JP2024063855A - 位相差測定装置および位相差測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異なる屈折率領域を透過する光の位相シフト量を高い精度で測定する。【解決手段】位相差測定装置1は照射部10とスリットマスク23とセンサ25と演算処理部50とを備える。照射部10は測定対象物8へ光を照射する。スリットマスク23は、第1スリット23a、第1スリット23aと第1間隔で隣り合う第2スリット23b、および、第2スリット23bと第2間隔で隣り合う第3スリット23cを有する。センサ25は、スリットマスク23を通過した光の干渉による干渉パターンを検出する。演算処理部50は、第1スリット23aと第3スリット23cとの第3間隔または第1間隔に対応した第1周波数成分の第1位相、および、第2間隔に対応した第2周波数成分の第2位相を、干渉パターンに基づいて求め、第1位相および第2位相に基づいて位相シフト量を求める。【選択図】図1
Description
本開示は、位相差測定装置および位相差測定方法に関する。
近年では、半導体基板または表示ディスプレイ用の基板などの基板に対して高い解像度でパターンを転写するために、位相シフトマスクが利用されている。この位相シフトマスクには、半波長だけ光の位相を遅らせる位相シフト膜が形成されている。
この位相シフト膜による位相の遅れを測定する測定装置として特許文献1および特許文献2が開示されている。特許文献1に記載の測定装置は、位相シフトマスク(特許文献1では位相差マスク)に光を照射する照射部、一対のスリットを有するスリットマスク、および、一対のスリットを通過した光による干渉縞を検出する検出部を備えている。
この測定装置において、位相シフト膜を透過する第1光は一方のスリットを通過し、位相シフト膜と隣り合う位置で位相シフトマスクを透過する第2光は他方のスリットを通過する。一対のスリットを通過した第1光および第2光は回折して互いに干渉し、その干渉によって生じる干渉縞が検出部によって検出される。
この干渉縞の位置は第1光と第2光との位相シフト量(つまり位相シフト膜による位相の遅れ)に依存するので、測定装置はこの干渉縞の位置に基づいて位相シフト量を算出している。
位相シフトマスクの全面を測定する場合を考慮する。例えば光学系(照射部、スリットマスクおよび検出部の一組)を位相シフトマスクに対して移動させることで、光学系が位相シフトマスクの全面を走査して各測定位置で測定を行うことができる。
しかしながら、光学系の移動に伴う慣性力が当該光学系に作用するので、各測定位置において、光学系の光軸にズレ(光軸の傾き、または、光軸の位置ずれ)が生じ得る。干渉縞の位置はこのような光軸のズレ量にも依存するので、干渉縞の位置に基づいて高い精度で位相シフト量を算出することは難しい。言い換えれば、この干渉縞の位置は高い精度では位相シフト量を反映していない。
そこで、本開示は、異なる屈折率領域を透過する光の位相シフト量を高い精度で測定する技術を提供することを目的とする。
第1の態様は、第1屈折率領域および第2屈折率領域を有する測定対象物の前記第1屈折率領域を透過した光と、前記第2屈折率領域を透過した光との間の位相差である位相シフト量を測定する位相差測定装置であって、前記測定対象物へ光を照射する照射部と、第1スリット、前記第1スリットと第1間隔で隣り合う第2スリット、および、前記第2スリットと第2間隔で隣り合う第3スリットを有するスリットマスクと、前記第1スリットが、前記第1屈折率領域を透過する光の経路上に位置し、前記第2スリットおよび前記第3スリットが、それぞれ前記第2屈折率領域を透過する光の経路上に位置した状態で、前記第1スリットから前記第3スリットをそれぞれ通過した光の干渉による干渉パターンを検出するセンサと、前記干渉パターンのうちの、前記第1スリットと前記第3スリットとの第3間隔または前記第1間隔に対応した第1周波数成分の第1位相、および、前記第2間隔に対応した第2周波数成分の第2位相を、前記干渉パターンに基づいて求め、前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める演算処理部とを備える。
第2の態様は、第1の態様にかかる位相差測定装置であって、前記第1スリットと前記第2スリットとの前記第1間隔は、前記第2スリットと前記第3スリットとの前記第2間隔よりも広い。
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる位相差測定装置であって、前記第1屈折率領域の透過率は前記第2屈折率領域の透過率よりも低く、前記第1スリットの幅は、前記第2スリットの幅よりも広く、前記第2スリットの幅は、前記第3スリットの幅よりも広い。
第4の態様は、第3の態様にかかる位相差測定装置であって、前記演算処理部は、前記第1間隔に対応した前記第1周波数成分の前記第1位相を求める。
第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる位相差測定装置であって、前記照射部は、複数のピーク波長を有する光を照射し、前記演算処理部は、前記干渉パターンに基づいて前記第1位相および前記第2位相をピーク波長ごとに求め、当該ピーク波長ごとに、前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める。
第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる位相差測定装置であって、前記照射部、前記スリットマスクおよび前記センサを移動させる移動機構をさらに備え、前記移動機構は、前記照射部、前記スリットマスクおよび前記センサの一組を、基準位置および測定位置の各々に移動させ、前記測定位置は、前記第1屈折率領域を透過する光が前記第1スリットを通過し、前記第2屈折率領域を透過する光が前記第2スリットおよび前記第3スリットをそれぞれ通過する位置であり、前記基準位置は、前記第2屈折率領域を透過する光が前記第1スリットから前記第3スリットをそれぞれ通過する位置であり、前記センサは、前記基準位置において前記第1スリットから前記第3スリットを通過した光の干渉による干渉パターンである基準干渉パターンを検出し、前記演算処理部は、前記基準干渉パターンのうちの前記第1周波数成分の第1基準位相、および、前記基準干渉パターンのうちの前記第2周波数成分の第2基準位相を、前記基準干渉パターンに基づいて求め、前記第1位相、前記第1基準位相、前記第2位相および前記第2基準位相に基づいて、前記位相シフト量を求める。
第7の態様は、第6の態様にかかる位相差測定装置であって、前記第1屈折率領域の透過率は前記第2屈折率領域の透過率よりも低く、前記演算処理部は、前記基準干渉パターンに対してフーリエ変換を行って基準振幅スペクトルおよび基準位相スペクトルを求め、前記基準振幅スペクトルに基づいて、前記第1周波数成分の第1周波数および前記第2周波数成分の第2周波数を求め、前記基準振幅スペクトルに基づいて求められた前記第1周波数および前記第2周波数と、前記基準位相スペクトルとに基づいて、前記第1基準位相および前記第2基準位相を求め、前記干渉パターンに対してフーリエ変換を行って位相スペクトルを求め、前記基準振幅スペクトルに基づいて求められた前記第1周波数および前記第2周波数と、前記位相スペクトルとに基づいて、前記第1位相および前記第2位相を求める。
第8の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる位相差測定装置であって、前記演算処理部は、前記干渉パターンに対してフーリエ変換を行って前記第1周波数成分の前記第1位相および前記第2周波数成分の前記第2位相を求める。
第9の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる位相差測定装置であって、前記演算処理部は、前記第1間隔に対応した周波数成分の位相変数、前記第2周波数成分の位相変数および前記第3間隔に対応した周波数成分の位相変数を所定の関数に代入して算出干渉パターンを算出し、前記干渉パターンと前記算出干渉パターンとの類似度を算出する処理を、前記位相変数を変更しつつ行い、前記干渉パターンと類似する前記算出干渉パターンの算出に用いられた前記位相変数に基づいて前記第1位相および前記第2位相を求める。
第10の態様は、第1屈折率領域および第2屈折率領域を有する測定対象物の前記第1屈折率領域を透過した光と、前記第2屈折率領域を透過した光との間の位相差である位相シフト量を測定する位相差測定方法であって、前記測定対象物に光を照射する工程と、前記第1屈折率領域および第1スリットを通過した光と、前記第2屈折率領域、および、前記第1スリットと第1間隔で隣り合う第2スリットを通過した光と、前記第2屈折率領域、および、前記第2スリットと第2間隔で隣り合う第3スリットを通過した光との干渉による干渉パターンを検出する工程と、前記干渉パターンのうちの、前記第3スリットと前記第1スリットとの第3間隔または前記第1間隔に対応した第1周波数成分の第1位相、および、前記第2間隔に対応した第2周波数成分の第2位相を、前記干渉パターンに基づいて求める工程と、前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める工程とを備える。
第1および第10の態様によれば、第1位相は位相シフト量および光軸のズレに依存し、第2位相は位相シフト量にほとんど依存せずに、光軸のズレに依存する。演算処理部は第1位相および第2位相に基づいて位相シフト量を求めるので、光軸のズレの影響を抑制して、より高い精度で位相シフト量を求めることができる。
第2の態様によれば、第1スリットと第2スリットとの第1間隔が広いので、第1スリットを第1屈折率領域内に位置させやすい。また、第2スリットと第3スリットとの間の第2間隔が狭いので、第2スリットおよび第3スリットを第2屈折率領域内に位置させやすい。
第3の態様によれば、第1屈折率領域の透過率が第2屈折率領域の透過率よりも低いので、第1屈折率領域を透過した光の光量は第2屈折率領域を透過した光の光量よりも低下する。一方で、第1スリットの幅が第2スリットの幅よりも広いので、第1スリットを通過する光(以下、第1光と呼ぶ)の光量と第2スリットを通過する光(以下、第2光と呼ぶ)の光量との差を低減させることができる。このため、第1光および第2光の干渉に起因した第1周波数成分の振幅を大きくすることができる。したがって、演算処理部は干渉パターンから第1周波数成分を特定しやすい。
また、第3スリットの幅が第2スリットより狭いので、干渉パターンの包絡線の形状をより平坦にすることができる。これにより、干渉パターンにおける強度のピーク数(つまり、縞の数)を多くすることができる。したがって、演算処理部は干渉パターンから第1周波数成分および第2周波数成分を特定しやすい。
第4の態様によれば、第1周波数成分は、第3スリットよりも幅が広い第1スリットおよび第2スリットをそれぞれ通過した第1光および第2光の干渉によって生じるので、演算処理部は干渉パターンから第1周波数成分を特定しやすい。
第5の態様によれば、一度の干渉パターンの検出で各ピーク波長の位相シフト量を求めることができる。
第6の態様によれば、光軸のズレおよび光学特性の経路間の相違の影響を抑制して、さらに高い精度で位相シフト量を求めることができる。
第7の態様によれば、測定位置においては、第1光は、透過率の低い第1屈折率領域を透過するので、干渉パターンにおける強度のピーク値は比較的に低い。一方、基準位置においては、第1光は透過率の高い第2屈折率領域を透過するので、基準干渉パターンにおける強度のピーク値は比較的に高い。このため、基準干渉パターンにおけるノイズの影響は相対的に小さい。演算処理部は、ノイズの影響の小さな基準干渉パターンに基づいて求められた基準位相スペクトルを用いて、第1周波数および第2周波数を求めているので、より高い精度で第1周波数および第2周波数を求めることができる。
