、原料によっては、乾式粉砕の段階で直径が小さくなり過ぎる等のために、次の湿式粉砕でアスペクト比が小さくなり過ぎる(丸い形状になる)場合もあるため、限定はされないが、湿式粉砕の前に行う粉砕としては、あまり向かない場合もある。
乾式粉砕する場合の雰囲気温度又は設定温度は、特に限定はなく使用する装置の使用方法に従えばよいが、好ましくは0℃以上50℃以下、特に好ましくは5℃以上35℃以下である。
また、インペラ回転数も、使用する装置の使用方法に従えばよいが、好ましくは4000rpm以上20000rpm以下、特に好ましくは8000rpm以上15000rpm以下である。
上記したような装置を用いて、上記した粉砕方法で、数平均長さが100μm以下になるまで乾式粉砕した後に、次の工程に供されることが好ましい。
100μm以下になるまで乾式粉砕してから湿式粉砕をすることによって、カーボンナノファイバーの、直径、長さ、アスペクト比、形状分布等が前記した必須の範囲又は好適な範囲に収まり易くなる。
乾式粉砕によって、数平均長さを100μm以下にしておくことが好ましいが、より好ましくは5μm以上70μm以下、更に好ましくは7μm以上50μm以下、特に好ましくは10μm以上40μm以下にしておくことが望ましい。
乾式粉砕後の数平均長さが長過ぎると、次の工程である湿式粉砕で、該湿式粉砕の条件を調整しても、最終的にカーボンナノファイバーの直径や長さが、前記した範囲に入り難い場合がある。
一方、乾式粉砕後の長さが短過ぎると、湿式粉砕後にカーボンナノファイバーの長さがそれ以上にはなり得ないので、最終的にカーボンナノファイバーの長さや個数平均アスペクト比が前記した好ましい範囲になり難い場合等がある。特に、最終的に得られるカーボンナノファイバーのアスペクト比が小さくなり過ぎる場合がある。
乾式粉砕後の数平均直径については、そもそも乾式粉砕のみでは小さくし難く、すなわちアスペクト比が大きくなるように粉砕し難く、また、乾式粉砕で無理に直径を小さくしてしまっては、長さも短くなってしまい、湿式粉砕後の最終的なアスペクト比が好適な範囲に収まり難くなる。
乾式粉砕後の平均直径は、3000nm以上が好ましく、5000nm以上15000nm以下がより好ましく、7000nm以上12000nm以下が特に好ましい。この範囲になるように乾式粉砕を行っておくことが望ましい。
乾式粉砕後の数平均アスペクト比は、特に限定はないが、10以下であることが好ましく、より好ましくは1.2以上7以下、特に好ましくは1.5以上5以下である。
乾式粉砕によっては、そもそも平均アスペクト比を上記上限より大きくし難い。すなわち、平均アスペクト比を上記上限より大きくできる程度に平均繊維径を小さくし難い。
本発明において、乾式粉砕によって、数平均長さを、好ましくは100μm以下にしておき、比較的大きな直径や比較的小さな数平均アスペクト比にしておいても、或いは、しておくことによって、後の湿式粉砕によって、最終的に前記したような、好適な「直径や長さ、大きな数平均アスペクト比」のカーボンナノファイバー群が得られる。
<<加熱処理>>
本発明においては、前記カーボンナノファイバー群が、粉砕前の原料である繊維状炭素に混在樹脂を実質的に有さないものであることが好ましい。
ここで、混在樹脂を有する場合とは、例えば、原料である繊維状炭素にサイジング剤等が含まれている場合等が挙げられる。すなわち、上記混在樹脂としては、限定はないが、例えばサイジング剤等が挙げられる。
本発明においては、前記した乾式粉砕物に樹脂が混在している場合、加熱処理を行って該樹脂を除去することが好ましい。
言い換えると、本発明におけるカーボンナノファイバー群は、乾式粉砕をした後に湿式粉砕をすることによって得られるものであり、該乾式粉砕と該湿式粉砕の間に加熱処理を行うことで、原料に混在する混在樹脂が除去されたものであることが好ましい。
なお、例えばサイジング剤等の樹脂の混在がない場合には、該加熱処理を省略することができる。
加熱処理の条件は、限定はされないが、例えば、炉の温度320℃~480℃で、5分~15分間加熱し、樹脂の含有を、好ましくは0.1質量%以下に、特に好ましくは0.01質量%以下にまでする。前記「混在樹脂を実質的に有さない」とは、(上記加熱処理等をして)上記含有量以下にした状態のことを言う。
該加熱処理をすることで、好ましくは、乾式粉砕の後であって湿式粉砕の前に該加熱処理をすることで、後の工程である(湿潤処理を行う場合は)湿潤処理や湿式粉砕の際に使用する湿潤剤や界面活性剤が有する粉砕・分散効果が上がる。
<<湿潤処理>>
限定はされないが、更に湿潤処理をすることが好ましい。該湿潤処理は湿式粉砕の前に行うことが好ましく、乾式粉砕後又は加熱処理後に行うことが好ましい。
該湿潤処理では、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を含有する水溶液に、上記で得られたものを浸漬することが好ましい。なお、該界面活性剤は、後の湿式粉砕でも好適に使用できる。
上記陰イオン界面活性剤は、高分子陰イオン界面活性剤(「高分子」にはオリゴマーも含まれる)であることが好ましく、酸基を有する(共)重合物の、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキロールアンモニウム塩等であることがより好ましい。
上記した陰イオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。
上記「酸基を有する(共)重合物」は、(メタ)アクリル酸の(共)重合物、(無水)フタル酸の(共)重合物、ビニルベンゼンスルホン酸の(共)重合物、及び、ナフタレンスルホン酸の(共)縮合物からなる群より選ばれた少なくとも1種以上の(共)重合物であることが特に好ましい。ここで、「(共)」、「(メタ)」、「(無水)」と言う記載は、括弧がある場合もない場合も含むことを示す。共重合物の場合の共重合モノマーとしては、特に限定はないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ) アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
ナフタレンスルホン酸の(共)縮合物とは、ホルムアルデヒド等のアルデヒドで環を結合したものが挙げられる。共縮合物の場合の共縮合モノマーとしては、フェノール、クレゾール、ナフトール等が挙げられる。
また、上記陽イオン界面活性剤は、第四級アンモニウムが親水基である界面活性剤であることが好ましく、第四級アンモニウムの「N+」への置換基としては、特に限定はないが、ステアリル基、パルミチル基、ドデシル基、メチル基、ベンジル基、ブチル基等の(置換基を有していてもよい)アルキル基等が好ましい。また、炭素数が12個以上の長鎖アルキル基がより好ましい。
対アニオンとしては、特に限定はないが、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンが特に好ましい。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、アミンオキシド型等が挙げられる。
中でも、陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を用いることが好ましい。
界面活性剤の含有量、及び、水系の分散媒中の(乾式粉砕後の)繊維状炭素の含有量は、下記する<湿式粉砕>の数値範囲と同様である。
界面活性剤を用いることによって、更には、上記した好ましい陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤を用いることによって、原料である繊維状炭素を、湿式粉砕によって縦に解く効果を奏し、長さを長いまま保ちつつ直径を細くすることができ、平均アスペクト比の大きなカーボンナノファイバー(群)を得ることができる。
<<湿式粉砕>>
本発明におけるカーボンナノファイバー群の製造法としては、乾式粉砕の後に湿式粉砕をすることが好ましい。該湿式粉砕は、特に限定はされないが、ビーズミル粉砕又はボールミル粉砕であることが好ましい。界面活性剤が存在している水系媒体中で行うビーズミル粉砕又はボールミル粉砕であることが特に好ましい。
なお、乾式粉砕と湿式粉砕の間には、上記した加熱処理、湿潤処理等の「他の処理」を挟んでもよい。「他の処理」としては、更に、例えば、予備混合、予備調液等が挙げられる。
上記界面活性剤としては、上記湿潤処理をした場合であっても、上記湿潤処理をしなかった場合であっても、何れの場合でも、上の<湿潤処理>の項で記載した界面活性剤が挙げられる。
好ましい界面活性剤も同様のものが挙げられる。すなわち、<湿潤処理>の項で上記したような、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、又は、両性界面活性剤が好ましいものとして挙げられる。なお、湿潤処理の際に用いた界面活性剤をそのまま湿式粉砕において用いてもよいし、湿式粉砕の際に、新たに配合したり、追加したり、湿潤処理のときとは異なる別種類の界面活性剤を配合したりすることができる。
界面活性剤の使用量は、特に限定はないが、粉砕・分散の対象である繊維状炭素(粉砕途中のカーボンナノファイバー)100質量部に対して、(界面活性剤を2種以上併用するときはその合計量として)、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上50質量部以下であり、更に好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、特に好ましくは0.2質量部以上10質量部以下である。
