JP2024077256A - 水生生物の蝟集材及び水生生物の蝟集方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境に対して負荷を与えることなく、鉄イオンを高濃度でかつ長期間環境中に供給して、ナマコやアワビといった水生生物を効率良く蝟集・育成できる蝟集材を提供する。【解決手段】蝟集材1は、水中に設置され、水生生物を蝟集するものであり、複数の炭素鉄複合体10と、溶出促進材20と、これらを内部に保持する収容体30と、を備えている。炭素鉄複合体10と溶出促進材20との重量配合比(炭素鉄複合体:溶出促進材)は4:1~1:4の割合であり、3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーによる摩耗率の測定において、炭素鉄複合体10の摩耗率が10%以下であり、かつ、溶出促進材20の摩耗率が15%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、岩礁などに付着した珪藻類を餌とするナマコやアワビなどの水生生物の蝟集材及び、該蝟集材を用いた水生生物の蝟集方法に関するものである。
ナマコやアワビなどといった水生生物は、特に中国での需要の高まりを受けて近年は我が国の重要な水産輸出物となっている。ところが、需要の急激な拡大によって資源量の減少が各地で報告されるなど、資源の枯渇を招きかねない状況となっている。そのため、資源量の回復と持続的な利用を図るため、種苗放流とその育成の場となる人工的な礁の設置が行われている。
また、鉄イオンを溶出させることで水産資源の育成と増加を狙って、鉄を主成分とする物質と炭素材料との混合物をセメントで所望の形状に成形固化した水質浄化及び水産資源育成用の固形物(特許文献1)や、鉄鋼スラグと、アンモニア化成する窒素化合物を含有する物質とからなる海域用施肥材料(特許文献2)を海水中に設置・浸漬することも行われている。
また、特許文献3では、閉鎖性海域の底質から発生する硫化水素を抑制する鉄イオン溶出体及び鉄イオン供給装置が開示されている。しかしながら、該文献の鉄イオン溶出体は水面または水中に浮かべられたり、吊り下げられて使用されるものであり、鉄イオン溶出体から発生した鉄イオンを水酸化鉄として海底に沈降・散布することで底質からの硫化水素の発生をトラップするものであって、水生生物の蝟集や育成を目的とするものではない。
特開2011-50934号公報 特許4616087号公報 特開2022-70839号公報
特許文献1に記載の水質浄化及び水産資源育成用の固形物は、鉄を主成分とする物質と炭素材料の混合物にセメントを投入して練り混ぜているため、鉄と炭素材料との接触が不十分であり、鉄イオンの放出効率や放出量、持続性などに問題がある。
また、食用の水産資源の育成を目的とする場合は、環境汚染や生物濃縮を考慮すると、有害な重金属類(ホウ素、フッ素、6価クロム、セレンなど)を含まないことも重要である。
従って、本発明の目的は、環境に対して負荷を与えることなく、鉄イオンを高濃度でかつ長期間環境中に供給して、ナマコやアワビといった水生生物を効率良く蝟集・育成できる蝟集材と、これら水生生物の蝟集方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、鉄イオンを持続的に供給可能な炭素鉄複合体と溶出促進材とを所定の配合比率で網目状の柔軟性を有する収容体に収容した蝟集材によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決した。
すなわち、本発明の水生生物の蝟集材は、水中に設置されるものであって、
外接円の直径の平均値が20mm~100mmの範囲内の粒状または塊状の炭素鉄複合体と、
前記炭素鉄複合体に接触した状態で配置される電気伝導性炭素材料からなる溶出促進材と、
前記炭素鉄複合体及び前記溶出促進材を収容する網目状の柔軟性を有する収容体と、
を備えている。そして、本発明の水生生物の蝟集材は、前記炭素鉄複合体と前記溶出促進材との重量配合比(炭素鉄複合体:溶出促進材)が4:1~1:4の割合であり、
3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーによる摩耗率の測定において、前記炭素鉄複合体の摩耗率が10%以下であり、かつ、前記溶出促進材の摩耗率が15%以下である。
本発明の水生生物の蝟集材において、前記炭素鉄複合体は、以下に示す測定方法;
(a)炭素鉄複合体を1か月間または6か月間、海中に浸漬する;
(b)海中から取り出した炭素鉄複合体1個(15±2g/個)を、該炭素鉄複合体と同体積の炭素繊維フェルトの上に載せた状態でポリエチレン製の網袋に入れ、1Lの海水を入れた広口ガラス瓶において炭素鉄複合体が水面から5cmの位置となるように浸漬し、そのまま1週間室温にて静置する;
(c)1週間後、炭素鉄複合体を取り出したのち、浸漬海水に10%硝酸を溶解して海水中に溶出した全鉄量を鉄イオン溶出量として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析を用いて測定し、炭素鉄複合体1個が1週間の浸漬中に溶出した鉄イオン溶出量に基づき1日当たりの溶出量を算出する;
により鉄イオン放出能を評価したとき、次の条件(1)及び(2);
(1)海中浸漬後1か月後に測定される鉄イオン溶出量が2ppm/日以上である;
(2)海中浸漬後6か月後に測定される鉄イオン溶出量が0.2ppm/日以上である;
を満たすものであってもよい。
本発明の水生生物の蝟集材は、前記炭素鉄複合体が、鉄粒子と炭素質物とを含む焼結物であり、鉄粒子と炭素質物との重量比(鉄粒子:炭素質物)が20:80~90:10であってもよい。
本発明の水生生物の蝟集方法は、上記いずれかの水生生物の蝟集材を人工または天然の岩礁の近傍の海底に設置することにより、周囲の海中に鉄イオンを供給し、水生生物の餌となる珪藻類の発生と周囲の岩礁への付着を促進させることによって水生生物を蝟集させる方法である。
本発明の水生生物の蝟集材は、鉄と炭素を主成分とするため、重金属などの有害物質の溶出等の環境に与える負荷がなく、水生生物へのこれらの蓄積も起こらない。また、セメントのようなバインダーを使用していないにもかかわらず、高強度であるために長期間海中に浸漬されても波浪などの揺動でも破壊され難い上、鉄と炭素が直接結着しているために高濃度の鉄イオンを長期間、効率よく溶出することができる。さらには、漁礁や岩礁の近辺に配置するという簡便な方法で、半年以上の期間にわたって鉄イオン溶出が可能であり、設置や撤去、メンテナンスなどの労力も軽減できる。従って、本発明によれば、水産資源の増殖と持続可能な利用を図ることが可能となる。
本発明の一実施の形態にかかる蝟集材の模式図である。 本発明の蝟集材に使用される炭素鉄複合体の模式図である。 本発明の蝟集材に使用される別の形態の炭素鉄複合体の模式図である。
以下、適宜、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。各図における大きさや部材の比率等は、図示の便宜上、実際の大きさや比率等とは異なっており、図面によって本発明が制限されるものではない。
[蝟集材]
図1は、本発明の一実施の形態に係る蝟集材を模式的に説明する図面である。蝟集材1は、水中に設置され、水生生物を蝟集するものであり、複数の炭素鉄複合体10と、溶出促進材20と、これらの炭素鉄複合体10及び溶出促進材20を内部に保持する収容体30と、を備えている。本実施の形態の蝟集材1は、複数の粒状の炭素鉄複合体10が溶出促進材20とともに、合成繊維製の網袋である収容体30の内部に収容されている。
