JP2024056391A - 被覆金属部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 塗膜下腐食の進行を抑制することができる優れた腐食抑制効果を有し、且つ外観面においても美観に優れた被覆金属部材およびその製造方法を提供する。【解決手段】 金属部材30と金属部材の表面を被覆する電着塗膜10とを備える被覆金属部材1であって、電着塗膜10は、腐食抑制剤が収容されたマイクロカプセル20を含有し、被覆金属部材1の板厚方向において電着塗膜内のマイクロカプセル20は金属部材30側に偏在している。このような電着塗膜10は、電解液中に金属部材30を浸漬し、金属部材を陽極として通電して金属部材の表面にアニオン型マイクロカプセル20を電着させた後、続いて金属部材を陰極として通電して金属部材の表面にカチオン電着塗料を電着させて塗膜を形成し、焼付硬化させることで得ることができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、被覆金属部材およびその製造方法に関する。
自動車の鋼板などの金属部材の表面を保護するために、金属部材の表面は塗膜で覆われているが、図12(a)に示すように、走行時の跳ね石等により塗膜80に破断や傷80Bが生じて鋼板30の一部が露出してしまうことがある。そうすると、図12(b)に示すように、塗膜80と鋼板30の界面に沿って塗膜下腐食31が進行し、腐食生成物または発生したガス(H等)32が塗膜80を持ち上げ、半球状または糸状の塗膜の膨れが発生し、自動車の外観品質を低下させる。
このような塗膜下腐食を抑制する技術として、腐食抑制剤を内包したマイクロカプセルを塗膜中に含有させた塗装が提案されている。例えば、特許文献1には、樹脂組成物から得られる樹脂皮膜を金属板の少なくとも片面に備えた樹脂塗装金属板であって、樹脂組成物は、数平均分子量が1000~100,000である水溶性の酸性樹脂と、平均粒径5μm以下の多孔質微粒子にポリフェノール化合物が内包されたマイクロカプセルとを含有することを特徴とする耐食性および表面性状に優れた樹脂塗装金属板が記載されている。
また、内包物を有するマイクロカプセル自体については種々の技術が提案されている。例えば、特許文献2には、粉体粒子をコアとし、このコアを水分散に必要な電荷を持っている水性樹脂層で被覆してなる水分散可能な粉体マイクロカプセルであって、粉体粒子と水性樹脂層との間に、縮合や付加反応により自己架橋および/または前記水性樹脂と架橋した水不溶性の熱硬化性架橋剤の架橋層が介在している粉体マイクロカプセルが記載されている。
特開2007-237460号公報 特開昭63-171637号公報
特許文献1に記載されているような技術では、例えば、図13に示すように、鋼板30の表面の塗膜80に破断や傷80Bが生じると、破断や傷が発生した部分の塗膜80中のマイクロカプセル81の外殻が破壊され、内包している腐食抑制剤が流出する。この腐食抑制剤としては、多種多様なものが用いられているが、多くのものは鋼板30の露出した表面に対し、保護膜81Sを形成する効果を持たせている。
しかしながら、塗膜80に破断や傷80Bが発生した直後は、腐食抑制剤の効果が得られるものの、徐々に保護膜81Sの効果が失われて塗膜下腐食31が生じると、図14に示すように、鋼板30の表面近傍にはマイクロカプセル81はわずかにしか存在しないため、腐食抑制剤の流出はほとんどなく、よって、塗膜下腐食31が進行してしまうという問題がある。
このように破壊されるマイクロカプセルは塗膜の破断や傷の発生部の近傍に限られるため、十分な腐食抑制効果を得るためには、マイクロカプセルの含有量を多くすることが考えられる。しかしながら、このようにマイクロカプセルの含有量を多くすると、コストの増加に加えて、塗膜外観面にマイクロカプセルによる凹凸が生じて外観品質を低下させるという不具合も生じ得る。
