JP2024053197A - 4輪駆動車及び駆動装置 - Google Patents

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Tomohiro Nozu
将貴 三田
Masataka Mita
剛 永山
Takeshi Nagayama
哲也 山▲崎▼
Tetsuya Yamazaki
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Abstract

【課題】車両の駆動源である電動モータと左右の車輪の間に配置されたクラッチを締結状態にする際のNVを抑制することが可能な4輪駆動車を提供することを目的とする。また、本発明は、電動モータとクラッチとを備えた駆動装置のクラッチを締結状態にする際のNVを抑制することが可能な駆動装置を提供する。【解決手段】4輪駆動車1の制御装置4は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うとき、副駆動源であるフロントモータ31の回転速度を制御して第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち一方のクラッチ機構の入力回転部材と出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、フロントモータ31の回転速度を制御して第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち他方のクラッチ機構の入力回転部材と出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする。【選択図】図1

Description

本発明は、左右の主駆動輪を主駆動装置によって駆動し、前記左右の副駆動輪を電動モータを有する副駆動装置によって駆動する4輪駆動車、及び駆動装置に関する。
従来、電動モータを駆動源として有する車両には、例えば特許文献1に記載されているもののように、電動モータと左右の車輪との間にそれぞれクラッチが配置され、これらのクラッチによって電動モータと車輪との動力伝達経路を断続可能なものがある。このような車両では、電動モータがトルクを発生していない状態での車両走行時に、クラッチによって動力伝達経路を遮断することにより、電動モータが車輪の回転による逆入力によって回転することで発生する動力ロスが低減される。
特許文献1に記載の車両は、クラッチが遮断された状態から係合される状態への移行時に、先ずクラッチの係合制御及びモータの駆動制御をそれぞれの予備トルクで行い、クラッチとモータとの回転同期が判定された後にクラッチのトルク及びモータのトルクを高めることにより、モータの慣性に起因する出力軸トルクの変動を抑制するように構成されている。
特開2015-134534号公報
上記のように構成された車両において、クラッチを係合する際に音や振動(以下、NVと称する)が発生すると、運転者に違和感を与えてしまうおそれがある。特に、電動モータを駆動源とする車両では、内燃機関であるエンジンを駆動源とする車両に比較して走行時のNVが低く抑えられているので、僅かなNVが運転者に感知されやすく、クラッチの作動時においても高度な静粛性及び低振動性が要求される。
そこで、本発明は、車両の駆動源である電動モータと左右の車輪の間にクラッチが配置された4輪駆動車であって、クラッチを締結状態にする際のNVを抑制することが可能な4輪駆動車を提供することを目的とする。また、本発明は、電動モータとクラッチとを備え、車両の左右輪を駆動する駆動装置であって、クラッチを締結状態にする際のNVを抑制することが可能な駆動装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、左右一対の主駆動輪と、左右一対の副駆動輪と、前記左右一対の主駆動輪を回転駆動する主駆動装置と、前記左右一対の副駆動輪を回転駆動する副駆動装置と、前記主駆動装置及び前記副駆動装置を制御する制御装置とを備え、前記左右一対の主駆動輪及び前記左右一対の副駆動輪を回転駆動する4輪駆動状態と前記左右一対の主駆動輪のみを回転駆動する2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車であって、前記副駆動装置は、電動モータと、前記電動モータから前記左右一対の副駆動輪のうち一方の副駆動輪への駆動力の伝達を断続する第1のクラッチ機構と、前記電動モータから前記左右一対の副駆動輪のうち他方の副駆動輪への駆動力の伝達を断続する第2のクラッチ機構とを有し、前記第1のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記一方の副駆動輪側の出力回転部材とを有し、前記第2のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記他方の副駆動輪側の出力回転部材とを有し、前記制御装置は、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態への切り替えを行うとき、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち一方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち他方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする、4輪駆動車を提供する。