以下、蝟集材1を構成する炭素鉄複合体10、溶出促進材20、収容体30について、この順に説明する。
[炭素鉄複合体]
本実施の形態の蝟集材1に使用される炭素鉄複合体10は、炭素材と金属鉄とを直接もしくはバインダー(結合剤)を使用して複合化させたものである。炭素鉄複合体10は、炭素と鉄の電位差を利用した局部電池効果によって、水中に浸漬することで鉄イオンを供給することが可能な材料である。
炭素鉄複合体10は、下記の(測定方法)により測定される(1)および(2)の性能の鉄イオン放出能を有することを特徴とする。
(1)海中浸漬後1か月後に測定される鉄イオン溶出量が2ppm/日以上
(2)海中浸漬後6か月後に測定される鉄イオン溶出量が0.2ppm/日以上
(測定方法)
所定の期間(1か月間または6か月間)、海中に浸漬された炭素鉄複合体10の1個(15±2g/個)を炭素鉄複合体10とほぼ同程度の見かけ体積のサイジング剤を除去した炭素繊維織物の上に載せる形となるようにポリエチレン製の網袋に入れ、1Lの海水を入れた広口ガラス瓶において炭素鉄複合体10が水面から5cmの位置となるように浸漬し、そのまま1週間室温にて静置する。1週間後、炭素鉄複合体10を取り出したのち、浸漬海水に10%硝酸を溶解して海水中に溶出した全鉄量を鉄イオン溶出量としてICPを用いて測定し、炭素鉄複合体10の1個が1週間の浸漬中に溶出した鉄イオン溶出量に基づき1日当たりの溶出量を算出する。
海水浸漬後1か月後に測定される鉄イオン溶出量が2ppm/日未満であると、設置初期における環境中への鉄イオン供給量が不十分となり、付着藻類の発生が不十分となる。また、海水浸漬後6か月後に測定される鉄イオン溶出量が0.2ppm/日未満であると、鉄イオンの供給が小さくなりすぎて発生した付着藻類の維持と増殖が不十分となり、蝟集された水生生物によって付着藻類が食べつくされてしまう恐れがある。
なお、炭素鉄複合体10からの鉄イオン溶出量については、さらに好ましくは、海水浸漬後12か月後に測定される鉄イオン溶出量が0.1ppm/日以上である。
炭素鉄複合体10の鉄イオン溶出量は、鉄粒子と炭素質物の配合量のほか、溶出促進材20を併用することで制御が可能であるが、基本性能として、底面の内直径が55mmで容量220mlの丸型ねじ口瓶に未使用の炭素鉄複合体10のみを1個収納し、150mlの5重量%濃度の塩水を注ぎ入れ、室温にて5日間浸漬した際の一日あたりの鉄イオンの平均溶出量が10ppm以上であることが好ましく、より好ましくは15ppm以上、さらに、20ppm以上であることが望ましい。
さらに、炭素鉄複合体10は、不活性雰囲気中での熱重量分析における室温~500℃までの温度における炭素鉄複合体10の重量減少率が3%以下であることが好ましい。室温から500℃までの重量減少率が3%以下であるということは、有機バインダーおよびコークス粉が完全に炭素化していることを示している。そのため、水中に設置したときに炭素鉄複合体10が崩壊しにくく、かつ環境に有害な有機化合物が炭素鉄複合体10から溶出することが無いため、新たな環境負荷を生じることもない。
炭素鉄複合体10の形状は、表面積が大きいほうが鉄イオンの発生量を多くすることができるので、粒状もしくは塊状とされる。
炭素鉄複合体10の大きさについては、特に限定されるものではないが、体積としておおよそ5cm~50cmの範囲内であることがよい。また、炭素鉄複合体10の外接円の直径の平均値が20mm~100mmの範囲内、好ましくは20~60mmの範囲内であることがよい。ここで、「外接円」とは、平面視で炭素鉄複合体10のすべての頂点(角や突出部位)を通る仮想の円であり、外接円が複数存在するときには、大きさが最大のものを意味する。なお、炭素鉄複合体10が球状や回転楕円状である場合は、平面視において最大となる径を「外接円の直径」とする。外接円の直径の平均値が20mm未満であると、細かすぎるので溶出した鉄イオンに由来する水酸化鉄のフロックや砂などにより固着しやすくなり、100mmを超えると焼結に時間を要するほか、強度が低下しやすくなるために使用中に崩壊する恐れがある。
また、炭素鉄複合体10は、水中に半年以上浸漬されても自己崩壊せず、破壊強度が100N以上であって、浸漬6か月後の破壊硬度が浸漬前の50%以上であることが好ましく、75%以上を維持していることがより好ましい。特に、3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーを用いた摩耗率の測定において、炭素鉄複合体10の摩耗率は10%以下であることが必須であり、摩耗率は好ましくは8%以下、より好ましくは7%以下、最も好ましくは6%以下である。炭素鉄複合体10のロータップシェーカーを用いた摩耗率の測定において、摩耗率が10%より大きいと、波浪や潮流による揺動によって炭素鉄複合体10どうしの接触や、石、岩、漂流物などとの衝突により摩耗もしくは破壊され、鉄と炭素が分離することにより局部電池の効果が消失して鉄イオンの溶出が少なくなってしまうおそれがあるほか、収容体30から流失してしまう恐れがある。
なお、摩耗率とは、ロータップシェーカーによって与えられる上下左右方向への強力な振とうによる材料同士の衝突やメッシュとの摩擦によって生じた粉砕粉の重量を初期重量に対する百分率で表したものであり、この数値が高いものほど粉砕又は摩耗しやすい材料であることを表す。実際の海中では波浪や潮流によって炭素鉄複合体10が揺動し、炭素鉄複合体10どうしが接触したり、石や砂などの衝突による摩耗や崩壊が起こることから、加圧して圧砕する破壊硬度よりも適正な材料評価が可能である。
炭素鉄複合体10としては、3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーによる摩耗率を満たすのであれば特に制限はないが、例えば、炭素繊維を鉄材に締結したものや、鉄粉と木炭などの炭素質物をセメントや粘土などで造粒したものなどのような従来公知のものを使用することができる。これらの中でも、鉄と炭素を炭素前駆体により造粒し焼結することによって作製された炭素鉄複合体10が好ましい。焼結により作製される炭素鉄複合体10は、例えば下記(i)、(ii)が具体例として挙げられる。
(i)鉄粉と炭素前駆体とを造粒焼結したもの。
(ii)ケイ酸カルシウムを主成分とする核材の表面に、鉄粉を、炭素前駆体を用いて焼結固定したもの。
以下、上記(i)に属するものを炭素鉄複合体10A、上記(ii)に属するものを炭素鉄複合体10B、両者を区別しない場合を炭素鉄複合体10と表記する。これらの炭素鉄複合体10は、長期間安定的に鉄イオンを連続的に放出することができるほか、焼結後は造粒に使用した炭素前駆体が硬質な炭素となるために造粒物の強度が高く、かつ環境負荷を与える重金属や有機化合物のような物質の溶出も無いために最も好ましいものである。
図2は、炭素鉄複合体10Aの好ましい例の外観構成を模式的に示す図である。図2に示すように、炭素鉄複合体10Aは、複数の鉄粒子11と炭素質物13とを含有する多孔質な焼結体である。炭素鉄複合体10Aにおいて、複数の鉄粒子11は、炭素質物13によって固定化されている。炭素質物13は、鉄粒子11を担持する構造体として機能するとともに、鉄粒子11との接触によって局部電池を形成する。炭素鉄複合体10Aは、所定の見かけ比重と開気孔率を有する多孔質体であり、複数の細孔15が形成されている。炭素質物13は、コークス等の炭素質原料由来部分と、有機バインダー等の有機物に由来する接着部分とが区別できる状態で存在していてもよいし、あるいは、両者が互いに区別できない状態で実質的に一体となって炭素質物13を形成していてもよい。
