JP2024068906A - 無鉛圧電磁器組成物、圧電素子、及び圧電素子を備える装置 - Google Patents

無鉛圧電磁器組成物、圧電素子、及び圧電素子を備える装置 Download PDF

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Yoshiyuki Hirose
嗣人 山田
Tsuguto Yamada
広司 丸山
Koji Maruyama
利明 倉橋
Toshiaki Kurahashi
和昭 北村
Kazuaki Kitamura
健志 木村
Kenji Kimura
健太郎 市橋
Kentaro ICHIHASHI
崇 笠島
Takashi Kasashima
正人 山崎
Masato Yamazaki
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Abstract

【課題】良好な高温耐久性と、高い機械的品質係数Qmを有する無鉛圧電磁器組成物を提供することを目的とする。【解決手段】ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物の複数の粒子を主成分として含有する無鉛圧電磁器組成物である。前記粒子には、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素であるM1元素が含まれており、前記粒子の少なくとも一部は、コア部とシェル部とを備えたコアシェル構造のコアシェル粒子であり、前記コアシェル粒子において、前記シェル部に存在する前記M1元素の含有率が前記コア部に存在する前記M1元素の含有率の1.5倍以上である。【選択図】図1

Description

本開示は、無鉛圧電磁器組成物、圧電素子、及び圧電素子を備える装置に関する。
特許文献1には、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物を主相とする無鉛圧電磁器組成物が開示されている。
特許文献1の無鉛圧電磁器組成物は、良好な高温耐久性を有するとの開示がある。
しかし、特許文献1の無鉛圧電組成物は、機械的品質係数Qmが必ずしも十分でなかった。
国際公開第2014/156015号公報
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な高温耐久性、及び高い機械的品質係数Qmを有する無鉛圧電磁器組成物を提供することを目的とする。
[1] ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物からなる粒子を主成分とする複数の粒子を含有する無鉛圧電磁器組成物であって、
前記粒子には、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素であるM1元素が含まれており、
前記粒子の少なくとも一部は、コア部とシェル部とを備えたコアシェル構造のコアシェル粒子であり、
前記コアシェル粒子において、前記シェル部に存在する前記M1元素の含有率が前記コア部に存在する前記M1元素の含有率の1.5倍以上である、無鉛圧電磁器組成物。
本開示によれば、良好な高温耐久性、及び高い機械的品質係数Qmを有する無鉛圧電磁器組成物を提供できる。
実施形態の無鉛圧電磁器組成物の切断面をあらわす模式図である。 実施形態の無鉛圧電磁器組成物のコアシェル粒子を表す模式図である。 実施形態の圧電素子の製造方法を示すフローチャートである。 実施形態の圧電素子を示す模式図である。 実施形態の一つである圧電フィルタを示す模式図である。 実施形態の一つである超音波振動子を示す模式図である。 実施形態の一つである超音波センサを示す模式図である。 実施形態の一つである圧電トランスを示す模式図である。 実施形態の一つである圧電超音波トランスデューサを示す模式図である。 実施形態の一つである圧電ジャイロセンサを示す模式図である。 実施形態の一つであるノックセンサを示す模式図である。
[2]無鉛圧電磁器組成物の切断面に現れた複数のコアシェル粒子を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により分析して、
各コアシェル粒子についてコア部の各断面積を求め、各断面積を平均して平均断面積S1を算出し、
各コアシェル粒子についてシェル部の各断面積を求め、各断面積を平均して平均断面積S2を算出した場合に、
平均断面積S1に対する平均断面積S2の比の値(S2/S1)が0.05以上2.12以下である、[1]に記載の無鉛圧電磁器組成物。
[3]粒子の少なくとも一部は、コアシェル構造を有さない非コアシェル粒子である、[1]又は[2]に記載の無鉛圧電磁器組成物。
[4]ペロブスカイト型酸化物は、Mn(マンガン)を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物。
[5]Ti(チタン)を含むスピネル化合物からなる副相を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物。
[6]ペロブスカイト型酸化物は、組成式(KNaLi(D)O
(元素CはCa(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)のうちの少なくともCa(カルシウム)又はBa(バリウム)を含む一種以上、
元素DはNb(ニオブ),Ta(タンタル),Ti(チタン),Zr(ジルコニウム),Hf(ハフニウム),Sn(スズ),Sb(アンチモン),Si(ケイ素)のうちの少なくともNb(ニオブ)又はTa(タンタル)を含む一種以上、
元素EはMg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Sc(スカンジウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Y(イットリウム)の一種以上、
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
eは0.80≦e≦1.10を満たし
f+g=1
hはペロブスカイトを構成する任意の値)で表される、[1]から[5]のいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の無鉛圧電磁器組成物からなる圧電体と、圧電体に接する電極とを備える、圧電素子。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の圧電素子を備える、装置。
[9]圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波トランスデューサ、圧電ジャイロセンサ、及びノックセンサからなる群より選択される、[1]から[8]のいずれかに記載の装置。
1.無鉛圧電磁器組成物
(1)無鉛圧電磁器組成物
本開示の一実施形態としての無鉛圧電磁器組成物は、ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物の複数の粒子を主成分として含有する。粒子には、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素であるM1元素が含まれている。粒子の少なくとも一部は、コア部とシェル部とを備えたコアシェル構造のコアシェル粒子である。コアシェル粒子において、シェル部に存在するM1元素の含有率がコア部に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上である。
(1.1) ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物
本開示のニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物(以下、単に「ペロブスカイト型酸化物」ともいう。)は、複数種類のペロブスカイト型酸化物の総称である。ペロブスカイト型酸化物のアルカリ系成分は、アルカリ金属(K(カリウム)、Na(ナトリウム)、Li(リチウム)等)を少なくとも含み、また、アルカリ土類金属(Ca(カルシウム)、Ba(バリウム)等)を含む。
このようなペロブスカイト型酸化物としては、以下の組成式((1)式)で表されるものが好ましく例示される。尚、O原子はペロブスカイト構造を維持できる量とされている。

