JP2024048601A - 工作機械及び保護部材 - Google Patents

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【課題】コラム内の移動機構が露出する部分を覆って保護できる安価な工作機械及び保護部材を提供する。【解決手段】保護カバー25は主軸ヘッドの下部に固定し、コラム前面の開口部を覆って保護する。保護カバー25は固定カバー30と移動カバー40を含む。移動カバー40には一対の案内穴41を形成する。案内穴41は長円状で、上下方向に延びる。案内螺子35は後方から押え板26の貫通穴を介して案内穴41内を挿通する。案内螺子35の外周には環状の弾性部材28が設けられる。案内螺子35は、弾性部材28を案内穴41内に配置した状態で、固定カバー30の固定穴36に締結される。移動カバー40が自重により固定カバー30に対して相対的に下方に移動した場合に、弾性部材28は、案内穴41の上端部と案内螺子35との間で弾性変形し、衝突時の衝撃を緩和する。【選択図】図4

Description

本発明は、工作機械及び保護部材に関する。
特許文献1に記載の工作機械は、主軸ヘッドの下部にZ軸カバーを固定する。コラムはベッド上に設け、主軸ヘッドを移動するヘッド移動機構を内側に収容する。Z軸カバーは主軸ヘッドの移動と共に、コラムの前面をZ軸方向に移動する。Z軸カバーはコラムの内側と外部とを遮断して、切り屑からヘッド移動機構を保護する。
特開2006-123045号広報
主軸ヘッドの移動範囲を広げた場合、コラム内を保護するZ軸カバーをZ軸方向に延ばす必要がある。この場合、主軸ヘッドをZ軸方向の最下位置に移動したとき、Z軸カバーがベッド上の他の構造物に干渉する可能性がある。Z軸カバーに蛇腹状やテレスコピック式のカバーを用いた場合、部品点数が増え、コスト高を招く問題がある。
本発明の目的は、コラム内の移動機構が露出する部分を覆って保護できる安価な工作機械及び保護部材を提供することである。
本発明の第一態様に係る工作機械は、基台と、前記基台の上に設けたコラムと、工具を着脱可能に装着する主軸と、前記コラムの一側面に設け、前記主軸を支持する支持体と、前記コラムの内部に設け、前記支持体を前記主軸の軸方向に移動する第一移動機構と、前記コラムの前記一側面において前記支持体の移動に伴い前記第一移動機構が露出する部分を覆って保護する保護部材とを備えた工作機械において、前記保護部材は、前記支持体に固定し、前記第一移動機構によって前記支持体と共に前記軸方向へ移動する第一保護部と、前記第一保護部に対し相対的に移動する第二保護部とから構成され、前記第一保護部及び前記第二保護部のうちの一方の保護部は、前記軸方向に延びる開口を有し、前記第一保護部又は前記第二保護部のうちの他方の保護部は、前記開口内に突出し、前記開口に対して相対的に前記軸方向に移動する突出部を備え、前記突出部又は前記開口に弾性を有する弾性部材を配置することを特徴とする。
支持体が上方に移動し、保護部材が基台から離れる場合、第二保護部は、自重により、第一保護部に対して下方に移動する。すると、一方の保護部に形成された開口と、他方の保護部に設けられた突出部は、一方が他方に対して相対的に下方へ移動する。突出部が開口の軸方向端部に近接すると、突出部又は開口に配置された弾性部材は、突出部と開口の端部との間に挟まれ、弾性変形することによって、突出部及び開口の端部との接触面積が大きくなる。その結果、第二保護部が自重により下方に移動したときに第一保護部にかかる応力を小さくでき、第二保護部の耐久性を高めることができる。仮に弾性部材がない場合に突出部と開口の端部とが衝突して生じうる衝撃を、弾性部材を配置することによって、緩和できる。
第一態様の前記弾性部材は前記突出部の周囲を取り囲む環状に形成されてもよい。弾性部材は環状であるので、突出部と開口の端部との間に挟まれる場合に、開口と突出部との相対位置のずれや、開口の端部の形状に因ることなく、端部に対して確実に接触して弾性変形できる。よって弾性部材は、第一保護部と第二保護部の衝突時の衝撃を、より確実に緩和できる。
第一態様の前記保護部材は、前記突出部と前記弾性部材との間に間座を配置し、前記弾性部材は、前記突出部に対し、周方向に回転可能であってもよい。弾性部材と突出部との間に間座を配置することで、弾性部材は突出部に対して回転できる。故に、弾性部材は、突出部と開口の端部との間に挟まれる場合に、特定の部位ばかりに衝撃が加わるのではなく、回転によって周方向全体に衝撃が加わるようになる。故に弾性部材は耐久寿命を延ばし、第一保護部と第二保護部の衝突時の衝撃を、長期に亘って緩和できる。
