JP2024065726A - 波動歯車装置およびロボット - Google Patents

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Abstract

【課題】波動歯車装置の部材の摩耗や劣化を抑制し、回転時の噛み合いを安定させることができる技術を提供する【解決手段】波動歯車装置100は、剛性内歯歯車10、可撓性歯車20と、波動発生器30を有する。剛性内歯歯車は、内周面に複数の内歯11を有し、中心軸C1を中心として円環状に拡がる。可撓性歯車20は、歯部21と、胴体部22と、底部23を有する。波動発生器30は、可撓性歯車の歯部の径方向内側において、中心軸周りに回転する。波動発生器は、非真円カム31と可撓性軸受32とを有する。非真円カムは、中心軸周りに回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する。可撓性軸受は、内輪が非真円カムに固定され、かつ、外輪が可撓性歯車に固定される。可撓性歯車の歯部におけるビッカース硬度をVfgとし、可撓性軸受の外輪におけるビッカース硬度をVfbとすると、300HV≦Vfg<Vfbの関係が成立する。【選択図】図1

Description

本発明は、波動歯車装置およびロボットに関する。
従来、剛性内歯歯車および可撓性歯車と、可撓性歯車に径方向内側から接触しつつ回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する波動発生器と、を備える波動歯車装置が知られている。この種の波動歯車装置は、主に減速機として用いられる。従来の波動歯車装置については、例えば、特開2017-180486号公報および特開2018-087611号公報に開示されている。
特開2017-180486号公報および特開2018-087611号公報の歯車装置(1)は、波動歯車装置であり、内歯車である剛性歯車(2)と、剛性歯車(2)の内側に配置されているカップ型の外歯車である可撓性歯車(3)と、可撓性歯車(3)の内側に配置されている波動発生器(4)と、を有している。また、波動発生器(4)にモーター(150)からの駆動力が入力されると、波動発生器(4)の1対のローラー(43)が可撓性歯車(3)の内周面上を転動しながら、可撓性歯車(3)を内側から押し広げる。これにより、可撓性歯車(3)の横断面が楕円形または長円形に変形し、当該部分の長軸側の両端部において可撓性歯車(3)が剛性歯車(2)と噛み合い、さらに、噛み合い位置が周方向に移動する。
また、上記公報には、金属製の円柱状の素材(10)に、据え込鍛造工程や絞り加工工程を行うことにより、可撓性歯車(3)を形成することが記載されている。据え込鍛造工程においては、素材(10)が軸線方向(α)に加圧されることによって、円板状の板体(11)が形成される。絞り加工工程においては、板体(11)が絞り加工されることによって、円筒状の胴部(31)と底部(32)とを有する筒体(12)が形成される。さらに、転造等によって、筒体(12)に外歯(33)が形成される。
特開2017-180486号公報 特開2018-087611号公報
上記のとおり、波動歯車装置においては、波動発生器のローラが可撓性歯車の内周面上を転動しながら可撓性歯車を内側から押し広げ、これにより可撓性歯車が剛性歯車と噛み合いながら撓み、回転する。このため、波動歯車装置が長期間に亘って駆動すると、可撓性歯車または波動発生器の強度(硬度)が低い場合や、可撓性歯車と波動発生器との間の強度の差が大きい場合に、可撓性歯車または波動発生器が摩耗したり、回転時の噛み合いが不安定になったりする虞がある。
本発明の目的は、可撓性歯車および波動発生器の強度や、可撓性歯車と波動発生器との間の強度のバランスを、所定の範囲に設定することによって、これらの部材の摩耗や劣化を抑制し、回転時の噛み合いを安定させることができる技術を提供することである。
本発明は、波動歯車装置であって、内周面に複数の内歯を有し、中心軸を中心として円環状に拡がる剛性内歯歯車と、前記剛性内歯歯車の前記複数の内歯に対して部分的に噛み合う外歯を有する可撓性歯車と、前記剛性内歯歯車および前記可撓性歯車の径方向内側において、前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する波動発生器と、を有し、前記可撓性歯車は、前記中心軸に沿って筒状に延び、外側面に前記中心軸から離れる方向に延びる複数の前記外歯を有する歯部と、前記歯部よりも軸方向一方側に配置され、前記中心軸と平行な方向の成分を含む方向に延びる筒状の胴体部と、前記胴体部の軸方向一方側の端部から径方向内側に拡がる底部と、を有し、前記波動発生器は、前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する非真円カムと、 内輪が前記非真円カムに固定され、かつ、外輪が前記可撓性歯車に固定され、または前記可撓性歯車に接触する、可撓性軸受と、を有し、前記可撓性歯車の前記歯部におけるビッカース硬度をVfgとし、前記可撓性軸受の前記外輪におけるビッカース硬度をVfbとすると、300HV≦Vfg<Vfbの関係が成立する。
