JP2024070694A - 成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた触感の実現とスジ状の外観不良の発生の抑制とを両立した成形体を提供する。【解決手段】成形体であって、前記成形体の表面に、第一の凹部および第一の凸部からなる一次シボが形成され、前記第一の凸部の表面に、第二の凹部および第二の凸部からなる二次シボが形成され、前記第二の凸部は、ISO 25178-2:2012に規定される山頂の5点平均高さS5pが、0.0μmを超え16.0μm以下であり、ISO 25178-2:2012に規定される山頂の算術平均曲率Spcが、110mm-1以上310mm-1以下である、成形体。【選択図】なし

Description

本発明は成形体に関する。
自動車のインストルメントパネル、ドアトリム等の内装表皮材や、オフィスチェア等の家具の肘掛け、レバー等の部材には、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の樹脂が一般的に使われている。オレフィン系熱可塑性エラストマー等の樹脂をインストルメントパネル、ドアトリム、肘掛け、レバー等の成形体に成形するには、真空成形や射出成形が一般的に行われている。
真空成形や射出成形等によって得られた成形体は、該成形体の表面を加工せずにそのまま用いられることもあるが、意匠性、耐傷付き性の観点から成形品の表面に凹凸形状のシボ加工が施される場合がある。以下、このようなシボを「一次シボ」とも称する。
近年では、成形品の表面に施した一次シボをさらに加工し、一次シボの表面に、さらに凹凸形状のシボ加工を施し、触感等を改良する試みがなされている。以下、このようなシボを「二次シボ」とも称する。
例えば、特許文献1では、表面に配置される第1の凹部、および、第1の凸部からなる表面加工(一次シボに相当)を有する表面加工樹脂成形品であって、少なくとも前記第1の凸部は表面に微細な第2の凸部(二次シボに相当)を有し、前記第2の凸部は前記第1の凸部の表面においてランダムに配置されている表面加工樹脂成形品が優れた触感を有することが開示されている。
また、特許文献2では、表面に凹部と凸部(一次シボに相当)を備えた物品の表面構造において、前記凸部の上部に前記凹凸よりも細かいピッチの微細凹凸(二次シボに相当)を備え、物品の平滑な表面に人の肌が触れたときの肌と部品との接触面積に対する、物品の凹凸を有する表面に人の肌が触れたときの肌と部品との接触面積の割合が35%~90%の範囲となる物品の表面構造が、物品の表面に対する触感をより心地よいものとすることが開示されている。
特開2017-154289号公報 特開2013-028152号公報
特許文献1,2に記載の成形品は、触感は優れたものであったが、成形品の表面にスジ状の外観不良が発生することがあり、改善を求められていた。本発明者らがこのスジを分析したところ、成形品の表面の一次シボにさらに形成された二次シボが、スジ状の外観不良の原因であることがわかった。
しかし上記の通り二次シボの加工を施すことで触感が優れたものとなるから、二次シボ特有の優れた触感を維持しつつ、スジ状の外観不良の発生を抑えることができる成形体が強く望まれていた。
本発明は、優れた触感の実現とスジ状の外観不良の発生の抑制とを両立した成形体を提供することを目的とする。
[1] 成形体であって、
前記成形体の表面に、第一の凹部および第一の凸部からなる一次シボが形成され、
前記第一の凸部の表面に、第二の凹部および第二の凸部からなる二次シボが形成され、
前記第二の凸部は、
ISO 25178-2:2012に規定される山頂の5点平均高さS5pが、0.0μmを超え16.0μm以下であり、
ISO 25178-2:2012に規定される山頂の算術平均曲率Spcが、110mm-1以上310mm-1以下である、成形体。
[2] 前記一次シボは、JIS B0601:2013に規定される算術平均粗さRaが、0μmを超え、25μm以下である、[1]に記載の成形体。
[3] 前記第一の凸部の高さが、15~55μmである、[1]または[2]に記載の成形体。
[4] 前記第一の凹部の深さが、25~65μmである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の成形体。
[5] 熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる、[1]~[4]のいずれか1つに記載の成形体。
[6] 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)が、
プロピレン系重合体(A)、
エチレンから導かれる構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含むエチレン・α-オレフィン共重合体(B)、
軟化剤(C)、および
共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックと、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックと、をそれぞれ少なくとも1つずつ有するブロック共重合体の水添物(D)
を含む、[5]に記載の成形体。
[7] 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)が、ポリオルガノシロキサン(E)をさらに含む、[6]に記載の成形体。
[8] 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)において、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と前記軟化剤(C)の質量比(C/B)が、0.80~1.20である、[6]または[7]に記載の成形体。
[9] 前記ブロック共重合体の水添物(D)の共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックが、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む、共重合体ブロックである、[6]~[8]のいずれか1つに記載の成形体。
[10] 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる射出成形体である、[5]~[9]のいずれか1つに記載の成形体。
本発明によれば、優れた触感の実現とスジ状の外観不良の発生の抑制とを両立した成形体を提供できる。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
〈成形体〉
本発明の成形体は、該成形体の表面に、第一の凹部および第一の凸部からなる一次シボが形成され、第一の凸部の表面に、第二の凹部および第二の凸部からなり、かつ、所定の要件を満たす二次シボが形成されている。
成形体の材質は特に制限されない。成形体の材料となり得る樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・エチレン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン・α-オレフィン共重合体等の公知の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物(X)(以下、熱可塑性エラストマー組成物(X)という。)が、本発明の成形体の材料として好ましい。熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれ得る各成分については後述する。
成形体は、上記樹脂を任意の既知の成形法を用いて成形した成形体である。成形法の例としては、例えば、プレス成形法、射出成形法、押出成形法、カレンダー成形法、中空成形法、真空成形法、圧縮成形法が挙げられる。生産性が良好であり、複雑な形状を容易に形成できるという観点から、これらの成形法の中でも、射出成形法が好ましい。
成形体の表面には、第一の凹部および第一の凸部からなる一次シボが形成されている。一次シボの形成方法は特に制限されないが、射出成形法を用いて成形体を得る場合には、射出成形時に用いる金型を、所期の算術平均粗さRaを持つシボ加工が施された平板金型とすることにより、一次シボを成形体の表面に形成することができる。
一次シボにおける算術平均粗さRaは、好ましくは0μmを超えて25μm以下であり、より好ましくは10~25μm、さらに好ましくは10~20μm、特に好ましくは15~20μmである。第一の凸部の高さ(一次シボの最大山高さ)は、好ましくは15~55μmであり、より好ましくは15~40μmであり、さらに好ましくは25~35μmである。また、第一の凹部の深さ(一次シボの最大谷深さ)は、好ましくは25~65μmであり、より好ましくは25~55μmであり、さらに好ましくは35~53μmである。
一次シボのRa、第一の凸部の高さ、および第一の凹部の深さの少なくとも一つ、好ましくはいずれか二つ、より好ましくは三ついずれもが上記範囲内であると、成形体の触感が良好であり、また、第一の凸部の表面に二次シボを形成しやすくなる。なお、算術平均粗さRa、第一の凸部の高さ、および第一の凹部の深さは、実施例に記載の方法により測定される。