第一態様は、前記保護部材よりも前記基台側において前記コラムに固定した第三保護部と、前記第三保護部に設け、弾性を有し、前記支持体が前記軸方向において前記第三保護部に近接する方向へ移動した場合に、前記第二保護部に係合する係合部とを備えてもよい。支持体が下降したとき、第二保護部は基台に近づく。保護部材よりも基台側にてコラムに固定した第三保護部は、第二保護部に係合する係合部を備える。故に第二保護部は、他の構造物に接触することなく、係合部に係合する。係合部は、第二保護部に接触して弾性変形することで、衝突時に生じうる衝撃を緩和できる。
第一態様において、前記第二保護部の前記軸方向における前記基台側の端部には、前記基台から離れる側に切り欠かれ、切欠き部分に前記軸方向に対して傾斜する傾斜辺を有する切欠部が形成され、前記係合部は、前記支持体が前記軸方向において前記第三保護部に近接する方向へ移動した場合に、前記切欠部の前記傾斜辺に当接してもよい。支持体が下降したとき、係合部は第二保護部に形成された切欠部の傾斜辺に当接する。傾斜辺は軸方向に対して傾斜するので、係合部との当接によって第二保護部にかかる抗力は、軸方向と、軸方向に直交する方向とに分散される。すなわち第二保護部は、係合部との当接によって軸方向に加わる抗力が低減されるので、軸方向の衝撃を、更に緩和できる。故に第二保護部は、傾斜辺が係合部に当接する際の抗力によって軸方向に弾む動きを抑制できる。
第一態様の前記第一保護部又は前記第二保護部は、前記第一保護部が前記第二保護部に対向する第一面、又は前記第二保護部が前記第二保護部に対向する第二面のうちのいずれか一方の面に、他方の面へ向けて突出し、且つ突出先端が前記他方の面に接触する突起部を有してもよい。第一面又は第二面のいずれか一方の面に設けた突起部は、他方の面に接触することで、第一面と第二面との間に間隙を形成する。すなわち第一保護部と第二保護部は、互いに対向する面同士が突起部に形成される間隙によって直接接触しないので、第二保護部の第一保護部に対する相対的な移動が、固着によって妨げられることがない。
本発明の第二態様に係る保護部材は、基台と、前記基台の上に設けたコラムと、工具を着脱可能に装着する主軸と、前記コラムの一側面に設け、前記主軸を支持する支持体と、前記コラムの内部に設け、前記支持体を前記主軸の軸方向に移動する第一移動機構とを備えた工作機械の前記コラムの前記一側面において前記支持体の移動に伴い前記第一移動機構が露出する部分を覆って保護する保護部材であって、前記支持体に固定し、前記第一移動機構によって前記支持体と共に前記軸方向へ移動する第一保護部と、前記第一保護部に対し相対的に移動する第二保護部とから構成され、前記第一保護部及び前記第二保護部のうちの一方の保護部は、前記軸方向に延びる開口を有し、前記第一保護部又は前記第二保護部のうちの他方の保護部は、前記開口内に突出し、前記開口に対して相対的に前記軸方向に移動する突出部を備え、前記突出部又は前記開口に弾性を有する弾性部材を配置することを特徴とする。故に保護部材は、請求項1と同様の効果を得る。
工作機械1の斜視図である。 保護カバー25を外した主軸ヘッド6とコラム5の正面図である。 主軸ヘッド6、保護カバー25及び下カバー50をコラム5に組み付ける前の分解斜視図である。 主軸ヘッド6が移動範囲の最上端に位置するときの保護カバー25と下カバー50の正面図である。 保護カバー25と下カバー50の後方斜視図である。 保護カバー25と下カバー50の分解斜視図である。 主軸ヘッド6が下降途中の保護カバー25と下カバー50の正面図である。 主軸ヘッド6が移動範囲の最下端に位置するときの保護カバー25と下カバー50の正面図である。 保護カバー125の後方斜視図である。 保護カバー225の分解斜視図である。
図面を参照し本発明の一実施形態の工作機械1を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向を夫々、工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とする。
図1~図3を参照し、工作機械1の構造を説明する。工作機械1は、基台2、機械本体3、テーブル10、工具交換装置17等を備える。基台2は略直方体状の鉄製土台である。機械本体3は基台2上部後方に設け、テーブル10上面に保持した被削材(図示略)を切削する。基台2は上部中央に送り機構を備える。送り機構はテーブル10をX軸方向とY軸方向に移動する。送り機構は後述する。工具交換装置17は機械本体3のコラム5の上部に設けたフレーム18に固定する。工具交換装置17は機械本体3の主軸4に装着した工具(図示略)を他の工具と交換する。
