JP2024078411A - 補強構造及び施工方法 - Google Patents

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健次 米澤
Kenji Yonezawa
克彦 澁市
Katsuhiko Shibuichi
丈志 迫田
Takeshi Sakota
通央 田中
Michio Tanaka
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HORIE KENCHIKU KOGAKU KENKYUSHO KK
KOORIYOO KENHAN KK
Obayashi Corp
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HORIE KENCHIKU KOGAKU KENKYUSHO KK
KOORIYOO KENHAN KK
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Abstract

【課題】後施工で開口を補強できる構造または方法を提供する。【解決手段】コンクリート構造物に形成された開口に挿入される筒状部を有する挿入部材と、前記筒状部の外周面と前記開口の内周面との間に注入される硬化剤と、を備える、補強構造。【選択図】図1

Description

本発明は、補強構造及び施工方法に関する。
従来、鉄筋コンクリート構造物に設けられた開口については、開口の周囲を補強することが行われている(例えば、特許文献1)。
特開2008-144415号公報
従来の方法では、鉄筋や補強板をコンクリート打設前に設置し、コンクリート構造物に埋め込むことが必要であり、コンクリート打設後に新たに開口を設けた場合に一般的に対応できるものではなかった。
本発明は、一実施形態として、コンクリート構造物に形成された開口に挿入される筒状部を有する挿入部材と、前記筒状部の外周面と前記開口の内周面との間に注入される硬化剤と、を備える、補強構造を提供する。
また本発明は、一実施形態として、コンクリート構造物に形成された開口に筒状部を有する挿入部材を挿入する工程と、前記筒状部の外周面と前記開口の内周面との間に硬化剤を注入する工程と、を含む、コンクリート構造物の補強方法を提供する。
本発明によれば、後施工で開口を補強できる構造または方法を提供できる。
第1実施形態の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁の(a)側面図、(b)図1(a)における1B線による断面図、(c)挿入部材の正面図、及び(d)硬化剤を一部において充填しない場合の側面図である。 第1実施形態の補強構造を鉄筋コンクリート梁に設置する状況を示す図であり、(a)開口形成、(b)挿入部材の挿入、(c)シーリング、及び(d)硬化剤注入の各工程を示す。 第1実施形態の工程を示すフローチャートである。 第2実施形態の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁を示す図であり、(a)鋼棒取付、及び(b)ナット締付の各工程を示す。 第2、第3、第4、第5実施形態の工程を示すフローチャートである。 鉄筋コンクリート梁において、開口の周囲に働く力の一例を示す説明図である。 第3実施形態の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁の(a)断面図、及び(b)側面図である。 第4実施形態の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁の(a)断面図、及び(b)側面図である。 第5実施形態の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁の(a)断面図、及び(b)側面図である。 変形例の補強構造を設置した鉄筋コンクリート梁の(a)断面図、及び(b)側面図である。 変形例による鋼管の接続を説明する図であり、(a)側面図、(b)断面図の一例、及び(c)断面図のさらに別の例を示す。
<第1実施形態>
以下、本発明の開口の補強構造の一実施形態である補強構造10について図面に基づき説明する。
図1(a)は、本実施形態の補強構造10が適用された鉄筋コンクリート梁20の側面図であり、同図(b)は、同図(a)における1b-1b断面図である。これらの図に示すように、鉄筋コンクリート梁20には、幅方向に貫通する貫通孔である開口21が形成されており、この開口21を利用して設備配管などが設置される。
なお、鉄筋コンクリート梁20における幅方向、梁せい方向、及び長手方向は、図1に示すように定義される。また、各部材の方向は、鉄筋コンクリート梁20に取り付けられた状態を基準として定義し、説明を行う。
