JP2024064392A - 内燃機関制御装置及び内燃機関制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来は複雑な演算を行っており、より少ない情報を用いてより簡便に未燃燃料の推定を行うことが求められていた。【解決手段】燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関を制御する内燃機関制御装置であって、気筒内での燃焼速度を検知する燃焼速度検知部501と、燃焼速度を用いて気筒内の未燃燃料レベルを推定する未燃燃料レベル推定部502と、未燃燃料レベルの許容値を設定する許容値設定部503と、未燃燃料レベル推定部502で推定される未燃燃料レベルが許容値以下となるように、内燃機関1を制御する未燃燃料レベル調節部504と、を備える。【選択図】図5
Description
本発明は、ガソリンエンジン等の内燃機関を制御する内燃機関制御装置及び内燃機関制御方法に関する。
近年、環境対応型エンジンの開発が進む中、エンジンの始動時又は低温運転時に発生するPN(Particulate Number)やTHC(Total Hydro Carbon)の排出低減が課題となっている。これらの発生源として挙げられるのは、エンジンのシリンダ内に発生する燃料付着や燃料液滴である。これらはシリンダ内に導入された液体燃料が、蒸発することなく残留して発生するものであり、特にエンジン始動時や低温環境下での運転で発生しやすいものである。先述の物質の発生を低減するために、燃料付着量の発生予測技術がいくつか提案されている。
特許文献1及び2に記載の技術は、エンジン運転条件やシリンダ壁面の温度の予測値などから複雑な演算によって燃料付着量の推定を実施しており、複雑な演算で燃料噴霧の貫徹距離を求めたり、燃料質量割合と未燃燃料割合を切り分けて演算したりしている。このため、実車における運転時にリアルタイムに燃料付着量を推定することが難しい。さらに、これらの技術によって推定できるのはシリンダ内壁への燃料付着のみであり、シリンダ内を浮遊している燃料液滴は特段考慮されていない。
上記の状況から、より少ない入力情報を用いて、より簡便に燃焼に寄与しなかった燃料を推定できる手法が要望されていた。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の内燃機関制御装置は、燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関を制御する内燃機関制御装置であって、気筒内での燃焼速度を検知する燃焼速度検知部と、燃焼速度を用いて気筒内の未燃燃料レベルを推定する未燃燃料レベル推定部と、未燃燃料レベルの許容値を設定する許容値設定部と、未燃燃料レベル推定部で推定される未燃燃料レベルが許容値以下となるように、内燃機関を制御する未燃燃料レベル調節部と、を備える。
本発明の少なくとも一態様によれば、より少ない入力情報を用いて、より簡便に未燃燃料レベルのより正確な推定が可能となり、その推定した未燃燃料レベルを基に内燃機関の制御を実現できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
<第1の実施形態>
まず、内燃機関の一例について図1を参照して説明する。
図1は、内燃機関の一例を示した概略断面図である。図1に示す内燃機関1は、ピストン101と、シリンダ102と、シリンダヘッド104とを備える。シリンダヘッド104は、ピストン101の冠面101Pとシリンダ102の内壁109とにより燃焼室103を形成する。また、燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射装置)として、少なくとも直噴用インジェクタ111若しくはポート噴射用インジェクタ112、又はその両方を備えている。本実施形態では、本発明を内燃機関1としてガソリンエンジンに適用した例を説明する。
まず、内燃機関の一例について図1を参照して説明する。
図1は、内燃機関の一例を示した概略断面図である。図1に示す内燃機関1は、ピストン101と、シリンダ102と、シリンダヘッド104とを備える。シリンダヘッド104は、ピストン101の冠面101Pとシリンダ102の内壁109とにより燃焼室103を形成する。また、燃料噴射用のインジェクタ(燃料噴射装置)として、少なくとも直噴用インジェクタ111若しくはポート噴射用インジェクタ112、又はその両方を備えている。本実施形態では、本発明を内燃機関1としてガソリンエンジンに適用した例を説明する。
燃焼室103の直上に混合気に着火する電極106を有した点火プラグ105が構成されている。空気は吸気行程において、主燃焼室に連通する、吸気バルブ113が開いた吸気ポート107を通して燃焼室103に流れ込む。燃料は直噴用インジェクタ111若しくはポート噴射用インジェクタ112、又はその両方により霧状に噴霧されることによって燃焼室103に送られる。燃料は、燃焼室103で気化し、吸気と混合して混合気となる。その後、ピストン101により混合気が圧縮され、適切なタイミングで点火コイル110に主点火信号が送られる。そして、点火プラグ105によって燃焼室103内の混合気に着火し、燃焼室103内の混合気を燃焼させる。これにより、燃焼室103内の圧力が上昇してピストン101を押し下げ、コネクティングロッド116がクランクシャフト115を回転させる。内燃機関1は、クランクシャフト115が回転することで動力を得る。燃焼室103内の燃焼後の排ガスは、排気バルブ114が開くことで排気ポート108から排気管へ排出される。
次に、内燃機関制御装置500のハードウェア構成について図2を参照して説明する。
図2は、内燃機関制御装置500のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2は、内燃機関制御装置500のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、内燃機関制御装置500は、入力回路191、A/D変換部192、中央演算装置であるCPU(Central Processing Unit)193、ROM(Read Only Memory)194、RAM(Random Access Memory)195、出力回路196、及び通信IF199を備える。