機械本体3は、コラム5、主軸ヘッド6、移動機構、保護カバー25、下カバー50、主軸4、制御箱19等を備える。コラム5は鉄製柱状部材であり、基台2上部後方に設ける。主軸ヘッド6はコラム5前面に沿ってZ軸方向に昇降する。主軸ヘッド6をZ軸方向に移動する移動機構はコラム5前面に設ける。移動機構は一対のZ軸レール21、Z軸ボール螺子22、Z軸モータ23を備え、Z軸レール21とZ軸ボール螺子22はZ方向に延びる。主軸ヘッド6はZ軸レール21に沿って移動する。主軸ヘッド6は後面にナット(図示略)を備える。ナットはZ軸ボール螺子22に螺合する。Z軸モータ23はZ軸ボール螺子22の上部に設ける。Z軸モータ23はZ軸ボール螺子22を回転し、主軸ヘッド6をナットと共にZ軸方向に移動する。保護カバー25は主軸ヘッド6に固定し、コラム5の前面に配置する。保護カバー25は固定カバー30と移動カバー40とを含む。保護カバー25は後述する。下カバー50は、保護カバー25よりも基台2側においてコラム5の前面に固定する金属板である。下カバー50は、Z軸レール21よりも下側のコラム5を保護する。下カバー50の下部には、Y軸送り機構8の後カバー装置(後述)がY軸方向に移動可能に配置される。
主軸ヘッド6は主軸4を回転可能に支持する。主軸4は工具を装着し、主軸モータ11の駆動で回転する。主軸モータ11は主軸ヘッド6上部に設ける。制御箱19はコラム5後面側に取付ける。制御箱19は内側に各種装置を格納する。各種装置は、例えば、NC制御基板、DCスイッチング電源、ブレーカ、工具交換装置17用のインバータ、配線ダクト、サーボアンプ等である。
送り機構はY軸送り機構8、運搬体7、X軸送り機構9を備える。Y軸送り機構8は基台2上面に設ける。Y軸送り機構8は運搬体7をY軸方向に移動する。Y軸送り機構8は一対のY軸レール(図示略)、Y軸ボール螺子(図示略)、Y軸モータ(図示略)を備え、Y軸レールとY軸ボール螺子はY軸方向に延びる。Y軸ボール螺子は一対のY軸レールの間に配置する。運搬体7はY軸レールに沿って移動する。運搬体7は直方体状を呈し、下面にナット(図示略)を備える。ナットはY軸ボール螺子に螺合する。Y軸モータはY軸ボール螺子を回転し、運搬体7をナットと共にY軸方向に移動する。
X軸送り機構9は運搬体7上面に設ける。X軸送り機構9はテーブル10をX軸方向に移動する。X軸送り機構9は一対のX軸レール(図示略)、X軸ボール螺子(図示略)、X軸モータ(図示略)等を備え、X軸レール、X軸ボール螺子はX軸方向に延びる。X軸ボール螺子は一対のX軸レールの間に配置する。テーブル10はX軸レールに沿って移動する。テーブル10は下面にナット(図示略)を備え、ナットはX軸ボール螺子に螺合する。X軸モータはX軸ボール螺子を回転し、テーブル10をナットと共にX軸方向に移動する。テーブル10は運搬体7を介してY軸方向に移動する。即ちテーブル10はX軸送り機構9、Y軸送り機構8、運搬体7により、X軸方向とY軸方向に移動する。工作機械1はテーブル10に配置する被加工物と工具の相対移動で、被加工物を切削する。
テーブル10は右側に右カバー装置12、左側に左カバー装置13を備える。X軸送り機構9はテーブル10の右側と左側において外部に露出する。右カバー装置12、左カバー装置13は、X軸送り機構9の外部に露出する部分を覆う。右カバー装置12、左カバー装置13は夫々、断面山形状の複数のカバーを入れ子状に重ね合わせた構造である。右カバー装置12、左カバー装置13は夫々、テーブル10の移動に追従して左右方向(X軸方向)に伸縮する。
運搬体7は前側に前カバー装置14、後側に後カバー装置(図示略)を備える。Y軸送り機構8はテーブル10の前側と後側において外部に露出する。前カバー装置14、後カバー装置は、Y軸送り機構8の外部に露出する部分を覆う。前カバー装置14は、断面山形状の複数のカバーを入れ子状に重ね合わせた構造である。前カバー装置14は、運搬体7(テーブル10)のY軸方向における移動に追従して前後方向(Y軸方向)に伸縮する。後カバー装置は、断面山形状の板金である。後カバー装置は、運搬体7(テーブル10)と共にY軸方向に移動する。運搬体7がコラム5側に移動すると、コラム5は下部内部に後カバー装置を収納する。
