JP2024050042A - 電子部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】抵抗値の温度依存性を改善した電子部品を提供すること。【解決手段】すくなくとも2つの内部電極層と、内部電極層の間に積層してある誘電体層と、を含む素体を有する電子部品である。Ni酸化物粒子が、内部電極層と誘電体層との境界に存在する。誘電体層は、第1境界および第2境界で、隣接する内部電極層と接している。また、誘電体層は、第1境界に存在するNi酸化物粒子と接し、かつ、第2境界で内部電極層と接する第1誘電体大粒子と、第1境界で内部電極層と接し、かつ、第2境界に存在するNi酸化物粒子と接する第2誘電体大粒子と、を含む。【選択図】図2

Description

本開示は、誘電体層および内部電極層を有する電子部品に関する。
誘電体層および内部電極層を有するセラミックコンデンサは、様々な電子回路や電源回路などで広く利用されている。このセラミックコンデンサでは、温度変化によって静電容量などの特性が変動せずに、安定していることが求められている。たとえば、特許文献1では、コアシェル構造の誘電体粒子を含む誘電体層を積層した積層セラミックコンデンサを開示しており、当該積層セラミックコンデンサでは、温度による静電容量の変動を抑制できる旨が開示されている。
温度によって変動する特性は、静電容量だけでなく、温度が高くなると抵抗値も低下する傾向となる。そのため、温度による抵抗値の変動を抑制することが求められている。
特開2008-305844号公報
本開示における例示的な実施形態の目的は、抵抗値の温度依存性を改善した電子部品を提供することである。
上記の目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る電子部品は、
すくなくとも2つの内部電極層と、前記内部電極層の間に積層してある誘電体層と、を含む素体を有し、
Ni酸化物粒子が、前記内部電極層と前記誘電体層との境界に存在しており、
前記誘電体層は、
第1境界および第2境界で、隣接する前記内部電極層と接しており、
前記第1境界に存在する前記Ni酸化物粒子と接し、かつ、前記第2境界で前記内部電極層と接する第1誘電体大粒子と、前記第1境界で前記内部電極層と接し、かつ、前記第2境界に存在する前記Ni酸化物粒子と接する第2誘電体大粒子と、を含む。
第1の観点に係る電子部品が上記の特徴を有することで、温度による抵抗値の変動を抑制することができる。たとえば、20℃における電子部品の抵抗値をR20とし、85℃における電子部品の抵抗値をR85として、R20/R85を2.0以下に抑制することができる。
好ましくは、前記Ni酸化物粒子は、前記内部電極層を介して隣接する2つの前記誘電体層の両方と接する第1Ni酸化物粒子を含む。
前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
好ましくは、それぞれの前記内部電極層は、前記素体の一断面において、平均2個以上の前記Ni酸化物粒子と接している。
前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
好ましくは、単位長さあたりの前記内部電極層と接する前記Ni酸化物粒子の平均個数が、0.002個/μm以上である。
前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
前記誘電体層は、前記第1境界の前記Ni酸化物粒子および前記第2境界の前記Ni酸化物粒子の両方と接する第3誘電体大粒子を含んでいてもよく、
好ましくは、単位長さあたりの前記誘電体層に含まれる前記第3誘電体大粒子の平均個数が、0以上、0.0003個/μm以下である。
本開示の第2の観点に係る電子部品は、すくなくとも2つの内部電極層と、前記内部電極層の間に積層してある誘電体層と、を含む素体を有し、
p型半導体粒子が、前記内部電極層と前記誘電体層との境界に存在しており、
前記誘電体層は、
第1境界および第2境界で、隣接する前記内部電極層と接しており、
前記第1境界に存在する前記p型半導体粒子と接し、かつ、前記第2境界で前記内部電極層と接する第1誘電体大粒子と、前記第1境界で前記内部電極層と接し、かつ、前記第2境界に存在する前記p型半導体粒子と接する第2誘電体大粒子と、を含む。
第2の観点に係る電子部品が上記の特徴を有することで、温度による抵抗値の変動を抑制することができる。たとえば、20℃における電子部品の抵抗値をR20とし、85℃における電子部品の抵抗値をR85として、R20/R85を2.0以下に抑制することができる。
図1は、本開示の一実施形態に係る電子部品の断面を示す模式図である。 図2は、図1に示す素体の断面を拡大した模式図である。 図3Aは、誘電体層と内部電極層との境界の一部を拡大した模式図である。 図3Bは、図3Aに示す構造に関係する回路を示す概念図である。 図3Cは、図3Aに示す構造に関係する回路を示す概念図である。 図4Aは、誘電体層と内部電極層との境界の一部を拡大した模式図である。 図4Bは、図4Aに示す構造に関係する等価回路を示す概念図である。 図5は、誘電体層と内部電極層との境界の一部を拡大した模式図である。
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の積層セラミック電子部品2は、図1に示すように、素体4と、当該素体4の外面に形成してある一対の外部電極6と、を有する。
図1に示す素体4の形状は、通常、略直方体状であって、素体4は、Y-Z平面に沿う2つの端面4a,4bと、2つの端面4a,4bを連結する4つの側面4cと、を有する。ただし、素体4の形状は、特に限定されず、楕円柱状、円柱状、その他角柱状等であってもよい。また、素体4の外形寸法も、特に制限されず、たとえば、X軸方向の長さL0を0.2mm~5.7mm、Y軸方向の幅W0を0.1mm~5.0mm、Z軸方向の高さT0を0.1mm~3.0mmとすることができる。なお、本実施形態において、X軸、Y軸、Z軸は、相互に垂直である。
積層セラミック電子部品2は、一対の外部電極6として、一方の端面4aと接する第1外部電極6aと、他方の端面4bと接する第2外部電極6bと、を有する。第1外部電極6aおよび第2外部電極6aは、X軸方向で互いに接触しないように、電気的に絶縁されている。各外部電極6は、導電性を有していればよく、各外部電極6の仕様(材質、構造、厚みなど)は特に限定されない。各外部電極6は、いずれも、焼付電極層や、樹脂電極層、メッキ電極層などを含んでいてもよく、単層構造を有していてもよいし、複数の電極層を含む積層構造を有していてもよい。たとえば、各外部電極6は、Cuを含む焼付電極層-Niメッキ層-Snメッキ層の三層構造(記載の順番に積層する)を有していてもよい。
素体4は、容量領域40と、容量領域40の外側に位置する外装領域41と、を有する。容量領域40は、X軸およびY軸を含む平面に実質的に平行な誘電体層10と内部電極層20とを有し、容量領域40の内部では、誘電体層10と内部電極層20とがZ軸に沿って交互に積層してある。ここで、「実質的に平行」とは、ほとんどの部分が平行であるが、多少平行でない部分を有していてもよいことを意味し、誘電体層10および内部電極層20は、いずれも、多少、凹凸があったり、傾いていたりしてもよい。
容量領域40の内部電極層20は、第1内部電極層21と第2内部電極層22に類別することができる。各第1内部電極層21の縁辺の一部は、一方の端面4aに露出しており、第1内部電極層21は、それぞれ、第1外部電極6aと電気的に接続している。各第2内部電極層22の縁辺の一部は、他方の端面4bに露出しており、第2内部電極層22は、それぞれ、第2外部電極6bと電気的に接続している。
容量領域40の各誘電体層10は、第1内部電極層21と第2内部電極層22との間に積層してある。換言すると、第1内部電極層21および第2内部電極層22は、誘電体層10を介して互いに絶縁されている。このように、容量領域40は、第1内部電極層21、誘電体層10、および、第2内部電極層22が、記載の順で繰り返し積層してある構造を有する。積層セラミック電子部品2に対して電圧を印加すると、第1外部電極6aおよび第2外部電極6bは、互いに異なる極性を有することとなり、容量領域40の各誘電体層10に対して電圧が印加可能となっている。