(KNaLi(D)O …(1)
この組成式では、各サイトを1に規格化している。上記組成式(1)において、ペロブスカイト構造のいわゆるAサイトには、K(カリウム),Na(ナトリウム)、Li(リチウム)、元素Cが配置される。元素Cは、Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)のうちの少なくともCa(カルシウム)又はBa(バリウム)を含む一種以上である。
ペロブスカイト構造のいわゆるBサイトには、元素D,元素Eが配置される。元素Dは、Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Ti(チタン),Zr(ジルコニウム),Hf(ハフニウム),Sn(スズ),Sb(アンチモン),Si(ケイ素)のうちの少なくともNb(ニオブ)又はTa(タンタル)を含む一種以上である。元素Eは、Mg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Sc(スカンジウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Y(イットリウム)の一種以上である。
上記組成式(1)において、それぞれの元素割合は、無鉛圧電磁器組成物の高温耐久性、又は、機械的品質係数Qmの観点から、以下の範囲が好ましい。

0≦a≦1.00、
0≦b≦1.00、
0≦c≦0.10、
0≦d≦0.20、
0.80≦e≦1.10、
0≦f≦1.00、
0≦g≦0.10、
hの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
f+g=1
ペロブスカイト型酸化物は、以下の観点からMn(マンガン)を含むことが好ましい。Mn(マンガン)はペロブスカイト型酸化物に対して固溶しにくく、無鉛圧電磁器組成物中に異相として偏析しやすい。他方、アルカリ金属よりもMnと価数の近い2価の元素であるBa(バリウム),Ca(カルシウム),Sr(ストロンチウム)がAサイトに固溶すると、Mn(マンガン)がNb(ニオブ)のBサイトに固溶することを助けると推測される。
無鉛圧電磁器組成物におけるマンガン(Mn)の含有量は、機械的品質係数Qm値の向上、及び焼結性の観点から、Aサイト、及びBサイトを構成する元素の合計100モル%に対し、0モル%より大きく10.0モル%以下であることが好ましい。無鉛圧電磁器組成物におけるMn(マンガン)の含有割合は、0.3モル%以上8.0モル%以下であることがより好ましい。無鉛圧電磁器組成物におけるMn(マンガン)の含有割合は、0.6モル%より大きく5.0モル%以下であることが更に好ましい。
ペロブスカイト型酸化物の組成式の好適な例を記載する。
<ペロブスカイト型酸化物の組成式の具体例1>
(KNaLiBa(Nbf1Tif2Zrf3Mn)O …(2)

0≦a≦1.00、
0≦b≦1.00、
0≦c≦0.10、
0≦d≦0.20、
0.80≦e≦1.10、
0≦f1≦1.00、
0≦f2≦0.20、
0≦f3≦0.20、
0≦g≦0.10、
hの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
f1+f2+f3+g=1
<ペロブスカイト型酸化物の組成式の具体例2>
(KNaLiCa(Nbf1Tif2Zrf3Mn)O …(3)

0≦a≦1.00、
0≦b≦1.00、
0≦c≦0.10、
0≦d≦0.20、
0.80≦e≦1.10、
0≦f1≦1.00、
0≦f2≦0.20、
0≦f3≦0.20、
0≦g≦0.10、
hの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d=1
a+b+c≠0
f1+f2+f3+g=1
<ペロブスカイト型酸化物の組成式の具体例3>
(KNaLiBad1Cad2(Nbf1Tif2Zrf3Mn)O …(4)