前記第一の凸部の表面に、第二の凹部および第二の凸部からなる二次シボが形成されている。二次シボの形成方法は特に制限されないが、例えば、レーザーエッチング、ブラストエッチング等のエッチングにより形成することができる。
前記二次シボを形成している第二の凸部について、258μm×258μmの観察範囲を基準範囲とした場合の、ISO 25178-2:2012に規定される山頂の5点平均高さ(S5p)は、0.0μmを超え16.0μm以下であり、好ましくは1.0~15.8μmであり、より好ましくは3.0~15.7μmである。第二の凸部のS5pが16.0μmを超えると、スジ状の外観不良の発生を抑制しづらい。なお、S5pは、実施例に記載の方法により測定される。
前記二次シボにおける、第二の凸部の算術平均曲率(Spc)は、110mm-1~310mm-1であり、好ましくは112mm-1~290mm-1であり、より好ましくは113mm-1~270mm-1である。第二の凸部のSpcが110mm-1未満であったり、310mm-1を超えたりすると、成形体の表面の触感が損なわれ易い傾向がある。なお、Spcは、実施例に記載の方法により測定される。
第二の凸部のS5pおよびSpcは、エッチングの際の条件を変更することで適宜調整することができる。具体的には、エッチングに用いる粒子の種類、形状、サイズ、当該粒子を吹き付ける際の圧力または時間等を変更することにより、S5pおよびSpcを調整することができる。
本発明の成形体は、優れた触感を維持しつつスジ状の外観不良の発生を抑えることができる。このため、本発明の成形体は、例えば、自動車部品、家具、土木・建材用品、電気・電子部品、衛生用品、フィルム・シート、発泡体、人造皮革等、種々な公知の用途に好適であり、特に自動車内装部品等の自動車部品、人造皮革等の表皮材に好適に用いられ得る。
〈自動車部品〉
本発明の成形体を使用し得る自動車部品としては、ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類、バンパー部品、ボディパネル、サイドシールド、インストルメントパネル表皮、ドア表皮、天井表皮、ホース、ステアリングホイール、ブーツ、ワイヤーハーネスカバー、シートアジャスターカバー等を例示できる。
〈家具〉
本発明の成形体を使用し得る家具としては、オフィス用椅子(オフィスチェア)の肘掛け部材、ハンドル、レバー、背面、ボタン、座面、家庭用椅子の肘掛け部材、ハンドル、レバー、背面、ボタン、座面、オフィスデスクの天板、家庭用デスクの天板等を例示できる。
〈土木・建材用品〉
本発明の成形体を使用し得る土木・建材用品としては、地盤改良用シート、上水板、騒音防止壁等の土木資材や建材、土木・建築用各種ガスケットおよびシート、止水材、目地材、建築用窓枠等を例示できる。
〈電気・電子部品〉
本発明の成形体を使用し得る電気・電子部品としては、電線被覆材、コネクター、キャップ、プラグ等の電気・電子部品等を例示できる。
〈生活関連用品〉
本発明の成形体を使用し得る生活関連用品としては、スポーツシューズソール、スキーブーツ、テニスラケット、スキー板のビンディング、バットグリップ等のスポーツ用品、ペングリップ、歯ブラシグリップ、ヘアブラシ、ファッションベルト、各種キャップ、靴インナーソール等の雑貨用品等を例示できる。
〈フィルム・シート〉
本発明の成形体を使用し得るフィルム・シートとしては、輸液バッグ、医療容器、自動車内外装材、飲料ボトル、衣装ケース、食品包材、食品容器、レトルト容器、パイプ、透明基板、シーラント等を例示できる。
〈人造皮革〉
本発明の成形体を使用し得る人造皮革としては、椅子表皮、鞄、ランドセル、陸上競技用シューズやマラソンシューズ、ランニング用シューズ等のスポーツ用シューズ、ジャンバー、コート等のウェア、帯、襷、リボン、手帳カバー、ブックカバー、キーホルダー、ペンケース、財布、名刺入れ、定期入れ等を例示できる。
〈熱可塑性エラストマー組成物(X)〉
上記の通り、成形体の材質は、特に制限されないが、熱可塑性エラストマー組成物(X)であることが好ましい。熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれる成分は、熱可塑性エラストマーを含む限り特に制限されないが、例えばプロピレン系重合体(A)、エチレンから導かれる構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含むエチレン・α-オレフィン共重合体(B)、軟化剤(C)、および共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックと、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックと、をそれぞれ少なくとも1つずつ有するブロック共重合体の水添物(D)を含むことが好ましい。
以下に、上記成分(A)~(D)およびその他の任意成分について詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<プロピレン系重合体(A)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)の成分の一つであるプロピレン系重合体(A)〔以下、「成分(A)」と呼称する場合がある。〕は、該重合体を構成する構成単位のうち、プロピレンに由来する構成単位の含有量が、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれる成分(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
成分(A)は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンとプロピレン以外のコモノマーとの共重合体であってもよい。
成分(A)の構造は特に制限されず、例えば、プロピレン由来の構成単位部分は、アイソタクチック構造でも、シンジオタクチック構造でも、アタクチック構造でもよいが、アイソタクチック構造であることが好ましい。また、前記共重合体の場合、ランダム型〔ランダムPPとも呼称〕、ブロック型〔ブロックPP:bPPとも呼称〕、グラフト型のいずれであってもよい。
前記コモノマーとしては、プロピレンと共重合可能な他のモノマーであればよく、エチレン、炭素数4~10のα-オレフィン等が好ましい。炭素数4~10のα-オレフィンは、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。前記コモノマーとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが好ましい。コモノマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記共重合体中のコモノマー由来の構成単位の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の柔軟性等の点から、好ましくは10モル%以下である。
成分(A)は、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばサンアロマー(株)のポリプロピレン、(株)プライムポリマーのプライムポリプロ、日本ポリプロピレン(株)のノバテック、SCG Plastics社のSCG PP等が挙げられる。
成分(A)は、結晶性の重合体であってもよく、また、非結晶性の重合体であってもよい。ここで、結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融点(Tm)が観測されることを意味する。
成分(A)が結晶性の重合体である場合、成分(A)の融点(JIS K 7121の測定方法に準拠)は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の耐熱性等の点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下である。
成分(A)のMFR(ASTM D 1238-65Tの測定方法に準拠、230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~100g/10分であり、より好ましくは0.1~50g/10分である。
成分(A)のMFRが前記範囲にあると、熱可塑性エラストマー組成物(X)が、耐熱性、機械的強度、流動性、および成形加工性に優れる。
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)の成分の一つであるエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンから導かれる構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含むエチレン・α-オレフィン共重合体である。