本発明によれば、可撓性歯車の歯部のビッカース硬度、および可撓性軸受の外輪のビッカース硬度を、それぞれ所定値以上に設定することによって、可撓性軸受が非真円カムと一体的に可撓性歯車の内周面を押圧しつつ回転する際の、これらの部材の摩耗や劣化を抑制し、耐久性を向上できる。また、可撓性歯車が剛性内歯歯車と噛み合いながら撓み、回転する際の、可撓性歯車の歯部の歯底の変形や割れを抑制できる。また、可撓性軸受の外輪のビッカース硬度を、可撓性歯車の歯部のビッカース硬度よりも大きくすることによって、可撓性軸受が可撓性歯車を押圧しつつ回転する際の、可撓性軸受の外輪の摩耗や劣化をさらに抑制し、回転を安定させることができる。
図1は、波動歯車装置の縦断面図である。 図2は、波動歯車装置の横断面図である。 図3は、可撓性歯車の縦断面図である。 図4は、可撓性歯車の製造手順を示すフローチャートである。 図5は、中間成形品の概要図である。 図6は、可撓性歯車の歯部のビッカース硬度と、可撓性軸受の外輪のビッカース硬度とを、様々な値に設定した場合の、耐久試験を行った結果を示す表である。 図7は、ロボットの概要図である。 図8は、自転車の概要図である。
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、波動歯車装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、波動歯車装置の中心軸に直交する方向を「径方向」、波動歯車装置の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
また、本願では、後述する図1および図3において、左側を「軸方向一方側」、右側を「軸方向他方側」として、各部の形状や位置関係を説明する。また、本願において「平行な方向」とは、幾何学的に厳密に平行な場合に限定されない。発明の効果を奏する程度に平行であればよい。また、本願において「直交する方向」とは、幾何学的に厳密に直交する場合に限定されない。発明の効果を奏する程度に直交であればよい。
<1.波動歯車装置の構成>
以下では、本発明の例示的な実施形態に係る波動歯車装置100の構成について説明する。図1は、波動歯車装置100の縦断面図である。図2は、図1のII-II位置から見たときの波動歯車装置100の横断面図である。
波動歯車装置100は、後述する剛性内歯歯車10と可撓性歯車20との差動を利用して、入力された回転運動を変速する装置である。本実施形態の波動歯車装置100は、例えば、アクチュエータ等に組み込まれ、モータから得られる動力を減速する減速機として用いられる。ただし、波動歯車装置100は、小型ロボットの関節等の様々な装置に組み込まれて、各種の回転運動を変速するものであってもよい。
図1および図2に示すように、波動歯車装置100は、剛性内歯歯車10と、可撓性歯車20と、波動発生器30とを有する。また、波動歯車装置100には、外部から動力を得るための入力軸(図示省略)が設けられている。入力軸は、例えば、モータのロータに接続され、中心軸C1を中心として軸方向に円柱状に延びる。また、入力軸は、モータのロータとともに、中心軸C1を中心として回転する。
剛性内歯歯車10は、中心軸C1を中心として円環状に拡がる部材である。剛性内歯歯車10は、可撓性歯車20の後述する歯部21の径方向外側に配置される。また、剛性内歯歯車10は、十分な剛性を有し、実質的に剛体とみなすことができる。図2に示すように、剛性内歯歯車10は、内周面において、複数の内歯11を有する。複数の内歯11は、それぞれ、径方向内方へ突出する。複数の内歯11は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。本実施形態では、剛性内歯歯車10は、波動歯車装置100が搭載される装置の枠体に固定されるため、回転しない。
また、本実施形態の剛性内歯歯車10は、ダクタイル鋳鉄により形成される。また、剛性内歯歯車10の複数の内歯11は、例えば、剛性内歯歯車10の母材となる円環状の部材の内周面に、切削によって形成される。ただし、剛性内歯歯車10の複数の内歯11は、円環状の部材の内周面に、転造により形成されてもよい。すなわち、剛性内歯歯車10の複数の内歯11は、円環状の部材の内周面に、凹凸形状を有する内歯形成ローラを押し付けつつ、中心軸C1を中心とした周方向に転がすことにより形成されてもよい。また、剛性内歯歯車10の引張強度は、500MPa以上である。このように、粘り強さ(靭性)に優れ、高い引張強度を有するダクタイル鋳鉄を用いて剛性内歯歯車10を形成することによって、長期間に亘って波動歯車装置100が駆動して、剛性内歯歯車10が可撓性歯車20と噛み合いながら撓み、回転した際でも、脆性破壊することを抑制できる。
図3は、可撓性歯車20の縦断面図である。図1~図3に示すように、可撓性歯車20は、歯部21と、胴体部22と、底部23とを有する。
歯部21は、中心軸C1の周囲において、中心軸C1に沿って筒状に延びる部位である。歯部21は、剛性内歯歯車10の径方向内側に配置される。また、歯部21は、可撓性を有し、径方向に撓み可能である。歯部21は、外側面において、中心軸C1から離れる方向に延びる複数の外歯24を有する。複数の外歯24は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。また、後述のとおり、複数の外歯24は、複数の内歯11に対して、周方向において部分的に噛み合う。上記の剛性内歯歯車10が有する内歯11の数と、可撓性歯車20が有する外歯24の数とは、僅かに相違する。