また、本発明は、上記の目的を達成するため、車両の左右輪を駆動する駆動装置であって、電動モータと、前記電動モータから前記左右輪のうち一方の車輪への駆動力の伝達を断続する第1のクラッチ機構と、前記電動モータから前記左右輪のうち他方の車輪への駆動力の伝達を断続する第2のクラッチ機構と、前記電動モータならびに前記第1及び第2のクラッチ機構を制御する制御装置とを有し、前記第1のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記一方の車輪側の出力回転部材とを有し、前記第2のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記他方の車輪側の出力回転部材とを有し、前記制御装置は、前記第1及び第2のクラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とするとき、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち一方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち他方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする、駆動装置を提供する。
本発明に係る4輪駆動車及び駆動装置によれば、クラッチを締結する際の振動を抑制することが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係る4輪駆動車の概略の構成例を模式的に示す概略構成図である。 制御装置が実行する処理のフローチャートである。 第1のクラッチ機構の締結動作と第2のクラッチ機構の締結動作とを同時並行で実施する処理を詳細に示すフローチャートである。 第1のクラッチ機構を締結した後に第2のクラッチ機構を締結する処理を示すフローチャートである。 第2のクラッチ機構を締結した後に第1のクラッチ機構を締結する処理を示すフローチャートである。 (a)は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うときのデフケース、第1のクラッチ機構の出力回転部材、ならびに第2のクラッチ機構の入力回転部材及び出力回転部材の回転速度の変化の一例を示すグラフである。(b)は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うときのフロントモータのトルクの変化の一例を示すグラフである。 第2の実施の形態に係る4輪駆動車の概略の構成例を模式的に示す概略構成図である。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る4輪駆動車1の概略の構成例を模式的に示す概略構成図である。4輪駆動車1は、左右一対の主駆動輪である左後輪11及び右後輪12と、左右一対の副駆動輪である左前輪13及び右前輪14と、左後輪11及び右後輪12を回転駆動する主駆動装置2と、左前輪13及び右前輪14を回転駆動する副駆動装置3と、主駆動装置2及び副駆動装置3を制御する制御装置4とを備えている。4輪駆動車1は、制御装置4の制御によって、左後輪11及び右後輪12ならびに左前輪13及び右前輪14を回転駆動する4輪駆動状態と、左後輪11及び右後輪12のみを回転駆動する2輪駆動状態とを切り替え可能である。
主駆動装置2は、リヤモータ21と、減速機構22と、ディファレンシャル装置23とを有している。ディファレンシャル装置23は、デフケース231と、デフケース231と共に回転するピニオンギヤシャフト232と、ピニオンギヤシャフト232に軸支された一対のピニオンギヤ233と、一対のピニオンギヤ233に噛み合う左サイドギヤ234及び右サイドギヤ235とを有している。左サイドギヤ234は、ドライブシャフト111によって左後輪11に連結されており、右サイドギヤ235は、ドライブシャフト121によって右後輪12に連結されている。
リヤモータ21の出力回転は、減速機構22により減速されてデフケース231に伝達される。ディファレンシャル装置23は、減速機構22を介してリヤモータ21からデフケース231に入力された駆動力を、左サイドギヤ234からドライブシャフト111を介して左後輪11へ、また、右サイドギヤ235からドライブシャフト121を介して右後輪12へ、差動を許容して配分する。このように、リヤモータ21の駆動力は、常に左後輪11及び右後輪12に伝達される。