本実施形態では、誘電体層10と第1内部電極層21との接合界面を第1境界31と称することとし、誘電体層10と第2内部電極層22との接合境界を第2境界32と称することとする。換言すると、各誘電体層10は、第1境界31で第1内部電極層21と接し、第2境界32で第2内部電極層22と接している。なお、本実施形態の説明において、第1内部電極層21と第2内部電極層22とを区別せずに、総称として「内部電極層20」を使用する場合、「内部電極層20」を使用する説明は、第1内部電極層21および第2内部電極層22に共通して関連していることを意味する。
外装領域41は、Z軸方向において、容量領域40の外側に積層してあり、容量領域40の上面および下面を覆っている。また、容量領域40のY軸方向の外側においても、外装領域41が存在していてもよい。つまり、容量領域40のY軸と交差する側面が、内部電極層20を含まない外装領域41で覆われていてもよい。外装領域41の材質および厚みは、特に限定されない。たとえば、外装領域41は、誘電体層10と同様の組成を有する誘電体化合物を含んでいてもよく、当該誘電体化合物と共にガラス成分を含んでいてもよい。また、外装領域41は、原則として、内部電極層20を含まない領域であるが、静電容量に寄与しないダミー電極を含んでいてもよい。
誘電体層10は、主成分として誘電体化合物を含む。誘電体層10の主成分とは、誘電体層10において80モル%以上を占める成分を意味し、主成分である誘電体化合物の材質は、特に限定されない。たとえば、誘電体層10の主成分は、BaTiO3、Ba(Ti,Zr)O3、(Ba,Ca)TiO3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3、(Ca,Sr)TiO3、(Ca,Sr)ZrO3、(Ca,Sr)(Zr,Ti)O3、(K,Na)NbO3などのペロブスカイト構造の誘電体化合物、もしくは、Ba3ZrNb415、Ba3TiNb415、(K,Na)Sr2Nb515などのタングステンブロンズ構造の誘電体化合物から選択することができる。
また、誘電体層10は、主成分と共に、1種または2種以上の副成分を含んでいてもよい。誘電体層10に含まれる副成分の種類、および、副成分の含有率は、特に限定されない。たとえば、誘電体層10は、副成分として、Si化合物、Al化合物、Mn化合物、Mg化合物、Cr化合物、Ni化合物、希土類元素を含む化合物、Li化合物、B化合物、もしくは、V化合物などが含まれていてもよい。なお、誘電体層10の主成分や副成分は、波長分散型X線分光器(WDS)、エネルギー分散型X線分光器(EDS)、レーザアブレーションICP質量分析(LA-ICP-MS)などを用いた成分分析により特定することができる。
各誘電体層10の平均厚みTDLは、1.7μm以下であることが好ましく、0.17μm以上、0.86μm以下であることがより好ましい。また、容量領域40は、少なくとも1つの誘電体層10を含んでいればよく、容量領域40における誘電体層10の積層数は、特に限定されない。たとえば、容量領域40は、20層以上の誘電体層10を含むことが好ましく、50層以上の誘電体層10を含むことがより好ましい。なお、誘電体層10の平均厚みTDLは、金属顕微鏡もしくは電子顕微鏡を用いた素体4の断面観察により、算出すればよい。たとえば、5層以上の誘電体層10を解析することが好ましく、解析対象とした各誘電体層10の厚みを、少なくとも30箇所で計測し、誘電体層10の平均厚みTDLを算出することが好ましい。
各誘電体層10は、複数の誘電体粒子11と、隣接する誘電体粒子11の間の界面である粒界17と、を含む。誘電体粒子11は、誘電体層10の主成分を含む結晶粒であり、走査型透過電子顕微鏡(STEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡を用いて素体4の断面を観察することで、誘電体層10中の誘電体粒子11を解析することができる。誘電体粒子11には、誘電体層10の副成分が固溶していてもよく、誘電体粒子11が副成分の固溶によりコアシェル構造を有していてもよい。また、誘電体層10には、所定元素の濃度が誘電体粒子11よりも高い偏析相が含まれていてもよい。
誘電体粒子11の平均粒径dDPは、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上1μm以下であることがより好ましい。また、誘電体粒子11の平均粒径dDPに対する誘電体層10の平均厚みTDLの比(TDL/dDP)は、1.5以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。なお、誘電体粒子11の平均粒径dDPは、誘電体粒子11の円相当径の算術平均値である。たとえば、素体4の断面を観察して、5層以上の誘電体層10を解析することが好ましく、少なくとも50個の誘電体粒子11の円相当径を測定することで、平均粒径dDPを算出することが好ましい。
誘電体粒子11は、誘電体層10の厚み方向(Z軸方向)に沿う断面を解析した場合、大粒子13と小粒子15に類別することができる。つまり、本実施形態の説明において、「誘電体粒子11」は、大粒子13および小粒子12の総称であり、誘電体粒子11は、大粒子13および小粒子12を含む。
大粒子13は、第1境界31(誘電体層10と第1内部電極層21との接合境界)および第2境界32(誘電体層10と第2内部電極層22との接合境界)の両方と接する誘電体粒子11である。つまり、大粒子13は、当該大粒子13を含む誘電体層10の上面および下面の両方に表れている誘電体粒子11である。大粒子13のZ軸方向の長さは、当該大粒子13の存在箇所における誘電体層10の厚みと凡そ一致する。一方、小粒子15は、大粒子13以外の誘電体粒子11である。つまり、第1境界31または第2境界32のいずれか一方にのみ接する誘電体粒子11、および、第1境界31および第2境界32のいずれにも接していない誘電体粒子11が、小粒子15に該当する。
単位長さあたりの誘電体層10に含まれる大粒子13の平均個数は、0.05個/μm以上であることが好ましく、0.1個/μm以上であることがより好ましい。大粒子13の平均個数の上限は、特に限定されず、たとえば、3個/μm以下であってもよい。
上述した大粒子13の平均個数は、容量領域40の断面で観測される誘電体層10の合計長さをLDとし、合計長さLDの誘電体層10に含まれる大粒子13の個数をNDとして、ND/LDで表される。ND/LDを算出する際には、5層以上の誘電体層10を解析することが好ましく、誘電体層10の合計長さLDは30μm以上とすることが好ましい。また、解析視野の縁辺が誘電体層10と略平行となるように解析視野を設定することが好ましく、この場合、誘電体層10と略平行な解析視野の縁辺の長さを、当該解析視野における誘電体層10の長さとみなすことができる。たとえば、図2における各誘電体層10の長さは、それぞれ、解析視野のX軸方向の長さLXとみなしてよい。
各内部電極層20は、導電性を有しており、金属成分を含む。内部電極層20の組成は、特に限定されず、たとえば、内部電極層20は、金属成分として、Ni、Cu、Ag、Pd、Au、およびPtから選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。誘電体層10の主成分が耐還元性を有する場合、内部電極層20の金属成分は、純Ni、または、85wt%以上のNiを含むNi合金であることが好ましい。この場合、Ni合金には、Cu、Cr、Mnなどの副成分が含まれていてもよい。なお、内部電極層20の金属成分は、WDS、EDS、LA-ICP-MSなどを用いた成分分析により特定することができる。
内部電極層20は、共材として、誘電体層10の主成分と同様の組成を有する誘電体化合物の粒子を含んでいてもよい。また、内部電極層20は、SやP等の非金属元素を微量に(たとえば、0.1質量%以下程度)含んでいてもよく、空隙を含んでいてもよい。図1や図2に示すような断面で内部電極層20を観察した場合、内部電極層20が部分的に途切れて見える箇所が存在していてもよい。