また、マイクロカプセルを含有する塗料の塗装方法として、例えば、スプレー塗装を用いることもできるが、スプレー塗装では、電着塗装と異なり、袋構造部等の直接スプレーできない箇所については均一な塗膜を得るのが難しい。更に、スプレー塗装は、塗膜と鋼板との密着性が電着塗装に比べて低く、塗膜下腐食が進行しやすいという問題もある。
電着塗装は、一般的に、塗装する対象物(鋼板)を外部電源に接続するとともに、正の電荷を持つ水性樹脂(カチオン電着塗料)、または負の電荷を持つ水性樹脂(アニオン電着塗料)を含む電着液中に浸漬する。そして、鋼板の電位を負極(カチオン電着)、または正極(アニオン電着)とすることで電気泳動により鋼板に電着塗料を吸着させ、塗膜を形成する。この方法では、鋼板表面へマイクロカプセルを吸着させるためには、カチオン電着にはカチオン型マイクロカプセル、アニオン電着にはアニオン型マイクロカプセルを用いる必要がある。特許文献2には、電荷を持つマイクロカプセルが記載されているが、このマイクロカプセルを用いた電着塗装については説明されていない。
マイクロカプセルを用いて電着塗装をする場合、図15に示すように、水等の極性溶媒74に電着塗料73とマイクロカプセル81を含む電着液75を用意し、鋼板30を外部電源76に接続するとともに、この電着液75に浸漬する。そして通電を行うと、マイクロカプセル81は電着塗料73に比べて著しくサイズが大きいために電着液75による抵抗が大きく、電気泳動で移動する速度が電着塗料73より遅い。このため、マイクロカプセル81の鋼板30表面への到達が電着塗料73より遅れることから、これにより得られる塗膜は、図16に示すように、鋼板30との界面近傍にはマイクロカプセル81が少なく、その反対側の外観面側にマイクロカプセル81が多い塗膜80となってしまう。
このように塗膜80中のマイクロカプセル81が鋼板30との界面近傍に少ないと、上述したように、塗膜下腐食が発生した際に破壊されるマイクロカプセルはわずかであり、塗膜下腐食の進行を抑制する効果は微小である。更に、塗膜80の外観面側のマイクロカプセル81が多いため、外観面に凹凸が生じやすくなり、塗装の美観を損ねる不具合も生じる。
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、塗膜下腐食の進行を抑制することができる優れた腐食抑制効果を有し、且つ外観面においても美観に優れた被覆金属部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、その一態様として、金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材であって、前記電着塗膜は、腐食抑制剤が収容されたマイクロカプセルを含有し、前記被覆金属部材の板厚方向において前記電着塗膜内の前記マイクロカプセルは前記金属部材側に偏在している。
本発明は、別の態様として、金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材の製造方法であって、極性溶媒に、腐食抑制剤が収容された負の電荷を有するアニオン型マイクロカプセルと、カチオン電着塗料とを混合して電解液を作製する工程と、電解槽に導入した前記電解液中に金属部材を浸漬し、前記金属部材を陽極として通電して前記金属部材の表面に前記アニオン型マイクロカプセルを電着させる第1の電着塗装工程と、前記電解槽にて、前記金属部材を陰極として通電して前記金属部材の表面に前記カチオン電着塗料を電着させる第2の電着塗装工程と、前記金属部材の表面に電着した前記カチオン電着塗料を焼付硬化させ、電着塗膜とする工程とを含む。
本発明に係る金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材の製造方法は、また別の態様として、極性溶媒に、腐食抑制剤が収容された負の電荷を有するカチオン型マイクロカプセルと、アニオン電着塗料とを混合して電解液を作製する工程と、電解槽に導入した前記電解液中に金属部材を浸漬し、前記金属部材を陽極として通電して前記金属部材の表面に前記カチオン型マイクロカプセルを電着させる第1の電着塗装工程と、前記電解槽にて、前記金属部材を陰極として通電して前記金属部材の表面に前記アニオン電着塗料を電着させる第2の電着塗装工程と、前記金属部材の表面に電着した前記アニオン電着塗料を焼付硬化させ、電着塗膜とする工程と含む。
