JP2024083996A - 転がり軸受及び転がり軸受の製造方法 - Google Patents

転がり軸受及び転がり軸受の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クリープが抑制されるとともに、製造における工数が抑えられる転がり軸受及びその製造方法を提供する。【解決手段】玉軸受1は、内輪2と、外輪3と、内輪2と外輪3との間に配置される玉4と、を備え、外輪3が固定輪とされる。外輪3の外周面11は、周方向全周に亘って存在し円柱面をなす嵌め合い面13と、嵌め合い面13の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で周方向の一部に亘って当該周方向に延在し嵌め合い面13から凹むように形成されたクリープ抑制溝15と、を備え、嵌め合い面13は、研削処理がされた研削面であり、クリープ抑制溝15の底面15aは、研削処理がされていない非研削面である。【選択図】図1

Description

本発明は、転がり軸受及び転がり軸受の製造方法に関する。
従来から、内輪と外輪とのうちの一方を固定輪とし他方を回転輪として使用される転がり軸受が知られている。固定輪は相手部材にすきま嵌めされ、回転輪は相手部材に締まり嵌めされる。この転がり軸受にラジアル荷重が作用すると、固定輪に弾性変形が生じ、弾性変形による進行波が固定輪の嵌め合い面に発生する。この進行波が嵌め合い面から相手部材に伝播されることで、固定輪を周方向に送る力が生じ、固定輪のクリープが発生する。クリープが発生すると相手部材が摩耗するなどの問題がある。このようなクリープを抑制する転がり軸受として、下記の特許文献1及び特許文献2の玉軸受が知られている。
特許文献1の玉軸受では、固定輪である外輪の嵌め合い面に環状溝が形成されている。嵌め合い面における進行波が環状溝内で生じることで、外輪からハウジングに伝播される進行波が低減され、進行波によるクリープが抑制されるとされている。また、嵌め合い面には黒色酸化皮膜が形成されており、嵌め合い面とハウジングとの静摩擦係数が高められることで、連れ回りによる外輪のクリープも抑制されるとされている。また、仮にクリープが発生したとしても、黒色酸化皮膜とハウジングとの動摩擦係数は低いので、ハウジングの摩耗を抑制することができるとされている。特許文献2の玉軸受では、外輪の軸方向全幅に亘る逃げ面が表面処理によって形成されている。逃げ面が形成された区間では外輪とハウジングとの間に軸方向全幅に亘る径方向の隙間が生じている。この隙間により、弾性変形する逃げ面はハウジングに接触せず、外輪からハウジングに伝播される進行波が低減され、進行波によるクリープが抑制されるとされている。
特開2019-113126号公報 特開2020-165498号公報
特許文献1,2の玉軸受を製造する際には、通常の玉軸受の製造工程に加えて嵌め合い面に加工が施される。しかしながら、このようなクリープ抑制のための加工工程を安易に追加すれば、軸受の製造における工数が増加し、製造コスト低減の妨げになる。本発明は、クリープが抑制されるとともに、製造における工数が抑えられる転がり軸受及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は次の通りである。
〔1〕内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、を備え、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が固定輪とされる転がり軸受であって、前記固定輪の相手部材との嵌合部は、周方向全周に亘って存在し円柱面をなす嵌め合い面と、前記嵌め合い面の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で周方向の一部に亘って当該周方向に延在し前記嵌め合い面から凹むように形成された溝と、を備え、前記嵌め合い面は、研削処理がされた研削面であり、前記溝の底面は、研削処理がされていない非研削面である、転がり軸受。