副駆動装置3は、フロントモータ31と、減速機構32と、ディファレンシャル装置33と、ディファレンシャル装置33と左前輪13との間に配置された第1のクラッチ機構34と、ディファレンシャル装置33と右前輪14との間に配置された第2のクラッチ機構35とを有している。ディファレンシャル装置33は、本発明の差動歯車装置の一態様である。
ディファレンシャル装置33は、デフケース331と、デフケース331と共に回転するピニオンギヤシャフト332と、ピニオンギヤシャフト332に軸支された一対のピニオンギヤ333と、一対のピニオンギヤ333に噛み合う左サイドギヤ334及び右サイドギヤ335とを有している。一対のピニオンギヤ333、左サイドギヤ334、及び右サイドギヤ335は、デフケース331に収容されている。デフケース331は、本発明のケース部材の一態様であり、左サイドギヤ334及び右サイドギヤ335は、本発明の第1及び第2の出力歯車の一態様である。
フロントモータ31の出力回転は、減速機構32により減速されてデフケース331に伝達され、デフケース331がフロントモータ31の出力によって回転する。ディファレンシャル装置33は、減速機構32を介してフロントモータ31からデフケース331に入力された駆動力を、第1のクラッチ機構34側及び第2のクラッチ機構35側に差動を許容して配分する。
第1のクラッチ機構34は、フロントモータ31から左前輪13への駆動力の伝達を断続する。第2のクラッチ機構35は、フロントモータ31から右前輪14への駆動力の伝達を断続する。第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35は、制御装置4によって制御される。4輪駆動車1を4輪駆動状態とするときには、制御装置4が第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35を共に駆動力伝達可能な状態とする。また、4輪駆動車1を2輪駆動状態とするときには、制御装置4が第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35を共に駆動力伝達不能な状態とする。本実施の形態では、第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35がシンクロ機構を有しない噛み合いクラッチ(ドグクラッチ)として構成されている。
第1のクラッチ機構34は、入力回転部材341と、出力回転部材342と、入力回転部材341と出力回転部材342とを相対回転不能に連結する連結部材343と、連結部材343を動作させるアクチュエータ344とを有している。同様に、第2のクラッチ機構35は、入力回転部材351と、出力回転部材352と、入力回転部材351と出力回転部材352とを相対回転不能に連結する連結部材353と、連結部材353を動作させるアクチュエータ354とを有している。
第1及び第2のクラッチ機構34,35の入力回転部材341,351は、出力回転部材342,352よりもフロントモータ31及びディファレンシャル装置33側に設けられている。第1のクラッチ機構34の入力回転部材341には、ディファレンシャル装置33の左サイドギヤ334が相対回転不能に連結され、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351には、ディファレンシャル装置33の右サイドギヤ335が相対回転不能に連結されている。
第1のクラッチ機構34の出力回転部材342は、入力回転部材341と同軸上で、入力回転部材341よりも左前輪13側に設けられている。第2のクラッチ機構35の出力回転部材352は、入力回転部材351と同軸上で、入力回転部材351よりも右前輪14側に設けられている。第1のクラッチ機構34の出力回転部材342には、左前輪13に連結されたドライブシャフト131が相対回転不能に連結され、第2のクラッチ機構35の出力回転部材352には、右前輪14に連結されたドライブシャフト141が相対回転不能に連結されている。
第1のクラッチ機構34の入力回転部材341及び出力回転部材342、ならびに第2のクラッチ機構35の入力回転部材351及び出力回転部材352は、外周面にそれぞれ外歯スプライン341a,342a,351a,352aが形成された小径の円筒状である。第1のクラッチ機構34の連結部材343及び第2のクラッチ機構35の連結部材353は、内周面に内歯スプライン343a,353aが形成された大径の円筒状である。
第1のクラッチ機構34のアクチュエータ344は、連結部材343を、連結部材343の内歯スプライン343aが入力回転部材341の外歯スプライン341a及び出力回転部材342の外歯スプライン342aに共に噛み合う連結位置と、連結部材343の内歯スプライン343aが出力回転部材342の外歯スプライン342aに噛み合わない遮断位置との間で軸方向に移動させることが可能である。連結部材343が連結位置にあるとき、第1のクラッチ機構34が駆動力伝達可能な状態となり、連結部材343が遮断位置にあるとき、第1のクラッチ機構34が駆動力伝達不能な状態となる。