このように本発明によれば、被覆金属部材の板厚方向において電着塗膜内のマイクロカプセルが金属部材側に偏在していることから、塗膜下腐食の進行を抑制することができる優れた腐食抑制効果を有し、且つ外観面においても美観に優れる。
本発明に係る被覆金属部材の一実施の形態を模式的に示す断面図である。 図1に示す被覆金属部材の腐食抑制効果を模式的に示す断面図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、液中硬化被覆法によるマイクロカプセル作製工程のうちの架橋剤被覆工程を説明するための模式図である。 液中硬化被覆法によるマイクロカプセル作製工程のうちの架橋剤硬化工程を説明するための模式図である。 液中硬化被覆法によるマイクロカプセル作製工程のうちの遠心分離工程を説明するための模式図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、ポリアニリン法によるマイクロカプセル作製工程を説明するための模式図である。 ポリアニリン法におけるポリアニリン系ポリマーの(a)ドープ前の非導電状態、(b)酸のドープ後、(c)ドープ完了の導電状態を説明する模式図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、電着液作製工程を説明するための模式図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、電着塗装工程の初期状態を説明するための模式図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、第1の電着塗装工程を説明するための模式図である。 本発明に係る被覆金属部材の製造方法の一実施の形態において、第2の電着塗装工程を説明するための模式図である。 従来の被覆金属部材の一例を模式的に示す断面図である。 従来の被覆金属部材の別の例を模式的に示す断面図である。 図13に示す従来の被覆金属部材の腐食抑制効果を模式的に示す断面図である。 マイクロカプセルを用いて電着塗装をする際に生じる問題点を説明する模式図である。 図15の電着塗装によって得られる被覆金属部材を模式的に示す断面図である。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る被覆金属部材およびその製造方法の一実施の形態について説明する。なお、図面は、構成が簡潔で明瞭であるように図示したものであり、必ずしも縮尺通りに描いたものではない。
図1に示すように、本実施の形態の被覆金属部材1は、金属部材30と、金属部材30の表面を被覆する電着塗膜10とを備える。電着塗膜10は、腐食抑制剤が収容されたマイクロカプセル20を含有しており、このマイクロカプセル20は被覆金属部材1の板厚方向において電着塗膜10内の金属部材30側に偏在している。各構成について以下に詳細に説明する。
電着塗膜10は、電着塗装によって得られる塗膜であり、電着塗装としては、カチオン電着塗料又はアニオン電着塗料のいずれも使用することができる。アニオン電着塗料としては、水中で負の電荷を持ち、導電性がある熱硬化性の水性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン系樹脂系塗料や、アクリル系樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等を用いることができる。また、カチオン電着塗料としては、水中で正の電荷を持ち、導電性がある熱硬化性の水性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリアミド-エポキシ系樹脂系塗料や、アクリル系樹脂塗料、ポリウレタン樹脂系塗料等を用いることができる。よって、電着塗膜10のマイクロカプセル20以外の部分は、電着塗料が硬化した電着樹脂11で構成されている。