図2、図4~図6を参照し、保護カバー25及び下カバー50を説明する。保護カバー25及び下カバー50は、加工の際発生する切粉がコラム5の内側に侵入するのを防止する保護部材である。保護カバー25は固定カバー30及び移動カバー40を含む。
固定カバー30は縁部を折り曲げて加工した金属製の板であり、正面視略矩形状である。固定カバー30の上端部31は前方に屈曲し、主軸ヘッド6の下部に螺子で固定するための螺子穴を有する。固定カバー30の左右両側の側端部32は、夫々後方に屈曲する。側端部32は、移動カバー40を左右方向において位置決めし、且つ移動カバー40の上下動を案内する。固定カバー30の下端部33は、主軸ヘッド6が下降したときに山形形状の後カバー装置との干渉を避けるため、左右方向の中央が両端よりも上方に位置する。更に下端部33には、左右方向の略中央部分を上方へ向けて山形状に切欠いた切欠部34が形成される。
固定カバー30は、上下方向の中央よりも下端部33側の位置に、一対の案内螺子35を夫々固定する一対の固定穴36を有する。固定穴36は左右方向に互いに離れた位置に形成する。固定穴36に締結した案内螺子35は、固定カバー30の後方に突出し、夫々移動カバー40の一対の案内穴41内に配置される。
一対の案内螺子35の夫々には、間座27が嵌められる。間座27は金属製の筒状で、案内螺子35の周方向に回転できる。間座27の外周には、弾性部材28が配置される。弾性部材28は環状であり、例えばウレタン、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の樹脂製で弾性を有する。弾性部材28は、後述する移動カバー40よりもヤング率が小さく、移動カバー40よりも弾性に富むものであればよく前述した部材に限定する必要はない。弾性部材28は間座27を介して案内螺子35の周囲を取り囲んで配置され、案内螺子35との間に間座27を設けることによって、案内螺子35の周方向に回転できる。弾性部材28は、外周面が移動カバー40の案内穴41の内周面に向き合う状態で、案内穴41内に配置される。
固定カバー30は、移動カバー40に対向する側の面である背面30Aに、複数の突起部37を有する。突起部37は、固定カバー30の背面30Aのうち、移動カバー40が移動範囲の最下位置(図4参照)に位置する場合において移動カバー40と前後方向に重なる領域において、夫々が距離を離して設けられる。突起部37は、固定カバー30に対するプレス加工により背面30A側にダボ出しすることで形成される(図5、I-I線矢視断面参照)。突起部37は、固定カバー30の背面30Aと移動カバー40の前面40Aとの間に間隙Dを形成し、両者の密着を防ぐ。突起部37の先端部は半球状であり、移動カバー40の前面40Aとの接触面積は小さい。
移動カバー40は、樹脂製(例えば、塩化ビニル樹脂(PVC))の板であり、正面視、左右方向に長い略矩形状である。移動カバー40の左右方向の長さは固定カバー30より若干短く、上下方向の長さは固定カバー30の1/2~1/3の大きさである。移動カバー40は、上下方向に延びる一対の案内穴41を有する。案内穴41は移動カバー40の前後方向に貫通し、上下方向に長い長穴状の開口である。案内穴41の左右方向における形成位置は、固定カバー30における固定穴36の形成位置に対応する。案内穴41の上端部と下端部は円形状であり、その部分の曲率半径は、弾性部材28の外周部分の半径よりも大きい。故に、案内穴41の左右方向の長さは、弾性部材28の直径よりも大きい。故に移動カバー40は、固定カバー30に対して左右方向への移動を許容する。固定カバー30の側端部32は、移動カバー40の左右両側の側端部42を位置決めする。側端部32と側端部42との間には左右方向に若干の間隙が設けられる。故に移動カバー40は、側端部32と側端部42との間隙の範囲内で、固定カバー30に対して左右方向に移動可能である。
移動カバー40の下端部43には、左右方向の略中央部分を上側に切欠いた切欠部44が形成される。切欠部44は、主軸ヘッド6が下降したときに、下カバー50の係合突起55A,55Bに係合する。切欠部44には傾斜部44A,44Bが設けられる。傾斜部44A,44Bは、切欠部44の上端部と、切欠部44の底部とを左右両側において接続する側部であり、夫々切欠部44を下方に広げる向きに傾斜する。係合突起55A,55Bは、夫々傾斜部44A,44Bに係合する。