この転がり軸受によれば、固定輪の嵌合部の全周のうち溝が存在する領域においては、溝の底面が相手部材に直接接触しない。従って、荷重により弾性変形した溝の底面が相手部材に接触しにくく、固定輪から相手部材に進行波が伝播され難い。このように、相手部材に伝播される進行波が低減されるので、進行波に起因する固定輪のクリープが抑制される。また、嵌め合い面は研削処理がされた研削面であり溝の底面は研削処理がされていない非研削面である。よって、この固定輪の製作においては、溝の底面を研削する処理を行なう必要がなく、その結果、転がり軸受の製造における工数が抑えられる。
〔2〕前記溝の前記底面は、前記嵌め合い面に対して偏心した円柱面に沿って延在する〔1〕に記載の転がり軸受。
この構成によれば、溝の周方向中央の付近に溝の深さが深い箇所が存在し、当該箇所において進行波が相手部材に伝播され難くなる。
〔3〕前記溝の最深部の深さは、最大ラジアル荷重が負荷されたときの前記固定輪の弾性変形量よりも大きい、〔1〕又は〔2〕に記載の転がり軸受。
この構成によれば、溝の最深部において固定輪から相手部材に進行波が伝播されないので、進行波に起因する固定輪のクリープが更に確実に抑制される。
〔4〕内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、を備え、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が固定輪とされる転がり軸受の製造方法であって、前記固定輪の相手部材との嵌合部が旋削され、周方向全周に亘って存在し円柱面をなす嵌め合い面と、前記嵌め合い面の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で周方向の一部に亘って当該周方向に延在し前記嵌め合い面から凹むように形成された溝と、が形成される旋削工程と、前記旋削工程の後、前記嵌め合い面と前記溝とを含む前記嵌合部が心なし研削処理で研削される研削工程と、を備える、転がり軸受の製造方法。
この製造方法では、溝の形成が、固定輪の嵌め合い面を旋削する旋削工程の中で一連に行なわれる。そして研削工程では、嵌合部が心なし研削処理で研削されることで、嵌め合い面は高精度に研削される一方で、当該嵌め合い面から凹んだ溝は完全には研削されずに残される。この製造方法によれば、例えば研削工程後に溝を形成する場合に比較して、固定輪の製作における工数が抑えられ、転がり軸受の製造における工数が抑えられる。また、完成後の転がり軸受においては、固定輪の嵌合部に溝が存在することで、進行波に起因する固定輪のクリープが抑制される。
〔5〕前記旋削工程では、前記溝の底面が、前記嵌め合い面に対して偏心した円柱面に形成される、〔4〕に記載の転がり軸受の製造方法。
この構成によれば、旋削工程において溝の周方向中央部に比較的深い最深部が形成される。よって、最終的に必要な溝の深さが最深部において確保されやすい。また、このような偏心した円柱面は、偏心加工といった比較的容易な旋削方法で形成可能であるので、旋削工程で溝を形成することによる処理負担が抑えられる。
〔6〕前記旋削工程と前記研削工程との間で、前記固定輪が熱処理される熱処理工程を更に備える、〔4〕又は〔5〕に記載の転がり軸受の製造方法。
本発明によれば、クリープが抑制されるとともに、製造における工数が抑えられる転がり軸受及びその製造方法を提供することができる。
実施形態に係る玉軸受の斜視図である。 玉軸受の回転軸線を含む断面における断面図である。 軸方向に直交しクリープ抑制溝を通過する断面における外輪の断面図である。 玉軸受の製造方法を示すフローチャートである。 (a),(b)は、各材料リングの回転軸線を通る断面の断面図である。(c),(d)は、それぞれ旋削済みの内輪,外輪の回転軸線を通る断面の断面図である。 外輪の外周面が心なし研削盤で研削される状態を示す図である。 外輪の嵌め合い面がハウジングに嵌め合わされた状態を示す断面図である。 (a),(b)は、各変形例に係る外輪を示す斜視図である。(c)は、他の変形例に係る内輪を示す破断斜視図である。
