JP2024057785A - マルテンサイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

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Shigeo Fukumoto
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Abstract

【課題】表面性状に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼板を提供する。【解決手段】質量%にて、C:0.10~0.60%、Si:0.05~1.00%、Mn:0.10~1.00%、P:0.040%以下、S:0.008%以下、Cr:11.0~20.0%、N:0.01~0.10%、Mo:0.01~1.00%、V:0.01~0.50%、Nb:0.001~0.02%、Al:0.0010%~0.0250%、O:0.0010~0.008%、Ti:0.001~0.01%以下、Mg:0.0020%以下、Ca:0.0020%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、鋼板の板表面において、短径が15μm以上の介在物が0.05個/mm2以下、短径が3μm以上の酸硫化物が5個/mm2以下の割合で存在し、前記酸硫化物のうち酸硫化物部分の組成が質量%でCaO+Al2O3+SiO2+MnO≧60%を満たす介在物の個数割合が75%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼板に関する。
ステンレス鋼はCrを高濃度に含有するため、鋼中の酸素ポテンシャルが低く、MgO・Alが生成しやすい。また、熱間圧延前の鋳片加熱時にはMnO・Crが生成・成長する。上記スピネル系酸化物は圧延等の加工で破砕されたり延伸されたりしにくいため、加工中に表面に露出して表面疵の原因となる。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼はCを高くして焼入れ硬度を向上させた鋼種であり、用途として洋食器ナイフ(テーブルナイフ)やはさみ等の刃物製品が挙げられる。この様な用途においては、上記スピネル系酸化物のみならず粗大な炭化物や酸化物が残存して研磨性低下の原因となる場合がある。
例えば、特許文献1ではSiOとCaOを主体とするSiO―CaO―Al-MgO介在物、特許文献2ではSiOとMnOを主体とするSiO―MnO―CaO-MgO介在物へ軟質な組成に制御し、MgO・Alを含むAl系介在物を回避しつつ圧延で微細化することを特徴とする高清浄度鋼が開示されている。
特許文献3にはSi脱酸を前提として、スラグの塩基度を制御するとともに鋼中のAlを極力低減することでMgO・Alスピネルの生成を抑制し、表面品質に優れたステンレス鋼を製造する方法が開示されている。
特許文献4では、Alでの脱酸を前提として、精錬スラグの成分を好適に制御すること、詳細には特に低SiO濃度にして酸素ポテンシャルを低位に制御することでMgO・Alスピネルから無害なMgOへ改質できることを提示している。
特許文献5では、焼入れ時の鋭敏化回避とともに10μm以上の酸化物を0.2個/cm以下に低減した製造性と耐食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼板が開示されている。介在物生成量低減のためにAlを0.02%以下、Oを0.001~0.01%に低減することを特徴とする。
特開昭62-99436号公報 特開昭62-99437号公報 特開2015―074807号公報 特開2020-033579号公報 特開2018-009231号公報
特許文献1および特許文献2の技術では、介在物中Cr濃度の規定が無く、ステンレス鋼においてMnO・Crを抑制することが難しい。
特許文献3の技術では、Si合金で高純度に脱酸を行うため高塩基度のスラグを造滓する必要がある。高塩基度のスラグは高融点であるため、造滓材としてCaFやNaF等を添加して低融点化する必要があり、環境規制の面で実施できない場合がある。また、高Cマルテンサイト系ステンレス鋼において鋳造時に生成する、AlやTi等の脱酸元素が固溶したMnO・(Cr、Al、Ti)を抑制することが難しい。