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)〔以下、「成分(B)」と呼称する場合がある。〕は、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンを少なくとも共重合させることで得ることができる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。これらの中で、熱可塑性エラストマー組成物(X)への柔軟性付与の観点から、炭素数3~12のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンがより好ましく、1-オクテンがさらに好ましい。
成分(B)は、エチレンから導かれる構成単位が、通常70~99モル%、好ましくは80~97モル%の範囲、および炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位が、通常1~30モル%、好ましくは3~20モル%の範囲〔但し、エチレンから導かれる構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位との合計量を100モル%とする。〕にある。エチレンから導かれる構成単位の含有比率が前記範囲内であると、機械的強度に優れた熱可塑性エラストマー組成物(X)を得やすい。
成分(B)には、必要に応じて、α-オレフィン以外の単量体を共重合させることができる。α-オレフィン以外の単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1,4-ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン;ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物;およびアセチレン類が好ましい。これらの中でも、熱可塑性エラストマー組成物(X)の柔軟性の観点から、エチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)がより好ましい。
成分(B)は、MFR(ASTM D1238 荷重2.16kg,温度190℃)が、通常0.1~20g/10分、好ましくは0.3~10g/10分の範囲にある。
成分(B)のMFRを上記範囲内とすることで、流動性と機械的強度のバランス特性がより優れた熱可塑性エラストマー組成物(X)とすることができる。
成分(B)は、密度(ASTM D 1505に基づいて測定)が、通常0.8~0.9g/cm3の範囲にある。
成分(B)は、たとえば、チーグラー・ナッタ触媒、バナジウム系触媒やメタロセン触媒等の公知の重合用触媒を用いて製造することができる。重合方法は特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、バルク重合法等の液相重合法、気相重合法、その他公知の重合方法で重合できる。また、成分(B)は、市販品としても入手可能である。市販品としては、たとえば、ダウ・ケミカル社製の商品名エンゲージ8842〔エチレン・1-オクテン共重合体〕、エクソンモービル社製のVistalon(登録商標)、住友化学(株)社製のエスプレン(登録商標)、三井化学(株)社製の三井EPT(登録商標)、タフマーP(登録商標)、タフマーA(登録商標)等が挙げられる。
<軟化剤(C)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)の成分の一つである軟化剤(C)〔以下、「成分(C)」と呼称する場合がある。〕は、特に限定されないが、通常ゴムに使用される可塑剤を用いることができる。上記プロピレン系重合体(A)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)等との相溶性の観点から、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の炭化水素からなるプロセスオイルが好ましい。これら成分(C)の中でも耐候性や着色性の観点からパラフィン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましく、相溶性の観点からナフテン系炭化水素主体のプロセスオイルが好ましい。熱安定性および光安定性の観点から、プロセスオイル中の芳香族系炭化水素の含有量は、ASTM D2140-97に規定する炭素数比率で、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。
<ブロック共重合体の水素添加物(D)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)の成分の一つであるブロック共重合体の水素添加物(D)〔以下、「成分(D)」、あるいは、「水添物(D)」と呼称する場合がある。〕は、共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックと、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックとをそれぞれ少なくとも1つずつ有するブロック共重合体の水素添加物である。
成分(D)は、共役ジエンから導かれる構成単位の、少なくとも一部が水素添加(以下、「水添」と呼称する場合がある。)されてなる。
ここで、「ビニル芳香族から導かれる構成単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。また、「共役ジエンから導かれる構成単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
成分(D)において、「主体とする」とは、共重合体ブロック中、共役ジエン(又はビニル芳香族)から導かれる構成単位を当該共重合体ブロック中に、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含むことをいう。例えば、共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックとは、共役ジエンから導かれる構成単位を当該ブロック中に通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含むことを意味する。
成分(D)中の構成単位を導くビニル芳香族は、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。ビニル芳香族は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、経済性の観点から、スチレンが好ましい。
成分(D)中の構成単位を導く共役ジエンは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、経済性の観点から、ブタジエン、イソプレンが好ましい。共役ジエンは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
成分(D)における各ブロックの配置は、特に限定されず、適宜好適なものを採用することができる。例えば、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックをSで表示し、共役ジエンから導かれる構成単位を主体とし、かつ、当該構成単位の少なくとも一部が水添されたブロックをBで表す場合、このブロック共重合体の水添物は、SB、S(BS)n1(ここで、n1は1~3の整数を表す。)、S(BSB)n2(ここで、n2は1~2の整数を表す。)等で表されるリニアブロック共重合体や、(SB)n3X(ここで、n3は3~6の整数を表す。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基を表す。)で表される共重合体が挙げられる。これらの中でも、SBの2型(ジブロック)、SBSの3型(トリブロック)、SBSBの4型(テトラブロック)のリニアブロック共重合体が好ましい。
ここで、重合体ブロックBは、共役ジエンから導かれる構成単位のみからなる重合体ブロックであっても、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む(共役ジエンとビニル芳香族とが共重合した)重合体ブロックであってもよく、いずれの重合体ブロックも共役ジエンから導かれる構成単位の少なくとも一部は水添されてなる。なお、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む重合体ブロックは、該重合体ブロック中に、共役ジエンから導かれる構成単位を通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上含む。
成分(D)中のビニル芳香族から導かれる構成単位の含有量は、通常30~80質量%であり、熱可塑性エラストマー組成物(X)の耐熱性と、成分(D)の分散性の観点とから40~80質量%であることが好ましく、50~70質量%であることがより好ましい。ビニル芳香族から導かれる構成単位の含有量を30質量%以上とすることで熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の機械物性が一層向上し、80質量%以下とすることで熱可塑性エラストマー組成物(X)および熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の低温特性を一層改善できる。