以下、図面を参照しながら本発明に係る転がり軸受及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
図1に示される玉軸受1は、本発明の転がり軸受の一実施形態である。図1は、玉軸受1の斜視図であり、図2は、玉軸受1の回転軸線を含む断面における断面図である。玉軸受1は、例えば回転軸を軸支する深溝玉軸受である。玉軸受1は、例えば自動車のトランスミッション用の軸受として使用されるものである。特に、玉軸受1は、一方向の大きなラジアル荷重が作用し、大きなアキシアル荷重はほとんど作用しない、といった条件で好適に使用される。以下の説明において、断りなく「軸方向」、「径方向」、「周方向」というときには、それぞれ、玉軸受1の回転軸線方向、回転径方向、回転周方向を意味するものとする。各図中において、軸方向を矢印Aで、径方向を矢印Rで、周方向を矢印Cで示す場合がある。
図1及び図2に示されるように、玉軸受1は、内輪2、外輪3、複数の玉4、保持器5、及び一対のシール6を備えている。なお、図1においてはシール6の図示が省略されている。内輪2は円環状の部材であり、内輪2の外周面には、周方向に延びる内輪軌道面2a及び一対のシール溝2bが設けられている。外輪3は、内輪2と同心の円環状の部材であり、外輪3の内周面には、周方向に延びる外輪軌道面3a及び一対のシール溝3bが設けられている。
複数の玉4(転動体)は、それぞれ球形状をなし、内輪2の内輪軌道面2aと外輪3の外輪軌道面3aとの間に挟み込まれ、保持器5に保持された状態で周方向に1列に並ぶように配置されている。保持器5は、内輪2と外輪3との間に当該内輪2及び外輪3と同心で配置された環状の部材である。保持器5は、複数の玉4をそれぞれ転動自在に保持するとともに玉4同士の周方向間隔を規制する。保持器5に保持された各玉4は、例えば周方向に等ピッチで並んでいる。シール6は、玉軸受1の内部の空間を塞ぐ円環状の部材である。例えば、シール6は非接触式シールであり、シール6の外周側端部6aが外輪3のシール溝3bに嵌め込まれ、内周側端部6bが内輪2のシール溝2b内に接触しないように差し込まれている。一対のシール6,6は、互いに同じ構成をなしている。
玉軸受1は、内輪2及び外輪3のうち一方が固定輪とされ他方が回転輪とされて使用される。以下では、外輪3が固定輪とされ内輪2が回転輪とされる場合を例として説明する。固定輪である外輪3は相手部材のハウジング21(図7参照)にすきま嵌めで取付けられ、回転輪である内輪2には回転軸(図示せず)が締まり嵌めで取付けられる。玉軸受1が、例えば、一方向の大きなラジアル荷重を受ける条件で使用される場合を考えると、玉軸受1の回転中にラジアル荷重が玉4を介して外輪3に作用し、玉4が通過する場合とそれ以外の場合とで外輪3に作用する荷重が異なるので、外輪3には周期的な弾性変形が生じる。この弾性変形による進行波が外輪3の外周面11に生じハウジングに伝播されると、外輪3を周方向に送る力が生じ、外輪3のクリープが発生し得る。クリープが発生すると、ハウジングが摩耗するなどの問題があるので、玉軸受1はクリープ抑制のために、進行波を低減するためのクリープ抑制溝15を備えている。