特許文献4の技術では、Al濃度が高く、マルテンサイト系ステンレス鋼において、固溶強化により靭性を損ねる場合がある。また、MgOへの改質は安定的に行うためにスラグ中のSiO濃度を低位に制御することを必須としているため、ステンレス鋼の精錬で一般的なCr酸化物の還元工程でのSi合金使用に制限がかかるか、もしくはSiO濃度を薄めるために石灰使用量が増大するなど、操業上の制約やコストアップ要因が大きくなる。
さらに、特許文献5に記載された方法では粗大な炭化物および酸化物は低減するものの、MnO・(Cr、Al、Ti)を抑制できず、圧延後も微細化せず残存する硬質介在物による表面疵や研磨性の問題について更なる向上の余地がある。
本発明は上記現状の問題点に鑑み、介在物を制御することで表面疵を抑制し、研磨性の良好な表面性状に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、種々の方法で製造した高Cマルテンサイト系ステンレス鋼について、表面性状に影響を及ぼす因子の詳細調査を行った。なお、本発明において対象とする介在物は、炭化物、酸化物、硫化物で構成されており、これらが単独または複合した形態になっている。このうち酸化物と硫化物は互いに相の区別のつかない場合がほとんどであるため、それらが複合的に含まれている場合も、それぞれが単独である場合も含めて酸硫化物と称する。
その結果、通常の焼入れ処理が施された鋼板において、粗大な炭化物や酸化物とともに硬質なMgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti)のスピネル系酸化物を含む粗大介在物の個数密度を低減することが重要であることが判明した。
すなわち、鋼板表面において、短径が15μm以上の介在物の密度が0.1個/mm以下であり、尚且つ、短径が3μm以上の酸硫化物の密度が5個/mm以下であって、この酸硫化物のうちCaO、Al、SiO、およびMnOの合計含有量が60質量%以上である酸硫化物の個数割合が75%以上である場合に、表面疵が少なく、研磨性も良好になることを知見した。
なお、本明細書において短径とは、圧延方向と平行で、厚み方向と垂直な断面を観察面としたときに、圧延方向と垂直な方向(鋼板幅方向)における介在物の最大長さを意味する。
本発明は、上記課題を解決するために上記知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]
質量%にて、
C:0.10~0.60%、
Si:0.05~1.0%、
Mn:0.10~1.00%、
P:0.040%以下、
S:0.008%以下、
Cr:11.0~20.0%、
N:0.01~0.10%、
Mo:0.01~1.00%、
V:0.01~0.50%、
Nb:0.001~0.020%、
Al:0.0010%~0.0250%、
O:0.0010~0.0080%、
Ti:0.001~0.010%、
Mg:0.0020%以下、
Ca:0.0020%以下、
Ni:0.50%以下、
Co:1.00%以下、
Cu:0.50%以下、
B:0.0050%以下、
Sn:0.200%以下、
REM:0.0020%以下、を含有し、
残部がFeおよび不純物からなり、
鋼板の表面において、短径が15μm以上の介在物が0.05個/mm以下、
短径が3μm以上の酸硫化物が5個/mm以下であり、
前記短径が3μm以上の酸硫化物のうち、CaO、Al、SiO、およびMnOの合計含有量が60質量%以上である酸硫化物の個数割合が75%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。
[2]
[1]に記載の化学成分に加え、さらに、質量%で、
Ni:0.01~0.50%、
Co:0.05~1.00%、
Cu:0.01~0.50%、
B:0.0002~0.0050%、
Sn:0.005~0.200%、
REM:0.0001~0.0020%から選択される1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
表面疵を抑制し、研磨性の良好な表面性状に優れるマルテンサイト系ステンレス鋼を提供することができる。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
高Cマルテンサイト系ステンレス鋼の表面性状の劣化原因として粗大な酸硫化物とともに硬質なMgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti)のスピネル系酸化物が挙げられる。
高Cマルテンサイト系ステンレス鋼は溶鋼を凝固させる時にフェライトが初晶として生成するため、CやNが液相へ濃化して固相線温度が降下する。そのため、他のステンレス鋼と比較して凝固時間が長くなり、凝固中に炭化物や酸硫化物の成長が促進されやすくなる。
