JP2024071814A - 積層フィルム及び包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】レトルト食品の包装用とすることが可能であり、レトルト処理時において、白化と、強度の低下と、を抑制可能な積層フィルムの提供。【解決手段】積層フィルム1であって、積層フィルム1は、第1外層14と、第2外層13と、シーラント層11と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、第1外層14が、ポリアミド(a)及び酸化防止剤を含み、第2外層13が、ポリアミド(b)を含み、積層フィルム1の厚さT1に対する、第1外層14の厚さT14と、第2外層13の厚さT13と、の合計値の割合が、30%以上であり、積層フィルム1が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層として、その総質量に対する、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合が、3質量%以上である層を備えていない、積層フィルム1。【選択図】図1

Description

本発明は、積層フィルム及び包装体に関する。
高齢化社会におけるクオリティーオブライフ(QOL)の向上や、災害時のライフラインの確保の点から、常温下で長期間保存可能なレトルト食品が求められている。レトルト食品とは、レトルト(加圧加熱)殺菌処理された食品を意味し、レトルト殺菌処理された商品は、商業的な無菌状態にできることから、常温で流通可能である。
レトルト食品の包装用のフィルムとしては、例えば、ポリアミド樹脂組成物からなるポリアミド層Aと、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物からなるガスバリア層と、ポリアミド樹脂組成物からなるポリアミド層Bと、接着層と、シーラント層と、を含む積層フィルムであって、前記ポリアミド層A、前記ガスバリア層、前記ポリアミド層B、前記接着層及び前記シーラント層が、この順序で積層され、前記ポリアミド層Aと前記ガスバリア層が、接着層を介することなく積層された積層フィルムが開示されている(特許文献1参照)。この積層フィルムにおいては、従来のフィルムの場合とは異なり、レトルト殺菌処理時に低下した酸素バリア性の回復能が高い、とされている。
特許第6249017号公報
しかし、特許文献1で開示されている積層フィルムは、レトルト処理の条件によっては、レトルト処理時に白化し、強度が低下してしまうことがあるという問題点があった。
本発明は、レトルト食品の包装用とすることが可能であり、レトルト処理時において、白化と、強度の低下と、を抑制可能な積層フィルムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 積層フィルムであって、前記積層フィルムは、第1外層と、第2外層と、シーラント層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記第1外層が、ポリアミド(a)及び酸化防止剤を含み、前記第2外層が、ポリアミド(b)を含み、前記積層フィルムの厚さに対する、前記第1外層及び前記第2外層の合計の厚さの割合が、30%以上であり、前記積層フィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層として、その総質量に対する、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合が、3質量%以上である層を備えていない、積層フィルム。
[2] 前記シーラント層が、プロピレン系重合体、又は、融点が120℃以上のメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを含む、[1]に記載の積層フィルム。
[3] 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムと、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して、引張強度を測定したとき、前記レトルト処理の前後での前記引張強度の変化率が15%以下である、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[4] 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムと、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して、破断伸度を測定したとき、前記レトルト処理の前後での前記破断伸度の変化率が20%以下である、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[5] 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムについて、JIS K 7361-1:1997に準拠して、その前記第1外層側の外部から全光線透過率を測定したとき、前記全光線透過率が87%以上である、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[6] 積層フィルムが、レトルト食品の包装用である、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
[7] [1]又は[2]に記載の積層フィルムを用いて構成された、包装体。
[8] 前記包装体が、蓋材及び底材を備え、前記包装体が、前記蓋材及び前記底材のシールによって構成されており、前記底材が前記積層フィルムの成形体である、[7]に記載の包装体。
本発明によれば、レトルト食品の包装用とすることが可能であり、レトルト処理時において、白化と、強度の低下と、を抑制可能な積層フィルムが提供される。
本発明の一実施形態に係る積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る包装体の一例を模式的に示す断面図である。
<<積層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る積層フィルムは、第1外層と、第2外層と、シーラント層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記第1外層が、ポリアミド(a)及び酸化防止剤を含み、前記第2外層が、ポリアミド(b)を含み、前記積層フィルムの厚さに対する、前記第1外層及び前記第2外層の合計の厚さの割合が、30%以上であり、前記積層フィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層として、その総質量に対する、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合が、3質量%以上である層(本明細書においては、「EVOH含有層」と称することがある)を備えていない。
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を主成分として含むガスバリア層を備えた従来の積層フィルムは、レトルト処理の条件によっては、レトルト処理時に白化し、強度が低下してしまうことがあった。これは、積層フィルム中のガスバリア層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を主成分として含むことが原因であった。
これに対して、本実施形態の積層フィルムは、前記EVOH含有層を備えておらず、さらに、第1外層及び第2外層を備え、これらの合計の厚さが一定値以上であることにより、そのレトルト処理時において、白化と、強度の低下と、が抑制される。
<引張強度の変化率>
前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa(2.5kgf/cm)、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して測定した引張強度を、本明細書においては、「レトルト処理後引張強度」と称することがある。
一方、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して測定した引張強度を、本明細書においては、「未処理時引張強度」と称することがある。
本実施形態においては、前記レトルト処理後引張強度と前記未処理時引張強度を用いて算出される、前記レトルト処理の前後での引張強度の変化率(([未処理時引張強度]-[レトルト処理後引張強度])/[未処理時引張強度]×100)が、15%以下であることが好ましい。前記引張強度の変化率が前記上限値以下であることで、積層フィルム及び後述する包装体のレトルト処理時において、積層フィルム及び包装体の、強度の低下が、より抑制される。
本実施形態においては、このような効果がより顕著に得られる点では、前記引張強度の変化率は、13%以下であることがより好ましく、例えば、11%以下、及び9%以下のいずれかであってもよい。
前記引張強度の変化率の下限値は、0%である。前記引張強度の変化率が3%以上である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
本実施形態において、前記引張強度の変化率は、上述のいずれかの上限値と、上述のいずれかの下限値と、を任意に組み合わせて設定されるいずれかの数値範囲内であってよい。
一実施形態において、前記引張強度の変化率は、例えば、0~15%、0~13%、0~11%、及び0~9%のいずれかであってもよいし、3~15%、3~13%、3~11%、及び3~9%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記引張強度の変化率の一例である。
<未処理時引張強度>
前記未処理時引張強度は、前記引張強度の変化率を満たすことが好ましい。
前記未処理時引張強度は、40N/mm以上であることが好ましく、例えば、45N/mm以上、及び50N/mm以上のいずれかであってもよい。前記未処理時引張強度が前記下限値以上である、積層フィルム及び後述する包装体は、そのレトルト処理を行っていないときの強度が、より高い。
前記未処理時引張強度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記未処理時引張強度が100N/mm以下である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記未処理時引張強度は、例えば、40~100N/mm、45~100N/mm、及び50~100N/mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記未処理時引張強度の一例である。
前記未処理時引張強度は、前記積層フィルム自体、又は前記積層フィルムから切り出した試験片を用いて、測定できる。
<レトルト処理後引張強度>
前記レトルト処理後引張強度は、前記引張強度の変化率を満たすことが好ましい。
前記レトルト処理後引張強度は、35N/mm以上であることが好ましく、例えば、45N/mm以上、及び50N/mm以上のいずれかであってもよい。前記レトルト処理後引張強度が前記下限値以上である、積層フィルム及び後述する包装体は、そのレトルト処理後の強度が、より高い。
前記レトルト処理後引張強度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記レトルト処理後引張強度が90N/mm以下である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記レトルト処理後引張強度は、例えば、35~90N/mm、45~90N/mm、及び50~90N/mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記レトルト処理後引張強度の一例である。
前記レトルト処理後引張強度は、例えば、前記積層フィルムを用いて、水を充填した、大きさが300mm×300mmの試験用包装体を作製し、この試験用包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、試験用包装体の非シール部から切り出した試験片を用いて、測定できる。
前記試験用包装体は、例えば、2枚の前記積層フィルムを用いて、これらの周縁部同士を、開口部を残して加熱シールし、開口部から水を充填し、最後に開口部を加熱シールすることで作製できる。また、前記試験用包装体は、1枚の前記積層フィルムを用いて、これを折った後、対向する周縁部同士を、開口部を残して加熱シールし、開口部から水を充填し、最後に開口部を加熱シールすることでも作製できる。