炭素鉄複合体10Aにおける鉄粒子11と炭素質物13との重量比(鉄粒子11:炭素質物13)は、水中での2価鉄イオン溶出の持続性に応じて調整され得るが、例えば、20:80~90:10であり、好ましくは30:70~80:20、より好ましくは40:60~70:30である。鉄粒子11と炭素質物13の合計量に対する鉄粒子11の重量比が20重量%未満であると炭素質物13が多すぎて、鉄粒子11と水との接触面積が小さく、2価鉄イオンの供給能力が低くなるとともに持続性も悪くなる。一方、鉄粒子11と炭素質物13の合計量に対する鉄粒子11の重量比が90重量%を超えると、局部電池が形成され十分な鉄イオン供給能力が備わっているものの、炭素分が少ない為に一体化物として脆くなり、表面から鉄粒子11が欠落したり、炭素鉄複合体10Aの崩壊が発生しやすくなる。
炭素鉄複合体10Aは、1.2~3.5の見かけ比重(嵩密度)と20~60%の開気孔率を有する多孔質な焼結体であることが好ましい。ここで、見かけ比重は、1.3~3.5であるとより好ましい。また、開気孔率は30~50%であるとより好ましい。開気孔率が20%未満であると2価鉄イオンの溶出量が少なくなり、60%を超えると、材料の強度が低下して崩壊しやすくなるため好ましくない。
炭素鉄複合体10Aは、0価の金属鉄が炭素と接触することによる局部電池の形成により、水中へ2価鉄イオンを溶出する。このため、鉄粒子11としては、鉄原料の段階で酸化鉄であっても、焼成後の最終製品で金属鉄になっていれば良いが、好ましくは鉄(Fe)を主成分として炭素(C)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)の少なくとも一種以上が0.5重量%以上含まれている鉄鋼材料を原料とすることが良い。なお、このような鉄粒子11として、鋳鉄や炭素鋼、ステンレス鋼等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
炭素鉄複合体10Aを構成する鉄粒子11は、海水中において焼結している炭素との局部電池効果によって2価鉄イオンを水中に放出するため、徐々に小さくなる。従って使用する鉄粒子11の粒度としては、JIS規格で200~5メッシュであることが好ましい。なお、JIS規格ではメッシュの数値が小さくなるほど粒度は大きくなるため、「5メッシュ以下」というときは、例えば「4メッシュ」は含まないことを意味する。粒度が200メッシュ未満であると、あまりにも小さいため、水との接触期間が短くなるとともに、製造時に発火、粉塵爆発などのおそれがある。また、5メッシュを超えると、大きすぎるため、混合、混練、造粒が難しくなる。鉄粒子11の形状は、例えば球形などの粒状であればよく、不定形の塊状であってもよい。なお、図2では、説明の便宜上、鉄粒子11を平面視が正6角形の多面体形状に描いているが、これに限るものではない。
炭素鉄複合体10Aを構成する炭素質物13は、鉄と局部電池を形成する為に必要であり、鉄との接触が非常に重要である。局部電池を形成させるための炭素質物13の原料(炭素質原料)としては、例えば、コークス、木炭、石炭粉、黒鉛のほか、コールタールピッチや、有機化合物や高分子材料の炭化物等が使用可能である。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することもできる。炭素質原料の形状は問われないが、焼結後に鉄粒子11との接触箇所を多くして局部電池機能を発現しやすい粉粒状、塊状などが好ましく、不定形な外観形状であってもよい。鉄原料と配合する炭素質原料の50重量%以上は、高温で溶融して流動性を示さない固体炭素質材料であることが好ましい。そのような固体炭素質材料として、例えば黒鉛、コークス粉などを挙げることができ、好ましくは高炉コークス粉またはピッチコークス粉であり、特に、450℃以上の温度履歴があり、かつ導電性を有するピッチコークス粉であることがより好ましい。
450℃以上の温度履歴があるピッチコークス粉は、コールタールピッチや高分子材料のように高温で溶融して流動することが無いため、造粒した形状を保ちやすく、かつ多孔質な炭素鉄複合体10Aを得ることが容易である。コークス粉に代表される炭素質原料の粒度は、焼結後に鉄粒子11との接触箇所を多くして局部電池機能を効率化させるため、及び、造粒性を向上させる為に、例えばJIS規格で300~5メッシュがよい。粒度が5メッシュよりも大きくなると、鉄粒子11と局部電池を形成するための接触点数が減り、溶出効率が低下する。一方、粒度が300メッシュよりも小さくなると嵩密度が小さくなりすぎ、混合性、造粒性が悪化するばかりか、発火、粉塵爆発などのおそれがある。
なお、コークス粉は、石油系または石炭系重質油から得られるコークスのいずれも使用することができる。これらの中でも、石炭系重質油から得られるコークスは、メソフェースリッチでニードルコークスになりやすいため、導電性が高く、結果的に局部電池としての電流が流れやすく、鉄イオンを発生しやすいので好ましい。
また、コークス粉として、使用済みの炭素鉄複合体10Aを粉砕して再利用することもできる。このとき、炭素鉄複合体10Aの内部にまで海水が浸入していることから、予め真水に浸漬するなどして洗浄されていることが好ましい。
図2に例示する炭素鉄複合体10Aは、有機物ではない導電性を有する炭素と、鉄との焼結体であるが、その製造過程において高温で炭素化する有機バインダーを使用することが好ましい。有機バインダーを用いることによって、粉粒状の原料の凝集を促進させて粒状化速度を上げ、収率を向上させることができる。また、有機バインダーが焼結時に炭素化することにより、炭素鉄複合体10Aの物性(強度、表面状態、耐崩壊性など)を改善し、鉄粒子11と炭素質物13との接着を強固なものとすることができる。そのような観点から、有機バインダーとしては、固定炭素分を20重量%以上有しており、芳香環を多く含有したピッチやフェノール樹脂、リグニン、またはフェノール成分を主成分とするリグニンスルホン酸塩などが好ましく、これらの中でも、固定炭素及び結着力に優れたコールタールピッチが最も好ましい。
コールタールピッチは、不活性または還元雰囲気における500℃以上の焼成により、固定炭素以外の水素、酸素、窒素、硫黄分等が分解、揮発して、焼成物の実質95%以上が炭素となる。また、コールタールピッチは、焼成時に、水素、酸素、窒素、硫黄などが放出されることから空隙を形成し、水と鉄との接触面積を多くし、効率的な鉄イオン発生に寄与する。さらに、コールタールピッチは、導電性を有する強固な炭化物になるため、鉄粒子11と炭素質物13とを固定化するよいバインダーとなる。
なお、コールタールピッチの中でも固定炭素量が50%以上あるものが焼成時の形状維持の面からも好ましく、このようなコールタールピッチとしては、例えば、株式会社シーケム製のBPやIP(いずれも製品名)が例示される。
有機バインダーは、鉄原料と炭素質原料の混合物100重量部に対して、例えば5~20重量部の範囲内で配合することがよい。有機バインダーが5重量部未満ではバインダーとしての効果が十分に得られず、20重量部を超えると焼成時に有機バインダーが溶融することにより、所望の形状や好適な見かけ比重、開気孔率が得られなくなる。なお、鉄原料とコールタールピッチなどの有機バインダーのみで複合物を形成させた場合、焼成時に有機バインダーが溶融して、複合物の形状が維持できない。