凝固時のマクロ偏析起因の炭化物は、鋼板の板厚tの中心部(鋼板表面から1/2t(板厚tの1/2)位置の部分)から1/4t部(鋼板表面から1/4t(板厚tの1/4)位置の部分)に存在し、比較的粗大であるものの板厚表面には露出しにくい。また、ミクロ偏析起因の炭化物は、熱延前の加熱や焼入れ時の加熱において、オーステナイト域の保持により固溶し、熱間圧延および冷間圧延において破砕されて小径化する。さらに、上記に加えて凝固時に炭化物を生成せず、C同様に固相線温度を低下させるNbを制御することで、炭化物を比較的微細に制御できることが判明した。
また、粗大な酸硫化物として、O濃度が低く脱酸元素であるAl、Ca、Mgが高い場合に、CaO―Al-MgO系介在物が凝集・粗大化することにより形成されるとともに、硬質なMgO・Alも生成しやすいことが判明した。
また、O濃度が高い場合は、AlやTi等の脱酸元素が固溶したMnO・(Cr、Al、Ti)が凝固中に生成して鋳片で観察されることが分かった。
Cr含有ステンレス鋼において主要な添加元素であるNbやTiとともに、各種脱酸元素やOやSの濃度をコントロールすることで、粗大な酸硫化物とともに硬質なMgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti)のスピネル系酸化物を極力低減して軟質な介在物へ制御して、表面性状に優れる製品が確保できることを見出した。
<鋼成分について>
以下に好適に用いることができる成分の限定理由を説明する。特に断りのない限り、各元素の含有量や析出量に関する「%」は「質量%」を意味する。
C:0.10~0.60%
Cは、固相線温度を降下させて介在物の成長を促進するとともに、焼入れ処理後にマルテンサイト組織を生成して高強度化させる効果がある。このため、C含有量は、0.10%以上とする。好ましくは0.20%以上である。一方、過剰な量のCを含有すると、粗大な炭化物が生成しやすいため、C含有量は0.60%以下とする。好ましくは0.55%以下である。
Si:0.05~1.00%
Siは、ステンレス鋼脱炭時に生成したCr酸化物を還元回収するために含有させる。このため、Si含有量は0.05%以上とする。脱酸のために好ましくは0.10%以上含有させるとよい。一方で、Siが1.00%を超えるとSi原料中の不純物や精錬中にスラグを還元して溶鋼中Caを増加させるため1.00%以下とする。なお、オーステナイト単相温度域を狭くし、焼入れ安定性を損ねるためには0.80%以下が望ましい。
Mn:0.10~1.00%
Mnは、脱酸のために添加されるとともに、オーステナイト単相域を拡大し焼入れ性の向上に寄与する。このため、Mn含有量は、0.10%以上とする。好ましくは0.20%以上とする。一方、Mn含有量が多くなると、MnO・(Cr、Al、Ti)の生成を助長するとともに、焼入れ加熱時の酸化スケールの生成を促進するため、その上限を1.00%以下とした。MnO・(Cr、Al、Ti)の粗大化を考慮すると、0.80%以下にすることが望ましい。
P:0.040%以下
Pは、原料である溶銑やフェロクロム等の主原料中に不純物として含まれる元素である。固相線温度を大きく降下させるとともに熱延焼鈍板や焼入れ後の靭性および耐食性に対しては有害な元素であるため、少ないほど好ましいので0.040%以下とする。なお、好ましくは0.03%以下である。
S:0.0080%以下
Sは、靭性や熱間加工性、耐食性を低下させるためステンレス鋼において有害であるので少ないほうが好ましく、上限を0.0080%とする。固相線温度を大きく降下させるため、好ましくは0.0040%以下である。一方、凝固中に凝固シェルへ介在物を捕捉させ、液相中における介在物を凝集・粗大化を抑えるため、0.0002%以上とすることが好ましい。
Cr:11.0~20.0%
Crは、ステンレス鋼に耐食性をもたらす重要な元素であり、また、Mnと共にSを固定してCaSを抑制するとともに母材の耐食性を保持するため、11.0%以上含有するとよい。好ましくは12.0%以上である。一方、Crを含有した粗大炭化物を防止するために20.0%を上限とした。好ましくは18.0%以下、より好ましくは16.0以下である。
N:0.01~0.10%