前記引張強度の測定時には、積層フィルム(試験片)の引張方向を、積層フィルム(試験片)の樹脂の流れ方向(Machine Direction、本明細書においては「MD」と称することがある)と一致させてもよいし、積層フィルム(試験片)の樹脂の流れ方向(MD)に対して垂直な方向(Transverse Direction、本明細書においては「TD」と称することがある)と一致させてもよい。すなわち、前記引張強度の変化率を算出するときの、前記レトルト処理後引張強度と前記未処理時引張強度は、いずれも、積層フィルム(試験片)の引張方向を、積層フィルムの樹脂の流れ方向(MD)と一致させた場合の測定値であってもよいし、積層フィルムの樹脂の流れ方向(MD)に対して垂直な方向(TD)と一致させた場合の測定値であってもよい。
前記未処理時引張強度及びレトルト処理後引張強度は、いずれも、前記積層フィルムを構成する各層の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
例えば、後述する第1外層が含むポリアミド(a)の種類と含有量、並びに、第1外層が含む酸化防止剤の種類と含有量を調節することで、前記未処理時引張強度及びレトルト処理後引張強度をより容易に調節できる。
例えば、後述するシーラント層が含む樹脂成分の種類と含有量を調節することで、前記未処理時引張強度及びレトルト処理後引張強度をより容易に調節できる。
例えば、前記積層フィルムを構成するいずれかの層において、この層の総質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合([積層フィルムを構成するいずれかの層のエチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量(質量部)]/[積層フィルムを構成するいずれかの層の総質量(質量部)]×100)を、3質量%未満の範囲で少なくすることで、前記未処理時引張強度及びレトルト処理後引張強度をより容易に高くできる。前記割合は、0質量%であること、すなわち、前記積層フィルムを構成するいずれかの層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含まないことが好ましい。そして、前記積層フィルムを構成するすべての層が、前記割合を満たすことがより好ましい。
<破断伸度の変化率>
前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa(2.5kgf/cm)、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して測定した破断伸度を、本明細書においては、「レトルト処理後破断伸度」と称することがある。
一方、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して測定した破断伸度を、本明細書においては、「未処理時破断伸度」と称することがある。
本実施形態においては、前記レトルト処理後破断伸度と前記未処理時破断伸度を用いて算出される、前記レトルト処理の前後での破断伸度の変化率(([未処理時破断伸度]-[レトルト処理後破断伸度])/[未処理時破断伸度]×100)が、20%以下であることが好ましい。前記破断伸度の変化率が前記上限値以下であることで、積層フィルム及び後述する包装体のレトルト処理時において、積層フィルム及び包装体の、強度の低下が、より抑制される。
本実施形態においては、このような効果がより顕著に得られる点では、前記破断伸度の変化率は、16%以下であることがより好ましく、例えば、12%以下、及び8%以下のいずれかであってもよい。
前記破断伸度の変化率の下限値は、0%である。前記破断伸度の変化率が3%以上である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
本実施形態において、前記破断伸度の変化率は、上述のいずれかの上限値と、上述のいずれかの下限値と、を任意に組み合わせて設定されるいずれかの数値範囲内であってよい。
一実施形態において、前記破断伸度の変化率は、例えば、0~20%、0~16%、0~12%、及び0~8%のいずれかであってもよいし、3~20%、3~16%、3~12%、及び3~8%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記破断伸度の変化率の一例である。
<未処理時破断伸度>
前記未処理時破断伸度は、前記破断伸度の変化率を満たすことが好ましい。
前記未処理時破断伸度は、360%以上であることが好ましく、例えば、390%以上、及び420%以上のいずれかであってもよい。前記未処理時破断伸度が前記下限値以上である、積層フィルム及び後述する包装体は、そのレトルト処理を行っていないときの強度が、より高い。
前記未処理時破断伸度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記未処理時破断伸度が460%以下である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記未処理時破断伸度は、例えば、360~460%、390~460%、及び420~460%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記未処理時破断伸度の一例である。
前記未処理時破断伸度は、公知の方法で測定できる、すなわち、前記未処理時引張強度の測定前に、測定に供する前記積層フィルム又は試験片において、あらかじめ一対の標点を特定し、引張試験開始前におけるこれら標点間の距離L10を測定しておき、前記未処理時引張強度の測定時に、前記積層フィルム又は試験片が破断したときの、前記標点間の距離L11を測定し、これらL10及びL11を用いて、下記式:
未処理時破断伸度=(L11-L10)/L10×100
により、算出できる。
<レトルト処理後破断伸度>
前記レトルト処理後破断伸度は、前記破断伸度の変化率を満たすことが好ましい。
前記レトルト処理後破断伸度は、320%以上であることが好ましく、例えば、350%以上、及び380%以上のいずれかであってもよい。前記レトルト処理後破断伸度が前記下限値以上である、積層フィルム及び後述する包装体は、そのレトルト処理後の強度が、より高い。
前記レトルト処理後破断伸度の上限値は、特に限定されない。例えば、前記レトルト処理後破断伸度が430%以下である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記レトルト処理後破断伸度は、例えば、320~430%、350~430%、及び380~430%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記レトルト処理後破断伸度の一例である。
前記レトルト処理後破断伸度は、公知の方法で測定できる、すなわち、前記レトルト処理後引張強度の測定前に、測定に供する前記レトルト処理後の前記積層フィルム又は試験片において、あらかじめ一対の標点を特定し、引張試験開始前におけるこれら標点間の距離L20を測定しておき、前記レトルト処理後引張強度の測定時に、前記レトルト処理後の前記積層フィルム又は試験片が破断したときの、前記標点間の距離L21を測定し、これらL20及びL21を用いて、下記式:
レトルト処理後破断伸度=(L21-L20)/L20×100
により、算出できる。
前記破断伸度の測定時には、積層フィルム(試験片)の引張方向を、積層フィルム(試験片)の樹脂の流れ方向(MD)と一致させてもよいし、積層フィルム(試験片)の樹脂の流れ方向(MD)に対して垂直な方向(TD)と一致させてもよい。すなわち、前記破断伸度の変化率を算出するときの、前記レトルト処理後破断伸度と前記未処理時破断伸度は、いずれも、積層フィルム(試験片)の引張方向を、積層フィルムの樹脂の流れ方向(MD)と一致させた場合の測定値であってもよいし、積層フィルムの樹脂の流れ方向(MD)に対して垂直な方向(TD)と一致させた場合の測定値であってもよい。
前記未処理時破断伸度及びレトルト処理後破断伸度は、いずれも、前記積層フィルムを構成する各層の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
例えば、後述する第1外層が含むポリアミド(a)の種類と含有量、並びに、第1外層が含む酸化防止剤の種類と含有量を調節することで、前記未処理時破断伸度及びレトルト処理後破断伸度をより容易に調節できる。
例えば、後述するシーラント層が含む樹脂成分の種類と含有量を調節することで、前記未処理時破断伸度及びレトルト処理後破断伸度をより容易に調節できる。
例えば、前記積層フィルムを構成するいずれかの層において、この層の総質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合([積層フィルムを構成するいずれかの層のエチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量(質量部)]/[積層フィルムを構成するいずれかの層の総質量(質量部)]×100)を、3質量%未満の範囲で少なくすることで、前記未処理時破断伸度及びレトルト処理後破断伸度をより容易に高くできる。前記割合は、0質量%であること、すなわち、前記積層フィルムを構成するいずれかの層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含まないことが好ましい。そして、前記積層フィルムを構成するすべての層が、前記割合を満たすことがより好ましい。
<レトルト処理後全光線透過率>
前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa(2.5kgf/cm)、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムについて、JIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して、前記積層フィルムの前記第1外層側の外部から測定した全光線透過率を、本明細書においては、「レトルト処理後全光線透過率」と称することがある。
本実施形態においては、前記レトルト処理後全光線透過率が87%以上であることが好ましい。前記レトルト処理後全光線透過率が前記下限値以上であることで、積層フィルム及び後述する包装体のレトルト処理時において、積層フィルム及び包装体の白化が、より抑制される。
本実施形態においては、このような効果がより顕著に得られる点では、前記レトルト処理後全光線透過率は、88.5%以上であることがより好ましく、例えば、90%以上であってもよい。
前記レトルト処理後全光線透過率の上限値は、100%である。前記レトルト処理後全光線透過率が95%以下である前記積層フィルムは、より容易に製造できる。
本実施形態において、前記レトルト処理後全光線透過率は、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定されるいずれかの数値範囲内であってよい。
一実施形態において、前記レトルト処理後全光線透過率は、例えば、87~100%、88.5~100%、及び90~100%のいずれかであってもよいし、87~95%、88.5~95%、及び90~95%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記レトルト処理後全光線透過率の一例である。
前記レトルト処理後全光線透過率の測定に供する前記積層フィルムとしては、先に説明した、前記レトルト処理後引張強度の測定に供する前記積層フィルムと同じものが挙げられる。すなわち、先に説明した試験用包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、試験用包装体の非シール部から切り出した試験片を、前記積層フィルムとして用いて、前記レトルト処理後全光線透過率を測定できる。
前記レトルト処理後全光線透過率は、前記積層フィルムを構成する各層の含有成分の種類と含有量を調節することで、調節できる。
例えば、前記積層フィルムを構成するいずれかの層において、この層の総質量に対する、エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合([積層フィルムを構成するいずれかの層のエチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量(質量部)]/[積層フィルムを構成するいずれかの層の総質量(質量部)]×100)を、3質量%未満の範囲で少なくすることで、前記レトルト処理後全光線透過率をより容易に高くできる。前記割合は、0質量%であること、すなわち、前記積層フィルムを構成するいずれかの層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含まないことが好ましい。そして、前記積層フィルムを構成するすべての層が、前記割合を満たすことがより好ましい。