移動カバー40は固定カバー30の背面側に配置される。移動カバー40の背面側には、左右方向に延びる押え板26が配置される。押え板26の両端部には、案内螺子35が挿通される貫通穴が形成される。案内螺子35は、後方から押え板26の貫通穴を介して案内穴41を挿通し、間座27と弾性部材28を案内穴41内に配置した状態で、固定穴36に締結される。案内螺子35は、移動カバー40を押え板26で固定カバー30に固定せず、押え板26と移動カバー40との間に隙間を許容する。突起部37により、固定カバー30と移動カバー40との間にも間隙が形成される。移動カバー40は、固定カバー30に対して相対的に上下移動可能な状態に保持される。
下カバー50は板状で、保護カバー25よりも左右方向に長い。下カバー50の上端部51には、上方に延出する延出部51Aが形成される。延出部51Aは、正面視で移動カバー40の切欠部44よりも広い。延出部51Aは、主軸ヘッド6が上昇したときに、移動カバー40の切欠部44からZ軸レール21及びコラム5の露出を防ぐ。下カバー50の下端部53には、左右方向の中央部分を上側に山形状に切欠いた切欠部54が形成される。Y軸送り機構8の後カバー装置は、切欠部54に配置される。切欠部54の上方には、一対の係合突起55A,55Bが設けられる。係合突起55A,55Bは弾性を有する円柱状の部材であり、例えばウレタン、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の樹脂製である。係合突起55A,55Bは移動カバー40よりもヤング率が小さく、移動カバー40よりも弾性に富むものであればよく前述した部材に限定する必要はない。係合突起55A,55Bは、下カバー50の前面に螺子56で固定される。係合突起55A,55Bは、主軸ヘッド6が下降したときに、移動カバー40の切欠部44の傾斜部44A,44Bの夫々が当接する位置に設けられる。
図2、図4、図7、図8を参照し、固定カバー30と移動カバー40の動作を説明する。図2に示すように、移動カバー40を組み付けた固定カバー30は、上端部31を主軸ヘッド6の下部に螺子で固定する。移動カバー40は自重によって、案内穴41の上端部が案内螺子35の周囲に配置された弾性部材28に当接する位置まで、固定カバー30に対して相対的に下方へ移動する。移動カバー40が固定カバー30に対して相対的に移動するとき、移動カバー40の側端部42は、左右方向において固定カバー30の側端部32に位置決めされる。移動カバー40は、左右方向において側端部32と側端部42との間隙の範囲内での位置ずれを許容しつつ移動する。突起部37によって固定カバー30の背面30Aと移動カバー40の前面40Aとの間に間隙Dが形成されるので、移動カバー40は固定カバー30に密着せず円滑に移動する。
図4に示すように、移動カバー40は、固定カバー30の案内螺子35の周囲に設けた弾性部材28が案内穴41の上端部に当接すると、下方への移動が制限される。このとき、移動カバー40の重さによって案内穴41の上端部と案内螺子35とが衝突するときの衝撃は、弾性部材28が弾性変形することによって緩和される。弾性部材28は、案内穴41の上端部の曲率半径よりも半径が小さいので、弾性変形によって、案内穴41の上端部に、より広い範囲で接触する。故に、移動カバー40は、移動範囲の最下点において、固定カバー30によって、より確実に保持される。なお、弾性部材28は、間座27を介して案内螺子35の周囲に配置されており、自在に回転することで、案内穴41の状態部との接触位置が周方向において変化する。故に弾性部材28に加わる衝撃を周方向全体に分散できるので、弾性部材28は耐久寿命を延ばすことができる。移動カバー40の上下方向の下側略半分の部位は、固定カバー30の下端部43から露出する。
主軸ヘッド6がZ軸方向の上方に移動し、移動カバー40が固定カバー30の下端部33から下方に露出した状態で主軸ヘッド6が移動可能な範囲の最上端の位置に移動したとき、固定カバー30はコラム5の前面を覆う。主軸ヘッド6の移動範囲を従来よりも大きくした場合において、主軸ヘッド6が最上端に位置するとき、コラム5とZ軸レール21の一部は固定カバー30の下端部33から露出する。移動カバー40は固定カバー30の下端部33から下方に位置し、固定カバー30のみでは露出するコラム5とZ軸レール21の一部を覆う。よって、保護カバー25は、コラム5内の移動機構を工作時の切粉等から保護する。なお、移動カバー40が固定カバー30よりも後方に位置するので、案内穴41は固定カバー30の背後に位置し、前面側に露出しない。故に固定カバー30は、工作時の切粉等が案内穴41内に入り込むことを抑制する。
