JP2024052507A - 研磨用砥粒分散液およびその製造方法、並びに、半導体の研磨方法 - Google Patents

研磨用砥粒分散液およびその製造方法、並びに、半導体の研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】砥粒の粒子硬度を実用的な範囲に抑制した上で、優れた研磨速度を得ることができる研磨用砥粒分散液を提供すること。【解決手段】下記[1]から[5]までの要件を全て満たすシリカ微粒子が分散媒に分散してなる、研磨用砥粒分散液。[1]動的光散乱法により測定される平均粒子径が、5nm以上500nm以下であること。[2]画像解析法により測定される短径/長径比が、0.8以上1以下であること。[3]炭素含有量が、シリカ成分基準で、150ppm未満であること。[4]固体29Si-NMRスペクトルにおける、Q4/Q3のピーク面積比が、1以上10以下であること。[5]真空加熱透過法を用いたFT-IR測定における、P1300/P2300のピーク比の値から、P1110/P2110のピーク比の値を差し引いた値[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]が、0.45以上1以下であること。【選択図】なし

Description

本発明は、各種半導体デバイスの製造などに使用される研磨剤として好適な研磨用砥粒分散液に関する。特に、半導体基板上に形成された絶縁膜を、化学機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング)で平坦化するために好適な研磨用砥粒分散液およびその製造方法、並びに、半導体の研磨方法に関する。
半導体基板や配線基板などの半導体デバイスなどは、その搭載される電子機器などの小型化、高速化、高機能化などに応じるため、高密度化および微細化することで高性能化を実現している。この様な半導体デバイスは、その表面状態が半導体特性に影響するため、半導体の製造工程においては、いわゆるケミカルメカニカルポリッシング(CMP)が適用されており、例えば、シャロートレンチ素子分離(STI)においては余分な酸化物の除去に適用され、配線層を覆う層間絶縁膜上に更に配線層を形成する際には、層間絶縁膜の平坦化に適用される。その他、コンタクトプラグ研磨では、タングステン膜の除去などに必須の技術となっている。また、Cuダマシン配線の形成処理においては、余剰Cu膜などの除去などに必須の技術となっている。
一般にCMP用研磨剤は、砥粒とケミカル成分とからなり、ケミカル成分は対象被膜を酸化や腐食などさせることにより研磨を促進させる役割を担う。一方で砥粒は機械的作用により研磨する役割を持ち、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、またはセリア粒子などが砥粒として使われる。シャロートレンチ素子分離工程では、酸化ケイ素膜の研磨だけではなく、窒化ケイ素膜の研磨も行われる。素子分離を容易にするためには、酸化ケイ素膜の研磨速度が高く、窒化ケイ素膜の研磨速度が低いことが望ましく、この研磨速度比(選択比)も重要である。
従来、このような部材の研磨方法として、比較的粗い1次研磨処理を行った後、精密な2次研磨処理を行うことにより、平滑な表面あるいはスクラッチなどの傷が少ない極めて高精度の表面を得る方法が行われている。
このような仕上げ研磨としての2次研磨に用いる研磨剤に関して、従来、例えば次のような方法などが提案されている。
特許文献1には、不純物の少ないテトラメトキシシランを原料として合成されたシリカ微粒子が水中に分散してなるシリカゾルであって、このシリカ微粒子の平均二次粒子径が20~1000nm、二次粒子の平均粒子径が一次粒子の平均粒子径の1.5~3.0倍であり、金属不純物含有量が1ppm以下、シリカ濃度が10~50重量%であるシリカゾル(コロイダルシリカ)が開示されている。このシリカゾルを半導体研磨用途に研磨用砥粒分散液として適用した場合、金属不純分の要求には適合するものの、研磨用砥粒分散液(シリカゾル)中に、シリコンアルコキシドのオリゴマーなどの未反応物が含まれる場合があり、これらの未反応物が被研磨基板を汚染する場合がある。さらに、粒子内部のシロキサン結合の反応の進行が不十分であるため粒子内部が疎であり、粒子としての硬さが不十分であり、その結果、研磨用途に用いた場合、研磨速度が十分ではないという問題があった。
他方、珪酸ナトリウムを出発原料とした水ガラス法でコロイダルシリカを製造することが広く行われている。具体的には、水硝子(珪酸ナトリウム)をイオン交換により脱アルカリし、得られた珪酸液を塩基性溶媒中で重合させることにより水性シリカゾルを得ることができる。しかしながら、水硝子の原料である珪砂中には不純分としてAl、Ti、Fe、Mg、Caなどの金属が多く含まれるため、半導体基板の研磨材として用いるには不向きな場合があった。
前記水性シリカゾルの不純分を低減させた高純度シリカゾルの製造方法として、例えば、珪酸アルカリ水溶液を陽イオンにより脱アルカリすることにより珪酸液を調製し、続いて酸処理することにより酸性珪酸コロイド液としてから、限外濾過(分画分子量500~10000)によりオリゴ珪酸溶液を調製し、該オリゴ珪酸溶液の一部にアンモニア又はアミンを加えてアルカリ性にすることにより、種粒子分散液を得て、続いて前記珪酸溶液の残部を徐々に添加し、コロイド粒子を成長させてなる高純度シリカゾルの製造方法が開示されている。(特許文献2参照)。この様な製造方法によれば、前記アルコキシド法により製造されたコロイダルシリカに比して緻密な構造を有し硬質な粒子を得ることができる。一方で、酸性珪酸コロイド溶液、またオリゴ珪酸溶液は安定性が十分ではなく工業的な安定生産の側面では課題があった。
近年、例えば、半導体メモリの高記録容量化に対する要求は高く、そのためシリコンウエハの品質向上の目的で、シリコンウエハの研磨は多段階で行われており、特に仕上げ研磨は、例えば、表面粗さ(ヘイズ)の低減と、スクラッチなどの表面欠陥低減とを目的として行われているが、表面欠陥の低減についても更なる品質向上が求められている。このような要求に対応するために、被研磨基板上の表面欠陥を低減する目的で特定の薬剤を添加することが提案されている。特許文献3には、シリコン半導体ウェーハの鏡面研磨用の研磨用組成物であって、コロイダルシリカなどを砥粒とし、表面欠陥を低減する目的でメタノール、グリセリンなどから選ばれる、少なくとも一種類のアルコール性水酸基を有する化合物を含有する研磨液組成物を開示している。
特許文献4には、研磨対象がシリコンウエハであり、砥粒の凝集塊による傷の発生や研磨用懸濁液の残存を防止することを目的として、グリセリンのエチレンオキサイド付加物などの保湿剤を含む研磨用懸濁液が開示されている。
特許文献5には、研磨対象がシリコンウエハであり、シリコンウエハ表面へのシリカ粒子や水溶性高分子化合物の凝集物の付着を抑制して、表面欠陥の増大を抑制するために、水酸基の価数が3以上の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を含む研磨液組成物が開示されている。
特開2005-060217号公報 特開昭61-158810号公報 特開平11―116942号公報 特開2002-329688号公報 特開2014-130958号公報
従来、シリカ砥粒による研磨速度を向上させるためには、シリカ砥粒がより硬質であることが望ましいとされてきた。シリカ砥粒を硬質化させる方法として、シリカ砥粒を構成するシリカ微粒子の緻密化を促進することが行われている。具体的には、シリカ微粒子の調製工程において、加圧加熱処理を行う方法などが知られている。しかしながら、シリカ砥粒の硬質化は、このシリカ砥粒を用いて、半導体基板上に形成された絶縁膜を研磨した場合、該絶縁膜(被研磨膜)上でのスクラッチ発生の原因ともなり、また、硬質化の程度がスクラッチの発生を抑えられる程度のシリカ砥粒では、研磨速度の向上に限界があった。
また、研磨用砥粒分散液に、研磨処理後の表面欠陥を低減する目的でアルコール性水酸基を有する薬剤など、特定の薬剤を添加すると、薬剤自体がこの絶縁膜を汚染する恐れや、薬剤により研磨速度が低下する恐れがあり、望ましくない場合がある。
本発明は、優れた研磨速度を示す研磨用砥粒分散液であり、更に被研磨基板上の表面欠陥を低減させる添加剤などを用いることなしに、被研磨基板上でのスクラッチ発生を十分に抑制できる研磨用砥粒分散液を提供するものである。また、その様な研磨用砥粒分散液の製造方法、並びに、半導体の研磨方法を提供することを目的とする。また、本発明は前記シリカ微粒子からなる砥粒を含む研磨用砥粒分散液であって、高純度のシリカ微粒子からなる砥粒を含む研磨用砥粒分散液の提供を目的とする。
本発明の一態様によれば、下記[1]から[5]までの要件を全て満たすシリカ微粒子が分散媒に分散してなる、研磨用砥粒分散液が提供される。
[1]動的光散乱法により測定される平均粒子径が、5nm以上500nm以下であること。
[2]画像解析法により測定される短径/長径比が、0.8以上1以下であること。
[3]炭素含有量が、シリカ成分基準で、150ppm未満であること。
[4]固体29Si-NMRスペクトルにおける、Si(OSi)に由来するピーク面積をQとし、HO-Si(OSi)に由来するピーク面積をQとしたとき、Q/Qのピーク面積比が、1以上10以下であること。(但し、ケミカルシフトはテトラメチルシランを基準物質とし、Qは-110ppmから-120ppmの範囲のピークであり、Qは-100ppmから-110ppmの範囲のピークである。)
[5]真空加熱透過法を用いた300℃でのFT-IR測定における、3740cm-1付近のピークをP1300とし、3660cm-1付近のピークをP2300とし、110℃でのFT-IR測定における、3740cm-1付近のピークをP1110とし、3660cm-1付近のピークをP2110としたとき、P1300/P2300のピーク比の値から、P1110/P2110のピーク比の値を差し引いた値[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]が、0.45以上1以下であること。
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る研磨用砥粒分散液を用いて半導体を研磨する工程を含む、半導体の研磨方法が提供される。