CPU193が、ROM194(記憶部の一例)に格納されたプログラムをRAM195に展開して実行することで、本発明の実施形態に係る各機能が実現される。CPU193は、制御装置の一例である。なお、CPU193の代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置が用いられてもよい。
入力回路191は、センサ類210から出力された信号を入力信号190として取り込む。例えば、センサ類210は、吸気流量センサ、スロットルセンサ、水温センサ、クランク角センサ、吸気カム角センサ、排気カム角センサ等である。入力回路191は、入力信号190がアナログ信号の場合に、入力信号190からノイズ成分の除去等を行い、ノイズ除去後の信号をA/D変換部192に出力する。
A/D変換部192は、アナログ信号をデジタル信号に変換し、CPU193に出力する。CPU193は、A/D変換部192から出力されたデジタル信号を取り込み、ROM194等の記憶媒体に記憶された制御ロジック(プログラム)を実行することによって、多種多様な演算及び制御等を実行する。
なお、CPU193の演算結果、及びA/D変換部192の変換結果は、RAM195に一時的に記憶される。また、本実施形態では、ROM194として、内容の書き換えが可能なEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリを用いてもよい。例えば、ROM194又は不図示の不揮発性ストレージに、本発明の実施形態に係る各機能を実現するためのアルゴリズムが記述されたプログラムが記憶されてもよい。また、不図示の不揮発性ストレージには、例えば、センサ類210から取得した複数のデータ、後述する未燃燃料曲線に対応するマップ情報等が格納される。なお、この不揮発性ストレージは、カセットタイプSSD(Solid State Drive)などの、内燃機関制御装置500に対して着脱可能な記憶媒体であってもよい。
CPU193の演算結果は、出力回路196から制御信号197として出力され、制御対象のアクチュエータ類220の制御に用いられる。制御対象は、例えば、吸気バルブ駆動装置、排気バルブ駆動装置、インジェクタ、点火プラグ、操舵装置、ブレーキ装置、電力変換回路等である。
入力信号190がデジタル信号の場合は、入力信号190が入力回路191から信号線198を介して直接CPU193に送られ、CPU193が必要な演算及び制御等を実行する。
通信IF199は、他の装置との間で行われる通信の制御を行う通信デバイス等により構成される。例えば、通信IF199は、広域ネットワークN(例えば、インターネット)と通信を行う通信デバイス、又は、CAN(Controller Area Network)などにより図示しないマスターECU等といった車両内のECUやセンサと通信を行う通信デバイスである。
図3は、内燃機関1内で燃料を噴霧した様子を示した図である。
通常、液体状の燃料をインジェクタから噴射するとき、燃料が対向壁に液体の状態のまま付着することがある。例えば、図3に示すように直噴用インジェクタ111で燃焼室103内に燃料噴霧301を噴射したとき、ピストン101の冠面101Pやシリンダ102の内壁109などに、燃料液膜302が形成される。また、燃料噴霧301は高速であるため、ピストン101の冠面101Pやシリンダ102の内壁109などに衝突した際の衝撃によって、液滴303が燃焼室103内に飛散することがある。また、直噴用インジェクタ111の噴射口周辺に、燃料の液滴が残留して付着するチップウェット304が発生することがある。
通常、液体状の燃料をインジェクタから噴射するとき、燃料が対向壁に液体の状態のまま付着することがある。例えば、図3に示すように直噴用インジェクタ111で燃焼室103内に燃料噴霧301を噴射したとき、ピストン101の冠面101Pやシリンダ102の内壁109などに、燃料液膜302が形成される。また、燃料噴霧301は高速であるため、ピストン101の冠面101Pやシリンダ102の内壁109などに衝突した際の衝撃によって、液滴303が燃焼室103内に飛散することがある。また、直噴用インジェクタ111の噴射口周辺に、燃料の液滴が残留して付着するチップウェット304が発生することがある。
燃焼室103内の混合気に対して点火プラグ105によって着火した際、燃料液膜302や液滴303、チップウェット304が残留していると、それらは液体の状態で燃焼する。このとき、火炎が到達した瞬間に残留している燃料液膜302や液滴303、チップウェット304は、内燃機関1の出力に寄与することができず混合気とは別に拡散燃焼する。その結果、PNやTHCが発生してしまう。ポート噴射用インジェクタ112を使用した場合も同様の現象が発生する。燃料液膜302や液滴303やチップウェット304などの内燃機関1の出力に寄与できなかった燃料を、総称して「未燃燃料305」と呼ぶ。
未燃燃料305を低減するために、燃焼室103内への燃料噴霧301の形状や長さを制御し燃料液膜302の発生を抑えるなどの対策が検討されている。通常、内燃機関1の燃焼室103内の空燃比がねらった数値となるように噴射条件などが最適化されている。しかしながら、外気温度が低い際の冷機始動などにおいては、燃焼室103内での燃料の蒸発不良によって、ねらった空燃比に対して実際の空燃比がずれてしまう。他の冷気始動としては、アイドリング中の一時停止など内燃機関1が短い時間停止後に再始動することなどが挙げられる。この冷機始動のとき、通常未燃燃料は増加するため、その結果PNやTHCが多く発生するばかりか、燃焼できず失火するなどの問題が生じる。また、冷機始動においては、触媒などが温まっていないとともに、従来の酸素センサや空燃比センサなどが活性化しておらず、センサによる正確な測定が困難である。