同様に、第2のクラッチ機構35のアクチュエータ354は、連結部材353を、連結部材353の内歯スプライン353aが入力回転部材351の外歯スプライン351a及び出力回転部材352の外歯スプライン352aに共に噛み合う連結位置と、連結部材353の内歯スプライン353aが出力回転部材352の外歯スプライン352aに噛み合わない遮断位置との間で軸方向に移動させることが可能である。連結部材353が連結位置にあるとき、第2のクラッチ機構35が駆動力伝達可能な状態となり、連結部材353が遮断位置にあるとき、第2のクラッチ機構35が駆動力伝達不能な状態となる。
リヤモータ21は、後輪側の駆動源であり、フロントモータ31は、前輪側の駆動源である。リヤモータ21及びフロントモータ31は、高出力型の電動モータであり、出力トルク及び回転速度が制御装置4によって制御される。リヤモータ21は、フロントモータ31よりも大きなトルクを出力可能である。4輪駆動車1は、リヤモータ21及びフロントモータ31に駆動電流を供給するための強電バッテリ50、リヤインバータ51、及びフロントインバータ52を備えている。
リヤモータ21には、強電バッテリ50から供給される直流電流をリヤインバータ51によってスイッチングした交流電流が駆動電流として供給される。フロントモータ31には、強電バッテリ50から供給される直流電流をフロントインバータ52によってスイッチングした交流電流が駆動電流として供給される。制御装置4は、リヤインバータ51及びフロントインバータ52に対してスイッチング素子をスイッチングさせるスイッチング信号を送り、運転者のアクセル操作やブレーキ操作に応じてリヤモータ21及びフロントモータ31の出力トルク及び回転速度を制御する。
また、4輪駆動車1には、左後輪11及び右後輪12ならびに左前輪13及び右前輪14のそれぞれの回転速度を検出する車輪速センサや、ヨーレイトセンサ、車両前後方向の加速度を検出する加速度センサ、及び操舵角センサ等の各種センサが搭載されている。制御装置4は、これらのセンサの検出結果の情報を取得可能であり、取得した各種センサの検出結果に基づいて車両走行状態を検出可能である。また、制御装置4は、例えば車載カメラの撮像結果に基づいて、路面状態を検出することが可能である。
制御装置4は、例えば路面状態や車両走行状態に応じて、もしくは運転者のスイッチ操作等による走行モードの切り替え操作に応じて、4輪駆動車1の駆動状態を2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替える。この切り替えの際、第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35において、連結部材343,353の内歯スプライン343a,353aが出力回転部材342,352の外歯スプライン351a,352aに衝突すること等により発生する音や振動(NV)が運転者に感知されると、運転者に不快感を与えてしまうおそれがある。このため、本実施の形態では、制御装置4が以下のようにフロントモータ31ならびに第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35を制御することで、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替え時のNVを抑制する。
すなわち、制御装置4は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うとき、4輪駆動状態への切り替えの緊急度が高い場合を除き、フロントモータ31の回転速度を制御して第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち一方のクラッチ機構の入力回転部材(第1のクラッチ機構34の入力回転部材341又は第2のクラッチ機構35の入力回転部材351)と出力回転部材(第1のクラッチ機構34の出力回転部材342又は第2のクラッチ機構35の出力回転部材352)とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、フロントモータ31の回転速度を制御して第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち他方のクラッチ機構の入力回転部材と出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする。
また、本実施の形態では、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うとき、第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち、出力回転部材342,352の回転速度が遅い方のクラッチ機構を先に回転同期させて駆動力伝達可能な状態とする。なお、制御装置4は、例えば左前輪13の車輪速を検出する車輪速センサの検出結果により、第1のクラッチ機構34の出力回転部材342の回転速度を検出することができ、右前輪14の車輪速を検出する車輪速センサの検出結果により、第2のクラッチ機構35の出力回転部材352の回転速度を検出することができる。