NはCと同様に固相線温度を降下させて介在物の成長を促進するとともに、焼入れ硬さを上げる効果がある。また、不動態皮膜を強化させる働きやCr炭化物の析出抑制(Cr欠乏層の抑制)の効果も有する。これらの効果を得るためにNは0.01%以上とする。鋭敏化を抑制するためにはNを0.02%以上にすることが好ましい。一方、過剰な添加はブローホールを生じるとともに、C同様に固相線温度を降下させて酸硫化物の成長を促進させるために0.10%以下とした。また、Nは熱延焼鈍板の硬度を高めて、加工性を低下させるため、0.05%以下にすることが好ましい。
Mo:0.01~1.00%
Moは、鋭敏化部の耐食性の効果も有するほか、炭窒化物中にMoが固溶することでその析出を微細分散する効果もあるので、0.01%以上とした。孔食の進展抑制のためには0.02%以上が好ましい。一方、過剰添加により炭化物を粗大化させるため、1.00%以下とする。フェライト相を安定化させる元素であり、残留フェライトの生成に伴う鋭敏化を促進し、また、焼き戻し軟化抵抗を高めて熱延板の焼鈍時間が長時間化するなど、製造性を悪化させるために、0.80%以下にすることが好ましい。
V:0.01~0.50%
Vは、耐食性向上の効果も有するほか、炭窒化物中にVが固溶することで、その析出を微細分散する効果もあるので、その下限は0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上とする。オーステナイト単相温度域を狭める作用が強いため、0.50%以下とした。析出物粗大化を招くことによる靭性低下を回避するため0.20%以下とすることが望ましい。
Nb:0.001~0.020%
Nbは、炭窒化物を微細に形成することでクロム単窒化物の析出による表面性状の悪化や鋭敏化や耐食性の低下を抑制する元素であるため、0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上とする。しかし、過度に添加すると固相線温度を降下させるとともに炭素活量を低減させることで炭化物や酸化物系介在物の粗大化を促進させるために、その上限は0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下とする。
Al:0.0010%~0.0250%
Alは、脱酸および脱硫のために添加され、CaO系介在物にAlが含有して圧延時における介在物の変形能を向上させる。そのため、下限を0.0010%以上とする。脱酸によりMnO・(Cr、Al、Ti)を安定的に低減させるためには0.0020%以上が好ましい。しかし、過剰な添加は固溶強化で靭性を損ねるとともにMgO・Al生成を促進するために、上限を0.0250%以下とした。精錬中にスラグから溶鋼へCa、Mgを還元することを避けるために、0.0100%以下にすることが好ましい。
O:0.0010~0.0080%
Oは、MgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti)の生成を抑制するために0.0080%以下とする。好ましくは0.0050%以下とする。しかし、過剰な脱酸により精錬中にスラグから溶鋼へCa、Al、Mgが混入しやすくなり、CaO系介在物を含む粗大介在物が生成しやすくなるため0.0010%以上とした。好ましくは0.0020%以上とする。
Ti:0.001~0.01%
Tiは炭窒化物を微細に形成することでクロム単窒化物の析出による表面性状の悪化や鋭敏化や耐食性の低下を抑制する元素であるため、0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上とする。しかし、過度に添加すると硬質なMnO・(Cr、Al、Ti)が生成するため、その上限は0.01%以下とする。好ましくは0.008%以下とする。
以上の元素に加えて、Mg、Ca、Ni、Co、Cu、B、Sn、REMの1種または2種以上を含んでも良い。これら元素は必ずしも含まなくてもよいので下限は0%である。これらの元素を含んだ場合の効果を以下に示す。
Mg:0.0020%以下
Mgは、脱酸および脱硫に有効な元素であるが、過剰な添加によりCaO系介在物を含む粗大介在物を形成する。また、CaO系介在物中のAlと結合してMgO・Alを形成する。そのため上限を0.0020%以下とした。MgO・Alを極力抑制するために好ましくは0.0010%以下とする。効果を確実に得るため含有量の下限を0.0001%としてもよい。
Ca:0.0020%以下
Caは、脱酸および脱硫に有効な元素であるが、過剰な添加によりCaO系介在物を含む粗大介在物を生成させる。そのため、上限を0.0020%以下とした。CaSの生成を低減するために、好ましくは0.0010%以下とする。効果を確実に得るため含有量の下限を0.0001%としてもよい。