該界面活性剤の使用量が多過ぎると、繊維状炭素が縦に解けていく途中で凝集を招く場合がある。その結果、カーボンナノファイバーが凝集した状態の分散液になるので、対象物に付与した場合、得られたものの物性に影響がでる場合等がある。
前記湿潤処理をした場合、湿式粉砕に際しては、新たに界面活性剤を加えてもよいし、該湿潤処理の際に配合してあった界面活性剤をそのまま使用してもよい。
湿式粉砕に際して新たに界面活性剤を加える場合は、湿潤処理の界面活性剤と同一のものでもよいし、異なるものでもよい。
<<<湿式粉砕の方式・装置・条件>>>
湿式粉砕をすることによって、はじめて、前記したような特定の形状(直径、長さ、アスペクト比)や粒度分布を有しつつ、分散性のあるカーボンナノファイバー群を製造することができる。
湿式粉砕の条件は、本発明の前記した特定の形状(直径、長さ、アスペクト比)のカーボンナノファイバー(群)が得られるように調整する。
そのようにして得られる「分散性のあるカーボンナノファイバー群」を用いることによって、優れた電磁波の吸収材料(反射抑制材料)、及び、該材料を使用した優れた吸収体(反射抑制構造体)が得られるようになる。また、優れた電磁波の遮蔽材料(透過抑制材料)及び該材料を使用した優れた遮蔽体(透過抑制構造体)が得られるようになる。更に、両性能を兼ね備えた電磁波の反射及び透過抑制構造体が得られるようになる。
湿式粉砕に用いられる粉砕メディアの材質としては、ガラス、アルミナ、ジルコン(ジルコニア・シリカ系セラミックス)、ジルコニア、金属(スチール)等が好ましいものとして挙げられる。
ビーズミルを例にすると、用いられるビーズのビーズ径は、0.1mm以上3mm以下が好ましく、0.2mm以上2mm以下がより好ましく、0.3mm以上1mm以下が特に好ましい。
ビーズ径が大き過ぎると、ビーズミル容器内のビーズ個数が減り、接触点が減ることになり、好適に粉砕・分散ができない場合、直径を十分小さく粉砕できない場合等がある。一方、ビーズ径が小さ過ぎると、好適に粉砕・分散できない場合、粉砕に時間がかかり過ぎる場合等がある。
ビーズミルに用いられるビーズ充填率としては、45%以上90%以下が好ましく、55%以上87%以下がより好ましく、65%以上85%以下が特に好ましい。
ビーズ充填率が小さ過ぎると、繊維状炭素が縦割れし難くなり、アスペクト比の大きなカーボンナノファイバーができ難い場合等がある。一方、ビーズ充填率が大き過ぎると、ビーズミルの撹拌羽根が回り難くなる場合等がある。
ビーズミル処理の対象となるスラリー全体に対して、乾式粉砕後の繊維状炭素が、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましく、5質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
上記ビーズミル処理に用いる撹拌羽根の形状は、特に限定はされない。
撹拌羽根(アジテータ)の回転数は、撹拌羽根の差し渡し長さやビーズミルの容量にも依るが、容量2Lの場合に換算して、600rpm以上4500rpm以下が好ましく、800rpm以上4000rpm以下がより好ましく、1000rpm以上3500rpm以下が特に好ましい。
撹拌羽根(アジテータ)の先端の周速度は、撹拌羽根の差し渡し長さにも依るが、直径20cmとして、上記回転数から計算できる範囲が好ましい。具体的には、5m/s以上40m/s以下が好ましく、7m/s以上30m/s以下がより好ましく、9m/s以上20m/s以下が特に好ましい。
ビーズミルの粉砕分散の運転方式は、循環式でもバッチ式でもよいが、循環式が好ましい。循環式の場合は、バッチ式のように容器に受け渡しすることがないので、その際に凝集が進んでしまうことがない。
循環式で行う場合、パス回数で微細化の程度が変わってくる。例えば、1パス当たりの滞留時間を長くした場合、処理物のショートパスがないことで、粒度分布はシャープになるが、カーボンナノファイバーのアスペクト比も小さくなってしまう。そのため、例えば、4Lに換算した場合、好ましくは70分以上270分以下、より好ましくは80分以上230分以下、特に好ましくは90分以上180分以下で、循環させてビーズミル処理する。
湿式処理における温度は、好ましくは0℃以上50℃以下、特に好ましくは5℃以上35℃以下である。ビーズミルは、縦型でも横型でもよい。
また、ビーズミルは、市販の装置も使用できる。市販の装置としては、例えば、ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社のダイノーミル、ネッチ社(米)のビーズミル等が挙げられる。
1パス当たりの時間(連続運転時間)、パス回数、及び、トータルの時間は、装置構造、スラリー濃度、粉砕分散条件、界面活性剤の種類等に依存する場合があるので、1パス毎に又は湿式粉砕の途中で抜き出し、粒子径分布測定装置、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)等で逐一観察して適宜調節することが好ましい。
前記した「乾式粉砕と湿式粉砕を併用する製造方法」を使用し、前記した範囲で粉砕条件等を適宜調整すれば、直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下のカーボンナノファイバー(群)を得ることができる。
また、前記した「乾式粉砕と湿式粉砕を併用する製造方法」を使用し、前記した範囲で粉砕条件等を適宜調整すれば、数平均アスペクト比が3以上200以下のカーボンナノファイバー(群)を得ることができる。
また、前記した「乾式粉砕と湿式粉砕を併用する製造方法」を使用し、前記した範囲で粉砕条件等を適宜調整すれば、カーボンナノファイバーが、1本ずつ単離可能な状態になっているか、又は、後記するベース樹脂中で、実質的に1本ずつの分散状態になっている(分散状態にできる)カーボンナノファイバー群や電磁波の反射若しくは透過抑制構造体が得られる。
ここで、「実質的に1本ずつの分散状態」とは、「略1本ずつの分散状態」であり、カーボンナノファイバー同士が並列して密着していない状態で、カーボンナノファイバー間にベース樹脂が入り込んだ状態を言う。
<<凝集防止処理>>
湿式粉砕した後、限定はされないが、更に、凝集防止処理をすることが特に好ましい。
該凝集防止処理としては、限定はされないが、更に、上記湿式粉砕をした後に得られる、カーボンナノファイバー群のスラリーの中に、金属含有凝集防止剤、コブロックポリマー、櫛型コブロックポリマー、及び、界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の凝集防止剤を含有させて凝集防止処理を行うことが望ましい。
具体的には、特に限定はされないが、(複合)金属キレート化合物、(複合)金属酸化物の微粒子、金属を含有するワックス、(複合)金属イオン水等の金属含有凝集防止剤;ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン等を単位として有するコブロックポリマー;該ポリマーを単位として有する櫛型コブロックポリマー;又は;界面活性剤を配合することによって行うことが好ましい。
該凝集防止処理は、前記した湿式粉砕した直後に行ってもよいし、後記する水除去処理後に行ってもよく、両方の段階で行ってもよい。
凝集防止処理において使用する凝集防止剤として、上記したような金属含有凝集防止剤を用いる場合は、(複合)金属キレート化合物がより好ましく、HEDTA、EDTA、PDTA、NTA、エチレンジアミン、ビピリジン、フェナントロリン、ポルフィリン等の金属塩が更に好ましい。
中でも、HEDTA(hydroxyethyl ethylene diamine triacetic acid)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid))、PDTA(1,3-propanediamine tetraacetic acid)、NTA(nitrilo triacetic Acid)等の金属塩等が特に好ましい。
また、凝集防止処理において使用する界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、又は、両性界面活性剤が好ましいものとして挙げられ、陰イオン界面活性剤又は両性界面活性剤がより好ましいものとして挙げられる。限定はされないが、特に好ましい具体的界面活性剤としては、前記<湿潤処理>や<湿式粉砕>の項に記載したものと同様のものが挙げられる。
金属含有凝集防止剤、「凝集防止処理において使用する界面活性剤」、コブロックポリマー等の凝集防止剤については、該凝集防止処理直前の凝集防止対象物の表面状態を勘案してその種類を決定する。
金属含有凝集防止剤、界面活性剤、コブロックポリマー等の凝集防止剤の種類が上記であると、分散媒(水)の除去処理工程、その後の経時等で、凝集し難くなり、保存安定性が良くなる。
「(複合)金属キレート化合物等の金属含有凝集防止剤;凝集防止処理において使用する界面活性剤;コブロックポリマー;等の凝集防止剤」の使用量は、特に限定はないが、湿式粉砕後のスラリー全体量に対して(凝集防止剤を2種以上併用するときはその合計量として)、0.2質量%以下で加えることが好ましく、0.0001質量%以上0.1質量%以下で加えることがより好ましく、0.0002質量%以上0.03質量%以下で加えることが更に好ましく、0.0003質量%以上0.01質量%以下で加えることが特に好ましい。