特許文献1には、エンジンの運転条件や燃料の噴射条件、エンジンの水温などから複雑な計算式を用いて燃焼室内の燃料液膜302の量を推定する技術が紹介されている。この技術の場合、燃料液膜302の量を推定するためには燃焼質量割合と未燃燃料割合を切り分けて複雑な数式で演算をする必要があり、実車にてリアルタイムに図3に示した未燃燃料305を推定することが困難である。加えて、特許文献1に記載の技術によって推定できるものは燃料液膜302の量だけであり、液滴303やチップウェット304の量までは推定できない。このように、燃料液膜302と燃料噴霧301の長さや燃料量、内燃機関1の内壁温度の関連については検討されているが、実際の燃焼状態、特に燃焼速度と未燃燃料305の関係に関して検討はされていなかった。本明細書において燃焼速度とは、混合気が点火して燃焼完了するまでの時間、又は混合気がある燃料質量割合となるまでの時間である。燃焼速度は、火炎が混合気中を伝播する速度によって異なると考えられる。
図4は、燃焼速度と未燃燃料量の関係の一例、並びに、未燃燃料量と空燃比の関係の一例を示した図である。ここでは、理想空燃比になるように燃料を燃焼室103に噴射し、燃焼室103内で燃焼させた際の燃焼速度と未燃燃料量の関係401(図4上側)と、未燃燃料量と燃焼室103内の空燃比の関係4011(図4下側)が示されている。本発明では、近年の環境へ配慮したエンジンの台頭を鑑みて、燃料を理想空燃比以下になるように噴射することを考える。目標となる空燃比、内燃機関1の負荷、及び点火時期が同じであるとき、図4に示すように未燃燃料量が多いほど、目標となる空燃比と実際に燃焼する混合気の空燃比の間で差分407(ずれ量)が生じる。これは、燃料の層流燃焼速度が空燃比によって変化するためである。
通常、内燃機関1における燃料噴霧などの設定は、未燃燃料量が許容値以下になるように最適化されている。しかし、前述の通り、外気温度などの外的要因により、未燃燃料量が許容値を超える(許容範囲から外れる)ことが発生する。燃料が燃焼するときの燃焼速度は、燃料の成分と、雰囲気の温度と、雰囲気の圧力に強く影響を受ける。そのため、目標となる空燃比、負荷、及び、点火時期における基準となる燃焼速度402と実際の燃焼速度403との差404がわかれば、その燃焼時点での未燃燃料レベル405、つまり空燃比の基準値406からの差分407が推定できる。
燃焼速度の検出方法としては、図示しないクランク角センサの出力の変化を読み取ることで、点火時刻からの燃焼位相を精度よく検知する方法が、例えば特開2021-161904号公報(参考文献1)に示されている。点火時刻は、点火時期(例えば、圧縮上死点を基点としたクランクの位相)の情報である。燃焼位相が進んでいるか遅れているかを見ることで、燃焼速度が速いか遅いかがわかる。例えば、燃焼速度は、燃焼開始から燃焼質量割合50%(MFB50)に達するまでの時間で表すことができる。
図5は、本実施形態に係る内燃機関制御装置500の構成例と入力データの例を示したブロック図である。内燃機関制御装置500は、シリンダ102(燃焼室103)内での燃焼速度を検知する燃焼速度検知部501と、燃焼速度からシリンダ102内の未燃燃料レベルを推定する未燃燃料レベル推定部502と、推定した未燃燃料レベルの許容値を設定する許容値設定部503と、推定した未燃燃料レベルが許容値以下となるように内燃機関1を制御する未燃燃料レベル調節部504を有している。
燃焼速度検知部501には、少なくとも燃焼速度に影響の大きい変数、例えば目標となる空燃比(目標空燃比510)、負荷情報511、点火時刻512、及びクランク角センサの検出信号513が入力される。負荷情報511には、一例として内燃機関1(クランクシャフト115)の回転数と吸気圧が含まれる。燃焼速度検知部501では、上記参考文献1に示されているように、クランク角センサの検出信号513の変化を観測し、燃焼速度を検知する。そして、燃焼速度検知部501は、検知した燃焼速度514を未燃燃料レベル推定部502へ出力する。
許容値設定部503には、少なくとも目標空燃比510と負荷情報511が入力される。許容値設定部503は、運転条件として入力された目標空燃比510及び負荷情報511から許容できる未燃燃料レベル(許容未燃燃料レベル515)を設定し、未燃燃料レベル調節部504へ出力する。許容未燃燃料レベル515は、例えば、目標空燃比510と負荷情報511から算出された燃料噴射量(推定値)に対する割合として設定してもよく、又は実際の燃料噴射量(実測値)に対する割合として設定してもよい。例えば、実際の燃料噴射量は、任意の設定された時間範囲においてインジェクタ520から噴射された燃料量の平均値である。
また、許容未燃燃料レベル515は、事前にシミュレーションや実験などを実施してその結果に基づいたマップ情報として保持する記憶部(図示略)を有していてもよい。記憶部は、例えば、キャッシュメモリ、レジスタ、又はコンピュータープログラムに書き込まれた形態とすることができる。例えば、マップ情報により、目標空燃比、負荷情報、及び許容未燃燃料レベルの関係が定義される。これらの項目の関係をマップ情報として保持することによって、演算を高速に実施することができる。
未燃燃料レベル推定部502には、少なくとも燃焼速度検知部501で検知された燃焼速度514と、目標空燃比510と、負荷情報511と、点火時刻512が入力される。また、未燃燃料レベル推定部502は、図6に示すような、燃焼速度514と未燃燃料レベル516の推定値との関係を表す未燃燃料曲線601を保持している。この未燃燃料曲線601は、目標空燃比510と、負荷情報511と、点火時刻512の組合せごとに設定されている。なお、図6において未燃燃料曲線601は直線として示されているが、実際に曲線であってもよい。
図6は、混合気の燃焼速度と未燃燃料レベルの関係の一例を示した図である。ここで、ある目標空燃比510と、負荷情報511と、点火時刻512の条件において、未燃燃料曲線601が決定される。このとき、基準となる燃焼速度602(基準燃焼速度)は、未燃燃料量が0かつ均一混合気が燃焼した際の燃焼速度でもよいし、事前に暖機状態(内燃機関1が充分に暖まった条件)での実験、又は暖機状態を想定したシミュレーションで取得した値を使用してもよい。