Ni:0.50%以下
Niは、凝固偏析することなくオーステナイトを安定化元素させるため添加できる。また、焼入れ加熱時にC、N、Mn等の他のオーステナイト安定化元素は、脱炭、脱窒や酸化によって表層部から減少し表層部にフェライトを生成する場合があるが、Niは表層部から減少することがなく表層部のフェライト生成を抑制する効果がある。多量のNi含有は、熱延焼鈍板において固溶強化によるプレス成形性の低下を招くおそれがあるため、Niの含有量は0.50%以下、好ましくは0.30%以下である。一方、焼き入れ性を担保し、孔食の進展抑制にも有効な元素であるので、好ましくは0.01%以上、または0.05%以上含有しても良い。
Co:1.00%以下
Coは鋼材の強度を高める作用があるが、過剰な添加は靱性の低下を招くため、その上限を1.00%とする。効果を確実にするため含有量の下限を0.05%にしてもよい。
Cu:0.50%以下
Cuは、活性溶解を抑制して耐食性を担保することができるが、過度の含有は耐食性を低下させるとともに、鋳片割れが発生するなど製造性も劣化するため、0.50%以下とした。Cuは焼入れ焼き戻し時において析出し不動態皮膜の健全性を損なう事により耐食性を損なう場合があるため、0.20%以下にすることが好ましい。効果を確実にするため含有量の下限を0.01%以上にしてもよい。耐孔食性指数PRE向上対策のために0.02%以上とすることが好ましい。
B:0.0050%以下
Bは、熱間加工性の向上に有効な元素であるが、過度に添加すると炭化物と複合析出して焼入れ性を低下させるため、その上限は0.05%以下とする。効果を確実にするため含有量の下限を0.0002%にしてもよい。
Sn:0.20%以下
Snは、偏析元素であり、母地や析出物との界面にも濃化して析出物の成長粗大化を抑制するため鋭敏化を抑制し耐食性を向上させる効果が得られるが、Snはオーステナイト相への固溶限が小さく普通鋼では熱延割れや疵の原因になることが知られている、Sn量は極力低減することが望ましいとされるため、0.200%以下含有してもよい。効果を確実にするため含有量の下限を0.005%にしてもよい。
REM:0.0020%以下
REM(希土類金属:Rare-Earth Metal)は、Oと親和性が高いため、表面性状の悪化原因となるMgO・Alスピネル量を低減できるが、鋳造時のノズル閉塞の原因となるため、含有量を0.0020%以下とする。効果を確実にするため含有量の下限を0.0001%にしてもよい。
なおREMは、Sc、Yおよびランタノイドからなる合計17元素を指し、REMの含有量は、これらの17元素の合計含有量を意味する。
上記鋼成分の残部はFeおよび不可避的不純物である。ここで不可避的不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料をはじめとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
<介在物>
本発明で対象とする介在物は、炭化物、酸化物、硫化物で構成されており、これらが単独または複合した形態になっている。このうち酸化物と硫化物は互いに相の区別のつかない場合がほとんどであるため、単独で存在する場合も複合している場合も含めて酸化物と硫化物を総称して酸硫化物と称する。
[介在物の測定方法]
以下、介在物の測定方法について説明する。鋼板の圧延方向と平行で厚み方向と垂直な断面を観察した。短径が15μm以上の介在物については、光学顕微鏡を用いて1000mm以上の面積を観察することで、介在物の大きさと個数を計数(計測)する。短径が3μm以上の酸硫化物については、介在物をSEM-EDSで分析することで100個以上を観察して、酸硫化物の大きさおよび組成と個数を同定する。この際、観察面積も記録しておく。
ここで、介在物の短径とは、圧延方向と平行で、厚み方向と垂直な断面を観察面としたときに、圧延方向と垂直な方向(鋼板幅方向)における介在物の最大長さを意味する。介在物サイズの評価に短径を用いる理由は、圧延方向と平行な方向の大きさは圧下率の影響を大きく受けるため一定の評価が困難であり、一方、圧延方向と垂直な方向の大きさは圧延では大きく変化しないため、本発明のポイントである製鋼段階における介在物制御の結果を反映していると考えるためである。なお、介在物の評価方法として一般に用いられるJIS G 0555では2つ以上の介在物が離れて存在している場合でも、種類と距離によっては一つの介在物とみなす場合があるが、本発明においては、2つ以上の介在物が離れて存在している場合は別個の介在物とみなす。