また、上記凝集防止剤の使用量は、特に限定はないが、カーボンナノファイバー群と言った凝集防止対象物の全体量に対して(凝集防止剤を2種以上併用するときはその合計量として)、1質量%以下で加えることが好ましく、0.001質量%以上0.5質量%以下で加えることがより好ましく、0.002質量%以上0.3質量%以下で加えることが更に好ましく、0.003質量%以上0.1質量%以下で加えることが特に好ましい。
すなわち、本発明のカーボンナノファイバー群の製造方法では、上記凝集防止剤を、湿式粉砕後のスラリー全体に対して、0.0001質量%以上0.1質量%以下で加える、又は、カーボンナノファイバー群である凝集防止対象物の全体量に対して、0.001質量%以上1質量%以下で加えることが望ましい。
「金属含有凝集防止剤、界面活性剤、コブロックポリマー等の凝集防止剤」の使用量が上記範囲であると、分散媒(水)の除去処理工程、その後の経時等で、凝集し難くなり、保存安定性が良くなる。
凝集防止処理中の撹拌は、特に限定はないが、例えば、ハンドミキサー等による撹拌が挙げられる。撹拌速度は、特に限定はないが、300~1200rpmが好ましく、500~1000rpmが特に好ましい。
凝集防止処理の温度は、特に限定はないが、20℃~100℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましく、60℃~80℃が特に好ましい。
<<水除去処理>>
カーボンナノファイバー群を粉末として得るためには水除去処理を行う。
ただし、ベース樹脂中に分散させるカーボンナノファイバー群は、湿式粉砕後のスラリーに含有されているカーボンナノファイバー群でもよく、上記凝集防止処理をした後のスラリーに含有されているカーボンナノファイバー群でもよく、該スラリーから水を除去した後の粉末状のカーボンナノファイバー群でもよい。
上記何れの状態のカーボンナノファイバー群であっても、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体としての用途に好適に使用することができる。
水除去処理における方法は、特に限定はなく、減圧及び/又は昇温によって行うことができる。サイクロン分離回収方法で半ドライアップした後、オーブン内で減圧及び/又は昇温によって水を除去(乾燥)させることが特に好ましい。
水除去処理の温度は、特に限定はないが、40℃~160℃が好ましく、70℃~130℃が特に好ましい。
更に、界面活性剤を除去するため、加熱処理をすることも好ましい。該加熱処理は、限定はないが、300~500℃が好ましい。
本発明におけるカーボンナノファイバー群を構成するカーボンナノファイバーは、該カーボンナノファイバー自体の分散性が良いので、その表面に分散剤や界面活性剤が付着していないものであることも好ましい。
前記した凝集防止処理を、上記水除去処理の後に行うことも好ましい。すなわち、前記した凝集防止剤や界面活性剤を、上記水除去処理の後の、濃縮されたスラリー又は粉末に配合することも好ましい。
本発明において使用されるカーボンナノファイバー群は、特に限定はされないが、体積抵抗率が2×10-3 Ω・cm以下のものであることが好ましく、7×10-4 Ω・cm以下のものであることがより好ましく、4×10-4 Ω・cm以下のものであることが特に好ましい。
ここで、体積抵抗率は、JIS R 7222、黒鉛素材の物理特性測定方法に従って測定し、そのように測定したものとして定義される。
前記製造方法で製造されるような粉末状のカーボンナノファイバー群は、固形化したものであっても、樹脂エマルジョンや樹脂等のベース樹脂自体に、容易に分散し凝集せず拡散して電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を得ることができる。図9(a)(b)に、最終のカーボンナノファイバー群のSEM写真の一例を示す。
該樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられ、2液性の熱硬化性樹脂においては、主剤にでも硬化剤にでも良好に分散する。
[ベース樹脂]
特に好ましいベース樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
<熱可塑性樹脂>
該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、(変性)ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、及び、ポリアミドイミドからなる群より選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂であることが特に好ましい。
樹脂が樹脂エマルジョンの形態になっているときは、該樹脂としては、限定はされないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン・(無水)マレイン酸樹脂、ウレタン樹脂等が、特に分散性が良いものとして挙げられる。
<熱硬化性樹脂>
該熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ウレア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、及び、熱硬化性ポリイミドからなる群より選ばれた1種以上の熱硬化性樹脂であることが特に好ましい。
本発明における前記したカーボンナノファイバー(群)は、熱硬化性樹脂の主剤(すなわち、官能基を有する未反応樹脂を含有する液)、及び/又は、硬化剤(該官能基を架橋・反応・重合させる物質)に、好適に分散されて、他のカーボンナノファイバー(群)に比べて、優れた電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を提供できる。
<ベース樹脂中に分散状態で含有されてなる構造体>
本発明における前記したカーボンナノファイバー(群)は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に好適に分散されて、電磁波の反射若しくは透過抑制構造体として優れた効果を奏する。
すなわち、本発明における前記したカーボンナノファイバー(群)を含有する構造体として、前記含有率Rや前記厚みDを最適化することによって、周波数3GHz~300GHz(のある周波数帯)において、優れた電磁波の吸収性能(反射抑制性能)を奏し、それと同時に、別途、前記含有率Rや前記厚みDを最適化することによって、優れた電磁波の遮蔽性能(透過抑制性能)を奏する。
<その他の成分>
本発明の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体には、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、「その他の成分」を含有することができる。
該「その他の成分」としては、例えば、無機顔料、有機染料等の着色剤;酸化防止剤;造核剤等の結晶化調節剤;ワックス等の離型剤;滑剤;帯電防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;無機フィラー、有機フィラー等の粒子;各ベース樹脂用の加工助剤;難燃剤;可塑剤等が挙げられる。これらの「その他の成分」は、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、「その他の成分」の含有量は、適宜決められる。
[本発明の構造体を成形するためのコンパウンド]
本発明は、前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体1を成形するためものであることを特徴とするコンパウンドでもある。該コンパウンドも、ベース樹脂中にカーボンナノファイバー群が分散状態で含有されてなるものである。
該コンパウンドにおけるカーボンナノファイバー群の含有率は、前記した構造体におけるカーボンナノファイバー群の含有率Rと同一でも、該コンパウンドをベース樹脂で希釈してから成形して構造体を製造する場合等は、該含有率Rより大きくてもよい。
[電磁波の反射若しくは透過抑制構造体、電磁波の反射及び透過抑制構造体の用途]
本発明は、前記の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を具備したものであることを特徴とする送信装置、受信装置、又は、移動体でもある。
送信装置であっても受信装置であっても、送受信部には、通常、カバーが設置されている。本発明の構造体は、特に限定はないが、該カバーとして、本発明の「電磁波の反射抑制構造体1a」、「電磁波の透過抑制構造体1b」、「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」が好適に使用される。
本発明によって、受信装置において「外から入射する電磁波」を遮断したり、自己が送信する電磁波が装置内で反射することによる受信装置の誤作動を防止することができる。ここで、「外から入射する電磁波」には、自己の送信装置から送信された電磁波が外部の物体で反射されて受信装置に入射するノイズとしての電磁波も含まれる。
本発明は、3GHz~300GHzの周波数の電磁波を用いたレーダーの送信装置や受信装置や送受信装置に具備されて好適に用いられる。
本発明は、該装置のレーダーカバー、レーダーカバーの膜等の部品、遮蔽体等として特に好適に用いられる。該レーダーとしては、自動運転の走行系レーダー(制御系やセンサ系レーダー)等が挙げられる。