0≦a≦1.00、
0≦b≦1.00、
0≦c≦0.10、
0≦d1≦0.20、
0≦d2≦0.20、
0.80≦e≦1.10、
0≦f1≦1.00、
0≦f2≦0.20、
0≦f3≦0.20、
0≦g≦0.10、
hの値は、ペロブスカイト型結晶構造を維持し得る任意の値
a+b+c+d1+d2=1
a+b+c≠0
f1+f2+f3+g=1
(1.2)粒子
図1は、無鉛圧電磁器組成物の断面を表す模式図である。無鉛圧電磁器組成物には、ペロブスカイト型酸化物の複数の粒子10が含有されている。複数の粒子10同士の間には粒界5が存在してもよい。無鉛圧電磁器組成物においては、ペロブスカイト型酸化物の粒子10が主成分となっている。尚、主成分とは、含有率(モル%)が50モル%以上の物質をいう。
(1.3)粒子10の組成
本開示のペロブスカイト型酸化物からなる粒子10は、MI元素を含む。M1元素は、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素である。
粒子10の組成は、上述の「(1.1) ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物」の欄における式(1)(2)(3)(4)で示される組成が好ましい。
(1.4)コアシェル粒子7
粒子10の少なくとも一部は、コア部1とシェル部3とを備えたコアシェル構造のコアシェル粒子7である(図1,2参照)。粒子10には、後述するように、コアシェル構造を有さない非コアシェル粒子9が存在していてもよい(図1,2参照)。
コアシェル粒子7において、シェル部3に存在するM1元素の含有率がコア部1に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上である。M1元素が2種以上の場合には、含有率は2種以上の元素の含有率を合計し、合計値によって1.5倍以上であるか否かを判断する。
コアシェル粒子7は、コア部1の周囲にシェル部3が存在する。コアシェル粒子7は、コア部1が完全にシェル部3に内包されている状態であってもよい。または、コア部1の一部が露出して粒界5に接し、コア部1のその他の部分がシェル部3に内包される状態であってもよい。
(1.4.1)コアシェル粒子7の判別及びM1元素の含有率の測定
コアシェル粒子7の判別は以下のように行うことができる。
収束イオンビーム(FIB)を用いて、無鉛圧電磁器組成物の焼成体を薄片化し、断面観察サンプルを得る。得られた断面観察サンプルを走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察する。観察視野内には、図1に模式的に示される切断面11が現れ、切断面11に存在する粒界5に囲まれた粒子10を確認する。
粒子10がコアシェル粒子7であるか否かを区別する方法に特に制限はない。例えば、無鉛圧電磁器組成物を任意の面で切断した断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により元素マッピングを行い、元素マッピング像のコントラストを確認することで区別可能である。さらに、この段階でコアシェル粒子7のコア部1とシェル部3との区別も可能である。また、走査電子顕微鏡(SEM)の反射電子像などでも各粒子がコアシェル粒子7であるか否かの区別、およびコアシェル粒子7におけるコア部1とシェル部3との区別が可能な場合がある。
STEMおよびEDSにおける観察視野の設定方法には特に制限はないが、観察視野の大きさは2μm×2μm、観察視野の倍率は10000倍以上100000倍以下とすることが好ましい。
本開示では、シェル部3に存在するM1元素の含有率がコア部1に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上であるコアシェル粒子7が存在している。この要件を満たしていることを確認するために、M1元素の含有率を、次のように測定できる。コアシェル粒子7においてコア部1及びシェル部3のそれぞれに対して任意に測定点を設定し、エネルギー分散型X線分析(EDS)の点分析を行うことで、各測定点におけるM1元素の含有率を算出できる。さらに、各測定点におけるM1元素の含有率を平均することにより、コア部1におけるM1元素の含有率及びシェル部3におけるM1元素の含有率を算出できる。図2は、コアシェル粒子7のコア部1及びシェル部3を通る直線上に測定点を設定した場合のM1元素の含有率を模式的に示した図である。コア部1の含有率C1よりもシェル部3の含有率C2が大きいことが示されている。この図2では、直線上に測定点を設定しているが、測定点は実際には直線上に並んでおらず、コア部1の領域内の任意の10点、及びシェル部3の領域内の任意の10点である。
尚、M1元素が2種以上の場合には、含有率は2種以上の元素の含有率の合計とする。
シェル部3に存在するM1元素の含有率は、良好な高温耐久性、及び高い機械的品質係数Qmの観点からコア部1に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上30倍以下が好ましく、3倍以上20倍以下がより好ましく、5倍以上10倍以下がさらに好ましい。
尚、コアシェル粒子7の生成量は、無鉛圧電磁器組成物の焼成条件によって、適宜制御できる。また、無鉛圧電磁器組成物が緻密なセラミックとなる範疇で焼成温度を低く、最高温度の保持時間を短くすることで、コアシェル粒子7を生成することができる。
(1.5)非コアシェル粒子9
本開示のペロブスカイト型酸化物からなる粒子10は、上述のように非コアシェル粒子9を含んでもよい。非コアシェル粒子9は、コアシェル構造を有していない。非コアシェル粒子9は、均一に固溶しており、M1元素の含有率に偏りのない粒子である。