主軸ヘッド6がZ軸方向の下方に移動すると、移動カバー40は固定カバー30に対し、自重で移動可能な最下端の位置にある状態を維持したまま、固定カバー30と共に下方に移動する。図7に示すように、主軸ヘッド6が下降する過程で、移動カバー40は、切欠部44の傾斜部44A,44Bが下カバー50の係合突起55A,55Bに当接する。傾斜部44A,44Bは、上下方向に対して傾斜する傾斜面で係合突起55A,55Bに当接する。傾斜部44Aの傾斜面は水平方向に対して角度θで傾き、面に垂直な方向が右下方を向く。傾斜部44Bの傾斜面は水平方向に対して角度θで傾き、面に垂直な方向が左下方を向く。傾斜部44A,44Bは、当接時に、傾斜面の垂直方向に係合突起55A,55Bからの抗力Nを受ける。傾斜部44Aは、抗力Nの水平成分として、左方向にNsinθの力を受ける。傾斜部44Bは、抗力Nの水平成分として、右方向にNsinθの力を受ける。よって抗力Nの水平成分は相殺される。そして傾斜部44A,44Bは、抗力Nの垂直成分として、上方向にNcosθの力を受ける。θは90度未満なので、傾斜部44A,44Bは、傾斜面が傾斜せず水平面である場合と比べ、係合突起55A,55Bとの当接時に移動カバー40が受ける抗力Nを低減し、衝撃を緩和できる。係合突起55A,55Bは弾性を有するので、傾斜部44A,44Bとの衝突時に弾性変形することにより、衝突時の衝撃を更に緩和できる。故に移動カバー40は、上方向に弾む動きが抑制される。
図8に示すように、係合突起55A,55Bとの当接後、主軸ヘッド6が更に下降しても、移動カバー40は係合突起55A,55Bに当接した状態を維持し、上下方向へは移動しない。移動カバー40の下端部43は、Y軸送り機構8の後カバー装置との間に僅かな隙間を有し、後カバー装置に当接しない。固定カバー30は、移動カバー40に対して相対的に下方に移動する。移動カバー40は固定カバー30の背面側で、固定カバー30に対して相対的に上方に移動し、固定カバー30の下方への移動を妨げない。主軸ヘッド6の最下端の位置はZ軸モータ23の駆動における制御によって位置決めされる。主軸ヘッド6が移動可能な範囲の最下端の位置にあるとき、固定カバー30の下端部33は、Y軸送り機構8の後カバー装置との間に僅かな隙間を有し、後カバー装置に当接しない。切欠部34は係合突起55A,55Bには接触しない。移動カバー40の下端部43は、固定カバー30の下端部33とほぼ同じ高さ位置にある。このように、移動カバー40が固定カバー30に対して相対的に上方に移動し、固定カバー30の背面側に収納されることで、移動カバー40は固定カバー30の下方への移動を妨げない。
以上説明したように、主軸ヘッド6が上方に移動し、保護カバー25が基台2から離れる場合、移動カバー40は、自重により、固定カバー30に対して下方に移動する。すると、移動カバー40に形成された案内穴41と、固定カバー30に設けられた案内螺子35は、一方が他方に対して相対的に下方へ移動する。案内螺子35が案内穴41の上端部に近接すると、案内螺子35の周囲に配置された弾性部材28は、案内螺子35と案内穴41の上端部との間に挟まれ、弾性変形することによって、案内穴41の上端部との接触面積が大きくなる。その結果、移動カバー40が自重により下方に移動したときに固定カバー30にかかる応力を小さくでき、移動カバー40の耐久性を高めることができる。仮に弾性部材28がない場合に案内螺子35と案内穴41の上端部とが衝突して生じうる衝撃を、弾性部材28を配置することによって、緩和できる。
弾性部材28は環状であるので、案内螺子35と案内穴41の上端部との間に挟まれる場合に、案内穴41と案内螺子35との相対位置のずれや、案内穴41の上端部の形状に因ることなく、上端部に対して確実に接触して弾性変形できる。よって弾性部材28は、固定カバー30と移動カバー40の衝突時の衝撃を、より確実に緩和できる。
弾性部材28と案内螺子35との間に間座27を配置することで、弾性部材28は案内螺子35に対して回転できる。故に、弾性部材28は、案内螺子35と案内穴41の上端部との間に挟まれる場合に、特定の部位ばかりに衝撃が加わるのではなく、回転によって周方向全体に衝撃が加わるようになる。故に弾性部材28は耐久寿命を延ばし、固定カバー30と移動カバー40の衝突時の衝撃を、長期に亘って緩和できる。
主軸ヘッド6が下降したとき、移動カバー40は基台2に近づく。保護カバー25よりも基台2側にてコラム5に固定した下カバー50は、移動カバー40に係合する係合突起55A,55Bを備える。故に移動カバー40は、後カバー装置等の他の構造物に接触することなく、係合突起55A,55Bに係合する。係合突起55A,55Bは、移動カバー40に接触して弾性変形することで、衝突時に生じうる衝撃を緩和できる。