本実施形態の積層フィルムは、後述するように、包装体を構成するのに好適であり、例えば、深絞り包装体中の底材を構成するのに、特に好適である。
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
図1は、本実施形態の積層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す積層フィルム1は、第1外層14と、第2外層13と、シーラント層11と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
第1外層14は、ポリアミド(a)及び酸化防止剤を含む。
第2外層13は、ポリアミド(b)を含む。
積層フィルム1は、さらに、シーラント層11と第2外層13との間に、柔軟層12を備えている。
柔軟層12は、シーラント層11に隣接して配置されている。柔軟層12は、このように、シーラント層11の第2外層13側に、シーラント層11に直接接触して配置されていることが好ましい。
積層フィルム1は、さらに、柔軟層12と第2外層13との間に、接着層19を備えている。
すなわち、積層フィルム1は、第1外層14、第2外層13、接着層19、柔軟層12及びシーラント層11がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
第1外層14の一方の面(シーラント層11側とは反対側の面、本明細書においては、「第1面」と称することがある)14aは、積層フィルム1の一方の最表面1aであり、露出面である。
シーラント層11の一方の面(第1外層14側とは反対側の面、本明細書においては、「第2面」と称することがある)11bは、積層フィルム1の他方の最表面1bであり、露出面である。シーラント層11の前記一方の面(第2面)11bは、積層フィルム1を加熱シールするときのシール面である。
積層フィルム1において、積層フィルム1の厚さTに対する、第1外層14及び第2外層13の合計の厚さ(T14+T13)の割合は、30%以上である。
積層フィルム1において、第1外層14、第2外層13、接着層19、柔軟層12及びシーラント層11は、いずれも前記EVOH含有層ではなく、積層フィルム1は前記EVOH含有層を備えていない。
本実施形態の積層フィルムは、積層フィルム1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、積層フィルム1において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、積層フィルム1は、第1外層14、第2外層13、接着層19、柔軟層12及びシーラント層11を備えているが、本実施形態の積層フィルムは、これら以外の他の層を備えていてもよい。
本実施形態の積層フィルムは、少なくとも第1外層、第2外層及びシーラント層を備えていればよく、これら以外の層は任意の層であるが、さらに、柔軟層及び接着層を備えていることが好ましい。
次に、本実施形態の積層フィルムを構成する各層について、より詳細に説明する。
<第1外層>
前記第1外層(図1に示す積層フィルム1においては、第1外層14)は、剛性を有し、前記積層フィルムを構成する、第1外層以外の層を保護するための層である。また、第1外層は、レトルト処理時の積層フィルムの強度の低下を抑制するための層でもある。
第1外層は、前記積層フィルムの一方の最表層であり、前記積層フィルムを構成する各層の積層方向において、一方の最も外側に配置されている。
第1外層は、透明性を有することが好ましい。
第1外層は、無延伸の層であることが好ましい。
第1外層は、ポリアミド(a)を含む。第1外層は、ポリアミド(a)を含むことにより、第1外層以外の層を保護する。
前記ポリアミド(a)としては、例えば、環状ラクタム(環員数が3以上のラクタム)、アミノ酸、又はジアミンとジカルボン酸との反応で得られたナイロン塩を、重合又は共重合することによって得られたポリアミド等が挙げられる。
前記環状ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ラウロラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。
前記アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン;
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン等の脂環族ジアミン;
メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパチン酸、ウンデカンジオン酸、及びドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
ヘキサヒドロテレフタル酸、及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族カルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
ポリアミド(a)として、より具体的には、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
ポリアミド(a)は、その耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
第1外層が含むポリアミド(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第1外層は、ポリアミド(a)とともに酸化防止剤を含む。第1外層は、酸化防止剤を含むことにより、レトルト処理時の積層フィルムの強度の低下を抑制する。
前記酸化防止剤は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
第1外層が含む好ましい酸化防止剤としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルは、ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルと、ヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル中のヒドロキシフェニル基(HO-C-)を構成している水素原子のうち、水酸基を構成していない水素原子(還元すると、芳香環骨格を構成している炭素原子に結合している水素原子)の1個又は2個以上(より具体的には1~4個)が、水素原子以外の置換基で置換された構造を有する化合物と、を包含する概念である。
置換基を有するヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルにおける前記置換基で、好ましいものとしては、例えば、炭素数1~4のアルキル基等が挙げられる。
前記炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
置換基を有するヒドロキシフェニル基において、前記置換基の数は、1~4であり、1~3、1~2、及び1のいずれであってもよい。なかでも、前記置換基の数は、1~2であることが好ましい。
前記置換基の数が2以上(2~4)である場合には、これら2個以上の前記置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
置換基を有していてもよいヒドロキシフェニル基において、水酸基及び置換基の結合位置は、特に限定されない。
前記置換基を有していてもよいヒドロキシフェニルプロピオン酸エステル中の、置換基を有していてもよいヒドロキシフェニル基は、置換基を有していてもよい4-ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。
前記置換基を有していてもよいヒドロキシフェニルプロピオン酸エステルで好ましいものとしては、例えば、下記一般式(I)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(I)」と称することがある)が挙げられる。
Figure 2024071814000002
(式中、Rは、炭素数1~3のアルキル基である。)
一般式(I)中のRにおける炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
すなわち、化合物(I)としては、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-n-プロピルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンが挙げられる。
前記化合物(I)の熱安定性がより高くなる点では、Rはメチル基であることが好ましい。すなわち、熱安定性がより高い点で好ましい化合物(I)としては、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンが挙げられる。
化合物(I)は、例えば、3-(3-アルキル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、又はその酸塩化物若しくは酸無水物等の反応性誘導体と、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン類と、を公知の方法で反応させることにより、製造できる。
化合物(I)としては、市販品を用いてもよい。
前記フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤は、公知のものでよい。例えば、前記リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンフォスファイト等が挙げられる。
第1外層が含む酸化防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第1外層は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド(a)と、酸化防止剤と、のいずれにも該当しない他の成分を含んでいてもよい。
第1外層が含む前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
第1外層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第1外層において、第1外層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([第1外層の他の成分の含有量(質量部)]/[第1外層の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、第1外層がポリアミド(a)及び酸化防止剤を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
換言すると、第1外層において、第1外層の総質量に対する、ポリアミド(a)及び酸化防止剤の合計含有量の割合(([第1外層のポリアミド(a)の含有量(質量部)]+[第1外層の酸化防止剤の含有量(質量部)])/[第1外層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第1外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリアミド(a)及び酸化防止剤の合計含有量(質量部)の割合(([第1外層形成用組成物のポリアミド(a)の含有量(質量部)]+[第1外層形成用組成物の酸化防止剤の含有量(質量部)])/[第1外層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
第1外層において、ポリアミド(a)の含有量100質量部に対する、酸化防止剤の含有量は、0.01~1質量部であることが好ましく、0.01~0.5質量部であることがより好ましく、0.05~0.25質量部であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、第1外層が酸化防止剤を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、酸化防止剤の過剰使用が抑制される。
第1外層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第1外層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
第1外層は、1層(単層)からなるものが好ましい。
本明細書においては、第1外層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
