JP2660351B2 - 高分子複合体およびその製造方法 - Google Patents

高分子複合体およびその製造方法

Info

Publication number
JP2660351B2
JP2660351B2 JP10187689A JP10187689A JP2660351B2 JP 2660351 B2 JP2660351 B2 JP 2660351B2 JP 10187689 A JP10187689 A JP 10187689A JP 10187689 A JP10187689 A JP 10187689A JP 2660351 B2 JP2660351 B2 JP 2660351B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
polymer compound
electrolytic
composite
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP10187689A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH02279334A (ja
Inventor
誠 加藤
紀雄 二階堂
陽一 小山
茜 岡田
誠 村瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP10187689A priority Critical patent/JP2660351B2/ja
Publication of JPH02279334A publication Critical patent/JPH02279334A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2660351B2 publication Critical patent/JP2660351B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)
  • Paints Or Removers (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、付着性能、防錆性能、耐摩耗性能等に優れ
た、塗膜、電極材料の保護膜等に利用することができ
る、高分子化合物からなる層が積層した高分子複合体お
よびその製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
金属材料の保護にはいわゆる防錆プライマーが用いら
れ、特に生産性を要求される自動車、産業機械等の保護
塗料として電着塗料が用いられている。この電着塗料は
その保護性能向上の要求からアニオン電着塗料からカチ
オン電着塗料へとその転換が求められ、現時点ではカチ
オン電着塗料がその主流となっている。しかしながら、
産業機械の使用環境の拡大、長寿命耐久性能の要求に対
しては十分な満足を示しているとは言えない。
また、金属材料の保護膜の他のものとして、電解重合
高分子化合物の被膜がある。
この電解重合高分子化合物の被膜は、電極材料の保護
被膜等の過酷な環境で使用される被膜であり、ピロール
類、チオフェン類等の複素5員環式化合物、アズレン、
ピレン、トリフェニレン等の多環芳香族化合物等からな
るものである。この被膜は、電解質を添加した溶剤中に
上記電解重合高分子化合物のモノマーを溶解させて、こ
の溶液に電解酸化を行うことにより電極基板上に析出さ
せて製造している(IBM Journal of Research&Develop
ment,第27巻、第4号、P530(1983年))。また、フェ
ノールあるいはアリルフェノール等の置換フェノールを
アミン水溶液中に溶解し、電解重合することにより陽極
板上に防錆性能を有する保護被膜を析出させている(特
開昭55−16075号、特開昭56−47460号、J.Eleotrochem,
Soc.,第128巻、第11号、P2276〜P2281(1981年))。
しかしながら、これらの被膜は、単位電気量当たりの
析出量が少ない(例えば、特開昭56−47460号において
は、0.4〜0.6mg/C)のため、長時間通電しないと厚膜化
できない(電力消費量が多い)、また、電解重合体が剛
直であるため被膜の基板への付着力が弱く、膜の柔軟性
が少ない、更に、原料モノマーの価格が高いという問題
点がある。
そこで、本発明者らは、かかる問題点を解消し、付着
性能、防錆性能、耐摩耗性能等の優れた被膜に適する高
分子化合物の複合体を開発した(特願昭63−196364
号)。この高分子化合物の複合体は、アニオン性高分子
化合物と電解重合高分子化合物との複合化したものであ
る。しかしながら、この複合体においても過酷な環境で
使用される被膜としては、付着性能、防錆性能等に満足
しているものではない。
〔第1発明の説明〕 本第1発明(請求項(1)に記載の発明)は、上記従
来技術の問題点に鑑みなされたものであり、付着性能、
防錆性能、耐摩耗性能等に優れ、かつ過酷な環境の使用
においても上記性能を保持する高分子化合物の複合体を
提供することを目的とするものである。
本第1発明の高分子複合体は、高分子化合物からなる
第一層と、電解処理により電解溶媒に不溶化する性質を
有するアニオン性高分子化合物と、該アニオン性高分子
化合物の間に存在する電解重合高分子化合物とからなる
第二層とが積層したものであり、上記第二層の上記電解
重合高分子化合物の少なくとも一部が上記第一層中に存
在してなることを特徴とするものである。
本第1発明の高分子複合体は、付着性能、防錆性能、
耐摩耗性能等に優れている。また、過酷な環境において
使用しても上記の性能を保証している。この優れた効果
を有するのは以下の理由によると考えられる。
付着性能については、第二層中にアニオン性高分子化
合物の密着性が高く、しかも第二層の電解重合高分子化
合物の一部が第一層中に存在しているため、第一層と第
二層との層間付着は優れている。また、第一層は剛直と
はなりにくいものであるため第一層と被被覆物との付着
性能に優れている。従って、本発明の高分子複合体は、
全体として付着性能に優れている。なお、高度に複合化
した第二層のみにより防錆性能、耐摩耗性能、帯電防止
性能を向上させることができるが、この第二層のみの単
独被膜では被被覆物上に被覆した場合、該被膜が剛直に
なり被被覆物との付着性能が低下し、被覆材料としての
性能が発揮できない。それに対して、本発明の高分子複
合体は、第一層が剛直とはなりにくいため第一層と被被
覆物との付着性能に優れ、従って、全体として付着性能
が向上するのである。
また、防錆性能については、第二層の電解重合高分子
化合物が撥水性、イオントラップ性、酸素トラップ性に
優れているためである。
また、耐摩耗性能については、第二層において電解重
合高分子化合物がアニオン性高分子化合物の間隙を埋め
て第二層が緻密化されていることによる。
〔第1発明のその他の発明の説明〕 以下、本第1発明を具体的にしたその他の発明を説明
する。
本発明の高分子複合体は、高分子化合物からなる第一
層と、電解重合高分子化合物と、電解処理により電解溶
媒に不溶化する性質を有するアニオン性高分子化合物と
からなる第二層とが積層してなるものであり、上記第二
層の電解重合高分子化合物の、少なくとも一部が第一層
中に存在してなるものである。
本発明において、第一層の高分子化合物としては、有
機、無機のいかなる高分子化合物でもよい。例えば、ポ
リアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステル重合体、
変成セルローズ、塩ビー酢ビ重合体、エポキシ樹脂、ア
ルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂
等が挙げられ、それらのうちの少なくとも1種を用い
る。それらの中でも塗料成分として用いられている高分
子化合物が望ましい。この塗料成分として用いられる高
分子化合物は、高機能を有する第二層成分を担持せし
め、かつ、被被覆物との間の付着性能を保持しながら、
高度にその機能性を発揮するために好適であるからであ
る。上記塗料成分としては、スプレー塗装用、流し塗り
塗装用、カーテンフロー塗装用、ローラー塗装用の塗
料、アニオン電着塗料、カチオン電着塗料等の塗料成分
が挙げられる。スプレー塗装用の塗料としては、アミノ
−アクリル塗料、アミノ−アルキッド塗料、非水分散型
(NAD)塗料、ウレタン塗料、アクリルラッカー、ニト
ロセルローズラッカー、エポキシ樹脂塗料、油性塗料、
水性塗料(油性系、アミノ−アルキッド系、アミノ−ア
クリル系等の溶液系、分散系あるいはエマルション系塗
料)等のものが挙げられる。また、上記アニオン電着塗
料としては、油性系、エポキシ系、アミノ−アルキッド
系、アミノ−アクリル系、ポリブタジエン系等のものが
挙げられる。また、上記カチオン電着塗料としては、エ
ポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系、ポリアミン
系等が挙げられる。
上記塗料成分の場合には、顔料類、硬化触媒、界面活
性剤、表面平滑剤等の通常の塗料に用いられる添加剤を
添加してもよい。
この第一層の高分子化合物の重量平均分子量として
は、300〜50,000の範囲内が望ましい。該重量平均分子
量が300未満では、脆弱すぎて実用に適さない。また、5
0,000を超える場合には、均一な膜が得られない。
この第一層には、通常の塗料に用いられる顔料類、硬
化触媒、界面活性剤、表面平滑剤等の添加剤が含有して
いてもよい。
第一層の厚さとしては、1μm以上とするのが望まし
い。1μm未満の場合には、被被覆物との間の付着強度
が不十分であり、十分な複合膜としての機能を発揮し得
ない。更に望ましくは、2〜20μmの範囲内がよい。
また、第二層は、電解重合高分子化合物と、電解処理
により電解溶媒に不溶化する性質を有するアニオン性高
分子化合物とからなるものである。
上記電解重合高分子化合物とは、電解重合により重合
された高分子化合物であり、複素5員環を有するもの、
ベンゼン環を有するもの等が挙げられ、それらの1種ま
たは2種以上を用いる。
例えば、複素5員環を有する高分子化合物としては、
一般式 (式中R1およびR1の各々は個別に水素、ハロゲン、ニト
ロ基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基
のうちの少なくとも1種を含む置換基であり、Xは酸
素、硫黄、窒素、または (但し、R3は水素、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族
基のうちの少なくとも1種を含む置換基である。)のう
ちのいずれかである。)の少なくとも1種の反復単位と
して表されるものである。例えば、ポリピロール、ポリ
(3−メチルピロール)、ポリチオフェン等が挙げられ
る。
また、ベンゼン環を有する高分子化合物としては、一
般式 (式中R1〜R4の各々は個別に水素、ハロゲン、ニトロ
基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基の
うちの少なくとも1種を含む置換基である。)の少なく
とも1種の反復単位として表されるものである。例え
ば、ポリフェニレン等が挙げられる。
また、ベンゼン環を有する高分子化合物の他のものと
しては、一般式 (式中R1〜R4の各々は個別に水素、ハロゲン、ニトロ
基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基の
うちの少なくとも1種を含む置換基であり、Xは酸素、
硫黄、 (但し、R5、R6の各々は個別に水素、ハロゲン、ニトロ
基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基の
うちの少なくとも1種を含む置換基である。)のうちの
いずれかである。)の少なくとも1種の反復単位として
表されるものである。例えば、ポリアニリン、ポリフェ
ニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げら
れる。
電解重合高分子化合物の重量平均分子量としては、30
0〜50,000の範囲内が好ましい。該分子量が300未満で
は、第二層が脆弱すぎて実用に供さない。また、50,000
を超えると、多孔質の第二層となり、保護膜としての機
能を有さない。
また、電解処理により電解溶媒に不溶化する性質を有
するアニオン性高分子化合物とは、電離性官能基を有
し、該電離性官能基の少なくとも一部を対イオンで中和
することにより溶媒に溶解するもの、あるいは自己乳化
し得る樹脂である。また、上記電解溶媒とは、水、有機
溶媒等、電解処理に用いるあらゆる種類のものである。
ここで、電解溶媒に不溶化するとは、例えば通常のエマ
ルションの凝集のように被膜構成樹脂粒体に吸着もしく
は共存する界面活性剤がその活性能を失うことによる成
分自体の凝集析出を意味するものではなく、樹脂そのも
のの親水性もしくは界面活性性の変化に基づく凝集析出
を意味する。ラテックスエマルションのように樹脂その
ものに吸着した界面活性剤の特性変化による凝集析出の
場合には製造工程における電解処理の電極構成金属の溶
出を抑える能力がなく、得られた複合体中に多量の金属
イオンが混入するため、防錆性能等の優れた連続膜が形
成されない。
電解処理により電解溶媒に不溶化する性質を有するア
ニオン性高分子化合物としては、アクリル樹脂、エポキ
シ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッ
ド樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−メラミン
樹脂、アクリル−アルキッド樹脂、エポキシ−メラミン
樹脂、ポリブタジエン樹脂等を基本骨格とするもの、あ
るいはこれらの混合物である。
該アニオン性高分子化合物の重量平均分子量として
は、300〜50,000の範囲内が好ましい。該重量平均分子
量が300未満では、保護膜としての強度が得られず、ま
た、50,000を越える場合には、被被覆物の保護に要する
に足る平滑な被膜とはなりにくい。
電解重合高分子化合物と上記アニオン性高分子化合物
との複合形態としては、以下に示すような形態が挙げら
れる。
まず、第1図の第二層の概念図に示すように、電解重
合高分子化合物とアニオン性高分子化合物とが分子単位
で絡み合い、しかも均一に分散された状態で複合化して
いる。更に、アニオン性高分子化合物中に不飽和結合の
α水素を有し、該水素が解離してカルバニオンを形成し
うるもの、あるいはカルボキシル基の水素を有し、該水
素が解離してカルボキシレイトアニオンを形成しうるも
のが含まれている場合には、結合もしくは配向による高
度複合化が可能である。
電解重合高分子化合物と前記アニオン性高分子化合物
との複合化割合は、第二層中に電解重合高分子化合物が
0.01〜50重量%、残部(99.99〜50重量%)アニオン性
高分子化合物となるような範囲内が好ましい。電解重合
高分子化合物の割合が0.01重量%未満では、高分子複合
体の防錆性能が低下してしまい、50重量%を越える場合
には、第一層との密着性が低下してしまう。
また、用途に応じて、上記第二層には、チタン白、ベ
ンガラ、カーボンブラック等の着色顔料、タルク、クレ