例えば、未燃燃料レベル推定部502は、未燃燃料曲線601を、目標空燃比510、負荷情報511、及び点火時刻512ごとにマップ情報として保持する記憶部(図示略)を有していてもよい。記憶部は、例えば、キャッシュメモリ、レジスタ、又はコンピュータープログラムに書き込まれた形態でもよい。マップ情報として保持することにより、未燃燃料レベルの演算を高速に実施することができる。
未燃燃料レベル推定部502は、燃焼速度検知部501で検知された燃焼速度を、点火時期514、内燃機関1の負荷、及び目標空燃比510から事前に設定された燃焼速度と未燃燃料レベルとの関係を示した情報である未燃燃料曲線601に照らして、未燃燃料レベルを推定する。このように、燃焼速度514から未燃燃料曲線601を参照することで未燃燃料レベル516を推定することができる。これは、基準となる燃焼速度602と実際の燃焼速度514との差分を取っていることに相当する。つまり、推定される未燃燃料レベル516には、この燃焼速度の差分603が反映される。
ここで、未燃燃料レベル516は、未燃燃料の質量、噴射燃料量に対する未燃燃料の割合、又は未燃燃料の質量を有限の区分に分割した区間などとして定義してよい。例えば、未燃燃料レベル516を未燃燃料の質量に応じて、「多い」、「中程度(適量)」、「少ない」の3区分や、「多すぎ」、「やや多い」、「中程度(適量)」、「やや少ない」、「少なすぎ」の5区分に分けてもよい。なお、この未燃燃料レベル516は、燃料液膜302や液滴303及びチップウェット304などの液体の状態で存在している燃料を全て含んだ状態(未燃燃料305に相当)で設定される。
未燃燃料レベル調節部504には、許容未燃燃料レベル515と未燃燃料レベル516が入力される。未燃燃料レベル516が許容未燃燃料レベル515を超えた場合、未燃燃料レベル調節部504は、未燃燃料レベル516が許容未燃燃料レベル515以下となるように、少なくともインジェクタ520、燃料ポンプ521、点火コイル522(点火装置)、及びスロットル523のいずれかを制御する。このような制御により、燃焼室103内の未燃燃料量を低減させることができる。インジェクタ520は、直噴用インジェクタ及びポート噴射用インジェクタ112に相当する。点火コイル522は、点火コイル110に相当する。一般的に、内燃機関制御装置500は、センサ類210からアクセルの踏み込み量及び内燃機関1の状態を示す情報を受け取り、それらを総合した上で最終的なスロットル523の開度を調整する。
なお、本発明は、触媒が活性化していない冷機始動であっても、実際の燃焼速度514と、運転条件(目標空燃比510と負荷情報511)から設定された基準の許容未燃燃料レベル515によって未燃燃料レベルの推定が可能である。それゆえ、本発明は、これまで検出できなかった冷機始動時の未燃燃料の検知にも使用することができ、暖気後の未燃燃料の検知にも使用することが可能である。
以上のとおり、本実施形態では、燃料を噴射する燃料噴射装置(インジェクタ520)を備えた内燃機関を制御する内燃機関制御装置(内燃機関制御装置500)において、気筒(シリンダ102)内での燃焼速度を検知する燃焼速度検知部(燃焼速度検知部501)と、燃焼速度を用いて気筒内の未燃燃料レベルを推定する未燃燃料レベル推定部(未燃燃料レベル推定部502)と、運転条件又は実際の燃料噴射量から未燃燃料レベルの許容値(許容未燃燃料レベル515)を設定する許容値設定部(許容値設定部503)と、未燃燃料レベル推定部で推定される未燃燃料レベルが許容値以下となるように、内燃機関を制御する未燃燃料レベル調節部(未燃燃料レベル調節部504)と、を備えるように構成する。
上記構成の本実施形態に係る内燃機関制御装置によれば、より少ない入力情報を用いて、より簡便に未燃燃料レベルのより正確な推定が可能となる。そして、本実施形態は、その推定した未燃燃料レベルを基に該未燃燃料レベルが許容値以下となるように調節(内燃機関を制御)することができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して未燃燃料レベルの推定精度を向上させるための例である。
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して未燃燃料レベルの推定精度を向上させるための例である。
第2の実施形態に係る内燃機関制御装置の構成例について図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施形態に係る内燃機関制御装置500Aの構成例と入力データの例を示したブロック図である。内燃機関制御装置500Aは、第1の実施形態に係る内燃機関制御装置500と比較して、未燃燃料レベル推定部502に代えて未燃燃料レベル推定部502Aを備える点が異なる。未燃燃料レベル推定部502Aに対して、内燃機関1が備える図示しないEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムのEGR濃度情報701が入力される。
図7は、第2の実施形態に係る内燃機関制御装置500Aの構成例と入力データの例を示したブロック図である。内燃機関制御装置500Aは、第1の実施形態に係る内燃機関制御装置500と比較して、未燃燃料レベル推定部502に代えて未燃燃料レベル推定部502Aを備える点が異なる。未燃燃料レベル推定部502Aに対して、内燃機関1が備える図示しないEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムのEGR濃度情報701が入力される。
燃料が燃焼するとき、燃焼状態は、燃料の成分と、雰囲気の温度と、雰囲気の圧力に強く影響を受ける。これに加えて、実エンジンでは燃焼室103内に排ガス(不活性ガス)を再循環させることで混合気を希釈して燃焼させることがあり、燃焼速度は再循環排ガス(以下「EGR」とも称する)の濃度の影響を受ける。EGR濃度は、ある期間においてシリンダ102の容積に対する該シリンダ102に再循環する排ガス量の割合として定義される。