図1に示すように、本実施形態の開口21の補強構造10は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13と、シーリング14と、スペーサー19とを備える。
挿入部材11は、2つの部材11A、11Bを有する。部材11A、11Bは同じ形状を有しており、それぞれ、鋼管111及び鍔部112を備える。鋼管111は、図1(b)、(c)のように、円筒形状に形成された鋼製部材であり、端部111Aと端部111Bとを有する。鍔部112は、ドーナツ状または円環状に形成された鋼板であり、鋼管111とほぼ同軸となるように、溶接等により端部111Aに対して固定される。
硬化剤13は、モルタルまたはグラウトなど、セメントを含有する材料で構成される。または、エポキシ樹脂が硬化剤13として用いられてもよい。硬化剤13は、鋼管111と開口21との間に位置しており、挿入部材11と鉄筋コンクリート梁20との間で圧縮力の伝達を行う機能を有する。また、硬化剤13は、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20の側面との間にも位置するが、図1(d)のように鍔部112と鉄筋コンクリート梁20の側面との間に硬化材13が入らない構成としてもよい。
スペーサー19は、部材11A、11Bのいずれかもしくは両方の鋼管111の外周面に対し、円周方向に等間隔に並ぶように固定される。スペーサー19は、鋼管111の外周面及び開口21の内周面に接触する。スペーサー19を用いることにより、鋼管111の外周面は、開口21の内周面から一定の間隔を空けて配置される。また、スペーサー19は、部材11A、11Bの鋼管111同士の位置決めを行い、接合を容易とする機能も有する。なお、スペーサー19は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
スペーサー19は、開口21と鋼管111との間で力を伝達するという機能も有する。そのため、スペーサー19としては鋼材が用いられることが望ましい。具体的なスペーサー19の例としては、異形鉄筋または丸綱が挙げられ、この場合、鋼管111に溶接により固定される。実施形態では4本のスペーサー19が用いられるが、スペーサー19の数は、状況に応じて適宜設定される。
(施工)
補強構造10の施工方法を図2及び図3を用いて説明する。
工程S1において、作業者は、鉄筋コンクリート梁20に対してコア抜きを行い、開口21を形成する(図2(a))。
次に作業者は、鉄筋コンクリート梁20の両側面から、部材11A、11Bを開口21に挿入する(S3)。部材11A、11Bそれぞれの端部111Bは、互いに鉄筋コンクリート梁20の幅方向中央部付近などにおいて、互いに突き当てられる(図2(b))。
工程S5において、作業者は、部材11A、11Bの間、すなわち端部111Bの間にシーリング14にて、隙間を塞ぐ。隙間が塞がることにより、後工程S7において硬化剤13の漏出が防止される(図2(c))。なお、図2などでは理解を容易にするためにシーリング14の隙間が大きく記載されているが、実際は端部111Bが突き当てられた状態となっているため、隙間の大きさは微小である。
工程S7において、作業者は、硬化剤13の注入を行う(図2(d))。硬化剤13は、部材11Aと鉄筋コンクリート梁20との隙間、及び部材11Bと鉄筋コンクリート梁20との隙間、またはいずれか一方から注入される。または、鍔部112に硬化剤13注入用の貫通孔(不図示)を形成し、この貫通孔から硬化剤13が注入されてもよい。
硬化剤13が硬化することにより、補強構造10は、鉄筋コンクリート梁20と一体化する。詳細は後述するが、補強構造10が、特に鋼管111が外周から加わる圧縮力に対して抵抗することにより、開口21周辺におけるせん断補強材としての機能を発揮する。
<第2実施形態>
第2実施形態による補強構造100を、図4を用いて以下に説明する。
補強構造100が適用される場合、鉄筋コンクリート梁20には、側面視において開口21の周囲に、4つの貫通孔22が円周方向で等間隔に形成される。実施形態では4本の貫通孔22が形成されるが、貫通孔22、後述の鋼棒15及び貫通孔112Aに関し、これらの数、配置及び間隔は、状況に応じて適宜設定される。
第2実施形態の補強構造100は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13と、部材11A、11Bとの間に注入されたシーリング14と、スペーサー19とを備える。
第2実施形態において、部材11A、11Bそれぞれの鍔部112には、側面視で円周方向に等間隔に設けられた4つの貫通孔112Aが形成される。この貫通孔112Aを除いて、部材11A、11B、硬化剤13、シーリング14の構成は第1実施形態と同じであり、以下では説明を省略する。