内部電極層20は、Z軸方向において、誘電体層10の間に積層してあり、容量領域40における内部電極層20の積層数は、誘電体層10の積層数に応じて決定される。また、各内部電極層20の平均厚みTELは、特に限定されず、たとえば、3μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1μm以下であることがより好ましい。内部電極層20の平均厚みTELは、金属顕微鏡もしくは電子顕微鏡を用いた素体4の断面観察により、算出すればよい。たとえば、5層以上の内部電極層20を解析することが好ましく、解析対象とした各内部電極層20の厚みを、少なくとも30箇所で計測し、内部電極層20の平均厚みTELを算出することが好ましい。
STEMもしくはSEMと、EDSもしくはWDSと、の組み合わせにより内部電極層20の断面を解析すると、内部電極層20が、金属成分の結晶粒子(以下、金属結晶と称する)を含むことが確認できる。各内部電極層20に含まれる金属結晶の平均粒径dMは、特に限定されず、たとえば、1μm以下であることが好ましく、0.03μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。なお、金属結晶の平均粒径dMは、金属結晶の円相当径の算術平均値である。たとえば、素体4の断面を観察して、5層以上の内部電極層20を解析することが好ましく、解析対象とした各内部電極層20に含まれる少なくとも50個の金属結晶の円相当径を測定することで、平均粒径dMを算出することが好ましい。
なお、STEMもしくはSEMと、EDSもしくはWDSと、の組み合わせによる断面解析では、解析視野内に含まれる内部電極層20を、以下に示す手順で、第1内部電極層21と第2内部電極層22に分類すればよい。まず、解析視野内で観測された内部電極層20に対して、解析視野の下方側もしくは上方側から順に、整数の通し番号を付与する。そして、奇数番の内部電極層20を第1内部電極層21と規定し、偶数番の内部電極層20を第2内部電極層22と規定すればよい。
図2に示すように、容量領域40には、Ni酸化物粒子30が含まれている。Ni酸化物粒子30は、主としてNiOを含み、誘電体層10および内部電極層20に含まれる元素を僅かに含有していてもよい。Ni酸化物粒子30におけるNiO以外の成分の含有量は特に限定されないが、Ni酸化物粒子30では、NiおよびOの合計含有率が、80モル%以上であることが好ましい。なお、容量領域40内のNi酸化物粒子30は、図2に示すような素体4の断面でマッピング分析を実施することで、特定することができる。たとえば、Niのマッピング像とO(酸素)のマッピング像とを撮影し、誘電体層10よりもNi濃度が高く、かつ、内部電極層20よりもO濃度が高い領域をNi酸化物粒子30として特定すればよい。
容量領域40のNi酸化物粒子30は、誘電体層10と内部電極層20との境界(31,32)に存在する。より具体的に、容量領域40は、誘電体層10と第1内部電極層21との間の第1境界31に存在するNi酸化物粒子30と、誘電体層10と第2内部電極層22との間の第2境界32に存在するNi酸化物粒子30と、を含む。
ここで、「誘電体層10と内部電極層20との境界(31,32)に存在する」とは、より具体的に、Ni酸化物粒子30が、誘電体層10の誘電体粒子11および内部電極層20の金属成分の両方と接していることを意味する。Ni酸化物粒子30は、境界(31,32)から内部電極層20の内部に入り込むように存在していてもよいし、境界(31,32)から誘電体層10の内部に入り込むように存在していてもよい。
なお、容量領域40には、誘電体層10と内部電極層20との境界(31,32)以外の箇所に存在するNi酸化物粒子30が含まれていてもよい。たとえば、容量領域40は、内部電極層20に内包されており誘電体層10と接していないNi酸化物粒子30、および、誘電体層10に内包されており内部電極層20と接していないNi酸化物粒子30を、含んでいてもよい。
Ni酸化物粒子30についてさらに詳述すると、第1境界31には、少なくとも、誘電体層10の大粒子13と接するNi酸化物粒子30が存在し、大粒子13とは接しておらず小粒子15と接しているNi酸化物粒子30が存在していてもよい。同様に、第2境界32には、少なくとも、誘電体層10の大粒子13と接するNi酸化物粒子30が存在し、大粒子13とは接しておらず小粒子15と接しているNi酸化物粒子30が存在していてもよい。
誘電体層10の断面で観測される大粒子13は、図2に示すように、第1大粒子13a~第4大粒子13dの4種に分類することができる。第1大粒子13aは、第1境界31のNi酸化物粒子30と接し、かつ、第2境界32で第2内部電極層22の金属成分と接している大粒子13である。第2大粒子13bは、第1境界31で第1内部電極層21の金属成分と接し、かつ、第2境界32のNi酸化物粒子30と接している大粒子13である。第3大粒子13cは、第1境界31のNi酸化物粒子30および第2境界32のNi酸化物粒子30の両方と接している大粒子13である。第4大粒子13dは、Ni酸化物粒子30と接していない大粒子13であり、第1境界31で第1内部電極層21の金属成分と接し、かつ、第2境界32で第2内部電極層22の金属成分と接している。誘電体層10は、少なくとも、第1大粒子13aおよび第2大粒子13bを含み、第3大粒子13cおよび第4大粒子13dを含んでいてもよい。
図4Aは、第1大粒子13aおよび第2大粒子13bが存在する箇所の断面を拡大した模式図である。第1大粒子13aの存在箇所では、第1内部電極層21の金属成分、Ni酸化物粒子30、第1大粒子13a、および、第2内部電極層22の金属成分が、記載の順序で繋がっている構造が形成されている。一方、第2大粒子13bの存在箇所では、第1内部電極層21の金属成分、第2大粒子13b、Ni酸化物粒子30、および、第2内部電極層22の金属成分が、記載の順序で繋がっている構造が形成されている。積層セラミック電子部品2の容量領域40が、図4Aに示す構造を有することで、抵抗値の温度依存性を低減させることができる。すなわち、高い温度帯(たとえば85℃以上)においても、抵抗値の低下を抑制することができ、絶縁抵抗を維持することができる。
抵抗値の温度依存性を改善できる理由は、必ずしも明らかではないが、ショットキー障壁が関係していると考えられる。以下、図3A~図4Bに基づいて、内部電極層間の絶縁抵抗に関する仮説を説明する。
まず、Ni酸化物粒子30が存在しない場合における内部電極層間の絶縁抵抗について説明する。図3Aは、Ni酸化物粒子30が介在していない箇所の断面を拡大して示す模式図である。つまり、図3Aに示す誘電体層10の断面には、第4大粒子13dと小粒子15が存在する。特に小粒子15が存在する箇所では、2以上の小粒子15が粒界17を介して厚み方向で繋がっている構造が形成されている。また、内部電極層20と誘電体層10との間には、内部電極層20の金属成分と誘電体粒子11との接合界面Bが存在する。接合界面Bのうち、第1内部電極層21の金属成分と誘電体粒子11(13,15)との間を接合界面B1と称することとし、第2内部電極層22の金属成分と誘電体粒子11(13,15)との間を接合界面B2と称することとする。
ここで、誘電体層10の主成分である誘電体化合物は、電荷を運ぶキャリアとして自由電子を使用するn型半導体であると考えられる。つまり、誘電体粒子11は、n型半導体粒子としての性質を有すると考えられる。この場合、接合界面Bでは、いずれも、金属とn型半導体によるショットキー接合が生じると考えられ、内部電極層20側から誘電体粒子11に向かう方向で電流が流れ易く、誘電体粒子11側から内部電極層20に向かう方向では電流が流れ難くなっていると考えられる。具体的に、第4大粒子13dの存在箇所では、金属とn型半導体とのショットキー接合により図3Bに示すような回路C1が形成されていると考えられる。
回路C1におけるショットキーダイオードSD-n1が接合界面B1に相当し、抵抗R1が第4大粒子13dに相当し、ショットキーダイオードSD-n2が接合界面B2に相当する。回路C1において、右回りで電流を流す際には(すなわち第1内部電極層21が正極、第2内部電極層22が負極)、接合界面B2のショットキーダイオードSD-n2が障壁(ショットキー障壁)となり電流の流れを妨げる。一方、左回りで電流を流す際には(すなわち第1内部電極層21が負極、第2内部電極層22が正極)、接合界面B1のショットキーダイオードSD-n1が障壁(ショットキー障壁)となり電流の流れを妨げる。つまり、第4大粒子13dが存在する箇所においては、内部電極層間の絶縁抵抗が、主として、接合界面Bのショットキー障壁に依存すると考えられる。