マイクロカプセル20は、粉末状の腐食抑制剤、または液状の腐食抑制剤を含浸させた粉末を内包するものである。腐食抑制剤としては、図2に示すように、マイクロカプセル20が破壊された際に、マイクロカプセル20から放出されて保護膜20Sを形成するものであれば特に限定されないが、例えば、粉末状のものであれば、カルボン酸塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩、酸化チタン、タンニン、カオリナイトなどを用いることができ、液状のものであれば、有機窒素化合物(ブチルアミン等)、有機酸素化合物(ポリオキシエチレンノニルエーテル等)、有機硫黄化合物(エチルメルカプタン等)などを用いることができる。
腐食抑制剤を包むマイクロカプセル20の外殻としては、正または負の電荷を持つことができ、且つ図2に示すように、電着塗膜10に破断や傷10Bが発生した場合に破壊されて、内包する腐食抑制剤を放出できるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを用いることができ、詳しくは後述するが、二層構造とすることが好ましく、例えば、外殻の内側を架橋剤が硬化した架橋層とし、外側を電着塗料層としてもよい。この時、電着塗膜10がカチオン電着塗料であれば、電着塗料層はアニオン電着塗料とし、電着塗膜10がアニオン電着塗料であれば、電着塗料層はカチオン電着塗料とすることが好ましい。また、外殻の内側をポリアニリン系ポリマーの層とし、外側を硫酸や環状構造を有する有機酸の陰イオン層としてもよい。
マイクロカプセル20の大きさは、例えば、0.1~10μmの範囲が好ましく、1~3μmの範囲がより好ましい。
マイクロカプセル20は、電着塗膜10内において金属部材30との界面に接する位置に存在することが好ましく、特に金属部材30に付着または融着していることが好ましい。このようにマイクロカプセル20が金属部材30に付着または融着していることで、図2に示すように、電着塗膜10に破断や傷10Bが発生し、更に金属部材30に塗膜下腐食31が発生した場合に、塗膜下腐食31の進行によりマイクロカプセル20が確実に破壊され、内包する腐食抑制剤の流出が順次続く。よって、塗膜下腐食31により露出した鋼板30の表面にも保護膜20Sを形成し、腐食抑制効果を継続的に発揮することができる。なお、マイクロカプセル20が金属部材30に付着または融着していなくても、塗膜下腐食31の進行により電着塗膜10の金属部材30近傍部分の破断が進むことで、この部分のマイクロカプセル20が破壊されることから、内包する腐食抑制剤が継続的に流出して保護膜20Sを形成することができる。
金属部材30は、電着塗装が可能なものであれば特に限定されず、例えば、鋼板や、アルミニウム板、マグネシウム板などを用いることができる。なお、金属部材30は、電着塗装が可能であれば、表面処理されたものであってもよい。
次に、本実施の形態の被覆金属部材の製造方法について説明する。本製造方法は、マイクロカプセル作製工程と、電着液作製工程と、電着塗装工程と、焼付工程とを含む。電着塗装工程は、第1の電着塗装工程と第2の電着塗装工程とに分けられる。これら工程について、以下に詳しく説明する。
[1.マイクロカプセル作製工程]
マイクロカプセル作製工程は、外殻に電荷を持ち、電解液中で電気泳動可能なマイクロカプセルを作製できる製造法であれば特に限定されないが、例えば、後述する液中硬化被覆法やポリアニリン法によって作製することができる。
[1A.液中硬化被覆法]
液中硬化被覆法は、粉末状の腐食抑制剤、または液体の腐食抑制剤を含浸させた粉末を、マイクロカプセルの内包物とすることができるものである。液中硬化被覆法では、マイクロカプセル作製工程は、架橋剤被覆工程と、架橋剤硬化工程と、遠心分離工程との3つの小工程を含む。