そのため、EGR濃度が高い燃焼では、未燃燃料レベルの推定精度が低下する恐れがある。よって、未燃燃料レベル推定部502AにEGR濃度情報701を入力し、図8に示すように破線の未燃燃料曲線601を、実線の未燃燃料曲線801に補正する必要がある。なお、EGR濃度の代わりにEGR率を用いてもよい。EGR率は、シリンダ102の吸気量に対する再循環排ガス量の比率として定義される。
図8は、本実施形態に係る燃焼速度と補正前後の未燃燃料レベルとの関係の一例を示した図である。図8において横軸は燃焼速度、縦軸は未燃燃料レベルを表す。未燃燃料レベル推定部502AにEGR濃度情報701の入力がない場合、未燃燃料曲線601によって燃焼速度514から未燃燃料レベル516が推定される。一方、EGR濃度情報701の入力がある場合、未燃燃料レベル推定部502Aは、EGR濃度情報701を用いて未燃燃料曲線601を未燃燃料曲線801に補正する。そして、未燃燃料レベル推定部502Aは、EGR濃度情報701がない場合での未燃燃料レベル516に対して、EGR濃度情報701を用いて補正された未燃燃料レベル802を推定することができる。
以上により、本実施形態では、未燃燃料レベル推定部502AにEGR濃度情報701を入力することにより、EGRによる混合気の希釈を考慮した未燃燃料レベルを推定することができる。それにより、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、未燃燃料レベルの推定精度の向上が可能となる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、第1の実施形態と比較して未燃燃料レベルの推定精度を向上させるための他の例である。
第3の実施形態は、第1の実施形態と比較して未燃燃料レベルの推定精度を向上させるための他の例である。
第3の実施形態に係る内燃機関制御装置の構成例について図9を参照して説明する。
図9は、第3の実施形態に係る内燃機関制御装置500Bの構成例と入力データの例を示したブロック図である。内燃機関制御装置500Bは、第1の実施形態に係る内燃機関制御装置500と比較して、未燃燃料レベル推定部502に代えて未燃燃料レベル推定部502Bを備える点が異なる。未燃燃料レベル推定部502Bに対して、補正情報901が入力される。なお、第2の実施形態におけるEGR濃度情報701は、本実施形態の補正情報901の一種とも言える。
図9は、第3の実施形態に係る内燃機関制御装置500Bの構成例と入力データの例を示したブロック図である。内燃機関制御装置500Bは、第1の実施形態に係る内燃機関制御装置500と比較して、未燃燃料レベル推定部502に代えて未燃燃料レベル推定部502Bを備える点が異なる。未燃燃料レベル推定部502Bに対して、補正情報901が入力される。なお、第2の実施形態におけるEGR濃度情報701は、本実施形態の補正情報901の一種とも言える。
例えば、内燃機関1の圧縮比は、ピストン101の冠面101Pと内壁109で形成される燃焼室103の、冠面101Pが下死点にあるときの容積と該冠面101Pが上死点にあるときの容積との比で表される。内燃機関1に導入された空気は、該圧縮比で圧縮され点火される。点火時の混合気の温度と圧力は、内燃機関1の圧縮比によって変化する。よって、基準となる燃焼速度602が内燃機関1によって異なることになる。
ここで、未燃燃料レベル推定部502Bで未燃燃料レベルを推定時に、補正情報901として圧縮比の情報があれば、内燃機関1の形状(ボアストローク)が変わった場合であっても、その圧縮比に応じて未燃燃料曲線601の補正を行うことができる。それにより、対象の内燃機関1が変わっても、内燃機関制御装置500Bは最適な未燃燃料曲線を得て、補正された未燃燃料レベル902を推定することができる。また、補正情報901として、吸気温度又は外気温度などの環境情報を用いてもよい。
以上、本実施形態では、未燃燃料レベル推定部502Bに、内燃機関1の圧縮比又は、吸気温度若しくは外気温度の情報を入力することにより、内燃機関1の圧縮比や環境情報を考慮した未燃燃料レベルを推定することができる。それにより、本実施形態は、第1の実施形態と比較して、未燃燃料レベルの推定精度の向上が可能となる。
<第4の実施形態>
ここで、第1~第3の実施形態に係る未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の制御例について、図10~図15を用いて説明する。まず、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第1の制御例について図10及び図11を用いて説明する。
ここで、第1~第3の実施形態に係る未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の制御例について、図10~図15を用いて説明する。まず、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第1の制御例について図10及び図11を用いて説明する。
(第1の制御例)
図10は、第4の実施形態の第1の制御例におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。図10において1段目と2段目のグラフは、未燃燃料量を制御する前の燃料噴射信号と未燃燃料量を表し、図10において3段目と4段目のグラフは、未燃燃料量を制御した後の燃料噴射信号と未燃燃料量を表す。
図10は、第4の実施形態の第1の制御例におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。図10において1段目と2段目のグラフは、未燃燃料量を制御する前の燃料噴射信号と未燃燃料量を表し、図10において3段目と4段目のグラフは、未燃燃料量を制御した後の燃料噴射信号と未燃燃料量を表す。