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る研磨用砥粒分散液を製造する方法であって、下記工程[1]から工程[4]までを含む、研磨用砥粒分散液の製造方法が提供される。
工程[1]シリコン微粒子懸濁液を0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で、水酸化アルカリ水溶液に添加することにより調合液を調製する工程。
工程[2]シリコン微粒子の溶解反応により、前記工程[1]で得られた調合液の温度が60℃に到達次第、この調合液に、更にシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加し、続いて60℃以上90℃以下の液温で、4時間以上24時間以下の時間保持し、珪酸アルカリ溶液を得る工程。
工程[3]前記工程[2]で得られた珪酸アルカリ溶液を、脱アルカリおよび脱金属イオン処理することにより、精製酸性珪酸液を得る工程。
工程[4]前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、水酸化アルカリ水溶液に添加し、75℃以上98℃以下の温度で加熱し、75℃以上98℃以下の温度を30分以上保持し、更に前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度で添加する工程。
本発明によれば、より硬質な砥粒を含む研磨用砥粒分散液に比して優れた研磨速度を発揮できる研磨用砥粒分散液およびその製造方法、並びに、半導体の研磨方法を提供できる。また、本発明の研磨用砥粒分散液は、砥粒の硬さを、スクラッチを発生し難い程度に比較的抑えており、優れた実用性の研磨用砥粒分散液である。
実施例1で得られたシリカ微粒子の固体29Si-NMRスペクトルを示すグラフである。 比較例1で得られたシリカ微粒子の固体29Si-NMRスペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られたシリカ微粒子の300℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフである。 実施例1で得られたシリカ微粒子の110℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフである。 比較例1で得られたシリカ微粒子の300℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフである。 比較例1で得られたシリカ微粒子の110℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフである。
[研磨用砥粒分散液]
まず、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液について説明する。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液は、研磨用砥粒としてシリカ微粒子が分散媒に分散してなるものである。また、シリカ微粒子は、下記[1]から[5]までの要件を全て満たすことが必要である。
なお、前記のとおり、本願の研磨用砥粒分散液は、研磨用砥粒としてシリカ微粒子が分散媒に分散してなるものであり、これを本願明細書では「シリカ微粒子分散液」ないしは「シリカゾル」ともいう。
[短径/長径比と平均粒子径]
本実施形態に係る研磨用砥粒としてのシリカ微粒子の外形的特徴は、球状ないし略球状であり、具体的には、下記[1]および[2]の要件を満たす。
[1]動的光散乱法により測定される平均粒子径が、5nm以上500nm以下であること。
シリカ微粒子の平均粒子径がこの範囲内であれば、優れた研磨速度を示し、被研磨基板上でのスクラッチ発生も抑制される。また、シリカ微粒子の平均粒子径が5nm未満では、十分な研磨速度を得られない場合がある。また、シリカ微粒子の平均粒子径が500nmを超える場合は、シリカ微粒子の粒度分布によっては、被研磨基板上での、うねりの発生あるいはスクラッチの発生を招き易くなる。
シリカ微粒子の平均粒子径(動的光散乱法による)は、8nm以上500nm以下であることがより好ましく、10nm以上300nm以下であることが特に好ましい。
[2]画像解析法により測定される短径/長径比が、0.8以上1以下であること。
従来、研磨速度を向上させる目的で非球状の砥粒の採用あるいは硬質な砥粒の採用などの手段が用いられてきた。しかしながら、本実施形態に係るシリカ微粒子は、後記した作用機構により優れた研磨速度を示すことができるので、一般に研磨速度に優れるとされる非球状の形状をとる必要はない。具体的には、シリカ微粒子の短径/長径比は0.8以上1以下の範囲が好適であり、球状ないし略球状であって構わない。なお、この短径/長径比は、0.9以上1以下であることがより好ましい。
[炭素含有量]
本実施形態に係る研磨用砥粒としてのシリカ微粒子は、その製造原料に由来して、事実上炭素を含まないものであり、具体的には、下記[3]の要件を満たす。
[3]炭素含有量が、シリカ成分基準で、150ppm未満であること。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液をシリコンウエハの研磨用途など汚染を嫌う用途に適用可能である。炭素含有量は、好適にはシリカ成分基準で、130ppm未満が推奨され、更には、120ppm未満が推奨される。
なお、研磨用砥粒については、既存公知の方法、例えばICP分析やSEM-EDS分析を用いることにより、シリカ微粒子であることを確認できる。
[固体29Si-NMRスペクトル]
本実施形態に係る研磨用砥粒としてのシリカ微粒子は、後記した作用機構で、従来の研磨用シリカ微粒子に比して、硬質である必要がなく、同等ないしそれ以下の硬さで、従来の研磨用シリカ微粒子に比べて優れた研磨速度を示すことができる。すなわち、下記[4]の要件を満たす。
[4]固体29Si-NMRスペクトルにおける、Si(OSi)に由来するピーク面積をQとし、HO-Si(OSi)に由来するピーク面積をQとしたとき、Q/Qのピーク面積比が、1以上10以下であること。(但し、ケミカルシフトはテトラメチルシランを基準物質とし、Qは-110ppmから-120ppmの範囲のピークであり、Qは-100ppmから-110ppmの範囲のピークである。)
本実施形態では、シリカ微粒子の硬さの指標として、固体29Si-NMRスペクトルにおける、Si(OSi)に由来するピーク面積をQとし、HO-Si(OSi)に由来するピーク面積をQとしたとき、Q/Qのピーク面積比にて規定する。本実施形態の研磨用砥粒としてのシリカ微粒子のQ/Qのピーク面積比は1以上10以下であることが必要である。このピーク面積比がこの範囲にあれば、後記した作用機構により優れた研磨性能を示すことができる。Q/Qのピーク面積比が1未満の場合、シリカ微粒子の硬さの小ささが影響し、十分な研磨速度を得られない場合がある。他方、Q/Qのピーク面積比が10を超える場合は、研磨速度は得られるものの、粒子が硬すぎるためか被研磨基板上でのスクラッチ発生が増大する傾向が強まる。Q/Qのピーク面積比は、2以上6以下であることが好ましい。
[真空加熱透過法を用いたFT-IR]
本実施形態に係る研磨用砥粒としてのシリカ微粒子は、下記[5]の要件を満たす。
[5]真空加熱透過法を用いた3740cm-1付近のピークを孤立シラノール基のピークP1とし、300℃でのP1をP1300とする。3660cm-1付近のピークを水素結合性シラノール基のピークP2とし、300℃でのP2をP2300とする。110℃でのFT-IR測定における、3740cm-1付近のピークを同様にP1110とし、3660cm-1付近のピークをP2110としたとき、P1300/P2300のピーク比の値から、P1110/P2110のピーク比の値を差し引いた値[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]が、0.45以上1以下であること。
[作用機構]
一般的に、粒子物性として研磨速度を向上させるためには、より硬質であることが有効と知られている。粒子がシリカ微粒子である場合、固体29Si-NMRスペクトルにおける、Q(QはSi(OSi)に由来するピーク面積)はあるSiに対して結合する全てのOを介してシロキサン結合を形成していることを示している。一方、Q(QはHO-Si(OSi)に由来するピーク面積)はシロキサン結合を形成していないOが存在することを示している。すなわち、Qが高いほど粒子内部の重合反応が進行していることを示しており、粒子がより硬質であるといえる。従って、[4]のQ/Qの要件を満たすことが優れた研磨性能を示すために必要となる。しかし上述の通り、粒子が硬すぎた場合には被研磨基板上でのスクラッチ発生が増大し好ましくない。
また、一般的に、砥粒と被研磨物の接触点において、砥粒と被研磨物の表面が相互作用を持ち、続いて生じる剪断により被研磨物の内部破断が生じることが知られている(凝着摩耗)。凝着摩耗機構の詳細は明らかではないが、発明者らはシリカ微粒子砥粒と、被研磨物としての酸化膜基板の関係においては、砥粒表面のシラノール基と、酸化膜基板表面のシラノール基とで脱水縮合反応が生じることで凝着摩耗が進行すると推測している。さらに、凝着摩耗は、研磨時の摩擦熱により促進されるとも推測している。
[5]のFT-IR測定による[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]の要件は、研磨に伴う摩擦熱によるシラノール基の定量的変化を示したものであり、一般に、P1は、隣り合うシラノール基から距離が離れており、シラノール基間で水素結合していないため、孤立シラノール基と呼ばれている。一方、P2は隣接するシラノール基が水素結合しているため、水素結合性シラノールと呼ばれている。
P1/P2は孤立シラノール基と水素結合性シラノール基の比を示しており、P1/P2の比が大きい場合は、孤立シラノール基の割合が高いことを示している。
一般に温度が高くなるとシラノール基は隣り合うシラノール基と脱水縮合し、シロキサン結合が進む。この場合、孤立シラノール基は水素結合性シラノール基よりもシロキサン結合が進みにくいことが知られている。