成分(D)中のビニル芳香族から導かれる構成単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定することができる。
成分(D)中のビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の機械的強度の観点から、10質量%以上であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。ここで、成分(D)中のビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量は、四酸化オスミウムを触媒として水添前の共重合体をtert-ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I. M. Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法、以下、「四酸化オスミウム分解法」ともいう。)により得たビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックの質量(ここで、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックのうち、平均重合度が約30以下のものは除かれている)を用いて、下記式で定義される。
ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量(質量%)=(水添前の共重合体中のビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックの質量/水添前の共重合体の質量)×100
成分(D)中にビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックが複数存在している場合には、各々のブロックの分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。同様に、成分(D)中に共役ジエンから導かれる構成単位を主体とし、かつ、当該構成単位の少なくとも一部が水添されたブロックが複数存在している場合には、各々のブロックの分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。成分(D)中の各ブロックの境界や端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。各重合体ブロック中のビニル芳香族から導かれる構成単位の分布の態様は、特に限定されず、均一に分布していてもよいし、テーパー状、階段状、凸状、あるいは凹状に分布していてもよい。また、重合体ブロック中に、結晶部が存在していてもよい。
成分(D)中における各重合体ブロック中の共役ジエンから導かれる構成単位のビニル基の分布の態様は、特に限定されず、例えば、分布に偏りがあってもよい。ビニル基の分布を制御するための方法としては、重合中にビニル化剤を添加する方法や、重合温度を変化させる方法等が挙げられる。また、共役ジエンから導かれる構成単位の水添率の分布に偏りがあってもよい。水添率の分布は、ビニル基の分布の状況を変更する方法や、イソプレンとブタジエンを共重合した後に、後述される水添触媒を用いて水添し、イソプレンから導かれる構成単位とブタジエンから導かれる構成単位の水添速度の差を利用する方法等により制御することができる。
成分(D)は、熱可塑性エラストマー組成物(X)および熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐熱性、耐老化性および耐候性の観点から、水添前の共役ジエンから導かれる構成単位中に含まれる不飽和結合のうち、好ましくは75mol%以上が、より好ましくは85mol%以上が、更に好ましくは97mol%以上が水添されている。
水添に用いる水添触媒は特に限定されず、従来から公知の水添触媒が使用され得る。
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒を用いることができる。
具体的な水添触媒としては、特公昭42-008704号公報、特公昭43-006636号公報、特公昭63-004841号公報、特公平01-037970号公報、特公平01-053851号公報、特公平02-009041号公報、特開平08-109219号公報等に記載された水添触媒を使用することができる。これらの中でも、好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物等の還元性有機金属化合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、例えば、特開平08-109219号公報に記載された化合物が使用でき、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
成分(D)における上記水添前のブロック共重合体の重合方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することもできる。例えば、特公昭36-019286号公報、特公昭43-017979号公報、特公昭46-032415号公報、特公昭49-036957号公報、特公昭48-002423号公報、特公昭48-004106号公報、特公昭56-028925号公報、特開昭59-166518号公報、特開昭60-186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
必要に応じて、成分(D)は、極性基を有してもよい。極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等が挙げられる。
成分(D)中の水添前のブロック共重合体における共役ジエンから導かれる構成単位中のビニル結合含有量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の柔軟性および耐傷性の観点から、5mol%以上が好ましく、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の生産性、破断伸び性および耐傷性の観点から、70mol%以下が好ましい。共役ジエンから導かれる構成単位中のビニル結合含有量は、10~50mol%がより好ましく、10~30mol%が更に好ましく、10~25mol%がより更に好ましい。
ここでいう、ビニル結合含有量とは、水添前の共役ジエンの1,2-結合、3,4-結合および1,4-結合の結合様式で組み込まれているうちの、1,2-結合および3,4-結合で組み込まれているものの割合を意味する。ビニル結合含有量は、NMRによって測定することができる。
架橋する前の成分(D)の重量平均分子量は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の観点から、好ましくは5万以上であり、成形流動性の観点から、好ましくは40万以下であり、より好ましくは5万~30万である。分子量分布(Mw/Mn:重量平均分子量/数平均分子量)は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の観点から、1に近い値であることが好ましい。重量平均分子量および数平均分子量は、溶媒に、テトラヒドロフラン(1.0mL/分)を使用し、オーブン温度40℃の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;島津製作所製、装置名「LC-10」)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm、2本)により求めることができる。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレン換算分子量として算出される。
成分(D)の前記共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックは、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む共重合体ブロックであることが、耐摩耗性の観点から好ましい。
成分(D)の前記共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックが、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む共重合体ブロックである場合、当該共役ジエンおよびビニル芳香族は特に限定されず、上記した共役ジエンおよびビニル芳香族を単量体として用いることができる。それらの中でも、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の機械的強度と耐衝撃性のバランスの観点から、共役ジエンから導かれる構成単位およびビニル芳香族から導かれる構成単位の好ましい組合せとしては、ブタジエンから導かれる構成単位とスチレンから導かれる構成単位とを含むブロック、イソプレンから導かれる構成単位とスチレンから導かれる構成単位とを含むブロック等が挙げられる。