燃料を燃料噴射信号1001のように噴射したとき、例えば、未燃燃料量が未燃燃料量1003のような推移を経て点火時刻1002にて点火される(図10の1段目、2段目)。このとき、内燃機関1が冷えた状態であると、想定よりも点火時の未燃燃料量が増加することがある。この原因として吸気が冷えており、燃料の蒸発が不良であることと、燃料噴霧301が壁面に衝突した際に発生した液滴303等が蒸発できないことなどが挙げられる。
そこで、未燃燃料レベル調節部504がインジェクタ520の燃料噴射タイミングを進角化させる制御を行い、燃料噴射信号1001を燃料噴射信号1004に補正する(図10の3段目)ことで、燃料が蒸発するまでの時間的猶予を長く確保する。これにより、液滴303の蒸発を促進し、未燃燃料量1005のように点火時刻1002における未燃燃料量の低減を図ることができる(図10の4段目)。ただし、その場合、ピストン101がより上死点に近い位置で燃料噴射が開始され、ピストン101の冠面101Pへの燃料付着量が増加する可能性がある。このため、燃料噴射タイミングと併せて燃料圧力の調整を実施してもよい。燃料圧力が低い場合には燃料噴霧301の貫徹距離が短くなるため、未燃燃料量の低減が期待できる。
図11は、第4の実施形態の第1の制御例における多段噴射におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。近年では、燃料噴射信号1101のような複数のパルス信号を生成して、同一燃焼サイクルで燃料を多段に噴射することによって燃料噴霧301の貫徹距離を短くし、燃料付着量1103のように燃料付着量を低減する技術が開発されている(図11の1段目、2段目)。この技術でも、シリンダ102の内壁109の温度や吸気温度が低い場合には、未燃燃料量1103のように点火時刻1102における未燃燃料量が想定した値にならないことがある。
この対策として、例えば、燃料噴射信号1104のように、ピストン101の冠面101Pが下死点に近い位置での2段目噴射の燃料噴射量を増やす(図11の3段目)。この場合、ピストン101の冠面101Pが上死点に近い位置で燃料を噴射する、1段目噴射と3段目噴射の燃料噴射量が減少する。このため、冠面101Pに到達する燃料噴霧301が減少し、燃料付着量1105のように燃料付着量を低減できる(図11の4段目)。
また、圧縮行程での燃料噴射(例えば、不図示の4段目噴射)を新たに実施してもよい。この場合、発生するピストン101の冠面101Pに付着する燃料液膜302や発生する液滴303が増加する可能性はあるが、圧縮によって燃料液膜302や液滴303が小さくなるとともに蒸発しやすくなる。
また、吸気行程初期(例えば、1段目噴射)の燃料噴射量を減らしてもよい。これより、ピストン101の冠面101Pに付着する燃料液膜302や発生する液滴303が減少し、燃料付着量を低減できる。
また、燃料噴射信号の各パルス間の間隔を空けたり又は詰めたりすることで、燃料付着量を制御するようにしてもよい。なお、上述した多段噴射において、基本的には燃料噴射方法の変更前と変更後で一燃焼サイクルの総噴射量は変化しない。
(第2の制御例)
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第2の制御例について図12を用いて説明する。
図12は、第4の実施形態の第2の制御例における燃料圧力と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。燃料ポンプ521による燃料の噴射圧力(以下「燃料圧力」と称する)を増加させると、インジェクタ520から噴射される燃料噴霧301や液滴303の微粒化が進み、燃料の蒸発が促進される。しかしながら、噴射された燃料噴霧301の飛翔速度も上昇するため、燃料圧力と未燃燃料量は、インジェクタ520の配置や燃焼室103の形状によっては、燃料圧力を上げると未燃燃料量が増加する曲線1201のような関係を持つ(図12上側)。
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第2の制御例について図12を用いて説明する。
図12は、第4の実施形態の第2の制御例における燃料圧力と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。燃料ポンプ521による燃料の噴射圧力(以下「燃料圧力」と称する)を増加させると、インジェクタ520から噴射される燃料噴霧301や液滴303の微粒化が進み、燃料の蒸発が促進される。しかしながら、噴射された燃料噴霧301の飛翔速度も上昇するため、燃料圧力と未燃燃料量は、インジェクタ520の配置や燃焼室103の形状によっては、燃料圧力を上げると未燃燃料量が増加する曲線1201のような関係を持つ(図12上側)。
さらに、内燃機関1の始動時などで燃焼室103内の壁温度が低いときには、いったん燃料が付着してしまうと蒸発するまでに時間を要するため、想定よりも未燃燃料量が増加することが考えられる。冷機始動時の燃料ポンプ521の燃料圧力と未燃燃料量の関係を表した曲線1202(図12下側)のように、冷気始動時は暖機運転時とは未燃燃料量の特性が変わることになる。図12下側に示した冷気始動時の例では、燃料圧力が増加すると暖機運転時よりも未燃燃料量が増加し、かつ、暖機運転時において未燃燃料量が極小となる燃料圧力1203よりもさらに低い燃料圧力から未燃燃料量の増加傾向が見られる。
そこで、冷気始動時及び暖機運転時において、未燃燃料レベル調節部504が燃料ポンプ521の燃料圧力を変化させる制御を行うことによって、未燃燃料量をねらった値に近づけることが可能となる。
(第3の制御例)
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第3の制御例について図13及び図14を用いて説明する。
図13は、第4の実施形態の第3の制御例におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。図13上側と図13下側のグラフは、図10上側と図10下側のグラフと同じである。