先ず、架橋剤被覆工程では、図3に示すように、液体状の架橋剤22Lが充填された漏斗状容器40の本体41に、粉末状の腐食抑制剤、または液体の腐食抑制剤を含浸させた粉末21P(以下、単に「腐食抑制剤」という)を投入する。なお、腐食抑制剤を含浸させる粉末としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、シリカ、カーボン等を用いることができる。また、架橋剤22Lとしては、水不溶性で、60~100℃にて硬化する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、メラミン樹脂等を用いることができる。
そして、本体41の開口部から加圧機43にて架橋剤22Lおよび腐食抑制剤21Pを加圧して漏斗状容器40の微小流路42から押し出すことで、腐食抑制剤21Pが架橋剤22Lに被覆された形態の粒子20Aを得ることができる。なお、この図3の方法以外にも、例えば、特開2013-71080号公報や特開2013-81929号公報等に開示されている方法でも、腐食抑制剤が架橋剤に被覆された粒子を得ることができる。
次に、架橋剤硬化工程では、図4(a)に示すように、水等の極性溶媒24Lに十分な量のアニオン電着塗料23Nが含まれているスラリー24を撹拌槽50に充填し、この撹拌槽50に上記の架橋剤に被覆された腐食抑制剤の粒子20Aを投入する。アニオン電着塗料23Nとしては、上述した電着塗膜10に用いるアニオン電着塗料と同様の樹脂系電着塗料を用いることができる。
そして、撹拌機52で攪拌しながら60~100℃に加熱する。これにより、図4(b)に示すように、架橋剤22Lはアニオン電着塗料23Nが付着した状態で硬化し、外殻が二層構造(すなわち、外側に電着塗料層23、内側に架橋剤が硬化した架橋層22)となるアニオン型マイクロカプセル20が形成される。電着塗料層23と架橋層22、腐食抑制剤21と架橋層22は、どちらも表面同士が化学的に架橋され、強固に結合される。図4に示すように、アニオン電着塗料23Nを用いた場合は、アニオン型マイクロカプセル20となり、一方、アニオン電着塗料23Nに代えてカチオン電着塗料を用いた場合はカチオン型マイクロカプセルとなる。カチオン電着塗料としては、上述した電着塗膜10に用いるカチオン電着塗料と同様の樹脂系電着塗料を用いることができる。
このようにして得られたアニオン型マイクロカプセル20は、未反応のアニオン電着塗料23Nを含むスラリーの状態で、60℃以下に冷却した後、図5に示すように、遠心分離機60に導入する。そして、遠心分離工程にて、このスラリーを遠心分離し、アニオン電着塗料23Nに対して比重の大きいマイクロカプセル20を多く含むスラリー61を抽出する。残りのアニオン電着塗料23Nを多く含むスラリー62は、架橋剤硬化工程の撹拌槽50に戻して、再利用することができる。
[1B.ポリアニリン法]
ポリアニリン法は、液状の腐食抑制剤、または固体の腐食抑制剤を溶解または分散させた液体(例えば、水性、有機溶剤、無機溶剤)を内包物とすることができるものである。ポリアニリン法は、特表2021-530610号公報に記載されている方法であり、その概要は、図6に示すように、腐食抑制剤21の内包物を有するポリアニリン系ポリマー25の外殻を持つマイクロカプセル20Bを作製した後(図6(a))、この外殻表面に酸(硫酸またはベンゼンスルホン酸など)をドープすることにより、ポリアニリン系ポリマー25の外側に負の電荷を持つ陰イオン層26、27を形成する(図6(b)又は(c))という方法である。以下により詳細に説明する。
ポリアニリン系ポリマーは、図7(a)に示すように、ベンゼン環とキノノイド環が存在する単鎖状のポリマーであり、ベンゼン環とベンゼン環の間はアミド構造、ベンゼン環とキノノイドの間はイミド構造で連結されている。図7(b)に示すように、水中にてこのポリアニリン系ポリマーを含む水溶液に任意の酸(なお、図7(b)では、硫酸を使用した例を示す)を加えてドープすると、イミド構造の窒素原子の最外殻にある一対の非共有電子対にHイオンが誘引されて共有結合を生じる。これをトリガーとしてドープが完了すると、図7(c)に示すように、イミド構造およびキノノイド環は、それぞれより安定しているアミド構造およびベンゼン環へ変化する。この変化により、ポリアニリン系ポリマーは非導電状態から、導電状態(ポリアニリン系ポリマー25中にて正電荷が移動可能な状態)へ変わる。