該装置は、自動車・航空機等の移動体に設置される場合、人が直接持ち歩く場合等もあり、何れも好適に用いられる。
上記「移動体」としては、自動車、航空機、船舶等が挙げられる。
本発明の「電磁波の反射抑制構造体」、「電磁波の透過抑制構造体」、「電磁波の反射及び透過抑制構造体」は、3GHz~300GHzの周波数の電磁波を好適に反射抑制・吸収するので、電磁波の反射を抑制したい該移動体の筐体・外板(Case、Housing、Enclosure)等としても好適に用いられる。
本発明の構造体を筐体として具備した移動体では、そこでの不要な電波の反射が抑制され、受信装置のノイズを低減させることができる。該電波には、自己が発信した電波も含まれる。
また、本発明は、電磁波の漏洩や干渉を好適に防止することができるので、移動通信システム(5G、6G等)に、電波制御剤として好適に用いられる。
[電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法]
本発明は、何れもベース樹脂中に炭素質物群を分散状態で含有させることによって得る、少なくとも2つの層(A)と層(B)を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法であって、
該炭素質物群として、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群を用い、
該2つの層(A)と層(B)ごとに、それぞれ、該層全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R(A)とR(B)、及び/又は、該層の厚みD(A)とD(B)を調整することによって、
3GHz以上300GHz以下の、ある共通した周波数f(=f1=f2)の電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体3の製造方法でもある。
ベース樹脂中にカーボンナノファイバー群を分散させる方法、特定のサイズ(直径と長さ)及びその分布を有する「カーボンナノファイバー群」の製造方法、層(A)と層(B)との接合方法、含有率Rと厚みDの調整方法等は、「電磁波の反射及び透過抑制構造体3」の項で前記した通りである。
入射波が照射される側を層(A)とすると、層(A)を前記した「電磁波の反射抑制構造体1a」とし、入射波が照射される側とは反対側を層(B)とすると、層(B)を前記した「電磁波の透過抑制構造体1b」とすることが好ましい。
入射波を、先ず、層(A)(反射抑制構造体)で反射を抑制する(吸収する)必要があるからである。
上記層(B)で使用される「電磁波の透過抑制構造体1a」は、「金属若しくは金属含有構造体2」に代えることもできる。「金属」、「金属含有構造体」については、前記した通りである。「金属若しくは金属含有構造体2」は、電磁波の反射抑制(吸収)には効果がないが、電磁波の透過抑制(遮蔽)には効果がある場合が多いからである。
本発明の「電磁波の透過抑制構造体1b」では、「電磁波の反射抑制構造体1a」に比べ、カーボンナノファイバーを通常は多く含有させる場合が多いが、そのため、カーボンナノファイバーは金属に比べて比重(密度)が小さいので、カーボンナノファイバーを分散させたものでは、構造体として軽量化が達成できる。
本発明の構造体に、前記「カーボンナノファイバー群」を分散させる方法は、特に限定はないが、ベース樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、該ベース樹脂を溶融させてニーダー(混錬機)等で混錬して分散させる方法;ベース樹脂を溶液として、そこに「カーボンナノファイバー群」を加えて撹拌して分散させた後に溶媒を留去する方法;等が挙げられる。
また、ベース樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、特に限定はないが、該ベース樹脂の主剤又は硬化剤に、「カーボンナノファイバー群」を加えて、プラネタリーミキサーやディスパー等の撹拌機で分散させる方法;ベース樹脂を溶液として、そこに「カーボンナノファイバー群」を加えて撹拌して分散させた後に溶媒を留去する方法;等が挙げられる。
カーボンナノファイバー群を分散させる際、ベース樹脂を硬化させる際、構造体(膜等)を形成させる際等に、外部からカーボンナノファイバーの配向処理を加えて製造しても、配向処理を加えないで製造してもよいが、あえて該配向処理を行わなくても、優れた分散性、電磁波の反射抑制能(吸収性能)・透過抑制能(遮蔽性能)が達成できる。従って、該配向処理を加えないで製造することが、工程の簡略化、コストダウンの観点から好ましい。
本発明におけるカーボンナノファイバー群は、本発明の構造体の中で、自ずから配向して分散することがあるし、また、ランダムに分散していても、上記反射抑制能(吸収性能)や透過抑制能(遮蔽性能)が得られる。
本発明におけるカーボンナノファイバー群は、外部から配向を目的とした処理を加えなくても、塗布、混錬等によって配向することがあり、そのような配向は本発明の好ましい態様として含まれる。
[作用・原理]
カーボンナノファイバーの含有率Rが変化すると、体積抵抗率(導電性)が大きく変化する。含有率Rにより、図12に示した通り、誘電体領域と導電体領域が現れるため、誘電体領域では吸収材料(反射抑制構造体)として、導電体領域では遮蔽材料(透過抑制構造体)として利用できる。
誘電体領域における吸収メカニズムは、図13に示した通り、次のように推論できる。
すなわち、カーボンナノファイバーがベース樹脂中に分散されていることで、電磁波が入射するとカーボンナノファイバー間で誘電分極が発生する。その分極状態が、電磁波の周波数によって常に変化するため、熱変換による損失や干渉が発生し、吸収効果(反射抑制効果)が発現したと考えられる。
導電体領域における遮蔽メカニズムは、図14に示した通り、次のように推論できる。
すなわち、カーボンナノファイバーがベース樹脂中で互いに接触することで、導電経路が形成される。電磁波が入射すると、渦電流の発生による磁界の打ち消しや抵抗損失により、電磁波が透過せず遮蔽効果(透過抑制効果)が発現したと考えられる。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらに限定されるものではない。
製造例1
[カーボンナノファイバー群の製造]
<乾式粉砕>
サイジング処理がなされていないランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素である「約6mmのチョップドファイバー」を、前粉砕をせずに、図11に示したような、「ブレードを持った剪断と衝撃による粉砕機」を用いて、直径10μm、かつ、長さについては、10μm~40μmの範囲に全体の90個数%が入るように、1000gを、30℃で10分かけて乾式粉砕を行った。
<湿潤処理>
乾式粉砕された繊維状炭素(例えば、図7(a)(b))で、加熱処理を行っていないもの100質量部;湿潤剤(界面活性剤)1質量部;及び;精製水1500質量部を混合し撹拌して、スラリーを得た。
ここで、上記湿潤剤(界面活性剤)は、酸基を有する化合物のアンモニウム塩とした。
上記スラリーを、30℃で10分間、ハンドミキサーで800rpmで撹拌させることで湿潤処理を行った。
<湿式粉砕>
容積0.6Lのビーズミルを用い、ビーズの直径0.3mmφ、ビーズ充填量60%、ベッセルモーター回転数1500rpm、循環ポンプはチューブ式ポンプを用い、移送量毎分500mLで、上記で得たスラリー4Lを90分以上循環させた。
<凝集防止処理>
得られたスラリーを、3500mLだけ、上記ビーズミルの容器から別容器に移した後、凝集防止剤として、コブロックポリマーを、スラリー全体(3500mL)に対して、0.01質量%を添加した。
添加後、常温(15~25℃)にて、ハンドミキサーを用いて800rpmで5分間撹拌して、凝集防止処理を行った。
<水除去処理>
加熱と減圧を加えて、サイクロン分離回収方法で、半ドライアップしたものを回収し、120℃のオーブンで240分間加熱して水を除去し、固体状のカーボンナノファイバー群を調製した。
評価例1
[製造例1で得られたカーボンナノファイバー群の観察と分散性・電磁波特性等の評価]
製造例1で得られた固体状のカーボンナノファイバー群、及び、水除去処理前の分散液(スラリー)中のカーボンナノファイバー群を、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観測して前記のように測定したところ、直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下のカーボンナノファイバーが、上記範囲に全体の90個数%が分布しているカーボンナノファイバー群が得られた(例えば図9参照)。
上記のようにして得られたカーボンナノファイバー群に含有されているカーボンナノファイバーの数平均直径は700nmであり、数平均長さは5μmであり、数平均アスペクト比は7であった。
製造例1で得られたカーボンナノファイバーは、実質的に1本ずつの状態(分散状態)又はベース樹脂中に分散可能状態になっていた。なお、素フィラメントにまでは1本ずつに分離可能であるとは限らないが、カーボンナノファイバーは1本1本に分散可能であった。すなわち、カーボンナノファイバー同士、並列して強く凝集していない状態で、カーボンナノファイバー間にベース樹脂が入り込める状態であった。