また、研磨において、砥粒と基板の接触部では摩擦によって非常に高圧・高温になることが知られており、[5]の要件は、摩擦熱の発生により前記凝着作用が進行する度合を示していると推察される。
温度変化と共にP1/P2が変化することは、孤立シラノール基と水素結合性シラノール基の量的関係が変化したことを示している。つまり、FT-IR測定による[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]の値が正の値である場合、300℃での孤立シラノール基に対する水素結合性シラノール基の減少がより大きいことを示している。水素結合性シラノール基は隣接するシラノール基間の水素結合や、あるシラノール基に水分子が吸着した状態などを示している。孤立シラノール基に比べ、水素結合性シラノール基は水素結合により安定化しているために化学反応性が低く、凝着摩耗が進行し辛いと推測される。
すなわち、本発明者らは[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]の値が高い場合は、凝着摩耗の進行を促進し、研磨砥粒として用いた場合に優れた研磨速度が得られると考えた。しかし、[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]の値が大きすぎる場合には過大な摩擦熱が発生し凝着摩耗が進行しすぎるためか、スクラッチが増大し好ましくない。
以上のとおり、本実施形態に係る研磨用砥粒は、Q/Qのピーク面積比が1以上10以下の範囲にあるような、従来の砥粒に比して、決して硬い砥粒ではないものの、[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]の値が0.45以上1以下の範囲を示すような優れた凝着作用を示す砥粒であり、優れた研磨速度を示しながらもスクラッチの発生を抑制することができる。
[粒子径分布]
本実施形態に係る研磨用砥粒においては、画像解析による粒子径分布において、累積頻度10%粒子径をD10とし、累積頻度50%粒子径をD50とし、累積頻度90%粒子径をD90としたとき、下記数式(F1)で表される条件を満たすことが好ましい。
0.9≦[(D10+D90)/2]/D50≦1.1・・・(F1)
なお、前記累積頻度10%粒子径D10、累積頻度50%粒子径D50及び累積頻度90%粒子径D90は、何れも粒子径が小さい側からの累積頻度粒子径を意味する。
[(D10+D90)/2]/D50は、粒子径分布の広さを表しており、[(D10+D90)/2]/D50の値が大きい程、粒子径分布の幅が広くなり、同じく[(D10+D90)/2]/D50の値が小さい程、粒子径分布の幅が狭くなる。本実施形態に係る研磨用砥粒においては、0.9以上、1.1以下の範囲であり、優れた性能を示すことができる。
研磨時には、砥粒は被研磨基板と研磨パッドの間に生じた空間を溶媒と共に、被研磨基板と研磨パッドの両方に接触しながら運動している。しかしながら、比較的大きな砥粒と、比較的小さな砥粒ではその運動速度に差が生じ、結果として単位時間あたりの砥粒と被研磨基板の接触が不均一であり、具体的には、被研磨基板上において比較的大きな砥粒が積極的に接触する領域と、比較的小さな砥粒が積極的に接触する箇所が存在する。それが研磨後の基板の表面粗さを悪化させる原因であり、粒子径分布の幅が狭いことで上記砥粒の運動様式の不均一性を改善し、研磨速度と面精度を好適なレベルで得ることができるものと推察している。具体的には、数式(F1)の値が0.9を下回るとD10が過少、又はD50が過大である場合があり前述の効果が不十分であり、1.1を上回るとD90が過大、又はD50が過少である、また分布幅が広すぎるためか面精度が低下する傾向にあるため好ましくない。従って、数式(F1)の条件を満たす範囲で優れた研磨速度または面精度を達成することができる。
前述のとおり、[(D10+D90)/2]/D50の値は、0.9以上1.1以下であることが好ましく、0.95以上1.05以下であることがより好ましい。
[固形分濃度]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液における固形分濃度は、0.3質量%以上50質量%以下であることが好ましい。この固形分濃度が0.3質量%より低い場合、所望の研磨速度に到達できない可能性がある。逆に固形分濃度が50質量%を超えると、研磨砥粒の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。なお、研磨用砥粒分散液における固形分濃度は、シリカ微粒子の濃度を意味する。同様の観点から、固形分濃度は、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
[純度]
本実施形態に係る研磨用砥粒としてのシリカ微粒子は、前記のとおり、炭素含有量が150ppm未満(シリカ成分基準)であれば、例えば、シリコンウエハの研磨用途などに好適に使用できる。更に、純度を求められる用途に適用する場合は、研磨用砥粒分散液のシリカ固形分におけるAl濃度が20ppm以下であり、Ca、Ni、およびNa濃度がそれぞれ10ppm以下であり、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Ag、およびPb濃度がそれぞれ5ppm以下であることが好ましい。
[分散液中の各種成分]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液は、分散媒として、水および有機溶媒のうちの少なくとも1つを含む。この分散媒としては、純水、超純水、およびイオン交換水などのような水を用いることが好ましい。
さらに、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液は、研磨性能を制御するための添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤、pH緩衝剤および沈降抑制剤なる群より選ばれる1種以上を添加することで、研磨用組成物(研磨用スラリー)として好適に用いることができる。
[分散媒]
分散媒として、水以外の例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、およびメチルイソカルビノールなど)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、およびシクロヘキサノンなど)、エーテル類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、および3,4-ジヒドロ-2H-ピランなど)、グリコールエーテル類(2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、およびエチレングリコールジメチルエーテルなど)、グリコールエーテルアセテート類(2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、および2-ブトキシエチルアセテートなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、およびエチレンカーボネートなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、およびキシレンなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、およびシクロヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、1,2-ジクロルエタン、ジクロロプロパン、およびクロルベンゼンなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、並びに、ピロリドン類(N-メチル-2-ピロリドン、およびN-オクチル-2-ピロリドンなど)などが挙げられる。これらを水と混合して用いてもよい。
[研磨促進剤]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を使用することができる。この研磨促進剤としては、過酸化水素、過酢酸、および過酸化尿素などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような過酸化水素などの研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、またはフッ酸などの酸、あるいはこれらの酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩、並びに、これらの混合物などが挙げられる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
[界面活性剤、親水性化合物]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液には、分散性や安定性を向上させるために、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、または両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。界面活性剤および親水性化合物の少なくとも1つは、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤および親水性化合物の少なくとも1つとしては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステル塩などが挙げられる。カルボン酸塩としては、石鹸、N-アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、およびアシル化ペプチドなどが挙げられる。スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびN-アシルスルホン酸塩などが挙げられる。硫酸エステル塩としては、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、およびアルキルアミド硫酸塩などが挙げられる。リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、および、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩などが挙げられる。
陽イオン界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩などが挙げられる。
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、およびアルキルアミンオキサイドが挙げられる。
非イオン界面活性剤としては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、または含窒素型が挙げられる。エーテル型としては、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。エーテルエステル型としては、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、およびソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。エステル型としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、およびショ糖エステルなどが挙げられる。含窒素型としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、およびポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。また、非イオン界面活性剤としては、その他にフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、または非イオン系界面活性剤が好ましい。また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、およびナトリウム塩などが挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
さらに、その他の界面活性剤、または親水性化合物としては、エステル類(グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステルなど)、エーテル類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、およびアルケニルポリプロピレングリコールなど)、多糖類(アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン、およびプルランなど)、アミノ酸塩(グリシンアンモニウム塩およびグリシンナトリウム塩など)、ポリカルボン酸およびその塩(ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p-スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩、およびポリグリオキシル酸など)、ビニル系ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクロレインなど)、スルホン酸およびその塩(メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1-アリルスルホン酸ナトリウム塩、2-アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、および3-エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩など)、並びに、アミド類(プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミドおよびスルファニルアミドなど)などが挙げられる。
なお、適用する被研磨基材がガラス基板などである場合は、何れの界面活性剤であっても好適に使用できる。ただし、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物などによる汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液が、界面活性剤および親水性化合物のうちの少なくとも1つを含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上10g以下とすることが好ましく、0.01g以上5g以下とすることがより好ましく、0.1g以上3g以下とすることが特に好ましい。界面活性剤および親水性化合物のうちの少なくとも1つの含有量が前記下限以上であれば、充分な効果を得ることができ、他方、前記上限以下であれば、研磨速度の低下を防止できる。
[複素環化合物]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有してもよい。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子、または水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、およびホウ素原子などが挙げられるが、これらに限定されない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、およびテトラゾールなどが挙げられる。より具体的には、1,2,3,4-テトラゾール、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾール、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾール、1,2,3-トリアゾール、4-アミノ-1,2,3-トリアゾール、4,5-ジアミノ-1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ1,2,4-トリアゾール、および3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[pH調整剤]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液は、上記各添加剤の効果を高めるためなどに、必要に応じて酸または塩基およびそれらの塩類化合物(以下、pH調整剤ともいう)を添加して、pHを調節することができる。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。このpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、並びに、アミン(エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、およびテトラメチルアミンなど)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。このpH調整剤としては、ヒドロキシ酸類(酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、およびグリセリン酸など)、並びに、鉱酸(塩酸、および硝酸など)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[pH緩衝剤]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用してもよい。pH緩衝剤としては、リン酸塩(リン酸2水素アンモニウム、およびリン酸水素2アンモニウム)、ホウ酸塩(4ホウ酸アンモ四水和水など)、並びに、有機酸塩などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[沈降抑制剤]
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液には、沈降を抑制し、仮に沈降した場合であって易分散化させる目的で、沈降抑制剤を添加してもよい。沈降抑制剤としては、特に制限はないが、ポリカルボン酸系界面活性剤、陰イオン系高分子界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボン酸系共重合体ナトリウム塩、カルボン酸系共重合体アンモニウム塩、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸、スルホン酸系共重合体ナトリウム塩、脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩エステル、アルキル硫酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジウムクロリド、アルキルカルボキシベタイン、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン結合物、カルボキシメチルセルロース、オレフィン・無水マレイン酸共重合物、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロック、ポリマーでんぷん、ポリエチレンイミン、アミノアルキルアクリレート共重合体、ポリビニルイミダソリン、およびサトキンサンなどが挙げられる。
なお、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液に沈降抑制剤を配合する場合の含有量については、総量として、研磨用砥粒分散液の1L中、0.001g以上10g以下とすることが好ましく、0.01g以上5g以下とすることがより好ましく、0.1g以上3g以下とすることが特に好ましい。この含有量が前記下限以上であれば、充分な効果を得ることができ、他方、前記上限以下であれば、研磨速度の低下を防止できる。
[研磨用砥粒分散液の製造方法]
次に、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液の製造方法について説明する。
従来、シリカ微粒子分散液(シリカゾル)の製造方法の一つとして、核粒子分散液に酸性珪酸液を添加することにより、核粒子の粒子成長を行うシリカゾルの製造方法が知られている。前記核粒子とは、粒子成長の起点となる微小粒子を意味するもので、種粒子と呼ばれることもある。核粒子分散液としては、前記シリカゾルの製造方法において、粒子成長が進行するものであれば格別に制限はなく、例えば、製造しようとしているシリカゾルより微小なシリカの分散液を挙げることができる。