また、小粒子15が存在する箇所では、隣接する小粒子間の粒界17において二重ショットキー障壁が生じると考えられ、図3Cに示すような回路C2が形成されていると考えられる。回路C2におけるショットキーダイオードSD-n1およびSD-n2は、回路C1と同様に、それぞれ、接合界面B1およびB2に相当する。また、回路C2における抵抗R1は小粒子15に相当し、二重ショットキー障壁DSBが粒界17に相当する。回路C2では、右回りに電流を流した場合、および、左回りに電流を流した場合のいずれにおいても、二重ショットキー障壁DSBが電流の流れを妨げる。つまり、小粒子15の存在箇所においては、壁内部電極層間の絶縁抵抗が、主として、粒界17の二重ショットキー障に依存すると考えられる。
上記のとおり、Ni酸化物粒子30が存在しない場合は、接合界面Bのショットキー障壁や、粒界17の二重ショットキー障壁が、絶縁抵抗に寄与していると考えられるが、ショットキー障壁および二重ショットキー障壁は、いずれも、温度依存性が高い。つまり、Ni酸化物粒子30を含まない従来の積層セラミック電子部品では、高い温度帯において、ショットキー障壁による抵抗作用、および、二重ショットキー障壁による抵抗作用が低下することで、絶縁抵抗の低下を招くと考えられる。
一方、Ni酸化物粒子30が存在する箇所では、接合界面Bのショットキー接合とは極性の方向が異なるショットキー接合が形成されると考えられる。図4Aに示すように、内部電極層20と誘電体層10との間にNi酸化物粒子30が存在する場合、内部電極層20の金属成分とNi酸化物粒子30との接合界面Aが形成される。整合界面Aのうち、第1内部電極層21の金属成分とNi酸化物粒子30との間を接合界面A1と称することとし、第2内部電極層22の金属成分とNi酸化物粒子30との間を接合界面A2と称することとする。
ここで、NiOは、酸化物としては珍しく、キャリアとして正孔(ホール)を使用するp型半導体であると考えられる。つまり、Ni酸化物粒子30は、p型半導体粒子としての性質を有すると考えられる。この場合、接合界面Aでは、いずれも、金属とp型半導体とによるショットキー接合が生じると考えられ、Ni酸化物粒子30から内部電極層20に向かう方向で電流が流れ易くなり、内部電極層20からNi酸化物粒子30に向かう方向では電流が流れ難くなると考えられる。具体的に、第1大粒子13aが存在する箇所では、図4Bの左側に示す等価回路EC1が形成されると考えられ、第2大粒子13bが存在する箇所では、図4Bの右側に示す等価回路EC2が形成されると考えられる。
等価回路EC1におけるショットキーダイオードSD-p1が接合界面A1に相当し、抵抗R1が第1大粒子13aに相当し、抵抗R2がNi酸化物粒子30に相当し、ショットキーダイオードSD-n2が接合界面B2に相当する。等価回路EC2においては、ショットキーダイオードSD-n1が接合界面B1に相当し、抵抗R1が第2大粒子13bに相当し、抵抗R2がNi酸化物粒子30に相当し、ショットキーダイオードSD-p2が接合界面A2に相当する。電流が比較的流れ易い方向を「順方向」とすると、等価回路EC1では、左回りが順方向となり、等価回路EC2では、等価回路EC1とは反対に、右回りが順方向となる。
第1内部電極層21を負極、第2内部電極層22を正極として電圧を印加した場合、内部電極層間の絶縁抵抗は、主として、等価回路EC1における第1大粒子13aの抵抗に依存すると考えられる。また、第1内部電極層21を正極、第2内部電極層22を負極として電圧を印加した場合、内部電極層間の絶縁抵抗は、主として、等価回路EC2における第2大粒子13bの抵抗に依存すると考えられる。つまり、2つの等価回路EC1,EC2が形成されることで、ショットキー障壁や二重ショットキー障壁の発生が抑制されると考えられ、その結果、抵抗値の温度依存性が改善すると考えられる。
なお、積層セラミック電子部品2の容量領域40は、誘電体層10および内部電極層20を、それぞれ複数有しているが、容量領域40のZ軸方向に沿う断面を観察した場合、Ni酸化物粒子30と接していない内部電極層20や、第1大粒子13aおよび第2大粒子13bを含まない誘電体層10が存在していてもよい。ただし、Ni酸化物粒子30、第1大粒子13a、および第2大粒子13bは、それぞれ、以下に示すような割合で存在していることが好ましい。
それぞれの内部電極層20は、容量領域40のZ軸方向に沿う一断面において、平均2個以上のNi酸化物粒子30と接していることが好ましく、平均2個以上10個以下のNi酸化物粒子30と接していることがより好ましい。つまり、図1に示すような素体4の一断面において、1層当たりの内部電極層20と接しているNi酸化物粒子30の平均個数ANPが、2個以上であることが好ましく、2個以上10個以下であることがより好ましい。2≦ANPを満たすことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができ、2≦ANP≦10を満たすことで、十分な静電容量を確保しつつ、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
なお、上述した平均個数ANPは、図1に示すように、内部電極層20のX軸方向の両端が観測できる断面で解析することが好ましい。このような断面で、長さL1の内部電極層20を5層以上解析することが好ましく、長さL1の各内部電極層20と接するNi酸化物粒子30の個数を計測することで、平均個数ANPを算出すればよい。
それぞれの誘電体層10は、容量領域40のZ軸方向に沿う一断面において、平均1個以上の第1大粒子13aと、平均1個以上の第2大粒子13bとを含むことが好ましい。つまり、図1に示すような素体4の一断面において、1層当たりの誘電体層10に含まれる第1大粒子13aの平均個数をAND1とし、1層当たりの誘電体層10に含まれる第2大粒子13bの平均個数をAND2とすると、AND1およびAND2は、いずれも、1個以上であることが好ましい。また、1層当たりの誘電体層10に含まれる第1大粒子13aおよび第2大粒子13bの合計個数の平均AND0は、2個以上であることが好ましい。AND1およびAND2がいずれも1個以上であることで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができ、AND0が4個以上であることで、十分な静電容量を確保しつつ、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
AND0、AND1およびAND2は、ANPと同様の方法で算出すればよい。図1に示すような断面で、長さL0の誘電体層10を5層以上解析することが好ましく、長さL0の各誘電体層10に含まれる第1大粒子13aの個数、および、第2大粒子13bの個数を計測することで、AND0、AND1およびAND2を算出すればよい。
図2に示すような容量領域40の断面で観測される内部電極層20の合計長さをLEとする。また、合計長さLEの範囲において、内部電極層20と接するNi酸化物粒子30の個数をNP0とする。単位長さあたりの内部電極層20と接するNi酸化物粒子30の平均個数は、LEに対するNP0の比で表すことができ、NP0/LEは、0.002個/μm以上であることが好ましく、0.002個/μm以上0.02個/μm以下であることがより好ましい。NP0/LEが0.002個/μm以上であることで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができ、NP0/LEが.002個/μm以上0.02個/μm以下であることで、十分な静電容量を確保しつつ、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
なお、NP0/LEを算出する際には、容量領域40の断面を、500μm2以上、解析することが好ましく、合計長さLEは、500μm以上に設定することが好ましい。また、解析視野の一部の縁辺が内部電極層20と略平行となるように解析視野を設定することが好ましく、この場合、内部電極層20と略平行な解析視野の縁辺の長さを、当該解析視野における内部電極層20の長さとみなすことができる。たとえば、図2に示す断面では、内部電極層20の合計長さLEは、4LX(縁辺の長さLXの4倍)に相当する。図2の断面には、14個のNi酸化物粒子30が存在するため、図2の断面で算出されるNP0/LEは、14/4LX(個/μm)となる。