コールタールピッチに代表される有機バインダーは、鉄原料及び炭素質原料に対して均一に混合させるために、粉粒体がよい。この粉粒体の粒度としては、例えば200~32メッシュがよい。有機バインダーの粒度が小さすぎると見かけ比重が小さくなりすぎ、混合、混練性が悪化し、大きすぎると混合、加熱溶融及び造粒品内部が不均一になる可能性がある。
また、コールタールピッチは、例えば30~150℃に軟化点があるものが好ましい。このような軟化点を持つコールタールピッチの使用は、加熱しながら混合物を成型(造粒)するブリケットマシンや溶融造粒などの乾式造粒などの分子間力による造粒方法には非常に都合がよい。それらによる造粒後、それをそのまま焼成すれば良いので、効率良く炭素鉄複合体10Aを製造することが可能である。
また、有機バインダーには、コールタールピッチやフェノール樹脂などに加えて、造粒性を向上させるための造粒助剤を添加してもよい。造粒助剤は、焼結時に炭素質物13となるものであれば特に限定されない。造粒助剤の例として、例えば、焼酎滓、有機汚泥、ゼラチン、デンプン糊、廃糖蜜、リグニンスルホン酸塩、コンニャク飛粉、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、デキストリン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミドなどが好適である。造粒助剤を使用する場合、有機バインダーと造粒助剤の重量配合比(有機バインダー:造粒助剤)は、例えば100:0~30:70とすることが好ましい。このような範囲内となるように造粒助剤の配合比を調整することによって、焼結時の見かけ比重や開気孔率、破壊硬度等に悪影響を及ぼすことなく、所望の形状の炭素鉄複合体10Aを容易に製造することができる。
炭素鉄複合体10Aは、破壊硬度、見かけ比重や開気孔率などの物性値や局部電池効果による2価鉄イオンの溶出を妨げない範囲において、鉄と炭素以外に、例えば、スラグ材料のほか、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム等の元素を含有する鉱物系の無機物(例えばケイ酸カルシウム)等をさらに含んでいても構わない。なお、鉱物系の無機物等の配合量の目安としては鉄粒子11と炭素質物13の合計重量の20%以下であることが望ましい。
炭素鉄複合体10Aは、鉄原料と炭素質原料の混合物に有機バインダーを配合して、必要に応じて所望の形状に造粒したのち、不活性または還元雰囲気において500℃以上の温度で焼結することによって製造することができる。
鉄原料や炭素質原料、有機バインダーの配合順序は、特に限定されず、鉄原料と炭素質原料の混合物をまず作成してから有機バインダーを配合してもよいし、すべての原料を一度に配合してもよい。他の添加物を配合する場合もまた同様である。配合方法については、各種ブレンダーやミキサー、ニーダーなど一般的な混合・混練器を使用することができる。
各種原料が配合された混合物は、必要に応じて、粒状または塊状となるように造粒が行われる。造粒形状については、特に限定されず、例えば、球状、回転楕円状、円柱状、豆炭状、破砕形状、その他不定形状等とすることができる。これらの中でも、強度や海水等との接触面積の大きさの観点から、球状、回転楕円状、豆炭状が好ましい。なお、造粒は人手にて行うことも可能であるが、作業性や安全性、形状制御などの面からは、ペレタイザやブリケットマシン等の造粒機の使用が好ましい。
造粒された原料混合物は、水や有機溶剤を造粒時に使用した場合は60℃以上で乾燥した後、500℃以上の不活性又は還元雰囲気下において焼結する。焼結には、例えば、リードハンマー炉、トップチャージ炉、シャトル炉、トンネル炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン、マイクロウェーブ等の設備を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、仮焼処理は、連続式又はバッチ式のどちらでもよい。焼結温度は700℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることがさらに好ましく、1000℃以上であることが最も好ましい。500℃以上の不活性または還元雰囲気下で焼結を行うことにより、有機バインダーを確実に炭化させるとともに、鉄原料中に含まれる酸化鉄の還元も行うことができる。焼成によって得られた炭素鉄複合体10Aは、速やかな2価鉄イオンの溶出と高い破壊硬度を発現する環境負荷のない鉄イオン源として利用できる。なお、焼成は複数回行ってもよく、一度焼結した焼結材を鉄やマンガンなどの化合物の水溶液に浸漬したのち、再度焼成を行うこともできる。
焼結工程を経た炭素鉄複合体10Aはその後、不活性または還元雰囲気下のまま徐冷、もしくは徐冷の後、大気雰囲気下で取り扱いが可能な温度まで放冷されたのち、収容体30の内部空間に収納され、蝟集材1として使用に供される。
図3は、上記(ii)として例示した炭素鉄複合体10Bの構成を模式的に示す断面図である。図3に示すように、炭素鉄複合体10Bは、複数の鉄粒子11がケイ酸カルシウムを主成分とする核材17の表面に固着された構造を有する。鉄粒子11は、有機バインダーに由来する炭素質物13よって核材17に固定化されている。有機バインダーに由来する炭素質物13は、鉄粒子11を核材17に担持させるための結着材として機能するとともに、鉄粒子11との接触によって局部電池を形成しているが、鉄粒子11の少なくとも表面の一部が有機バインダー由来の炭素質物13から露出している。
炭素鉄複合体10Bは、核材17に固定された鉄粒子11が、炭素と接触して局部電池を形成することにより、水中へ2価鉄イオンを溶出する。このため、焼成後の最終製品では鉄粒子11は金属鉄となっていることが望ましい。鉄粒子11となる鉄原料としては、炭素鉄複合体10Aと同様のものを用いることができる。
炭素鉄複合体10Bを構成する鉄粒子11は、水中において、接触している炭素との局部電池効果によって2価鉄イオンを水中に放出するため、徐々に小さくなる。従って使用する鉄粒子11の粒度としては、例えば、JIS規格で7メッシュ以下であることが好ましく、JIS規格で200~7メッシュであることがより好ましい。粒度がJIS規格で7メッシュを超えて大きすぎると混合や核材17への付着が難しくなる。鉄粒子11の形状は、例えば球形などの粒状であればよく、不定形の塊状であってもよい。
炭素鉄複合体10Bにおいて使用される核材17は、ケイ酸カルシウムが50wt%以上含むものであれば特に限定されないが、塊状のケイ酸カルシウムやスラグ材料が用いられる。スラグ材料はリン、マンガンの他、珪藻の増殖に必要なケイ素を含有し、上記(i)の形態の炭素鉄複合体10Aよりも鉄イオンの溶出量が小さいものの緩効性の材料であるため、核材17として用いることで炭素鉄複合体10Bによる水生生物の蝟集において持続性を持たせられる。
スラグ材料としては高炉スラグ、製鋼スラグといった鉄鋼スラグが好ましく、高炉スラグとしては、例えば高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグなどを利用できる。製鋼スラグとしては、例えば転炉スラグ、予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグなどを例示できる。
なお、スラグの炭酸化処理の有無は本発明においては特に問題とはならない。
核材17の形状は、特に限定されるものではなく、不定形状であっても構わないが、表面積の大きい形状が好ましい。また、例えば球形、多面体状、板状、ブロック状などの任意の形状のものを核材17として使用することによって、これらの形状をなす炭素鉄複合体10Bが得られる。つまり、核材17を任意の形状に成形しておくことによって、炭素鉄複合体10Bを所望の形状にしてもよい。