次に、制御装置4が2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うときに実行する処理のより詳細な具体例について、フローチャートを参照して説明する。
図2は、制御装置4が実行する処理のフローチャートである。制御装置4は、4輪駆動車1が2輪駆動状態で走行しているとき、4輪駆動状態に切り替えるか否かを所定の時間間隔で判断する(ステップS1)。このステップS1の処理では、例えば路面状態や車両走行状態に基づき、路面の推定摩擦係数が所定値よりも低い場合や、車両挙動が不安定になった場合又は車両挙動が不安定になるおそれがある場合に、4輪駆動状態に切り替えると判断する。また、車室内に設けられた走行モードの切り替えスイッチ又は切り替えレバーを運転者が2輪駆動の選択位置から4輪駆動の選択位置に切り替えた場合にも、4輪駆動状態に切り替えると判断する。なお、2輪駆動状態での走行時には、フロントモータ31が回転停止状態である。
制御装置4は、4輪駆動状態に切り替えると判断したとき(S1:Yes)、4輪駆動状態への切り替えを速やかに行う必要があるか否か、すなわち4輪駆動状態への切り替えの緊急度が高いか否かを判定する(ステップS2)。制御装置4は、例えば凍結路に進入したときや、急激なオーバーステア又はアンダーステア等により車両挙動が不安定になったとき、あるいはアクセルペダルが踏み込まれた急加速時等に緊急度が高いと判定する。
制御装置4は、緊急度が高いと判定したとき(S2:Yes)、左前輪13の回転速度と右前輪14の回転速度との差が所定値以下か否かを判定し(ステップS3)、この判定の結果がYesであれば、第1のクラッチ機構34の締結動作と第2のクラッチ機構35の締結動作とを同時並行で実施する(ステップS4)。なお、ここで左前輪13の回転速度と右前輪14の回転速度との差が所定値以下である場合にのみステップS4の処理を実行するのは、左前輪13の回転速度と右前輪14の回転速度との差が大きい場合には、第1及び第2のクラッチ機構34,35のアクチュエータ344,354を同時に動作させて連結部材343,353と出力回転部材342,352とを噛み合わせることが難しいためである。
一方、制御装置4は、ステップS2又はステップS3の判定結果がNoである場合、左前輪13の回転速度が右前輪14の回転速度よりも低いか否かを判定する(ステップS5)。この判定の結果がYesである場合、制御装置4は、第1のクラッチ機構34を締結した後に第2のクラッチ機構35を締結する(ステップS6)。また、ステップS5の判定の結果がNoである場合、制御装置4は、第2のクラッチ機構35を締結した後に第1のクラッチ機構34を締結する(ステップS7)。ここで、締結するとは、アクチュエータ344,354を動作させて連結部材343,353と出力回転部材342,352とを噛み合わせることをいう。
図3は、ステップS4の処理を詳細に示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理において、制御装置4はまず、フロントモータ31の回転速度を制御して、第1及び第2のクラッチ機構34,35の入力回転部材341,351の回転速度を出力回転部材342,352の回転速度に近づける(ステップS41)。この際、制御装置4は、入力回転部材341,351の回転速度を左前輪13及び右前輪14の車輪速のうち何れかの車輪速に一致させるように制御する。また、入力回転部材341,351の回転速度を左前輪13及び右前輪14の車輪速の平均値に一致させるように制御してもよい。
次に、制御装置4は、第1及び第2のクラッチ機構34,35の入力回転部材341,351と出力回転部材342,352とが回転同期したか否かを判定する(ステップS42)。この判定は、入力回転部材341,351と出力回転部材342,352との回転速度差が所定値以下か否かによって行う。制御装置4は、フロントモータ31の回転速度に減速機構32の減速比を考慮した演算により入力回転部材341,351の回転速度を求めることができる。
ステップS42の判定がYesとなったとき、制御装置4は、フロントモータ31のトルクを、フロントモータ31の回転速度を維持できる程度の値に制限する(ステップS43)。そして、フロントモータ31のトルクを制限した状態で、第1及び第2のクラッチ機構34,35のアクチュエータ344,354を同時に制御し、入力回転部材341,351と出力回転部材342,352とを相対回転不能に連結する(ステップS44)。第1及び第2のクラッチ機構34,35を締結するときにフロントモータ31のトルクを制限した状態にするのは、締結時に発生する衝撃を抑制するためである。
図4は、第1のクラッチ機構34を締結した後に第2のクラッチ機構35を締結する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理において、制御装置4はまず、フロントモータ31の回転速度を制御して第1のクラッチ機構34の入力回転部材341の回転速度を出力回転部材342の回転速度に近づけ(ステップS61)、第1のクラッチ機構34の入力回転部材341と出力回転部材342とが回転同期したか否かを判定する(ステップS62)。