成分(D)の前記共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックは、少なくとも共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含むものであればよく、各単量体の含有量は特に限定されない。成分(D)の前記共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックが、共役ジエンから導かれる構成単位とビニル芳香族から導かれる構成単位とを含む共重合体ブロックである場合、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の機械的強度と耐衝撃性のバランスの観点から、該共重合体ブロック中におけるビニル芳香族から導かれる構成単位の含有量は10質量%以上50質量%未満であることが好ましく、20質量%以上50質量%未満であることがより好ましい。
<ポリオルガノシロキサン(E)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれてよい成分の一つであるポリオルガノシロキサン(E)〔以下、「成分(E)」と呼称する場合がある。〕の構造としては、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐摩耗性や手触り感の観点から、直鎖状、分岐状、又は架橋構造のポリマー構造であることが好ましい。
成分(E)は、特に限定されず、公知のものを用いることもできる。好ましいポリオルガノシロキサンとしては、アルキル基、ビニル基、アリール基等の置換基を有するシロキサン単位を含むポリマーであり、これらの中でも特に、アルキル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、メチル基を有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
メチル基を有するポリオルガノシロキサンの具体例としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
成分(E)は、その動粘度は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐摩耗性および耐傷性の観点から、JIS Z8803に規定する動粘度(25℃)は5000センチストークス(cSt)以上であることが好ましい。また、得られる熱可塑性エラストマー組成物(X)における成分(E)の分散性が向上する傾向にあり、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の外観に優れ、熱可塑性エラストマー組成物(X)の溶融押出時の品質安定性も一層向上する傾向にあることから、成分(E)の動粘度は300万cSt未満であることが好ましい。成分(E)の動粘度は、1万cSt以上300万cSt未満であることがより好ましく、5万cSt以上300万cSt未満であることが更に好ましい。
<熱可塑性エラストマー組成物(X)>
熱可塑性エラストマー組成物(X)中の前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の柔軟性、および熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の観点から、前記プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは50~300質量部、より好ましくは50~250質量部、さらに好ましくは50~200質量部である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)中の前記軟化剤(C)の量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の成形性と耐熱性の観点から、前記プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは50~280質量部、より好ましくは60~280質量部、さらに好ましくは80~280質量部である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)中の前記ブロック共重合体の水素添加物(D)の量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の成形性、および、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の観点から、前記プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは90~400質量部、より好ましくは95~350質量部、さらに好ましくは100~280質量部の範囲である。
また、熱可塑性エラストマー組成物(X)は、上記成分(B)、上記成分(C)および上記成分(D)に加え、前記ポリオルガノシロキサン(E)を含有してもよい。熱可塑性エラストマー組成物(X)中の前記ポリオルガノシロキサン(E)の量は、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは2~30質量部、より好ましくは2~25質量部、さらに好ましくは2~20質量部である。
ポリオルガノシロキサン(E)の配合量が2質量部以上であると、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の改良効果が十分に現れ、30質量部以下であると熱可塑性エラストマー組成物(X)中でのポリオルガノシロキサン(E)の分散性に優れる。
熱可塑性エラストマー組成物(X)は成形性と、熱可塑性エラストマー組成物(X)から得られる成形体の耐傷性の観点から、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と軟化剤(C)の質量比(C/B)が、好ましくは、0を超え3未満、より好ましくは0.6~2.8、さらに好ましくは0.7~2.5である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)は、必要に応じて下記有機過酸化物(F)〔以下、「成分(F)」と呼称する場合がある。〕を含むことが好ましい。
成分(F)は、熱可塑性エラストマー組成物(X)を動的に熱処理することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(X)の成分である成分(A)と成分(B)および成分(D)の架橋開始剤等として働く。
〈有機過酸化物(F)〉
有機過酸化物(F)の具体例としては、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等が挙げられる。
これら成分(F)の中でも、熱分解温度および架橋性能等の観点から、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
成分(F)は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物(X)が成分(F)を含む場合は、その含有量は、熱可塑性エラストマー組成物(X)の成形時の流動性の観点から、成分(A)100質量部に対して、好ましくは2~6質量部、より好ましくは2~4質量部である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)が成分(F)を含む場合は、下記架橋助剤を併用することが好ましい。
〈架橋助剤〉
熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれ得る架橋助剤は、種々公知の架橋助剤、具体的には、単官能単量体や多官能単量体が挙げられる。かかる架橋助剤は架橋反応速度を制御することができる。
単官能単量体としては、例えば、ラジカル重合性のビニル系単量体が好ましく、芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸単量体、無水マレイン酸単量体、N-置換マレイミド単量体等が挙げられる。
単官能単量体の具体例として、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシスチレン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、無水1,2-ジメチルマレイン酸、無水エチルマレイン酸,無水フェニルマレイン酸、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-セチルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、反応容易性と汎用性の観点から、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、無水マレイン酸、N-メチルマレイミド等が好ましい。これらの単官能単量体は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多官能単量体は、官能基としてラジカル重合性の官能基を複数有する単量体であり、ビニル基を有する単量体が好ましい。多官能単量体の官能基の数は2個又は3個が好ましい。