第8の態様によれば、高い精度で第1位相および第2位相を求めることができる。
第9の態様によれば、干渉パターンから第1位相および第2位相を求めることができる。
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また図面においては、各構成の位置関係を示すべく、XYZ直交座標が適宜に示されている。例えば、Z軸は鉛直方向に沿って配置されており、X軸およびY軸は水平方向に沿って配置されている。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
<第1の実施の形態>
図1は、位相差測定装置1の構成の一例を概略的に示す図である。この位相差測定装置1は、測定対象物8を透過した光の位相差を測定する装置である。この測定対象物8は、屈折率が互いに異なる第1屈折率領域8Aおよび第2屈折率領域8Bを有している。位相差測定装置1は、第1屈折率領域8Aを透過した光と第2屈折率領域8Bを透過した光との位相差を測定する。以下では、第1屈折率領域8Aおよび第2屈折率領域8Bをそれぞれ単に領域8Aおよび領域8Bと呼ぶ。
図1は、位相差測定装置1の構成の一例を概略的に示す図である。この位相差測定装置1は、測定対象物8を透過した光の位相差を測定する装置である。この測定対象物8は、屈折率が互いに異なる第1屈折率領域8Aおよび第2屈折率領域8Bを有している。位相差測定装置1は、第1屈折率領域8Aを透過した光と第2屈折率領域8Bを透過した光との位相差を測定する。以下では、第1屈折率領域8Aおよび第2屈折率領域8Bをそれぞれ単に領域8Aおよび領域8Bと呼ぶ。
<測定対象物>
まず、測定対象物8の一例について詳述する。測定対象物8は例えば位相シフトマスク80である。位相シフトマスク80はフォトマスクの一種であって、不図示の露光装置に用いられる。当該露光装置は位相シフトマスク80を用いて所定の基板(不図示)に対して露光処理を行うことにより、当該所定の基板にパターンを転写することができる。所定の基板は、例えば、半導体基板またはフラットパネルディスプレイ用の基板などの各種の基板である。
まず、測定対象物8の一例について詳述する。測定対象物8は例えば位相シフトマスク80である。位相シフトマスク80はフォトマスクの一種であって、不図示の露光装置に用いられる。当該露光装置は位相シフトマスク80を用いて所定の基板(不図示)に対して露光処理を行うことにより、当該所定の基板にパターンを転写することができる。所定の基板は、例えば、半導体基板またはフラットパネルディスプレイ用の基板などの各種の基板である。
位相シフトマスク80は板状の形状を有しており、平面視において(つまり厚み方向に沿って見て)、互いに屈折率が異なる領域8Aおよび領域8Bを有している。例えば位相シフトマスク80は基材81と位相シフト膜82と遮蔽膜83とを含んでいる。基材81は露光用の光(例えばi線などの紫外線)についての透光性を有しており、例えば石英ガラス等によって形成される。基材81は板状の形状を有しており、平面視において、例えば矩形状の形状を有する。位相シフトマスク80の一辺の長さは例えば数m程度に設定される。より具体的な一例として、位相シフトマスク80の縦横の辺の長さは、それぞれ1.8m程度および2.0m程度であり、位相シフトマスク80の厚みは21mm程度である。
位相シフト膜82は基材81の一主面の上に所定のパターンで形成されている。位相シフト膜82は露光用の光についての透光性を有しているものの、その透過率は基材81の透過率よりも低い。位相シフト膜82の透過率は例えば数%(より具体的には、5%から10%)程度である。位相シフト膜82は例えばタンタルオキサイド等によって形成される。
遮蔽膜83は、例えば、位相シフト膜82の上に所定のパターンで形成されている。この遮蔽膜83は平面視において位相シフト膜82の輪郭よりも内側の領域に形成されている。遮蔽膜83は露光用の光についての遮光性を有しており、例えばクロムまたは酸化クロム等によって形成される。
このような位相シフトマスク80において、基材81のうち位相シフト膜82によって覆われていない領域が領域8Bに相当し、位相シフト膜82のうちの遮蔽膜83によって覆われていない領域が領域8Aに相当する。位相シフト膜82の透過率は基材81の透過率よりも低いので、領域8Aの透過率は領域8Bの透過率よりも低い。また、位相シフト膜82は、領域8Aを透過した光の位相を、領域8Bを透過した光の位相に対しておよそ180度だけシフトさせる。つまり、理想的には、領域8Aを透過した光と領域8Bを透過した光との位相差が180度となる。以下では、該位相差を領域8Aによる位相シフト量θとも呼ぶ。
この位相シフトマスク80が露光装置に搭載され、露光装置で露光が行われると、露光対象となる所定の基板上では、領域8Aを透過した光と領域8Bを透過した光がその境界部で干渉し、その結果として領域8Bの投影像のコントラストを高くすることができる。したがって、露光装置はこの位相シフトマスク80を用いることで、この位相シフトマスク80を用いない場合に比べて、より高い解像度でパターンを所定の基板に転写することができる。
この位相シフトマスク80において、領域8Aにおける位相シフト膜82の厚みは転写能力に直結する。例えば領域8Aにおける位相シフト膜82の厚みが設計値からずれる場合には、領域8Aによる位相シフト量θが180度からずれる。これにより、干渉の効果が減り、解像度が低下、さらには、転写された基板上のパターンの解像が不安定となって、最終的には、製造の歩留まりが低下したり、製品の品質が損なわれるなど、多くの支障を生じてしまう。そこで、位相シフトマスク80の良否を判定すべく、この位相シフトマスク80に形成された領域8Aによる位相シフト量θを測定し、マスク製造プロセスを正しく管理することがすることが好ましい。
<位相差測定装置>
<概要>
位相差測定装置1は上述の位相シフト量θを測定する装置である。言い換えれば、位相差測定装置1は、領域8Aを透過することで生じる光の位相遅れを測定する装置である。測定対象がフォトマスク(例えば位相シフトマスク80)である場合、位相差測定装置1はフォトマスク検査装置とも呼ばれ得る。
<概要>
位相差測定装置1は上述の位相シフト量θを測定する装置である。言い換えれば、位相差測定装置1は、領域8Aを透過することで生じる光の位相遅れを測定する装置である。測定対象がフォトマスク(例えば位相シフトマスク80)である場合、位相差測定装置1はフォトマスク検査装置とも呼ばれ得る。
位相差測定装置1は保持部90を含んでいる。測定対象となる位相シフトマスク80はこの保持部90によって保持される。なお、図1の例では、相互に直交するX軸、Y軸およびZ軸を有するXYZ座標が付記されている。Z軸方向は例えば鉛直方向に設定されている。保持部90は、位相シフトマスク80の厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で位相シフトマスク80を保持する。
位相差測定装置1は照射部10と検出部20と移動機構40と制御部50とを含んでいる。以下では、まずこれらの概要について述べる。
照射部10は光をZ軸方向に沿って照射して、位相シフトマスク80の一部へ入射させる。位相シフトマスク80の当該一部には、領域8Aの一部および領域8Bの一部の両方が含まれている。この照射部10は制御部50によって制御される。
検出部20は、後に詳述するように、位相シフトマスク80の当該一部を透過した光を互いに干渉させて干渉パターンを発生させる。検出部20はこの干渉パターンを検出し、その検出結果を示す電気信号を制御部50へと出力する。
制御部50は、後に詳述するように、検出部20によって検出された干渉パターンに基づいて、領域8Aによる位相シフト量θを算出する。制御部50は位相シフト量θが所定の範囲内であるか否かを判断し、肯定的な判断がなされたときに、位相シフトマスク80の当該一部は適切に作製されていると判断してもよい。一方で、制御部50は位相シフト量θが所定の範囲内にはないと判断したときに、位相シフトマスク80は不良品であると判断してもよい。
移動機構40は照射部10および検出部20をXY平面において移動させる。移動機構40は例えば駆動源としてのモータを含んでいてもよく、例えば、X軸方向についてのボールねじ機構と、Y軸方向についてのボールねじ機構などを有している。この移動機構40は制御部50によって制御される。
移動機構40が照射部10および検出部20を移動させることで、位相シフトマスク80の全面を走査することができる。具体的には、移動機構40は制御部50の制御下において、照射部10および検出部20のZ軸方向における並び(相対位置)を維持した状態で、これらを各測定位置で停止させる。これにより、位相差測定装置1は位相シフトマスク80内の複数の箇所に対して測定を行うことができる。
これによれば、位相シフトマスク80の面積が大きくても、位相シフトマスク80を全面的に走査して測定を行うことができる。
以下、各構成についてより具体的に説明する。
<照射部>
照射部10は位相シフトマスク80の一部へと光を照射する。図1の例では、照射部10は位相シフトマスク80とZ軸方向において間隔を隔てて対向しており、光源11と集光レンズ12とリレーレンズ14とピンホール板15とコンデンサレンズ16とを含んでいる。
照射部10は位相シフトマスク80の一部へと光を照射する。図1の例では、照射部10は位相シフトマスク80とZ軸方向において間隔を隔てて対向しており、光源11と集光レンズ12とリレーレンズ14とピンホール板15とコンデンサレンズ16とを含んでいる。
光源11は光を照射する。光源11は例えば紫外線照射器である。光源11は、複数のピーク波長を有する光を照射してもよい。複数のピーク波長としては、例えば、i線のピーク波長(365nm)、h線のピーク波長(405nm)およびg線のピーク波長(436nm)を適用することができる。この紫外線照射器としては例えば水銀ランプを適用することができる。この光源11は制御部50によって制御される。
集光レンズ12、リレーレンズ14、ピンホール板15およびコンデンサレンズ16はZ軸方向に沿って並んでおり、光源11と位相シフトマスク80との間において、この順で配置されている。
集光レンズ12は凸レンズであって、その焦点が光源11に位置するように配置されている。光源11から照射された光は集光レンズ12によって、XY平面において位相が揃った平行光になり、この平行光はリレーレンズ14に入射する。
リレーレンズ14は凸レンズであって、入射した平行光をピンホール板15のピンホール151に集光させる。ピンホール151はピンホール板15をその厚み方向に貫通している。ピンホール板15はピンホール151がリレーレンズ14の焦点となる位置に配置されている。ピンホール151を通過した光は、実質的に点光源から照射された光となり、コンデンサレンズ16に入射する。コンデンサレンズ16は凸レンズであって、その焦点がピンホール151となる位置に配置される。コンデンサレンズ16は入射した光を平行光に変換する。照射部10はこの光をZ軸方向に沿って位相シフトマスク80の一部に照射する。
<検出部>
検出部20は位相シフトマスク80に対して照射部10とは反対側に配置されており、位相シフトマスク80とZ軸方向において間隔を隔てて対向している。つまり、位相シフトマスク80は照射部10と検出部20との間で保持部90によって保持される。図1の例では、検出部20は対物レンズ21と結像レンズ22とスリットマスク23とフーリエ変換レンズ24とセンサ25とを含んでいる。対物レンズ21、結像レンズ22、スリットマスク23、フーリエ変換レンズ24およびセンサ25は位相シフトマスク80からZ軸方向に沿って離れるにしたがって、この順で配置されている。