このステップS62の判定は、第1のクラッチ機構34の入力回転部材341の回転速度と出力回転部材342の回転速度との差が所定値以下か否かによって行う。この所定値は、第1のクラッチ機構34の連結部材343と出力回転部材342とを円滑に噛み合わせることができる程度の小さな値である。なお、ステップS62及び後述するステップS66の判定の所定値は、緊急度が高い場合における上記のステップS42の判定の所定値よりも小さくすることができる。
制御装置4は、ステップS62の判定の結果がYesとなったとき、フロントモータ31の回転速度を維持できる程度の値にフロントモータ31のトルクを制限し(ステップS63)、その状態で第1のクラッチ機構34のアクチュエータ344を制御し、入力回転部材341と出力回転部材342とを相対回転不能に連結する(ステップS64)。
その後、制御装置4は、フロントモータ31の回転速度を制御し、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度を出力回転部材352の回転速度に近づける(ステップS65)。この際、制御装置4は、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度を、左前輪13の回転速度によって検出される第1のクラッチ機構34の入力回転部材341の回転速度を考慮して算出する。デフケース331の回転速度をR、第1のクラッチ機構34の入力回転部材341の回転速度をR11、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度をR21としたとき、R21は、R=(R11+R21)/2の関係に基づき、R21=2R-R11の演算式により求めることができる。
次に、制御装置4は、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351と出力回転部材352とが回転同期したか否かを判定する(ステップS66)。この判定は、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度と出力回転部材352の回転速度との差が所定値以下か否かによって行う。この所定値は、ステップS62の所定値と同様、第2のクラッチ機構35の連結部材353と出力回転部材352とを円滑に噛み合わせることができる値である。
制御装置4は、ステップS66の判定の結果がYesとなったとき、フロントモータ31の回転速度を維持できる程度の値にフロントモータ31のトルクを制限し(ステップS67)、その状態で第2のクラッチ機構35のアクチュエータ354を制御して、入力回転部材351と出力回転部材352とを相対回転不能に連結する(ステップS68)。
これにより、4輪駆動車1が4輪駆動状態となる。その後、制御装置4は、主駆動装置2のリヤモータ21とフロントモータ31とを協調的に制御し、リヤモータ21及びフロントモータ31のそれぞれに前後駆動力配分比に応じた駆動力を発生させる。
図5は、第2のクラッチ機構35を締結した後に第1のクラッチ機構34を締結する処理を示すフローチャートである。このフローチャートのステップS71~S78の各処理は、図4に示すフローチャートのステップS61~S68の処理に対して、第1のクラッチ機構34に対する処理と第2のクラッチ機構35に対する処理の順序を入れ替えたものであるので、詳細な説明を省略する。
図6(a)は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うときのデフケース回転速度R、第1のクラッチ機構34の出力回転部材342の回転速度R12、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度R21、及び第2のクラッチ機構35の出力回転部材352の回転速度R22の変化の一例を示すグラフである。
図6(b)は、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り替えを行うときのフロントモータ31のトルク(指令値)の変化の一例を示すグラフである。図6(a)及び(b)の横軸は時間軸である。
図6(a)のグラフでは、4輪駆動状態への切り替え前の2輪駆動状態において、第1のクラッチ機構34の出力回転部材342の回転速度R12が第2のクラッチ機構35の出力回転部材352の回転速度R22よりも遅い場合を示している。横軸のTは、図2のフローチャートのステップS1の判定がYesとなった時刻である。Tは、図4のフローチャートのステップS62の判定がYesとなった時刻である。Tは、第1のクラッチ機構34の締結が完了した時刻である。Tは、図4のフローチャートのステップS66の判定がYesとなった時点である。Tは、第2のクラッチ機構35の締結が完了した時刻である。