炭素鉄複合体10Bは、核材17の表面への鉄粒子11を固着させるため、高温で炭素化する有機バインダーを使用する。有機バインダーとしては、タール、ピッチ、天然高分子及び有機高分子より選ばれる1種以上であることが好ましい。有機バインダーを用いることによって、焼成によって生成する炭素質物13が、核材17と鉄粒子11をより強固に固着させるだけでなく、炭素鉄複合体10Bの強度などの物性を改善できる。さらには、鉄粒子11と炭素質物13の間でも局部電池を形成することによって、より安定的、かつ高濃度な鉄イオンの溶出を促進することができる。そのような観点から、有機バインダーとしては、固定炭素分を20重量%以上有しており、芳香環を多く含有したピッチやフェノール樹脂、リグニン、またはフェノール成分を主成分とするリグニンスルホン酸塩などが好ましく、これらの中でも、固定炭素分が豊富で、結着力に優れたコールタールピッチが最も好ましい。
コールタールピッチは、不活性または還元雰囲気における500℃以上の焼成により、固定炭素以外の水素、酸素、窒素、硫黄分等が分解、揮発して、焼成物の実質95重量%以上が炭素となる。また、コールタールピッチは、焼成時に、水素、酸素、窒素、硫黄などが放出されて空隙が形成されることから、水と鉄との接触面積が多くなり、局部電池による効率的な鉄イオン発生に寄与する。さらに、コールタールピッチは、導電性を有する強固な炭化物になるため、鉄粒子11を核材17に固定化するよいバインダーとなる。
なお、コールタールピッチの中でも固定炭素分が50重量%以上あるものが焼成時の形状維持の面からも好ましく、このようなコールタールピッチとしては、例えば、株式会社シーケム製のBPやIP(いずれも製品名)が例示される。
有機バインダーは、鉄粒子11となる鉄原料100重量部に対して、例えば3~40重量部の範囲内で配合することが好ましく、10~30重量部の範囲内がより好ましい。有機バインダーが3重量部未満では、バインダーとしての効果がなく、鉄粒子11が脱落してしまうので好ましくない。また、40重量部を越えると焼成時に有機バインダーが溶融して鉄粒子11が埋没してしまったりすることにより、鉄イオンを溶出させる能力が低下する場合がある。
コールタールピッチに代表される有機バインダーは、液状でも使用可能であるが、鉄粒子11となる鉄原料に対して均一に混合させるために、粉粒体がよい。この粉粒体の粒度としては、例えばJIS規格で200~32メッシュがよい。有機バインダーの粒度が小さすぎると嵩密度が小さくなりすぎ、混合、混練性が悪化し、大きすぎると混合、加熱溶融が不均一になる可能性がある。
また、コールタールピッチは、例えば30~150℃の範囲内に軟化点があるものが好ましい。このような軟化点を持つコールタールピッチの使用は、加熱しながら混合物を成型(造粒)するブリケットマシンや、溶融造粒に代表される乾式造粒などの分子間力による造粒方法には非常に都合がよい。これらの方法により、核材17に鉄粒子11を付着させた後、そのまま焼成すれば良いので、効率良く炭素鉄複合体10Bを製造することが可能である。
また、有機バインダーには、コールタールピッチやフェノール樹脂などに加えて、製造時に核材17への鉄粒子11の付着を促進させるために有機溶剤や結着助剤を添加してもよい。有機溶剤は、有機バインダーを溶解させることができるものであれば特に限定されず、例えば、トルエンなどの芳香族化合物、ピリジン、キノリンなどの複素環式芳香族化合物や、ケロシンなどの脂肪族系化合物など一般的な有機溶剤が使用できるが、その後の溶剤回収や作業環境への影響を考慮すると、有機溶剤の代わりに結着助剤を使用することがより好ましい。
結着助剤は、焼成時に分解もしくは炭化するものであればよく、例えば、ゼラチンやデンプン糊、廃糖蜜、リグニンスルホン酸塩、コンニャク飛粉、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、デキストリン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが好適である。結着助剤を使用する場合、有機バインダーと結着助剤の重量配合比(有機バインダー:結着助剤)は、例えば99:1~30:70とすることが好ましい。このような範囲内となるように結着助剤の配合比を調整することによって、鉄粒子11の付着性や鉄イオンの溶出等に悪影響を及ぼすことなく、炭素鉄複合体10Bを容易に製造することができる。
炭素鉄複合体10Bにおける鉄粒子11の付着量は、水中での2価鉄イオン溶出の持続性に応じて調整され得るが、例えば、核材17の100重量部に対して鉄粒子11が1~100重量部の範囲内であり、好ましくは5~80重量部の範囲内、より好ましくは20~50重量部の範囲内である。鉄粒子11の付着量が1重量部未満であると、核材17や有機バインダー由来の炭素質物13に直接接触する割合が極端に少なくなるので局部電池を形成しにくくなり、また、表面に露出する鉄が少なすぎる結果、2価鉄イオンの供給能力が低いとともに持続性が悪くなる。なお、鉄粒子11には、鉄以外にその他微量の元素(Ni、Mnなど)も含まれていてもよいが、上記付着量は、単純に鉄粒子11の付着量を指す。
炭素鉄複合体10Bにおける鉄と炭素の比率については、核材17に炭素材料を使用するか、非炭素材料を使用するかによって異なる範囲となる。前者(核材17に炭素材料を使用する場合)においては、核材17と有機バインダー、結着助剤等に由来する炭素の合計100重量部に対して、鉄を1~100重量部の範囲内が適している。後者(核材17に非炭素材料を使用する場合)においては、有機バインダー、結着助剤等に由来する炭素の合計100重量部に対して、鉄を10~1500重量部の範囲内が適する。鉄と炭素の比率が上記範囲内となるように最適化することによって、鉄と炭素による局部電池がより効果的に発現され、鉄イオンの溶出が高濃度で継続的に起こるとともに、核材17に対する鉄粒子11の強固な固着性を確保できる。
炭素鉄複合体10Bは、その見かけ比重が、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。また、核材17の見かけ比重と炭素鉄複合体10Bの見かけ比重の差が、1.2~2.0倍の範囲内にあることが好ましい。
炭素鉄複合体10Bは、その表面の鉄粒子11が核材17に直接、または有機バインダーによって間接的に固着されているため、輸送中や水中への設置時に鉄粒子11の脱落がなく、かつ散布後の持続的な鉄イオンの溶出を可能とする。
鉄粒子11の結着性は、所定量の炭素鉄複合体10Bを、ミキサーなどを用いて一定時間機械的に撹拌することによって評価することが可能である。鉄粒子11の結着性は、撹拌前の炭素鉄複合体10Bの重量aに対する撹拌後の炭素鉄複合体10Bの重量bの比率[(b/a)×100%]として表すことができる。結着性は、95%以上あることが好ましく、97%以上であることがより好ましい。鉄粒子11の結着性が95%未満であると鉄粒子11の脱落が多くなる。
炭素鉄複合体10Bは、その表面に固着された鉄粒子11の表面の少なくとも一部が有機バインダー由来の炭素質物13から露出した状態となっていることが必須である。走査型電子顕微鏡(SEM)による観察からは、鉄粒子11の炭素質物13による被覆率は10~90%の範囲内が適しており、好ましくは10~70%の範囲内である。被覆率が10%未満であると鉄と炭素の接触が少ないために鉄イオンの溶出量が低下するだけでなく、鉄粒子11が脱落しやすい状態であるので好ましくない。また、被覆率が90%を超えると、鉄粒子11の露出面積が小さすぎるために鉄イオンの溶出量が少なくなるので好ましくない。なお、被覆率は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、炭素鉄複合体10Bに付着している鉄粒子11を任意に50個選び、各鉄粒子11について、その全表面積に対する、炭素質物13で覆われている部分の面積の比率を算出し、平均したものである。