検出部20は位相シフトマスク80に対して照射部10とは反対側に配置されており、位相シフトマスク80とZ軸方向において間隔を隔てて対向している。つまり、位相シフトマスク80は照射部10と検出部20との間で保持部90によって保持される。図1の例では、検出部20は対物レンズ21と結像レンズ22とスリットマスク23とフーリエ変換レンズ24とセンサ25とを含んでいる。対物レンズ21、結像レンズ22、スリットマスク23、フーリエ変換レンズ24およびセンサ25は位相シフトマスク80からZ軸方向に沿って離れるにしたがって、この順で配置されている。
対物レンズ21および結像レンズ22は例えば凸レンズである。位相シフトマスク80の当該一部を透過した光は対物レンズ21および結像レンズ22を介して拡大され、スリットマスク23に入射する。
図2は、スリットマスク23の構成の一例を示す平面図である。なお、図2では、スリットマスク23に対する位相シフト膜82の光学的な位置関係を示すべく、仮想的に二点鎖線で位相シフト膜82の像も示されている。
スリットマスク23は第1スリット23aと第2スリット23bと第3スリット23cとを有している。第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cの各々は、平面視において第1方向(ここではY軸方向)に延在する長尺状の形状(例えば長方形)を有している。つまり、第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cは互いに平行である。第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cの長手方向の長さは互いに等しくてもよい。第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cは、第1方向に直交する第2方向(ここではX軸方向)において互いに隣り合って配置されている。第2スリット23bは第1スリット23aと第3スリット23cとの間に位置している。以下では、第2方向を配列方向とも呼ぶ。
図1の例では、スリットマスク23は基材231と遮蔽膜232とを含んでいる。基材231は遮蔽膜232を支持するための基板であって、板状の形状を有した透光性の基板である。基材231は透過率の高い材料(例えば石英)によって形成される。基材231はその厚み方向がZ軸方向に沿う姿勢で配置されている。基材231は例えば平面視において矩形状の形状を有し、その一辺は例えば数十mm程度(例えば20mm程度)に設定される。基材231の一方の主面には、遮蔽膜232が形成されている。遮蔽膜232は光を遮断する材料によって形成され、例えばクロムによって形成される。遮蔽膜232には、第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cが形成されている。
図2に示されるように、第1スリット23aと第2スリット23bとの第1間隔d1は第2スリット23bと第3スリット23cとの第2間隔d2と異なっている。つまり、第2スリット23bは配列方向において第1間隔d1で第1スリット23aと隣り合っており、第3スリット23cは配列方向において、第1間隔d1とは異なる第2間隔d2で第2スリット23bと隣り合っている。ここでは、第1間隔d1は、配列方向における第1スリット23aの中心位置と第2スリット23bの中心位置との間隔であり、第2間隔d2は、配列方向における第2スリット23bの中心位置と第3スリット23cの中心位置との間隔である。
図1を参照して、結像レンズ22からの光は第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cを通過する。第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cをそれぞれ通過した光は互いに干渉し合う。以下では、第1スリット23aを通過する光を光Laとも呼び、第2スリット23bを通過する光を光Lbとも呼び、第3スリット23cを通過する光を光Lcとも呼ぶ。
フーリエ変換レンズ24は例えば凸レンズである。フーリエ変換レンズ24の焦点距離は例えば数百mm程度(例えば200mm)に設定され得る。スリットマスク23からの光はフーリエ変換レンズ24で屈折し、センサ25の受光面に入射する。このため、センサ25の受光面には、第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cをそれぞれ通過した光La、光Lbおよび光Lcによる干渉パターンが形成される。
センサ25は、受光面に入射した光の強度を受光素子(画素)ごとに検出することにより、干渉パターンを示す画像を生成する。センサ25は例えばCCDセンサもしくはCMOSセンサである。センサ25は、検出結果を示す電気信号(つまり、干渉パターンを示す画像)を制御部50へと出力する。
<制御部>
制御部50は位相差測定装置1を全体的に統括することができる。例えば制御部50は上述のように、照射部10による光の照射、移動機構40による移動を制御する。また、制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、領域8Aによる位相シフト量θを算出する演算処理部としても機能する。位相シフト量θの算出方法については後に詳述する。
制御部50は位相差測定装置1を全体的に統括することができる。例えば制御部50は上述のように、照射部10による光の照射、移動機構40による移動を制御する。また、制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、領域8Aによる位相シフト量θを算出する演算処理部としても機能する。位相シフト量θの算出方法については後に詳述する。
制御部50は電子回路機器であって、例えばデータ処理装置および記憶部を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶部には、例えば制御部50が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部50が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部50が実行する処理の一部または全部が専用のハードウェア回路によって実行されてもよい。
<測定時の動作>
図3は、位相差測定装置1の動作の第1例を示すフローチャートである。まずステップS1にて、制御部50は値kを初期値(=1)に設定する。この値kは複数の測定位置P[k]の番号を示す。
図3は、位相差測定装置1の動作の第1例を示すフローチャートである。まずステップS1にて、制御部50は値kを初期値(=1)に設定する。この値kは複数の測定位置P[k]の番号を示す。
次にステップS2にて、制御部50は移動機構40を制御して、照射部10および検出部20の一組を測定位置P[k]へ移動させる。この測定位置P[k]は、図1を参照して、照射部10からの光が位相シフトマスク80の領域8Aの一部および領域8Bの一部の両方を透過する位置であり、より具体的には、測定位置P[k]は、光Laが領域8A(つまり位相シフト膜82)および第1スリット23aを通過し、光Lbが領域8B(つまり位相シフト膜82が形成されていない領域)および第2スリット23bを通過し、光Lcが領域8Bおよび第3スリット23cを通過する位置である。言い換えれば、測定位置P[k]において、第1スリット23aは領域8Aを透過する光の経路上に位置し、第2スリット23bおよび第3スリット23cは領域8Bを透過する光の経路上にそれぞれ位置する。
次にステップS3にて、制御部50は照射部10に光を照射させる。照射部10からの光は位相シフトマスク80の一部を透過しつつ、スリットマスク23の第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cを通過する。スリットマスク23を通過した光La、光Lbおよび光Lcは干渉し合って、センサ25の受光面において干渉パターンを形成する。
そして、ステップS4にて、センサ25は受光面の干渉パターンを検出し、その検出結果を示す電気信号(例えば画像)を制御部50へ出力する。
図4は、センサ25によって検出された干渉パターンの一例を概略的に示す図である。図4では、横軸はX軸の位置を示しており、縦軸は光の強度を示している。図4に示されるように、干渉パターンには複数の周波数成分が含まれる。図5は、干渉パターンの振幅スペクトルの一例を概略的に示す図である。図5に示されるように、干渉パターンは、少なくとも、次に説明する周波数成分F1、周波数成分F2および周波数成分F3を含む。周波数成分F1は、光Laと光Lbとの干渉によって生じる成分であり、周波数成分F2は、光Lbと光Lcとの干渉によって生じる成分であり、周波数成分F3は、光Lcと光Laとの干渉によって生じる成分である。
周波数成分F1は光Laと光Lbとの干渉によって生じるので、周波数成分F1の周波数f1は、第1スリット23aと第2スリット23bとの第1間隔d1に依存する。具体的には、周波数f1は第1間隔d1が広いほど高くなる。
光Laと光Lbとの干渉によって生じる周波数成分F1の位相φ1は、干渉パターンにおける周波数成分F1のX軸上の位置に相当する。この位相φ1は、スリットマスク23における光Laと光Lbとの位相差(つまり、領域8Aによる位相シフト量θ)に依存する。
位相φ1は、実際には、位相シフト量θのみならず、光軸のズレにも依存する。ここでいう光軸のズレとは、例えば、検出部20に属する各種光学素子(例えば対物レンズ21等)の光軸のズレをいう。この光軸のズレ量は、移動機構40による移動によって変動し得るので、複数の測定位置P[k]における光軸のズレ量は互いに相違し得る。
周波数成分F2は光Lbと光Lcとの干渉によって生じるので、周波数成分F2の周波数f2は、第2スリット23bと第3スリット23cとの第2間隔d2に依存する。第2間隔d2が第1間隔d1よりも狭い場合、周波数f2は周波数f1よりも低い。
光Lbと光Lcとの干渉によって生じる周波数成分F2の位相φ2は、干渉パターンにおける周波数成分F2のX軸上の位置に相当する。この位相φ2は、スリットマスク23における光Lbと光Lcとの位相差に依存する。光Lbおよび光Lcはいずれも領域8Bを透過するので、この位相差は実質的にゼロである。また、実際には、位相φ2は光軸のズレにも依存する。
周波数成分F3は光Lcと光Laとの干渉によって生じるので、周波数成分F3の周波数f3は、第3スリット23cと第1スリット23aとの第3間隔d3(=d1+d2)に依存する。第3間隔d3は第1間隔d1よりも広いので、周波数f3は周波数f1よりも高い。
光Lcと光Laとの干渉によって生じる周波数成分F3の位相φ3は、干渉パターンにおける周波数成分F3のX軸上の位置に相当する。この位相φ3は、スリットマスク23における光Lcと光Laとの位相差(つまり、領域8Aによる位相シフト量θ)に依存する。実際には、位相φ3は光軸のズレにも依存する。
光軸のズレの影響は光Laから光Lcに共通して生じると考えられる。このため、同一の測定位置P[k]における光軸のズレに起因する量は、位相φ1、位相φ2および位相φ3の全てに共通である。したがって、位相φ1から位相φ2を減算した値、および、位相φ3から位相φ2を減算した値は、光軸のズレに起因する量をほとんど含まず、位相シフト量θに依存した値となる。逆に言えば、制御部50は、位相φ1および位相φ2、もしくは、位相φ2および位相φ3を得ることができれば、高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