ー、シリカ等の体質顔料、クロム酸ストロンチウム、ク
ロム酸アンモニウム、クロム酸鉛、モリブデン酸カリウ
ム等の酸素酸塩系防錆顔料等、またアニオン性高分子化
合物が二重結合の反応性を膜硬化官能基とする樹脂(例
えば、乾性油もしくは乾性油変性アルキド、ポリブタジ
エン系、不飽和石油樹脂系等)の場合には、コバルト、
鉛などの金属塩ドライヤー、イソシアネート硬化のアニ
オン性高分子化合物の場合にはジブチル錫オキサイド等
の錫化合物のような硬化触媒等、通常のアニオン電着塗
料に用いられる添加剤を添加して、第二層に膜としての
総合機能を発揮させることができる。
また、本発明では、第4図に示すように、第二層62中
の電解重合高分子化合物63の一部が第一層61中にあたか
も鎖のように侵入した形となっている。従って、第一層
と第二層の密着性は通常の界面の密着力のみで接合して
いるよりも強い接合力が与えられる。また、第一層中で
の電解重合高分子化合物と、高分子化合物との複合形態
は以下に示すような形態が挙げられる。第5図に示すよ
うに、第一層中では第二層中と同様に電解重合高分子化
合物と高分子化合物とが分子単位で絡み合い、しかも均
一に分散された状態で複合化されており、層間において
傾斜組織を有する組成融合体を形成している。更に高分
子化合物中に不飽和結合のα水素を有し、該水素が解離
してカルバニオンを形成しうるもの、あるいはカルボキ
ル基の水素を有し、該水素が解離してカルボキシレイト
アニオンを形成しうるものが含まれている場合には、結
合もしくは配位による高度な複合化が可能である。
本発明の高分子複合体を保護被膜として被被覆物に被
覆する場合、第一層と被被覆物とが接触し、第二層が外
側になるように配置するのがよい。
また、本発明の高分子複合体の第二層の上に更に、電
解処理により電解溶媒に不溶化する性質を有するアニオ
ン性高分子化合物からなる第三層を積層させてもよい。
この第三層の存在により耐候性、耐汚染性、耐水性等の
性能の向上がさら付与できる。この第三層と第二層と
は、通常の多層塗りのごとく界面での接着力のみで結合
しているだけでもよい。
また、目的に応じて、第一層と第二層との上に第一
層、第二層、第三層のうちの少なくとも1種の層が繰り
返して積層されたもの、あるいは第一層と第二層と第三
層との上に更に第二層と第三層、または第一層と第二層
が繰り返して積層されたものなどでもよい。この場合、
第一層と第二層の接合関係は、界面での接着力のみで結
合しているのではなく、電解重合高分子の一部が、第一
層と第二層に渡ってあたかも鎖のごとく存在して、第一
層と第二層の接合力を強くしている。その他の層間の接
合関係は、上記と同様な接合関係でもよく、あるいは界
面の接着力のみで結合しているものでもよい。すなわ
ち、後述するように、本発明の高分子複合体を製造する
場合、第一層を形成した後電解処理により第二層を形成
した場合のみ、界面での接着力のみで結合しているので
はなく電解処理において低分子の電解重合性モノマーが
第一層に侵入すると共に高分子重合体を形成し、層間に
おいて傾斜組織を有する組成融合体を形成することによ
って結合する。この場合以外の層間は界面での接着力の
みで結合している。
また、本発明の高分子複合体における表面の美観等を
更に向上させたり、着色させたりする場合には該高分子
複合体上に塗装を施してもよい。
本発明の高分子複合体は、付着性能、防錆性能、耐摩
耗性能等に優れるため、自動車等への塗膜、構造材料の
保護膜、あるいは導電性を有することから導電性フィル
ム等に応用することができる。
〔第2発明の説明〕 本第2発明(請求項(2)に記載の発明)は、前記の
高分子複合体を効率よく製造する方法を提供しようとす
るものである。
本第2発明の高分子複合体の製造方法は、高分子化合
物からなる第一層を形成する第一工程と、上記第一層を
電解重合高分子化合物のモノマーと、電解処理により電
解溶媒に不溶化する性質を有するアニオン性高分子化合
物とを分散または溶解せしめた電解液中に浸漬すると共
に、該第一層に電圧を印加することにより第一層の表面
に上記アニオン性高分子化合物と該アニオン性高分子化
合物の間に存在する電解重合高分子化合物とからなる第
二層を形成する第二工程とからなることを特徴とするも
のである。
本第2発明によれば、前記のごとき優れた高分子複合
体を製造することができる。
また、本第2発明では、第一層と第二層との層間にお
いて傾斜組成を有する高分子複合体を製造することがで
きる。すなわち、通常のハケ塗り、スプレー塗装などで
は傾斜組成を有するものが得られないのに対して、本第
2発明では、第一層に電圧を印加し、電解処理により第
二層を形成することにより第一層中に低分子の電解重合
性モノマーが第一層中にドーピングすると共に高分子重
合体を形成し、第一層と第二層との層間において傾斜組
成を有する高分子複合体を製造することができる。
〔第2発明のその他の発明の説明〕 次に、本第2発明をより具体的にしたその他の発明を
説明する。
本発明の高分子複合体の製造方法は、第一層を形成し
(第一工程)、該第一層を、電解重合高分子モノマー
と、電解処理により電解溶媒に不溶化する性質を有する
アニオン性高分子化合物とを含む電解液に浸漬して電解
処理を行うことにより、上記第一層上に第二層を析出さ
せる(第二工程)ものである。
第一層の高分子化合物としては、前述の化合物が挙げ
られる。しかし、本発明では、第二層を電解処理により
形成するため、第一層の高分子化合物は、次の条件を満
たすものが望ましい。この条件を満たすものであれば、
本発明の高分子複合体の製造が容易であり、また、被被
覆物への塗膜の要求機能および複合積層膜としての要求
機能に優れたものが得られる。その条件としては、
(1)第二工程の第二層形成時に電解処理に必要な通電
性を有すること、(2)第二工程の電解処理中に電解液
に溶解しないこと、(3)第二層を担持するに足る被膜
形成能を有することである。
本発明において、第二工程は第一層を電解液中に浸漬
して、この第一層に電圧を印加することによって第一層
上に第二層を電解析出せしめて高度複合化させようとす
るものである。従って、第一層が、電圧印加により通電
できない場合には、第二層は形成されない。しかしなが
ら、第一層の高分子化合物そのものが絶縁性であって
も、グラファイト、あるいは各種金属粉等の導電性物質
を該高分子化合物中に混入させることにより第一層に導
電性を付与することもできる。また、電解液に対して浸
漬あるいは電解処理操作により第一層が溶解してしまう
とは、均一な第二層が形成されず、特性の優れた高分子
複合体は形成されない。このような高分子化合物として
は、高度の水溶性を有する比較的分子量の低いポリビニ
ルアルコール、あるいはその誘導体等が挙げられる。ま
た、第二層を担持することができない高分子化合物で
は、十分な強度を有する高分子複合体が得られにくく、
特に本発明の高分子複合体を単離保護膜として用いる場
合の強度が不十分である。
上記第一工程における第一層の形成方法としては、例
えば第一層の高分子化合物を塗装により形成する、ある
いは加熱溶融状態で塗布して形成する、あるいは溶液状
にしてスピンコーターにより形成する、などの方法があ
る。なお、導電性基材上に第一層を形成して、該導電性
基材を第二工程における電極として用いてもよい。更
に、該導電性基材を本発明の高分子複合体の被被覆物と
すると、簡便に高分子複合体を被覆することができ、し
かも該被被覆物と高分子複合体との付着性は高い。
上記第一層の形成方法のうち、塗装により形成する場
合、塗装後塗膜中に残存する非親水性溶剤の大部分を蒸
発乾固しておくのがよい。該溶剤が残存すると、上記塗
膜の電解液に対する濡れ性が不十分であり、第二層が形