非コアシェル粒子9は、上述の「(1.4.1)コアシェル粒子7の判別及びM1元素の含有率の測定」において、粒子10のうちでコアシェル構造が確認できない粒子である。
本開示の無鉛圧電磁器組成物における粒子10には、高温耐久性又は機械的強度向上の観点から、コアシェル粒子7のみならず非コアシェル粒子9が含まれていることが望ましい。コアシェル粒子7のコア部1とシェル部3の界面の機械的強度は比較的低いと推測されるため、機械的強度に優れた非コアシェル粒子9を含ませることで、無鉛圧電磁器組成物の機械的強度が向上すると考えられる。
機械的強度を確保する観点から、無鉛圧電体磁器組成物における非コアシェル粒子9の数に対するコアシェル粒子7の数の比(コアシェル粒子数/非コアシェル粒子数)は、0.1以上50以下であることが好ましく、1以上30以下であることがより好ましく、5以上15以下であることがさらに好ましい。
尚、コアシェル粒子数/非コアシェル粒子数は、「(1.4.1)コアシェル粒子7の判別及びM1元素の含有率の測定」の欄に記載に沿い、観察視野が2μm×2μmにおいて、コアシェル粒子7と非コアシェル粒子9を判別するとともに、各個数を計測して計算することで求められる。
(1.6)平均断面積S1,S2
平均断面積S1,S2の測定方法を説明する。無鉛圧電磁器組成物の切断面に現れた複数のコアシェル粒子7を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により分析する。ここでのコアシェル粒子7は、シェル部3に存在するM1元素の含有率がコア部1に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上であるものを選択する。
各コアシェル粒子7についてコア部1の各断面積を求め、各断面積を平均して平均断面積S1を算出する。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいコア部1の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出できる。測定に用いるコアシェル粒子7の数は、例えば10個とする。
各コアシェル粒子7についてシェル部3の各断面積を求め、各前記断面積を平均して平均断面積S2を算出する。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)による元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいシェル部3の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出できる。
尚、MI元素にCa(カルシウム),Ba(バリウム)の2種を含む場合には、各元素の元素マッピング像から、元素別に平均断面積S1,S2を求めた。具体的には、Caの元素マッピング像から、平均断面積S1,S2を求めて、Ca元素についてのS2/S1を算出した。また、Baの元素マッピング像から、平均断面積S1,S2を求めて、Ba元素についてのS2/S1を算出した。
尚、コアシェル粒子7中のポア(空孔)、空隙、不純物が析出した副相のピクセルについては面積の算出から除外する。
本開示の無鉛圧電磁器組成物におけるコアシェル粒子7のS2/S1の値は、高温耐久性、及び機械的強度を確保する観点から、0.05以上2.12以下であることが好ましく、0.10以上1.00以下であることがより好ましく、0.20以上0.40以下であることが更に好ましい。
(2)副相(任意成分)
本開示の実施形態としての無鉛圧電磁器組成物は、ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物からなる結晶相(以下、主相ともいう。)と異なる副相を含み得る。副相は、Tiを含むスピネル化合物であってもよい。本開示における、副相を形成するTiを含むスピネル化合物は、以下の組成式(5)で表されるものが好ましい。
Tiを含むスピネル化合物の組成は、次の(5)式で表すことができる。
TiO…(5)
元素Mは、1から5価の金属元素であり、Li(リチウム),Na(ナトリウム),K(カリウム),Mg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Sc(スカンジウム),Cr(クロム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Y(イットリウム),Zr(ジルコニウム),Sn(スズ),Sb(アンチモン),Nb(ニオブ),Ta(タンタル),Si(ケイ素),Hf(ハフニウム)のうちの少なくとも1種である。なお、元素MとしてLi(リチウム)を含む場合には、スピネル化合物を形成するために、上記金属元素のうちのLi(リチウム)以外の他の1種以上の金属元素がLi(リチウム)とともに含まれることが好ましい。係数x、yは、Ti(チタン)の含有量を1としたときの相対値である。スピネル化合物を形成するために、係数xは、0.5≦x≦8.0を満たすことが好ましく、0.5≦x≦5.0を満たすことが更に好ましい。また、係数yは、スピネル化合物を形成する任意の値であるが、典型的には2≦y≦8を満たすことが好ましい。具体的なスピネル化合物としては、例えば、NiFeTiO,MgFeTiO,Ni(Ti,Zr)O,Ni(Ti,Hf)O,Ni1.5FeTi0.5,CoMgTiO,CoFeTiO,(Fe,Zn,Co)TiO,CoZnTiO,LiMnTiOを使用することが好ましい。スピネル化合物は、主相の構造を安定化するので、高い機械的品質係数Qmを有する無鉛圧電磁器組成物を提供することができる。
Tiを含むスピネル化合物は、A-Ti-B-O系化合物も含まれ、以下の(6)式又は(7)式の組成を有するものを利用可能である。