得られた固体状のカーボンナノファイバー群を、アクリル樹脂の水性エマルジョン、スチレン・(無水)マレイン酸樹脂の水性エマルジョン、ポリウレタン樹脂の水性エマルジョンに、それぞれ投入し、通常に撹拌することで、固体状のカーボンナノファイバー群から、カーボンナノファイバーが、略1本ずつ好適に水中に分散した。分散中に凝集せず、経時でも凝集しなかった。
また、得られた固体状のカーボンナノファイバー群を、汎用のあらゆる熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とし、該樹脂中に常用の混錬機(ニーダー)を用いて分散させたところ、略1本ずつ好適にマトリックス樹脂中に分散した。
また、得られた固体状のカーボンナノファイバー群を、汎用のあらゆる熱硬化性樹脂の硬化剤側に、常用の撹拌機を用いて分散させたところ、略1本ずつ好適に硬化剤中に分散した。
カーボンナノファイバーが分散した硬化剤と、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂をそれぞれ含有する主剤とを混合したところ、何れも分散が保持され凝集せずに、熱硬化性樹脂として好適に使用できた。
原料として、ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素に代えて、等方性ピッチ系繊維状炭素、ラジアル型メソフェーズピッチ系繊維状炭素、オニオン型メソフェーズピッチ系繊維状炭素を使用した以外は、製造例1と同様にして、カーボンナノファイバー群を調製した。
「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下、好ましくは数平均アスペクト比が3以上のカーボンナノファイバー」の製造し易さは、以下の通りであった。該「製造のし易さ」とは、分散可能な状態での製造のし易さを意味するので、分散性、分散安定性に関しても以下の通りであった。
なお、「>>」「>」「≒」に関しては、上(左)に行く程、優れていることを示す。また、分散性と分散安定性の優劣の程度(差)についても、「>>」「>」「≒」のようであった。
ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素
>>ラジアル型メソフェーズピッチ系繊維状炭素
≒ オニオン型メソフェーズピッチ系繊維状炭素
>>PAN系繊維状炭素
また、高濃度分散性、周波数3GHz~300GHzにおける電磁波の吸収性能(反射抑制性能)と遮蔽性能(透過抑制性能)、熱的特性、機械的特性についても、分散性に依存するので、上記の順番であった。また、優劣の程度(差)も、上記「>>」「>」「≒」のようであった。
製造例2
[コンパウンドの製造]
ベース樹脂として、熱可塑性のポリプロピレン(プライムポリマー社製、J105G)を97質量部となる量だけ用意し、原料フィーダに投入した。
製造例1で得られたカーボンナノファイバー群を、固体として3質量部となる量だけ用意し、サイドフィーダに投入した。
これらを二軸混錬機で混錬し、カーボンナノファイバー群を分散し、コンパウンドとした。
得られたコンパウンドを「A3」と略記する。ここで、「A3」の「3」は、上記コンパウンドが、ベース樹脂とカーボンナノファイバー群の合計質量に対して、すなわち、下記する電磁波の反射若しくは透過抑制構造体に対して、3質量%のカーボンナノファイバー群を含むことを示す。
以下、濃度が「R質量%」のときは、そのコンパウンドを「AR」と表記する。
製造例3
[成形体(電磁波の反射抑制構造体)の製造]
製造例2で得られたコンパウンドA3を、射出成形機のホッパーへ投入し、縦横15cm×15cm、厚み1mmとなるように、射出成形により成形を行った。
得られたものを、「1-A3」と略記する。ここで、「1-A3」の「1」は、構造体の厚みが1mmであることを示す。
以下、厚みが「Dmm」であり、かつ、濃度が「R質量%」の構造体を、「D-AR」と表記する。
評価例2
[1-A3の評価]
製造例3で得られた「1-A3」に対して、反射量(の減衰量)、及び、透過量(の減衰量)の測定を、JIS R 1679:2007の「電波吸収体のミリ波帯における電波吸収特性測定方法」に準拠して、3GHzから300GHzの範囲で行った。そして、特に、60GHzから90GHzの範囲について、縦軸を減衰量[dB]、横軸を周波数[GHz]としてグラフ化を行った。
なお、以下の評価例においても、測定方法と定義は、上記(評価例2の場合)と同様である。
結果を、図15(a)(b)に示す。
図15(a)から分かるように、反射量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、65GHzから80GHzであった。反射量の減衰量が-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)周波数の範囲は69GHzから75GHzであった。また、反射量の減衰量の極小値は、72GHzでの-28dBであった。
一方、図15(b)から分かるように、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、60GHzから90GHzの範囲にはなく、透過量の減衰量の最小値は-1dBであった。
すなわち、「1-A3」は、優れた電磁波の反射抑制構造体であることが分かった。
評価例3
[1-A3.5の評価]
カーボンナノファイバー群の含有量以外は、製造例2、製造例3と同様にして、「1-A3.5」を成形し、反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図16(a)(b)に示す。
図16(a)から分かるように、60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、62GHzから85GHzであった。反射量の減衰量が-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)周波数の範囲は、68GHzから73GHzであった。また、反射量の減衰量の極小値は、70GHzでの-21dBであった。
一方、図16(b)から分かるように、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)範囲はなく、透過量の減衰量の最小値は-2dBであった。
すなわち、「1-A3.5」は、優れた電磁波の反射抑制構造体であることが分かった。
評価例4
[1-A5の評価]
カーボンナノファイバー群の含有量以外は、製造例2、製造例3と同様にして「1-A5」を成形し、反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図17(a)(b)に示す。
図17(a)から分かるように、60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)範囲は、64GHzから79GHzであった。反射量の減衰量が-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)範囲は、69GHzから73GHzであった。また、反射量の減衰量の極小値は、71GHzでの-22dBであった。
一方、図17(b)から分かるように、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)範囲はなく、透過量の減衰量の最小値は-2dBであった。
すなわち、「1-A5」は、優れた電磁波の反射抑制構造体であることが分かった。
評価例5
[評価例2~4のまとめ(厚みを1mmに統一)]
評価例2~4の構造体(成形体)の「反射量の減衰量」の測定結果を、図18にまとめて示す。
図18から分かるように、厚みを1mmに統一して、含有量を3.0質量%から5.0質量%まで振った構造体(成形体)では、ある特定範囲の周波数f(=f1)において、反射量の減衰量が-14dB以下であり(入射波に対して-14dB以上減衰しており)、優れた「電磁波の反射抑制構造体」であることが分かった。
また、図18から分かるように、優れた反射抑制特性(吸収特性)を示す周波数帯が、カーボンナノファイバー群の含有量Rによりシフトしていることが分かった。
また、カーボンナノファイバー群の含有量Rにより、反射量が変化していることが分かった。
評価例6
[2.3-A5と3.8-A5の製造と評価(含有率5.0質量%に統一)]
製造例2、製造例3と同様にして「2.3-A5」及び「3.8-A5」を成形し、得られた構造体の反射量の減衰量を測定した。
得られた反射量の減衰量の測定結果を、「1-A5」の測定結果と共に、図19に示す。
図19から分かるように、電磁波の反射抑制特性(吸収特性)を示す周波数帯が、構造体(成形体)の厚みDにより、変化していることが分かった。
また、構造体(成形体)の厚みDにより、反射量が変化していることが分かった。
評価例7
製造例2、製造例3と同様にして「2.5-A0.5」、「2.5-A0.75」、「2.5-A1.0」及び「2.5-A1.25」を成形して構造体を製造した。
得られた構造体の反射量の減衰量を測定した。結果を図20に示す。
図20から分かるように、反射量が減衰するピークや、反射量の減衰量が-14dB以下となる周波数fの範囲は、カーボンナノファイバー群の含有率Rによってシフトしていた。すなわち、該含有率Rを変化させることで、周波数帯をシフトさせられることが分かった。
製造例4
[成形体(電磁波の透過抑制構造体)の製造]
製造例2、製造例3と同様にして「1.5-A12」を成形して構造体を製造した。
評価例8