次に、介在物の個数や酸硫化物部分の組成と表面性状の関係について限定理由を説明する。
[短径が15μm以上の介在物が0.05個/mm以下]
短径が15μm以上の介在物は個数が少なくても表面疵の発生頻度が高く、研磨性も悪くなりやすいため、その上限を0.05個/mmとする。好ましくは0.03個/mm以下である。
[短径が3μm以上の酸硫化物が5個/mm以下]
介在物のうち酸硫化物は硬質介在物が多く、特に短径が3μm以上の酸硫化物は表面性状に影響を与え易くなる。短径3μm以上の酸硫化物が多数存在すると、表面疵の発生頻度が高く、研磨性も悪くなりやすいため、その上限を5個/mmとする。好ましくは3個/mm以下である。
[短径が3μm以上の酸硫化物のうち、CaO、Al、SiO、MnOの1種以上の合計含有量が60質量%以上である酸硫化物の個数割合が75%以上]
さらに酸硫化物のうち、硬質なスピネル系酸化物(MgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti))を低減させ、低融点で軟質なCaO-AlやMnO-SiOを生成させることにより、圧延後に微細化させることができる。即ち、短径3μm以上の酸硫化物のうち、CaO、Al、MnO、SiOの合計含有量が少ない場合(特に60%未満の場合)、MgO・AlやMnO・(Cr、Al、Ti)の硬質介在物が存在する可能性が高くなり、表面疵や研磨性低下につながる。そのため、酸硫化物のうちCaO、Al、SiO、MnOを合計で60質量%以上含んでいる場合は、軟質介在物が多くなり硬質介在物を含む可能性が低くなるため、表面疵の低減や研磨性向上につながる。好ましいCaO、Al、SiO、MnOの合計含有量は65%以上、さらに好ましくは70%以上であるとよい。
短径が3μm以上の酸硫化物のうち、上記組成を有する(CaO、Al、SiO、MnOの合計が60質量%以上含んでいる)酸硫化物の割合が75%以上、好ましくは80%以上、85%以上、または90%以上であれば、表面疵発生を抑制し、研磨性も良好なマルテンサイト系ステンレス鋼板を得ることができる。
<製造方法>
本発明の鋼板は、マルテンサイト系ステンレス鋼板の通常の製造方法を用いて製造される熱延鋼板または冷延鋼板である。熱延鋼板の場合は、溶解・鋳造―熱延―熱延板焼鈍・酸洗の工程で製造され、冷延鋼板は引き続いて冷延―冷延板焼鈍・酸洗により製造される。
上記した所定の成分になるよう調整した鋼を溶製する。精錬時のスラグ組成を1.2≦(%CaO)/(%Al)≦2.0、溶鋼1tonあたりのスラグ量を10kg以上で精錬することでO、S濃度を低減するとともに、Al、Ti、Si等の各種脱酸元素、Ca、Mg,Mn、Cr等の酸硫化物を形成する元素の含有量を適正範囲に制御して、短径が3μm以上の酸硫化物においてCaO、Al、SiO、MnOを合計で60質量%以上含む酸硫化物の個数割合が75%以上とすることができ、MgO・Alなどのスピネル系酸化物を抑制することができる。
上記に加えて、C、N、Nbの含有量を適正範囲に制御することで液相線温度(TLL)と固相線温度(TSL)の温度差△T0(凝固温度範囲)を70℃以上とすることができ、短径が15μm以上の介在物を0.05個/mm以下とすることができる。凝固温度範囲△T0は鋼成分から熱力学データ集や商用の熱力学計算ソフトを用いて簡便に算出可能である。
上記に加えて、冷却速度を制御して鋳造を行う。鋳片表面から鋳片中心方向へ10mm位置における1400~1000℃での平均冷却速度を50℃/分以下に制御することで、短径が3μm以上の酸硫化物においてMnO・(Cr、Al、Ti)などのスピネル系酸化物の硬質介在物を抑制して個数を5個/mm以下とすることができる。平均冷却速度は好ましくは30℃/分以下、より好ましくは15℃/分以下である。
鋳造後は、常法の製造条件により鋼板を製造すればよい。例えば、スラブを1100~1300℃で加熱後、粗圧延および仕上げ圧延により板厚を2~8mmに仕上げる。熱延板焼鈍工程は通常の箱焼鈍を利用して750~900℃で焼鈍を行う。酸洗して、表面のスケールを除去して熱延鋼板とする。冷延鋼板の場合は引き続き、冷延、最終焼鈍を行って製品とする。
以下、実施例により発明の効果を説明するが、本発明は以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