1-xTi1-x1+x…(6)
Ti…(7)

ここで、元素Aはアルカリ金属(K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)等)のうちの少なくとも1種であり、元素BはNb(ニオブ)とTa(タンタル)のうちの少なくとも1種である。上記(6)式の係数xは任意の値である。但し、係数xは、0≦x≦0.15を満たすことが好ましい。係数xがこの範囲の値を取れば、化合物の構造が安定し、均一な結晶相を得ることができる。
上記(6)式に従った具体的な化合物としては、KTiNbO,K0.90Ti0.90Nb1.10,K0.85Ti0.85Nb1.15,RbTiNbO,Rb0.90Ti0.90Nb1.10,Rb0.85Ti0.85Nb1.15,CsTiNbO,Cs0.90Ti0.90Nb1.10,KTiTaO,及びCsTiTaOなどを使用可能である。なお、この化合物の構造的な安定性の観点から、係数xは、元素AがK(カリウム)又はRb(ルビジウム)の場合には0≦x≦0.15を満たすことが好ましく、元素AがCs(セシウム)の場合には0≦x≦0.10を満たすことが好ましい。元素AとしてK(カリウム)を選択し、元素BとしてNb(ニオブ)を選択すれば、高い機械的品質係数Qmを有する無鉛圧電磁器組成物を提供することができる。
上記(6)式と(7)式で表される結晶相(副相)は、いずれも元素A(アルカリ金属)と、Ti(チタン)と、元素B(NbとTaのうちの少なくとも1種)の複合酸化物である点で共通している。このように、元素Aと、Ti(チタン)と、元素Bの複合酸化物を「A-Ti-B-O系複合酸化物」と呼ぶ。A-Ti-B-O系複合酸化物(元素Aはアルカリ金属、元素BはNbとTaのうちの少なくとも1種、元素Aと元素BとTiの含有量はいずれもゼロで無い)を利用することが可能である。
スピネル化合物は、正スピネル化合物であってもよく、逆スピネル化合物であってもよい。なお、スピネル化合物であるか否かは、粉末X線回折(XRD)の回折結果を使用したリートベルト解析(Rietveld Analysis)を行うことによって判定可能である。
副相の含有割合は、0.5体積%以上10体積%以下が好ましく、2体積%以上7体積%以下であることがより好ましく、3体積%以上5体積%以下であることがさらに好ましい。
2.無鉛圧電磁器組成物の作製方法
(1)作製方法
図3は、本開示の実施形態における無鉛圧電磁器組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3では、無鉛圧電磁器組成物を作製し、その後、利用態様の一つである圧電素子を作製する一例を示している。
(2)主相(第1成分) 仮焼粉末Aの調製
図3に示すように、工程T110では、主相(第1成分)の原料として、KCO粉末,NaCO粉末,LiCO粉末,Nb粉末,Ta粉末,TiO粉末,ZrO粉末,HfO,SnO,Sb,SiO粉末,MnO粉末等のうちから、必要なものを選択し、下記組成式(1)における係数a、b、c、d、e、f、gの値に応じて秤量する。

(KNaLi(D)O …(1)

工程T120では、主相(第1成分)の原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。工程T120では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末Aを生成する。
(3)主相(第2成分) 仮焼粉末Bの調製
工程T130では、主相(第2成分)の原料として、CaCO粉末,SrCO粉末,BaCO粉末等の原料のうちから必要なものを選択し、上記組成式(1)における係数a、b、c、d、e、f、gの値に応じて秤量する。これらの第2成分の原料を仮焼粉末Aに加えて混合物とする。
工程T140では、混合物である主相の原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。工程T140では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末Bを生成する。
(4)副相(第3成分) スピネル化合物の前駆体の仮焼粉末の調製
工程T150では、副相(第3成分)の原料として、TiO粉末のほか、LiCO粉末,MgO粉末,Al粉末,Sc粉末,Cr粉末,MnO粉末,Fe粉末,CoO粉末,NiO粉末,ZnO粉末,Ga粉末,Y粉末,ZrO粉末,CaCO粉末,SrCO粉末,BaCO粉末等のうちから必要なものを選択し、副相の下記組成式(2)のいずれかにおける係数x、yの値に応じて秤量する。