[1.5-A12の評価]
得られた構造体「1.5-A12」の反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を、図21(a)(b)に示す。
図21(a)から分かるように、反射量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数は、60GHzから90GHzの範囲にはなかった。また、反射量の減衰量の最小値は-9dBであった。
一方、図21(b)から分かるように、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、62GHzから90GHzであった。透過量の減衰量が-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)周波数の範囲は、60~90GHzの間では、84GHzから90GHzであった。また、透過量の減衰量の最小値は-21dBであった。
図21(b)から分かるように、「1.5-A12」なる構造体(成形体)では、ある特定範囲の周波数f(=f2)において、透過量の減衰量が-14dB以下であり(入射波に対して-14dB以上減衰しており)、「1.5-A12」は、優れた「電磁波の透過抑制構造体」であることが分かった。
製造例5
[反射及び透過抑制構造体の製造]
製造例3で得られた「1-A3」と、評価例7で得られた「1.5-A12」を接合させた。接合の具体的方法は、「1-A3」及び「1.5-A12」をクリップで挟み込んだ。
得られた構造体を「1-A3+1.5-A12」と略記する。
評価例9
[1-A3+1.5-A12の評価]
製造例5で得た「1-A3+1.5-A12」に対して、反射量の減衰量及び透過量の減衰量を測定した。「1-A3」を第1層とし、「1.5-A12」を第2層とし、「1-A3」(第1層)側から、入射波を照射した。
結果を、図22(a)(b)に示す。
図22(a)から分かるように、反射量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、76GHzから90GHzの範囲であった。-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)周波数の範囲は80GHzから86GHzの範囲であった。また、反射量の減衰量の極小値は、83GHzでの-37dBであった。
一方、図22(b)から分かるように、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)周波数の範囲は、60GHzから90GHzの範囲であった。-20dB以下である(入射波に対して-20dB以上減衰する)周波数の範囲は、83GHzから90GHzの範囲であった。また、透過量の減衰量の最小値は-22dBであった。
上記の結果より、「1-A3」(第1層)及び「1.5-A12」(第2層)の組み合わせにおいて、反射量及び透過量の両方が同時に、周波数76GHz~90GHzの範囲で、-14dB以上減衰し、周波数83GHzから86GHzの範囲で、-20dB以上減衰した。
すなわち、「1-A3+1.5-A12」は、優れた「反射及び透過抑制構造体」であることが分かった。
製造例6
[成形体(電磁波の透過抑制構造体)の製造]
製造例2、製造例3と同様にして「1.65-A15」を成形して構造体を製造した。
評価例10
[1.65-A15の評価]
「1.65-A15」の反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図23(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲はなく、反射量の減衰量の最小値は-5dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであり、透過量の減衰量の最小値は-37dBであった。
「1.65-A15」が、優れた電磁波の透過抑制構造体であることが分かった。
製造例7
[成形体(電磁波の透過抑制構造体)の製造]
製造例2、製造例3と同様にして「1.5-A30」を成形して構造体を製造した。
評価例11
[1.5-A30の評価]
1.5-A30の反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図24(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲はなく、反射量の減衰量の最小値は-5dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である(入射波に対して-14dB以上減衰する)範囲は、60GHzから90GHzであり、透過量の減衰量の最小値は-49dBであった。
「1.5-A30」が、優れた電磁波の透過抑制構造体であることが分かった。
製造例8
[反射及び透過抑制構造体の製造]
製造例5と同様にして、「1-A3.5+1.5-A12」を作製した。
評価例12
[1-A3.5+1.5-A12の評価]
1-A3.5+1.5-A12の反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図25(a)(b)に示す。
図25(a)から分かる通り、60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲は、86GHzから90GHzであった。また、反射量の減衰量の最小値は-14dBであった。
一方、透過量の減衰量-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであった。透過量の減衰量が-20dB以下である範囲は、78GHzから90GHzであり、透過量の最小値は-22dBであった。
すなわち、「1-A3.5+1.5-A12」は、優れた「反射及び透過抑制構造体」であることが分かった。
評価例13
[反射及び透過抑制構造体の製造と評価]
製造例5と同様にして、「1-A5+1.5-A12」を作製し、反射量の減衰量、及び、透過量の減衰量を測定した。
結果を図26(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲は、82GHzから90GHzであった。また、反射量の減衰量が-20dB以下である範囲は、88GHzから90GHzであった。また、反射量の減衰量の最小値は-21dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであった。また、透過量の減衰量が-20dB以下である範囲は80GHzから90GHzであった。また、透過量の減衰量の最小値は-22dBであった。
すなわち、「1-A5+1.5-A12」は、優れた「反射及び透過抑制構造体」であることが分かった。
評価例14
[1-A3+1.5-A12と、1-A5+1.5-A12の評価のまとめ]
1-A3+1.5-A12(製造例5、評価例8)と、1-A5+1.5-A12(評価例12)の反射量の測定結果を図27に示す。
図27から分かるように、2つの構造体(成形体)を接合させたものにおいて、反射抑制特性(吸収特性)を持つ周波数帯が、カーボンナノファイバー群の含有量によりシフトしていることが分かった。また、反射量(の減衰量)が変化していることが分かった。
上記の結果より、「1-A3」と「1.5-A12」の組み合わせ、及び、「1-A5」と「1.5-A12」の組み合わせにおいて、反射量及び減衰量が、何れも、周波数82GHz~90GHzの範囲で-14dB以上減衰し、周波数88GHzから90GHzの範囲で-20dB以上減衰する優れた「電磁波の反射及び透過抑制構造体」が得られた。
評価例15
製造例5と同様にして「1.5-A6.5+1.5-A30」、「1.5-A7.0+1.5-A30」及び「1.5-A7.5+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。結果を図28に示す。
図28から分かる通り、反射量が減衰するピークや、反射量の減衰量が-14dB以下となる周波数fの範囲は、カーボンナノファイバー群の含有率Rによってシフトしていた。すなわち、該含有率Rを変化させることで、周波数帯をシフトさせられることが分かった。
評価例16
製造例5と同様にして「1.5-A6.5+1.5-A30」及び「2.5-A6.5+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。結果を図29に示す。
図29から分かる通り、反射量が減衰するピークや、反射量の減衰量が-14dB以下となる周波数fの範囲は、カーボンナノファイバー群の含有率Rによってシフトしていた。すなわち、該含有率Rを変化させることで、周波数帯をシフトさせられることが分かった。
評価例17
製造例5と同様にして「2.5-A6.5+0.85-A30」及び「2.5-A6.5+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図30に示す。
図30から分かる通り、反射量が減衰するピークや、反射量の減衰量が-14dB以下となる周波数fの範囲は、カーボンナノファイバー群の含有率Rによってシフトしていた。すなわち、該含有率Rを変化させることで、周波数帯をシフトさせられることが分かった。
評価例18
製造例5と同様にして「1-A3+1.65-A15」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図31(a)(b)に示す。