そこで、ステップS5にて、制御部50は、センサ25によって測定された干渉パターンに基づいて、第1位相(位相φ1もしくは位相φ3)および第2位相(位相φ2)を求める。ここでは一例として、制御部50は位相φ1および位相φ2を求める。
図6は、第1の実施の形態にかかる第1位相および第2位相の算出方法の一例を示すフローチャートである。つまり、図6のフローチャートは、図3のステップS5の具体的な動作の一例を示している。図6の例では、ステップS51にて、制御部50は干渉パターンに対してフーリエ変換を行って位相スペクトルを求める。図7は、位相スペクトルの一例を概略的に示すグラフである。図7の横軸は周波数を示しており、縦軸は位相を示している。なお、図7は、照射部10によって照射された光に複数のピーク波長が含まれた場合のシミュレーション結果を示している。このため、図7の例では、周波数f1i、周波数f1h、周波数f1g、周波数f2i,周波数f2h、周波数f2g、位相φ1i、位相φ1h、位相φ1g、位相φ2i、位相φ2hおよび位相φ2gが示されている。以下では、簡単のために、まず光が単一のピーク波長を有する場合について述べ、光が複数のピーク波長を有する場合については、その後に述べる。ここでは一例として、単一のピーク波長に対応する周波数f1、周波数f2、位相φ1および位相φ2はそれぞれ周波数f1i、周波数f2i、位相φ1iおよび位相φ2iである。なお、位相差測定装置1は、単一のピーク波長を含む所定の波長範囲を透過させる光フィルタ(例えばバンドパスフィルタ)を有していてもよい。該光フィルタは例えば集光レンズ12とリレーレンズ14との間に設けられる。該光フィルタを透過した光は、実質的に単波長の光となる。
ところで、周波数成分F1の周波数f1は、第1スリット23aと第2スリット23bとの第1間隔d1のみならず、光の波長λおよびフーリエ変換レンズ24の焦点距離fdにも依存する。周波数成分F2の周波数f2も同様である。具体的には、周波数f1および周波数f2は以下の式で示される。
f1=d1/(λ・fd)
f2=d2/(λ・fd) ・・・(1)
第1間隔d1、第2間隔d2、波長λおよび焦点距離fdは設計上で既知であるので、周波数f1および周波数f2は事前に算出しておくことができる。周波数f1および周波数f2の値は例えば制御部50の不揮発性の記憶部(例えばフラッシュメモリまたはハードディスク等)に事前に記憶されていてもよい。
f2=d2/(λ・fd) ・・・(1)
第1間隔d1、第2間隔d2、波長λおよび焦点距離fdは設計上で既知であるので、周波数f1および周波数f2は事前に算出しておくことができる。周波数f1および周波数f2の値は例えば制御部50の不揮発性の記憶部(例えばフラッシュメモリまたはハードディスク等)に事前に記憶されていてもよい。
次にステップS52にて、制御部50は、位相スペクトルに基づいて、周波数成分F1の位相φ1および周波数成分F2の位相φ2を求める。具体的には、制御部50は、該記憶部から読み出した周波数f1と、ステップS51で求めた位相スペクトルとに基づいて位相φ1を求め、該記憶部から読み出した周波数f2と、ステップS51で求めた位相スペクトルに基づいて、位相φ2を求める。つまり、制御部50は、位相スペクトルにおいて、周波数が周波数f1となるときの位相を位相φ1として特定し、周波数が周波数f2となるときの位相を位相φ2として特定する。
次にステップS6にて、制御部50は位相φ1および位相φ2に基づいて位相シフト量θを求める。具体的には、制御部50は位相φ1から位相φ2を減算して位相シフト量θ(=φ1-φ2)を算出する。上述のように、位相φ1は、位相シフト量θと、光軸のズレに応じた量を含み、位相φ2は、位相シフト量θを含まず、光軸のズレに応じた量を含むので、位相φ1から位相φ2を減算した値では、光軸のズレに応じた量はほぼキャンセルされる。
次にステップS7にて、制御部50は値kが所定値krefよりも大きいか否かを判断する。つまり、制御部50は全ての測定位置P[k]での測定が終了したか否かを判断する。否定的な判断がなされれば、ステップS8にて、制御部50は値kに1を加算し、ステップS2からステップS7を再び実行する。ステップS7において肯定的な判断がなされれば、制御部50は処理を終了する。
以上のように、位相差測定装置1においては、第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cをそれぞれ通過した光La、光Lbおよび光Lcによって形成された干渉パターンが検出される(ステップS4)。このため、検出された干渉パターンには、光Laと光Lbとの干渉に起因した周波数成分F1、光Lbと光Lcとの干渉に起因した周波数成分F2、および、光Lcと光Laとの干渉に起因した周波数成分F3が含まれる。光Laは領域8Aを透過し、光Lbおよび光Lcは領域8Bを透過するので、周波数成分F1の位相φ1は領域8Aによる位相シフト量θに依存し、周波数成分F2の位相φ2は位相シフト量θにはほとんど依存しない。また、位相φ1および位相φ2は、光軸のズレに起因した量を含む。
制御部50は、一つの測定位置P[k]で検出された干渉パターンに基づいて、例えば位相φ1および位相φ2を求める(ステップS5)。このため、位相φ1および位相φ2には、該一つの測定位置P[k]での光軸のズレに起因した量が共通して含まれる。そして、制御部50は位相φ1から位相φ2を減算して位相シフト量θを算出するので、位相φ1に含まれる光軸のズレに起因した量をより正確に位相φ2で減算することができる。このため、位相φ1から位相φ2を減算した値には、光軸のズレに起因した量がほとんど含まれない。つまり、制御部50は、光軸のズレの影響を抑制して、より高い精度で位相シフト量θを算出することができる。
また、上述の例では、制御部50は干渉パターンに対してフーリエ変換を行って、周波数成分F1および周波数成分F2を求めている(ステップS51)。このため、制御部50は高い精度で周波数成分F1および周波数成分F2を求めることができ、位相φ1および位相φ2をより高い精度で求めることができる。その結果、制御部50はより高い精度で位相シフト量θを算出することができる。
<周波数成分の周波数の特定>
上述の例では、周波数f1および周波数f2は事前に算出され、記憶部に記憶されている。しかしながら、第1間隔d1、第2間隔d2、波長λおよび焦点距離fdは製造ばらつきによって変動し得るし、また、経時劣化または熱変形等の諸要因によっても変動し得る。このため、事前に算出した周波数f1および周波数f2の値は実際の値からずれる可能性がある。
上述の例では、周波数f1および周波数f2は事前に算出され、記憶部に記憶されている。しかしながら、第1間隔d1、第2間隔d2、波長λおよび焦点距離fdは製造ばらつきによって変動し得るし、また、経時劣化または熱変形等の諸要因によっても変動し得る。このため、事前に算出した周波数f1および周波数f2の値は実際の値からずれる可能性がある。
そこで、制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、周波数f1および周波数f2を求めてもよい。
図8は、第1の実施の形態にかかる第1位相および第2位相の算出方法の他の一例を示すフローチャートである。つまり、図8のフローチャートは、図3のステップS5の具体的な動作の他の一例を示している。まず、制御部50はステップS51を実行する。より具体的には、制御部50は干渉パターンに対してフーリエ変換を行って、振幅スペクトルおよび位相スペクトルを求める。図9は、振幅スペクトルの一例を概略的に示すグラフである。図9の横軸は周波数を示し、縦軸は振幅を示している。なお、図9の例では、周波数f1i、周波数f1h、周波数f1g、周波数f2i,周波数f2hおよび周波数f2gが示されているものの、図7と同様に、これらについては後に述べる。
次にステップS53にて、制御部50は振幅スペクトルに基づいて周波数f1および周波数f2を特定する。例えば、制御部50は、周波数f1に対応した所定の周波数範囲R1内の振幅のピーク値を特定し、振幅が該ピーク値となるときの周波数を周波数f1として特定する。周波数範囲R1は、例えば、周波数f1の設計値を中心とした範囲であり、周波数f1がとり得る範囲に設定され得る。同様に、制御部50は、周波数f2に対応した所定の周波数範囲R2内の振幅のピーク値を特定し、振幅が該ピーク値となるときの周波数を周波数f2として特定する。周波数範囲R2は、例えば、周波数f2の設計値を中心とした範囲であり、周波数f2がとり得る範囲に設定される。なお、周波数範囲R1および周波数範囲R2は互いに重複しないように設定される。
次に、制御部50はステップS52を実行する。ただし、制御部50は、ステップS53において特定した周波数f1および周波数f2と、ステップS51において求めた位相スペクトルとに基づいて、位相φ1および位相φ2を求める。
以上のように、制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて周波数f1および周波数f2を求める。このため、制御部50はより高い精度で周波数f1および周波数f2を求めることができる。制御部50は、この周波数f1および周波数f2を用いて位相φ1および位相φ2を特定するので、さらに高い精度で位相φ1および位相φ2を求めることができる。したがって、制御部50はさらに高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
<スリットの間隔>
次に、第1スリット23aと第2スリット23bとの第1間隔d1、および、第2スリット23bと第3スリット23cとの第2間隔d2について説明する。上述のように、第1間隔d1および第2間隔d2はそれぞれ周波数f1および周波数f2を規定する。具体的には、周波数f1は第1間隔d1に比例し、周波数f2は第2間隔d2に比例する(式(1)も参照)。
次に、第1スリット23aと第2スリット23bとの第1間隔d1、および、第2スリット23bと第3スリット23cとの第2間隔d2について説明する。上述のように、第1間隔d1および第2間隔d2はそれぞれ周波数f1および周波数f2を規定する。具体的には、周波数f1は第1間隔d1に比例し、周波数f2は第2間隔d2に比例する(式(1)も参照)。
そして、図9の振幅スペクトルから理解できるように、周波数f1と周波数f2との差が大きいほど、周波数f1および周波数f2にそれぞれ対応する振幅のピーク値が互いに離れる。このため、制御部50は振幅スペクトルから両ピーク値を特定しやすい。言い換えれば、制御部50は周波数f1および周波数f2を特定しやすい。そのため、第1間隔d1と第2間隔d2との差は、振幅スペクトルにおいて両ピーク値を特定できる程度の値に設定される。例えば、第1間隔d1および第2間隔d2のうちの小さい方の間隔は、大きい方の間隔の7割以下であってもよい。具体的な一例として、第1間隔d1は例えば1mm程度であり、第2間隔d2は例えば0.5mm程度である。
<スリットの間隔の大小>
次に、第1間隔d1と第2間隔d2との大小関係の一例について説明する。図2の例では、第1間隔d1は第2間隔d2よりも広く設定されている。
次に、第1間隔d1と第2間隔d2との大小関係の一例について説明する。図2の例では、第1間隔d1は第2間隔d2よりも広く設定されている。