TiO…(2)
工程T160では、副相(第3成分)の原料粉末にエタノールを加えてボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得る。工程T160では、スラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末Cを生成する。この仮焼粉末Cは、スピネル化合物、又は、スピネル化合物の前駆体の粉体である。スピネル化合物の前駆体は、1工程T160の仮焼の終了後にはスピネル化合物となっていないが、後述する工程T180の焼成によってスピネル化合物となる物質である。
(5)仮焼粉末Dの調製
工程T165では、仮焼粉末B、及び、仮焼粉末Cをそれぞれ秤量し、ボールミルにて、分散剤、バインダ及びエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとする。このスラリーを乾燥して得られた混合粉末を、例えば大気雰囲気下600℃以上1100℃以下、1時間以上10時間以下で、仮焼して仮焼粉末Dを生成する。
(6)脱脂工程
工程T170では、工程T165で得られた仮焼粉末Dに再び分散剤、バインダ及びエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとし、このスラリーをスプレードライ乾燥機により乾燥し、造粒し、例えば圧力20MPaで一軸プレスを行い、円板状の形状に成形する。その後、例えば圧力150MPaでCIP処理(冷間静水圧成形処理)を行って成形体を得る。工程T175では、得られた成形体を、例えば大気雰囲気下500℃以上800℃以下で、2時間以上10時間以下保持し、バインダを脱脂する脱脂工程を行う。
(7)焼成工程
工程T180では、得られた脱脂工程後の成形体を、例えば大気雰囲気下1000℃以上1300℃以下の中から選択される特定温度(例えば、1150℃)で2時間以上50時間以下保持して焼成することによって無鉛圧電磁器組成物を得る。工程T180の焼成は、密閉容器内に成形体を密封した状態で行う密封焼成であることが好ましい。この理由は、成形体に含まれるアルカリ金属(Li,Na,K)などの金属元素が、焼成中に外部に消失してしまうことを防止するためである。このような密閉容器としては、例えば、オオタケセラム株式会社製アルミナサヤA-1174を使用することが可能である。
S2/S1は、無鉛圧電磁器組成物の焼成条件等によって、適宜制御できる。無鉛圧電磁器組成物が緻密なセラミックとなる範疇で焼成温度を低くすると、S2/S1の値が大きくなる傾向がある。
焼成工程の焼成温度(最高温度)は、1000℃以上1300℃以下が好ましく、1050℃以上1250℃以下がより好ましく、1100℃以上1200℃以下がさらに好ましい。
焼成工程の焼成温度(最高温度)での保持時間は、1時間以上10時間以下が好ましく、2時間以上9時間以下がより好ましく、3時間以上7時間以下が更に好ましい。
(8)加工・電極取り付け・分極処理
工程T190では、焼成体を、圧電素子に要求される寸法精度に従って加工する。工程T200では、こうして得られた無鉛圧電磁器組成物からなる圧電体に電極を取り付け、工程T210で分極処理を行う。
3.無鉛圧電磁器組成物の適用例
(1)圧電素子20
図4は、本開示の一実施形態としての圧電素子20の一例を示す斜視図である。この圧電素子20は、本開示の無鉛圧電磁器組成物からなる円板状の圧電体23の上面と下面に電極21、22が取り付けられた構成を有している。
(2)圧電素子20の適用例
上記圧電素子20は、以下の装置に好適に用いられる。装置として、例えば、圧電フィルタ30、圧電振動子50,70、圧電トランス90、圧電超音波トランスデューサ110、圧電ジャイロセンサ130、ノックセンサ150などがあげられる。装置は、圧電体23と、電極21,22が取り付けられた圧電素子20を備える。
(3)圧電フィルタ30
図5は、圧電フィルタの実施形態の一例である積層型の圧電フィルタ30を表す模式図である。積層型の圧電フィルタ30は、円柱形状の圧電体33と、圧電体33の両面に電極32a、及び32bを備える圧電素子31を有する。圧電素子31は、圧電素子20と同様の構成である。
(4)圧電振動子50(超音波振動子)
図6は、本開示の圧電振動子50の実施形態の一つとして超音波振動子を示す模式図である。圧電振動子50は、圧電体51b,51dと、電極51a,51cを備える圧電素子53を有している。圧電素子53は、圧電素子20と同様の構成である。
(5)圧電振動子70(超音波センサ)
図7は、本開示の圧電振動子70の実施形態の一つである超音波センサを示す模式図である。圧電振動子70は、圧電体72cと、電極72a,72bを備える圧電素子72を有している。圧電素子72は、圧電素子20と同様の構成である。
(6)圧電トランス90
図8は、本開示の圧電トランス90の一実施形態である積層型の圧電トランス90である。
積層型の圧電トランス90は、圧電素子93を有している。圧電素子93は、長方形状の多層の圧電体92と、多層の圧電体92の各層間に、それぞれ電極91を備える。圧電素子93は、圧電素子20と同様の構成である。
(7)圧電超音波トランスデューサ110
図9は、本開示の実施形態の1つである圧電超音波トランスデューサ110を示す模式図である。圧電超音波トランスデューサ110は、圧電体113、圧電体113の両面に塗布された電極115を備える圧電素子111を有している。圧電素子111は、圧電素子20と同様の構成である。
(8)圧電ジャイロセンサ130
図10は、本開示の実施形態1つである圧電ジャイロセンサ130を示す模式図である。圧電ジャイロセンサ130は、圧電体132と、圧電体132の両面に塗布された電極131a,131bを備える圧電素子133を有している。圧電素子133は、圧電素子20と同様の構成である。
(9)ノックセンサ150
図11は、本開示の装置の一実施形態であるノックセンサ150の模式図である。ノックセンサ150は、圧電体155c、電極155a,155bを備える圧電素子155を有している。圧電素子155は、圧電素子20と同様の構成である。
実施例により、本開示をさらに具体的に説明する。
1.サンプル組成物の調製、及び評価用の圧電素子の作製
A 実施例
(1)主相の仮焼粉末の調製
原料として、K化合物、Na化合物、Li化合物、Nb化合物、Ti化合物、Zr化合物、Mn化合物の粉末のうちから必要なものを選択し、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物となるように秤量した。
そして、これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末を得た。
更に、上記で得られた仮焼粉末に、Ba化合物又は/及びCa化合物を加えて、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して主相の仮焼粉末を得た。
主相の仮焼粉末の調製においては、表1の実施例1,3,4,5,6,8,9,10については、下記組成式(I)になるように必要な原料を選択し秤量した。
また、主相の仮焼粉末の調製においては、表1の実施例2については、下記組成式(II)になるように必要な原料を選択し秤量した。
また、主相の仮焼粉末の調製においては、表1の実施例7については、下記組成式(III)になるように必要な原料を選択し秤量した。