前記酸性珪酸液は、珪酸アルカリを脱アルカリすることにより得られる。ここで珪酸アルカリの製造方法としては、例えば、(1)特開平9-110416号公報に開示されるような珪酸アルカリガラスカレットを珪酸カルシウムよりなる種結晶の存在下に水に溶解して珪酸アルカリ水溶液を得た後、この珪酸アルカリ水溶液を濾過してなる珪酸アルカリ水溶液の製造方法、(2)特開平6-171924号公報に開示されるような軟質珪石に水酸化アルカリ(AOH;A:アルカリ金属)水溶液を加えて、該珪石中の珪酸分を溶解させることでAO・nSiOの組成を有する珪酸アルカリ水溶液を製造するに際し、水溶液中に過酸化水素を添加して軟質珪石に由来する還元物質を酸化させることを特徴とする珪酸アルカリ水溶液の製造方法、並びに、(3)特公昭59-1216号公報に開示されるような金属珪素などの電熱冶金工業から排出する微細なシリカ含有副生物と液体苛性アルカリとを反応させて固形珪酸アルカリを得る固形珪酸アルカリの製造方法などが知られている。
これに対し、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液の製造方法では、原料として用いる珪酸アルカリとして、次に述べる製造方法で得られた珪酸アルカリ溶液を用いることが好ましい。即ち、シリコン微粒子懸濁液を0.05g/min・L以上5.0g/min・L以下の添加速度で、水酸化アルカリ水溶液に添加することにより反応液を調製し、シリコン微粒子の溶解反応により、一つ前の工程で得られた反応液の温度が60℃に到達次第、この反応液に、更にシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5.0g/min・L以下の添加速度で添加し、続いて60℃以上90℃以下の液温で4時間以上24時間以下の時間保持し、得られた珪酸アルカリ溶液を原料として使用することが好ましい。このようにして得られた珪酸アルカリ溶液は、SiO/アルカリのモル比が1以上4以下であり、珪酸アルカリの分子量が30,000以下である。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液の製造方法では、前記のとおり、シリコン微粒子懸濁液をアルカリ溶液に添加することにより反応液を調製し、シリコン微粒子を溶解している。溶解反応は後述する様式であると筆者らは推定しているが、この工程における前記モル比が4以下であることが好ましく、好適には1以上4以下の範囲が推奨される。前記モル比が4を超えると溶解反応が十分に進行せず、また得られた珪酸アルカリの分子量が30000を超える場合がある。前記モル比が1以下であると、続く工程[3]での脱アルカリ工程で除去すべきアルカリ量が過大になり、脱アルカリに要する時間が増えるため経済的に好ましくない。
また、溶解反応の液温は60℃以上90℃未満が好ましい。60℃未満の場合はシリコン微粒子の溶解反応が十分に進行しない場合がある、又は溶解工程の時間が長くなる傾向にあり経済的に好ましくない。溶解反応の液温が90℃を超える場合は溶解反応の進行は十分であるが、溶解反応における水素の発生速度が著しく速く、制御が困難であるため安全上好ましくない。
得られた珪酸アルカリの分子量が30000を超えると、続く工程[3]での脱アルカリ・脱金属イオン処理において、金属イオンが珪酸アルカリ骨格内で安定化してしまうためか所望の純度を得る事が難しい場合がある。
そして、本実施形態に係る研磨用砥粒分散液の製造方法では、前記珪酸アルカリ溶液を脱アルカリ・脱金属イオン処理を行うことにより、精製酸性珪酸液を調製し、この精製酸性珪酸液と、水酸化アルカリ水溶液を所定の条件にて反応させて、前述の本実施形態に係る研磨用砥粒分散液を得ることができる。
本実施形態に係る研磨用砥粒分散液の製造方法は、前述の本実施形態に係る研磨用砥粒分散液を製造する方法であって、下記工程[1]から工程[4]までを含む方法である。
工程[1]シリコン微粒子懸濁液を0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で、水酸化アルカリ水溶液に添加することにより調合液を調製する工程。
工程[2]シリコン微粒子の溶解反応により、前記工程[1]で得られた調合液の温度が60℃に到達次第、この調合液に、更にシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加し、続いて60℃以上90℃以下の液温で、4時間以上24時間以下の時間保持し、珪酸アルカリ溶液を得る工程。
工程[3]前記工程[2]で得られた珪酸アルカリ溶液を、脱アルカリおよび脱金属イオン処理することにより、精製酸性珪酸液を得る工程。
工程[4]前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、水酸化アルカリ水溶液に添加し、75℃以上98℃以下の温度で加熱し、75℃以上98℃以下の温度を30分以上保持し、更に前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度で添加する工程。
工程[1]では、常温にて、シリコン微粒子懸濁液を0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で、水酸化アルカリ水溶液に添加することにより、調合液を調製する。なお、本願明細書では前記工程[1]でのシリコン微粒子懸濁液の添加を「シリコン微粒子懸濁液の一段目添加」とも言う。また、添加速度の単位「g/min・L」は、水酸化アルカリ水溶液の単位量(1L)に対し、毎分添加されるシリコン微粒子懸濁液(固形分換算)の質量を意味する。ここで、単位「g/min・L」は、単位「g/(min・L)」とも表示できる。
シリコン微粒子懸濁液は、例えば、超純水にシリコン微粒子(金属シリコン粉末)を分散して得ることができる。シリコン微粒子の平均粒子径(動的光散乱法による)は、特に制限されないが、通常は、0.03μm以上10000μm以下であり、0.03μm以上500μm以下であることがより好ましい。
シリコン微粒子の製造方法は、特に制限されないが、高純度のシリコン微粒子を得易いことから、シーメンス法あるいは冶金法が好ましい。
シリコン微粒子懸濁液は、具体的には、超純水にシリコン微粒子を添加し、例えば、一般公知の攪拌機を用いて攪拌し、シリコン微粒子懸濁液とすることができる。
シリコン微粒子分散液のシリコン固形分は、水酸化アルカリ水溶液との反応を考慮すると、実用的には、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
なお、シリコン微粒子の純度は、最終的に得られるシリカ微粒子分散液の半導体研磨用途における要求性能を考慮し、シリコン固形分に対するAlおよびNi濃度がそれぞれ1%以下であることが好ましい。本明細書においては、シリコン微粒子懸濁液を「B液」という場合がある。
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどの水溶液から選ばれる。
水酸化アルカリ水溶液の濃度は、水溶液の性状を保っている限り、特に制限されない。ただし、水酸化アルカリ水溶液の濃度は、常温で、1質量%以上48質量%以下であることが好ましい。
本明細書においては、水酸化アルカリ水溶液を「A液」という場合がある。
具体的には、反応容器に水酸化アルカリ水溶液を注入し、攪拌しながら、シリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加して調合液を得る。
調合液においては、金属シリコン微粒子が水酸化アルカリ水溶液に溶解し、例えば、次式の反応が生じて、珪酸アルカリが生成し始めているものと推察される。なお、次式の反応は、水酸化アルカリがNaOHの例である。
Si+2NaOH+HO→NaSiO+2H
なお、本明細書において、「調合液」とは、水酸化アルカリ水溶液中にシリコン微粒子が存在し、水酸化アルカリとシリコンとの反応も生じている状態の溶液を意味する。
シリコン微粒子懸濁液の添加速度は、添加速度が前記範囲であれば、シリコン微粒子の水酸化アルカリへの溶解に伴う発熱反応により、調合液の温度が60℃程度となり易く、シリコン微粒子の溶解と、珪酸アルカリの生成が進行し易いので好ましい。
添加速度が0.05g/min・L未満では、発熱反応が弱く、外部からの加熱が必要となる場合もあるので好ましくない。他方、添加速度が5.0g/min・Lを超えると、水素ガスを発生しながら急激に発熱反応が進行することがあり、温度制御し難く、操作に危険が伴うので好ましくない。
シリコン微粒子懸濁液の添加の際には、反応容器中の水酸化アルカリ水溶液ないし調合液に、チューブなどを介して窒素ガスなどの不活性ガスを吹込み、反応容器内を爆発限界範囲外の状態にすることが望ましい。
工程[2]では、シリコン微粒子の溶解反応により、工程[1]で得られた調合液の温度が60℃に到達次第、この調合液に、更にシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加し、続いて60℃以上90℃以下の液温で、4時間以上24時間以下の時間保持する。なお、本願明細書では前記工程[2]でのシリコン微粒子懸濁液の添加を「シリコン微粒子懸濁液の二段目添加」とも言う。また、「シリコン微粒子懸濁液の二段目添加」において添加される「シリコン微粒子懸濁液」を「追加のシリコン微粒子懸濁液」ともいう。
この調合液は、シリコン微粒子の水酸化アルカリに対する溶解反応に伴う発熱により温度が上昇する。反応液の温度が60℃に到達次第、速やかに追加のシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加する。
工程[2]で、追加でのシリコン微粒子懸濁液添加を行うことは、温度60℃に到達した調合液の液温を引き続き60℃以上に保持することを目的としている。温度60℃以上を保持することにより、金属シリコン微粒子の溶解が促進され、珪酸アルカリが生成される。