図2に示すような容量領域40の断面で観測される誘電体層10の合計長さをLDとする。また、合計長さLDの範囲において、誘電体層10に含まれる第1大粒子13aの個数をND1とし、誘電体層10に含まれる第2大粒子13bの個数をND2とする。単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第1大粒子13aの平均個数は、ND1/LDで表すことができ、単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第2大粒子13bの平均個数は、ND2/LDで表すことができる。ND1/LDおよびND2/LDは、いずれも、0.001個/μm以上であることが好ましく、当該要件を満たすことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
また、単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第1大粒子13aおよび第2大粒子13bの合計の平均個数は、(ND1+ND2)/LDで表すことができる。(ND1+ND2)/LDは、0.002個/μm以上であることがより好ましく、当該要件を満たすことで、十分な静電容量を確保しつつ、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
なお、ND1、ND2を計測する際には、容量領域40の断面を、500μm2以上、解析することが好ましく、合計長さLDは、500μm以上に設定することが好ましい。
容量領域40は、図5に示すように、第1Ni酸化物粒子30αを含むことが好ましい。第1Ni酸化物粒子30αは、内部電極層20を介して隣接する2つの誘電体層10の両方と接している。つまり、第1Ni酸化物粒子30αは、容量領域40の断面において、一つの内部電極層20の表裏面を貫通するように存在している。一方、内部電極層20を介して隣接する2つの誘電体層10のうちのいずれか一方のみと接しているNi酸化物粒子30を「第2Ni酸化物粒子30β」と称することとする。
図5に示すように、第1Ni酸化物粒子30αは、2つの誘電体層10と接するため、第2Ni酸化物粒子30βよりも多くの大粒子13と接することができる。つまり、第1Ni酸化物粒子30αは、第2Ni酸化物粒子30βよりも多くの等価回路ECを形成することができると考えられ、抵抗値の温度依存性の低減に大きく貢献すると考えられる。
図2に示すような断面に含まれる第1Ni酸化物粒子30αの個数をNPαとし、第2Ni酸化物粒子30βの個数をNPβとすると、NPβ<NPαを満たすことが好ましい。つまり、Ni酸化物粒子30を、素体断面で観測されるNi酸化物粒子30の様態に基づいて分類した場合、Ni酸化物粒子30は、主として第1Ni酸化物粒子30αを含むことが好ましい。容量領域40がNPβ<NPαを満たす程度に第1Ni酸化物粒子30αを含むことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。なお、NPαおよびNPβを計測する際には、容量領域40の断面を、200μm2以上、解析することが好ましい。
誘電体層10は、第1境界31および第2境界32の両方でNi酸化物粒子30と接する第3大粒子13cを含んでいてもよい。ただし、大粒子13が、第1境界31と第2境界32の両方でNi酸化物粒子30と接している場合、内部電極層20およびNi酸化物粒子30のショットキー接合(金属とp型半導体によるショットキー接合)が、第1境界31および第2境界32の両方で、形成されると考えられる。そのため、第3大粒子13cの存在箇所では、図4Bに示すような等価回路EC(EC1,EC2)が形成されないと考えられ、第3大粒子13cは、抵抗値の温度依存性の低減に寄与していないと考えられる。
単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第3大粒子13cの平均個数ND3/LDは、0以上、0.0003個/μm以下であることが好ましい。なお、ND3は、図2に示すような容量領域40の断面において、誘電体層10に含まれる第3大粒子13cの個数である。上記のND3/LDを算出する際には、ND1/LDおよびND2/LDと同様に、容量領域40の断面を、500μm2以上、解析することが好ましく、合計長さLDは、500μm以上に設定することが好ましい。
Ni酸化物粒子30の平均粒径dPは、特に限定されず、たとえば、0.03μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上1μm以下であることがより好ましい。また、Ni酸化物粒子30の平均粒径dPは、内部電極層20に含まれる金属結晶の平均粒径dMよりも大きいことが好ましい。具体的に、dMに対するdPの比(dP/dM)は、3以上であることが好ましい。なお、dP/dMの上限は、特に限定されず、たとえば、dP/dMは10以下とすることができる。また、Ni酸化物粒子30の平均粒径dPは、容量領域40の断面を観察して、少なくとも5個のNi酸化物粒子30の円相当径を計測することで、算出することが好ましい。
次に、図1に示す積層セラミック電子部品2の製造方法の一例を説明する。
まず、誘電体ペーストと、内部電極用ペーストと、を準備する。誘電体ペーストは、誘電体原料粉末(主成分粉末)と副成分粉末とを、公知の有機ビヒクルまたは公知の水系ビヒクルに加えて混錬することで製造することができる。誘電体ペーストには、上記の他に、分散剤、可塑剤、ガラスフリットなどを添加してもよい。一方、内部電極用ペーストは、Ni粉末などの金属粉末、および、NiO粉末を、公知の有機ビヒクルまたは公知の水系ビヒクルに加えて混錬することで製造することができる。内部電極用ペーストには、共材として、誘電体原料粉末を添加してもよく、分散剤、可塑剤などを添加してもよい。
次に、誘電体ペーストを、ドクターブレード法などの手法によりシート化することで、グリーンシートを得る。そして、このグリーンシート上に、スクリーン印刷等の各種印刷法や転写法により、内部電極用ペーストを所定のパターンで塗布する。
ここで、内部電極用ペーストに添加するNiO粉末が、Ni酸化物粒子30の原料である。前述したANP、NP0/LE、NPα、および、NPβなどは、内部電極用ペーストにおけるNiO粉末の配合比、NiO粉末の粒径、および、内部電極層20の厚みなどに基づいて制御することができる。
たとえば、内部電極用ペーストでは、NiO粉末の平均粒径が、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上0.8μm以下であることがより好ましい。また、金属粉末の平均粒径は、0.8μm以下であることが好ましく、0.03μm以上0.5μm以下であることが好ましい。内部電極用ペーストにおけるNiO粉末の配合比は、金属粉末100重量部に対して、10重量部以上25重量部以下であることが好ましく、15重量部以上20重量部以下であることがより好ましい。内部電極層20の平均厚みTELは、グリーンシートの上に塗布した内部電極用ペーストの厚みにより制御することができ、内部電極用ペーストの厚みは2μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1μm以下であることが好ましい。
誘電体層10における大粒子13の割合を示すND/LDは、誘電体原料粉末の粒径、および、誘電体層10の厚みなどに基づいて制御することができる。たとえば、誘電体原料粉末の平均粒径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.06μm以上0.2μm以下であることがより好ましい。誘電体層10の平均厚みTDLは、グリーンシートの厚みにより制御することができ、グリーンシートの平均厚みは、2μm以下であることが好ましく、0.2μm以上1μm以下であることがより好ましい。なお、Ni酸化物粒子30と接する大粒子13(第1大粒子13a、第2大粒子13b)の割合(AND0、AND1、AND2、ND1/LD、ND2/LD、および(ND1+ND2)/LDなど)は、誘電体原料粉末の粒径とグリーンシートの厚みの比、および、内部電極用ペースト中のNiO粉末の配合比などに基づいて、制御することができる。