さて、図1に示されるように、領域8Aを透過した光が第1スリット23aを通過し、領域8Bを透過した光がそれぞれ第2スリット23bおよび第3スリット23cを通過する。このため、図2に示されるように、スリットマスク23上において、第1スリット23aは領域8A(の像)内に位置し、第2スリット23bおよび第3スリット23cは領域8B(の像)内に位置する。言い換えれば、スリットマスク23上において、領域8B(の像)の一方の端82aは第1スリット23aと第2スリット23bとの間に位置する必要があり、他方の端82bは、第3スリット23cに対して第2スリット23bとは反対側に位置する必要がある。
図2の例では、第1間隔d1が第2間隔d2よりも広いので、第1間隔d1が第2間隔d2よりも狭い場合に比べて、領域8Bの像の端82aを第1スリット23aと第2スリット23bとの間に位置させやすい。しかも、第2間隔d2が第1間隔d1よりも狭いので、第2スリット23bおよび第3スリット23cを領域8Bの像内に位置させやすい。つまり、各測定位置P[k]に要求される照射部10および検出部20の位置精度を緩和することができる。
また、より領域8Bの幅が狭い位相シフトマスク80が測定対象であっても、第2スリット23bおよび第3スリット23cを領域8Bの像内に位置させることができる。言い換えれば、位相差測定装置1が位相シフト量θを測定可能な位相シフトマスク80のパターン間隔(領域8Bの幅)の下限値をより小さくすることができる。
<スリットの幅>
次に、第1スリット23aの幅wa、第2スリット23bの幅wbおよび第3スリット23cの幅wcの大小関係の一例について説明する。幅waは、配列方向(ここではX軸方向)における第1スリット23aの幅であり、幅wbは、配列方向における第2スリット23bの幅であり、幅wcは、配列方向における第3スリット23cの幅である。図2の例では、幅waは幅wbよりも広い。光Laは、透過率の低い位相シフト膜82(つまり領域8A)を透過するので、その光量は小さくなる。そのため、もし幅waと幅wbとが同程度であれば、光Laと光Lbとの干渉に起因する周波数成分F1の振幅が小さくなる。図2の例では、幅waは幅wbよりも広いので、第1スリット23aを通過する光Laの光量の低下を抑制することができ、周波数成分F1の振幅を大きくすることができる。したがって、制御部50は干渉パターンから周波数成分F1を特定しやすく、より高い精度で位相φ1を求めることができる。
次に、第1スリット23aの幅wa、第2スリット23bの幅wbおよび第3スリット23cの幅wcの大小関係の一例について説明する。幅waは、配列方向(ここではX軸方向)における第1スリット23aの幅であり、幅wbは、配列方向における第2スリット23bの幅であり、幅wcは、配列方向における第3スリット23cの幅である。図2の例では、幅waは幅wbよりも広い。光Laは、透過率の低い位相シフト膜82(つまり領域8A)を透過するので、その光量は小さくなる。そのため、もし幅waと幅wbとが同程度であれば、光Laと光Lbとの干渉に起因する周波数成分F1の振幅が小さくなる。図2の例では、幅waは幅wbよりも広いので、第1スリット23aを通過する光Laの光量の低下を抑制することができ、周波数成分F1の振幅を大きくすることができる。したがって、制御部50は干渉パターンから周波数成分F1を特定しやすく、より高い精度で位相φ1を求めることができる。
また、図2の例では、第2スリット23bの幅wbは第3スリット23cの幅wcよりも広い。このため、第2スリット23bを通過する光Lbの光量を増加させることができる。したがって、光Laと光Lbとの干渉による強度の各ピーク値を増加させることができる。これによれば、第1周波数成分に対するノイズの影響を低減することができ、制御部50はさらに高い精度で位相φ1を特定することができる。
さて、幅wa、幅wbおよび幅wcは、干渉パターンの包絡線E1(図4参照)の形状にも影響を与える。具体的には、幅wa、幅wbおよび幅wcが広くなるほど、包絡線E1がより急峻な凸となる形状を有する。図4の例では、包絡線E1よりも急峻な包絡線E11も模式的に示されている。包絡線E1が急峻になるほど、その包絡線E1より下側において干渉パターンにおける強度の各ピーク値が小さくなる。このため、各周波数成分の振幅が小さくなり、干渉パターンからの周波数成分の特定精度が低下し得る。包絡線E1が急峻になるほど、干渉パターンにおける強度のピークの数(つまり、干渉パターンの縞の数)が少なくなることも理解できる。この場合、フーリエ変換の対象となる干渉パターンの実質的なX軸方向の範囲が狭くなる。これによっても、周波数成分の特定精度が低下する。
これに対して、図2の例では、第3スリット23cの幅wcは第2スリット23bの幅wbよりも狭く設定されている。このため、包絡線E1の形状をより緩やかな凸となる形状にすることができる。したがって、包絡線E1よりも下側における各強度のピーク値を大きくすることができ、干渉パターンの実質的なX軸方向の範囲も広げることができる。したがって、制御部50はさらに高い精度で干渉パターンから各周波数成分を特定することができる。ひいては、制御部50はさらに高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
<複数のピーク波長>
次に、照射部10によって照射される光が複数のピーク波長を有する場合について説明する。例えば、該光は、第1ピーク波長λiと第2ピーク波長λhと第3ピーク波長λgとを有する。第1ピーク波長λiは例えばi線の波長であり、第2ピーク波長λhは例えばh線の波長であり、第3ピーク波長λgは例えばg線の波長である。以下では、各ピーク波長を有する光の符号の末尾に、ピーク波長の符号の末尾を付記する。例えば、光Laのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Laiと呼び、光Lbのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Lbiと呼び、光Lcのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Lciと呼ぶ。
次に、照射部10によって照射される光が複数のピーク波長を有する場合について説明する。例えば、該光は、第1ピーク波長λiと第2ピーク波長λhと第3ピーク波長λgとを有する。第1ピーク波長λiは例えばi線の波長であり、第2ピーク波長λhは例えばh線の波長であり、第3ピーク波長λgは例えばg線の波長である。以下では、各ピーク波長を有する光の符号の末尾に、ピーク波長の符号の末尾を付記する。例えば、光Laのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Laiと呼び、光Lbのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Lbiと呼び、光Lcのうち第1ピーク波長λiを有する光を光Lciと呼ぶ。
照射部10によって照射された光が複数のピーク波長を有する場合、センサ25によって検出された干渉パターンには、ピーク波長ごとの干渉による周波数成分が含まれる。例えば図7および図9に示されるように、干渉パターンには複数の周波数成分が含まれる。
周波数成分F1iは、第1ピーク波長λiを有する光Laiおよび光Lbiの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F1iの周波数f1iは、第1間隔d1、第1ピーク波長λiおよび焦点距離fdによって決まる(式(1)も参照)。周波数成分F1iの位相φ1iは、スリットマスク23における光Laiと光Lbiとの位相差(つまり、第1ピーク波長λiの光に対する領域8Aの位相シフト量θ)に依存する。実際には、位相φ1iは光軸のズレにも依存する。以下では、第1ピーク波長λiを有する光に対する位相シフト量θを位相シフト量θiとも呼ぶ。
周波数成分F2iは、第1ピーク波長λiを有する光Lbiおよび光Lciの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F2iの周波数f2iは、第2間隔d2、第1ピーク波長λiおよび焦点距離fdによって決まる。周波数成分F2iの位相φ2iは、スリットマスク23における光Lbiと光Lciとの位相差に依存する。該位相差は実質的にゼロである。実際には、位相φ2iは光軸のズレに依存する。
このため、位相φ1iと位相φ2iとを求めることができれば、位相φ1iおよび位相φ2iに基づいて位相シフト量θiを高い精度で求めることができる。
周波数成分F1hは、第2ピーク波長λhを有する光Lahおよび光Lbhの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F1hの周波数f1hは、第1間隔d1、第2ピーク波長λhおよび焦点距離fdによって決まる。周波数成分F1hの位相φ1hは、スリットマスク23における光Lahと光Lbhとの位相差(つまり、第2ピーク波長λhの光に対する領域8Aの位相シフト量θ)に依存する。実際には、位相φ1hは光軸のズレにも依存する。以下では、第2ピーク波長λhを有する光に対する位相シフト量θを位相シフト量θhと呼ぶ。
周波数成分F2hは、第2ピーク波長λhを有する光Lbhおよび光Lchの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F2hの周波数f2hは、第2間隔d2、第2ピーク波長λhおよび焦点距離fdによって決まる。周波数成分F2hの位相φ2hは、スリットマスク23における光Lbhと光Lchとの位相差に依存する。該位相差は実質的にゼロである。また、実際には、位相φ2hは光軸のズレに依存する。
位相φ1hは位相シフト量θhおよび光軸のズレに依存し、位相φ2hは位相シフト量θhには依存せず、光軸のズレに依存する。このため、位相φ1hおよび位相φ2hを求めることができれば、位相φ1hおよび位相φ2hに基づいて、高い精度で位相シフト量θhを求めることができる。
周波数成分F1gは、第3ピーク波長λgを有する光Lagおよび光Lbgの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F1gの周波数f1gは、第1間隔d1、第3ピーク波長λgおよび焦点距離fdによって決まる。周波数成分F1gの位相φ1gは、スリットマスク23における光Lagと光Lbgとの位相差(つまり、第3ピーク波長λgに対する領域8Aの位相シフト量θ)に依存する。実際には、位相φ1gは光軸のズレにも依存する。なお、以下では、第3ピーク波長λgを有する光に対する位相シフト量θを位相シフト量θgと呼ぶ。
周波数成分F2gは、光Lbgおよび光Lcgの干渉によって生じる成分である。このため、周波数成分F2gの周波数f2gは、第2間隔d2、第3ピーク波長λgおよび焦点距離fdによって決まる。周波数成分F2gの位相φ2gは、スリットマスク23における光Lbgと光Lcgとの位相差に依存する。該位相差は実質的にゼロである。実際には、位相φ2gは光軸のズレに依存する。
位相φ1gは位相シフト量θgおよび光軸のズレに依存し、位相φ2gは位相シフト量θgには依存せず、光軸のズレに依存する。このため、位相φ1gおよび位相φ2gを求めることができれば、位相φ1gおよび位相φ2gに基づいて、高い精度で位相シフト量θgを求めることができる。
なお実際には、光Lcと光Laとの干渉によって生じる周波数成分F3も、上述の周波数成分F1および周波数成分F2と同様に、ピーク波長ごとに干渉パターンに含まれる。ここでは、簡単のために、周波数成分F3については説明を省略する。
制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、位相φ1i、位相φ1h、位相φ1g、位相φ2i、位相φ2hおよび位相φ2gを求め、これらに基づいて位相シフト量θi、位相シフト量θhおよび位相シフト量θgを求めてもよい。