主軸ヘッド6が下降したとき、係合突起55A,55Bは移動カバー40に形成された切欠部44の傾斜部44A,44Bに当接する。傾斜部44A,44Bは上下方向に対して傾斜するので、係合突起55A,55Bとの当接によって移動カバー40にかかる抗力は、上下方向と、上下方向に直交する左右方向とに分散される。すなわち移動カバー40は、係合突起55A,55Bとの当接によって上下方向に加わる抗力が低減されるので、上下方向の衝撃を、更に緩和できる。故に移動カバー40は、傾斜部44A,44Bが係合突起55A,55Bに当接する際の抗力によって上下方向に弾む動きを抑制できる。
固定カバー30の背面30Aに設けた突起部37は、移動カバー40の前面40Aに先端部が接触することで、固定カバー30の背面30Aと移動カバー40の前面40Aとの間に間隙Dを形成する。すなわち固定カバー30と移動カバー40は、互いに対向する面同士が突起部37に形成される間隙Dによって直接接触しないので、移動カバー40の固定カバー30に対する相対的な移動が、固着によって妨げられることがない。
上記実施形態において、コラム5の前面は、本発明の「一側面」に相当する。主軸ヘッド6は、本発明の「支持体」に相当する。Z軸ボール螺子22とZ軸レール21は、本発明の「移動機構」に相当する。保護カバー25は、本発明の「保護部材」に相当する。固定カバー30は、本発明の「第一保護部」に相当する。移動カバー40は、本発明の「第二保護部」に相当する。案内穴41は、本発明の「開口」に相当する。案内螺子35は、本発明の「突出部」に相当する。下カバー50は、本発明の「第三保護部」に相当する。係合突起55A,55Bは、本発明の「係合部」に相当する。傾斜部44A,44Bは、本発明の「傾斜辺」に相当する。切欠部44は、本発明の「切欠部」に相当する。固定カバー30の背面30Aは、本発明の「第一面」に相当する。移動カバー40の前面40Aは、本発明の「第二面」に相当する。
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。移動カバー40の案内穴41は一対に設けたが、一つでもよいし、三つ以上あってもよい。押え板26はなくてもよく、案内螺子35に、案内穴41の曲率半径よりも大きな外径を有するワッシャを組み付け、押え板26の代わりに用いてもよい。固定カバー30の切欠部34はなくてもよい。移動カバー40の切欠部44は、係合突起55A,55Bに対応する傾斜部44A,44Bを含む形態で一対のV字状に形成してもよい。この場合、係合突起55Aと傾斜部44Aを左右方向の中央部に設け、係合突起55Bと傾斜部44Bはなくてもよい。
突起部37はダボ出しで形成したが、固定カバー30の背面30Aにネジ止め、或いはダボの嵌め込みなどにより形成してもよい。突起部37の先端部は半球状でなくともよい。突起部37は、柱状に限らず、峰状に突起して延びる形状であってもよい。突起部37は、移動カバー40の前面40Aに設けてもよい。案内穴41の端部の曲率半径は、弾性部材28の外周部分の半径よりも大きいが、同じ大きさでもよい。案内穴41の端部の形状は、半円形状に限らず、矩形状、或いは角を面取りした台形状であってもよい。間座27はなくてもよい。
図9に示すように、保護カバー125は、移動カバー140の案内穴141の内側に、長円形の環状に形成した弾性部材128を固定してもよい。この場合、間座127は、本実施形態の間座27よりも大きく形成し、固定カバー130に締結する案内螺子135の周囲を取り囲んで配置する。間座127の外周部分の半径は、弾性部材128の内周部分の端部における曲率半径よりも小さくする。このように構成することで、案内螺子135は弾性部材128を介して案内穴141と接するので、衝突時の衝撃を緩和できる。なお、上記場合において、間座127はなくてもよい。弾性部材128は環状でなくともよく、案内穴141の上端部に、或いは上端部及び下端部に配置してもよい。
図10に示すように、保護カバー225は、固定カバー230に案内穴241を形成し、移動カバー240に案内螺子235を設けてもよい。案内螺子235は押え板226の前側から両端部の貫通穴を介して案内穴241を挿通し、間座227と弾性部材228を案内穴241内に配置した状態で、移動カバー240の固定穴236に締結する。このように構成しても、移動カバー240は固定カバー230に対して相対的に上下方向に移動できる。なお、案内穴241が固定カバー230の前面に開口するので、固定カバー230の前面に、案内穴241を覆うカバーを設け、工作時の切粉等が案内穴241に入らないようにしてもよい。この場合、押え板226の代わりに、案内穴241の曲率半径よりも大きな外径を有するワッシャを案内螺子235に組み付けるとよい。