(K0.43Na0.45Li0.02Ba0.11.00(Nb0.88Ti0.02Zr0.05Mn0.05)O …(I)
(K0.43Na0.45Li0.02Ca0.11.00(Nb0.88Ti0.02Zr0.05Mn0.05)O …(II)
(K0.43Na0.45Li0.02Ba0.05Ca0.051.00(Nb0.88Ti0.02Zr0.05Mn0.05)O …(III)
(2)副相の仮焼粉末の調製
原料として、Mn化合物、Ti化合物、Li化合物粉末のうちから必要なものを選択し、Ti系スピネル化合物(例LiMnTiO)となるように秤量した。
そして、これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて好ましくは15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して副相の仮焼粉末を得た。
(3)圧電素子の作製
得られた主相仮焼紛、副相仮焼紛、分散剤、及びバインダにエタノールを加えて粉砕・混合してスラリーとした。このスラリーを乾燥、造粒し、圧力20MPaで一軸プレスをおこない、円板状に成形した。その後、圧力150MPaでCIP処理(冷間静水圧成形処理)をおこなって成形体を得た。得られた成形体を、例えば大気雰囲気下で表1に記載の各焼成温度で所定時間保持して焼成することによって無鉛圧電磁器組成物の焼成体を得た。焼成条件を変えることで、コア層とシェル層に含まれるM1元素の濃度を変化させた。
次いで、この焼成体の両主面にスパッタリング法にてAuから成る外部電極を形成した。そして、50℃のシリコンオイル中にて、5kv/mmの電界を印加し、分極処理して圧電素子を得た。
B 比較例
(1)主相の仮焼粉末の調製
原料として、K化合物、Na化合物、Li化合物、Nb化合物、Ti化合物、Zr化合物、Mn化合物、Ba化合物、Ca化合物の粉末のうちから必要なものを選択し、ニオブ酸アルカリ系ペロブスカイト型酸化物となるように秤量した。
そして、これらの原料粉末にエタノールを加え、ボールミルにて15時間以上湿式混合してスラリーを得た。乾燥した混合粉末を、大気雰囲気下600℃以上1100℃以下で、1時間以上10時間以下仮焼して仮焼粉末を得た。
主相の仮焼粉末の調製においては、表1の比較例1については、下記組成式(I)になるように必要な原料を選択し秤量した。
また、主相の仮焼粉末の調製においては、表1の比較例2については、下記組成式(II)になるように必要な原料を選択し秤量した。

(K0.43Na0.45Li0.02Ba0.11.00(Nb0.88Ti0.02Zr0.05Mn0.05)O …(I)
(K0.43Na0.45Li0.02Ca0.11.00(Nb0.88Ti0.02Zr0.05Mn0.05)O …(II)
(2)副相の仮焼粉末の調製
実施例と同様に副相の仮焼粉末を得た。
(3)圧電素子の作製
実施例と同様に圧電素子を作製した。尚、比較例では実施例に比べて焼成温度を高く、かつ保持時間を長くして無鉛圧電磁器組成物の焼成体を作製した。
Figure 2024068906000002
2.評価
(1)評価方法
(1.1)コアシェル構造の評価
収束イオンビーム(FIB)を用いて、無鉛圧電磁器組成物の焼成体を薄片化し、断面観察サンプルを得た。得られた断面観察サンプルを走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察した。断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により元素マッピングを行い、元素マッピング像のコントラストを確認することでコアシェル構造を確認した。
STEMおよびEDSにおける観察視野の大きさは2μm×2μm、観察視野の倍率は20000倍とした。
シェル部3に存在するM1元素の含有率がコア部1に存在するM1元素(Ba,Ca)の含有率の1.5倍以上であるコアシェル粒子7が存在していることを確認するために、M1元素の含有率を、次のように測定した。コアシェル粒子7においてコア部1及びシェル部3のそれぞれに対して10カ所に測定点を設定し、エネルギー分散型X線分析(EDS)の点分析を行うことで、各測定点におけるM1元素の含有率を算出した。さらに、各測定点におけるM1元素の含有率を平均することにより、コア部1におけるM1元素の含有率及びシェル部3におけるM1元素の含有率を算出した。
尚、M1元素がBa及びCaの2種の場合、含有率は、Ba含有率及びCa含有率の合計とした。
平均断面積S1,S2は以下のように測定した。切断面(断面)に現れた複数のコアシェル粒子を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により分析した。
具体的算出方法を記載する。まず、M1元素がBa元素の場合について説明する。コアシェル粒子は、シェル部に存在するBa元素の含有率がコア部に存在するBa元素の含有率の1.5倍以上であるものを選択した。
各コアシェル粒子についてコア部の各断面積を求め、各断面積を平均して平均断面積S1を算出した。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)によるBaの元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいコア部の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出した。測定に用いるコアシェル粒子の数は、10個とした。
平均断面積S1を算出に用いた各コアシェル粒子についてシェル部の各断面積を求め、各前記断面積を平均して平均断面積S2を算出した。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)によるBaの元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいシェル部3の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出した。
このようにS1,S2を求めてBa元素についてのS2/S1を算出した。
次に、M1元素がCa元素の場合について説明する。コアシェル粒子は、シェル部に存在するCa元素の含有率がコア部に存在するCa元素の含有率の1.5倍以上であるものを選択した。
各コアシェル粒子についてコア部の各断面積を求め、各断面積を平均して平均断面積S1を算出した。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)によるCaの元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいコア部の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出した。測定に用いるコアシェル粒子の数は、10個とした。
平均断面積S1を算出に用いた各コアシェル粒子についてシェル部の各断面積を求め、各前記断面積を平均して平均断面積S2を算出した。具体的には、各断面積は、エネルギー分散型X線分析(EDS)によるCaの元素マッピング像に画像処理を施し、求めたいシェル部3の面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで算出した。
このようにS1,S2を求めてCa元素についてのS2/S1を算出した。
尚、No9サンプルは、Baの元素マッピング像を用いて上述の測定方法と同様にしてS1,S2を求めてBa元素についてのS2/S1を算出した。また、No9サンプルは、Caの元素マッピング像を用いて上述の測定方法と同様にしてS1,S2を求めてCa元素についてのS2/S1を算出した。
尚、コアシェル粒子7中のポア(空孔)、空隙、不純物が析出した副相のピクセルについては面積の算出から除外した。
(1.2)圧電素子の評価
実施例及び比較例の圧電素子について、機械的品質係数Qmを測定した。機械的品質係数Qmは、インピーダンスアナライザを使用し、共振-反共振法から算出した。
機械的品質係数Qmの評価は、以下の基準とした。
「A」:Qmの実測値が500以上である。
「B」:Qmの実測値が500未満である。
(1.3)圧電素子の評価
実施例及び比較例の圧電素子について、300℃、100h大気雰囲気下で耐久試験を実施した。耐久後のQm値を測定し、減少率が15%以下の圧電素子を良品と判定した。
高温耐久特性の評価は以下の基準とした。
「A」:減少率が15%以下である。
「B」:減少率が15%より大きい。
(2)評価結果
比較例1及び比較例2は、シェル部に存在するM1元素の含有率がコア部に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上であるコアシェル粒子の存在が確認できなかった。 実施例1から実施例10は、シェル部に存在するM1元素の含有率がコア部に存在するM1元素の含有率の1.5倍以上であるコアシェル粒子の存在が確認された。実施例1から実施例10は、機械的品質係数Qm、及び高温耐久特性が、比較例1及び比較例2に比べて良好であった。
尚、実施例1から実施例10は、平均断面積S1に対する平均断面積S2の比の値(S2/S1)が、0.05以上2.12以下であり、S2/S1がこの範囲であると、機械的品質係数Qm、及び高温耐久特性が良好であることも確認できた。
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
1: コア部
3: シェル部
5: 粒界
7: コアシェル粒子
9: 非コアシェル粒子
10: 粒子
11: 切断面
20、31、53、72、93、111、133、155: 圧電素子
23、33、51b、51d、72c、91、113、132、155c: 圧電体
30: 圧電フィルタ(装置)
50: 超音波振動子(装置:圧電振動子)
70: 超音波センサ(装置:圧電振動子)
90: 圧電トランス(装置)
110: 圧電超音波トランスデューサ(装置)
130: 圧電ジャイロセンサ(装置)
150: ノックセンサ(装置)