次に、内部電極用ペーストを塗布したグリーンシートを複数層に渡って積層した後、積層方向にプレスすることでマザー積層体を得る。なお、マザー積層体の積層方向の最上部および最下部には、内部電極用ペーストを塗布していないグリーンシートを1以上積層する。このように内部電極用ペーストを塗布していないグリーンシートを積層することで、容量領域40の上方および下方に外装領域41を形成することができる。
上記の工程により得られたマザー積層体を、ダイシングもしくは押切りにより所定の寸法に切断し、複数のグリーンチップを得る。グリーンチップは、必要に応じて、可塑剤などを除去するために乾燥させてもよく、乾燥後に水平遠心バレル機などを用いてバレル研磨してもよい。
次に、上記で得られたグリーンチップに対して、脱バインダ処理、および、焼成処理を施し、素体4を得る。
脱バインダ処理の条件は、誘電体ペーストおよび内部電極用ペーストに含まれるバインダの種類に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。たとえば、昇温速度を5~300℃/時間とすることが好ましく、保持温度を180~400℃とすることが好ましく、温度保持時間を0.5~24時間とすることが好ましい。また、脱バインダ処理の雰囲気は、大気雰囲気(すなわち空気中)もしくは還元性雰囲気とすることができ、大気雰囲気とすることが好ましい。
焼成処理の条件は、誘電体層10の主成分組成や内部電極層20の金属成分に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。たとえば、焼成時の保持温度は、好ましくは1200~1350℃、より好ましくは1220~1300℃であり、その保持時間は、好ましくは0.05~8時間、より好ましくは0.5~3時間である。また、焼成雰囲気は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、N2とH2との混合ガスを加湿して用いることができる。さらに、内部電極層20をNiやNi合金等の卑金属で構成する場合には、焼成雰囲気中の酸素分圧を、1.0×10-14MPa~1.0×10-10MPaとすることが好ましい。
焼成後の素体4に対して、アニール処理を実施してもよい。たとえば、アニール処理は、誘電体層10を再酸化させるため、もしくは、焼成によって生じた歪を除去するために実施することが好ましい。アニール処理の条件は、誘電体層10の主成分組成などに応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。たとえば、保持温度を650~1150℃とすることが好ましく、温度保持時間を0~20時間とすることが好ましく、昇温速度および降温速度を50~500℃/時間とすることが好ましい。また、雰囲気ガスは、乾燥したN2ガス、または、加湿したN2ガス等を用いることが好ましい。
上記の脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理において、N2ガスや混合ガス等を加湿するためには、たとえばウェッター等を使用すればよく、この場合、水温は5~75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理は、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
なお、外部電極6を形成する前に、素体4の端面4aおよび4bを研磨してもよい。研磨の方法としては、たとえば、バレル研磨、サンドブラストまたはレーザーなどが挙げられる。素体4の端面4aおよび4bを研磨することで、内部電極層20と外部電極6とが電気的につながりやすくなる。
次に、素体4の外面に、一対の外部電極6を形成する。外部電極6の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。以上の工程により、図1に示す積層セラミック電子部品2が得られる。
(実施形態のまとめ)
本実施形態の積層セラミック電子部品2は、内部電極層20、および、内部電極層20の間に積層してある誘電体層10を有する。素体4の容量領域40は、内部電極層20と誘電体層10との境界(第1境界31および第2境界32)に存在するNi酸化物粒子30を有している。そして、誘電体層10が、第1境界31に存在するNi酸化物粒子30と接し、かつ、第2境界32で内部電極層20と接する第1大粒子13aと、第1境界31で内部電極層20と接し、かつ、第2境界32に存在するNi酸化物粒子30と接する第2大粒子13bと、を含む。
積層セラミック電子部品2が上記の特徴を有することで、温度による抵抗値の変動を抑制することができる。たとえば、20℃における積層セラミック電子部品2の抵抗値をR20とし、85℃における積層セラミック電子部品2の抵抗値をR85とすると、R20/R85を2.0以下に抑制することができる。
抵抗値の温度依存性が改善される理由は、必ずしも明らかではないが、ショットキー障壁や二重ショットキー障壁の発生を抑制できるためと考えられる。具体的に、Ni酸化物粒子30と第1大粒子13aとの接触箇所、および、Ni酸化物粒子30と第2大粒子13bとの接触箇所では、図4Bに示すような2つの等価回路EC1、EC2が形成されると考えられる。このような等価回路EC1、EC2が形成されると、内部電極層間の絶縁抵抗が、誘電体粒子11の抵抗に依存し、温度依存性の高いショットキー障壁や二重ショットキー障壁の発生が抑制されると考えられる。
なお、図4Bに示す等価回路EC1,EC2を形成する観点では、p型半導体粒子が、第1境界31および第2境界32に存在し、誘電体層10の大粒子13と接していればよい。つまり、図2および図4Aにおいて、符号「30」で示す粒子は、Ni酸化物粒子(NiO)に必ずしも限定されず、p型半導体粒子であればよい。
Ni酸化物粒子30には、内部電極層20を介して隣接する2つの誘電体層10と接する第1Ni酸化物粒子30αが含まれることが好ましい。第1Ni酸化物粒子30αは、第2Ni酸化物粒子30βよりも多くの大粒子13と接触できる可能性がある。つまり、容量領域40が第1Ni酸化物粒子30αを含むことで、抵抗値の温度依存性をより効果的に低減させることができる。
それぞれの内部電極層20は、素体4の一断面において、平均2個以上のNi酸化物粒子30と接していることが好ましい。換言すると、1層当たりの内部電極層20と接しているNi酸化物粒子30の平均個数ANPが、2個以上であることが好ましい。積層セラミック電子部品2が当該要件を満たすことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
単位長さあたりの内部電極層20と接するNi酸化物粒子30の平均個数NP0/LEが0.002個/μm以上であることが好ましい。積層セラミック電子部品2が当該要件を満たすことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
誘電体層10は、第1境界31のNi酸化物粒子30および第2境界32のNi酸化物粒子30の両方と接する第3大粒子13cを含んでいてもよい。単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第3大粒子13cの平均個数ND3/LDは、0以上、0.0003個/μm以下であることが好ましい。積層セラミック電子部品2が当該要件を満たすことで、抵抗値の温度依存性をより低減させることができる。
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、外部電極6は、素体4の1つの側面4cに存在するパット状の電極であってもよい。この場合、パット状の外部電極6は、スルーホール電極またはビアホール電極を介して、内部電極層20と電気的に接続していてもよい。
また、本開示の電子部品は、第1内部電極層21、第2内部電極層22、および、誘電体層10を、それぞれ、少なくとも1つ有していればよく、図1に示すような積層型セラミック電子部品2に限定されない。
以下、本開示をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本開示はこれら実施例に限定されない。
(実験1)
実験1では、以下に示す手順で、実施例A1、比較例1~3に係る積層セラミック電子部品を製造した。
実施例A1