補強構造100は、上記の構成に加え、さらに4本の鋼棒15と、鋼棒15の両端部に取り付けられたナット17とを備える。鋼棒15の両端部には雄ネジが切られており、ナット17を締結可能である。鋼棒15は、高張力鋼によって形成されることが望ましい。
鋼棒15は、貫通孔112A及び貫通孔22の双方に挿入され、鉄筋コンクリート梁20を幅方向に貫通する。鋼棒15の両端部におけるナット17の締結によって、鋼棒15には張力が掛けられている。鍔部112は、鋼棒15及びナット17によって、鉄筋コンクリート梁20の側面に押し付けられており、そのため、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間で硬化剤13を介して発生する最大静止摩擦力は、高い値となっている。
(施工)
補強構造100の施工方法を図4及び図5を用いて説明する。補強構造100の施工作業では、工程S1、S3、S5、S7に加え、工程S4、S8が追加される。工程S1、S3、S5、S7は第1実施形態と同じ内容の工程であり、説明を省略する。
工程S4において、作業者は、鋼棒15の取付作業を行う(図4(a))。詳細には、作業者は、4組の貫通孔22、112Aそれぞれに1本ずつ鋼棒15を通す。
工程S8は、硬化剤13が硬化し、十分な強度を発現した後に実施される(図4(b))。この工程において作業者は、それぞれの鋼棒15の両端部にナット17を締結し、鋼棒15に張力をかける。もちろん、鋼棒15に張力をかけながら、ナット17を締結してもよい。その結果、鍔部112には、鍔部112を鉄筋コンクリート梁20の側面に押しつけるように働く押圧力が、鋼棒15及びナット17から掛けられる。
<第3実施形態>
第3実施形態による補強構造200を、図7を用いて以下に説明する。
第3実施形態の補強構造300は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13と、部材11A、11Bとの間に注入されたシーリング14とを備える。
鍔部112は、ドーナツ状、多角形状、または円環状に形成された鋼板であり、鋼管111とほぼ同軸となるように、溶接等により端部111Aに対して固定される。第3実施形態において、部材11A、11Bそれぞれの鍔部112には、側面視で鋼管111の上方及び下方に設けられた2つの貫通孔112Aが形成される。硬化材13の注入前において、貫通孔112Aは、外気と開口21とを接続する空間を形成する(以下、連通する、ともいう)。
この貫通孔112Aを除いて、部材11A、11B、硬化剤13、シーリング14の構成は第2実施形態と同じであり、以下では説明を省略する。
補強構造200は、上記の構成に加え、さらに開口21に沿って水平に延びる2本の鋼棒15と、鋼棒15の端部に取り付けられたナット17とを備える。
一方の鋼棒15は、図7(a)に示すように、部材11Aの下部外周面に対し、溶接部Wにおいて溶接されている。他方の鋼棒15は部材11Bの上部外周面に対し、溶接部Wにおいて溶接されている。
鋼棒15は、いずれも鋼管111の外周面と開口21の内周面との両方に接触しており、開口21に対する挿入部材11の位置を調整するスペーサーとしての機能も有する。鋼棒15により、鋼管111の外周面は、開口21の内周面から一定の間隔を空けて配置される。また、鋼棒15は、部材11A、11Bの鋼管111同士の位置決めを行い、接合を容易とする機能も有する。なお、鋼棒15は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
鋼棒15の端部には雄ネジが切られており、ナット17を締結可能である。鋼棒15は、高張力鋼でなくてもよいが、高張力鋼によって形成されることが望ましい。
それぞれの鋼棒15は、貫通孔112Aに挿入され、鉄筋コンクリート梁20の幅方向に延びている。鋼棒15の端部におけるナット17の締結によって、鋼棒15には張力が掛けられている。鍔部112は、鋼棒15及びナット17によって、鉄筋コンクリート梁20の側面に押し付けられており、そのため、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間で硬化剤13を介して発生する最大静止摩擦力は、高い値となっている。加えて、力が作用して変形する際、部材が膨張するのを抑える効果があり、耐力を高めることができる。また、上下の鋼棒15を互い違いにすることで、グラウト充填性を高める効果がある。
(施工)
補強構造200の施工手順は図5のフローに示される。工程S1、S3、S5は第1、第2実施形態と同じ内容の工程であり、説明を省略する。
工程S4において、作業者は、鋼棒15を貫通孔112Aに通す。