胴体部22は、歯部21よりも軸方向一方側に配置され、中心軸C1の周囲において、中心軸C1方向の成分を含む方向に延びる筒状の部位である。胴体部22は、歯部21の軸方向一方側の端部と底部23の外周部とを繋ぐ。胴体部22の径方向の厚みは、底部23の軸方向の厚みよりも薄い。歯部21と底部23との間に胴体部22を設けることで、歯部21が楕円状の撓み変形を繰り返しても、可撓性歯車20に掛かる応力の分布が局所的に集中してしまうことを緩和できる。
底部23は、胴体部22の軸方向一方側の端部から径方向内側に拡がる部位である。また、底部23は、中心軸C1の周囲に円環状かつ平板状に拡がる。底部23は、胴体部22よりも剛性が高く、撓み難い。底部23は、ダイヤフラム部231と締結部232とを含む。ダイヤフラム部231は、胴体部22の軸方向一方側の端部から径方向内側に向けて円環状に拡がる部位である。また、ダイヤフラム部231は、径方向内側へ向かうにつれて軸方向の厚みが緩やかに大きくなる、テーパ形状25を有する。締結部232は、ダイヤフラム部231の径方向内側の端部から、さらに径方向内側に延び、中心軸C1の周囲に円環状に拡がる部位である。締結部232の軸方向の厚みは、ダイヤフラム部231の径方向内側の端部の軸方向の厚みと、略同一である。締結部232の径方向内側には、例えば、減速後の動力を取り出すための出力軸(図示省略)が挿入され、締結部232に固定される。
なお、詳細を後述するとおり、本実施形態の可撓性歯車20は、オーステナイト系のステンレス鋼により形成される。また、剛性内歯歯車10と可撓性歯車20がそれぞれ形成された後、剛性内歯歯車10の複数の内歯11を有する内周面におけるビッカース硬度を「Vig」とし、可撓性歯車20の複数の外歯24を有する歯部21におけるビッカース硬度を「Vfg」とすると、「200HV≦Vig≦Vfg≦500HV」の関係が成立する。
このように、まず、剛性内歯歯車10の内周面のビッカース硬度Vigを200HV以上とし、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度VfgをVig以上とする、すなわち、剛性内歯歯車10の内周面のビッカース硬度Vigおよび可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを、それぞれ所定値以上に設定することによって、可撓性歯車20が剛性内歯歯車10と噛み合いながら撓み、回転する際の、これらの部材の摩耗や劣化を抑制し、耐久性を向上できる。また、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを、剛性内歯歯車10の内周面のビッカース硬度Vig以上にすることによって、可撓性歯車20が剛性内歯歯車10と噛み合いながら撓み、回転する際の、可撓性歯車20の摩耗や劣化をさらに抑制し、噛み合いを安定させることができる。なお、可撓性歯車20の製造方法および詳細な構造については、後述する。
波動発生器30は、可撓性歯車20を撓み変形させるための機構である。波動発生器30は、非真円カム31と、可撓性軸受32とを有する。波動発生器30は、可撓性歯車20の歯部21および剛性内歯歯車10の径方向内側に配置される。
非真円カム31は、中心軸C1を中心として環状に拡がる部材である。本実施形態の非真円カム31は、楕円形のカムプロフィールを有する。つまり、非真円カム31は、周方向の位置によって異なる外径を有する。図1および図2に示すように、非真円カム31は、可撓性歯車20の歯部21の径方向内側に配置される。非真円カム31の径方向内側には、上記の入力軸が、相対回転不能に固定される。入力軸および非真円カム31は、外部のモータ等から得られる動力によって、中心軸C1を中心として、減速前の回転数で回転する。
可撓性軸受32は、内輪321と、複数のボール322と、弾性変形可能な外輪323とを有する。内輪321は、非真円カム31の外周面に固定される。また、本実施形態の外輪323は、可撓性歯車20の歯部21の内周面に固定される。複数のボール322は、内輪321と外輪323との間に介在し、周方向に沿って配列される。外輪323は、回転する非真円カム31のカムプロフィールを反映するように、内輪321およびボール322を介して弾性変形(撓み変形)する。ただし、外輪323は、必ずしも可撓性歯車20に固定されなくてもよい。外輪323は、可撓性歯車20の歯部21の内周面に接触するように構成されていてもよい。
なお、本実施形態の内輪321、複数のボール322、および外輪323を含む可撓性軸受32は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)により形成される。特に、外輪323を形成する材料は、Fe(鉄)を主成分とし、0.95~1.00重量%のC(炭素)と、0.15~0.35重量%のSi(ケイ素)と、1.30~1.60重量%のCr(クロム)と、を含む。
また、可撓性歯車20の歯部21におけるビッカース硬度を「Vfg」とし、可撓性軸受32の外輪323におけるビッカース硬度を「Vfb」とすると、「300HV≦Vfg<Vfb<800HV」の関係が成立する。また、可撓性軸受32の外輪323におけるビッカース硬度Vfbは、600HV以上であることが、より望ましい。