図31(a)から分かる通り、60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲はなく、反射量の減衰量の最小値は-10dBであった。
一方、図31(b)から分かる通り、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであり、極小値は-64dBであり、優れた電磁波の透過抑制構造体であることが分かった。
評価例19
製造例5と同様にして「1-A3.5+1.65-A15」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図32(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲はなく、最小値は-11dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであり、極小値は-49dBであった。
評価例20
製造例5と同様にして「1-A3+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図33(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲は、80GHzから89GHzであった。また、極小値は-19dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであった。また、最小値は-47dBであった。
上記の結果より、「1-A3」及び「1.5-A30」の組み合わせにおいて、反射量及び透過量が、何れも、周波数80GHz~89GHzの範囲で-14dB以上減衰される、優れた「電磁波の反射及び透過抑制構造体」が得られた。
評価例21
製造例5と同様にして「1-A3.5+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図34(a)(b)に示す。
60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲は87GHzから90GHzであった。また、最小値は-14dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであり、最小値は-49dBであった。
上記の結果より、「1-A3.5」及び「1.5-A30」の組み合わせにおいて、反射量及び透過量が、何れも、周波数87GHz~90GHzの範囲で-14dB以上減衰する、優れた「電磁波の反射及び透過抑制構造体」が得られた。
評価例22
実施例1と同様にして「1-A5+1.5-A30」を作製し、反射量及び透過量を測定した。
結果を図35(a)(b)に示す。60GHzから90GHzの範囲において、反射量の減衰量が-14dB以下である範囲は、79GHzから88GHzであった。また、-20dB以下である範囲は、83GHzから86GHzであった。また、極小値は-21dBであった。
一方、透過量の減衰量が-14dB以下である範囲は、60GHzから90GHzであり、最小値は-51dBであった。
上記の結果より、「1-A5」及び「1.5-A30」の組み合わせにおいて、反射量及び透過量が、何れも、周波数79GHz~88GHzの範囲で-14dB以上、周波数83GHzから86GHzの範囲で-20dB以上減衰する、優れた「電磁波の反射及び透過抑制構造体」が得られた。
評価例23
製造例2、製造例3と同様にして「2.5-A6.5」、「2.5-A7.0」、「2.5-A7.5」を作製した。
これらを第1層とし、製造例5と同様にして、第2層に板厚3mmのアルミ板を接合した。アルミ板をMとして表し、得られた構造体を、各々「2.5-A6.5+M」、「2.5-A7.0+M」、「2.5-A7.5+M」と記載する。
これらの反射減衰量を測定した。なお、第2層にアルミ板のような金属板がある場合、電磁波は透過しない。すなわち、透過減衰量は極めて大きい。
結果を図36に示す。
図36から分かる通り、60GHzから90GHzの範囲において、「2.5-A6.5+M」は、反射減衰量が-14dB以下である範囲が73GHzから76GHzであった。また、-20dB以下である範囲が74GHzから75GHzであった。また、極小値は-26dBであった。
「2.5-A7.0+M」は、反射減衰量が-14dB以下である範囲が70GHzから73GHzであった。また、-20dB以下である範囲が71GHzから72GHzであった。また、極小値は-22dBであった。
「2.5-A7.5+M」は、反射減衰量が-14dB以下である範囲が68GHzから70GHzであり、また、極小値は-17dBであった。
また、図36から分かる通り、反射量が減衰するピーク(反射減衰量の極小値)は、含有率Rによってシフトしていた。
比較例1
市販品の気相法炭素繊維(vapor grown carbon fiber、直径150nm)を用いて、製造例2、製造例3と同様にして構造体を成形し、反射減衰量及び透過減衰量を測定した。
しかし、本発明における「繊維状炭素を粉砕して得られるカーボンナノファイバー群」のように、ベース樹脂中に分散性良く含有させることが極めて難しく、本発明のような「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体」が製造できなかった。
得られた構造体では、反射減衰量も透過減衰量も、-14dB以下である範囲はなかった。そのため、気相法炭素繊維では、たとえサイズ的に本発明におけるカーボンナノファイバー群と類似していたとしても、-14dB以下となる電磁波吸収(電磁波の反射若しくは透過抑制)ができないことが分かった。
すなわち、ここで用いた気相法炭素繊維の直径は、本発明における「繊維状炭素を粉砕して得られるカーボンナノファイバー群」の(数平均)直径の範囲内に入っているものの、減衰量が-14dB以下となる「電磁波の反射若しくは透過抑制構造体」ができなかった。
従って、気相法炭素繊維を用いては、反射減衰量及び透過減衰量が共に-14dB以下である、本発明の「電磁波の反射及び透過抑制構造体」もできなかった。
測定例1
本発明におけるカーボンナノファイバー群の含有量Dを、0~30質量%の間で変化させた以外は製造例2と同様にして、ベ-ス樹脂がポリプロピレン(PP)であるコンパウンドを作製した。
得られたコンパウンドを成形し、得られた成型体を、常法に従って、20℃における体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
測定結果を図12に示す。
カーボンナノファイバー群の含有量Dの小さい場合は、電導性が低く誘電体領域であるため、本発明の反射抑制構造体(吸収材料)として機能すると考えられた。
逆に、カーボンナノファイバー群の含有量Dの大きい場合は、電導性が高く導電体領域であるため、本発明の透過抑制構造体(遮蔽材料)として機能すると考えられた。
本発明の電磁波の反射抑制構造体や透過抑制構造体は、3GHz以上300GHz以下のある範囲の周波数帯において、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させられる(96%以上減衰させられる)。
また、本発明の「少なくとも2つの層を有してなる『電磁波の反射及び透過抑制構造体』」は、3GHz以上300GHz以下のある範囲の周波数帯において、反射波と透過波を、何れも、入射波に対して-14dB以上減衰させられる(96%以上減衰させられる)。
従って、該範囲の周波数の抑制が可能であるため、例えば、特に、自動運転の走行系レーダーや移動通信システム(5G/6G)等に対して、電波の漏洩や干渉等を防止することができるので、移動体製造分野、移動体部品の製造分野、交通システム分野、通信分野、発信機・受信機の製造分野、樹脂成型分野等に広く利用されるものである。
1・・・電磁波の反射若しくは透過抑制構造体
1a・・電磁波の反射抑制構造体
1b・・電磁波の透過抑制構造体
2・・・金属若しくは金属含有構造体
3・・・電磁波の反射若しくは透過抑制構造体
10・・・フィラメント
20・・・素フィラメント

Claims (28)

  1. ベース樹脂中に炭素質物群が分散状態で含有されてなる電磁波の反射若しくは透過抑制構造体であって、
    該炭素質物群は、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群であり、
    少なくとも、該電磁波の反射又は透過抑制構造体全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R、及び/又は、該電磁波の反射若しくは透過抑制構造体の厚みDを調整することによって、
    3GHz以上300GHz以下のある特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  2. 前記含有率Rを0.1質量%以上15質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、
    前記周波数fが特定範囲の周波数f1の電磁波において、反射波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  3. 前記含有率Rを5質量%以上50質量%以下に調整し、かつ、前記厚みDを0.1mm以上10mm以下に調整することによって、