成されにくい。また、水性塗料により塗装した場合、塗
装後溶媒である水(若干の補助有機溶剤を含む場合には
該溶剤も)を蒸発させておくのがよい。塗膜中に水が残
存すると、次の電解処理においてハジキ等の塗膜欠陥が
生じてしまう。また、塗料として、アニオン電着塗料、
カチオン電着塗料等の電着塗料を用いる場合、通常の条
件で電着塗装を行った後、該塗膜を水洗してもあるいは
水洗しなくてもよい。しかし、塗膜表面に付着した液滴
は蒸発させるのがよい。また、上記電着塗料では、形成
時の電着析出膜の流動を引き起こすために加熱硬化させ
た場合、該塗膜の膜厚が6μm以上では絶縁膜となるた
め、該塗料中に前記導電性粉体を混入させておくのがよ
い。
また、フィルム形成性高分子化合物を溶液状、あるい
は加熱溶液状態で上記導電性基材等の被被覆物に塗布す
る場合該高分子化合物が被被覆物上への接着性がない場
合には、粘着剤を該高分子化合物に添加するのがよい。
該粘着剤の添加量としては、高分子化合物100重量部に
対して3〜200重量部とするのがよい。
上記第一層は、第二層の形成においてその表面に電解
処理により第二層を形成するため、電気伝導性であるこ
とが必要となる。第二層形成工程における第一層の電解
液への浸漬状態での電気抵抗は、1000KΩ/cm2以下とす
るのが望ましい。1000KΩ/cm2を越える場合には、第二
層の形成に必要な電流を確保し得ず、本発明の高分子複
合体を形成されない。電気抵抗が1000K/cm2を越える高
分子化合物を用いる場合には、その層厚さを1μm以下
とするか、あるいは該高分子化合物中に導電性粉体を混
入することにより、電気抵抗を減少させることができ
る。該導電性粉体としては、グラファイト、銅、鋼、ス
テンレス、亜鉛、錫等の金属粉、あるいはそれらの金属
合金粉等が挙げられ、それらのうちの少なくとも1種を
用いる。この導電性粉体の混入量としては、前記塗料の
場合、該塗料100重量部に対して0〜200重量部の範囲内
とするのがよい。200重量部を越えると第一層の強度が
低下してしまう。また、前記フィルム形成高分子化合物
の場合、該高分子化合物100重量部に対して0〜200重量
部とするのがよい。なお、第一層の層厚さが1μm未満
では、第二層の形成時において第二層の電解重合高分子
化合物の第一層へのドーピングが進み過ぎ、第一層と第
二層との機能分離がなくなってしまう。従って、第一層
の電気抵抗を調節するには、第一層の層厚さを小さくす
るよりも導電性粉体を混入するのがよい。
なお、必要があれば、第一層の形成後、その表面をサ
ンドペーパー等で研磨してもよい。この場合には、第一
層と第二層との複合化が更に促進される。
第二層の形成方法は、上記形成した第一層を、電解重
合高分子化合物のモノマーとアニオン性高分子化合物と
を分散または溶解せしめた電解液中に浸漬すると共に、
上記第一層に電圧を印加するものである。これにより、
第一層上において上記アニオン性高分子化合物を析出せ
しめると同時に共析した電解重合高分子化合物のモノマ
ーを上記アニオン性高分子化合物中で重合、複合化させ
ることによって第二層を形成する。また、第一層と第二
層との間には第二層の電解重合高分子化合物が侵入し、
緊密な構造融合を持つ接着が行われると共に、第二層で
はアニオン性高分子化合物と電解重合高分子化合物とが
分子レベルで複合化する。このような第二層の形成が単
一操作により行われる。
上記電解重合高分子化合物のモノマーとしては、電解
重合が可能な高分子化合物のモノマーであり、複素5員
環を有するもの、ベンゼン環を有するもの等が挙げら
れ、それらのうちの少なくとも1種を用いる。
例えば、複素5員環を有するモノマーとしては、一般
(式中、R1およびR2の各々は個別に水素、ハロゲン、ニ
トロ基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族
基のうちの少なくとも1種を含む置換基であり、Xは酸
素、硫黄、窒素または (但し、R3は水素、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族
基のうちの少なくとも1種を含む置換基である。)のう
ちのいずれかである。)で表されるものであり、ピロー
ル、N−置換ピロール、β−置換ピロール、チオフェ
ン、β−置換チオフェン、フラン、β−置換フラン、イ
ンドール、カルバゾール等が挙げられる。
また、ベンゼン環を有するモノマーとしては、一般式 (式中R1〜R4の各々は個別に水素、ハロゲン、ニトロ
基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基の
うちの少なくとも1種を含む置換基であり、Xは水素、
酸素、硫黄、 または (但し、R5、R6の各々は個別に水素、ハロゲン、ニトロ
基、アミノ基、脂肪族基、不飽和脂肪族基、芳香族基の
うちの少なくとも1種を含む置換基である。)のうちの
いずれかである。)で表されるものであり、ベンゼン、
アニリン、4位を置換されていないアニリン誘導体、ト
ルエン、キシレン、フェノール、4位を置換されていな
いフェノール誘導体等が挙げられる。
また、アニオン性高分子化合物としては、電解処理に
より電解溶媒に不溶化する性質を有するものである。該
化合物としては、前述の化合物が挙げられる。その中で
も、電離性官能基としてカルボキシル基、スルホン基、
ホスホン基等の電離によりアニオンを形成せしめる官能
基を有するものであって上記電解処理により第一層上に
該電解液に不溶の被膜を析出せしめる性能を有するもの
であれば、均一な膜を形成することができる。この場
合、高分子骨格は特に制限されることはない。上記性能
を有するものは、上記電解液中に塩酸、硝酸、酢酸等の
一塩基酸を添加した時pH7〜1の間において電解液から
樹脂物質が凝集もしくは析出する現象が生じるものが適
用できる。pH7より高い領域で直ちに凝集沈降を生じる
場合においては、電解重合高分子化合物モノマーの共存
下において電解液の安定が不良であって実用性はなく、
pH1未満であっても溶解性を示すアニオン性高分子化合
物は第一層上への析出が行われない。かかる性質を有す
るアニオン性高分子化合物は、油性系、アルキド系、ア
クリル系、ポリブタジエン系、不飽和石油樹脂系などの
いわゆる電着塗料用高分子が好適であり、これらの樹脂
系で相溶性があれば混合使用も可能である。
アニオン性高分子化合物中には加熱もしくは空気中の
酸素等によって架橋する官能基、例えば、不飽和二重結
合、水酸基等の少なくとも一種が含まれていることが好
ましい。またこれらの官能基は電解液中において保護基
と結合していしも電解後に続く硬化過程において再生さ
れるものであってもよい。更に、電析したアニオン性高
分子化合物を効果的に架橋硬化せしめるために、水分散
性のアミノ樹脂、例えば、C4以下のアルコール変性低縮
合メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂あるいは、
ブロック化イソシアネート化合物、レゾール型フエノー
ル型樹脂等の硬化用樹脂の混用、もしくはその一部また
は全部をアニオン性高分子化合物にグラフトまたは共重
合させたものを使用してもよい。更に、該アニオン性高
分子化合物を電解液中で保護する界面活性保護剤として
分散状態保持可能な石油系樹脂、クマロン−インデン樹
脂、ポリブタジエン樹脂、油脂等の非電解性樹脂そのも
の、もしくは、その加熱重合変性体(不活性気流中もし
くは酸素共存下で重合変性したもの、例えば油脂の場合
にはボイル油やスタンド油等を添加してもよい。かかる
非電解性樹脂を共存させる場合には電解液を調整する前
に該樹脂にアニオン性高分子化合物が十分に吸着するよ