このように、まず、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを300HV以上とし、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度VfbをVfgよりも大きくする、すなわち、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgおよび可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbを、それぞれ所定値以上に設定することによって、後述のとおり、可撓性軸受32が非真円カム31と一体的に可撓性歯車20の内周面を押圧しつつ回転する際の、これらの部材の摩耗や劣化を抑制し、耐久性を向上できる。また、可撓性歯車20が剛性内歯歯車10と噛み合いながら撓み、回転する際の、可撓性歯車20の歯部21の歯底の変形や割れを抑制できる。また、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbを、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgよりも大きくすることによって、可撓性軸受32が可撓性歯車20を押圧しつつ回転する際の、可撓性軸受32の外輪323の摩耗や劣化をさらに抑制し、回転を安定させることができる。
また、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbを、800HV未満とし、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度VfgをVfb未満とする、すなわち、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbおよび可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを、それぞれ所定値未満に設定することによって、波動歯車装置100の製造時に各部を組み立てる際に、可撓性歯車20の径方向内側に、可撓性軸受32を容易に組み込むことができる。
このような構成の波動歯車装置100において、上記の入力軸に動力が供給されると、入力軸と、非真円カム31を含む波動発生器30とが、中心軸C1を中心として一体的に回転する。また、上記のとおり、非真円カム31は、周方向の位置によって異なる外径を有する。すなわち、波動発生器30は、周方向の位置によって異なる外径を有する。これにより、非真円カム31の回転に伴って、可撓性軸受32を介して、可撓性歯車20の歯部21の内周面が径方向内側から押圧されることにより、歯部21が楕円状に撓み変形する。これにより、図2のように、非真円カム31および歯部21がなす楕円の長軸の両端の2箇所で、外歯24と内歯11とが噛み合う。一方、前記楕円の上記2箇所以外の周方向の位置では、外歯24と内歯11とは噛み合わない。すなわち、本実施形態では、複数の外歯24は、複数の内歯11に対して、周方向において部分的に噛み合う。
非真円カム31が回転すると、非真円カム31および歯部21がなす楕円の長軸の位置が周方向に移動するので、内歯11と外歯24との噛み合い位置も周方向に移動する。ここで、上記のとおり、剛性内歯歯車10が有する内歯11の数と、可撓性歯車20が有する外歯24の数とは、僅かに相違する。このため、非真円カム31の1回転ごとに、内歯11と外歯24との噛み合い位置が僅かに変化する。その結果、可撓性歯車20は、剛性内歯歯車10に対して、内歯11と外歯24との歯数の違いによって、相対回転する。これにより、波動歯車装置100は、外部のモータ等から入力軸を介して波動発生器30に入力された動力を減速して、可撓性歯車20に固定された出力軸から出力することができる。
<2.可撓性歯車の製造方法および詳細な構造>
次に、可撓性歯車20を製造する方法、および可撓性歯車20の詳細な構造について、説明する。図4は、可撓性歯車20の製造手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、可撓性歯車20を製造するときには、まず、可撓性歯車20の母材となる金属板を準備する(ステップS1)。上記のとおり、可撓性歯車20は、オーステナイト系のステンレス鋼を用いて形成される。すなわち、ステップS1では、オーステナイト系のステンレス鋼の金属板が準備される。一般に、これらのオーステナイト系のステンレス鋼は、面心立方格子の結晶構造を有し、比較的硬度が低い。しかしながら、オーステナイト系のステンレス鋼を冷間加工すると、塑性変形により誘起されてオーステナイトがマルテンサイトに変態し、加工硬化する。この結果、当該マルテンサイト相が形成された後の強度(硬度)が高まる。なお、この変態量は、変形量に依存する。
また、ステンレス鋼の加工硬化指数であるn値は、0.3以上である。すなわち、金属板には、加工硬化指数であるn値が、概ね0.3以上であるステンレス鋼が用いられる。ここで、n値とは、例えば、JIS Z 2253:2020に従い、測定対象である各鋼板から、「JIS13号B引張試験片」を採取して引張試験を実施し、「荷重(引張強さ)-伸び曲線」から求まる「真応力(σ)-真歪み(ε)曲線」を近似的に「σ=Fε」で表したときの指数n値として、両対数グラフに真応力(σ)-真歪み(ε)値をプロットしたときの傾きから、算出することができる。一般に、n値が大きいほど、成形性に優れ、加工硬化が生じやすく、変形を一様化することができる。本実施形態では、n値の大きいオーステナイト系のステンレス鋼を用いて、可撓性歯車20を加工して成形することにより、加工の際の変形を一様化することができ、製品精度が向上する。