このHイオンがドープされてイミド構造から変化したアミド構造は、正の電荷を持っているため、酸の陰イオン(例えば、硫酸を使用した場合は、HSO イオン)とイオン結合が生じ、図6(b)に示すように、マイクロカプセル20外殻外側に負の電荷を持つ陰イオン層26が形成される。内側のポリアニリン系ポリマー25は正電荷を持つため、マイクロカプセル20全体として電荷は0となるが、電極が十分に近ければ外殻外側の負の電荷により電気泳動が生じるアニオン型マイクロカプセル20となり、電着塗装へ適用することができる。
ドープに用いる酸は、任意のものが使用可能であるが、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等の環状構造を有する有機酸を用いると、図6(c)に示すように、陰イオン層27が厚くなり、内側のポリアニリン系ポリマー25の正電荷の影響が小さくなるため、硫酸等の無機酸を用いるよりも電気泳動しやすいアニオン型マイクロカプセル20とすることができる。
[2.電着液作製工程]
電着液作製工程は、液中硬化被覆法またはポリアニリン法などによって作製したアニオン型マイクロカプセル20を含むスラリー71と、カチオン電着塗料73を含む溶液72とを混合し、アニオン型マイクロカプセル20とカチオン電着塗料73とを含む電解液75を得る。スラリー17および溶液72の溶媒としては、水などの極性溶媒を用いることができ、よって、電解液75の溶媒を水などの極性溶媒とすることができる。なお、マイクロカプセル作製工程でカチオン型マイクロカプセルを作製した場合は、アニオン電着塗料と混合して電着液を作製する。
[3.電着塗装工程]
電着塗装工程では、先ず、図9に示すように、塗装の対象物である金属部材30を外部電源76に接続するとともに、電着液75中に浸漬する。そして、第1の電着塗装工程と、第2の電着塗装工程とを順に行うことで、アニオン型マイクロカプセル20が金属部材30側に偏在するように電着塗装を行うことができる。
第1の電着塗装工程では、図10に示すように、外部電源76により金属部材30の電位を陽極とすることで、金属部材30の表面にアニオン型マイクロカプセル20を電気泳動により吸着させる。吸着直後に、金属部材30からアニオン型マイクロカプセル20外殻へと矢印77で示すように通電することから、ジュール熱が発生する。これにより、外殻の一部が金属部材30の表面に融着するとともに、アニオン型マイクロカプセル20は電荷を失う。第1の電着塗装工程では、カチオン電着塗料73は、陽極となっている金属部材30から遠ざかる方向に電気泳動するため、アニオン型マイクロカプセル20の吸着、融着を妨げない。
次に、第2の電着塗装工程では、図11に示すように、外部電源76により、金属部材30の電位を陰極とすることで、金属部材30の表面にカチオン電着塗料73を吸着させることにより、アニオン型マイクロカプセル20を含有するように塗膜が形成される。第2の電着塗装工程では、アニオン型マイクロカプセル20は、陰極となっている金属部材30から遠ざかる方向に電気泳動するため、第1の電着塗装工程で金属部材30に吸着または融着しなかったアニオン型マイクロカプセル20は、カチオン電着塗料73によって形成される塗膜にはほとんど取り込まれない。
なお、アニオン型マイクロカプセル20の場合の電着塗装工程について説明してきたが、カチオン型マイクロカプセルの場合は、第1の電着塗装工程では、金属部材の電位を陰極にすることで、金属部材の表面にカチオン型マイクロカプセルを電気泳動により吸着させ、融着させることができる。そして、第2の電着塗装工程では、金属部材の電位を陽極とすることで、金属部材の表面にアニオン電着塗料を吸着させることにより、カチオン型マイクロカプセルを含有するように塗膜が形成され、よって、アニオン型マイクロカプセルの場合と同様にマイクロカプセルが金属部材側に偏在する電着塗装を行うことができる。
[4.焼付工程]