図3は、軸方向に直交しクリープ抑制溝15を通過する断面における外輪3の断面図である。図1~図3に示されるように、ハウジングに嵌合される外輪3の外周面11(嵌合部)には、ハウジングの内周面に嵌め合わされる嵌め合い面13と、クリープを抑制するためのクリープ抑制溝15と、が形成されている。嵌め合い面13は、周方向全周に亘って延在するとともに、外周面11の軸方向の全幅に亘って形成されており、玉軸受1の回転軸線を円柱軸とする円柱面をなす。クリープ抑制溝15は、嵌め合い面13から僅かな深さで凹むように、当該嵌め合い面13に形成された溝である。クリープ抑制溝15の実際の深さは例えば最深部で約100μmであるが、各図では溝の深さが誇張されている。クリープ抑制溝15は、外周面11の軸方向中央に位置し、外周面11の周方向の一部(本実施形態では約半周)に亘って周方向に延在する。クリープ抑制溝15の溝幅は外周面11の軸方向の全幅よりも狭い。また、クリープ抑制溝15の溝幅は嵌め合い面13の軸方向の全幅よりも狭い。クリープ抑制溝15の軸方向における両側には、段差を介して嵌め合い面13の一部がそれぞれ隣接している。
クリープ抑制溝15の底面15aは、嵌め合い面13に対して偏心した円柱面に沿って延在している。当該円柱面を含む仮想円柱16の輪郭が図3中に一点鎖線で示されている。上記仮想円柱16の半径は、嵌め合い面13の曲率半径とほぼ同じであってもよく、嵌め合い面13の曲率半径よりも大きくてもよい。溝の深さは、クリープ抑制溝15の周方向中央部で最も深く、クリープ抑制溝15の周方向両端部に近づくに従って浅くなっていく。クリープ抑制溝15の周方向両端部では、溝の深さがゼロになり、クリープ抑制溝15の底面15aと嵌め合い面13とが段差なく周方向に連なっている。
なお、次に説明する玉軸受1の製造方法に起因して、クリープ抑制溝15の形成精度はあまり高くない。従って、クリープ抑制溝15が高精度に上記説明の通りの形状をなしているとは限らない。
玉軸受1の製造方法は次の通りである。図4に示されるように、この製造方法では、旋削工程S101と、熱処理工程S102と、研削工程S103と、組立・検査工程S104と、がこの順に実行される。以下、各工程S101~S104について説明する。
〔旋削工程S101〕
図5(a),(b)は、それぞれ材料リング2R,3Rの回転軸線を通る断面の断面図である。図5(c),(d)は、それぞれ旋削済みの内輪2,外輪3の回転軸線を通る断面の断面図である。まず、図5(a)及び図5(b)に示されるように、内輪2及び外輪3の各材料として、例えば鍛造で製作された円環状の材料リング2R,3Rが準備される。その後、図5(c)に示されるように、旋削工程S101では、材料リング2Rが旋削されて研削しろ等が残された比較的粗い精度の内輪2が製作される。ここでは、内輪2の内周面10に比較的粗い精度の嵌め合い面12が形成される。また、シール溝2b,2b及び内輪軌道面2aも比較的粗い精度で形成される。同様に、図5(d)に示されるように、材料リング3Rが旋削されて研削しろ等が残された比較的粗い精度の外輪3が製作される。ここでは、外輪3の外周面11に比較的粗い精度の嵌め合い面13が形成される。また、シール溝3b,3b及び外輪軌道面3aも比較的粗い精度で形成される。
更に、旋削工程S101では、クリープ抑制溝15を形成する溝形成処理が行なわれる。溝形成処理では、クリープ抑制溝15が、嵌め合い面13から僅かな深さで凹むように形成される。ここで形成されたクリープ抑制溝15は、外周面11の軸方向中央に位置し、外周面11の周方向の一部(本実施形態では約半周)に亘って周方向に延在する。クリープ抑制溝15の溝幅は外周面11の軸方向の全幅よりも狭い。また、クリープ抑制溝15の溝幅は嵌め合い面13の軸方向の全幅よりも狭い。クリープ抑制溝15の軸方向における両側には、段差を介して嵌め合い面13の一部が隣接している。
この溝形成処理では、材料リング3Rに形成された嵌め合い面13の軸方向中央部が偏心加工で旋削されてクリープ抑制溝15が形成される。この偏心加工によってクリープ抑制溝15の底面15aは嵌め合い面13に対して偏心した円柱面に形成される。形成された底面15aの曲率半径は、嵌め合い面13の曲率半径とほぼ同じであってもよく、嵌め合い面13の曲率半径よりも大きくてもよい。溝の深さは、クリープ抑制溝15の周方向中央部で最も深く、クリープ抑制溝15の周方向両端部に近づくに従って浅くなっていく。クリープ抑制溝15の周方向両端部では、溝の深さがゼロになり、クリープ抑制溝15の底面15aと嵌め合い面13とが段差なく周方向に連なっている。