次に、図4に示すように、金属板に対して、絞り加工を行う(ステップS2)。絞り加工を行う際には、例えば、円板状の金属板を、円柱状の金型の先端面に取り付け、所定の圧力で接触させる。この結果、有底筒状の中間成形品60が形成される。図5は、中間成形品60の概要図である。
なお、中間成形品60のうち、金型の先端面に接触していた部位61は、その後、テーパ形状や貫通孔の形成等を経て、可撓性歯車20の底部23(ダイヤフラム部231と締結部232とを含む)となる部位である。また、中間成形品60のうち、金型の側面に接触していた部位62は、可撓性歯車20の歯部21および胴体部22となる部位である。
次に、有底筒状の中間成形品60における部位62のうち、先端側に位置する部位621に、凹凸形状を有する外歯形成ローラ(図示省略)を押し付けつつ、上記の金型の中心軸を中心とした周方向に転がすことによって、外歯24を形成(転造)する(ステップS3)。ただし、部位621に対して、切削等の別の手法によって、外歯24を形成してもよい。これにより、部位621は、外周面に複数の外歯24が形成された歯部21となる。また、部位62のうち、部位621よりも底部23(部位61)側に位置する部位622は、可撓性歯車20の胴体部22となる。
上記のとおり、部位621は、外歯24が形成される過程で、外歯形成ローラが押し付けられることにより変形する。これにより、部位621を構成する金属板中のオーステナイトが塑性変形する。そして、塑性変形により誘起されてオーステナイトがマルテンサイトに変態し、加工硬化する。この結果、部位621の強度がさらに高まる。
ここで、上記のとおり、可撓性歯車20が形成された後(後述するステップS4が終了した時点)において、「可撓性歯車20の複数の外歯24を有する歯部21におけるビッカース硬度Vfg≦500HV」の関係が成立する。すなわち、本実施形態では、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgは、所定値以下とされている。逆の見方をすれば、本実施形態では、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを、500HV以下とし、高くし過ぎないことによって、ステップS3では、外歯24を転造にて容易に形成することができる。
次に、図4に示すように、外歯24を形成した後の可撓性歯車20に対し、ショットピーニングを施す(ステップS4)。ここで、ショットピーニングとは、無数の小さな球体を衝突させることによって、表面を改質する表面処理である。ショットピーニングを行った後、可撓性歯車20における複数の外歯24を有する歯部21,胴体部22,および底部23はそれぞれ、表面に複数のディンプル(小さな丸い窪み)を有する。
これにより、可撓性歯車20における複数の外歯24を有する歯部21,胴体部22,および底部23の表面付近のオーステナイトが塑性変形する。そして、塑性変形により誘起されてオーステナイトがマルテンサイトに変態し、加工硬化する。すなわち、ショットピーニングにより、可撓性歯車20の表面付近が、よりマルテンサイト化し、強度がさらに高まり、耐久性がさらに向上する。この結果、長期間に亘って波動歯車装置100が駆動して、可撓性歯車20が剛性内歯歯車10と噛み合いながら撓み、回転する場合でも、可撓性歯車20の表面付近の摩耗や劣化をさらに抑制し、さらに耐久性を向上できる。
なお、ステップS4の終了後、可撓性歯車20の表面付近における残留応力を測定した。その結果、可撓性歯車20は、ショットピーニングが施されることによって、表面の少なくとも一部における残留応力が「-800MPa以上」となることが確認された。ここで、「-800MPa以上」とは、例えば「-700MPa」は含まれるが、「-900MPa」は含まれないことを意味する。本実施形態では、上記のとおり、可撓性歯車20の表面にショットピーニングを行うことによって、可撓性歯車20の表面付近が加工硬化するため、強度がより高まることが確認された。
以上のとおり、本実施形態では、オーステナイト系のステンレス鋼からなる金属板を用いて可撓性歯車20を形成する過程で、まず、絞り加工を行うことによって、歯部21,胴体部22,および底部23を形成する。次に、歯型転造を行うことによって、歯部21の外周面に外歯24を形成する。さらに、複数の外歯24を含む歯部21,胴体部22,および底部23の表面に、ショットピーニングを施す。これにより、各工程を経るにつれて、これらに含まれるマルテンサイト相の占有率が上昇し、加工硬化する。この結果、形成された可撓性歯車20における残留応力が大きくなり、強度がさらに高まる。また、本実施形態では、熱処理を行うことなく可撓性歯車20を形成することができるため、製造工程における作業時間を短縮し、コストを削減できる。また、本実施形態では、上記のとおり、n値の大きいオーステナイト系のステンレス鋼を用いて可撓性歯車20を形成することにより、絞り加工、歯型転造、およびショットピーニングを行う際の変形を一様化することができるため、最終製品としての精度を向上することができる。
<3.可撓性歯車および可撓性軸受のビッカース硬度に関する試験結果>