うに両者を加熱するか、あるいは混合するのがよい。
なお、該アニオン性高分子化合物の酸価としては、30
〜200の範囲内のものが望ましい。ここでいう酸価と
は、高分子1g中に結合しているアニオン性官能基(カル
ボキシル基、スルホン基、ホスホン基等)を中和するの
に要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。該酸価
が30未満では、電解液中で電解重合高分子化合物のモノ
マーあるいは添加剤を安定に保持するための界面活性性
が十分ではなく、電解液が不安定である。また、酸価が
200を越えると、単位電気量に対する第二層の析出量が
少なくなりすぎて実用的ではない。
電解液としては、電解重合高分子化合物のモノマーと
上記アニオン性高分子化合物とを分散または溶解させた
ものである。電解液の溶媒としては、水あるいは有機溶
媒のいかなるものでもよい。有機溶媒としては、メチル
シクロヘキサノール、ベンジアルコール、n−ブタノー
ル、ブチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、メチ
ルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロパノール、
エタノール等が挙げられるがその他、通常の電着塗装に
使用し得る有機溶媒も使用できる。
しかし、環境汚染、コスト面を考慮すると水あるいは
水と有機溶媒との混合溶媒を用いるのがよい。混合溶媒
の場合、有機溶媒の混合量は、0.001〜30%が好まし
く、更に好ましくは3〜10%である。30%を越える有機
溶媒の混合は、アニオン性高分子化合物の異常な析出の
原因となる。
電解液中に上記電解重合高分子化合物のモノマーとア
ニオン性高分子化合物とを効率よく分散または溶解せし
めるために、アニオン性高分子化合物中のアニオン性官
能基をその対イオン形成低分子化合物で中和するのが望
ましい。上記対イオン形成低分子化合物としては、水酸
化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のア
ルカリ金属水酸化物、アンモニア、あるいはモノメチル
アミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチ
ルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジプロ
ピルアミン、ジイソピロピルアミン、モノブチルアミ
ン、ジエチレントリアミン等のアルキル炭素数4以下の
低級アルコール基を有する、1級、2級もしくは3級ア
ルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン
類、ジメチルアミノカノールのようなアルイルアルカノ
ールアミン類等が挙げられ、それらのうちの少なくとも
1種を用いる。更に、補助的な中和剤としてシクロヘキ
シルアミン、オクチルアミン、N−ジメチルアミンのよ
うな比較的高分子量の脂肪族、脂環族もしくは芳香族ア
ミン類を用いてもよい。かかる場合には他の低分子アミ
ン類と共用することが良質な第二層を形成する上で好ま
しい。上記アニオン性高分子化合物を予め、該中和剤で
中和した後に電解液に分散しても、あるいは予め該中和
剤を電解液中に加え混合しておいたものに対して上記ア
ニオン性高分子化合物を添加、撹拌分散または溶解して
もかまわない。
アニオン性高分子化合物と電解重合高分子化合物のモ
ノマーの電解液への添加は、アニオン性高分子化合物を
先に電解液に分散または溶解させてもよく、電解重合高
分子化合物のモノマーを先に分散または溶解させてもよ
く、あるいは両者を同時に分散または溶解させてもよ
い。いずれの場合でも両者を十分に撹拌混合することが
好ましい。
また、上記2成分の電解液中に分散または溶解させる
各々の添加量としては、電解重合高分子化合物のモノマ
ーの場合、電解液全体(上記2成分を含んだ状態)に対
して0.001〜30重量%の範囲内が好ましく、更に好まし
くは0.01〜20重量%の範囲内である。0.001重量%未満
では、膜化した場合、防錆性能を発揮しない場合があ
り、また、30重量%を越える場合には、電解液に沈澱が
生じて電解液の安定性が悪くなり、更に製造した複合体
の均一性が損なわれる。
一方、アニオン性高分子化合物の添加量は、電解液全
体(2成分を含んだ状態)に対して2〜40重量%の範囲
内が好ましく、更に好ましくは5〜30重量%の範囲内で
ある。2重量%未満では、経済的な処理時間で十分な保
護機能を有する被膜厚が得られず、また40重量%を越え
る場合には、電解液の粘度が高くなり、未析出電解液の
系外への持ち出しによる損失が大きく得策ではない。
なお、第二層の上に更に層を形成する場合には、第二
層に電気伝導性を付与するための導電性粉体を電解液に
混入しておくのがよい。
電解液のpHは、上記モノマー及びアニオン性高分子化
合物が安定に存在する状態であれば制限されるものでは
ない。
電解液への第一層の浸漬は、第一層と対極との両方を
上記電解液に浸漬しても、あるいは第二層は陽極上に析
出するので第一層のみを陽極として上記電解液に浸漬し
てもよい。例えば、電解液の容器が導電性の場合、その
容器を対極すなわち陰極として使用してもよく、また別
の導電体を電極として直接電解液に浸漬してもよい。ま
た対極をイオン交換膜(カチオン交換膜)や半透膜で隔
離し、内部に塩基性電解溶液を満たしたいわゆる隔膜陰
極を電解液に浸漬したいわゆる隔膜法を用いても、さら
には塩橋電極を対極としてもよい。ただし、隔膜陰極も
しくは塩橋を対極に使用する場合、電解液に用いる塩基
が第一層を浸漬した電解液中の中和剤と異なる場合には
該塩基が、電解液中へ移行混入しない構造にすべきであ
る。移行混入した場合には一定組成の高分子複合体が形
成されない。なお、第一層はそのまま浸漬してもよい
が、導電性基材に付着された形で浸漬してもよい。例え
ば、第一工程で導電性基材上に第一層を塗布等により形
成したものをそのまま浸漬してもよい。
また、適用し得る導電性物体および対極は、導電性の
ものであればよく、特に制限されるものではない。例示
すれば、白金、金、ステンレススチール、化成処理鋼
板、化成処理を施した、もしくは施さない亜鉛鋼板、ア
ルミ板、銅板、ブリキ板、メッキ処理したプラスチック
板、あるいはそれらの加工物等が挙げられる。上記導電
性物体と対極との材質は同じでも異なるものでもよい。
本発明においては、電解液に上記第一層を浸漬すると
共に該第一層に電圧を印加することにより、アニオン性
高分子化合物と電解重合高分子化合物のモノマーとが共
析出し、同時に電解重合高分子化合物のモノマーが電解
重合し、アニオン性高分子化合物と複合化して第一層上
に析出する。電極への電圧の印加は、上記第一層と対極
との間に印加する。印加する電圧は直流電圧とする。こ
の通電する直流電圧の波型は交流からの全波もしくは半
波整流波であっても、パルス波であってもよく、特に制
限されるものではないが、その電流密度の最大値は0.01
mA/cm2以上とするのがよい。これ未満であっても第一層
と対極との間の電位が電解液中の電解重合高分子化合物
モノマーの酸化電位もしくはアニオン性高分子化合物の
最小電析電位(アニオン性高分子化合物が第一層面に電
析するに要する最小電流密度を確保するための電位)の
大きい方の電位が確保されれば第二層は形成されるが、
実用的な速度での第二層の形成には0.1mA/cm2以上、好
ましくは0.5mA/cm2以上とするのがよい。電圧印加方法
は、定電圧法であっても定電流法であっても、さらには
昇圧法であってもよい。
また、第一層が抵抗となるので、高い電流密度を確保