〔熱処理工程S102〕
熱処理工程S102では、旋削工程S101後の内輪2及び外輪3が所定の熱処理方法で熱処理される。例えばここでは、一般的な玉軸受の内輪及び外輪に対して従来から行なわれている公知の熱処理が行われればよい。
〔研削工程S103〕
研削工程S103では、熱処理工程S102で熱処理された内輪2及び外輪3の表面が研削され、高精度の内輪2及び外輪3が製作される。ここでは、内輪2の嵌め合い面12、内輪軌道面2a、外輪3の嵌め合い面13、外輪軌道面3a等が、心なし研削処理によって高精度に形成される。
図6は、外輪3の外周面11が心なし研削盤90で研削される状態を示す図である。前述の通り、外輪3のクリープ抑制溝15の軸方向両側には段差を介して嵌め合い面13の一部が隣接している。この構成によれば、外周面11のうちクリープ抑制溝15が形成された領域においても、当該クリープ抑制溝15の軸方向両側に隣接する嵌め合い面13が心なし研削盤90のシュー91,91に案内される。なお、ここで使用されるシュー91,91の軸方向幅は、外周面11の軸方向の全幅よりも広い。従って、外周面11の研削が正確に実行され、嵌め合い面13は周方向全周に亘って高精度の円柱面に研削される。
この研削工程S103では、嵌め合い面13が研削されることで、相対的にクリープ抑制溝15の溝深さもやや浅くなる。また、クリープ抑制溝15の周方向両端部と嵌め合い面13との境界部分が研削されることで、クリープ抑制溝15の周方向幅がやや短くなる。しかしながら、心なし研削盤90の研削砥石93は、クリープ抑制溝15の底面15aの深い部分には届かない。従って、クリープ抑制溝15には未研削の底面15aが残される。
〔組立・検査工程S104〕
研削工程S103で製作された内輪2及び外輪3と、別途製作された保持器5、玉4、及びシール6と、が組立てられ、検査を経て、クリープ抑制溝15を含む玉軸受1が完成する。
以上のような製造方法で製造された玉軸受1について説明する。この製造方法によれば、旋削工程S101で外輪3の外周面11に嵌め合い面13とクリープ抑制溝15とが形成される。その後、熱処理工程S102により、嵌め合い面13及びクリープ抑制溝15には熱処理変形が生じる。その後の研削工程S103では、嵌め合い面13は研削されるが、クリープ抑制溝15には研削されていない底面15aが残される。
従って、完成後の玉軸受1において、嵌め合い面13は、熱処理がされ研削処理がされた研削面であり、高精度な円柱面をなしている。一方、クリープ抑制溝15の底面15aは、熱処理がされてはいるが研削処理がされていない非研削面である。なお、クリープ抑制溝15の側面15b(図2)も同様に、熱処理がされてはいるが研削処理がされていない非研削面である。
このように、クリープ抑制溝15の底面15a及び側面15bは研削されていないので、クリープ抑制溝15には熱処理変形の影響が残留している。従って、前述した通り、完成後の玉軸受1におけるクリープ抑制溝15の形成精度はあまり高くない。具体的には、クリープ抑制溝15の深さが不規則に変動している可能性がある。また、研削工程S103における研削砥石93がクリープ抑制溝15の底面15aに届く箇所が存在する場合がある。このような箇所でクリープ抑制溝15が削り取られることで、クリープ抑制溝15が周方向に複数に分断されている場合もある。また、クリープ抑制溝15の軸方向の溝幅が一定ではない可能性もあり、クリープ抑制溝15の軸方向の位置が外周面11の軸方向中央からずれている可能性もある。