位相算出の具体的な一例は図6または図8に示すとおりである。ただし、ステップS52にて、制御部50は周波数f1i、周波数f1h、周波数f1g、周波数f2i、周波数f2hおよび周波数f2gならびに位相スペクトルに基づいて、位相φ1i、位相φ1h、位相φ1g、位相φ2i、位相φ2hおよび位相φ2gを求める。この特定方法は、周波数f1および位相スペクトルに基づく位相φ1の特定方法および周波数f2および位相スペクトルに基づく位相φ2の特定方法と同様である。
そして、ステップS6にて、制御部50は位相φ1iおよび位相φ2iに基づいて位相シフト量θiを算出し、位相φ1hおよび位相φ2hに基づいて位相シフト量θhを算出し、位相φ1gおよび位相φ2gに基づいて位相シフト量θgを算出する。この算出方法は、位相φ1および位相φ2に基づく位相シフト量θ(=φ1-φ2)の算出方法と同様である。
以上のように、照射部10は複数のピーク波長を含む光を位相シフトマスク80に照射し、センサ25は、位相シフトマスク80からスリットマスク23を通過した光La、光Lbおよび光Lcによって形成された干渉パターンを検出する。制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、ピーク波長ごとに、第1間隔d1に対応した第1周波数成分の第1位相(つまり、位相φ1i、位相φ1hおよび位相φ1g)を求め、また、ピーク波長ごとに、第2間隔d2に対応した第2周波数成分の第2位相(つまり、位相φ2i、位相φ2hおよび位相φ2g)を求める。そして、制御部50は、ピーク波長ごとに、第1位相および第2位相に基づいて位相シフト量θ(つまり、位相シフト量θi、位相シフト量θhおよび位相シフト量θg)を求める。
比較のために、ピーク波長ごとの光を順次に位相シフトマスク80に照射する場合につて説明する。照射部10は光の波長を変更して光を出力することができる。例えば、照射部10は、第1ピーク波長λiを有する単波長の光を照射する。このとき、センサ25は、第1ピーク波長λiに対応した干渉パターンを検出する。次に照射部10は、第2ピーク波長λhを有する単波長の光を照射する。このとき、センサ25は、第2ピーク波長λhに対応した干渉パターンを検出する。最後に照射部10は、第3ピーク波長λgを有する単波長の光を照射する。このとき、センサ25は、第3ピーク波長λgに対応した干渉パターンを検出する。そして、制御部50が、各ピーク波長に対応した干渉パターンに基づいて、各ピーク波長についての位相シフト量θを求める。この場合には、照射部10が異なるタイミングで光を照射し、センサ25がその都度、干渉パターンを検出する必要がある。このため、複数のピーク波長にそれぞれ対応した複数の位相シフト量θを算出するのに必要な時間が長くなる。また、制御部50は、複数のピーク波長に対応した複数の干渉パターンに対して、それぞれフーリエ変換等の処理を行う必要があり、制御部50の処理負荷も重くなる。
これに対して、上述の例では、照射部10は複数のピーク波長を含む光を位相シフトマスク80に照射し、センサ25はその干渉パターンを1度だけ検出すればよい。したがって、位相差測定装置1は複数のピーク波長に対応した複数の位相シフト量を短時間で求めることができる。また、制御部50の処理負荷を軽くすることもできる。
<光学系の光学特性>
上述の例では、光La、光Lbおよび光Lcがそれぞれ通過する複数の経路における光学特性の相違については考慮しなかった。しかしながら、実際には各経路における光学特性は互いに相違する場合がある。例えば対物レンズ21および結像レンズ22には収差があり、その光学特性は各経路によってわずかに相違し得る。この場合、例えば位相シフトマスク80に入射する際の光La、光Lbおよび光Lcの状態(例えば位相)は互いに相違し得る。
上述の例では、光La、光Lbおよび光Lcがそれぞれ通過する複数の経路における光学特性の相違については考慮しなかった。しかしながら、実際には各経路における光学特性は互いに相違する場合がある。例えば対物レンズ21および結像レンズ22には収差があり、その光学特性は各経路によってわずかに相違し得る。この場合、例えば位相シフトマスク80に入射する際の光La、光Lbおよび光Lcの状態(例えば位相)は互いに相違し得る。
上述した光軸のズレは各経路について共通に作用するので、光La、光Lbおよび光Lcに対して共通に作用するものの、この光学特性は各経路において相違し得るので、この光学特性の相違は光La、光Lbおよび光Lcに対して個別に作用する。
よって、例えば位相φ1から位相φ2を減算した値は、位相シフト量θのみならず、光学特性の経路間の相違にも依存する。つまり、位相シフト量θの算出精度には、なお改善の余地がある。ここでは、光La、光Lbおよび光Lcの各経路における光学特性の相違に起因した位相シフト量θの算出精度の低下を抑制することを企図する。なお、以下では簡単のために、照射部10が単一のピーク波長を有する光を位相シフトマスク80に照射する態様を説明する。
図10は、位相差測定装置1の動作の第2例を示すフローチャートである。ここでは、第1位相として位相φ1を適用した態様について説明する。まずステップS11にて、制御部50は移動機構40を制御して、光学系(照射部10および検出部20の一組)を基準位置P[0]へと移動させる。図11は、光学系が基準位置P[0]に位置したときの位相差測定装置1の構成の一例を概略的に示す図である。この基準位置P[0]は、照射部10からの光が位相シフトマスク80の領域8Bのみを通過する位置であり、より具体的には、領域8Bを透過した光がそれぞれ第1スリット23a、第2スリット23bおよび第3スリット23cを通過する位置である。
次にステップS12にて、制御部50は照射部10に光を照射させる。この光の照射によって、光La、光Lbおよび光Lcがセンサ25の受光面において干渉パターンを形成する。そして、ステップS13にて、センサ25は干渉パターン(以下、基準干渉パターンと呼ぶ)を検出し、その検出結果を示す電気信号(例えば画像)を制御部50へ出力する。
次にステップS14にて、制御部50は、センサ25によって検出された基準干渉パターンに基づいて、周波数成分F1の基準位相φ10(第1基準位相に相当)および周波数成分F2の基準位相φ20(第2基準位相に相当)を求める。
図12は、基準位相の算出方法の一例を示すフローチャートである。図12の例では、ステップS141にて、制御部50は基準干渉パターンに対してフーリエ変換を行って、振幅スペクトル(以下、基準振幅スペクトルと呼ぶ)および位相スペクトル(以下、基準位相スペクトルと呼ぶ)を求める。
次にステップS142にて、制御部50は基準振幅スペクトルに基づいて周波数f1および周波数f2を求める。周波数f1および周波数f2の特定方法は、図9のステップS53と同様である。具体的には、制御部50は、基準振幅スペクトルから周波数範囲R1内において振幅のピーク値を特定し、振幅が該ピーク値となるときの周波数を周波数f1として特定する。同様に、制御部50は、基準振幅スペクトルから周波数範囲R2内において振幅のピーク値を特定し、振幅が該ピーク値となるときの周波数を周波数f2として特定する。
次にステップS143にて、制御部50は周波数f1、周波数f2および基準位相スペクトルに基づいて基準位相φ10および基準位相φ20を求める。図13は、基準位相スペクトルの一例を概略的に示すグラフである。制御部50は、周波数がステップS142で特定した周波数f1となるときの位相を基準位相φ10として特定し、周波数がステップS142で特定した周波数f2となるときの位相を基準位相φ20として特定する。要するに、基準位相φ10および基準位相φ20の特定方法は、図8のステップS52と同様である。
次にステップS15にて、制御部50は、ステップS1と同様に、値kを初期値に設定する。次にステップS16にて、移動機構40は、ステップS2と同様に、照射部10および検出部20の一組を測定位置P[k]に移動させる。次にステップS17にて、センサ25は、ステップS4と同様に、光La、光Lbおよび光Lcによる干渉パターンを検出する。
次にステップS18にて、制御部50は、ステップS17においてセンサ25によって検出された干渉パターンに基づいて、位相φ1および位相φ2を求める。位相φ1および位相φ2の算出方法は、図6と同様である。ただし、ここでは、制御部50は、ステップS142において求めた周波数f1および周波数f2の値を用いて、位相φ1および位相φ2を求めてもよい。つまり、測定位置P[0]において検出された基準干渉パターンに基づいて求められた周波数f1および周波数f2の値を、各測定位置P[k]において検出された干渉パターンにも適用する。
これは、次に説明するように、基準干渉パターンを用いた方が、周波数f1および周波数f2の特定精度が高いからである。すなわち、測定位置P[k]では、光Laは透過率の低い領域8Aを透過するのに対して、測定位置P[0]では、光Laは透過率の高い領域8Bを透過する。このため、基準干渉パターンにおける強度のピークは干渉パターンに比べて大きくなる。したがって、ノイズの影響は基準干渉パターンにおいて小さく、制御部50は基準干渉パターンからより高い精度で周波数f1および周波数f2を特定することができる。
そこで、制御部50は、基準干渉パターンに基づいて求められた周波数f1および周波数f2と、干渉パターンの位相スペクトルとに基づいて、位相φ1および位相φ2を求める。このため、制御部50は位相φ1および位相φ2をより高い精度で求めることができる。
次にステップS19にて、ステップS17において求められた位相φ1および位相φ2と、ステップS14において求められた基準位相φ10および基準位相φ20とに基づいて、測定位置P[k]における位相シフト量θを求める。具体的には、制御部50は以下の式で位相シフト量θを算出する。
θ=(φ1-φ10)-(φ2-φ20) ・・・(2)
位相φ1は、位相シフト量θ、測定位置P[k]における光軸のズレに応じた量(以下、測定ズレ量と呼ぶ)、および、光学特性の光Laと光Lbの経路間の相違に応じた量(以下、第1経路差と呼ぶ)を含む。基準位相φ10は、測定位置P[0]の光軸のズレに応じた量(以下、基準ズレ量)および第1経路差が含まれる。このため、値(φ1-φ10)は(位相シフト量θ+測定ズレ量-基準ズレ量)で表され、第1経路差がほぼキャンセルされる。
位相φ1は、位相シフト量θ、測定位置P[k]における光軸のズレに応じた量(以下、測定ズレ量と呼ぶ)、および、光学特性の光Laと光Lbの経路間の相違に応じた量(以下、第1経路差と呼ぶ)を含む。基準位相φ10は、測定位置P[0]の光軸のズレに応じた量(以下、基準ズレ量)および第1経路差が含まれる。このため、値(φ1-φ10)は(位相シフト量θ+測定ズレ量-基準ズレ量)で表され、第1経路差がほぼキャンセルされる。
一方、位相φ2は測定ズレ量および光学特性の光Lbと光Lcとの経路間の相違に応じた量(以下、第2経路差)が含まれる。基準位相φ20は基準ズレ量および第2経路差が含まれる。このため、値(φ2-φ20)は(測定ズレ量-基準ズレ量)で表され、第2経路差がほぼキャンセルされる。
式(2)の右辺の値では、測定ズレ量および基準ズレ量もほぼキャンセルされるので、結果として式(2)の右辺は測定ズレ量、基準ズレ量、第1経路差および第2経路差を含まずに、位相シフト量θを含む。したがって、制御部50はさらに高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
次にステップS20にて、制御部50は値kが所定値krefよりも大きいか否かを判断する。ステップS20において否定的な判断がなされたときに、ステップS21にて、制御部50は値kに1を加算する。次に、制御部50はステップS16からステップS20を再び実行する。ステップS20において肯定的な判断がなされたときには、制御部50は動作を終了する。