多官能単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2-ポリブタジエン等が好ましく、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレートがより好ましい。これらの多官能単量体は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性エラストマー組成物(X)が架橋助剤を含む場合、架橋助剤の量は、成分(F)100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは1~50質量部である。
<熱可塑性エラストマー組成物(X)の製造方法と物性>
熱可塑性エラストマー組成物(X)は、熱可塑性エラストマーを含む各成分を、公知の方法により混合することにより製造される。例えば、熱可塑性エラストマー組成物(X)は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を混合して製造されてもよい。また、成分(A)、成分(B)、成分(C)成分(D)および成分(E)を混合して製造されてもよい。
また、熱可塑性エラストマー組成物(X)を動的架橋することにより、熱可塑性エラストマー組成物(X)に含まれる成分(A)、成分(B)および成分(D)の少なくとも一部が架橋されてもよい。動的架橋を行う際には、前記成分(F)の存在下、あるいは前記成分(F)と前記架橋助剤の存在下に、動的に熱処理するのがよい。
本発明において、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
なお、熱可塑性エラストマー組成物(X)に対し、動的に熱処理する前の組成物を「組成物1」とも呼び、動的に熱処理されてなる組成物を「組成物2」とも呼ぶ。
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行うことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理の温度は、成分(A)の融点から300℃の範囲であり、通常、150~270℃、好ましくは170~250℃である。混練時間は、通常1~20分間、好ましくは1~10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度で表すと通常10~50,000s-1、好ましくは100~10,000s-1の範囲にある。
組成物2のショアA硬度(10秒値)(JIS K 6253の測定方法に準拠)は、好ましくは30~75、より好ましくは40~73、さらに好ましくは50~70である。
組成物2のショアA硬度(10秒値)が前記範囲にあると、触感や高級な外観等の意匠性、耐傷性を備えた成形体を容易に形成することができる。
組成物2のメルトフローレート(JIS K 7210の測定方法に準拠、230℃、1.2kg荷重)は、成形性に優れる組成物となる等の点から、好ましくは0.1~100g/10分、より好ましくは5~90g/10分、さらに好ましくは10~80g/10分である。
熱可塑性エラストマー組成物(X)は、上記成分(A)等に加え、無機フィラー、可塑剤、その他の添加剤を含んでもよい。
無機フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、酸化チタン、クレー、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート(DOP)等のフタル酸エステル等が挙げられる。
その他の添加剤としては、例えば、カーボンブラックや二酸化チタン又はフタロシアニンブラック等の有機・無機顔料;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールやオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の熱安定剤;トリスノニルフェニルフォスファイトやジステアリルペンタエリストールジホスファイト等の酸化防止剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'メチルフェニル)ベンゾトリアゾールや2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ビス-[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル]セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート等の光安定剤;ポリリン酸アンモニウムやトリオクチルホスフェートおよび水酸化マグネシウム等の難燃剤;ジメチルシリコンオイルやメチルフェニルシリコンオイル等のシリコンオイル;ステアリン酸アミドやエルカ酸アミド等のアンチブロッキング剤;重炭酸ナトリウムやN,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の発泡剤;パルミチン酸モノグリセライドやステアリン酸モノグリセライド等の帯電防止剤;銀イオン担持ゼオライトやチオサルファイト銀錯体等の抗菌剤等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた原材料の各成分の試験法は以下の通りである。
[成分(D)の水添率(%)]
成分(D)の水添率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定した。測定機器として核磁気共鳴測定装置(JEOL社製、装置名「JNM-LA400」)を用い、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、化学シフト基準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。サンプル濃度50mg/mL、観測周波数400MHz、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°および測定温度26℃の条件で測定を行った。
[各種単量体から導かれる構成単位の量、および結合単位の含有量]
ビニル芳香族から導かれる構成単位の量、ビニル結合含有量は、NMRにより測定した。ここで、ビニル結合含有量は、ブタジエンの1,4-結合、1,2-結合および3,4-結合様式で組み込まれているうちの、1,2-結合および3,4-結合で組み込まれているものの割合である。
測定機器として核磁気共鳴測定装置(JEOL社製、装置名「JNM-LA400」)を用い、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、化学シフト基準としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。サンプル濃度50mg/mL、観測周波数400MHz、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°および測定温度26℃の条件で測定を行った。
成分(B)中に含まれる各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。具体的には、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1(体積比)、積算回数:8000回の条件で、成分(B)の13C-NMRのスペクトルから算出した。
[成分(D)中のスチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量(Os値)]
成分(D)中のスチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量は、水添前の共重合体を用いて、I. M. Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法(四酸化オスミウム分解法)により測定した。水添前の共重合体の分解にはオスミウム酸の0.1g/125mL第3級ブタノール溶液を用いた。スチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量は、下記式にて算出した。ここで得られるスチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量を「Os値」と称する。
スチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量(Os値;質量%)