そして、このように得られたマイクロカプセルが金属部材側に偏在した電着塗装の塗膜に対し、電着塗料が硬化する温度に加熱することにより、金属部材の塗装側表面と、マイクロカプセル外殻と、電着塗料との三者が融着して、強固な電着塗膜が完成する。よって、図1に示すマイクロカプセル20が金属部材30側に偏在した、特にその多くが金属部材30に付着した電着塗膜10を得ることができる。
1 被覆金属部材
10 電着塗膜
20 マイクロカプセル(アニオン型マイクロカプセル)
20S 保護膜
21 腐食抑制剤
22 架橋層
23 電着塗料層
25 ポリアニリン系ポリマー
26、27 陰イオン層
30 金属部材(鋼板)
31 塗膜下腐食
40 漏斗状容器
50 撹拌槽
60 遠心分離機
73 カチオン電着塗料
75 電着液
80 塗膜
81 マイクロカプセル
81 保護膜

Claims (9)

  1. 金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材であって、
    前記電着塗膜が、腐食抑制剤が収容されたマイクロカプセルを含有し、前記被覆金属部材の板厚方向において前記電着塗膜内の前記マイクロカプセルが前記金属部材側に偏在している、被覆金属部材。
  2. 前記電着塗膜内の前記マイクロカプセルが前記金属部材の表面に付着しているものを含む、請求項1に記載の被覆金属部材。
  3. 前記マイクロカプセルの表面がアニオン電着塗料で被覆されており、前記電着塗膜がカチオン電着塗料である、請求項1又は2に記載の被覆金属部材。
  4. 前記マイクロカプセルの表面がカチオン電着塗料で被覆されており、前記電着塗膜がアニオン電着塗料である、請求項1又は2に記載の被覆金属部材。
  5. 金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材の製造方法であって、
    極性溶媒に、腐食抑制剤が収容された負の電荷を有するアニオン型マイクロカプセルと、カチオン電着塗料とを混合して電解液を作製する工程と、
    電解槽に導入した前記電解液中に金属部材を浸漬し、前記金属部材を陽極として通電して前記金属部材の表面に前記アニオン型マイクロカプセルを電着させる第1の電着塗装工程と、
    前記電解槽にて、前記金属部材を陰極として通電して前記金属部材の表面に前記カチオン電着塗料を電着させる第2の電着塗装工程と、
    前記金属部材の表面に電着した前記カチオン電着塗料を焼付硬化させ、電着塗膜とする工程と
    を含む製造方法。
  6. 金属部材と前記金属部材の表面を被覆する電着塗膜とを備える被覆金属部材の製造方法であって、
    極性溶媒に、腐食抑制剤が収容された負の電荷を有するカチオン型マイクロカプセルと、アニオン電着塗料とを混合して電解液を作製する工程と、
    電解槽に導入した前記電解液中に金属部材を浸漬し、前記金属部材を陽極として通電して前記金属部材の表面に前記カチオン型マイクロカプセルを電着させる第1の電着塗装工程と、
    前記電解槽にて、前記金属部材を陰極として通電して前記金属部材の表面に前記アニオン電着塗料を電着させる第2の電着塗装工程と、
    前記金属部材の表面に電着した前記アニオン電着塗料を焼付硬化させ、電着塗膜とする工程と
    を含む製造方法。
  7. 腐食抑制剤の粉体粒子を架橋剤で被覆する工程と、
    前記架橋剤で被覆された粉体粒子を、アニオン電着塗料に浸漬して、前記腐食抑制剤が収容されたアニオン型マイクロカプセルを作製する工程と
    を更に含む、請求項5に記載の被覆金属部材の製造方法。
  8. 腐食抑制剤をポリアニリン系ポリマーで被覆する工程と、
    前記ポリアニリン系ポリマーで被覆された腐食抑制剤を、酸溶液に浸漬して酸をドープし、前記腐食抑制剤が収容されたアニオン型マイクロカプセルを作製する工程と
    を更に含む、請求項5に記載の被覆金属部材の製造方法。
  9. 前記酸が環状構造を有する有機酸である、請求項8に記載の被覆金属部材の製造方法。
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