工程S7では、硬化剤13が、部材11Aの下部に形成された貫通孔112A(図中、「注入口」と示す)から注入される。注入された硬化剤13は、挿入部材11と鉄筋コンクリート梁20の間、詳細には鋼管111と開口21の内周面との間に充填される。さらに、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間に硬化剤13が充填されてもよい。作業者は、硬化剤13が部材11Bの上部に形成された貫通孔112Aから出てきたことを目視することによって、硬化剤13の充填を確認することができる。
工程S8において作業者は、それぞれの鋼棒15の端部にナット17を締結し、鋼棒15に張力をかける。その結果、鍔部112には、鍔部112を鉄筋コンクリート梁20の側面に押しつけるように働く押圧力が、鋼棒15及びナット17から掛けられる。
硬化剤13が硬化することにより、補強構造200は、鉄筋コンクリート梁20と一体化する。詳細は後述するが、補強構造10が、特に鋼管111が外周から加わる圧縮力に対して抵抗することにより、開口21周辺におけるせん断補強材としての機能を発揮する。
<第4実施形態>
第4実施形態による補強構造300を、図8を用いて以下に説明する。
第4実施形態の補強構造300は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13と、部材11A、11Bとの間に注入されたシーリング14とを備える。
鍔部112は、多角形状、ドーナツ状、または円環状に形成された鋼板であり、鋼管111とほぼ同軸、または側面視において図心位置がほぼ一致するように、溶接等により端部111Aに対して固定される。第4実施形態において、部材11A、11Bそれぞれの鍔部112には、側面視で鋼管111の左方及び右方に設けられた2つの貫通孔112Aが形成される。
さらに部材11Aの鍔部112には、鋼管111の下方に位置する貫通孔112Aが形成される(図8(b))。また、部材11Bの鍔部112には、側面視で鋼管111の上方に位置する貫通孔112Aが形成される。硬化材13の注入前において、それぞれの貫通孔112Aは、外気と開口21とを連通する。
この貫通孔112Aを除いて、部材11A、11B、硬化剤13、シーリング14の構成は第1実施形態と同じであり、以下では説明を省略する。
補強構造300は、上記の構成に加え、さらに2本の鋼棒15と、鋼棒15の両端部に取り付けられたナット17とを備える。鋼棒15の両端部には雄ネジが切られており、ナット17を締結可能である。鋼棒15は、高張力鋼でなくてもよいが、高張力鋼によって形成されることが望ましい。
鋼棒15は、鉄筋コンクリート梁20の幅方向に延びるように開口21及び貫通孔112Aに挿入される。鋼棒15の両端部におけるナット17の締結によって、鋼棒15には張力が掛けられている。鍔部112は、鋼棒15及びナット17によって、鉄筋コンクリート梁20の側面に押し付けられており、そのため、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間で硬化剤13を介して発生する最大静止摩擦力は、高い値となっている。加えて、力が作用して変形する際、部材が膨張するのを抑える効果があり、耐力を高めることができる。
鋼棒15は、いずれも鋼管111の外周面と開口21の内周面との両方に接触しており、そのため、開口21に対する挿入部材11の位置を調整するスペーサーとしての機能も有する。鋼棒15により、鋼管111の外周面は、開口21の内周面から一定の間隔を空けて配置される。また、鋼棒15は、部材11A、11Bの鋼管111同士の位置決めを行い、接合を容易とする機能も有する。なお、鋼棒15は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
(施工)
補強構造300の施工手順は図5のフローに示される。工程S1、S3、S5は第1、第2実施形態と同じ内容の工程であり、説明を省略する。
工程S4において、作業者は、鋼棒15を開口21及び貫通孔112Aに挿入する。
工程S7では、硬化剤13が、部材11Aの下部に形成された貫通孔112A(図中、「注入口」と示す)から注入される。注入された硬化剤13は、挿入部材11と鉄筋コンクリート梁20の間、詳細には鋼管111と開口21の内周面との間に充填される。さらに、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間に硬化剤13が充填されてもよい。
工程S8において作業者は、それぞれの鋼棒15の端部にナット17を締結し、鋼棒15に張力をかける。その結果、鍔部112には、鍔部112を鉄筋コンクリート梁20の側面に押しつけるように働く押圧力が、鋼棒15及びナット17から掛けられる。
硬化剤13が硬化することにより、補強構造300は、鉄筋コンクリート梁20と一体化する。詳細は後述するが、補強構造10が、特に鋼管111が外周から加わる圧縮力に対して抵抗することにより、開口21周辺におけるせん断補強材としての機能を発揮する。