玉軸受1の完成後に必要な深さのクリープ抑制溝15を確実に得るために、上記のような熱処理変形の影響を勘案した上で、旋削工程S101におけるクリープ抑制溝15の切削深さと、研削工程S103における研削厚みと、が適切に設定される。このような設定により、完成後の玉軸受1におけるクリープ抑制溝15は、図7に示されるような深さの部位を有することが好ましい。図7は、完成後の玉軸受1において、外輪3の嵌め合い面13がハウジング21に嵌め合わされた状態を示す断面図である。図7に示されるように、玉軸受1の使用条件下での最大ラジアル荷重Frが玉軸受1に負荷された場合を考え、このとき発生する外輪3の弾性変形量をδとし、完成後の玉軸受1におけるクリープ抑制溝15の深さをDとする。そして、図7に示される部位においては、D>δとの条件が満足されている。
なお、上記のようなD>δの条件は、少なくともクリープ抑制溝15のうちの一部位で満足されることが好ましい。換言すれば、上記のD>δの条件がクリープ抑制溝15の最深部において満足されることが好ましい。すなわち、クリープ抑制溝15のうちの最深部の深さDmaxが、Dmax>δを満足することが好ましい。なお、クリープ抑制溝15の底面15aが、嵌め合い面13に対して偏心した円柱面に沿って延在することから、上記の最深部は、クリープ抑制溝15の周方向中央部の近傍に存在する。
本実施形態の玉軸受1及びその製造方法による作用効果について説明する。この玉軸受1によれば、外輪3の外周面11のうちクリープ抑制溝15が存在する領域においては、クリープ抑制溝15の底面15aがハウジング21に直接接触しない。従って、ラジアル荷重により弾性変形した底面15aがハウジング21に接触しにくく、外輪3からハウジング21に進行波が伝播され難い。このように、ハウジング21に伝播される進行波が低減されるので、進行波に起因する外輪3のクリープが抑制される。
また、嵌め合い面13は研削処理がされた研削面でありクリープ抑制溝15の底面15aは研削処理がされていない非研削面である。よって、この外輪3の製作においては、クリープ抑制溝15の底面15aを研削する処理を行なう必要がなく、玉軸受1の製造における工数が抑えられる。
更に、前述のようにクリープ抑制溝15のうちの最深部の深さDmaxが、Dmax>δを満足する場合には、当該最深部において、ラジアル荷重で弾性変形した底面15aがハウジングに接触せず、外輪3からハウジングに進行波が伝播されない。このように、ハウジングに伝播される進行波が周方向の少なくとも一部において途切れるので、進行波に起因する外輪3のクリープが更に抑制される。
玉軸受1におけるクリープ抑制溝15は周方向の一部に亘って延在するものであるので、玉軸受1に作用するラジアル荷重の方向と、クリープ抑制溝15の周方向位置と、の関係によっては、外輪3のクリープが発生し得る。このように、外輪3がクリープによってある程度回転するので、常に外輪3の同じ箇所にラジアル荷重が作用するといった状態が避けられ、外輪3の耐久性が向上する。
玉軸受1の他の製造方法としては、熱処理工程S102よりも後にクリープ抑制溝15を形成することも考えられる。仮にこのようにすれば、クリープ抑制溝15に熱処理変形の影響が残留しないので、完成後の玉軸受1におけるクリープ抑制溝15の形成精度は向上する。しかしながら、この場合、研削工程S103の前又は後に、外輪3を改めて他の切削機械等で加工するなどの別の工程が必要になる。これに対して本実施形態の製造方法では、クリープ抑制溝15の形成が、外輪3の嵌め合い面13等を旋削する旋削工程S101の中で一連に行なわれる。そして研削工程S103では、外輪3の外周面11が心なし研削処理で研削されることで、嵌め合い面13は高精度に研削される一方で、当該嵌め合い面13から径方向内側に凹んだクリープ抑制溝15は、完全には研削されずに残される。このような製造方法によれば、熱処理工程S102よりも後にクリープ抑制溝15を形成する場合に比較して、外輪3の製作における工数が抑えられ、玉軸受1の製造における工数が抑えられる。すなわち、玉軸受1の製造における工数を抑えながら、クリープ抑制溝15を設けて玉軸受1のクリープ抑制を図ることができる。