図6(a)及び(b)に示すように、第1のクラッチ機構34の出力回転部材342の回転速度R12が第2のクラッチ機構35の出力回転部材352の回転速度R22よりも遅い場合には、まず第1のクラッチ機構34を回転同期させて締結した後、さらにフロントモータ31の回転速度を増速させて第2のクラッチ機構35を回転同期させ、その後に第2のクラッチ機構35を締結する。時刻Tにおいて第2のクラッチ機構35の締結が完了した後は、4輪駆動状態での走行に適した駆動力(トルク)をフロントモータ31に発生させる。なお、時刻T以降は、第2のクラッチ機構35の入力回転部材351の回転速度R21と出力回転部材352の回転速度R22とが一致するが、図6(a)では、図示内容の明確化のため、回転速度R21を示す二点鎖線と回転速度R22を示す一点鎖線とを上下にずらして図示している。
(第1の実施の形態の効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、緊急時を除く通常の2輪駆動状態での走行時において、4輪駆動状態への切り替えを行うとき、第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35のうちの一方を締結した後に他方を締結するので、第1のクラッチ機構34と第2のクラッチ機構35とを同時に締結する場合に比較して、4輪駆動状態への切り替え時に発生するNVの最大値を低減することができる。また、第1及び第2のクラッチ機構34,35のうち、出力回転部材342,352の回転速度が遅い方のクラッチ機構を先に締結するので、4輪駆動状態への切り替え時におけるフロントモータ31の回転速度の変動量を少なくすることができ、速やかに4輪駆動状態への移行が可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について、図7を参照して説明する。図7は、第2の実施の形態に係る4輪駆動車1Aの概略の構成例を模式的に示す概略構成図である。第1の実施の形態では、左後輪11及び右後輪12が主駆動輪であり、左前輪13及び右前輪14が副駆動輪である場合について説明したが、第2の実施の形態に係る4輪駆動車1Aは、左前輪13及び右前輪14が主駆動輪であり、左後輪11及び右後輪12が副駆動輪である。
4輪駆動車1Aは、左前輪13及び右前輪14を回転駆動するエンジン24を有しており、エンジン24の駆動力がトランスミッション25及びディファレンシャル装置23を介して左前輪13及び右前輪14に伝達される。ディファレンシャル装置23は、第1の実施の形態に係る主駆動装置2のディファレンシャル装置23と同様に構成されている。
また、4輪駆動車1Aは、左後輪11及び右後輪12を回転駆動する駆動装置3Aを有している。駆動装置3Aは、駆動機構部30と、駆動機構部30を制御する制御装置300とを有している。駆動機構部30は、第1の実施の形態に係る副駆動装置3と同様、モータ31と、減速機構32と、ディファレンシャル装置33と、第1のクラッチ機構34と、第2のクラッチ機構35とを有している。
駆動機構部30のモータ31は、第1の実施の形態に係るフロントモータ31と同様、副駆動源として機能する高出力型の電動モータである。モータ31には、強電バッテリ50から供給される直流電流をインバータ52によってスイッチングした交流電流が駆動電流として供給される。制御装置300は、インバータ52にスイッチング信号を送り、モータ31の出力トルク及び回転速度を制御する。
第1のクラッチ機構34の出力回転部材342には、左後輪11に連結されたドライブシャフト111が相対回転不能に連結され、第2のクラッチ機構35の出力回転部材352には、右後輪12に連結されたドライブシャフト121が相対回転不能に連結されている。制御装置300は、第1の実施の形態に係る制御装置4と同様に、モータ31、第1のクラッチ機構34、及び第2のクラッチ機構35を制御する。
この第2の実施の形態に係る4輪駆動車1A及び駆動装置3Aによっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。
(付記)
以上、本発明を第1及び第2の実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記第1及び第2の実施の形態では、第1のクラッチ機構34及び第2のクラッチ機構35が噛み合いクラッチである場合について説明したが、これに限らず、例えば複数の摩擦板の摩擦力により駆動力を伝達する摩擦クラッチであってもよい。
1,1A…4輪駆動車
2…主駆動装置
3…副駆動装置
3A…駆動装置
31…フロントモータ(電動モータ)
33…ディファレンシャル装置(差動歯車装置)
334…左サイドギヤ(第1の出力歯車)
335…右サイドギヤ(第2の出力歯車)
34…第1のクラッチ機構
34…第2のクラッチ機構
341,351…入力回転部材
342,352…出力回転部材
4,300…制御装置

Claims (6)

  1. 左右一対の主駆動輪と、左右一対の副駆動輪と、前記左右一対の主駆動輪を回転駆動する主駆動装置と、前記左右一対の副駆動輪を回転駆動する副駆動装置と、前記主駆動装置及び前記副駆動装置を制御する制御装置とを備え、前記左右一対の主駆動輪及び前記左右一対の副駆動輪を回転駆動する4輪駆動状態と前記左右一対の主駆動輪のみを回転駆動する2輪駆動状態とを切り替え可能な4輪駆動車であって、