<第5実施形態>
第5実施形態による補強構造400を、図9を用いて以下に説明する。
第5実施形態の補強構造400は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13と、部材11A、11Bとの間に注入されたシーリング14と、スペーサー19とを備える。
鍔部112は、多角形状、ドーナツ状または円環状に形成された鋼板であり、鋼管111とほぼ同軸となるように、または側面視において図心位置がほぼ一致するように、溶接等により端部111Aに対して固定される。
第5実施形態において、補強構造500は、端部111Aに固定された4つの鍔部113をさらに備える。鍔部113は、側面視において鋼管111の左側内周面と右側内周面に1つずつ固定される(図9(b))。それぞれの鍔部113は、鍔部112と面一となっている(図9(a))。
各鍔部113は鋼管111の径方向内方に延びるように、鋼管111に固定されている。また、各鍔部113には、図1(b)に示す幅方向、換言すれば鍔部112の厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられる。
部材11Aの鍔部112には、鋼管111の下方に位置する貫通孔112Aが形成される(図9(b))。部材11Bの鍔部112には、側面視で鋼管111の上方に位置する貫通孔112Aが形成される。硬化材13の注入前において、貫通孔112Aは、外気と開口21とを連通する。
スペーサー19は、部材11A、11Bのいずれかの鋼管111の外周面に対し、円周方向に等間隔に並ぶように配置され、溶接部Wにおいて溶接されている。スペーサー19は、鋼管111の外周面及び開口21の内周面に接触する。スペーサー19を用いることにより、鋼管111の外周面は、開口21の内周面から一定の間隔を空けて配置される。また、スペーサー19は、部材11A、11Bの鋼管111同士の位置決めを行い、接合を容易とする機能も有する。なお、スペーサー19は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
この鍔部113及び貫通孔112A、スペーサー19を除いて、部材11A、11B、硬化剤13、シーリング14の構成は第2実施形態と同じであり、以下では説明を省略する。
補強構造400は、上記の構成に加え、さらに2本の鋼棒15と、鋼棒15の両端部に取り付けられたナット17とを備える。鋼棒15の両端部には雄ネジが切られており、ナット17を締結可能である。鋼棒15は、高張力鋼でなくても良いが、高張力鋼によって形成されることが望ましい。
2本の鋼棒15は、側面視において鋼管111の左右に1本ずつ配置される。各鋼棒15は、鍔部113の貫通孔に挿入され、鉄筋コンクリート梁20を幅方向に貫通する。鋼棒15の両端部におけるナット17の締結によって、鋼棒15には張力が掛けられている。鍔部112は、鋼棒15及びナット17によって、鉄筋コンクリート梁20の側面に押し付けられており、そのため、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間で硬化剤13を介して発生する最大静止摩擦力は、高い値となっている。加えて、力が作用して変形する際、部材が膨張するのを抑える効果があり、耐力を高めることができる。
(施工)
補強構造400の施工方法を図4及び図5を用いて説明する。補強構造100の施工作業では、工程S1、S3、S5、S7に加え、工程S4、S8が追加される。工程S1、S3、S5、S7は第1、第2実施形態と同じ内容の工程であり、説明を省略する。
工程S4において、作業者は、鋼棒15の取付作業を行う。詳細には、作業者は、鍔部113に設けられた貫通孔に鋼棒15を挿入する。
工程S7では、硬化剤13が、部材11Aの下部に形成された貫通孔112A(図中、「注入口」と示す)から注入される。注入された硬化剤13は、挿入部材11と鉄筋コンクリート梁20の間、詳細には鋼管111と開口21の内周面との間に充填される。さらに、鍔部112と鉄筋コンクリート梁20との間に硬化剤13が充填されてもよい。作業者は、硬化剤13が部材11Bの上部に形成された貫通孔112Aから出てきたことを目視することによって、硬化剤13の充填を確認することができる。
工程S8は、硬化剤13が硬化し、十分な強度を発現した後に実施される(図4(b))。この工程において作業者は、それぞれの鋼棒15の両端部にナット17を締結し、鋼棒15に張力をかける。もちろん、鋼棒15に張力をかけながら、ナット17を締結してもよい。その結果、鍔部112には、鍔部112を鉄筋コンクリート梁20の側面に押しつけるように働く押圧力が、鋼棒15及びナット17から掛けられる。
<変形例>