=[(水添前の共重合体中のスチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの質量)/(水添前の共重合体の質量)]×100
[成分(D)の損失正接(tanδ)のピーク温度]
成分(D)について、粘弾性測定解析装置(ARES、Ta Instruments社製)を用い、ひずみ0.1%、周波数1Hzの条件で粘弾性スペクトルを測定することで、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)が最大値となる際の温度(以下「ピーク温度」ともいう。)を求めた。
〔重量平均分子量〕
下記合成例で得られた成分(D)の重量平均分子量は、溶媒に、テトラヒドロフラン(流速:1.0mL/分)を使用し、オーブン温度40℃の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;島津製作所製、装置名「LC-10」)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mmID×30cm、2本)により求めた。得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、重量平均分子量(Mw)を算出した。
<原材料>
実施例および比較例では、下記の原材料を用いた。
〔プロピレン系重合体(A)〕
プロピレン系重合体(A-1)として、プロピレン単独重合体(ホモPP)(商品名 サンアロマー(登録商標) PL400A サンアロマー社製)を用いた。なお、プロピレン系重合体(A-1)は、ASTM D 1238-65Tの測定方法に準拠して230℃、2.16kg荷重条件で測定したメルトフローレート(MFR)が2.0g/10分)である。
〔エチレン・α-オレフィン共重合体(B)〕
エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)として、エチレン・1-オクテン共重合体(ダウ・ケミカル社製、商品名「エンゲージ8842」)を使用した。エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)のエチレンから導かれる構成単位の量は55質量%(83モル%)であり、オクテンから導かれる構成単位の量は45質量%(17モル%)であり、ASTM D1238に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定したMFRは1.0g/10分である。
〔軟化剤(C)〕
軟化剤(C-1)として、パラフィン系オイル(出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイル PW-100」)を用いた。
〔ブロック共重合体の水素添加物(D)〕
ブロック共重合体の水素添加物(D)として、以下に示す方法で製造したブロック共重合体の水添物を用いた。
〔ブロック共重合体の水素添加物(D-1)の製造〕
(1)水添触媒の調製
ブロック共重合体の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。窒素置換した反応器に、乾燥および精製したシクロヘキサン1Lを仕込み、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド100mmolを添加し、十分に攪拌しながら、トリメチルアルミニウム200mmolを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
(2)ブロック共重合体の水素添加物の製造
内容積が10Lの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。はじめに、シクロヘキサン6.4L、スチレン75gを加え、予め、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn-ブチルリチウムのLiモル数の0.25倍モルになるように添加して、n-ブチルリチウム開始剤のLiのモル数として10ミリモルとなるように添加し、初期温度65℃で重合した。重合終了後、ブタジエン470gとスチレン380gを含有するシクロヘキサン溶液(ブタジエンとスチレンの合計がシクロヘキサン溶液の22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、重合した。重合終了後、スチレン75gを含有するシクロヘキサン溶液(スチレンの含有量がシクロヘキサン溶液の22質量%)を10分間かけて添加して重合することにより、共重合体(D-1')を得た。
得られた共重合体(D-1')中のスチレンから導かれる構成単位の含有量は53質量%、スチレンから導かれる構成単位を主体とするブロックの含有量は15質量%、共役ジエンから導かれる構成単位中のビニル結合含有量は23mol%であった。
得られた共重合体(D-1')に、上記水添触媒を共重合体(D-1')100質量部当たりチタン換算で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度75℃で水添反応を行った。得られた溶液に、熱安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体の水素添加物100質量部に対して0.3質量部となるように添加して、ブロック共重合体の水素添加物(D-1)を得た。
得られたブロック共重合体の水素添加物(D-1)の重量平均分子量は16万であり、ブロック共重合体の水素添加物(D-1)中に含まれるブタジエンの二重結合中の水添率は、99%であった。また、粘弾性測定により得られたtanδピークの一つは-15℃に存在していた。
〔ポリオルガノシロキサン(E)〕
ポリオルガノシロキサンの添加には、ポリジメチルシロキサン(E-1)50質量%とポリプロピレン50質量%とからなるマスターバッチ(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製、商品名「MB50-001」))を用いた。なお、マスターバッチに含まれるポリプロピレンは、プロピレン系重合体(A)に該当するので、以下では、プロピレン系重合体(A-2)と記載することがある。すなわち、前記マスターバッチは、ポリジメチルシロキサン(E-1)50質量%とプロピレン系重合体(A-2)50質量%とからなるマスターバッチである。
〔有機過酸化物(F)〕
有機過酸化物(F-1)として、下記有機過酸化物と下記架橋助剤の混合物を使用した。
有機過酸化物:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、商品名「パーヘキサ25B」) 100質量部
架橋助剤:ジビニルベンゼン(和光純薬社製;以下、「DVB」と称する。)15質量部
<実施例1>
〔熱可塑性エラストマー組成物(X)の製造〕
押出機として、バレル中央部にオイル注入口を有した二軸押出機(30mmφ、L/D=74;神戸製鋼所製、「KTX-30」)を用いた。スクリューとしては注入口の前後に混練部を有した2条スクリューを用いた。以下に記載した軟化剤以外の原料を以下に示した組成比(質量部比)で一括混合したのち、二軸押出機(シリンダー温度200℃)に定量フィーダーで導入し、引き続き、押出機の中央部にある注入口より以下に示した量の軟化剤をポンプにより注入し、溶融押出を行い、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)を得た。
プロピレン系重合体(A-1): 100質量部
プロピレン系重合体(A-2): 7質量部
エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1):143質量部
軟化剤(C-1): 143質量部
ブロック共重合体の水素添加物(D-1): 243質量部
ポリジメチルシロキサン(E-1): 7質量部
有機過酸化物(F-1): 3質量部
ここで、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)では、軟化剤(C-1)の量の、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)の量に対する割合(成分C/成分B(質量比)は、1.00である。なお、ポリジメチルシロキサン(E-1)とプロピレン系重合体(A-2)とは、マスターバッチ14質量部として、添加した。
〔成形1:射出成形体の製造〕
射出成形機は、株式会社名機製作所製「M150CL-DM」を用いた。成形条件は、樹脂温度220℃、金型温度40℃で実施した。縦15cm×横9cmの大きさを有し、シボ加工(算術平均粗さRa=20μmの一次シボ)が施された平板金型を用いて、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)の射出成形を行い、得られた成形体を、成形体サンプルとした。なお、算術平均粗さRaは以下の測定方法により測定した。さらに、一次シボに含まれる、第一の凸部の高さおよび第一の凹部の深さも測定した。また、一次シボのピッチとして、JIS B 0601:2013に規定される粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を求めたところ、1319μmであった。