添加速度が前記範囲内であれば、金属シリコン微粒子の水酸化アルカリへの溶解に伴う発熱反応により、調合液の温度が60℃程度となり易く、金属シリコン微粒子の溶解と、珪酸アルカリの生成が進行し易いので好ましい。ここで調合液の温度は60℃以上90℃以下であることが好ましい。
添加速度が0.05g/min・L未満では、発熱反応が弱く、外部からの加熱が必要となる場合もあるので好ましくない。他方、添加速度が5g/min・Lを超えると、水素ガスを発生しながら急激に反応が進行することがあり、制御し難く、操作に危険が伴う。
通常は、調合液の温度を60℃以上90℃以下で、4時間以上24時間以下の時間保持することが好ましい。この範囲であれば、珪酸アルカリの生成が十分に進行する。なお、実用的には、調合液中の水素ガス濃度が100ppm以下となったことを確認してから、前記温度範囲の維持を終了させることが好ましい。
工程[2]で得られた珪酸アルカリ水溶液は、SiO/アルカリのモル比が1以上4以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましい。このモル比が前記範囲内であれば、金属イオンの除去の点でも有利である。
工程[2]で得られた珪酸アルカリ水溶液における珪酸アルカリの分子量が、30,000以下であることが好ましい。珪酸アルカリの分子量が前記範囲内であれば、後に続く精製工程での金属成分除去が進行しやすく有利である。
工程[3]では、工程[2]で得られた珪酸アルカリ水溶液を、脱アルカリおよび脱金属イオン処理することにより、精製酸性珪酸液を調製する。
本明細書における、脱アルカリおよび脱金属イオン処理とは、珪酸アルカリ水溶液のpHを下げることと、金属イオンの低減を同時に行う処理を意味する。通常は、陽イオン交換処理により脱アルカリおよび脱金属イオン処理を行うことができる。ここで陽イオン交換処理は2回以上行うことが好ましく、他にキレートイオン交換処理を併用しても構わない。なお、最初に行う陽イオン交換においては、pH値を7以上降下させることが好ましい。すなわち、1回目の陽イオン交換前後のpH値の差が7以上であることが好ましい。pHを7以上降下させることにより、脱金属イオンが十分に進行し、保存安定性に優れた精製酸性珪酸液を得る点で望ましいものとなる。
なお、本願明細書においては、陽イオン交換処理とキレートイオン交換処理を1回づつ受けた珪酸液を「第一精製酸性珪酸液」ともいう。また、「第一精製酸性珪酸液」であって更に陽イオン交換処理を受けたものを「第二精製酸性珪酸液」ともいう。
この精製酸性珪酸液は、そのシリカ固形分に対するAl濃度が20ppm以下であり、Ca、Ni、およびNa濃度がそれぞれ10ppm以下であり、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Ag、およびPb濃度がそれぞれ5ppm以下であることが好ましい。この条件を満たすような精製酸性珪酸液を原料としてシリカ微粒子分散液を調製した場合、そのシリカ微粒子は、金属イオン成分による珪酸重合に対する触媒的作用が生じないためか、シラノール基を多く含む傾向にあり、砥粒の硬度は格別に高いとは言い難い。しかし、詳細は明らかではないが、シラノール基の熱的反応性が高くなるためか、例えば、係るシリカ微粒子を研磨用砥粒として用いると、砥粒と被研磨物の接触点において前記の凝着摩耗が生じ易くなるため、優れた研磨速度を示すことが可能となる。
精製酸性珪酸液は、シリカ濃度が、1質量%以上6質量%以下であることが好ましい。シリカ濃度が1質量%未満の場合、添加する精製珪酸液が多量に必要となるため、経済上好ましくない。他方、6質量%を超えると、酸性珪酸液の安定性が低下し、凝集する場合があり好ましくない。
工程[4]では、工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、水酸化アルカリ水溶液に添加し、75℃以上98℃以下の温度で加熱し、75℃以上98℃以下の温度を30分以上保持し、更に前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の別の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度で添加する。なお、本願明細書においては、前記「工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部」を「シード液」と、前記「前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の別の一部」を「フィード液」という場合がある。
工程[4]で最初に水酸化アルカリに精製酸性珪酸液を添加する際の水酸化アルカリ水溶液の濃度は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、精製酸性珪酸液100質量部に対する水酸化アルカリ水溶液の量は、1質量部以上100質量部以下であることが好ましい。水酸化アルカリ水溶液の量が前記下限未満では、添加された精製酸性珪酸液と水酸化アルカリ、および、反応液中のシリカ成分との反応が十分に進行しないため好ましくない。前記上限を超えると添加された精製酸性珪酸液中に含まれるシリカの溶解度が過大となり、最終的に所定の物性を示す本発明のシリカ微粒子分散液を得られなくなり好ましくない。工程[4]で用いる水酸化アルカリ水溶液の量が前記範囲内であれば、最終的に得られる本実施形態に係るシリカ微粒子分散液の物性が所望の範囲で安定的に得ることができる。
最初に精製酸性珪酸液を水酸化アルカリに添加し、75℃以上98℃以下の温度に加熱し、30分以上保持してから、精製酸性珪酸液の一部を、所定の添加速度にて添加する。
精製酸性珪酸液を水酸化アルカリ水溶液に添加した後の加熱温度が前記温度範囲内(75℃以上98℃以下)であれば、後の工程に続く精製酸性珪酸液の重合反応が安定的に進行するため好ましい。前記加熱温度が前記下限(75℃)未満では、添加された精製酸性珪酸液と水酸化アルカリ、および、反応液中のシリカ成分との反応が十分に進行しないため好ましくない。他方、前記加熱温度が上限(98℃)を超えると添加された精製酸性珪酸液と水酸化アルカリ、および、反応液中のシリカ成分との反応が進行するものの制御が困難になり易く、最終的に得られるシリカ微粒子分散液において粗大粒子が発生し易くなるので好ましくない。
精製酸性珪酸液を水酸化アルカリ水溶液に添加し、前記加熱した後の保持時間が30分以上であれば、精製酸性珪酸液と水酸化アルカリの反応が十分に進行し、最終的に得られるシリカ微粒子分散液の物性が所望の範囲で安定的に得られるため好ましい。前記保持時間が30分未満では、精製酸性珪酸液と水酸化アルカリの反応が不充分となり好ましくない。
精製酸性珪酸液を水酸化アルカリ水溶液に添加し、前記加熱した後の混合液に対して添加される精製酸性珪酸液の添加速度が前記範囲内(0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下)であれば、添加された精製酸性珪酸液と水酸化アルカリ、及び反応液中のシリカ成分の有するシラノール基との反応が十分に進行することにより本発明所定の特徴を有するシリカ微粒子(短径/長径比が0.8以上1以下、平均粒子径5nm以上500nm以下)を得やすくなる。精製酸性珪酸液の添加速度が前記下限(0.005g/min・g)未満では、精製酸性珪酸液の添加時間が長くなり、実用的にも経済的に好ましくない。他方、添加速度が前記上限(0.1g/min・g)を超えると、最終的に得られるシリカ微粒子分散液において微小粒子の発生、または凝集粒子の発生を招き易くなるので好ましくない。精製酸性珪酸液の前記添加速度については、より好適には0.005g/min・g以上0.05g/min・g以下の範囲が推奨される。
なお、添加速度の単位「g/min・g」は、シード液中のシリカ固形分に対して、添加する精製酸性珪酸液中のシリカ固形分の添加レートを表すものである。ここで、単位「g/min・g」は「g/(min・g)」とも表示できる。
なお、前記のとおり、最初に精製酸性珪酸液を水酸化アルカリに添加し、75℃以上98℃以下の温度に加熱し、30分以上保持してから、精製酸性珪酸液の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度にて添加するが、係る精製酸性珪酸液の添加処理を複数回に分けて行っても構わない。
また、精製酸性珪酸液の添加処理においては、例えば、精製酸性珪酸液の添加速度を一定にして添加してもよく、精製酸性珪酸液の添加速度を途中で変更して添加しても構わない。
本発明の製造方法においては、工程[4]で用いるシード液(最初に水酸化アルカリ水溶液に添加する精製酸性珪酸液)に代えて、別途本発明の製造方法で予め製造したシリカ微粒子分散液をシード液として用いても構わない。また、本発明の製造方法においては、工程[4]で用いるフィード液(水酸化アルカリ水溶液と精製酸性珪酸液を混合し所定の加熱及び保持を経た後に添加される精製酸性珪酸液)に代えて、別途本発明の製造方法で予め製造したシリカ微粒子分散液をフィード液として用いても構わない。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。また、実施例および比較例におけるシリカ微粒子、またはシリカ微粒子分散液の各種特性の測定方法については、特に断りの無い限り、以下に記す方法にて実施した。
(1)動的光散乱法によって測定されるシリカ微粒子の平均粒子径
粒径測定装置(レーザーパーティクルアナライザー)として、大塚電子株式会社製、型番「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000(測定原理:動的光散乱法、光源波長:665.70nm、セル:10mm角のプラスチックセル)」を用いた。具体的には、シリカ微粒子分散液を0.58%アンモニア水にて希釈して、シリカ濃度1質量%に調整し、レーザーパーティクルアナライザーを用いて測定した。
(2)画像解析法により測定されるシリカ微粒子の短径/長径比および粒子径分布
1)シリカ微粒子の短径/長径比