するため、導電性物体に直接第二層を電析により形成す
る場合(特開昭63−196364号)よりも高い電圧を印加す
る。印加する電圧の条件としては、第一層と対極との距
離、あるいは製造する高分子複合体の形状によって変化
するが、1〜750ボルト、0.5〜6000秒の範囲内で電圧を
印加するのがエネルギー面、経済面より好ましい。
最大電流密度は、第一層が、絶縁破壊を生じない範囲
であれば、電解操作効率を勘案して任意に設定できる。
さらに第一層への電圧の印加は該電解液中に第一層を浸
漬する以前に行っても(通電入槽)、電解液に浸漬後行
っても(全没通電)よい。
電解操作を行う場合の電解液温度は電解液が凍結もし
くは沸騰しない温度範囲であれば第二層形成に対して特
に支障はないが、電解液の安定性(電解液組成物の変
質、分解)を考慮すれば、5〜50℃が好ましい。5℃未
満の低温では電解液からの凝集沈殿が起こりやすいし、
50℃を越えるとアニオン性高分子化合物の分解が進みや
すい。
第一層と第二層のみからなる高分子複合体を形成する
場合には、上記工程後該高分子複合体を加熱硬化せしめ
て複合積層化を完了するのがよい。更に、3層以上の多
層積層物を形成する場合には、前記第一工程→第二工程
あるいは第二工程の処理操作等を繰り返して行う。これ
により、各種の機能目的に合致した高分子複合体を製造
することができる。この多重積層物処理を行う場合の処
理操作は前記第一工程、第二工程と同一であっても異な
ってもよい。この選択は、積層物の目的と合致する種類
の高分子化合物もしくは材料を広く選択することができ
る。但し、前記第二工程を行う場合には、その前工程終
了時の既形成積層物の電気抵抗が、当該電解処理液中で
1000KΩ/cm2以下とする。1000KΩ/cm2を越えると、該電
解操作において層が形成し得ない。
以上のようにして高分子複合体を形成した後、該複合
体を硬化するのがよい。選択した複合体の材質がラッカ
ーや常温硬化型材料からなる場合、例えば、ニトロセル
ロースラッカー、アクリルラッカー、フィルム形成熱可
塑性高分子、乾性油変性アルキド樹脂塗料などを第一層
に、常温硬化型電着塗料などを第二層のアニオン性高分
子化合物に使用した場合には室温もしくは100℃以下の
低温での強制乾燥で複合体を硬化することが可能であ
る。しかし、第二層においてのアニオン性高分子化合物
と電解重合高分子化合物との間の高度複合化と第一層と
の融合接着性を促進させるためには100℃以上の温度で
加熱することがよく、好ましくは電解液中に含まれるア
ニオン性高分子化合物の硬化温度より高い温度での硬化
がよい。加熱温度の上限は特に制限はないが、複合体の
主構造が急激に分解する温度以下が好ましく、一般には
350℃以下が好ましい。また、第一層に導電性基材を付
着させた形で電解液に浸漬する場合には、硬化処理温度
は該導電性基材の耐熱性によって制限を受ける。また、
加熱硬化により上記導電性基材が溶融もしくは実用に耐
えない変形、発泡等を引き起こす場合においては、本発
明の高分子複合体の種類に制限を受ける。例えば、樹脂
めっき製品上へ本発明の複合体を形成する場合、導電性
基材の溶融温度以下で加熱硬化することができるラッカ
ーと常乾電着塗料との複合体を形成するのがよい。
上記電解操作を実施し、第二層が析出して形成された
高分子複合体を電解液から取り出し、該高分子複合体上
に付着した未析出電解液を除去するのがよい。
しかし、高分子複合体表面の平滑性等の外観の均一性
に高度の要求がない場合には上記水洗を省略しても高分
子複合体の性能には影響を与えない。
以上のように、上記第一工程および第二工程を行うこ
とにより、優れた高分子複合体が得られるが、特に第二
層のアニオン性高分子化合物と電解重合高分子化合物モ
ノマーの選択において、電解重合高分子化合物モノマー
から得られる重合体とアニオン性高分子化合物との間に
限定された親和性を有する場合には第二工程において第
一層と第二層との界面付近に電解重合高分子化合物を多
量に含み、かつ第二層のその反対側は少量の電解重合高
分子化合物しか含まないか、全く含まない2層構造の第
二層が同一電解液からの電解操作で乾性される。この2
層構造は電解操作に続く加熱硬化に到る操作中も保持さ
れ、かかる材質を選択した場合の高分子複合体は、第一
層上にアニオン性高分子化合物と電解重合高分子化合物
からなる第二層と、その上にアニオン性高分子化合物か
らなる第三層が形成された3層構造となる。かかる構造
を形成する材質は第一層に関しては特に制限はなが、第
二層形成電解液成分としてのアニオン性高分子化合物に
高酸価乾性油変性アルキド樹脂、C4以下のアルキル鎖を
有する(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする高酸
価アクリル樹脂のうちの少なくとも1種を、また、電解
重合高分子化合物モノマーにピロールを選択すればよ
い。
本発明では非常に多くの種類の被被覆物表面に優れた
付着性を有すると共に優れた防錆機能、耐摩耗性を有す
る高分子複合体を製造することができる。また、第一層
との組合せにより使用目的に合致した広範囲の機能を有
する高分子複合体を製造することができる。しかも、通
常の多層塗りのごとく各層が界面での接着力のみで結合
しているのではなく、電解処理において、低分子の電解
重合高分子化合物モノマーが第一層にドーピングすると
共に高分子複合体を形成し、層間において傾斜組成を有
する組成融合体を形成することができる。通常の電解重
合高分子化合物のみによる電解操作においては、その処
理する電解重合高分子化合物が、巨大分子であるために
第一層へのドーピングが行われず、界面層のみの接着と
なり、本発明のごとき組成融合形の積層物は形成されな
い。
本発明において、導電性基材の表面に本発明の高分子
複合体を形成せしめる場合においては、第一層形成材質
と導電性基材とを、両者間の接着力、目的機能の合致を
考慮して選択するが、本発明の高分子複合体を単離し、
複合体形成に用いた導電性基材以外の被被覆物に接着剤
等で接着せしめて使用することも可能である。かかる場
合には第一層に例えばフィルム形成材料を用いて本発明
により形成された高分子複合体を有機溶媒処理もしくは
化学薬品処理(例えば、導電性基材の酸溶解処理)もし
くは導電性基材の電解処理を実施することによって高分
子複合体が単離できる。かかる場合、第一層と第二層と
反対の側もしくは導電性基材表面に通電を妨げない適当
な処理(例えば接着強度の弱い被覆層の形成等)を行う
ことによって複合体単離を容易に行うことができる。
本発明の高分子複合体の表面の美観等をさらに向上さ
せたり、着色させたりする必要がある場合には該高分子
複合体上に公知の塗装を施すことができる。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1 アニオン性不飽和アルキッド電着樹脂(大日本インキ
(株)製ウォータ・ゾール141LpA150重量部とウォータ
・ゾール193LpA73重量部との混合物)223重量部をトリ
エチルアミン7.8重量部で中和し、イソプロピルアルコ
ール22重量部及びアセトン7重量部を添加した後、これ
らを水744重量部に分散させて、水分散ワニスを得た。
この水分散ワニスは、pH7.3、電導率2000μs/cm(25
℃)であった。また、分散された電着樹脂粒子の平均粒
子径は光弾性散乱法(コールター社,model N4 SUB−MI
CRON Particle Analyzer)によると約40nmであった。
上記電解液100重量部にアニリン5重量部を添加し、撹
拌分散器により分散させた。これにより乳白色のアニリ
ン分散ワニスを得た。このアニリン分散ワニスは、pH7.