以上のように、制御部50は干渉パターンおよび基準干渉パターンに基づいて位相シフト量θを算出する。具体的には、制御部50は基準干渉パターンから基準位相φ10および基準位相φ20を求め、干渉パターンから位相φ1および位相φ2を求め、位相φ1、基準位相φ10、位相φ2および基準位相φ20に基づいて位相シフト量θを求める。具体的には、制御部50は、位相φ1から基準位相φ10を減算した値と、位相φ2から基準位相φ20を減算した値との差を位相シフト量θとして求める。これにより、制御部50は、光軸のズレの影響および光学系の各経路における光学特性の相違の影響の両方を抑制して、さらに高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
なお、位相差測定装置1に対して複数枚の位相シフトマスク80が順次に搬入される場合、図10の動作によれば、基準干渉パターンの検出はその位相シフトマスク80ごとに行われる。しかるに、この検出は位相シフトマスク80の1枚ごとに行われる必要はない。基準干渉パターンの検出は一度だけ行われ、検出された基準干渉パターンが複数枚の位相シフトマスク80に対して共通して用いられてもよい。また、N枚の位相シフトマスク80ごとに、基準干渉パターンを検出して、これらを更新してもよい。
なお上述の例では、位相φ1および位相φ2に基づいて位相シフト量θを算出しているものの、位相φ2および位相φ3に基づいて位相シフト量θを算出してもよい。この場合には、制御部50は、基準干渉パターンに基づいて周波数成分F2の基準位相φ20(第2基準位相に相当)および周波数成分F3の基準位相φ30(第1基準位相に相当)を求める。そして、制御部50は、位相φ3、基準位相φ30、位相φ2および基準位相φ20に基づいて位相シフト量θ{=φ3-φ30-(φ2-φ20)}を求める。
また、周波数f1の値および周波数f2の値は事前に算出可能であるので、予め算出した周波数f1の値および周波数f2の値を用いてもよい。
照射部10が照射する光が複数のピーク波長を有する場合には、位相差測定装置1はピーク波長ごとに、第1位相、第2位相、第1基準位相および第2基準位相を求める。図13の例では、第1ピーク波長λiに対応した基準位相φ10iおよび基準位相φ20i、第2ピーク波長λhに対応した基準位相φ10hおよび基準位相φ20h、ならびに、第3ピーク波長λgに対応した基準位相φ10gおよび基準位相φ20gも示されている。そして、制御部50は、ピーク波長ごとに、第1位相、第1基準位相、第2位相および第2基準位相に基づいて位相シフト量θを求める。例えば、制御部50は、第1ピーク波長λiについて、位相φ1i、基準位相φ10i、位相φ2iおよび基準位相φ20iに基づいて位相シフト量θi{=φ1i-φ10i―(φ2i-φ20i)}を求める。これによれば、位相差測定装置1は、ピーク波長ごとに、さらに高い精度で位相シフト量θを求めることができる。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、制御部50は干渉パターンに対してフーリエ変換を行って、第1位相(例えば位相φ1)および第2位相(つまり位相φ2)を求めた。しかしながら、制御部50は必ずしも干渉パターンに対してフーリエ変換を行う必要はない。第2の実施の形態では、第1位相および第2位相を求める他のアルゴリズムについて説明する。
第1の実施の形態では、制御部50は干渉パターンに対してフーリエ変換を行って、第1位相(例えば位相φ1)および第2位相(つまり位相φ2)を求めた。しかしながら、制御部50は必ずしも干渉パターンに対してフーリエ変換を行う必要はない。第2の実施の形態では、第1位相および第2位相を求める他のアルゴリズムについて説明する。
第2の実施の形態にかかる位相差測定装置1の構成は第1の実施の形態と同様である。第2の実施の形態にかかる位相差測定装置1の動作は、ステップS5の具体的な一例を除いて、図3と同様である。つまり、制御部50による第1位相および第2位相の算出方法が第1の実施の形態と相違する。以下では、まず、第2の実施の形態にかかる第1位相および第2位相の算出方法の考え方を説明する。
センサ25の受光面に形成される干渉パターンは所定の関数で表され得る。所定の関数としては、簡易的には、以下の式で表され得る。
ここで、I(x)は、センサ25の受光面に形成される干渉パターンを示す。xは、X軸方向の位置を示している。式(3)の第1項は、光Laと光Lbとの干渉によって生じる干渉パターンを示す項であり、式(3)の第2項は、光Lbと光Lcとの干渉によって生じる干渉パターンを示す項であり、式(3)の第3項は、光Lcと光Laとの干渉によって生じる干渉パターンを示す項である。なお、ここでは簡単のために、照射部10が照射する光は単一のピーク波長を有するものとする。
α1、α2およびα3は、それぞれ第1項から第3項の重み付け係数を示している。重み付け係数α1は光Laおよび光Lbの光量を反映した値であり、重み付け係数α2は光Lbおよび光Lcの光量を反映した値であり、重み付け係数α3は光Lcおよび光Laの光量を反映した値である。言い換えれば、重み付け係数α1は幅waおよび幅wbを反映した値であり、重み付け係数α2は幅wbおよび幅wcを反映した値であり、重み付け係数α3は幅wcおよび幅waを反映した値である。幅wa、幅wbおよび幅wcは既知であるので、重み付け係数α1、重み付け係数α2および重み付け係数α3は予め設定され得る。
ここでは、照射部10が照射する光は単一のピーク波長(波長λ)を有している。波長λは既知である。フーリエ変換レンズ24の焦点距離fdも既知である。第1間隔d1、第2間隔d2および第3間隔d3も既知である。
また、w1は、第1スリット23aの幅waおよび第2スリット23bの幅wbを反映した値であり、幅waと幅wbとの間の値(例えば幅waと幅wbの平均値)である。w2は、第2スリット23bの幅wbおよび第3スリット23cの幅wcを反映した値であり、幅wbと幅wcとの間の値(例えば幅wbと幅wcの平均値)である。w3は、第3スリット23cの幅wcおよび第1スリット23aの幅waを反映した値であり、幅wcと幅waとの間の値(例えば幅wcと幅waの平均値)である。
式(3)において、位相φ1、位相φ2および位相φ3を変数とする。以下では、変数としての位相φ1、位相φ2および位相φ3をそれぞれ位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3と呼ぶ。また、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3ならびに式(3)に基づいて算出される干渉パターンI(x)を、算出干渉パターンIc(x)と呼ぶ。
センサ25によって検出された干渉パターンI(x)と、算出干渉パターンIc(x)とが一致していれば、その算出干渉パターンIc(x)に用いられた位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3の値は、それぞれ、位相φ1、位相φ2および位相φ3と一致していると考えられる。
そこで、制御部50は、以下に詳述するように、干渉パターンI(x)に類似した算出干渉パターンIc(x)を特定し、その算出干渉パターンIc(x)の算出に用いられた位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を、それぞれ位相φ1、位相φ2および位相φ3として特定する。そして、制御部50は、第1の実施の形態と同様に、位相φ1から位相φ2を減算して位相シフト量θを算出する(ステップS6)。あるいは、制御部50は位相φ3から位相φ2を減算して位相シフト量θを求めてもよい(ステップS6)。
図14は、第2の実施の形態にかかる第1位相および第2位相の算出方法の一例を示すフローチャートである。つまり、図14のフローチャートは、図3のステップS5の具体的な動作の一例を示している。ステップS501にて、制御部50は位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を設定する。例えばまず、制御部50は位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3をそれぞれの初期値に設定する。位相変数φc1の初期値は、例えば、位相変数φc1についての第1所定範囲の最小値である。第1所定範囲は、位相シフト膜82の厚みのばらつき、光軸のズレ量のばらつき、光学特性の経路間の差のばらつきを考慮した範囲であり、位相φ1がとり得る値の範囲である。第1所定範囲は予め設定されて、例えば記憶部に記憶される、位相変数φc2の初期値は、例えば、位相φ2がとり得る第2所定範囲の最小値である。第2所定範囲は予め設定されて、例えば記憶部に記憶される。位相変数φc3の初期値は、例えば、位相φ3がとり得る第3所定範囲の最小値である。第3所定範囲は予め設定されて、例えば記憶部に記憶される。
次にステップS502にて、制御部50は、ステップS501において設定した位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を式(3)に代入して、算出干渉パターンIc(x)を算出する。
次にステップS503にて、制御部50は、ステップS4においてセンサ25によって検出された干渉パターンI(x)と、ステップS502において算出された算出干渉パターンIc(x)との類似度を算出する。類似度は特に制限されないものの、例えば、各位置xにおける強度の差の二乗和、各位置xにおける強度の差分の絶対値の和(Sum of Absolute Difference)、または、干渉パターンI(x)と算出干渉パターンIc(x)の相関関数であってもよい。類似度が高いほど、算出干渉パターンIc(x)は干渉パターンI(x)に類似していることを示す。
次にステップS504にて、制御部50は、全ての位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3の組み合わせについて、類似度を算出したか否かを判定する。
未だ全ての類似度を算出していなければ、制御部50は、再びステップS501を実行する。ステップS501にて、制御部50は、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3のうちの一つの値を、対応する所定範囲内において変更する。例えば、制御部50は該一つに対して所定値を加算する。
次に制御部50はステップS502およびステップS503を実行する。制御部50がステップS501からステップS503を繰り返し実行することにより、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3の全ての組み合わせについて、類似度を算出することができる。
全ての組み合わせで類似度を算出したときには、ステップS505にて、制御部50は類似度に基づいて第1位相および第2位相を特定する。ここでは、第1位相として位相φ1を適用する。第2位相は位相φ2である。例えば、制御部50は、複数の類似度のうち最も高い類似度を特定し、最も高い類似度の算出に用いられた位相変数φc1および位相変数φc2をそれぞれ位相φ1および位相φ2として特定する。つまり、干渉パターンI(x)に最も類似する算出干渉パターンIc(x)の算出に用いられた位相変数φc1および位相変数φc2は実際の位相φ1および位相φ2と同等の値であると考えられるので、制御部50はこの位相変数φc1および位相変数φc2をそれぞれ位相φ1および位相φ2と特定する。