上記のとおり、本実施形態では、可撓性歯車20が形成された後、「300HV≦可撓性歯車20の複数の外歯24を有する歯部21におけるビッカース硬度Vfg<可撓性軸受32の外輪323におけるビッカース硬度Vfb<800HV」の関係が成立する。また、可撓性歯車20自体の強度については、「可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfg≦500HV」の関係が成立する。そこで、このような関係が成立することによる効果を比較・確認することを目的として、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgと、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbとを、様々な値に設定した場合の、これらの部材の耐久試験を行った内容と結果について、説明する。
耐久試験を行う前段階として、歯部21のビッカース硬度Vfgとして様々な値を有する数種類の可撓性歯車20(歯部21の外径の最大値:63mm)と、外輪323のビッカース硬度Vfbとして様々な値を有する数種類の可撓性軸受32と、をそれぞれ準備した(図6参照)。そして、これらの数種類の可撓性歯車20の中から1つを選択し、数種類の可撓性軸受32の中から1つを選択して、これらの選択の組み合わせとして、実際に実施することを想定した実施例(A)~(D)と、実際に実施することを想定しておらず、当該試験において比較するためだけの比較例(p)~(u)と、に分類した(図6参照)。次に、実施例(A)~(D)および比較例(p)~(u)のうちの選択した1つの可撓性歯車20の内周面に、当該選択した1つの可撓性軸受32の外輪323を固定し、これらの部材を有する、波動歯車装置100を順に組み立て、さらに選択した可撓性歯車20の外歯24を、剛性内歯歯車10の内歯11に噛み合わせた。ただし、比較例(q),(s),(t)の場合、可撓性歯車20のビッカース硬度Vfgが高過ぎて、耐久試験を行う以前に、そもそも可撓性歯車20の製造段階で外歯24を正常に成形できなかったことが確認された。一方、実施例(D)のように、可撓性歯車20のビッカース硬度Vfgを500HVとした場合、可撓性歯車20の外歯24を正常に成形でき、かつ耐久試験を行うことができたことが確認された。これにより、本願発明の発明者は、当該実験結果から、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgの上限値を「500HV」と設定した。
また、比較例(u)の場合、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbが高過ぎて、耐久試験を行う以前に、そもそも波動歯車装置100の組み立ての際に、可撓性軸受32を組み込むことができなかったことが確認された。一方、実施例(B),(C),(D)のように、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbを700HVとした場合、波動歯車装置100の組み立ての際に、多少の余裕を持って可撓性軸受32を組み込むことができたことが確認された。これにより、本願発明の発明者は、当該実験結果から、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbの上限を「800HV未満」と設定した。
次に、耐久試験として、波動歯車装置100の非真円カム31に入力軸を締結し、可撓性歯車20の底部23の締結部232に出力軸を締結した。そして、入力軸を回転不能に固定し、出力軸に、中心軸C1を中心として459Nmの最大許容トルクを、所定の間隔で正方向および逆方向に交互に1000万回付加した。そして、このときの回転角(バックラッシュを含むねじれ角)が1arc min以下となる場合は「(耐久試験結果)〇」とし、1arc minを超える場合は「(耐久試験結果)×」とすることとした。図6は、当該耐久試験を行った結果を示す表である。
図6に示すように、実施例(A)~(D)においては、「300HV≦Vfg<Vfb<800HV」の関係、および「Vfg≦500HV」を満たし、「(耐久試験結果)〇」となることが確認された。一方、比較例(p)の場合、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgが、可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbよりも高くなり、可撓性軸受32の外輪323に過大な負荷が加わり、折損したことが確認された。一方、実施例(A)~(D)のように、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgよりも可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbが高い場合は、可撓性軸受32の外輪323が損傷または破損することなく、「(耐久試験結果)〇」となることが確認された。これにより、本願発明の発明者は、当該実験結果から、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgと可撓性軸受32の外輪323のビッカース硬度Vfbとの関係を「Vfg<Vfb」と設定した。
また、比較例(r)の場合、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgが低過ぎて、剛性内歯歯車10の内歯11との噛み合いによって、可撓性歯車20の歯部21の歯底が割れたことが確認された。一方、実施例(B)のように、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgを300HVとした場合、耐久試験を行った可撓性歯車20の歯部21の歯底が割れることがなく、「(耐久試験結果)〇」となることが確認された。これにより、本願発明の発明者は、当該実験結果から、可撓性歯車20の歯部21のビッカース硬度Vfgの下限値を「300HV」と設定した。