4、導電率1700μs/cm(25℃)であり、分散された電着
樹脂とアニリンとの粒子の平均粒子径は、約100nm(光
弾性散乱法による)であった。
ポリブタジエン型カチオン電着樹脂(日本石油化学
(株)製EC−1800−150/100)を酢酸により中和し、分
散した。これにより水分散ワニスを得た。
第2図の電解処理装置の概念図に示すようにカチオン
電着樹脂水分散ワニスを横4cm×奥行2cm×高さ8cmのガ
ラスセル1に入れ、上記ワニスからなる電解液2中に冷
間圧を鋼板(JIS規格SPCD相当品、二本鋼管(株)製)3
1とSUS304シート(厚さ0.1mm)32とも浸漬すると共に両
電極間に接続した直流電源4により冷間圧延鋼板31を陰
極として両電極間に100Vの低電圧を5秒間印加した。こ
れにより冷間圧延鋼板上に白色の被膜を得た。
上記アニリン分散ワニスに上記と同様にして上記被膜
を形成した冷間圧延鋼板(被膜−冷間圧延鋼板)とSUS3
04シートとを浸漬すると共に被膜−冷間圧延鋼板を陽極
とし110Vの定電圧を約1分間印加した。その後、被膜−
冷間圧延鋼板をワニスから取り出し、180℃で25分間焼
き付けた。これにより冷間圧延鋼板上に茶かっ色の平滑
な被膜を得た。この被膜の断面構造を走査型電子顕微鏡
で観察すると3層構造であった。3層を元素分析すると
第3図の概略図に示すように鋼板54に近い層51(層厚さ
約2μm)はポリアニリンがカチオン電着樹脂に複合化
した層(該層中でのポリアニリンの含有量約2重量%)
でその上の層52(層厚さ約3μm)はアニオン電着樹脂
とポリアニリンの複合層(該層中でのポリアニリンの含
有量約13重量%)で、最表面の層53(層厚さ約10μm)
は主としてアニオン電着樹脂のみより成る層であった。
実施例2 スチレン、アクリル酸、メチルメタアクリレート、2
−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシルエチ
ルアクリレートよりなるアクリル電着樹脂に硬化剤とし
てブロックイソシアネートを10phr添加して、不揮発成
分15%の水分散ワニスを調整した。上記水分散ワニス10
0重量部に対してピロール5重量部を添加してピロール
分散ワニスを得た。エピコート828(油化シェルエポキ
シ製)とアマニ油脂肪酸、無水マレイン酸、ブタノー
ル、プロピレングリコールより合成したアマニ油変性エ
ポキシ電着樹脂をジメチルエタノールアミンで中和し、
水分散ワニスを得た。上記水分散ワニスに一対の電極を
浸漬すると共に冷間圧延鋼板を陽極にして両電極に50V
の定電圧を5秒間印加した。これにより冷間圧延鋼板上
に薄黄色の被膜を得た。
実施例1と同様にしてこの被膜を形成した冷間圧延鋼
板(被膜−冷間圧延鋼板)とSUS304シート(厚さ0.1m
m)とを実施例1と同様にして上記ピロール分散ワニス
に浸漬すると共にこの被膜−冷間圧延鋼板を陽極として
両電極間に70Vの定電圧を約1分間印加した。
その後、被膜−冷間圧延鋼板をワニスから取り出し、
170℃で25分間焼き付けた。これを走査型電子顕微鏡で
観察すると2層構造の積層物が形成されており、さらに
詳細に分析した結果、鋼板との界面からアマニ油変性エ
ポキシ電着樹脂層(層厚さ約2μm)、ポリピロールと
アクリル電着樹脂とからなる層(層厚さ約18μm、該層
中でのポリピロールの含有量約5重量%)であり、アマ
ニ油変性エポキシ層中には約2重量%のポリピロールが
含まれていることが分かった。
実施例3 スチレン、メチルメタアクリレート、2−エチルヘキ
シルアクリレート、アクリル酸よりなるアクリル樹脂と
架橋剤としてのメラミンとからなるもの100重量部にグ
ラファイトを70重量部添加し、塗料化した。上記塗料を
鋼板にスプレー塗装した。塗膜中に含まれる溶剤を蒸発
させるためにデシケーターの中に入れ、真空ポンプでデ
シケーター内を減圧にした。1時間後これを取り出し鋼
板上に被膜を得た。
エピコート1004(油化シエルエポキシ製)と脱水ヒマ
シ油、脂肪酸、無水マレイン酸からなる変性エポキシ樹
脂を合成し、ジメチルアミンで中和し、水を添加して水
分散ワニスを得た。上記ワニス100重量部に対しピロー
ルを3重量部添加し撹拌分散器より分散した。これに上
記アクリルを形成した鋼板(アクリル−鋼板)とSUS304
シート(厚さ0.1mm)とを浸漬すると共に上記アクリル
−鋼板を陽極、SUS304シートを陰極として両電極間に15
0Vの定電圧を1分間印加した。その後、アクリル−鋼板
をワニスから取り出し、180℃で25分間焼き付けた。こ
の膜を走査型電子顕微鏡で観察すると2層構造であるこ
とが分かった。さらに詳細に分析した結果、鋼板に近い
層よりポリピロールがアクリル樹脂に複合化した層(層
厚さ約20μm、該層中でのポリピロールの含有量約2重
量%)、ポリピロール−変性エポキシ電着樹脂層(層厚
さ約20μm、該層中でのポリピロールの含有量20重量
%)であることがわかった。
比較例1 実施例1で使用したポリブタジエン型カチオン電着樹
脂(日本石油化学(株)製EC−1800−150/100)分散ワ
ニスに実施例1と同様にして、冷間圧延鋼板と対極とし
てSUS304シートを浸漬すると共に冷間圧延鋼板を陰極と
して両電極間に150Vの定電圧を1分間印加した。焼付け
硬化により冷間圧延鋼板上に薄橙色の被膜を得た。走査
型電子顕微鏡により断面構造を観察した結果、ポリブタ
ジエン型カチオン電着樹脂からなる1層の膜(膜厚さ約
20μm)であることが分かった。
比較例2 実施例1で使用したアニリン分散ワニスに実施例1と
同様に冷間圧延鋼板と対極としたSUS304シートとを浸漬
する共に冷間圧延鋼板を陽極として両電極間に80Vの定
電圧を約1分間印加した。その後、これを180℃で25分
間焼き付けることにより冷間圧延鋼板上に茶かっ色のア
ルキッド電着樹脂とポリアニリンとからなる平滑な被膜
(膜厚さ約20μm、ポリアニリンの含有量約8重量%)
を得た。
比較例3 実施例2で使用したアマニ油変性エポキシ分散ワニス
に実施例2と同様にして冷間圧延鋼板と、対極としてSU
S304シートとを浸漬すると共に冷間圧延鋼板を陽極とし
て60Vの定電圧を50秒間印加した。170℃で25分間焼き付
けることにより冷間圧延鋼板上に橙色の被膜を得た。走
査型電子顕微鏡により断面構造を観察した結果アマニ油
変性エポキシ樹脂からなる1層の膜(膜厚さ約20μm)
であった。
比較例4 実施例2で使用したピロール分散ワニスに実施例2と
同様にして冷間圧延鋼板と対極としてSUS304シートとを
浸漬すると共に冷間圧延鋼板を陽極として60Vの定電圧
を70秒間印加した。170℃で25分間焼き付けることによ
り冷間圧延鋼板上にアクリル電着樹脂とポリピロールと
からなる黒色の被膜(膜厚さ約20μm、ポリピロールの
含有量約6重量%)を得た。
比較例5 実施例3で使用したグラファイト含有アクリル樹脂塗
料を実施例3と同様に冷間圧延鋼板にスプレー塗装し
た。これを180℃で25分間焼付け塗膜を得た。走査型電
子顕微鏡による観察でこの塗膜はグラファイト含有アク
リル樹脂からなる1層の均質な膜(膜厚さ約20μm)で
あった。
比較例6 実施例3で使用したピロール分散ワニスに実施例3と
同様に冷間圧延鋼板と対極としてSUS304シートを浸漬す
ると共に冷間圧延鋼板を陽極として両電極間に80Vの定
電圧を50秒間印加した。これを180℃で25分間焼付け変
性エポキシ樹脂とポリピロールとからなる塗膜(膜厚さ
約20μm、ポリピロールの含有量約20重量%)を得た。
比較例7 アニリン塩酸塩0.1M水溶液中に導電性ガラス(ITOガ
ラス3cm×6cm)とを対極としてSUS304シート(厚み0.1m
m)を浸漬した。両極間に定電流50μA/cm2で20分間通電
し、ITOガラス上にポリアニリンを得た。乾燥後、走査
型電子顕微鏡により断面構造を観察した結果、ポリアニ
リンからなる1層の膜(膜厚さ約10μm)であることが
分かった。
比較例8 実施例1で使用したポリブタジエン型カチオン電着樹
脂水分散ワニスに実施例1と同様にして冷間圧延鋼板と
対極としてSUS304シートを浸漬すると共に冷間圧延鋼板
を陰極として両電極間に100Vの定電圧を5秒間印加し
た。これにより冷間圧延鋼板上にカチオン電着樹脂から
なる白色の被膜(膜厚さ約20μm)を得た。
実施例1で使用したアルキッド電着樹脂(ウォーター
ゾール141Lpとウォーターゾール193LpA)の混合物をト
リエチルアミンで中和し、水を添加し固型分比約10重量
%に調整した。これにピロール15gを分散させ塗料とし
た。これを前述の冷間圧延鋼板上に得た白色の被膜上に
ハケ塗りした。180℃で25分間焼け付けて塗膜化した
が、カチオン電着樹脂層とピロール−アルキッド電着樹
脂層間で層間ハクリが起き、試験に供することができな
かった。
(評価) 実施例1〜3及び比較例1〜6において形成し焼付け
硬化させた被膜について以下のように特性を評価した。
その結果を第1表に示す。
耐食性能:被膜にナイフで長さ3cmのカットを入れ35度