本実施例では、表1に示す成分組成の鋼を溶製して200mm厚のスラブに連続鋳造した。精錬時のスラグ組成、溶鋼1tonあたりのスラグ量、凝固温度範囲△T0、連続鋳造時の鋳片の冷却速度を表2に示す。鋳片冷却速度は鋳片表面から鋳片中心方向へ10mm位置における1400~1000℃での平均冷却速度は、伝熱解析を用いた数値計算により評価した。得られたスラブを1150℃~1250℃に2時間加熱後、熱間圧延を行って板厚5mmの熱延鋼板とした。その後850℃で熱延板焼鈍を行い、酸洗し、冷間圧延して板厚3.0mmとした。この薄板コイルを最終焼鈍、酸洗して製品板の冷延板とした。
<介在物の評価>
得られたステンレス鋼板(冷延板)から試料を切り出し、試料表面を観察するため、観察面が圧延方向に平行で厚さ方向に垂直な面になるよう鏡面仕上げを行った。短径が15μm以上の介在物個数を評価する際は、光学顕微鏡を用いて1000mm以上の面積を観察した。短径が3μm以上の酸硫化物を含む介在物観察する際には、SEM-EDSを用いて無作為に100個以上選択し、酸硫化物部分の組成評価を行った。この際、測定面積を記録することで単位面積当たりの個数を算出した。
<鋼板表面性状の評価>
[表面疵]
表面疵の品質評価は得られたステンレス鋼板(冷延板)の全長を1m間隔で区切って目視で検査し、長さ10mm以上の表面疵が認められた領域の、全領域に占める割合が2%未満である場合を良好として○、2~5%である場合を×、5%超である場合を××とした。
[研磨性]
鋼板表面を観察するため得られたステンレス鋼板(冷延板)から試料を切り出し、当該試料表面を鏡面仕上げした。JIS Z 8741に準拠した反射角20度の鏡面光沢度(反射率)を測定して研磨性を評価した。光沢度が1280以上である場合を良好な品質として〇、光沢度が1280未満である場合を×とした。
評価結果を表2に示す。符号B1~B27は鋼成分および介在物量・組成・サイズが本発明の条件を満たしていたため、表面疵および研磨性の評価が良好だった。
符号b1~b27は鋼成分および/または介在物量・組成・サイズが本発明の条件を満たしていないため、表面疵または研磨性の何れかの評価が劣位だった。
本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼を使用する全ての産業において利用することができる。例えば、刃物や食器などに利用することができる。

Claims (2)

  1. 質量%にて、
    C:0.10~0.60%、
    Si:0.05~1.00%、
    Mn:0.10~1.00%、
    P:0.040%以下、
    S:0.008%以下、
    Cr:11.0~20.0%、
    N:0.01~0.10%、
    Mo:0.01~1.00%、
    V:0.01~0.50%、
    Nb:0.001~0.02%、
    Al:0.0010%~0.0250%、
    O:0.0010~0.0080%、
    Ti:0.001~0.010%、
    Mg:0.0020%以下、
    Ca:0.0020%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Co:1.00%以下、
    Cu:0.50%以下、
    B:0.0050%以下、
    Sn:0.200%以下、および
    REM:0.0020%以下、を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなり、
    鋼板の表面において、短径が15μm以上の介在物が0.05個/mm以下、
    短径が3μm以上の酸硫化物が5個/mm以下であり、
    前記短径が3μm以上の酸硫化物のうち、CaO、Al、SiO、およびMnOの1種以上の合計含有量が60質量%以上である酸硫化物の個数割合が75%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼板。
  2. さらに、質量%で、
    Ni:0.01~0.50%、
    Co:0.05~1.00%、
    Cu:0.01~0.50%、
    B:0.0002~0.0050%、
    Sn:0.005~0.200%、および
    REM:0.0001~0.0020%から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼板。
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