積層フィルムの厚さに対する、第1外層の厚さの割合([第1外層の厚さ]/[積層フィルムの厚さ]×100)は、2~35%であることが好ましく、例えば、2~25%、2~15%、及び2~10%のいずれかであってもよいし、10~35%、15~35%、及び20~35%のいずれかであってもよいし、10~25%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、第1外層の剛性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなり、また、積層フィルムをより安価に製造できる。
第1外層の厚さ(図1に示す積層フィルム1においては、第1外層14の厚さT14)は、例えば、3~53μmであってもよい。
ここで、「第1外層の厚さ」とは、第1外層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1外層の厚さとは、第1外層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
本明細書においては、後述のように、第1外層だけでなく、第2外層、柔軟層、シーラント層、及び接着層についても、それぞれ、積層フィルムの厚さに対する、これらの厚さの割合を記載しているが、積層フィルムにおいては、これらすべての層の厚さの割合の合計は、100%を超えないものとする。
<第2外層>
前記第2外層(図1に示す積層フィルム1においては、第2外層13)も、第1外層と同様に剛性を有し、前記積層フィルムを構成する、第1外層と、第2外層と、のいずれにも該当しない層を保護するための層である。
積層フィルムが、酸化防止剤を含む第1外層以外に、酸化防止剤を含まない第2外層を備えていることで、積層フィルムの剛性が高くなり、レトルト処理時の積層フィルムの強度の低下が抑制されるのに加えて、積層フィルムをより安価に製造できる。
第2外層は、第1外層に隣接して配置されていることが好ましく、第1外層のシーラント層側に、第1外層に直接接触して配置されていることが好ましい。
第2外層は、透明性を有することが好ましい。
第2外層は、無延伸の層であることが好ましい。
第2外層は、ポリアミド(b)を含む。
前記ポリアミド(b)としては、第1外層が含むポリアミド(a)と同様のものが挙げられる。
前記積層フィルムにおいて、第2外層が含むポリアミド(b)と、第1外層が含むポリアミド(a)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
ポリアミド(b)は、その耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
第2外層が含むポリアミド(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第2外層は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド(b)に該当しない他の成分を含んでいてもよい。
第2外層が含む前記他の成分は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
第2外層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
第2外層において、第2外層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([第2外層の他の成分の含有量(質量部)]/[第2外層の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、第2外層がポリアミド(b)を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
換言すると、第2外層において、第2外層の総質量に対する、ポリアミド(b)の含有量の割合([第2外層のポリアミド(b)の含有量(質量部)]/[第2外層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する第2外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリアミド(b)の含有量(質量部)の割合([第2外層形成用組成物のポリアミド(b)の含有量(質量部)]/[第2外層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
第2外層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。第2外層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
第2外層は、1層(単層)からなるものが好ましい。
積層フィルムの厚さに対する、第2外層の厚さの割合([第2外層の厚さ]/[積層フィルムの厚さ]×100)は、例えば、30~43%であってもよいが、33~43%であることが好ましく、33~40%であってもよい。前記割合が高いほど、第2外層及び積層フィルムの剛性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなる。
第2外層の厚さ(図1に示す積層フィルム1においては、第2外層13の厚さT13)は、例えば、45~65μmであってもよいが、50~65μmであることが好ましく、50~60μmであってもよい。特に、積層フィルムの厚さによらず、第2外層の厚さが50μm以上であることで、第1外層の厚さが薄くなっても、第2外層及び積層フィルムの剛性が高くなる。第1外層の厚さが薄い場合、積層フィルムをより安価に製造できる。
ここで、「第2外層の厚さ」とは、第2外層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第2外層の厚さとは、第2外層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
前記積層フィルムの厚さに対する、第1外層及び第2外層の合計の厚さの割合(([第1外層の厚さ]+[第2外層の厚さ])/[積層フィルムの厚さ]×100)は、30%以上であり、例えば、34%以上、及び38%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムが第1外層及び第2外層を備えていることにより得られる効果が、より高くなる。
一方、前記割合は50%以下であることが好ましい。前記割合が前記上限値以下であることで、積層フィルムの柔軟性がより高くなる。
一実施形態において、前記割合は、例えば、30~50%、34~50%、及び38~50%のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記割合の一例である。
<シーラント層>
前記シーラント層(図1に示す積層フィルム1においては、シーラント層11)は、前記積層フィルムを、そのシール対象物とシールするための層である。
シーラント層は、前記積層フィルムの他方の最表層であり、前記積層フィルムを構成する各層の積層方向において、他方の最も外側に配置されている。
シーラント層は、透明性を有することが好ましい。
シーラント層は、無延伸の層であることが好ましい。
シーラント層は、樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。
シーラント層が含む前記樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(本明細書においては、「ポリオレフィン系樹脂(i)」と称することがある)であることが好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂(i)は、オレフィンから誘導された構成単位を有していれば、特に限定されず、1種のオレフィンの単独重合体であってもよいし、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよい。
好ましいポリオレフィン系樹脂(i)としては、例えば、エチレン系重合体(本明細書においては、「エチレン系重合体(i)」と称することがある)、プロピレン系重合体(本明細書においては、「プロピレン系重合体(i)」と称することがある)等が挙げられる。
本明細書において、エチレン系重合体とは、シーラント層の場合に限らず、エチレンから誘導された構成単位のみを有するエチレン単独重合体、並びに、エチレンから誘導された構成単位と、エチレンとプロピレンのいずれにも該当しない他のモノマーから誘導された構成単位と、を有するエチレン系共重合体、を包含する概念である。
同様に、プロピレン系重合体とは、シーラント層の場合に限らず、プロピレンから誘導された構成単位のみを有するプロピレン単独重合体(別名:ホモポリプロピレン、hPP)、並びに、プロピレンから誘導された構成単位と、プロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有するプロピレン系共重合体、を包含する概念である。
シーラント層が含む前記エチレン系重合体(i)は、エチレン単独重合体及びエチレン系共重合体のいずれであってもよい。
シーラント層が含む前記エチレン系重合体(i)としては、例えば、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン(PE);
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)等のエチレン系共重合体;
が挙げられる。
本明細書において、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)の密度は、0.910g/cm以上、0.945g/cm未満である。
中密度ポリエチレン(MDPE)の密度は、0.945g/cm以上、0.955g/cm未満である。
高密度ポリエチレン(HDPE)の密度は、0.955g/cm以上である。
本明細書において、「アイオノマー」とは、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂を意味する。
前記金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。
シーラント層が含む前記プロピレン系重合体(i)は、プロピレン単独重合体(hPP)及びプロピレン系共重合体のいずれであってもよい。
シーラント層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)、エチレン-プロピレン三元共重合体(別名:エチレンプロピレンターポリマー、EPT)等のプロピレン-エチレン共重合体が挙げられる。
シーラント層が含むポリオレフィン系樹脂(i)の融点は、120℃以上であることが好ましい。シーラント層が、このように比較的高融点のポリオレフィン系樹脂(i)を含む場合、このようなシーラント層を備えた前記積層フィルムを用いて得られた包装体においては、レトルト処理を行ったときに、シーラント層の溶融が抑制される効果が高く、包装体のレトルト処理に対する耐性が特に高い。
このような、融点が120℃以上のポリオレフィン系樹脂(i)で好ましいものとしては、例えば、プロピレン系重合体(プロピレン系重合体(i))、又は、融点が120℃以上のメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
すなわち、シーラント層は、プロピレン系重合体、又は、融点が120℃以上のメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
シーラント層が含むポリオレフィン系樹脂(i)の融点の上限値は、特に限定されない。例えば、融点が150℃以下であるポリオレフィン系樹脂(i)は、より容易に入手できる。
シーラント層が含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
シーラント層は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記樹脂に該当しない他の成分を含んでいてもよい。
シーラント層が含む前記他の成分は、非樹脂成分であり、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
シーラント層が含む前記他の成分として、より具体的には、例えば、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
シーラント層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
シーラント層において、シーラント層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([シーラント層の他の成分の含有量(質量部)]/[シーラント層の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、積層フィルムの、そのシール対象物とのシール強度が高くなるなど、シーラント層が前記樹脂を含んでいることにより得られる効果が、より高くなる。