本実施形態では、補強構造10、100-400を鉄筋コンクリート構造の梁部材に適用した。これに限らず、補強構造10、100-400は、耐震壁などの各種コンクリート構造物に適用可能である。
実施形態では、鉄筋コンクリート梁20への取付け前において、挿入部材11が2つの部材11A、11Bに分割され、これに伴い鋼管111は2つの部材に分割されていた。施工時には、鉄筋コンクリート梁20の両側から部材11A、11Bを挿入し、鋼管111を突き合わせることにより1つの筒状部としていた。しかし、考えられる形態はこれに限らず、取付け前から鋼管111が1つの部材として加工されてもよい。例えば、鉄筋コンクリート梁20の幅とほぼ同じ長さを有する鋼管111を用意し、開口21に挿入してもよい。
加えて、鍔部112は開口21の内部に配置されてもよい。一例を図10の補強構造500に示す。補強構造500は、開口21の内側に挿入された挿入部材11と、挿入部材11の外周面と開口21の内周面との間に注入されて硬化した硬化剤13とを備える。
挿入部材11は、図10(a)、(b)に示すように、円筒形状に形成された1本の鋼管111と、側面視で環状に形成された3つの鍔部112とを備える。
鍔部112の内径は鋼管111の外径にほぼ等しく、各鍔部112は1本の鋼管111に溶接されている。鍔部112は、幅方向においてほぼ等間隔となるように配置される。鍔部112の外径は、開口21の内径とほぼ等しいため、鍔部112の外周部は開口21の内周面と接触している。鍔部112は、鋼管111と開口21の内周面とに接触し、鋼管111の位置決めを行うスペーサーとしての機能も有する。各鍔部112には、幅方向に延びる不図示の貫通孔または切り欠きが設けられる。なお、各鍔部112は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
補強構造500の施工は、開口21形成後に挿入部材11を挿入し(図3のS1、S3)、硬化剤13を開口21内部に充填することによって完了する(S7)。筒状部が1つの鋼管111で形成されるため、シーリングの施工(S5)は不要である。硬化材13の充填の際、硬化材13は、各鍔部112に設けられた不図示の貫通孔を通って、開口21と鋼管111の間に充填される。
<その他変形例>
また、部材11Aと部材11Bとで鋼管111の径を変え、部材11Bの端部111Bが部材11Aの端部111Bの内側に入ることで、鋼管111同士が嵌合により接続されてもよい。一例として、鋼管111同士の嵌合を表す側面図を図11(a)に示す。この場合、図11(b)のように、2つの鋼管111それぞれにおいて全長に亘って外径を変えることによって、両部材を嵌合させることができる。また、図11(c)のように、2つの鋼管111の端部または一部分において外径を異ならせることで、両部材を嵌合させてもよい。
その際、端部111Bにネジ切がなされ、鋼管111同士がねじ作用によって互いに接続される構造が採用されてもよい。この場合においても、端部111Bで接続されることで鋼管111が1つの筒状部として機能し、圧縮力に抵抗することができる。このほかにも、鋼管111の接続には溶接など様々な方式が採用され得る。
また、鍔部112は、鉄筋コンクリート梁20に十分なせん断補強筋量が備えられている場合、必ずしも必要ではない。したがって、場合により、部材11A、11Bの少なくとも1つにおいて、鍔部112が無い構成とすることも可能である。
各実施形態の図面において外縁が円形に形成された鍔部112についても、その外縁形状は、多角形状や楕円など、円形以外の形状をとってもよい。
第2実施形態では、貫通孔22と鋼棒15との間に硬化剤13がさらに充填されてもよい。この場合、貫通孔22に充填された硬化剤13を介して力の伝達が発生し、補強構造100によるせん断力に対する抵抗が増加する。
<効果>
(態様1)本実施形態による補強構造10、100は、コンクリート構造物である鉄筋コンクリート梁20に形成された開口21に挿入される鋼管111(筒状部に相当)を有する挿入部材11と、鋼管111の外周面と開口21の内周面との間に注入される硬化剤と、を備える。
鉄筋コンクリート梁20にせん断力が発生した場合、開口21の周囲には、一例として図6の白抜き矢印に示すように、開口21を潰すような圧縮力が働く。補強構造10、100を用いた場合、無開口の場合に鉄筋コンクリート梁の開口21に相当する部分の鉄筋コンクリートが負担する圧縮力を、鋼管111が負担する。これにより、開口21の周囲における応力分布の変化を抑えることができるため、開口21の周辺の鉄筋コンクリートに局所的に大きな応力及び力が作用することを抑止できる。
(態様2)態様1において、挿入部材11は、開口21の一端側から挿入される部材11A(第1部材に相当)と、開口21の他端側から挿入される部材11B(第2部材に相当)と、を有する。