走査型電子顕微鏡(倍率20万倍)を用いて、シリカ微粒子分散液に含まれる500個のシリカ微粒子を、同一視野内に100個以上のシリカ微粒子を含む画像又は写真にて、無作為に選んだシリカ微粒子100個について、それぞれの短径と長径を測定し、それぞれの短径/長径比(DS/DL)を求める操作を、無作為に選んだ5視野について行い、シリカ微粒子500個の短径/長径比の個数平均を求めてその値をシリカ微粒子の短径/長径比とした。本明細書では、走査型電子顕微鏡として、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-5500(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。
シリカ微粒子の具体的な測定方法は、投影されたシリカ微粒子像の最大径を長軸とし、その長さを測定して、その値を長径(DL)とした。また、長軸上にて長軸を2等分する点を定め、それに直交する直線がシリカ微粒子画像の外縁と交わる2点を求め、同2点間の距離を測定し短径(DS)として、短径/長径比(DS/DL)を求めた。
2)粒子径分布
短径/長径比の測定方法で得たシリカ微粒子500個についてそれぞれの短径と長径の算術平均を当該シリカ微粒子の平均粒子径とし、累積頻度粒子分布(横軸:粒子径、縦軸:累積頻度)を求めた。そして、小径から累積した場合の累積頻度10%粒子径(D10)、累積頻度50%粒子径(D50)および累積頻度90%粒子径(D90)を求め、[(D10+D90)/2]/D50の値を算定した。
なお、シリカ微粒子の短径/長径比が0.9以上の場合は、走査型電子顕微鏡(倍率20万倍)で得られた写真をスキャナーに取り込み、画像解析装置と粒子解析ソフトを用いて累積頻度粒子分布を求めても構わない。画像解析装置としては、例えば、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)を挙げることができる。
(3)炭素含有量
シリカ微粒子分散液30gを110℃で乾燥させ、乾燥させたサンプル0.1gをサンプリングし、炭素硫黄分析装置(LECO社製、CS-844)を用いて、シリカ微粒子中の炭素濃度を測定した。
(4)固体29Si-NMR
29Si-NMR専用ガラスセルにシリカ微粒子分散液の0.6mLを注入し、基準物質としてテトラメチルシラン5重量%重クロロホルム溶液を用い、ピーク位置を0ppmとした。NMR装置(日本電子(株)製、ECZ-400R)にて、逆ゲート付デカップリング法にて29Si-NMRのスペクトルを得た。パルスのフリップ角は30°、パルス繰り返し時間は10秒、積算回数は5000回とした。得られたNMRスペクトルのケミカルシフト-73.0ppmから-120.0ppmの範囲にあるピークのトータルの面積(ST)をシロキサン構造部(Q0構造からQ4構造)のピーク面積とし、ケミカルシフトが-110.0ppmから-120.0ppmの範囲をQ4構造のピークの面積(S4)、同じく-100.0ppmから-110.0ppmの範囲をQ3構造のピーク面積(S3)として、Q4構造のピークの面積(S4/ST)およびQ3構造のピークの面積(S3/ST)を算出した。そして、両構造のピーク面積比(Q4/Q3)の値を算出した。
(5)真空加熱透過法を用いたFT-IR測定
測定装置は、日本分光製FT/IR-6100を用いた。測定サンプルは、シリカ微粒子分散液を110℃で12時間以上乾燥させたもの20mgをディスク成型した。ディスク成型品を透過型セルに導入し、真空加熱前処理装置を用いて、目的温度で真空加熱処理した。加熱処理後、室温まで放冷し、密閉したセルを、前記測定装置を用い、透過法で測定した。測定条件はTGS検出器を用い、積算回数100回、分解能4cm-1、アパーチャ―5mmとした。データ処理には解析ソフトとしてスペクトルマネージャーを用い、ベースライン補正と1870cm-1(1100cm-1シロキサンピークの倍音)を用い規格化を行った。
(6)成分分析
各元素の含有率は、以下の方法によって測定するものとする。 (SiO含有量の測定)
シリカ微粒子分散液におけるSiO含有量について、珪酸ナトリウムを原料とした場合は、シリカ微粒子分散液に1000℃灼熱減量を行い秤量し、得られたものの全てがSiOであるとして、その含有量を求めた。
(NaおよびK含有量の測定)
初めに、シリカ微粒子分散液からなる試料約1g(固形分20質量%に調整したもの)を白金皿に採取する。リン酸3mL、硝酸5mL、および弗化水素酸10mLを加えて、サンドバス上で加熱する。乾固したら、少量の水と硝酸50mLを加えて溶解させて100mLのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mLとする。
この溶液で、NaおよびK含有量は、原子吸光分光分析装置(例えば日立製作所社製、Z-2310)で測定する。
(Cr、Cu、Ni、Feなど含有量の測定)
100mLにおさめた溶液から分液10mLを20mLメスフラスコに採取する操作を5回繰り返し、分液10mLを5個得る。そして、これを用いて、Al、Ag、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Zn、UおよびThについて、ICPプラズマ発光分析装置(例えばSII製、SPS5520)にて標準添加法で測定を行う。ここで、同様の方法でブランクも測定して、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
そして、前述の方法で求めたSiOの質量に基づいて、シリカ量に対する各成分の含有率を求めた。
(7)研磨試験方法(研磨用砥粒分散液の調製)
実施例および比較例の各々において得られたシリカ微粒子分散液について、それぞれイオン交換水を加えて希釈し、いずれも固形分濃度1.0質量%に調整し、それぞれ硝酸水溶液(濃度5%)を添加してpH6.0に調整し、研磨用砥粒分散液とした。
(研磨試験方法)
被研磨基板として、熱酸化法により作製したSiO絶縁膜(厚み1μm)基板を準備し、この被研磨基板を研磨装置(ナノファクター株式会社製、NF300)にセットし、研磨パッド(ニッタハース社製「IC-1000/SUBA400同心円タイプ」)を使用し、基板荷重0.04MPa、テーブル回転速度90rpmで研磨用砥粒分散液を200mL/分の速度で1分間供給して研磨を行った。
そして、研磨前後の被研磨基板の重量変化を求めて研磨速度(nm/min)を算定した。また、研磨基材の表面の平滑性(表面粗さ[Ra])を原子間力顕微鏡(AFM、株式会社日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。平滑性と表面粗さは概ね比例関係にあるため、表1には表面粗さを記載した。
[実施例1]
超純水に水酸化ナトリウム(濃度48質量%)を加えて、19質量%の水酸化ナトリウム水溶液1276g(以下、A液ともいう)を得た。
次に、超純水に金属シリコン粉(平均粒子径=0.08μm)を加えて、撹拌して分散することにより、シリコン固形分25質量%のシリコン微粒子懸濁液2728g(以下、B液ともいう)を得た。
次に、A液を撹拌し、反応容器内に窒素ガスを10L/minで吹き込みながら、室温のままB液を、シリコン微粒子懸濁液の一段目添加におけるシリコン微粒子懸濁液の添加速度1.2g/min・Lで0.5時間添加した。この間、水酸化ナトリウムによる金属シリコンの溶解時の反応熱で液温は上昇し、60℃に到達した所で、シリコン微粒子懸濁液の二段目添加におけるシリコン微粒子懸濁液の添加速度を0.4g/min・Lに変更して5.5時間添加した。B液の添加終了後は、外部熱源を使用して、液温60℃で8時間保持し、反応容器内の水素ガス濃度が100ppm以下になったことを確認して、60℃の保持を終了した。
次に、常温まで冷却し、SiO固形分濃度24.1質量%の珪酸アルカリ溶液5949gを得た。この珪酸アルカリのSiO/アルカリ(モル比)は3.03、分子量は227だった。
ここで平均分子量は、高純度珪酸アルカリ溶液をMillipore社製0.22μmフィルターMILLEX-GVを用いて濾過した後、プラスチックセルに充填し、大塚電子社製nanoSAQLAを用いてオートモードで測定し、得られた平均粒子径を下記計算式に従って平均分子量に換算した数値である。
平均分子量={22×π×(平均粒子径)}/6
上記計算は、金原出版の「新しい工業材料の科学 B シリーズ8 シリカとアルミナ」P.68の記載の計算式を適用したものである。なお、以下の実施例および比較例における平均分子量の算出は、全て実施例1と同様に行った。
(精製酸性珪酸液の調製)
上記のようにして得られた珪酸アルカリ溶液に超純水を添加してSiO濃度5%の珪酸アルカリ溶液12,020gを得た。この溶液を、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(デュオライトC255LFH、ローム・アンド・ハース社製)に空間速度2.75h-1で通液させて、pH2.7の酸性珪酸液11,280gを得た。得られた酸性珪酸液のSiO濃度は4.7質量%であった。
次に、酸性珪酸液の全量を6Lのキレートイオン交換樹脂(CR-11三菱化学社製)に空間速度2.75h-1で通液させ、pH2.7の第一精製酸性珪酸液9,660gを得た。得られた精製珪酸液のSiO濃度は4.5質量%であった。
更に、精製酸性珪酸液の全量を上記とは別の6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(デュオライトC255LFH、ローム・アンド・ハース社製)に空間速度2.75h-1で通液させて、pH2.7の精製酸性珪酸液10,049gを得た。得られた第二精製酸性珪酸液のSiO濃度は4.2質量%であった。
(シリカ微粒子分散液の調製)
上記のようにして得られた第二精製酸性珪酸液の一部(318g)をシード液として、第二精製酸性珪酸液の別の一部(9731g)をフィード液として取り出した。
次に超純水524gに48.8質量%の水酸化カリウム水溶液15gを添加し、さらにシード液318gを添加して加熱した。そして85℃となった後、そのまま30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液として第二精製酸性珪酸液1769gを0.02g/min・gの速度で5時間かけて添加した後、添加速度を1.5倍に変更して更に同じくフィード液として第二精製酸性珪酸液7962gを15時間添加した。そしてフィード液の全量をシード液に添加した後、85℃で1時間保持し、室温まで冷却した。