<4.適用例>
図7は、波動歯車装置100の一適用例としての、波動歯車装置100を搭載したロボット200の概要図である。本適用例のロボット200は、例えば、工業製品の製造ラインにおいて、部品の搬送、加工、組立等の作業を行う、いわゆる産業用ロボットである。図7に示すように、ロボット200は、ベースフレーム201、アーム202、モータ203、および波動歯車装置100を有する。
アーム202は、ベースフレーム201に対して、回動可能に支持されている。モータ203および波動歯車装置100は、ベースフレーム201とアーム202との間の関節部に、組み込まれている。モータ203に駆動電流が供給されると、モータ203から回転運動が出力される。また、モータ203から出力される回転運動は、波動歯車装置100により減速されて、アーム202へ伝達される。これにより、ベースフレーム201に対してアーム202が、減速後の速さで回動する。
図8は、波動歯車装置100の他の適用例としての、波動歯車装置100を搭載した自転車300の概要図である。本適用例の自転車300は、例えば、人力による回転をモータ303の駆動力でアシストする電動アシスト駆動ユニット301を備えた、電動アシスト自転車である。図8に示すように、電動アシスト駆動ユニット301は、シャフト302、モータ303、および波動歯車装置100である減速機を有する。
シャフト302は、自転車300に搭乗する人がペダルを漕ぐことによる人力によって、図8の紙面に直交する中心軸を中心として回転する。モータ303および波動歯車装置100である減速機は、シャフト302の付近に配置される。そして、モータ303に駆動電流が供給されると、モータ303のロータが回転する。また、モータ303のロータの回転は、減速機により減速されて、シャフト302へ出力される。これにより、シャフト302は、回転がアシストされ、増幅された速さで、タイヤとともに回転する。なお、本適用例では、比較的トルクの小さいモータ303が用いられる。また、本適用例の波動歯車装置100には、複数の内歯11が転造により形成された剛性内歯歯車10が用いられる。
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には限定されない。
上記の実施形態において、可撓性歯車20は、波動歯車装置100が搭載される装置の枠体に固定された剛性内歯歯車10に噛み合いながら回転するように構成されていた。すなわち、上記の実施形態では、剛性内歯歯車10は回転せず、可撓性歯車20のみが回転するように構成されていた。しかしながら、これは逆であってもよい。すなわち、波動歯車装置100において、可撓性歯車20は枠体等に固定されて回転せず、剛性内歯歯車10に出力軸が固定され、剛性内歯歯車10が出力軸とともに減速後の回転数で回転するように構成されてもよい。
また、波動歯車装置およびロボットの細部の形状については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記の各図に示された形状と相違していてもよい。
<6.総括>
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
(1):内周面に複数の内歯を有し、中心軸を中心として円環状に拡がる剛性内歯歯車と、
前記剛性内歯歯車の前記複数の内歯に対して部分的に噛み合う外歯を有する可撓性歯車と、
前記剛性内歯歯車および前記可撓性歯車の径方向内側において、前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する波動発生器と、
を有し、
前記可撓性歯車は、
前記中心軸に沿って筒状に延び、外側面に前記中心軸から離れる方向に延びる複数の前記外歯を有する歯部と、
前記歯部よりも軸方向一方側に配置され、前記中心軸と平行な方向の成分を含む方向に延びる筒状の胴体部と、
前記胴体部の軸方向一方側の端部から径方向内側に拡がる底部と、
を有し、
前記波動発生器は、
前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する非真円カムと、
内輪が前記非真円カムに固定され、かつ、外輪が前記可撓性歯車に固定され、または前記可撓性歯車に接触する、可撓性軸受と、
を有し、
前記可撓性歯車の前記歯部におけるビッカース硬度をVfgとし、前記可撓性軸受の前記外輪におけるビッカース硬度をVfbとすると、
300HV≦Vfg<Vfb
の関係が成立する、波動歯車装置。
(2):(1)に記載の波動歯車装置であって、
さらに、
Vfb<800HV
の関係が成立する、波動歯車装置。
(3):(1)または(2)に記載の波動歯車装置であって、
さらに、
Vfg≦500HV
の関係が成立する、波動歯車装置。
(4):(1)から(3)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置であって、
前記可撓性歯車は、オーステナイト系のステンレス鋼により形成されている、波動歯車装置。
(5):(4)に記載の波動歯車装置であって、
前記ステンレス鋼の加工硬化指数であるn値は、0.3以上である、波動歯車装置。
(6):(1)から(5)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置であって、