さらに、炭素鉄複合体10Bは、不活性雰囲気中での熱重量分析における100℃から500℃までの温度における重量減少率が1%以下であることが好ましい。100℃から500℃までの重量減少率が1%以下であるということは、核材17や有機バインダーなどに含まれる有機物が完全に炭素化していることを示している。そのため、水中に設置したときに鉄粒子11が脱離しにくく、かつ環境に有害な有機化合物が炭素鉄複合体10Bから溶出することが無い。
炭素鉄複合体10Bは、局部電池効果による2価鉄イオンの溶出を妨げない範囲において、鉄と炭素以外に、例えば、金属アルミニウムや、マグネシウム、カルシウム等の元素を含有する鉱物系の無機物等をさらに含んでいても構わない。
炭素鉄複合体10Bは、核材17の表面に鉄粒子11が、有機バインダー等に由来する炭素質物13で結着され、鉄粒子11の一部が表面に露出していれば、製造方法としては特に限定されるものはない。
炭素鉄複合体10Bの好ましい製造方法として、鉄粒子11となる鉄原料及び有機バインダー(さらに、必要に応じて有機溶剤や結着助剤を含んでもよい)を混合した混合物を、核材17ともに不活性または還元雰囲気において500℃以上の温度で焼成する方法を挙げることができる。焼成前には、核材17を予備加熱して表面に混合物が付着させやすくしておいてもよいし、有機溶剤や結着助剤を使用して核材17の表面に混合物が付着しやすくしておいてもよい。なお、鉄原料や有機バインダー等の原料の配合順序は、特に限定されず、鉄原料と結着助剤などとの混合物をまず作成してから有機バインダーを配合してもよいし、すべての原料を一度に配合してもよい。他の添加物を配合する場合もまた同様である。焼成には、例えば、リードハンマー炉、トップチャージ炉、シャトル炉、トンネル炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルンあるいはマイクロウェーブ等の設備を用いることができるが、特にこれらに限定されるものではなく、連続式又はバッチ式のどちらであってもよい。焼結温度は700℃以上であることがより好ましく、900℃以上であることがさらに好ましく、1000℃以上であることが最も好ましい。500℃以上の不活性または還元雰囲気下で焼結を行うことにより、有機バインダーを確実に炭化させるとともに、鉄原料中に含まれる酸化鉄の還元も行うことができる。
焼結工程を経た炭素鉄複合体10Bはその後、不活性または還元雰囲気下のまま徐冷、もしくは徐冷の後、大気雰囲気下で取り扱いが可能な温度まで放冷されたのち、収容体30の内部空間に収納され、蝟集材1として使用に供される。
[溶出促進材]
蝟集材1を水中に設置すると、炭素鉄複合体10における炭素と鉄および水との接触界面において炭素と鉄の電位差から局部電池が形成され、2価の鉄イオン(Fe2+)が溶出する。このとき、鉄の溶出(イオン化)に伴い発生する電子は、炭素鉄複合体10の別の箇所において最終的に消費されるが、炭素鉄複合体10に電子が滞留すると鉄イオンの溶出を妨げることから、電子を溶出促進材20によって系外に移動させることが好ましい。溶出促進材20を用いることで、炭素鉄複合体10からの鉄の溶出量を増大できる。
また、炭素鉄複合体10のみでは、その表面の炭素上で生成する水酸基と鉄イオンの結合による水酸化鉄が炭素鉄複合体10の表面上に堆積しやすく、鉄イオン生成能力の低下につながることから、炭素鉄複合体10と溶出促進材20を適度に混合して炭素鉄複合体10表面への水酸化鉄の堆積を避けることも可能である。
溶出促進材20の材質は、電気伝導性であり、海中で腐食もしくは溶解しない炭素材料が適しており、4端子法で測定される体積抵抗値が1×10-2Ω・cm以下である電気伝導性の高い炭素材料が好ましい。また、蝟集材1が海中に設置されて揺動による破砕が懸念されることから、溶出促進剤20に用いる炭素材料は、3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーによる摩耗率が15%以下であることが必須であり、好ましくは10%以下の摩耗率である。炭素材料の摩耗率が15%を超えると、設置中に波浪や海流のよる揺動で炭素材料が崩壊または摩耗して収容体30から流出しやすくなり、溶出促進材20が失われることによる鉄イオン溶出量の激減を招くことがある。
溶出促進材20として使用し得る炭素材料としては、上記摩耗率が15%以下であれば特に限定はされないものの、備長炭などの木炭や竹炭、ハードカーボン、天然黒鉛、人工黒鉛、高炉コークス、ニードルコークスおよびこれらを用いた成形体及びその粉砕物から選択されるものであり、好ましくはハードカーボン、人工黒鉛、高炉コークス、ニードルコークス及びこれらを用いた成形体及びその粉砕物であり、最も好ましいのは高炉コークス、ニードルコークス及びこれらを用いた成形体及びその粉砕物である。
溶出促進材20は粒状もしくは塊状であれば、球体や楕円体、立方体、角柱、円柱、多面体や不定形状、破砕形等、任意の形状を自由に使用することができるが、表面積が大きいものが好ましい。また、粒度についても網目状の収容体30から容易に零れ落ちるようなことが無ければ特に問題はなく、炭素鉄複合体10よりも大きくても小さくてもよいが、外接円の直径の平均値が10~50mm程度であることが好ましい。ここで、「外接円の直径」は、炭素鉄複合体10の場合に準じて定義される。
収納体30には、炭素鉄複合体10と溶出促進剤20の他に第3成分として、スラグ材料や腐植土などを配合することができる。なかでもスラグ材料は珪藻の増殖に必要なケイ酸イオンを供給できることから第3成分として好ましく用いられるが、特に転炉系スラグや電気炉酸化スラグのように鉄分を多く含有するスラグ材料はケイ酸イオンの他に鉄イオンの供給も可能であることからより好ましく使用される。これらのスラグからの鉄イオン溶出は、炭素鉄複合体からの鉄イオンの溶出に比べると量は少ないものの持続性に優れることから、炭素鉄複合材料と併用することで着生した珪藻の成長の持続的な成長を底上げする効果が期待できる。なお、第3成分の配合量は、炭素鉄複合体10と溶出促進剤20の合計重量の20%以下であることが望ましい。
[収容体]
蝟集材1の収容体30は、その内部に炭素鉄複合体10と溶出促進材20を少なくとも1つずつ収納可能な容量を有し、その内部と外部を液体が通過可能なように網目状をなしている。収容体30は、網籠のように機械的強度が高く全体形状が固定的なものを使用することもできなくないが、固定的なものよりも、網袋のように、柔軟性を有し、波浪や潮流に追従して全体として変形したり、揺動したりする性質のものが好ましい。網袋は、網籠のように立体的なものに比べ、波浪や潮流による揺動に対して柔軟な構造であるため、破損の恐れが無く、外力によって変形する際に炭素鉄複合体10や溶出促進材20の表面が適度に擦過されることによりリフレッシュされるので好ましく使用される。