得られた液を、限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製SIP-1013)を用いて、固形分濃度12質量%まで濃縮し、ついでロータリーエバポレーターで固形分濃度48質量%まで濃縮した。そして、得られたシリカ微粒子分散液の金属不純分濃度を上述の方法で測定したところ、シリカ固形分に対する各金属不純分濃度は表1に示すとおりであった。
[実施例2]
実施例1においてシード液として用いた第二精製酸性珪酸液と同様の第二精製酸性珪酸液を347g、同じくフィード液として用いた第二精製酸性珪酸液と同様の第二精製酸性珪酸液を12222g用意した。
次に超純水597gに5.0質量%の水酸化カリウム水溶液159gを添加し、さらに前記シード液347gを添加して加熱した。そして調合液の温度が85℃となった後、そのまま30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液として前記第二精製酸性珪酸液12222gを0.04g/min・gの速度で5時間かけて添加し、更に85℃で1時間保持し、室温まで冷却した。
得られた液を、限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製SIP-1013)を用いて、固形分濃度12質量%まで濃縮し、ついでロータリーエバポレーターで固形分濃度40質量%まで濃縮した。
そして、得られたシリカ微粒子分散液は実施例1と同様に分析を行った。
[実施例3]
実施例1においてシード液として用いた第二精製酸性珪酸液と同様の第二精製酸性珪酸液を659g、同じくフィード液として用いた第二精製酸性珪酸液と同様の第二精製酸性珪酸液を12001g用意した。
次に超純水331gに5.0質量%の水酸化カリウム水溶液224gを添加し、さらに前記シード液659gを添加して加熱した。そして78℃となった後、そのまま30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液として前記第二精製酸性珪酸液12001gを0.02g/min・gの速度で11時間かけて添加した後、78℃で1時間保持し、室温まで冷却した。
得られた液を、限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製SIP-1013)を用いて、12質量%まで濃縮し、ついでロータリーエバポレーターで固形分濃度30質量%まで濃縮した。
そして、得られたシリカ微粒子分散液は実施例1と同様に分析を行った。
[実施例4]
実施例1で得られた固形分濃度48質量%のシリカ微粒子分散液と同様のシリカ微粒子分散液144gに対し、超純水916gと、5.0%の水酸化カリウム水溶液206gを添加し、加熱した。そして90℃となった後、そのまま30分間保持し、当該温度を保持しながら、ここへフィード液として、実施例1においてフィード液として用いた第二精製酸性珪酸液と同様の第二精製酸性珪酸液10541gを0.007g/min・gの速度で14時間かけて添加した後、90℃で1時間保持し、室温まで冷却した。
得られた液を、限外濾過膜(旭化成ケミカルズ社製SIP-1013)を用いて、固形分濃度12質量%まで濃縮し、ついでロータリーエバポレーターで固形分濃度40質量%まで濃縮した。
そして、得られたシリカ微粒子分散液は実施例1と同様に分析を行った。
[比較例1]
SiO固形分濃度24.4質量%の珪酸アルカリ溶液5240gを使用してシリカゾルの調製を行った。この珪酸アルカリの分子量は16,184だった。
(酸性珪酸液の調製)
上記のようにして得られた珪酸アルカリ溶液に超純水を添加してSiO濃度5%の珪酸アルカリ溶液12,020gを得た。この溶液を、6Lの強酸性陽イオン交換樹脂(デュオライトC255LFH、ローム・アンド・ハース社製)に空間速度2.75h-1で通液させて、pH2.6の酸性珪酸液11,120gを得た。得られた酸性珪酸液のSiO濃度は4.6質量%であった。
(シリカゾルの調製)
実施例1における精製酸性珪酸液を、上記のようにして得られた酸性珪酸液に置き換え、添加速度を0.11g/min・gとした以外は実施例1と同様に行った。
[比較例2]
エタノール12,090gと正珪酸エチル6,363.9gとを混合し、混合液a1とした。
次に、超純水6,120gと29%アンモニア水444.9gとを混合し、混合液b1とした。
次に、超純水192.9gとエタノール444.9gとを混合して敷き水とした。
そして、敷き水を撹拌しながら75℃に調整し、ここへ、混合液a1及び混合液b1を、各々10時間で添加が終了するように、同時添加を行った。添加が終了したら、液温を75℃のまま3時間保持して熟成させた後、固形分濃度を調整し、SiO固形分濃度19質量%のシリカゾルを9,646.3g得た。
[各種測定の結果]
実施例および比較例における各種測定の結果を表1に示す。
また、実施例1および比較例1で得られたシリカ微粒子の固体29Si-NMRスペクトルを、図1および図2に示す。実施例1で得られたシリカ微粒子の300℃および110℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフを、図3および図4に示す。比較例1で得られたシリカ微粒子の300℃および110℃でのFT-IR測定の結果を示すグラフを、図5および図6に示す。
Figure 2024052507000001

Claims (9)

  1. 下記[1]から[5]までの要件を全て満たすシリカ微粒子が分散媒に分散してなる、
    研磨用砥粒分散液。
    [1]動的光散乱法により測定される平均粒子径が、5nm以上500nm以下であること。
    [2]画像解析法により測定される短径/長径比が、0.8以上1以下であること。
    [3]炭素含有量が、シリカ成分基準で、150ppm未満であること。
    [4]固体29Si-NMRスペクトルにおける、Si(OSi)に由来するピーク面積をQとし、HO-Si(OSi)に由来するピーク面積をQとしたとき、Q/Qのピーク面積比が、1以上10以下であること。(但し、ケミカルシフトはテトラメチルシランを基準物質とし、Qは-110ppmから-120ppmの範囲のピークであり、Qは-100ppmから-110ppmの範囲のピークである。)
    [5]真空加熱透過法を用いた300℃でのFT-IR測定における、3740cm-1付近のピークをP1300とし、3660cm-1付近のピークをP2300とし、110℃でのFT-IR測定における、3740cm-1付近のピークをP1110とし、3660cm-1付近のピークをP2110としたとき、P1300/P2300のピーク比の値から、P1110/P2110のピーク比の値を差し引いた値[(P1300/P2300)-(P1110/P2110)]が、0.45以上1以下であること。
  2. 画像解析による粒子径分布において、累積頻度10%粒子径をD10とし、累積頻度50%粒子径をD50とし、累積頻度90%粒子径をD90としたとき、下記数式(F1)で表される条件を満たす、請求項1に記載の研磨用砥粒分散液。
    0.9≦[(D10+D90)/2]/D50≦1.1・・・(F1)
  3. 前記研磨用砥粒分散液のシリカ固形分におけるAl濃度が20ppm以下であり、Ca、Ni、およびNa濃度がそれぞれ10ppm以下であり、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Ag、およびPb濃度がそれぞれ5ppm以下である、請求項1または請求項2に記載の研磨用砥粒分散液。
  4. 半導体の研磨用である、請求項3に記載の研磨用砥粒分散液。
  5. 請求項4に記載の研磨用砥粒分散液を用いて半導体を研磨する工程を含む、半導体の研磨方法。
  6. 請求項1に記載の研磨用砥粒分散液を製造する方法であって、下記工程[1]から工程[4]までを含む、研磨用砥粒分散液の製造方法。
    工程[1]シリコン微粒子懸濁液を0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で、水酸化アルカリ水溶液に添加することにより調合液を調製する工程。
    工程[2]シリコン微粒子の溶解反応により、前記工程[1]で得られた調合液の温度が60℃に到達次第、この調合液に、更にシリコン微粒子懸濁液を、0.05g/min・L以上5g/min・L以下の添加速度で添加し、続いて60℃以上90℃以下の液温で、4時間以上24時間以下の時間保持し、珪酸アルカリ溶液を得る工程。
    工程[3]前記工程[2]で得られた珪酸アルカリ溶液を、脱アルカリおよび脱金属イオン処理することにより、精製酸性珪酸液を得る工程。
    工程[4]前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、水酸化アルカリ水溶液に添加し、75℃以上98℃以下の温度で加熱し、75℃以上98℃以下の温度を30分以上保持し、更に前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度で添加する工程。
  7. 前記工程[4]が下記のとおりである、請求項6に記載の研磨用砥粒分散液の製造方法。
    工程[4]前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、水酸化アルカリ水溶液に添加し、78℃以上98℃以下の温度で加熱し、78℃以上98℃以下の温度を30分以上保持し、更に前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液の一部を、0.005g/min・g以上0.1g/min・g以下の添加速度で一定の添加速度にて添加する工程。
  8. 前記工程[3]の脱アルカリおよび脱金属イオン処理が少なくとも2回の陽イオン交換を含み、1回目の陽イオン交換前後のpH値の差が7以上である、請求項6に記載の研磨用砥粒分散液の製造方法。
  9. 前記工程[3]で得られた精製酸性珪酸液のシリカ固形分に対するAl濃度が20ppm以下であり、Ca、Ni、およびNa濃度がそれぞれ10ppm以下であり、Mg、Ti、Cr、Fe、Cu、Zn、Ag、およびPb濃度がそれぞれ5ppm以下である、請求項6に記載の研磨用砥粒分散液の製造方法。
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