上記構成では、挿入部材11を2つの部材11A、11Bに分け、コンクリート構造物の両側面から取り付けることを可能とする。そのため、施工が容易である。
(態様3)態様1または2において、挿入部材11は、鋼管111の端部111Aに固定され、鋼管111から径方向外方に延びる板状の鍔部112、113(板状部に相当)をさらに有する。
(態様4)態様1から3のいずれかにおいて、鍔部112、113は、鋼管111の端部に固定される。
上記構成では、鍔部112を設けて鉄筋コンクリート梁20の側面に突き当てることにより、適切な位置に部材11A、11Bを鉄筋コンクリート梁20に設置することができる。また、鍔部112は、鋼管111の変形を抑制し、補強効果を高める。
(態様5)態様1から4のいずれかにおいて、補強構造500の鍔部112は、開口21の内周面と鋼管111の外周面とに接触する。なお、補強構造500の鍔部112は、全面的に鋼管111の外周面と開口21の内周面とに接触するのではなく、隙間を形成しているなど、いくらかの遊びが有ってもよい。
上記構成では、鍔部112を開口21の内部に配置し、鋼管111の位置を決めるスペーサーとしての機能を持たせることができる。
(態様6)態様1から3のいずれかにおいて、鍔部112、113の一方は部材11Aにおける端部111Aに固定され、鍔部112、113の他方は部材11Bにおける端部111Aに固定される。また、補強構造100、300、400は、2つの鍔部112、113双方に固定される鋼棒15(棒部材に相当)をさらに備える。
上記構成では、補強構造100、300、400はさらに高い補強効果を備える。詳細に述べると、鉄筋コンクリート梁20にせん断力が発生した場合、開口21の周囲には図6の白抜き矢印に示すように、圧縮力だけでなく引張力が働く。補強構造100を用いた場合、鋼棒15によって、鍔部112が鉄筋コンクリート梁20の側面に押圧される。鍔部112が鉄筋コンクリート梁20との間には大きな最大静止摩擦力が発生するため、開口21周囲の引張力は、摩擦によって鍔部112に伝達される。その際、鍔部112が引張力に対して反力を生じ、抵抗する。そのため、補強構造100は、圧縮力だけでなく引張力に対しても抵抗し、高い補強効果を発揮する。補強構造100は、せん断補強筋量が開口21の周囲において十分でなく、開口21の周囲に大きな圧縮力及び引張力が発生する場合に特に有効である。鋼棒15には部材が膨張するのを抑える効果があり、耐力を高めることができる。
(態様7)態様1から6のいずれかにおいて、補強構造200は、開口21と平行に延び、鍔部112と鋼管111とに接続される棒状の鋼棒15を備える。
上記構成では、鋼棒15が鋼管111に接続されるため、挿入部材11の設置が容易である。
(態様8)態様1から7のいずれかにおいて、補強構造200、300の鋼棒15は、鋼管111の外周面と開口21の内周面との両方に接触する。
上記構成では、鋼棒15が鋼管111の位置決めをするスペーサーとしても機能するため、挿入部材11の設置が容易である。
(態様9)態様1から8のいずれかにおいて、挿入部材11は、部材11Aの一端側の端部に固定された鍔部112、113と、部材11Bの他端側の端部に固定された鍔部112、113と、をさらに有する。また、補強構造200は、開口21と平行に延び、部材11Aと部材11Bの鍔部112とに接続された棒状の鋼棒15と、開口21と平行に延び、部材11Bと部材11Aの鍔部112とに接続された棒状の鋼棒15と、を備える。
上記構成において、補強構造200は、補強構造100と同様に高い補強効果を備える。詳細に述べると、鉄筋コンクリート梁20にせん断力が発生した場合、開口21の周囲には図6の白抜き矢印に示すように、圧縮力だけでなく引張力が働く。補強構造200を用いた場合、鋼棒15によって、鍔部112が鉄筋コンクリート梁20の側面に押圧される。鍔部112が鉄筋コンクリート梁20との間には大きな最大静止摩擦力が発生するため、開口21周囲の引張力は、摩擦によって鍔部112に伝達される。その際、鍔部112が引張力に対して反力を生じ、抵抗する。そのため、補強構造200は、圧縮力だけでなく引張力に対しても抵抗し、高い補強効果を発揮する。補強構造200は、せん断補強筋量が開口21の周囲において十分でなく、開口21の周囲に大きな圧縮力及び引張力が発生する場合に特に有効である。また、鋼棒15が鋼管111の位置決めをするスペーサーとしても機能するため、挿入部材11の設置が容易である。鋼棒15には部材が膨張するのを抑える効果があり、耐力を高めることができる。
(態様10)態様1から9のいずれかにおいて、硬化剤13は、鉄筋コンクリート梁20と鍔部112との間に位置する。
上記構成のように硬化剤13を鉄筋コンクリート梁20と鍔部112との間に介在させることにより、確実に鉄筋コンクリート梁20から圧縮力を鋼管111に伝達させることが可能となる。