収容体30が網袋である場合の材質としては、例えば、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン、アクリル、PBO(ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール)、ポリアリレートのいずれかから選択される合成樹脂繊維製が好ましく、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ビニロンが好ましく、海水中での長期使用に際して強度低下が少なく、藻類の付着性も高いビニロン、アラミド、ポリエステルがより好ましい。
網目状の収容体30は、藻類や生成した水酸化鉄が付着した状態でもその内部と外部との水の流通を確保し、目詰まりをせずに水酸化鉄の排出を促す一方で、内部に収納した炭素鉄複合体10もしくは溶出促進材20が容易に流出しない程度の目開きや開口率を有することが好ましい。網目の目開きOPとしては、炭素鉄複合体10の外接円の直径の平均値をL10としたとき、
0.075×L10<OP<L10の関係を満たすことが好ましく、
0.15×L10<OP<L10の関係を満たすことがより好ましく、
0.2×L10<OP<0.7×L10の関係を満たすことが最も好ましい。
また、この場合、線径(網目を構成する網糸の太さ)は、強度維持と開口率とのバランスを考慮して、例えば1~3mmの範囲内とすることが好ましい。
開口率の具体的な数値は内部に収納される炭素鉄複合体10や溶出促進材20の粒度によるが、おおよそ50~75%である。また、網組織については、ラッセル網、有結節網、無結節網のほか、平織や綾織、朱子織、シュリンガー等特に制限なく使用することができる。
収容体30の内部空間に保持される炭素鉄複合体10は、鉄イオン溶出量を増大させる観点から複数個が収納されていることが好ましく、少なくとも1つの炭素鉄複合体10と接触した状態で少なくとも1つの溶出促進材20が収納されていることがより好ましい。
1つの収容体30に収納する炭素鉄複合体10と溶出促進材20の重量比(炭素鉄複合体10:溶出促進材20)は、4:1から1:4の範囲とする。重量比は鉄イオンの溶出量に応じて前記範囲内で調整され得るが、重量比が4:1を超えて炭素鉄複合体10が多いと溶出促進材20の併用効果が十分に発揮されず、重量比が1:4を超えて溶出促進材20が多いと短期間で鉄イオンが放出され過ぎてしまい、持続性に欠けることがある。
また、炭素鉄複合体10と溶出促進材20は、これらを収納した収容体30が外力によって若干変形できる程度の量で収納されていることが好ましい。硬く詰められた状態で収納されると収容体30が破損しやすくなるほか、波浪や潮流によって収容物が動くことができないため、炭素鉄複合体10から発生した水酸化鉄や、流れてきた砂等によって目詰まりがおこり、鉄イオンの溶出が止まる恐れもある。かかかる観点から、収容体30の全容積に対して、炭素鉄複合体10及び溶出促進材20の占める割合が40~80体積%の範囲内であることが好ましく、50~70体積%の範囲内であることがより好ましい。
以上の構成を有する蝟集材1は、例えば、炭素鉄複合体10と溶出促進材20を合計量として5~50kg程度収納してナマコやアワビなどの水生生物の生活圏である岩礁や漁礁、人工の育成礁の近傍の海底に少なくとも1つ以上設置することが好ましい。なお、設置場所の波や潮流が強い場合は、アンカーなどを用いて海底や礁に固定するとよい。また、蝟集材1は比較的軽量なので、例えばナマコの休眠期であったり、赤潮等の発生による現場海域の環境の悪化が懸念される場合は陸に引き上げて保管することも容易であり、再度設置する場合も特に処理を行うことなくすぐに鉄イオンを放出する。
海底に設置された蝟集材1は、炭素鉄複合体10の局部電池効果によって設置場所の周辺環境中に鉄イオンを放出する。海洋藻類にとって鉄イオンは重要な栄養元素であり、なかでも珪藻類の増殖が鉄イオン供給によって促進されるため、蝟集材1自体や近傍の岩礁や漁礁、育成礁などに付着珪藻が繁茂する。付着珪藻はナマコやアワビなどの水生生物の幼生の恰好の餌であり、付着珪藻が豊富な場所に、孵化した水生生物の浮遊幼生が多く集まり、生育する。このようにして、蝟集材1の設置を通じて、水生生物の幼生を蝟集・育成し、水産資源の回復と効率的かつ持続的な利用を図ることができるのである。
以上、詳述したとおり、蝟集材1は、ナマコやアワビなどの水生生物の蝟集・育成に大いに利用できるものであるが、その利用は自然の海中での利用にとどまらず、陸上での養殖にも用いることができる。
以下、本発明の方法の実証試験のために行った検討結果を実施例として記載するが、これらは本発明の実施形態を何ら限定するものではない。
[ロータップシェーカーによる摩耗率]
1個あたり見かけ体積が5~10cmの試料10個をステンレス製の目開き3メッシュの篩(枠の径200mm、深さ45mm)に入れ、ロータップシェーカーで20分間稼働させる。初期に入れた試料10個の重さに対して、ロータップシェーカー20分間稼働で3メッシュの篩を通過した粉または崩壊物の量を測定し、その割合いを摩耗率として%で表示した。
[破壊硬度]
造粒物の崩壊する荷重(座屈する荷重)を圧壊荷重(破壊硬度)とした。荷重測定には、藤原製作所 木屋式硬度計1600-C(最大200N)を使用し、サンプルに圧縮荷重を加え、最大荷重を圧壊荷重とし、造粒物5点の平均値を採用した。
[嵩密度]
水中置換法で測定した。105℃で1昼夜乾燥させた炭素鉄複合体の乾燥重量を測定し、W1とした。乾燥させた炭素鉄複合体を純水中に浸漬し、3時間真空で脱気吸水させ、飽和吸水させた。その後、炭素鉄複合体を取り出し、3分間、平らな塩ビ板に乗せ、表面に付着した余分な水分を除去した。次に、飽和吸水させた炭素鉄複合体をポリエチレン糸に括り付け、電子天秤上に乗せた純水50ml入りのビーカーに挿入し、炭素鉄複合体がビーカーの底に触れない様にポリエチレン糸をゆっくり浸し、そのときの重量増加を炭素鉄複合体の見かけ体積Vとした。ただし、ポリエチレン糸の体積(重量増加)は、ブランクとして差し引いた。
嵩密度=乾燥重量W1/見かけ体積V
[鉄イオン溶出量(ラボスケール)]
底面の内直径が55mmで容量220mlの丸型ねじ口瓶に未使用の炭素鉄複合体のみを1個収納し、150mlの5重量%濃度の塩水を注ぎ入れ、室温にて5日間浸漬した
5日後、炭素鉄複合体10を取り出したのち、浸漬海水に10%硝酸を溶解して海水中に溶出した全鉄量を鉄イオン溶出量として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用いて測定し、炭素鉄複合体1個が5日間の浸漬中に溶出した鉄イオン溶出量を1日当たりの溶出に換算した値とした。
[鉄イオン溶出量]
1か月および6か月の間、海中に浸漬された炭素鉄複合体1個を前記炭素鉄複合体と同体積の炭素繊維織物(サカイオーベックスA32021 目付75g/m 400℃で30分間かけて、窒素下でサイジング剤除去処理を実施)の上に載せる形となるようにポリエチレン製の網袋に入れ、1Lの海水を入れた蓋付き広口ガラス瓶に水面から5cmの位置となるように浸漬し、そのまま1週間室温にて静置する。1週間後、炭素鉄複合体を取り出したのち、浸漬海水に10%硝酸を溶解して海水中に溶出した全鉄量を鉄イオン溶出量として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法を用いて測定し、炭素鉄複合体1個が1週間の浸漬中に溶出した鉄イオン溶出量を1日当たりの溶出に換算した値とする。
[安全性試験]
「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施工令第5条第一項に規定する埋立場所等に排出しようとする廃棄物に含まれる金属等の検定方法」による溶出試験方法を炭素鉄複合体10について実施した。