換言すると、シーラント層において、シーラント層の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合([シーラント層の樹脂の含有量(質量部)]/[シーラント層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述するシーラント層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記樹脂の含有量(質量部)の割合([シーラント層形成用組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[シーラント層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
上記の「シーラント層の樹脂の含有量」とは、例えば、シーラント層がエチレン系重合体(i)及びプロピレン系重合体(i)のいずれか一方のみを含む場合には、シーラント層のエチレン系重合体(i)又はプロピレン系重合体(i)の含有量であり、シーラント層がエチレン系重合体(i)及びプロピレン系重合体(i)の両方を含む場合には、シーラント層のエチレン系重合体(i)及びプロピレン系重合体(i)の合計含有量である。
シーラント層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。シーラント層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
シーラント層は、1層(単層)からなるものが好ましい。
積層フィルムの厚さに対する、シーラント層の厚さの割合([シーラント層の厚さ]/[積層フィルムの厚さ]×100)は、5~25%であることが好ましく、例えば、5~20%、及び5~15%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムの、そのシール対象物とのシール強度が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、シーラント層の厚さが過剰となることが避けられる。
シーラント層の厚さ(図1に示す積層フィルム1においては、シーラント層11の厚さ)は、例えば、8~38μmであってもよい。
ここで、「シーラント層の厚さ」とは、シーラント層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるシーラント層の厚さとは、シーラント層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
<柔軟層>
前記柔軟層(図1に示す積層フィルム1においては、柔軟層12)は、シーラント層の近傍に配置され、積層フィルムの、そのシール対象物とのシール強度を安定化させるための層である。柔軟層は、シーラント層に隣接して配置され、シーラント層に直接接触して配置されていることが好ましい。
柔軟層は任意の層である。
柔軟層は、透明性を有することが好ましい。
柔軟層は、無延伸の層であることが好ましい。
柔軟層は、樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。
柔軟層が含む前記樹脂としては、例えば、エチレン系重合体(本明細書においては、「エチレン系重合体(ii)」と称することがある)、プロピレン系重合体(本明細書においては、「プロピレン系重合体(ii)」と称することがある)等が挙げられる。
柔軟層が含む前記エチレン系重合体(ii)としては、例えば、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン(PE);
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物又は完全ケン化物、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー(ION)、エチレン-αオレフィン共重合体、シクロペンタジエン又はノルボルネン等の環状オレフィンを共重合させて得られたエチレン-環状オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸-ポリエチレン共重合体等のエチレン系共重合体;
が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
柔軟層が含む前記プロピレン系重合体(ii)は、プロピレン単独重合体(hPP)及びプロピレン系共重合体のいずれであってもよい。
前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)、エチレン-プロピレン三元共重合体(別名:エチレンプロピレンターポリマー、EPT)等のプロピレン-エチレン共重合体;プロピレン-αオレフィン共重合体;
が挙げられる。
柔軟層が含む前記樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
柔軟層は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記樹脂に該当しない他の成分を含んでいてもよい。
柔軟層が含む前記他の成分は、非樹脂成分であり、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
柔軟層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
柔軟層において、柔軟層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([柔軟層の他の成分の含有量(質量部)]/[柔軟層の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、積層フィルムの、そのシール対象物とのシール強度がより安定化するなど、積層フィルムが柔軟層を備えていることにより得られる効果が、より高くなる。
換言すると、柔軟層において、柔軟層の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合([柔軟層の樹脂の含有量(質量部)]/[柔軟層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する柔軟層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記樹脂の含有量(質量部)の割合([柔軟層形成用組成物の樹脂の含有量(質量部)]/[柔軟層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
上記の「柔軟層の樹脂の含有量」とは、例えば、柔軟層がエチレン系重合体(ii)及びプロピレン系重合体(ii)のいずれか一方のみを含む場合には、柔軟層のエチレン系重合体(ii)又はプロピレン系重合体(ii)の含有量であり、柔軟層がエチレン系重合体(ii)及びプロピレン系重合体(ii)の両方を含む場合には、柔軟層のエチレン系重合体(ii)及びプロピレン系重合体(ii)の合計含有量である。
柔軟層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。柔軟層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
柔軟層は、1層(単層)からなるものが好ましい。
積層フィルムの厚さに対する、柔軟層の厚さの割合([柔軟層の厚さ]/[積層フィルムの厚さ]×100)は、25~55%であることが好ましく、例えば、30~50%、及び35~45%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、積層フィルムの、そのシール対象物とのシール強度が、より安定化する。前記割合が前記上限値以下であることで、柔軟層の厚さが過剰となることが避けられる。
柔軟層の厚さ(図1に示す積層フィルム1においては、柔軟層11の厚さ)は、例えば、38~83μmであってもよい。
ここで、「柔軟層の厚さ」とは、柔軟層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる柔軟層の厚さとは、柔軟層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
本実施形態において、柔軟層が含む前記樹脂は、シーラント層が含む前記樹脂と同種であってもよい。
好ましい積層フィルムの一例としては、柔軟層及びシーラント層が同種の前記樹脂を含み、かつ柔軟層及びシーラント層がいずれも1層(単層)からなる積層フィルムが挙げられる。
<接着層>
前記接着層は任意の層であり、本実施形態の積層フィルムは、接着層を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。ただし、接着層を備えていることにより、積層フィルムの積層構造がより安定化する。
接着層を備えた積層フィルムにおいて、接着層は、最表層とはならないように配置され、これに隣接する2層を接着している。例えば、図1に示す積層フィルム1において、接着層19は、これに隣接する、柔軟層12と第2外層13を接着している。
接着層は、透明性を有することが好ましい。
接着層は、無延伸の層であることが好ましい。
接着層は、接着性樹脂(接着性を有する樹脂)を含む樹脂層であることが好ましい。
前記接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(本明細書においては、「ポリオレフィン系樹脂(ii)」と称することがある)等が挙げられる。
接着層が含む前記ポリオレフィン系樹脂(ii)は、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であり、酸性基を有する酸変性ポリオレフィン、酸性基が無水物化された基を有する酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンであってもよい。
接着層が含むポリオレフィン系樹脂(ii)として、より具体的には、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体、これら共重合体の変性物(換言すると変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含むポリオレフィン系樹脂(ii)は、接着性がより向上する点では、ランダム共重合体、グラフト共重合体又はブロック共重合体であることが好ましい。
接着層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-ブテン共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含む前記プロピレン系共重合体として、より具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
接着層が含む前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含む前記接着性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
接着層は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記接着性樹脂に該当しない他の成分を含んでいてもよい。
接着層が含む前記他の成分としては、非接着性樹脂(接着性を有しない樹脂)、非樹脂成分等が挙げられ、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
接着層が含む前記他の成分としては、例えば、酸化防止剤等が挙げられる。
接着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
接着層において、接着層の総質量に対する、前記他の成分の含有量の割合([接着層の他の成分の含有量(質量部)]/[接着層の総質量(質量部)]×100)は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、例えば、5質量%以下、3質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよく、0質量%であってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、接着層の接着性がより高くなる。