(態様11)態様1から10のいずれかにおいて、硬化剤13はセメントまたはエポキシ樹脂を含有する。
上記構成のように硬化剤13にセメント材料またはエポキシ樹脂を用いることにより、高い荷重に耐え、変形し難い硬化剤13とすることができる。確実に鉄筋コンクリート梁20から圧縮力を鋼管111に伝達させることが可能となる。
(態様12)態様1から11のいずれかにおいて、筒状部は、鋼管111によって構成される。
上記構成のように筒状部として鋼管111を用いることにより、開口21の周囲に発生する圧縮力に対して抵抗し、高い補強効果を持つ補強構造10、100が得られる。
(態様13)態様1から12のいずれかにおいて、鋼管111と開口21との間に配置される鋼材のスペーサー19をさらに備える。
スペーサー19を用いることにより、開口21とほぼ同軸となるように鋼管111を設置することが可能であり、施工が容易である。また、スペーサー19に鋼材を用いる為、圧縮力を鉄筋コンクリート梁20から鋼管111に確実に伝達させることが可能となる。
(態様14)態様1から13のいずれかにおいて、部材11A、11Bは互いに接続される。
上記のように部材11A、11Bが接続されることにより、筒状部を構成する鋼管111が一体化する。そのため、鋼管111は圧縮力に対して効果的に抵抗することができる。
(態様15)態様1から14のいずれかは、挿入部材11を鉄筋コンクリート梁20に挿入する工程S3と、鋼管111の外周面と開口21の内周面との間に硬化剤13を注入する工程S7と、を備える方法によって施工される。
上記のような手順とすることにより、開口21に補強構造10、100-500を設けることが可能である。開口21の周囲における応力分布の変化を抑えることができるため、開口21の周辺の鉄筋コンクリートに局所的に大きな応力及び力が作用することを抑止できる。
10、100-500 補強構造
11 挿入部材
13 硬化剤
14 シーリング
15 鋼棒
17 ナット
19 スペーサー
20 鉄筋コンクリート梁

Claims (15)

  1. コンクリート構造物に形成された開口に挿入される筒状部を有する挿入部材と、
    前記筒状部の外周面と前記開口の内周面との間に注入される硬化剤と、を備える、
    補強構造。
  2. 前記挿入部材は、
    前記開口の一端側から挿入される第1部と、
    前記開口の他端側から挿入される第2部と、を有する、
    請求項1に記載の補強構造。
  3. 前記挿入部材は、前記筒状部から前記筒状部の径方向外方に延びる板状の板状部をさらに有する、請求項1に記載の補強構造。
  4. 前記板状部は、前記筒状部の端部に固定された、請求項3に記載の補強構造。
  5. 前記板状部は、前記外周面と前記内周面との両方に接触する、請求項3に記載の補強構造。
  6. 前記板状部は、前記筒状部の一端部に固定された第1板状部と、前記筒状部の他端部に固定された第2板状部と、を有し、
    前記開口と平行に延び、前記第1板状部と前記第2板状部とに接続される棒状の棒部材を、補強構造がさらに備える、
    請求項3に記載の補強構造。
  7. 前記開口と平行に延び、前記板状部と前記筒状部とに接続される棒状の棒部材をさらに備える、
    請求項3に記載の補強構造。
  8. 前記棒部材は、前記外周面と前記内周面との両方に接触する、請求項6または7に記載の補強構造。
  9. 前記挿入部材は、前記第1部の前記一端側の端部に固定された第1板状部と、前記第2部の前記他端側の端部に固定された第2板状部と、をさらに有し、
    前記開口と平行に延び、前記第1部と前記第2板状部とに接続された棒状の第1棒部材と、
    前記開口と平行に延び、前記第2部と前記第1板状部とに接続された棒状の第2棒部材と、を補強構造がさらに備える、
    請求項2に記載の補強構造。
  10. 前記硬化剤は、前記コンクリート構造物と前記板状部との間に位置する、
    請求項3から5のいずれか1項に記載の補強構造。
  11. 前記硬化剤はセメントまたはエポキシ樹脂を含有する、
    請求項1に記載の補強構造。
  12. 前記筒状部は鋼管である、
    請求項1に記載の補強構造。
  13. 前記筒状部と前記開口との間に配置される鋼材をさらに備える、
    請求項1に記載の補強構造。
  14. 前記第1部と前記第2部とは互いに接続される、
    請求項2に記載の補強構造。
  15. コンクリート構造物に形成された開口に筒状部を有する挿入部材を挿入する工程と、
    前記筒状部の外周面と前記開口の内周面との間に硬化剤を注入する工程と、を含む、
    コンクリート構造物の補強方法。
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