前記可撓性歯車は、ショットピーニングが施されることによって、表面の少なくとも一部における残留応力が-800MPa以上である、波動歯車装置。
(7):(1)から(6)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置であって、
前記外輪を形成する材料は、Feを主成分とし、0.95~1.00重量%のCと、0.15~0.35重量%のSiと、1.30~1.60重量%のCrと、を含む、波動歯車装置。
(8):(1)から(7)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置であって、
前記剛性内歯歯車は、ダクタイル鋳鉄により形成され、かつ、引張強度が500MPa以上である、波動歯車装置。
(9):(1)から(8)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置を備えたロボット。
(10):(1)から(9)までのいずれか1つに記載の波動歯車装置であって、
前記剛性内歯歯車の前記複数の内歯は、転造により形成されたことを特徴とする、波動歯車装置。
本願は、波動歯車装置およびロボットに利用できる。
10 剛性内歯歯車
11 内歯
20 可撓性歯車
21 歯部
22 胴体部
23 底部
24 外歯
30 波動発生器
31 非真円カム
32 可撓性軸受
100 波動歯車装置
200 ロボット
203 (ロボットに搭載される)モータ
231 ダイヤフラム部
232 締結部
300 自転車
301 電動アシスト駆動ユニット
302 (自転車の)シャフト
303 (自転車に搭載される)モータ
321 (可撓性軸受の)内輪
322 (可撓性軸受の)ボール
323 (可撓性軸受の)外輪
C1 中心軸
Vfb (可撓性軸受の外輪の)ビッカース硬度
Vfg (可撓性歯車の歯部の)ビッカース硬度
Vig (剛性内歯歯車10の内周面の)ビッカース硬度

Claims (10)

  1. 内周面に複数の内歯を有し、中心軸を中心として円環状に拡がる剛性内歯歯車と、
    前記剛性内歯歯車の前記複数の内歯に対して部分的に噛み合う外歯を有する可撓性歯車と、
    前記剛性内歯歯車および前記可撓性歯車の径方向内側において、前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する波動発生器と、
    を有し、
    前記可撓性歯車は、
    前記中心軸に沿って筒状に延び、外側面に前記中心軸から離れる方向に延びる複数の前記外歯を有する歯部と、
    前記歯部よりも軸方向一方側に配置され、前記中心軸と平行な方向の成分を含む方向に延びる筒状の胴体部と、
    前記胴体部の軸方向一方側の端部から径方向内側に拡がる底部と、
    を有し、
    前記波動発生器は、
    前記中心軸を中心として回転し、周方向の位置によって異なる外径を有する非真円カムと、
    内輪が前記非真円カムに固定され、かつ、外輪が前記可撓性歯車に固定され、または前記可撓性歯車に接触する、可撓性軸受と、
    を有し、
    前記可撓性歯車の前記歯部におけるビッカース硬度をVfgとし、前記可撓性軸受の前記外輪におけるビッカース硬度をVfbとすると、
    300HV≦Vfg<Vfb
    の関係が成立する、波動歯車装置。
  2. 請求項1に記載の波動歯車装置であって、
    さらに、
    Vfb<800HV
    の関係が成立する、波動歯車装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    さらに、
    Vfg≦500HV
    の関係が成立する、波動歯車装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    前記可撓性歯車は、オーステナイト系のステンレス鋼により形成されている、波動歯車装置。
  5. 請求項4に記載の波動歯車装置であって、
    前記ステンレス鋼の加工硬化指数であるn値は、0.3以上である、波動歯車装置。
  6. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    前記可撓性歯車は、ショットピーニングが施されることによって、表面の少なくとも一部における残留応力が-800MPa以上である、波動歯車装置。
  7. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    前記外輪を形成する材料は、Feを主成分とし、0.95~1.00重量%のCと、0.15~0.35重量%のSiと、1.30~1.60重量%のCrと、を含む、波動歯車装置。
  8. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    前記剛性内歯歯車は、ダクタイル鋳鉄により形成され、かつ、引張強度が500MPa以上である、波動歯車装置。
  9. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置を備えたロボット。
  10. 請求項1または請求項2に記載の波動歯車装置であって、
    前記剛性内歯歯車の前記複数の内歯は、転造により形成されたことを特徴とする、波動歯車装置。
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