換言すると、接着層において、接着層の総質量に対する、前記接着性樹脂の含有量の割合([接着層の接着性樹脂の含有量(質量部)]/[接着層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記接着性樹脂の含有量(質量部)の割合([接着層形成用組成物の接着性樹脂の含有量(質量部)]/[接着層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接着層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
接着層は、1層(単層)からなるものが好ましい。
積層フィルムの厚さに対する、接着層の厚さの割合([接着層の厚さ]/[積層フィルムの厚さ]×100)は、5~25%であることが好ましく、例えば、5~20%、及び5~15%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着層の接着性がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、接着層の厚さが過剰となることが避けられる。
接着層の厚さ(図1に示す積層フィルム1においては、接着層19の厚さ)は、例えば、8~38μmであってもよい。
ここで、「接着層の厚さ」とは、接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
<他の層>
前記他の層の種類、配置数及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、図1に示す積層フィルム1は、柔軟層12と第2外層13との間以外の、他の2層間に、接着層19と同様の他の接着層を備えていてもよい。接着層19と、前記他の接着層とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記積層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
<積層フィルムの全体構成>
前記積層フィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む層として、その総質量に対する、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合([エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層のエチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量(質量部)]/[エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層の総質量(質量部)]×100)が、3質量%以上である層(EVOH含有層)を備えていない。
すなわち、積層フィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層を備えている場合、その層において、前記割合は3質量%未満であり、例えば、2質量%以下、及び1質量%以下のいずれかであってもよい。
そして、積層フィルムは、これを構成するすべての層(例えば、第1外層、第2外層及びシーラント層、並びに、必要に応じて、柔軟層、接着層及び前記他の層からなる群より選択される1種又は2種以上)が、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含んでいないことが好ましい。
EVOH含有層を備えていない本実施形態の積層フィルムは、EVOH含有層を備えている従来の積層フィルムよりも、ガスバリア性(特に酸素バリア性)が低い。しかし、本実施形態の積層フィルムは、上述の第1外層、第2外層及びシーラント層を備えていることで、一定水準以上のガスバリア性を有している。このような積層フィルムを用いて得られた包装体も、一定水準以上のガスバリア性を有しており、一部食品の包装によって、保存中のこの食品の変質を十分に抑制できる。さらに、包装体をレトルト処理(レトルト殺菌処理)することにより、広範な食品を包装対象とすることができる。
積層フィルムの厚さは、特に限定されないが、80~300μmであることが好ましく、100~200μmであることがより好ましく、120~180μmであることがさらに好ましい。積層フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、積層フィルムを用いて得られた包装体において、被包装物(収納物)の保存安定性がより高くなるとともに、前記包装体の構造を安定して維持する特性がより高くなる。積層フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、積層フィルムの成形性がより高くなる。
積層フィルムが備えているすべての層が透明性を有することによって、積層フィルムが透明性を有すること、すなわち、積層フィルムは透明積層フィルムであることが好ましい。このような積層フィルムを用いて得られた包装体においては、積層フィルムを介して、被包装物を容易に視認できる。
好ましい積層フィルムの一例としては、第1外層と、第2外層と、接着層と、柔軟層と、シーラント層と、がこの順に、これらの厚さ方向において、直接接触して積層されて構成されたものが挙げられる。このような積層フィルムは、そのレトルト処理時において、白化と、強度の低下と、の抑制効果が、より高い。
本実施形態の積層フィルムは、各種包装体を構成するのに好適であり、なかでも、レトルト食品の包装用として好適であり、レトルト処理(レトルト殺菌処理)を行うための深絞り包装体の底材用として、特に好適である。
<<積層フィルムの製造方法>>
前記積層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
また、前記積層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂又は樹脂組成物等を、積層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、積層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
また、前記積層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせることにより積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層を形成可能なものを用いてもよい。
また、前記積層フィルムは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
前記積層フィルムを製造するときには、ここまでに挙げた、積層フィルム中のいずれかの層(換言するとフィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
製造方法がいずれの場合であっても、前記積層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
第1外層(例えば、図1に示す積層フィルム1においては、第1外層14)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「第1外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、ポリアミド(a)と、酸化防止剤と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
第2外層(例えば、図1に示す積層フィルム1においては、第2外層13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「第2外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、ポリアミド(b)と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
シーラント層(例えば、図1に示す積層フィルム1においては、シーラント層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「シーラント層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂(i))と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
柔軟層(例えば、図1に示す積層フィルム1においては、柔軟層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「柔軟層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記樹脂(例えば、エチレン系重合体(ii)及びプロピレン系重合体(ii)からなる群より選択される1種又は2種以上)と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
接着層(例えば、図1に示す積層フィルム1においては、接着層19)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「接着層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、前記接着性樹脂と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
<<包装体>>
本発明の一実施形態に係る包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る積層フィルムを用いて構成されている。
本実施形態の包装体は、前記積層フィルムの成形体(例えば、加熱成形体)を備えていてもよいし、前記積層フィルムを成形せずに、そのまま備えていてもよい。
本実施形態の包装体は、前記積層フィルムを用いて構成されていることで、そのレトルト処理時において、白化と、強度の低下と、が抑制される。
本実施形態の包装体は、レトルト食品用の包装体として好適であり、深絞り包装体として好適であり、レトルト食品用の深絞り包装体として特に好適である。
本実施形態の包装体が深絞り包装体である場合には、前記積層フィルムは、深絞り包装体の蓋材と底材のどちらを構成するのにも好適であり、収納部を構成するための凹部を有する底材を構成するのに、より好適である。
好ましい前記包装体としては、例えば、蓋材及び底材を備え、前記蓋材及び前記底材のシールによって構成されており、前記底材が前記積層フィルムの成形体である包装体が挙げられる。
このような包装体においては、前記蓋材が前記積層フィルムからなるものであってもよい。
底材としての前記積層フィルムの成形体は、深絞り成形体であってもよい。
図2は、本実施形態の包装体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体101は、蓋材8と底材10を備えており、底材10は、樹脂フィルムの深絞り成形体である。すなわち、包装体101は、深絞り包装体である。
蓋材8及び底材10のいずれか一方又は両方は、図1に示す積層フィルム1を用いて、構成されている。
図2中の蓋材8又は底材10においては、これを構成している積層フィルム1中の各層の区別を省略している。
底材10には、凹部100が形成されている。
底材10の凹部100を除く領域の一方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)10bと、蓋材8の一方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)8bとは、いずれもシール面であり、互いに対向している。
包装体101は、蓋材8及び底材10のシールによって構成されている。より具体的には、底材10の凹部100を除く領域の第2面10bと、蓋材8の第2面8bは、重ね合わされ、互いにこれらの周縁部近傍の領域においてシールされている。その結果、底材10の凹部100の領域において、底材10の第2面10bと、蓋材8の第2面8bと、の間に、収納部101aが形成されている。この収納部101a内に、収納物9が収納されている。
収納物9としては、食品が好適である。
底材10が積層フィルム1を用いて構成されている場合、底材10の一方の面(第2面)10bは、積層フィルム1中のシーラント層11の第2面11bと同じであることが好ましい。底材10の他方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10aは、積層フィルム1中の第1外層14の第1面14aと同じであることが好ましい。
蓋材8が積層フィルム1を用いて構成されている場合、蓋材8の一方の面(第2面)8bは、積層フィルム1中のシーラント層11の第2面11bと同じであることが好ましい。蓋材8の他方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)8aは、積層フィルム1中の第1外層14の第1面14aと同じであることが好ましい。