また、熱処理工程S102よりも後にクリープ抑制溝15を形成するとすれば、熱処理済みで硬くなった外周面11に切削等の加工を施す必要がある。これに対して、本実施形態の製造方法によれば、熱処理がされていない比較的軟らかい外周面11にクリープ抑制溝15が旋削されるので、加工が比較的容易である。
本実施形態の製造方法によれば、前述の通り、クリープ抑制溝15に熱処理変形の影響が残留するので、完成後の玉軸受1におけるクリープ抑制溝15の形成精度はあまり高くない。しかしながら、クリープ抑制に必要な溝の深さがクリープ抑制溝15に確保されていればほとんど問題はない。また、熱処理変形の影響でクリープ抑制溝15が浅くなった部分において、十分なクリープ抑制の効果が得られなかったとしても、例えば、玉軸受1が自動車のトランスミッション用の軸受として使用される場合には、同じ運転条件が長時間続くことはほとんどなく、荷重バランスも変動するので、ほとんど問題はない。
また、本実施形態の製造方法の旋削工程S101では、クリープ抑制溝15の底面15aは、嵌め合い面13に対して偏心した円柱面に形成される。この構成によれば、旋削工程S101においてクリープ抑制溝15の周方向中央部に比較的深い最深部が形成される。よって、熱処理変形の影響が残留しても、最終的に必要な溝の深さがクリープ抑制溝15の最深部で確保されやすい。また、このような偏心した円柱面は、偏心加工といった比較的容易な旋削方法で形成可能であるので、旋削工程S101でクリープ抑制溝15を形成することによる処理負担が抑えられる。
また、仮に、クリープ抑制溝15が外輪3の外周面11の軸方向の全幅に亘って存在するものであるとすれば、外周面11は正確な円柱面ではないので、研削工程S103において外周面11を心なし研削盤90で研削することができない。よって、嵌め合い面13を研削処理するためには、心なし研削処理とは別の処理が必要になる。これに対し、玉軸受1のクリープ抑制溝15は、嵌め合い面13の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で存在するものである。そして、クリープ抑制溝15の軸方向における両側には、段差を介して嵌め合い面13の一部が隣接している。この構成によれば、前述の通り、心なし研削盤90による外周面11の研削が可能であるので、嵌め合い面13の研削を一連の心なし研削処理の中で実行することができ、その結果、玉軸受1の製造における工数が抑えられる。
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、下記の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
図8(a),(b)は、各変形例に係る外輪3を示す斜視図である。図8(c)は、他の変形例に係る内輪2を示す破断斜視図である。図8(a)に示されるように、クリープ抑制溝15が、軸方向において外周面11の中央からずれた位置に設けられてもよい。ラジアル荷重とアキシアル荷重とを受ける条件で玉軸受1が使用される場合には、ラジアル荷重とアキシアル荷重との合力によって、進行波が外周面11の軸方向中央からずれた位置に現れる場合がある。図8(a)の構成によれば、このような軸方向中央からずれた進行波による外輪3のクリープを抑制することができる。また、図8(b)に示されるように、クリープ抑制溝15が、外周面11に複数設けられてもよい。前述の通り、外輪3の熱処理変形に起因して、研削工程S103でクリープ抑制溝15の一部が削り取られてクリープ抑制溝15が周方向に複数に分断される場合がある。このようにして複数のクリープ抑制溝15が外周面11に設けられたものであってもよい。
また、玉軸受1の内輪2が固定輪とされ外輪3が回転輪とされる場合には、図8(c)に示されるように、所定の軸にすきま嵌めされる内輪2の内周面10(嵌合部)にクリープ抑制溝15が設けられてもよい。内周面10には所定の軸の外周面に嵌め合わされる嵌め合い面12と、当該嵌め合い面12から径方向外側に凹むクリープ抑制溝15と、が形成される。この場合、クリープ抑制溝15の底面15aは、嵌め合い面12に対して偏心した円柱面に沿って延在するものであってもよい。この場合、底面15aの曲率半径は、嵌め合い面12の曲率半径とほぼ同じであってもよく、嵌め合い面12の曲率半径よりも小さくてもよい。