    前記周波数fが特定範囲の周波数f2の電磁波において、透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものである請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  4. 少なくとも2つの層を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体であって、
    入射波に向かって第1層が、請求項2に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体であり、
    入射波に向かって第2層が、請求項3に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体、又は、金属若しくは金属含有構造体であり、
    前記周波数f1と前記周波数f2が共通している周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させるようにしたものであることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体。
  5. 前記周波数f1と前記周波数f2が共通している周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-20dB以上減衰させるようにしたものである請求項4に記載の電磁波の反射及び透過抑制構造体。
  6. 反射波若しくは透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記ある特定範囲においてシフトさせることができる請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  7. 少なくとも、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整することによって、前記周波数fをシフトさせることができる請求項6に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  8. 反射波及び透過波を入射波に対して-14dB以上減衰させる前記周波数fを、前記ある特定範囲においてシフトさせることができる請求項4に記載の電磁波の反射及び透過抑制構造体。
  9. 少なくとも、前記含有率R、及び/又は、前記厚みDを調整することによって、前記周波数fをシフトさせることができる請求項8に記載の電磁波の反射及び透過抑制構造体。
  10. 前記カーボンナノファイバー群に含有されているカーボンナノファイバーの数平均アスペクト比が3以上200以下である請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  11. 前記カーボンナノファイバー群に含有されているカーボンナノファイバーの数平均直径が30nm以上1000nm以下であり、かつ、数平均長さが0.2μm以上70μm以下である請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  12. 前記カーボンナノファイバー群が、繊維状炭素を数平均長さが100μm以下になるまで乾式粉砕をした後に、湿式粉砕をすることによって得られるものである請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  13. 前記カーボンナノファイバー群が、ピッチ系繊維状炭素を原料として粉砕をすることによって得られるものである請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  14. 前記カーボンナノファイバー群の原料である前記ピッチ系繊維状炭素が、メソフェーズピッチ系繊維状炭素である請求項13に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  15. 前記メソフェーズピッチ系繊維状炭素が、ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素である請求項14に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  16. 前記ランダム型メソフェーズピッチ系繊維状炭素を構成するフィラメントを構成する素フィラメントの数平均厚さ又は数平均太さが、10nm以上200nm以下である請求項15に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  17. 前記フィラメントを構成する前記素フィラメントが2本以上20本以下の範囲で集合して前記カーボンナノファイバーが構成されている請求項16に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  18. 前記乾式粉砕と前記湿式粉砕の間に加熱処理を行って混在樹脂を除去する請求項12に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  19. 前記湿式粉砕が、界面活性剤が存在している水系媒体中で行うビーズミル粉砕又はボールミル粉砕である請求項12に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  20. 前記界面活性剤が、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、又は、両性界面活性剤である請求項19に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  21. 前記界面活性剤の存在量が、前記繊維状炭素100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下である請求項19に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  22. 更に、前記湿式粉砕をした後に得られる、カーボンナノファイバー群のスラリーの中に、金属含有凝集防止剤、コブロックポリマー、櫛型コブロックポリマー、及び、界面活性剤からなる群より選ばれた1種又は2種以上の凝集防止剤を含有させて凝集防止処理を行う請求項12に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  23. 前記凝集防止剤を、湿式粉砕後のスラリー全体に対して、0.0001質量%以上0.1質量%以下で加える、又は、カーボンナノファイバー群である凝集防止対象物の全体量に対して、0.001質量%以上1質量%以下で加える請求項22に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  24. 前記ベース樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、(変性)ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、及び、ポリアミドイミドからなる群より選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂;又は;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ウレア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、及び、熱硬化性ポリイミドからなる群より選ばれた1種以上の熱硬化性樹脂である請求項1に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体。
  25. 請求項1ないし請求項3の何れかの請求項、又は、請求項10ないし請求項24の何れかの請求項に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を成形するためものであることを特徴とするコンパウンド。
  26. 何れもベース樹脂中に炭素質物群を分散状態で含有させることによって得る、少なくとも2つの層(A)と層(B)を有してなる電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法であって、
    該炭素質物群として、繊維状炭素を粉砕して得られる、「直径30nm以上1000nm以下であり、かつ、長さ0.2μm以上70μm以下の範囲」に全体の50個数%以上が分布しているカーボンナノファイバー群を用い、
    該2つの層(A)と層(B)ごとに、それぞれ、該層全体に対する該カーボンナノファイバー群の含有率R(A)とR(B)、及び/又は、該層の厚みD(A)とD(B)を調整することによって、
    3GHz以上300GHz以下の、ある共通した特定範囲の周波数fの電磁波において、反射波及び透過波を、何れも入射波に対して-14dB以上減衰させることを特徴とする電磁波の反射及び透過抑制構造体の製造方法。
  27. 請求項1ないし請求項3の何れかの請求項、請求項6、請求項7、又は、請求項10ないし請求項24の何れかの請求項に記載の電磁波の反射若しくは透過抑制構造体を具備したものであることを特徴とする送信装置、受信装置、又は、移動体。
  28. 請求項4、請求項5、請求項8、又は、請求項9に記載の電磁波の反射及び透過抑制構造体を具備したものであることを特徴とする送信装置、受信装置、又は、移動体。

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