そして、制御部50は、第1の実施の形態と同様に、第1位相および第2位相に基づいて位相シフト量θを求める(ステップS6)。
なお、制御部50は、最も高い類似度の算出に用いられた位相変数φc2および位相変数φc3をそれぞれ位相φ2および位相φ3として特定し、位相φ2および位相φ3に基づいて位相シフト量θを求めてもよい。
以上のように、第2の実施の形態では、制御部50は、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を所定の関数に代入して算出干渉パターンIc(x)を算出し、干渉パターンI(x)と算出干渉パターンIc(x)との類似度を算出する処理(ステップS502およびステップS503)を、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を変更しつつ繰り返し行う。そして、制御部50は、干渉パターンI(x)と類似する算出干渉パターンIc(x)の算出に用いられた位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3に基づいて、第1位相(つまり、位相φ1または位相φ3)および第2位相(つまり、位相φ2)を求める。このため、制御部50は、センサ25によって検出された干渉パターンI(x)に基づいて、位相φ1および位相φ2、もしくは位相φ2および位相φ3を特定することができる。
また、第2の実施の形態においても、制御部50は第1位相および第2位相に基づいて位相シフト量θを求めるので、第1の実施の形態と同様に、より高い精度で位相シフト量θを求めることができる。また、制御部50は、一度に検出された干渉パターンI(x)に基づいて第1位相および第2位相を求めているので、第1の実施の形態と同様に、短時間で位相シフト量θを求めることができ、また、制御部50の処理負荷を軽くすることができる。
また、制御部50は、第1の実施の形態の図10の動作と同様に、第1位相、第2位相、第1基準位相および第2基準位相に基づいて、位相シフト量θを求めてもよい。この場合の第1基準位相および第2基準位相の算出方法(ステップS14)の具体的な一例として、図14のフローチャートを適用することができる。つまり、制御部50は、位相変数φc1、位相変数φc2および位相変数φc3を変更しつつ、式(3)に基づいて算出干渉パターンIc(x)を算出する。そして、制御部50は、センサ25によって検出された基準干渉パターンと、算出干渉パターンIc(x)との類似度を求め、該類似度に基づいて位相変数φc1および位相変数φc2をそれぞれ基準位相φ10および基準位相φ20として特定する。あるいは、制御部50は該類似度に基づいて位相変数φc2および位相変数φc3をそれぞれ基準位相φ20および基準位相φ30として特定する。
以上のように、位相差測定装置1および位相差測定方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
1 位相差測定装置
8 測定対象物
8A 第1屈折率領域
8B 第2屈折率領域
10 照射部
23 スリットマスク
23a 第1スリット(スリット)
23b 第2スリット(スリット)
23c 第3スリット(スリット)
25 センサ
40 移動機構
50 演算処理部(制御部)
d1 第1間隔
d2 第2間隔
d3 第3間隔
F1,F1i,F1h,F1g,F3 第1周波数成分(周波数成分)
F2,F2i,F2h,F2g 第2周波数成分(周波数成分)
P[0] 基準位置
P[k] 測定位置
φ1,φ1i,φ1h,φ1g,φ3 第1位相(位相)
φ2,φ2i,φ2h,φ2g 第2位相(位相)
φ10,φ10i,φ10h,φ10g,φ30 第1基準位相(基準位相)
φ20,φ20i,φ20h,φ20g 第2基準位相(基準位相)
θ1,θ1i,θ1h,θ1g 位相シフト量
8 測定対象物
8A 第1屈折率領域
8B 第2屈折率領域
10 照射部
23 スリットマスク
23a 第1スリット(スリット)
23b 第2スリット(スリット)
23c 第3スリット(スリット)
25 センサ
40 移動機構
50 演算処理部(制御部)
d1 第1間隔
d2 第2間隔
d3 第3間隔
F1,F1i,F1h,F1g,F3 第1周波数成分(周波数成分)
F2,F2i,F2h,F2g 第2周波数成分(周波数成分)
P[0] 基準位置
P[k] 測定位置
φ1,φ1i,φ1h,φ1g,φ3 第1位相(位相)
φ2,φ2i,φ2h,φ2g 第2位相(位相)
φ10,φ10i,φ10h,φ10g,φ30 第1基準位相(基準位相)
φ20,φ20i,φ20h,φ20g 第2基準位相(基準位相)
θ1,θ1i,θ1h,θ1g 位相シフト量
Claims (10)
- 第1屈折率領域および第2屈折率領域を有する測定対象物の前記第1屈折率領域を透過した光と、前記第2屈折率領域を透過した光との間の位相差である位相シフト量を測定する位相差測定装置であって、
前記測定対象物へ光を照射する照射部と、
第1スリット、前記第1スリットと第1間隔で隣り合う第2スリット、および、前記第2スリットと第2間隔で隣り合う第3スリットを有するスリットマスクと、
前記第1スリットが、前記第1屈折率領域を透過する光の経路上に位置し、前記第2スリットおよび前記第3スリットが、それぞれ前記第2屈折率領域を透過する光の経路上に位置した状態で、前記第1スリットから前記第3スリットをそれぞれ通過した光の干渉による干渉パターンを検出するセンサと、
前記干渉パターンのうちの、前記第1スリットと前記第3スリットとの第3間隔または前記第1間隔に対応した第1周波数成分の第1位相、および、前記第2間隔に対応した第2周波数成分の第2位相を、前記干渉パターンに基づいて求め、前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める演算処理部と
を備える、位相差測定装置。 - 請求項1に記載の位相差測定装置であって、
前記第1スリットと前記第2スリットとの前記第1間隔は、前記第2スリットと前記第3スリットとの前記第2間隔よりも広い、位相差測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の位相差測定装置であって、
前記第1屈折率領域の透過率は前記第2屈折率領域の透過率よりも低く、
前記第1スリットの幅は、前記第2スリットの幅よりも広く、
前記第2スリットの幅は、前記第3スリットの幅よりも広い、位相差測定装置。 - 請求項3に記載の位相差測定装置であって、
前記演算処理部は、前記第1間隔に対応した前記第1周波数成分の前記第1位相を求める、位相差測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の位相差測定装置であって、
前記照射部は、複数のピーク波長を有する光を照射し、
前記演算処理部は、前記干渉パターンに基づいて前記第1位相および前記第2位相をピーク波長ごとに求め、当該ピーク波長ごとに、前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める、位相差測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の位相差測定装置であって、
前記照射部、前記スリットマスクおよび前記センサを移動させる移動機構をさらに備え、
前記移動機構は、前記照射部、前記スリットマスクおよび前記センサの一組を、基準位置および測定位置の各々に移動させ、
前記測定位置は、前記第1屈折率領域を透過する光が前記第1スリットを通過し、前記第2屈折率領域を透過する光が前記第2スリットおよび前記第3スリットをそれぞれ通過する位置であり、
前記基準位置は、前記第2屈折率領域を透過する光が前記第1スリットから前記第3スリットをそれぞれ通過する位置であり、
前記センサは、前記基準位置において前記第1スリットから前記第3スリットを通過した光の干渉による干渉パターンである基準干渉パターンを検出し、
前記演算処理部は、
前記基準干渉パターンのうちの前記第1周波数成分の第1基準位相、および、前記基準干渉パターンのうちの前記第2周波数成分の第2基準位相を、前記基準干渉パターンに基づいて求め、
前記第1位相、前記第1基準位相、前記第2位相および前記第2基準位相に基づいて、前記位相シフト量を求める、位相差測定装置。 - 請求項6に記載の位相差測定装置であって、
前記第1屈折率領域の透過率は前記第2屈折率領域の透過率よりも低く、
前記演算処理部は、
前記基準干渉パターンに対してフーリエ変換を行って基準振幅スペクトルおよび基準位相スペクトルを求め、
前記基準振幅スペクトルに基づいて、前記第1周波数成分の第1周波数および前記第2周波数成分の第2周波数を求め、
前記基準振幅スペクトルに基づいて求められた前記第1周波数および前記第2周波数と、前記基準位相スペクトルとに基づいて、前記第1基準位相および前記第2基準位相を求め、
前記干渉パターンに対してフーリエ変換を行って位相スペクトルを求め、
前記基準振幅スペクトルに基づいて求められた前記第1周波数および前記第2周波数と、前記位相スペクトルとに基づいて、前記第1位相および前記第2位相を求める、位相差測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の位相差測定装置であって、
前記演算処理部は、
前記干渉パターンに対してフーリエ変換を行って前記第1周波数成分の前記第1位相および前記第2周波数成分の前記第2位相を求める、位相差測定装置。 - 請求項1または請求項2に記載の位相差測定装置であって、
前記演算処理部は、
前記第1間隔に対応した周波数成分の位相変数、前記第2周波数成分の位相変数および前記第3間隔に対応した周波数成分の位相変数を所定の関数に代入して算出干渉パターンを算出し、前記干渉パターンと前記算出干渉パターンとの類似度を算出する処理を、前記位相変数を変更しつつ行い、
前記干渉パターンと類似する前記算出干渉パターンの算出に用いられた前記位相変数に基づいて前記第1位相および前記第2位相を求める、位相差測定装置。 - 第1屈折率領域および第2屈折率領域を有する測定対象物の前記第1屈折率領域を透過した光と、前記第2屈折率領域を透過した光との間の位相差である位相シフト量を測定する位相差測定方法であって、
前記測定対象物に光を照射する工程と、
前記第1屈折率領域および第1スリットを通過した光と、前記第2屈折率領域、および、前記第1スリットと第1間隔で隣り合う第2スリットを通過した光と、前記第2屈折率領域、および、前記第2スリットと第2間隔で隣り合う第3スリットを通過した光との干渉による干渉パターンを検出する工程と、
前記干渉パターンのうちの、前記第3スリットと前記第1スリットとの第3間隔または前記第1間隔に対応した第1周波数成分の第1位相、および、前記第2間隔に対応した第2周波数成分の第2位相を、前記干渉パターンに基づいて求める工程と、
前記第1位相および前記第2位相に基づいて前記位相シフト量を求める工程と
を備える、位相差測定方法。
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---|---|---|---|
JP2022172002A JP2024063855A (ja) | 2022-10-27 | 2022-10-27 | 位相差測定装置および位相差測定方法 |
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- 2023-10-24 KR KR1020230142791A patent/KR20240059563A/ko unknown
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