で5重量%のNaCl水溶液を噴霧し、カット部よりの錆の
発生幅が3mmになる時間を測定した。
第1表より明らかなように、本実施例の被膜は、比較
例の膜よりも耐食性能に優れていることが分かる。
また、実施例1〜3及び比較例2、4、6において形
成し、焼付け硬化させた被膜について以下のように特性
を評価した。その結果を第2表に示 す。
耐水性能:被膜を40℃の温水中に500時間浸漬後ナイフ
で1mm×1mmのゴバン目状カット100個を切込み、この部
分にセロハン粘着テープを貼りつけて急速にはがしとっ
た時の残存ゴバン目の数を測定した。
第2表より明らかなように、本実施例の被膜は、比較
例の被膜よりも耐水性能に優れていることが分かる。
また、実施例1と比較例7において形成し、焼付け硬
化させた被膜について以下のように特性を評価した。そ
の結果を第3表に示す。
鉛筆硬度:被膜を6B〜9H硬度の三菱ユニ鉛筆で引っ掻
き、キズの生成する硬度の1段階下の硬度を測定した。
第3表より明らかなように、本実施例の被膜は比較例
の被膜よりも耐摩耗性に優れていることが分かる。
また、実施例1と比較例8において形成し、焼 付け硬化させた被膜について以下のように特性を評価し
た。その結果を第4表に示す。
付着性能:被膜にナイフで1mm×1mmのゴバン目状カット
100個を切込み、この部分にセロハン粘着テープを貼り
つけて急速にはがしとった時の残存ゴバン目の数を測定
した。
第4表より明らかなように、本実施例の被膜は、比較
例の膜よりも層間の付着性能が向上していることが分か
る。これは、第二層のポリアニリンが第一層中に析出し
ているためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明にかかる高分子複合体の第二層における
複合形態を示す概念図、第2図は実施例1において使用
した電解処理装置の概念図、第3図は実施例1において
製造した高分子複合体の断面概念図、第4図は本発明に
かかる高分子複合体の第一層と第二層との関係を示す概
念図、第5図は本発明にかかる高分子複合体の第一層に
おける複合形態を示す概念図である。 1……電解セル、2……電解液 31……導電性基材上に形成した第一層 31、32……電極、4……直流電源 51、61……第一層 52、62……第二層 53……第三層、54……鋼板 63……電解重合高分子化合物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C09D 5/44 PSA C09D 5/44 PSA (72)発明者 村瀬 誠 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41 番地の1 株式会社豊田中央研究所内 審査官 増田 亮子 (56)参考文献 特開 昭61−113626(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高分子化合物からなる第一層と、電解処理
    により電解溶媒に不溶化する性質を有するアニオン性高
    分子化合物と、該アニオン性高分子化合物の間に存在す
    る電解重合高分子化合物とからなる第二層とが積層した
    ものであり、上記第二層の上記電解重合高分子化合物の
    少なくとも一部が上記第一層中に存在することを特徴と
    する高分子複合体。
  2. 【請求項2】高分子化合物からなる第一層を形成する第
    一工程と、上記第一層を、電解重合高分子化合物のモノ
    マーと、電解処理により電解溶媒に不溶化する性質を有
    するアニオン性高分子化合物とを分散または溶解せしめ
    た電解液中に浸漬すると共に、該第一層に電圧を印加す
    ることにより第一層の表面に上記アニオン性高分子化合
    物と、該アニオン性高分子化合物の間に存在する電解重
    合高分子化合物とからなる第二層を形成する第二工程と
    からなることを特徴とする高分子複合体の製造方法。
JP10187689A 1989-04-21 1989-04-21 高分子複合体およびその製造方法 Expired - Lifetime JP2660351B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10187689A JP2660351B2 (ja) 1989-04-21 1989-04-21 高分子複合体およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10187689A JP2660351B2 (ja) 1989-04-21 1989-04-21 高分子複合体およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH02279334A JPH02279334A (ja) 1990-11-15
JP2660351B2 true JP2660351B2 (ja) 1997-10-08

Family

ID=14312167

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10187689A Expired - Lifetime JP2660351B2 (ja) 1989-04-21 1989-04-21 高分子複合体およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2660351B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JPH02279334A (ja) 1990-11-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US3869366A (en) Method for electrocoating
US5869198A (en) Process for multi-layer coating
JP4096069B2 (ja) 多層コートラッカー塗装法
RU2669672C2 (ru) Способ нанесения покрытий на металлические поверхности субстратов и изделия с нанесенными по данному способу покрытиями
US5908667A (en) Multilayer lacquering process
AU701608B2 (en) Electrocoating compositions and methods therefor
TW201932546A (zh) 可電沈積的塗層組合物及由其產生的導電塗層
EP0837908A1 (en) Electroactive polymer coatings for corrosion control
KR19990022090A (ko) 다중 코팅 페인팅 방법
CN112313294A (zh) 提高金属底材耐蚀性的方法
JP2001513418A (ja) 保護および装飾積層構造物の施工法
JP2660351B2 (ja) 高分子複合体およびその製造方法
Sathiyanarayanan et al. Corrosion protection by electropolymerised and polymer pigmented coatings-a review
US6350359B1 (en) Process for coating three-dimensional electrically conductive substrates
US3437574A (en) Anticorrosive treatment of zinc and metallic materials coated with zinc
US6436260B1 (en) Process for electrocoating bulk articles
JPH0994916A (ja) 有機複合被覆鋼板
JP2735277B2 (ja) メタリック塗料組成物および静電塗装方法
GB2074578A (en) Cathodic electro-deposition coating composition and process
Usmani Electrodeposition of polymers and coatings
JPS63171898A (ja) 複合被膜の形成方法
JP2000167475A (ja) 複層塗膜形成法
JPS62258784A (ja) 自動車外板部の防食塗装法
MXPA97006414A (en) Electrostation compositions and methods for the mi
JEYAKRISIINAN STUDIES (ON THE CHARACTERISTICS () IR WATER SOLUBLE ACRYLIC RES INS USED FOR EI ECTRO DEPOSITI () N