    前記副駆動装置は、電動モータと、前記電動モータから前記左右一対の副駆動輪のうち一方の副駆動輪への駆動力の伝達を断続する第1のクラッチ機構と、前記電動モータから前記左右一対の副駆動輪のうち他方の副駆動輪への駆動力の伝達を断続する第2のクラッチ機構とを有し、
    前記第1のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記一方の副駆動輪側の出力回転部材とを有し、
    前記第2のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記他方の副駆動輪側の出力回転部材とを有し、
    前記制御装置は、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態への切り替えを行うとき、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち一方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち他方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする、
    4輪駆動車。
  2. 前記副駆動装置は、前記電動モータの出力を前記第1のクラッチ機構側及び前記第2のクラッチ機構側に差動を許容して配分する差動歯車装置を有し、
    前記差動歯車装置は、前記電動モータの出力によって回転するケース部材と、前記ケース部材に収容された第1の出力歯車及び第2の出力歯車とを有し、前記第1の出力歯車が前記第1のクラッチ機構の前記入力回転部材に連結され、前記第2の出力歯車が前記第2のクラッチ機構の前記入力回転部材に連結されており、
    前記制御装置は、前記他方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させるとき、前記一方のクラッチ機構の前記入力回転部材及び前記出力回転部材の回転速度を考慮して前記電動モータの回転速度を制御する、
    請求項1に記載の4輪駆動車。
  3. 前記制御装置は、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態への切り替えを行うとき、前記第1及び第2のクラッチ機構のうち、前記出力回転部材の回転速度が遅い方のクラッチ機構を先に回転同期させて駆動力伝達可能な状態とする、
    請求項2に記載の4輪駆動車。
  4. 前記制御装置は、路面状態又は車両走行状態に応じて、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態への切り替えを速やかに行う必要があるとき、前記第1のクラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする制御と前記第2のクラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする制御とを同時並行に行う、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載の4輪駆動車。
  5. 前記制御装置は、前記2輪駆動状態から前記4輪駆動状態への切り替えを行うとき、前記電動モータのトルクを、当該電動モータの回転速度を維持できる程度の値に制限する、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載の4輪駆動車。
  6. 車両の左右輪を駆動する駆動装置であって、
    電動モータと、前記電動モータから前記左右輪のうち一方の車輪への駆動力の伝達を断続する第1のクラッチ機構と、前記電動モータから前記左右輪のうち他方の車輪への駆動力の伝達を断続する第2のクラッチ機構と、前記電動モータならびに前記第1及び第2のクラッチ機構を制御する制御装置とを有し、
    前記第1のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記一方の車輪側の出力回転部材とを有し、
    前記第2のクラッチ機構は、前記電動モータ側の入力回転部材と前記他方の車輪側の出力回転部材とを有し、
    前記制御装置は、前記第1及び第2のクラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とするとき、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち一方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とした後、前記電動モータの回転速度を制御して前記第1及び第2のクラッチ機構のうち他方のクラッチ機構の前記入力回転部材と前記出力回転部材とを回転同期させて当該クラッチ機構を駆動力伝達可能な状態とする、
    駆動装置。
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