このような図8(c)の内輪2を備える玉軸受1では、前述の実施形態と同様に、内輪2のクリープが抑制される。また、前述の実施形態と同様に、旋削工程S101でクリープ抑制溝15が旋削され、研削工程S103で心なし研削により嵌め合い面12が研削されることで、内輪2の製作における工数が抑えられ、玉軸受1の製造における工数が抑えられる。完成後の玉軸受1における内輪2の嵌め合い面12は、熱処理工程S102の後に高精度な円柱面に研削された研削面であり、クリープ抑制溝15の底面15aは熱処理工程S102の後に研削処理がされていない非研削面である。
また、実施形態では、本発明を深溝玉軸受に適用した例を説明したが、本発明は、他の種類のラジアル転がり軸受にも適用することができる。本発明が適用可能なラジアル転がり軸受としては、ラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受、等がある。上記ラジアル玉軸受としては、深溝玉軸受の他、アンギュラ玉軸受等があり、上記ラジアルころ軸受としては、円筒ころ軸受等がある。
1…玉軸受(転がり軸受)、2…内輪、3…外輪、4…玉(転動体)、10…内周面(嵌合部)11…外周面(嵌合部)、12…嵌め合い面、13…嵌め合い面、15…クリープ抑制溝、15a…底面、21…ハウジング(相手部材)、Fr…最大ラジアル荷重、D…深さ、δ…弾性変形量。

Claims (6)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、を備え、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が固定輪とされる転がり軸受であって、
    前記固定輪の相手部材との嵌合部は、
    周方向全周に亘って存在し円柱面をなす嵌め合い面と、
    前記嵌め合い面の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で周方向の一部に亘って当該周方向に延在し前記嵌め合い面から凹むように形成された溝と、を備え、
    前記嵌め合い面は、研削処理がされた研削面であり、
    前記溝の底面は、研削処理がされていない非研削面である、転がり軸受。
  2. 前記溝の前記底面は、前記嵌め合い面に対して偏心した円柱面に沿って延在する請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記溝の最深部の深さは、最大ラジアル荷重が負荷されたときの前記固定輪の弾性変形量よりも大きい、請求項1又は2に記載の転がり軸受。
  4. 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、を備え、前記内輪と前記外輪とのうちの一方が固定輪とされる転がり軸受の製造方法であって、
    前記固定輪の相手部材との嵌合部が旋削され、周方向全周に亘って存在し円柱面をなす嵌め合い面と、前記嵌め合い面の軸方向の全幅よりも狭い溝幅で周方向の一部に亘って当該周方向に延在し前記嵌め合い面から凹むように形成された溝と、が形成される旋削工程と、
    前記旋削工程の後、前記嵌め合い面と前記溝とを含む前記嵌合部が心なし研削処理で研削される研削工程と、を備える、転がり軸受の製造方法。
  5. 前記旋削工程では、
    前記溝の底面が、前記嵌め合い面に対して偏心した円柱面に形成される、請求項4に記載の転がり軸受の製造方法。
  6. 前記旋削工程と前記研削工程との間で、前記固定輪が熱処理される熱処理工程を更に備える、請求項4又は5に記載の転がり軸受の製造方法。
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