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第3の制御例について図13及び図14を用いて説明する。
図13は、第4の実施形態の第3の制御例におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量の関係の一例を示した図である。図13上側と図13下側のグラフは、図10上側と図10下側のグラフと同じである。
図12において説明したように、内燃機関1の冷機始動時、通常よりも燃料の蒸発が遅く、未燃燃料量が多くなることが考えられる。そのため、点火時刻1002を点火時刻1301のように遅角化させることにより(図13上側)、燃料が蒸発するまでの時間的猶予を確保し未燃燃料量をねらった値に近づけることが可能となる(図13下側)。
図14は、第4の実施形態の第3の制御例における多段噴射におけるクランク角と燃料噴射信号と未燃燃料量と点火時刻の関係の一例を示した図である。図14上側と図14下側のグラフは、図11上側と図11下側のグラフと同じである。
図14に示すように、多段噴射の場合も同様に、点火時刻1102を点火時刻1401のように遅角化させるとよい(図14上側)。これにより、図13に示した1回のみの燃料噴射と同様に、燃料が蒸発するまでの時間的猶予を確保し未燃燃料量をねらった値に近づけることが可能となる(図14下側)。
(第4の制御例)
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第4の制御例について図15を用いて説明する。
図15は、第4の実施形態の第4の制御例におけるクランク角と点火信号の関係の一例、並びに、未燃燃料レベルと予備点火回数の関係の一例を示した図である。未燃燃料量が大きく増えすぎた場合に、燃焼の途中で失火するなどのリスクがある。失火した場合、THCの排出量が増加する。その対策として、点火信号1501のように、吸気行程において点火コイル522にて事前に複数回の点火を実施する予備点火信号1502を出力し、その後、主点火信号1503を出力する予備点火方式が有効である(図15上側)。
次に、未燃燃料レベル調節部504による未燃燃料量の第4の制御例について図15を用いて説明する。
図15は、第4の実施形態の第4の制御例におけるクランク角と点火信号の関係の一例、並びに、未燃燃料レベルと予備点火回数の関係の一例を示した図である。未燃燃料量が大きく増えすぎた場合に、燃焼の途中で失火するなどのリスクがある。失火した場合、THCの排出量が増加する。その対策として、点火信号1501のように、吸気行程において点火コイル522にて事前に複数回の点火を実施する予備点火信号1502を出力し、その後、主点火信号1503を出力する予備点火方式が有効である(図15上側)。
例えば、この予備点火回数を点火コイル522の性能や電費制限により決まる上限回数1505までの範囲において、予備点火回数曲線1504(図15下側)に基づいて予備点火回数を未燃燃料レベルに応じて変化させる。これにより、THCを削減するために最適な予備点火回数を含む予備点火信号1502を生成することができる。また、複数回の予備点火によって点火プラグ105の温度も上昇するため、点火プラグ105の電極106周りに存在する燃料の蒸発促進が期待できる。
一方、未燃燃料レベル516が許容未燃燃料レベル515以下にならない場合、特に未燃燃料レベル516の低下が見られない場合には、例えば、スロットル523を制御して燃焼室103へ送る空気量を減少させ、内燃機関1の回転数を低下させるとよい。回転数の低下により、高温の燃焼室103内に既燃ガスを一定量とどめて、HC(Hydro Carbon)を焼き切り、PNとTHCを減らすことができる。
本実施形態における未燃燃料量の第1の制御例から第4の制御例は単一で行うだけではなく、複数の制御を協調して実施することができる。複数の制御を協調して実施することにより、未燃燃料量を制御した結果発生するデメリットを相殺しつつ、未燃燃料量又はPNとTHCの発生量を低減することができる。
例えば、図12に示したように、燃料圧力を上げると燃料噴霧301の貫徹距離が長くなり、燃料付着量が増える。その半面、燃料圧力が高いと燃料噴霧301が小さくなり、液滴303などが発生しても蒸発しやすいため燃料付着量が減少する。燃料圧力の上昇に伴うこれらの事象は、相反する事象である。したがって、そのときの運転条件によって制御を組み合わせて、未燃燃料量の制御を幾とおりにも変更可能である。以下に、2つの制御例の組合せの一例を説明する。
(1)燃料圧力を上げて燃料噴霧301の貫徹距離が長くなった分、燃料噴射を遅角化する(ピストン101の冠面101Pが下がってから噴射)。
(2)ピストン101の冠面101Pが下がるときに燃料噴射(遅角化)することで、燃料が蒸発を完了すべき時刻までの時間が短くなるため、点火時期を遅角化する(蒸発までの時間的猶予を与える)。
(2)ピストン101の冠面101Pが下がるときに燃料噴射(遅角化)することで、燃料が蒸発を完了すべき時刻までの時間が短くなるため、点火時期を遅角化する(蒸発までの時間的猶予を与える)。
また、この第4の実施形態で説明した未燃燃料量の第1の制御例から第4の制御例は一例であり、内燃機関1の形状構成(圧縮比)によって制御方法は変化する。
以上のとおり、本実施形態は、未燃燃料レベル調節部504が未燃燃料レベルを許容値以下にするよう、インジェクタ520(燃料噴射装置)、燃料ポンプ521、点火コイル522(点火装置)、スロットル523の制御を適宜実行することで、PN、THCの発生を低減することができる。
また、各実施形態における未燃燃料量の制御は、気筒別に独立して実施してもよい。すなわち、複数の気筒を備えた内燃機関において、未燃燃料レベル調整部504は、気筒ごとに未燃燃料レベル516が許容未燃燃料レベル515以下となるように、少なくともインジェクタ520、燃料ポンプ521、点火コイル522(点火装置)、及びスロットル523のいずれかを制御する。これにより、複数の気筒を備えた内燃機関全体のTHC、PNの排出量の低減が可能となる。