〔一次シボの算術平均粗さRa、第一の凸部の高さ、第一の凹部の深さの測定〕
JIS B0601:2013に準拠し、得られた成形体サンプルの表面に施された一次シボの算術平均粗さRa、最大山高さ、最大谷深さを、表面粗さ測定機(表面粗さ形状測定機サーフコム1400D、東京精密社製)によって測定した。測定条件は以下の通りに設定した。得られた一次シボの最大山高さを第一の凸部の高さとし、得られた一次シボの最大谷深さを第一の凹部の深さとした。
接触子:球状φ1.6mm
仕様荷重:0.4gf
測定長さ:40mm
カットオフ波長:8mm
測定速度:0.15mm/sec
〔成形2:二次シボの形成〕
得られた成形体サンプルについて、常法により第一の凸部にエッチングを行い、二次シボを形成した。二次シボは、第二の凹部および第二の凸部からなる。二次シボを形成した後の成形体サンプルの物性は、以下の方法で評価した。表1に結果を示す。
〔二次シボにおけるS5pとSpcの測定〕
二次シボの第二の凸部について、ISO 25178-2:2012に規定される山頂の5点平均高さ(S5p)、および、山頂の算術平均曲率(Spc)を測定した。山頂の5点平均高さ(S5p)、および、山頂の算術平均曲率(Spc)は、共焦点レーザー顕微鏡(LEXT OLS4000)によって測定した。測定条件は以下の通りに設定した。なお、これらの値を求める際の観察範囲は、一次シボの影響を無視できるように、一次シボで形成された第一の凸部の大きさに対して十分小さく設定した。また、Spcを測定する際に使用した第二の凸部の大きさは、ISO 25178-2:2012に規定される「山部の所定サイズ」に相当する。以下の測定では、成形体の輪郭曲面の最大振幅の5%の高さを有する第二の凸部の高さを、Spcの測定に使用した。
対物レンズ:50倍
測定モード:高精度(×50)
補正:ノイズ除去・表面補正あり
観察範囲:258μm×258μm
〔触感評価(さらさら感)〕
二次シボを形成した後の成形体サンプルの表面を人差し指の指腹で摺動した際の触感を、以下の数値化基準に従って、3人の評価者の各々に数値化してもらった。各評価者から得られた数値化の結果の合計点を、下記の評価基準により評価した。合計点と評価結果とを表1に示した。
(数値化基準)
2点:表面を指で摺動した際に抵抗を感じなかった。
1点:表面を指で摺動した際に抵抗を感じた。
(評価基準)
〇:合計点が4点以上であった。
×:合計点が4点未満であった。
〔外観評価〕
二次シボを形成する前の成形体サンプル(成形1で得られた成形体サンプル)の表面と、二次シボを形成した後の成形体サンプルの表面とを、3人の評価者の各々に目視で観察、比較してもらい、以下の数値化基準に従って、数値化してもらった。各評価者から得られた数値化の結果の合計点を、下記の評価基準により評価した。合計点と評価結果とを表1に示した。
(数値化基準)
2点:二次シボ形成後にスジ状の外観不良の発生が確認されなかった。
1点:二次シボ形成後にスジ状の外観不良の発生が確認された。
(評価基準)
〇:合計点が4点以上であった。
×:合計点が4点未満であった。
<実施例2~10>
実施例1の成形1で得られた成形体サンプルに対して形成する二次シボのS5pやSpcを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、二次シボの形成および評価を行った。表1に結果を示す。
<実施例11~19>
〔成形3:射出成形体の製造〕
平板金型として、算術平均粗さRa=15μmの一次シボが施された金型を用いた他は、実施例1の成形1と同様に、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)の射出成形を行い、得られた成形体を、成形体サンプルとした。一次シボのピッチとして、JIS B 0601:2013に規定される粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を求めたところ、884μmであった。一次シボにおける、算術平均粗さRa、第一の凸部の高さおよび第一の凹部の深さも実施例1と同様の方法により測定した。
〔二次シボの形成〕
成形3で得られた成形体サンプルに対して形成する二次シボのS5pやSpcを表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、サンプルの作成および評価を行った。表2に結果を示す。
<比較例1>
平板金型として、算術平均粗さRa=21μmの一次シボが施された金型を用いた他は、実施例1の成形1と同様に、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)の射出成形を行い、得られた成形体を、成形体サンプルとした。一次シボにおける、算術平均粗さRa、第一の凸部の高さおよび第一の凹部の深さも実施例1と同様の方法により測定した。その後、得られた成形体サンプルに施す二次シボのS5pやSpcを表3に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、サンプルの作成および評価を行った。表3に結果を示す。
<比較例2、3>
〔成形4:射出成形体の製造〕
平板金型として、算術平均粗さRa=26μmの一次シボが施された金型を用いた他は、実施例1の成形1と同様に、熱可塑性エラストマー組成物(X-1)の射出成形を行い、得られた成形体を、成形体サンプルとした。一次シボにおける、算術平均粗さRa、第一の凸部の高さおよび第一の凹部の深さも実施例1と同様の方法により測定した。
〔二次シボの形成〕
成形4で得られた成形体サンプルに対して形成する二次シボのS5pやSpcを表3に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、サンプルの作成および評価を行った。表3に結果を示す。
Figure 2024070694000001
Figure 2024070694000002
Figure 2024070694000003

Claims (10)

  1. 成形体であって、
    前記成形体の表面に、第一の凹部および第一の凸部からなる一次シボが形成され、
    前記第一の凸部の表面に、第二の凹部および第二の凸部からなる二次シボが形成され、
    前記第二の凸部は、
    ISO 25178-2:2012に規定される山頂の5点平均高さS5pが、0.0μmを超え16.0μm以下であり、
    ISO 25178-2:2012に規定される山頂の算術平均曲率Spcが、110mm-1以上310mm-1以下である、成形体。
  2. 前記一次シボは、JIS B0601:2013に規定される算術平均粗さRaが、0μmを超え、25μm以下である、請求項1に記載の成形体。
  3. 前記第一の凸部の高さが、15~55μmである、請求項1または2に記載の成形体。
  4. 前記第一の凹部の深さが、25~65μmである、請求項1または2に記載の成形体。
  5. 熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる、請求項1または2に記載の成形体。
  6. 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)が、
    プロピレン系重合体(A)、
    エチレンから導かれる構成単位と炭素数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含むエチレン・α-オレフィン共重合体(B)、
    軟化剤(C)、および
    共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックと、ビニル芳香族から導かれる構成単位を主体とするブロックと、をそれぞれ少なくとも1つずつ有するブロック共重合体の水添物(D)
    を含む、請求項5に記載の成形体。
  7. 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)が、ポリオルガノシロキサン(E)をさらに含む、請求項6に記載の成形体。
  8. 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)において、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と前記軟化剤(C)の質量比(C/B)が、0.80~1.20である、請求項6に記載の成形体。
  9. 前記ブロック共重合体の水添物(D)の共役ジエンから導かれる構成単位を主体とするブロックが、共役ジエンから導かれる構成単位を主体として含み、かつビニル芳香族から導かれる構成単位を含む、共重合体ブロックである、請求項6に記載の成形体。
  10. 前記熱可塑性エラストマー組成物(X)からなる射出成形体である、請求項6に記載の成形体。
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