図2においては、包装体101の収納部101a内において、収納物9と底材10との間、並びに、収納物9と蓋材8との間には、一部隙間が見られるが、これら隙間の存在は、収納物9を収納した状態の包装体101において、必須ではない。
底材10のその平坦部における厚さと、蓋材8の厚さは、いずれも、先に説明した積層フィルム1の厚さと同様であってよい。
包装体101が積層フィルム1を用いて構成されていることにより、包装体101のレトルト処理時においては、蓋材8及び底材10のいずれか一方又は両方(積層フィルム1を用いて構成されているもの)は、その白化と、強度の低下と、が抑制される。
ここまでは、前記積層フィルムを用いて構成された包装体として、深絞り包装体を例に挙げて説明したが、前記積層フィルムを用いて構成された包装体は、深絞り包装体に限定されず、他の包装体であってもよい。
<<包装体の製造方法>>
本実施形態の包装体は、前記積層フィルムを用いて、包装対象物を包装することで、製造できる。そして、本実施形態の包装体は、従来のフィルムに代えて、前記積層フィルムを用いる点を除けば、従来の包装体の場合と同じ方法で製造できる。
包装体の製造時には、前記積層フィルム又はその成形体中のシーラント層を、包装対象物側に配置し、第1外層を包装対象物側とは反対側に配置して、包装対象物を包装する。
例えば、本実施形態の包装体は、前記積層フィルム同士、又は、前記積層フィルムと、前記積層フィルム以外の他の樹脂フィルムと、によって、包装対象物(換言すると収納物)を収納するための収納部を形成しながら、包装対象物を収納し、これらフィルムの前記収納部以外の領域同士を加熱シールすることにより、製造できる。
また、本実施形態の包装体が深絞り包装体である場合には、前記積層フィルムを成形することにより、前記収納部を形成するための前記凹部を備えた底材を作製し、前記底材中のシーラント層の第2面(換言すると、前記蓋材とシールする側の面)のうち、前記凹部の領域上に、前記包装対象物を載置し、前記底材の第2面と、前記包装対象物とに、これらの上部から前記蓋材を被せ、前記包装対象物が配置されていない領域において、前記底材と前記蓋材とを加熱シールすることにより、深絞り包装体を製造できる。
前記積層フィルムを成形するとき、成形温度は100~130℃であることが好ましく、加熱時間は1~2秒であることが好ましく、成形時間は1~2秒であることが好ましい。
前記積層フィルム又はその成形体を加熱シールして包装体を製造するとき、シール温度は130~170℃であることが好ましく、シール時間は1~2秒であることが好ましい。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
各実施例又は比較例で用いた樹脂は、以下のとおりである。
PA(1):酸化防止剤を含有する6-ナイロン(宇部興産社製「UBEナイロン1022FDR3」、相対粘度:3.4)
PA(2):6-ナイロン(宇部興産社製「1030B」、相対粘度:4.1)
EVOH:エチレン-ビニルアルコール共重合体(クラレ社製「エバールF101B」、前記エチレンの共重合比率32モル%、密度1.19g/cm、MFR1.6g/10min、融点183℃、ガラス転移点60℃)
EPT:エチレンプロピレンターポリマー(住友化学社製「ノーブレン(登録商標)FL8115A」、融点148℃)
mLLDPE(1):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット(登録商標)4540F」、密度0.944g/cm、融点128℃、)
mLLDPE(2):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「ユメリット(登録商標)1520F」、密度0.913g/cm、融点99℃/114℃)
変性PP:酸変性ポリプロピレン(接着性樹脂、三井化学社製「アドマー(登録商標)QF551」)
変性PE:酸変性ポリエチレン(接着性樹脂、三井化学社製「アドマー(登録商標)NF300」)
[実施例1]
<<積層フィルムの製造>>
前記EPTと、前記EPTと、前記変性PPと、前記PA(2)と、前記PA(1)とを、この順で共押出しすることにより、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ52.5μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、図1に示す構成の積層フィルム(厚さ150μm)を得た。
シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。
<<積層フィルムの評価>>
<未処理時引張強度の測定、レトルト処理後引張強度の測定、及び引張強度の変化率の算出>
上記で得られた積層フィルムから試験片を切り出し、この試験片について、引張強度測定装置(株式会社島津製作所社製「AGS-X」)を用いて、JIS Z 1702:1994に準拠して、引張強度(未処理時引張強度)を測定した。未処理時引張強度は、試験片のTD及びMDの2方向で測定した。
上記で得られた積層フィルムを用いて、水を充填した、大きさが300mm×300mmの試験用包装体を作製した。この試験用包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、試験用包装体の非シール部から試験片を切り出した。この試験片について、上記の未処理時引張強度の場合と同様に、引張強度(レトルト処理後引張強度)を測定した。
これら未処理時引張強度及びレトルト処理後引張強度の測定値から、試験片のTD及びMDの2方向で、引張強度の変化率を算出した。結果を表1に示す。
<未処理時破断伸度の測定、レトルト処理後破断伸度の測定、及び破断伸度の変化率の算出>
上記の未処理時引張強度の測定時に、同時に、引張試験前後での試験片における標点間距離を測定し、これら測定値から、前記式に従って、試験片の破断伸度(未処理時破断伸度)を算出した。未処理時破断伸度は、試験片のTD及びMDの2方向で測定した。
上記のレトルト処理後引張強度の測定時に、同時に、引張試験前後での試験片における標点間距離を測定し、これら測定値から、前記式に従って、試験片の破断伸度(レトルト処理後破断伸度)を算出した。レトルト処理後破断伸度は、試験片のTD及びMDの2方向で測定した。
これら未処理時破断伸度及びレトルト処理後破断伸度の測定値から、試験片のTD及びMDの2方向で、破断伸度の変化率を算出した。結果を表1に示す。
<未処理時全光線透過率の測定、及びレトルト処理後全光線透過率の測定>
上記で得られた積層フィルムから試験片を切り出し、この試験片について、ヘーズメーター(日本電色工業社製「NDH2000」)を用いて、JIS K 7361-1:1997に準拠して、その第1外層側の外部から全光線透過率(未処理時全光線透過率)を測定した。結果を表1に示す。
前記レトルト処理後引張強度の測定時と同じ方法で、試験用包装体を作製し、この試験用包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、試験用包装体の非シール部から試験片を切り出した。この試験片について、上記の未処理時全光線透過率の場合と同様に、全光線透過率(レトルト処理後全光線透過率)を測定した。結果を表1に示す。
<未処理時のゲルボフレックス試験に対する耐性(耐屈曲性)の評価、及びレトルト処理後のゲルボフレックス試験に対する耐性(耐屈曲性)の評価>
上記で得られた積層フィルムから試験片を切り出し、この試験片について、ゲルボフレックステスター(テスター産業社製「BE-1005」)を用いて、温度23℃、屈曲回数100回の条件で、ASTM F392に準拠して、ゲルボフレックス試験を行った。そして、試験後の前記積層フィルムを目視観察し、積層フィルムにおいて認められるピンホールの数(個)を確認することで、未処理時の積層フィルムについて、ゲルボフレックス試験に対する耐性(耐屈曲性)を評価した。結果を表1に示す。
前記レトルト処理後引張強度の測定時と同じ方法で、試験用包装体を作製し、この試験用包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、試験用包装体の非シール部から試験片を切り出した。この試験片について、上記の未処理時の積層フィルムの場合と同様にゲルボフレックス試験を行い、レトルト処理後の積層フィルムについて、ゲルボフレックス試験に対する耐性(耐屈曲性)を評価した。結果を表1に示す。
<<包装体の製造>>
深絞り成形機(ムルチバック社製「R-535」)を用いて、前記積層フィルムを、成形温度120℃、加熱時間1.5秒、成形時間1.5秒の条件で深絞り成形し、凹部を形成することにより、底材を作製した。
底材の、その上方から見下ろして平面視したときの大きさは、16cm×12cmであり、前記凹部の、その上方から見下ろして平面視したときの形状は円形であって、その直径は10cmであり、その深さは2cmであった。
蓋材として、2軸延伸されたPA(20μm)と無延伸PP(50μm)とのラミネート品を用意した。
上記で得られた底材のシーラント層側を、前記蓋材に対向させて配置した。底材の前記凹部内にさつま揚げ(直径9cm)を配置し、蓋材及び底材の周縁部を、シール温度160℃、シール時間1.5秒の条件で加熱シールすることにより、包装体(深絞り包装体)を作製した。シール部の幅は1cmであった。
<<包装体の評価>>
<シール性の評価>
上記で得られた包装体のシール部を目視観察し、気泡の存在部位等、加熱シールに伴う異常部位の有無を確認した。そして、下記基準に従って、包装体のシール性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:異常部位が全く認められない。
B:少数の軽度の異常部位が認められるが、実用上問題が無い。
C:軽度ではない異常部位が認められ、実用上問題がある。
<未処理時の落下時の耐衝撃性の評価、及びレトルト処理後の落下時の耐衝撃性の評価>
上記で得られた包装体を用い、この包装体を1mの高さから床に落下させた。次いで、落下後の包装体を目視観察し、底材の破れ、蓋材と底材との間の剥離等の、包装体の破損の有無を確認した。そして、下記基準に従って、未処理時の包装体の落下時の耐衝撃性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:破損が全く認められない。
B:僅かでも破損が認められる。
別途、上記で得られた積層フィルムを用い、上記と同様の包装体を作製した。この包装体に対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後に、上記の未処理時の包装体の場合と同様に、レトルト処理後の包装体の落下時の耐衝撃性を評価した。結果を表1に示す。
<レトルト処理時の白化の抑制効果の評価>
上記の、落下時の耐衝撃性を評価する前の、レトルト処理後の包装体を目視観察し、下記基準に従って、包装体のレトルト処理時の白化の抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
A:白化が全く認められない。
B:僅かでも白化が認められる。
<<積層フィルムの製造及び評価、並びに包装体の製造及び評価>>
[比較例1]
前記PA(1)に代えて前記PA(2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ52.5μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、図1に示す構成の積層フィルム(厚さ150μm)を製造し、評価した。シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。そして、この積層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
前記EPTと、前記EPTと、前記変性PPと、前記PA(2)と、前記EVOHと、前記PA(1)とを、この順で共押出しすることにより、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ37.5μm)と、酸素バリア層(厚さ15μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層フィルム(厚さ150μm)を得た。シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、酸素バリア層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。この積層フィルムについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。そして、この積層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装体を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