まず、平均粒径が0.09μmである(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3粉末(主成分粉末)と、副成分粉末MgCO3粉末、Y23粉末、MnCO3粉末、V25粉末、および、SiO2粉末)とを用いて、誘電体層の原料である誘電体ペーストを作製した。また、平均粒径が0.18μmであるNi粉末と、平均粒径が0.15μmであるNiO粉末とを用いて、内部電極用ペーストを作製した。内部電極用ペーストにおけるNiO粉末の配合比は、Ni粉末100重量部に対して17重量部とした。
次に、誘電体ペーストをPETフィルム上に塗布してシート化することで、厚さ0.65μmのグリーンシートを得た後、このグリーンシートの上に内部電極用ペーストを所定のパターンで塗布した。なお、内部電極用ペーストの塗布量は、焼成後の内部電極層の平均厚みTELが0.55μmとなるように、制御した。
次に、内部電極用ペーストを塗布したグリーンシートを、複数積層し、加圧することで、マザー積層体を得た。この際、マザー積層体の積層方向の最上部および最下部には、内部電極用ペーストを塗布していないグリーンシートを積層した。また、内部電極用ペーストを塗布したグリーンシートの積層数は、容量領域における誘電体層の積層数が350層となるように、制御した。また、焼成後の外装領域41の厚みは20μm以上となるように、制御した。
上記のマザー積層体を所定のサイズに切断して、グリーンチップを得た後、これらグリーンチップに対して、脱バインダ処理、焼成処理、および、アニール処理を施した。そして、素体の各端面に、Cuを主成分とする焼結体を含む外部電極を形成した。以上の工程により、図1と同様の断面構造を有する積層セラミック電子部品が得られた。この積層セラミック電子部品における素体の平均寸法は、L0×W0=0.7mm×0.45mmであった。
比較例1
比較例1では、第1内部電極層、および、第2内部電極層を、いずれも、NiO粉末を含まない内部電極用ペーストを用いて形成した。具体的に、比較例1では、平均粒径が0.18μmであるNi粉末を用いて内部電極用ペーストを作製し、当該内部電極用ペーストには、NiO粉末を添加しなかった。そして、厚さ0.65μmのグリーンシートの上に上記内部電極用ペーストを所定のパターンで塗布した。なお、比較例1では、実施例A1と同じ仕様の誘電体ペーストを使用し、グリーンシートの厚みも実施例A1と同程度に制御した。上記以外の製造条件は、実施例A1と同様として、比較例1に係る積層セラミック電子部品を製造した。
比較例2
比較例2では、内部電極層の原料として、NiO粉末を含む第1内部電極用ペーストと、NiO粉末を添加していない第2内部電極用ペーストと、を作製した。第1内部電極用ペーストには、平均粒径が0.18μmであるNi粉末と、平均粒径が0.15μmであるNiO粉末とを添加し、第1内部電極用ペーストにおけるNiO粉末の配合比は、Ni粉末100重量部に対して17重量部とした。一方、第2内部電極用ペーストには、平均粒径が0.18μmであるNi粉末を添加し、NiO粉末は添加しなかった。なお、比較例2では、実施例A1と同じ仕様の誘電体ペーストを使用し、グリーンシートの厚みも実施例A1と同程度に制御した。
比較例2では、第1内部電極用ペーストを塗布した第1グリーンシートと、第2内部電極用ペーストを塗布した第2グリーンシートと、を作製し、この第1グリーンシートと第2グリーンシートとを、交互に積層することで、マザー積層体を得た。上記以外の製造条件は、実施例A1と同様として、比較例2に係る積層セラミック電子部品を製造した。
比較例3
比較例3では、実施例A1と同じ仕様の内部電極用ペーストを用いて、内部電極層を形成した。ただし、比較例3では、実施例A1とは異なる条件で誘電体層を形成した。具体的に、比較例3では、平均粒径が0.04μmである(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3粉末(主成分粉末)を含む誘電体ペーストを準備し、当該誘電体ペーストを用いて、厚さ0.65μmのグリーンシートを作製した。上記のとおり、比較例3で使用した(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3粉末は、実施例A1とは異なる平均粒径を有するが、誘電体ペーストに添加した副成分粉末、および、副成分粉末の配合比は、実施例A1と同様とした。上記以外の製造条件は、実施例A1と同様として、比較例3に係る積層セラミック電子部品を製造した。
素体の断面解析
素体の積層方向の断面(図1および図2に示すような容量領域の断面)をSTEMで観察し、内部電極層の平均厚みTEL(μm)、誘電体層の平均厚みTDL(μm)、および、誘電体層に含まれる誘電体粒子の平均粒径dDP(μm)を測定した。
当該断面観察では、解析視野内の内部電極層を、解析視野の下方側から番号付けした。そして、奇数番の内部電極層を第1内部電極層として特定し、偶数番の内部電極層を第2内部電極層として特定した。また、EDSによる元素マッピング分析を、5つの解析視野(各解析視野の面積は54μm2)で実施し、Ni酸化物粒子が、第1内部電極層と誘電体層との間の第1境界、および、第2内部電極層と誘電体層との間の第2境界に存在するか否かを調査した。表1の「Ni酸化物粒子の有無」の欄に「Y」および「N」の記載があるが、「Y」は、Ni酸化物粒子が第1境界または第2境界に存在していたことを意味し、「N」は、Ni酸化物粒子が、所定の箇所で観測されなかったことを意味する。
上記の断面解析では、第1境界でNi酸化物粒子と接し、かつ、第2境界で内部電極層の金属成分と接している誘電体粒子を第1大粒子(13a)として特定した。また、第1境界で内部電極層の金属成分と接し、かつ、第2境界でNi酸化物粒子と接している誘電体粒子を第2大粒子(13b)として特定した。表1の「第1大粒子」の欄では、「Y」は、誘電体層が第1大粒子を含んでいたことを意味し、「N」は、誘電体層が第1大粒子を含んでいなかったことを意味する。同様に、表1の「第2大粒子」の欄では、「Y」は、誘電体層が第2大粒子を含んでいたことを意味し、「N」は、誘電体層が第2大粒子を含んでいなかったことを意味する。
抵抗値の温度依存性の評価
積層セラミック電子部品に対して任意の方向から4Vの直流電圧を30秒間印加し、その際の積層セラミック電子部品の絶縁抵抗を測定し、この値を抵抗値とした。抵抗値を測定する際の環境温度は、20℃、および、85℃に設定し、85℃における抵抗値R85に対する20℃における抵抗値R20の比(R20/R85)を算出した。なお、抵抗値R85を測定した際の直流電圧の向き(方向)は、抵抗値R20を測定した際の直流電圧の向きに一致させた。
本実験では、抵抗値の温度依存性に関して、R20/R85が2.0以下の試料を、「良好」と判定し、R20/R85が1.5以下の試料を「特に良好」と判定した。実施例A1、および、比較例1~3の評価結果を表1に示す。
Figure 2024050042000002
比較例1では、NiO粉末を含まない内部電極用ペーストを使用したため、誘電体層と内部電極層との境界にNi酸化物粒子が存在しておらず、Ni酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子も誘電体層中に含まれていなかった。比較例2では、NiOを含む第1内部電極用ペーストとNiOを含まない第2内部電極用ペーストとを使用したため、一方の第1境界ではNi酸化物粒子が観測され、誘電体層が第1大粒子を含んでいた。しかしながら、比較例2では、他方の第2境界ではNi酸化物粒子が観測されず、誘電体層が第2大粒子を含んでいなかった。
比較例3では、Ni酸化物粒子が、第1境界および第2境界の両方で観測された。しかしながら、比較例3の誘電体層は、大粒子(符号13)をほとんど含んでおらず、比較例3の断面解析では、Ni酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子を検出できなかった。つまり、比較例3では、容量領域内のNi酸化物粒子が、誘電体層の小粒子(符号15)と接しており、大粒子とは接していなかった。
一方、実施例A1の断面解析では、第1境界および第2境界の両方でNi酸化物粒子が観測され、かつ、誘電体層中にNi酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子が存在していることが確認できた。つまり、実施例A1では、図4Aに示すような断面構造が容量領域内に存在することが確認できた。