[炭素鉄複合体]
図2に示したものと同様の構成を有する炭素鉄複合体10Aを使用した。すなわち、鋳鉄粉(竹内工業株式会社製、28メッシュアンダー品 炭素:2~4重量%、Si:4重量%以下、Mn:0.5~1.5重量%、P:0.03重量%以下、S:0.03重量%以下)とニードルコークス粉(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、9メッシュアンダー)をバインダーピッチ(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、軟化点:90℃)とでんぷん(浅田製粉株式会社製、ライ麦粉α化品)を用いてブリケットマシンにて造粒(ポケット:28×26.5×深さ6.5mm)し、非酸化性雰囲気下800℃の温度で焼結して炭素鉄複合体10を作製した。表1に、使用した炭素鉄複合体10の詳細を示す。炭素鉄複合体10の1個あたりの重さは15.8gであり、外接円の直径の平均値は29mm、嵩比重は2.03、水中置換法により求めた開気孔率は27%であった。
Figure 2024077256000002
[実施例1]
[ナマコの蝟集効果の確認]
収容体30としてポリエチレン繊維製の網袋(ラッセルネット 長さ80cm×幅60cm、網目の目開き6mm□、線径1~1.5mm、開口率64%(計算値)、容量30L)を用意し、内部に表1の炭素鉄複合体10を4kgと溶出促進材20(日鉄ケミカル&マテアリル製ピッチコークス、粒度(外接円の直径の平均値):15~50mm、摩耗率:2.6%)を16kg収納し、袋の口を縛って蝟集材1とした。なお、蝟集材1は床に置かれた状態から持ち上げると自重によって多少の変形が可能な状態とした。蝟集材1は、網袋の容量30Lに対して、炭素鉄複合体10と溶出促進材20の占める体積割合が60%であった。
蝟集材1は北海道泊市沖の海中の既設のナマコ礁のうち5箇所にそれぞれ1ユニットずつ、ある年(20XX年)の3月から約12か月間設置し、表2に示す時期に蝟集材1を設置していない同数のナマコ礁を対象区としてナマコ礁および蝟集材1自体に着生していた稚ナマコの個体数を計測した。なお、本実験は関係者以外非公開で実施した。評価結果を表2に示す。
Figure 2024077256000003
設置区で確認されたナマコは平均重量や平均体長が対象区よりも小さいものの、対象区よりも個体数が多い結果となった。ナマコは一般的に産卵より1か月ほどで浮遊幼生から稚ナマコに成長して潮干域の岩礁帯等に付着し、成長するが、このとき餌となる付着珪藻が多いところを好むとされる。
また、ナマコは稚ナマコの段階で成体ほど長い距離を移動しないと考えられており、設置区で中~小型の個体(体長100mm未満)が対象区よりも明らかに多く確認されたことは、設置区のナマコ礁もしくは蝟集材1に付着した稚ナマコが、蝟集材1の設置によって発生した珪藻類を食べて成長したものと考えられる。本発明の蝟集材1の効果が本結果から確認された。
また、蝟集材1は、評価終了時でも収容体30の破損や消失がなく、健全な状態であったほか、収容体30の固着も発生しなかった。
[比較例1]
収容体30として麻袋(長さ70cm×幅50cm、容量20L)を用い、内部に表1の炭素鉄複合体10を16kg収納し、袋の口を縛って比較蝟集材とした。なお、比較蝟集材は床に置かれた状態から持ち上げると自重によって多少の変形が可能な状態であった。
比較蝟集材は、北海道泊市沖の海中の既設のナマコ礁のうち5箇所にそれぞれ1ユニットずつ実施例1と同じ時期に約12か月間設置して、実施例1と同様にしてナマコの蝟集効果を確認した。
しかしながら、比較蝟集材に用いた麻袋は開口部が殆どなく、また、溶出促進材20を併用していないため、炭素鉄複合体10から溶出した鉄イオンに由来する水酸化鉄が麻袋内に滞留してしまい、それにより収容物が固着して鉄イオンの発生が停止したり、麻袋が破損・消失したりするものが見られた。また、ナマコの蝟集も確認することができなかった。
[試験例]
[蝟集されたナマコの元素分析]
蝟集材1を設置した設置区から採取されたナマコが重金属類等の有害物質が含まれていないことを確かめるため、対象区から採取されたナマコとともに元素分析による評価を行った。
Figure 2024077256000004
表3に示す試験の結果、設置区および対象区において重金属類を始めとする有害物質の蓄積などは確認されなかった。
以上より、本発明の蝟集材による水生生物に対する高い蝟集性と安全性が確認された。したがって、本発明の蝟集材により、ナマコやアワビなどの有用な水産資源の保護とその持続的な利用を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
1 … 蝟集材、10、10A、10B … 炭素鉄複合体、11 … 鉄粒子、13 … 炭素質物、15 … 細孔、核材…17、20 … 溶出促進材、30…収容体

Claims (4)

  1. 水中に設置される水生生物の蝟集材であって、
    外接円の直径の平均値が20mm~100mmの範囲内の粒状または塊状の炭素鉄複合体と、
    前記炭素鉄複合体に接触した状態で配置される電気伝導性炭素材料からなる溶出促進材
    と、
    前記炭素鉄複合体及び前記溶出促進材を収容する網目状の柔軟性を有する収容体と、
    を備え、
    前記炭素鉄複合体と前記溶出促進材との重量配合比(炭素鉄複合体:溶出促進材)が4:1~1:4の割合であり、
    3メッシュの篩を取り付けたロータップシェーカーを用いた摩耗率の測定において、前記炭素鉄複合体の摩耗率が10%以下であり、かつ、前記溶出促進材の摩耗率が15%以下であることを特徴とする水生生物の蝟集材。
  2. 前記炭素鉄複合体は、以下に示す測定方法;
    (a)炭素鉄複合体を1か月間または6か月間、海中に浸漬する;
    (b)海中から取り出した炭素鉄複合体1個(15±2g/個)を、
    該炭素鉄複合体と同体積の炭素繊維織物の上に載せた状態でポリエチレン製の網袋に入れ、1Lの海水を入れた広口ガラス瓶において炭素鉄複合体が水面から5cmの位置となるように浸漬し、そのまま1週間室温にて静置する;
    (c)1週間後、炭素鉄複合体を取り出したのち、浸漬海水に10%硝酸を溶解して海水中に溶出した全鉄量を鉄イオン溶出量として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析を用いて測定し、炭素鉄複合体1個が1週間の浸漬中に溶出した鉄イオン溶出量に基づき1日当たりの溶出量を算出する;
    により鉄イオン放出能を評価したとき、次の条件(1)及び(2);
    (1)海中浸漬後1か月後に測定される鉄イオン溶出量が2ppm/日以上である;
    (2)海中浸漬後6か月後に測定される鉄イオン溶出量が0.2ppm/日以上である;
    を満たすものである請求項1に記載の水生生物の蝟集材。
  3. 前記炭素鉄複合体が、鉄粒子と炭素質物とを含む焼結物であり、鉄粒子と炭素質物との重量比(鉄粒子:炭素質物)が20:80~90:10である請求項1に記載の水生生物の蝟集材。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の水生生物の蝟集材を人工または天然の岩礁の近傍の海底に設置することにより、周囲の海中に鉄イオンを供給し、水生生物の餌となる珪藻類の発生と周囲の岩礁への付着を促進させることによって水生生物を蝟集させる、水生生物の蝟集方法。
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