前記mLLDPE(1)と、前記mLLDPE(1)と、前記変性PEと、前記PA(2)と、前記PA(1)とを、この順で共押出しすることにより、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ52.5μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、図1に示す構成の積層フィルム(厚さ150μm)を得た。シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。この積層フィルムについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。そして、この積層フィルムを用いた点と、蓋材として、2軸延伸されたPA(20μm)と無延伸PP(50μm)とのラミネート品に代えて、2軸延伸されたPA(20μm)と無延伸PE(50μm)とのラミネート品を用いた点と、蓋材及び底材のシール温度を、160℃に代えて140℃とした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、包装体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[比較例3]
前記mLLDPE(2)と、前記mLLDPE(2)と、前記変性PEと、前記PA(2)と、前記PA(2)とを、この順で共押出しすることにより、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ52.5μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、図1に示す構成の積層フィルム(厚さ150μm)を得た。シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。この積層フィルムについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。そして、この積層フィルムを用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、包装体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
[比較例4]
前記mLLDPE(1)と、前記mLLDPE(1)と、前記変性PEと、前記PA(2)と、前記EVOHと、前記PA(1)とを、この順で共押出しすることにより、シーラント層(厚さ15μm)と、柔軟層(厚さ60μm)と、接着層(厚さ15μm)と、第2外層(厚さ37.5μm)と、酸素バリア層(厚さ15μm)と、第1外層(厚さ7.5μm)とが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層フィルム(厚さ150μm)を得た。シーラント層と、柔軟層と、接着層と、第2外層と、酸素バリア層と、第1外層は、いずれも無延伸の層である。この積層フィルムについて、実施例1の場合と同じ方法で評価した。結果を表2に示す。そして、この積層フィルムを用いた点以外は、実施例2の場合と同じ方法で、包装体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
Figure 2024071814000003
Figure 2024071814000004
上記結果から明らかなように、実施例1~2においては、包装体のレトルト処理時に、包装体の白化が抑制されていた。
実施例1~2においては、積層フィルムのレトルト処理後全光線透過率が、89%以上(89~91%)であった。
実施例1~2においては、積層フィルムの未処理時全光線透過率が91%以上(91~92%)であり、透明性が高い包装体が得られており、レトルト処理後の包装体においても、高い透明性が維持されていた。
さらに、実施例1~2においては、包装体の未処理時の落下時の耐衝撃性、及びレトルト処理後の落下時の耐衝撃性が、ともに高く、包装体のレトルト処理時に、包装体の強度の低下が抑制されていた。
実施例1~2においては、積層フィルムの引張強度の変化率が10%以下(8~10%)であった。
実施例1~2においては、未処理時の積層フィルムの耐屈曲性の評価時に、ピンホールが認められず、レトルト処理後の積層フィルムの耐屈曲性の評価時に、ピンホールの数が1個のみであった。
実施例1~2においては、積層フィルムの未処理時引張強度が50N/mm以上(50~60N/mm)であり、引張強度が高い包装体が得られていた。さらに、積層フィルムのレトルト処理後引張強度が45N/mm以上(45~55N/mm)であり、レトルト処理後の積層フィルムにおいても、高い引張強度が維持されていた。
実施例1~2においては、包装体のシール部に、実用上問題のある異常部位が認められず、包装体のシール性が良好であった。
実施例1~2においては、積層フィルムの未処理時破断伸度が400%以上(400~430%)であり、積層フィルムのレトルト処理後破断伸度が360%以上(360~400%)であり、破断伸度の変化率が10%以下(7~10%)であって、積層フィルムの引張特性が良好であった。この結果は、包装体のレトルト処理時に、包装体の強度の低下が抑制されていたことと整合していた。
さらに、実施例2の包装体は、実施例1の包装体よりも、そのシール性が優れていた。これは、積層フィルム中のシーラント層が含む樹脂の融点が、実施例2の方が実施例1よりも低く(実施例1:148℃、実施例2:128℃)、これに対応して、蓋材及び底材のシール温度を、実施例2の方で実施例1よりも低くした(実施例1:160℃、実施例2:140℃)ためであった。蓋材又は底材のシール予定部、特に底材のシール予定部には、収納物由来の水が付着し易く、水が付着した状態のまま蓋材及び底材をシールした場合、加熱によって水が気化し、蓋材及び底材のシール面の間に気泡が発生することがある。実施例2ではこのような気泡の発生が抑制されたが、実施例2の場合よりもシール温度を高くした実施例1では、多数の気泡が発生したと推測された。
これに対して、比較例1においては、包装体のレトルト処理後の落下時の耐衝撃性が低く、包装体のレトルト処理時に、包装体の強度が低下していた。
比較例1においては、積層フィルムの引張強度の変化率が42%以上(42~45%)であった。
比較例1においては、レトルト処理後の積層フィルムの耐屈曲性の評価時に、ピンホールの数が12個であり、多かった
比較例1においては、積層フィルムの未処理時引張強度が55N/mm以上(55~60N/mm)であり、引張強度が高い包装体が得られていた。しかし、積層フィルムのレトルト処理後引張強度が35N/mm以下(30~35N/mm)であり、レトルト処理後の積層フィルムにおいては、引張強度が顕著に低下していた。
比較例1においては、積層フィルムの未処理時破断伸度が400%であったが、積層フィルムのレトルト処理後破断伸度が75%であり、破断伸度の変化率が81%であって、レトルト処理後の積層フィルムの引張特性が不良であった。この結果は、包装体のレトルト処理時に、包装体の強度が低下していたことと整合していた。
比較例2、4においてはこのとき、包装体のレトルト処理後の落下時の耐衝撃性が低くはなかったが、積層フィルムの引張強度の変化率が23%以上(23~27%)であり、場合によっては、包装体のレトルト処理後の落下時の耐衝撃性が低くなって、包装体のレトルト処理時に、包装体の強度が低下する危険性を有していた。
比較例2、4においては、未処理時の積層フィルムの耐屈曲性の評価時に、ピンホールの数が6個以上(6~10個)であり、レトルト処理後の積層フィルムの耐屈曲性の評価時に、ピンホールの数が10個以上(10~17個)であって、いずれも多く、耐屈曲性が低い包装体が得られた。
比較例2、4においては、積層フィルムの未処理時引張強度が55N/mm以上(55~65N/mm)であり、引張強度が高い包装体が得られていた。しかし、積層フィルムのレトルト処理後引張強度が50N/mm以下(40~50N/mm)であり、レトルト処理後の積層フィルムにおいては、引張強度が明りょうに低下していた。
比較例2、4においては、破断伸度の変化率が24%以上(24~28%)であって、大きく、積層フィルムの引張特性が不良であった。この結果は、積層フィルムの引張強度の変化率が大きいことと整合していた。
さらに、比較例2、4においては、包装体のレトルト処理時に、包装体(積層フィルム)が白化していた。
比較例2、4においては、積層フィルムの未処理時全光線透過率が91%以上(91~92%)であったが、積層フィルムのレトルト処理後全光線透過率が85%以下(83~85%)であった。比較例2、4においては、レトルト処理後の包装体において、透明性が明りょうに低下していた。
比較例2、4において、このように、レトルト処理時において、包装体(積層フィルム)の白化と、強度の低下と、がいずれも抑制されていなかった理由は、積層フィルム(底材)が、EVOH含有層に相当する酸素バリア層を備えていたためであった。
比較例3においては、積層フィルムのレトルト処理時に、積層フィルム中のシーラント層が溶融してしまい、レトルト処理後の積層フィルム及び包装体を評価できなかった。
このように、比較例3の積層フィルムの基本特性が不良であった理由は、積層フィルム中のシーラント層が、99℃、114℃という低い融点ピークを示す樹脂を含んでいたためであった。
本発明は、レトルト食品用の包装体に利用可能である。
1・・・積層フィルム
11・・・シーラント層
12・・・柔軟層
13・・・第2外層
14・・・第1外層
19・・・接着層
8・・・蓋材
10・・・底材
101・・・包装体(深絞り包装体)
・・・積層フィルムの厚さ
13・・・第2外層の厚さ
14・・・第1外層の厚さ

Claims (8)

  1. 積層フィルムであって、
    前記積層フィルムは、第1外層と、第2外層と、シーラント層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、
    前記第1外層が、ポリアミド(a)及び酸化防止剤を含み、
    前記第2外層が、ポリアミド(b)を含み、
    前記積層フィルムの厚さに対する、前記第1外層及び前記第2外層の合計の厚さの割合が、30%以上であり、
    前記積層フィルムが、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層として、その総質量に対する、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の含有量の割合が、3質量%以上である層を備えていない、積層フィルム。
  2. 前記シーラント層が、プロピレン系重合体、又は、融点が120℃以上のメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムと、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して、引張強度を測定したとき、前記レトルト処理の前後での前記引張強度の変化率が15%以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  4. 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムと、前記レトルト処理を行っていない前記積層フィルムについて、JIS Z 1702:1994に準拠して、破断伸度を測定したとき、前記レトルト処理の前後での前記破断伸度の変化率が20%以下である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  5. 前記積層フィルムに対して、圧力245166.25Pa、温度120℃の条件下で、30分、レトルト処理を行い、前記レトルト処理が終了してから24時間後の前記積層フィルムについて、JIS K 7361-1:1997に準拠して、その前記第1外層側の外部から全光線透過率を測定したとき、前記全光線透過率が87%以上である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  6. 積層フィルムが、レトルト食品の包装用である、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
  7. 請求項1又は2に記載の積層フィルムを用いて構成された、包装体。
  8. 前記包装体が、蓋材及び底材を備え、
    前記包装体が、前記蓋材及び前記底材のシールによって構成されており、
    前記底材が前記積層フィルムの成形体である、請求項7に記載の包装体。
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