比較例1~3では、85℃において絶縁抵抗が低下し、R20/R85が2.0よりも大きくなった。これに対して、図4Aに示すような断面構造を有する実施例A1の積層セラミック電子部品では、85℃でも高い絶縁抵抗が得られ、R20/R85が2.0以下となった。実験1の結果から、Ni酸化物粒子が第1境界と第2境界の両方に存在し、かつ、誘電体層がNi酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子を含むことで、抵抗値の温度依存性を低減できることがわかった。
(実験2)
実験2では、内部電極用ペーストにおけるNiOの配合比を変えて、表2に示す4つの実施例B1~B4に係る積層セラミック電子部品を製造した。NiOの配合比以外の製造条件は、実験1の実施例A1と同様とした。
実験2の断面観察では、図1に示すような素体の積層方向の断面において、各内部電極層と接するNi酸化物粒子の数を計測した。そして、1層当たりの内部電極層と接するNi酸化物粒子の平均個数ANPを算出した。また、1134μm2の断面に含まれる合計長さ920μm以上の内部電極層を解析して、単位長さの内部電極層と接するNi酸化物粒子の平均個数NP0/LE(個/μm)を算出した。
また、1134μm2の断面に含まれる合計長さ920μm以上の誘電体層を解析し、第1境界でNi酸化物粒子と接し、かつ、第2境界でNi酸化物粒子と接している誘電体粒子を第3大粒子(13c)として特定した。そして、単位長さあたりの誘電体層10に含まれる第3大粒子の平均個数ND3/LDを算出した。
なお、実験2の実施例B1~B4では、Ni酸化物粒子が第1境界および第2境界の両方で観測され、誘電体層がNi酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子を含んでいることが確認できた。
実験2では、実験1と同様にして、積層セラミック電子部品の絶縁抵抗を測定し、各実施例における抵抗値の温度依存性を評価した。加えて、実験2では、LCRメータを用いて、積層セラミック電子部品の静電容量(μF)を測定した。この際、測定温度を室温(25℃)に設定したうえで、積層セラミック電子部品に対して、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力した。静電容量については、3.0μF以上の試料を「良好」と判定し、3.5μF以上の試料を「特に良好」と判定した。実験2の評価結果を、表2に示す。
Figure 2024050042000003
表2に示すように、1層当たりの内部電極層と接するNi酸化物粒子の平均個数ANPは、2個以上であることが好ましく、2個以上10個以下であることがより好ましいことがわかった。また、単位長さあたりの内部電極層と接するNi酸化物粒子の平均個数NP0/LEは、0.002個/μm以上であることが好ましく、0.002個/μm以上、0.02個/μm以下であることがより好ましいことがわかった。
また、十分な静電容量を確保しつつ、抵抗値の温度依存性を低減する観点では、単位長さあたりの誘電体層に含まれる第3大粒子の平均個数ND3/LDが、0.0003個/μm以下であることが好ましいことがわかった。
(実験3)
実験3では、実施例A1よりも粒度の細かいNiO粉末を用いて内部電極用ペーストを作製した。具体的に、実験3で使用したNiO粉末の平均粒径は0.06μmであった。NiO粉末の仕様以外の製造条件は、実施例A1と同様として、実施例C1に係る積層セラミック電子部品を製造した。
実験3の断面解析では、EDSによる元素マッピング分析を、5つの解析視野(各解析視野の面積は54μm2)で実施し、当該解析範囲に存在するNi酸化物粒子を特定した後、これらNi酸化物粒子を「第1Ni酸化物粒子(30α)」と「第2Ni酸化物粒子(30β)」に分類した。そして、第1Ni酸化物粒子の個数NPαと、第2Ni酸化物粒子の個数NPβとを計測した。なお、第1Ni酸化物粒子は、内部電極層を介して隣接する2つの誘電体層の両方と接しているNi酸化物粒子であり、第2Ni酸化物粒子は、2つの誘電体層のうちのいずれか一方のみと接しているNi酸化物粒子である(図5参照)。
また、実験3の断面解析では、内部電極層に含まれる金属結晶の平均粒径dM、および、Ni酸化物粒子の平均粒径dPを計測し、dMに対するdPの比(単位なし)を算出した。
なお、実施例C1では、実施例A1と同様に、第1境界および第2境界でNi酸化物粒子が観測され、かつ、誘電体層中にNi酸化物粒子と接する第1大粒子および第2大粒子が存在していることが確認できた。実験3の評価結果を表3に示す。
Figure 2024050042000004
表3に示すように、第1Ni酸化物粒子の割合が多い実施例A1の方が、第1Ni酸化物粒子の割合が少ない実施例C1よりも、R20/R85を小さくすることができた。この結果から、2つの誘電体層と接する第1Ni酸化物粒子が、容量領域内に存在することで、抵抗値の温度依存性をさらに改善できることがわかった。
2 … 積層セラミック電子部品
4 … 素体
4a,4b … 端面
4c … 側面
40 … 容量領域
41 … 外装領域
6 … 外部電極
6a … 第1外部電極
6b … 第2外部電極
10 … 誘電体層
11 … 誘電体粒子
13 … 大粒子
13a … 第1大粒子
13b … 第2大粒子
13c … 第3大粒子
13d … 第4大粒子
15 … 小粒子
17 … 粒界
20 … 内部電極層
21 … 第1内部電極層
22 … 第2内部電極層
31 … 第1境界
32 … 第2境界
30 … Ni酸化物粒子
30α … 第1Ni酸化物粒子
30β … 第2Ni酸化物粒子

Claims (6)

  1. すくなくとも2つの内部電極層と、前記内部電極層の間に積層してある誘電体層と、を含む素体を有し、
    Ni酸化物粒子が、前記内部電極層と前記誘電体層との境界に存在しており、
    前記誘電体層は、
    第1境界および第2境界で、隣接する前記内部電極層と接しており、
    前記第1境界に存在する前記Ni酸化物粒子と接し、かつ、前記第2境界で前記内部電極層と接する第1誘電体大粒子と、前記第1境界で前記内部電極層と接し、かつ、前記第2境界に存在する前記Ni酸化物粒子と接する第2誘電体大粒子と、を含む電子部品。
  2. 前記Ni酸化物粒子は、前記内部電極層を介して隣接する2つの前記誘電体層の両方と接する第1Ni酸化物粒子を含む請求項1に記載の電子部品。
  3. 前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
    それぞれの前記内部電極層は、前記素体の一断面において、平均2個以上の前記Ni酸化物粒子と接している請求項1または2に記載の電子部品。
  4. 前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
    単位長さあたりの前記内部電極層と接する前記Ni酸化物粒子の平均個数が、0.002個/μm以上である請求項1または2に記載の電子部品。
  5. 前記素体に含まれる前記内部電極層および前記誘電体層が、それぞれ複数であり、
    前記誘電体層は、前記第1境界の前記Ni酸化物粒子および前記第2境界の前記Ni酸化物粒子の両方と接する第3誘電体大粒子を含んでいてもよく、
    単位長さあたりの前記誘電体層に含まれる前記第3誘電体大粒子の平均個数が、0以上、0.0003個/μm以下である請求項1または2に記載の電子部品。
  6. すくなくとも2つの内部電極層と、前記内部電極層の間に積層してある誘電体層と、を含む素体を有し、
    p型半導体粒子が、前記内部電極層と前記誘電体層との境界に存在しており、
    前記誘電体層は、
    第1境界および第2境界で、隣接する前記内部電極層と接しており、
    前記第1境界に存在する前記p型半導体粒子と接し、かつ、前記第2境界で前記内部電極層と接する第1誘電体大粒子と、前記第1境界で前記内部電極層と接し、かつ、前記第2境界に存在する前記p型半導体粒子と接する第2誘電体大粒子と、を含む電子部品。
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