1 工作機械
2 基台
4 主軸
5 コラム
6 主軸ヘッド
21 Z軸レール
22 Z軸ボール螺子
25 保護カバー
27 間座
28 弾性部材
30 固定カバー
30A 背面
35 案内螺子
37 突起部
40 移動カバー
40A 前面
41 案内穴
44 切欠部
44A,44B 傾斜部
50 下カバー
55A,55B 係合突起

Claims (7)

  1. 基台と、
    前記基台の上に設けたコラムと、
    工具を着脱可能に装着する主軸と、
    前記コラムの一側面に設け、前記主軸を支持する支持体と、
    前記コラムの内部に設け、前記支持体を前記主軸の軸方向に移動する第一移動機構と、
    前記コラムの前記一側面において前記支持体の移動に伴い前記第一移動機構が露出する部分を覆って保護する保護部材と
    を備えた工作機械において、
    前記保護部材は、
    前記支持体に固定し、前記第一移動機構によって前記支持体と共に前記軸方向へ移動する第一保護部と、
    前記第一保護部に対し相対的に移動する第二保護部と
    から構成され、
    前記第一保護部及び前記第二保護部のうちの一方の保護部は、
    前記軸方向に延びる開口を有し、
    前記第一保護部又は前記第二保護部のうちの他方の保護部は、
    前記開口内に突出し、前記開口に対して相対的に前記軸方向に移動する突出部を備え、
    前記突出部又は前記開口に弾性を有する弾性部材を配置すること
    を特徴とする工作機械。
  2. 前記弾性部材は前記突出部の周囲を取り囲む環状に形成されたこと
    を特徴とする請求項1に記載の工作機械。
  3. 前記保護部材は、前記突出部と前記弾性部材との間に間座を配置し、
    前記弾性部材は、前記突出部に対し、周方向に回転可能であること
    を特徴とする請求項2に記載の工作機械。
  4. 前記保護部材よりも前記基台側において前記コラムに固定した第三保護部と、
    前記第三保護部に設け、弾性を有し、前記支持体が前記軸方向において前記第三保護部に近接する方向へ移動した場合に、前記第二保護部に係合する係合部と
    を備えること
    を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の工作機械。
  5. 前記第二保護部の前記軸方向における前記基台側の端部には、前記基台から離れる側に切り欠かれ、切欠き部分に前記軸方向に対して傾斜する傾斜辺を有する切欠部が形成され、
    前記係合部は、前記支持体が前記軸方向において前記第三保護部に近接する方向へ移動した場合に、前記切欠部の前記傾斜辺に当接すること
    を特徴とする請求項4に記載の工作機械。
  6. 前記第一保護部又は前記第二保護部は、前記第一保護部が前記第二保護部に対向する第一面、又は前記第二保護部が前記第二保護部に対向する第二面のうちのいずれか一方の面に、他方の面へ向けて突出し、且つ突出先端が前記他方の面に接触する突起部を有すること
    を特徴とする請求項5に記載の工作機械。
  7. 基台と、前記基台の上に設けたコラムと、工具を着脱可能に装着する主軸と、前記コラムの一側面に設け、前記主軸を支持する支持体と、前記コラムの内部に設け、前記支持体を前記主軸の軸方向に移動する第一移動機構とを備えた工作機械の前記コラムの前記一側面において前記支持体の移動に伴い前記第一移動機構が露出する部分を覆って保護する保護部材であって、
    前記支持体に固定し、前記第一移動機構によって前記支持体と共に前記軸方向へ移動する第一保護部と、
    前記第一保護部に対し相対的に移動する第二保護部と
    から構成され、
    前記第一保護部及び前記第二保護部のうちの一方の保護部は、
    前記軸方向に延びる開口を有し、
    前記第一保護部又は前記第二保護部のうちの他方の保護部は、
    前記開口内に突出し、前記開口に対して相対的に前記軸方向に移動する突出部を備え、
    前記突出部又は前記開口に弾性を有する弾性部材を配置すること
    を特徴とする保護部材。
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