Claims (9)

  1. ニオブ酸アルカリ系のペロブスカイト型酸化物の複数の粒子を主成分として含有する無鉛圧電磁器組成物であって、
    前記粒子には、Ba(バリウム)、及びCa(カルシウム)からなる群より選ばれる1種以上の元素であるM1元素が含まれており、
    前記粒子の少なくとも一部は、コア部とシェル部とを備えたコアシェル構造のコアシェル粒子であり、
    前記コアシェル粒子において、前記シェル部に存在する前記M1元素の含有率が前記コア部に存在する前記M1元素の含有率の1.5倍以上である、無鉛圧電磁器組成物。
  2. 前記無鉛圧電磁器組成物の切断面に現れた複数の前記コアシェル粒子を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察し、エネルギー分散型X線分析(EDS)により分析して、
    各前記コアシェル粒子について前記コア部の各断面積を求め、各前記断面積を平均して平均断面積S1を算出し、
    各前記コアシェル粒子について前記シェル部の各断面積を求め、各前記断面積を平均して平均断面積S2を算出した場合に、
    前記平均断面積S1に対する前記平均断面積S2の比の値(S2/S1)が0.05以上2.12以下である、請求項1に記載の無鉛圧電磁器組成物。
  3. 前記粒子の少なくとも一部は、前記コアシェル構造を有さない非コアシェル粒子である、請求項1に記載の無鉛圧電磁器組成物。
  4. 前記ペロブスカイト型酸化物は、Mn(マンガン)を含む、請求項1に記載の無鉛圧電磁器組成物。
  5. Ti(チタン)を含むスピネル化合物からなる副相を含む、請求項1に記載の無鉛圧電磁器組成物。
  6. 前記ペロブスカイト型酸化物は、組成式(KNaLi(D)O
    (元素CはCa(カルシウム),Sr(ストロンチウム),Ba(バリウム)のうちの少なくともCa(カルシウム)又はBa(バリウム)を含む一種以上、
    元素DはNb(ニオブ),Ta(タンタル),Ti(チタン),Zr(ジルコニウム),Hf(ハフニウム),Sn(スズ),Sb(アンチモン),Si(ケイ素)のうちの少なくともNb(ニオブ)又はTa(タンタル)を含む一種以上、
    元素EはMg(マグネシウム),Al(アルミニウム),Sc(スカンジウム),Mn(マンガン),Fe(鉄),Co(コバルト),Ni(ニッケル),Zn(亜鉛),Ga(ガリウム),Y(イットリウム)の一種以上、
    a+b+c+d=1
    a+b+c≠0
    eは0.80≦e≦1.10を満たし
    f+g=1
    hはペロブスカイトを構成する任意の値)で表される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無鉛圧電磁器組成物。
  7. 請求項6に記載の無鉛圧電磁器組成物からなる圧電体と、前記圧電体に接する電極とを備える、圧電素子。
  8. 請求項7に記載の圧電素子を備える、装置。
  9. 圧電フィルタ、圧電振動子、圧電トランス、圧電超音波トランスデューサ、圧電ジャイロセンサ、及びノックセンサからなる群より選択される、請求項8に記載の装置。
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