なお、上述した実施形態では、内燃機関としてガソリンエンジンを例に説明したが、内燃機関はガスエンジン、ディーゼルエンジンなどであってもよい。
また、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにその構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。
また、上述した実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成要素が相互に接続されていると考えてもよい。
1…内燃機関、 101…ピストン、 101P…冠面、 102…シリンダ、 103…燃焼室、 105…点火プラグ、 110…点火コイル、 111…直噴用インジェクタ、 112…ポート噴射用インジェクタ、 210…センサ類、 220…アクチュエータ類、 301…燃料噴霧、 302…燃料液膜、 303…液滴、 304…チップウェット、 305…未燃燃料、 500,500A,500B…内燃機関制御装置、 501…燃焼速度検知部、 502,502A,502B…未燃燃料レベル推定部、 503…許容値設定部、 504…未燃燃料レベル調節部、 510…目標空燃比、 511…負荷情報、 512…点火時刻、 513…検出信号、 514…燃焼速度、 515…許容未燃燃料レベル、 516…未燃燃料レベル、 520…インジェクタ、 521…燃料ポンプ、 522…点火コイル、 523…スロットル、 601…未燃燃料曲線、 701…EGR濃度情報、 801…未燃燃料曲線、 901…補正情報
Claims (13)
- 燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関を制御する内燃機関制御装置であって、
気筒内での燃焼速度を検知する燃焼速度検知部と、
前記燃焼速度を用いて前記気筒内の未燃燃料レベルを推定する未燃燃料レベル推定部と、
運転条件又は実際の燃料噴射量から前記未燃燃料レベルの許容値を設定する許容値設定部と、
前記未燃燃料レベル推定部で推定される前記未燃燃料レベルが前記許容値以下となるように、前記内燃機関を制御する未燃燃料レベル調節部と、を備える
内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部には、少なくとも前記燃焼速度、点火時期、前記内燃機関の負荷、及び目標空燃比の各情報が入力される
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部には、さらに前記気筒に再循環される排ガスの濃度の情報が入力され、前記未燃燃料レベル推定部は、再循環される前記排ガスの濃度に応じて前記未燃燃料レベルの推定結果を補正する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部には、さらに前記内燃機関の圧縮比の情報が入力され、前記未燃燃料レベル推定部は、前記圧縮比に応じて前記未燃燃料レベルの推定結果を補正する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部には、さらに吸気温度又は外気温度の情報が入力され、前記未燃燃料レベル推定部は、前記吸気温度又は前記外気温度に応じて前記未燃燃料レベルの推定結果を補正する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部は、前記燃焼速度と前記未燃燃料レベルが関連付けられたマップ情報を記憶する記憶部を有している
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル推定部は、前記燃焼速度検知部で検知された燃焼速度を、前記点火時期、前記内燃機関の負荷、及び前記目標空燃比から事前に設定された燃焼速度と未燃燃料レベルとの関係を示した情報に照らして、前記未燃燃料レベルを推定する
請求項2に記載の内燃機関制御装置。 - 前記燃焼速度検知部には、少なくとも点火時期、前記内燃機関の負荷、目標空燃比、及びクランク角センサの検出結果の各情報が入力される
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベルの許容値は、前記運転条件として、目標空燃比と、前記内燃機関の負荷とを用いて設定される
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベルの前記許容値は、任意の設定された時間範囲で前記燃料噴射装置から噴射された燃料量の平均値に応じて設定される
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記未燃燃料レベル調節部は、前記未燃燃料レベルが前記許容値以下になるように、少なくとも燃料噴射装置、燃料ポンプ、点火装置、及びスロットルのいずれかの制御を行う
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 前記内燃機関が複数の気筒を備え、
前記未燃燃料レベル調節部は、前記気筒ごとに前記未燃燃料レベルが前記許容値以下になるように、少なくとも燃料噴射装置、燃料ポンプ、点火装置、又はスロットルのいずれかの制御を行う
請求項1に記載の内燃機関制御装置。 - 燃料を噴射する燃料噴射装置を備えた内燃機関を制御する内燃機関制御装置における内燃機関制御方法であって、
気筒内での燃焼速度を検知する処理と、
前記燃焼速度を用いて前記気筒内の未燃燃料レベルを推定する処理と、
運転条件又は実際の燃料噴射量から前記未燃燃料レベルの許容値を設定する処理と、
推定される前記未燃燃料レベルが前記許容値以下となるように、前記内燃機関を制御する処理と、を含む
内燃機関制御方法。
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