JP2024046791A - 樹脂組成物 - Google Patents

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雅 間簔
健 小嶋
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Abstract

【課題】本発明の課題は、難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を両立した樹脂組成物を提供することである。【解決手段】本発明の射出成形用の樹脂組成物であって、前記樹脂組成物の全量に対して、下記条件(1)~(3)を満たす化合物を含有することを特徴とする。(1)分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%(2)金属水酸化物を5~30質量%(3)ポリオレフィン樹脂を50質量%以上【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を両立した樹脂組成物に関する。
複写機等を含む電子機器の内外装材として使用される樹脂組成物としては、樹脂部品としての強度があり、かつ難燃性を確保した熱可塑性樹脂組成物が使用されている。ポリオレフィン系樹脂はベース材として製造時の二酸化炭素(CO)排出量が低く、さらに低コストであり、使用できれば環境性やコストダウンという点において候補となる。しかし、現行材(ポリカーボネート(PC)、ABSなど)に比べて化学構造的に分子間力が小さく、また分子として単結合のみで回転しやすい構造である。そのため、強度が低く、また難燃性も劣ることから、用途が限定されている。
従来、樹脂の難燃化方法としてはハロゲン系、リン系、金属水和物等、様々な難燃剤を用いて行われている。このうちハロゲン系難燃剤は難燃効果が高いが、有害ガスを発生させることから環境への悪影響が懸念されるため、ノンハロゲンで強度難燃性を両立する。
難燃性及び強度を向上させる技術として、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂に難燃剤としてシリコーン系化合物、脂肪酸含有化合物、炭酸カルシウム粒子及びケイ酸塩化合物粒子から選択される無機粒子、難燃助剤として水酸化アルミニウム、ヒンダードアミン系化合物を含む樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、ポリオレフィン樹脂にリン含有化合物及びヒンダードアミン系化合物から選択される難燃剤を添加する樹脂組成物が記載されている。
特許文献1において難燃剤として使用されている無機粒子は、ポリオレフィン樹脂に対する難燃性効果が高いとは言えず、水酸化アルミニウム及びヒンダードアミン系化合物による難燃性効果に期待される。しかし、水酸化アルミニウム及びヒンダードアミン系化合物で難燃性を確保するためには多量に添加しなければならず、強度との両立が困難である。
特許文献2に記載されている発明では、本願発明において必須の吸熱性を持つ無機充填剤(水酸化アルミニウムなどの無機フィラー)を排除しているため、本願発明とは異なる。また、一般にポリオレフィン樹脂に対し、リン系化合物は相溶性が悪いため、多く添加(概ね20%以上)するとブリードアウトの懸念、成形不良の懸念も生じる。
特許文献3に開示されている技術は、樹脂膜材に関するものであるが、ポリプロピレン樹脂に対し塩基性ヒンダードアミン系化合物と熱劣化防止剤との併用物と、10~80質量%の難燃性付与成分とをさらに含むことが記載されている。そして、難燃性付与成分の中にリン原子含有化合物や金属水酸化物が含まれる。
しかしながら、特許文献3に開示されている技術では、熱劣化防止剤を必須とするため、熱劣化防止剤は樹脂の耐熱性(剛性)を高める効果があるものの、ヒンダードアミン系化合物の燃焼時のポリオレフィン分子鎖の切断効果と競合してしまう。そのため、燃焼時におけるドリップ(滴下)効果を阻害して難燃性を損なうという問題があった。また、靭性と剛性のトレードオフの関係上、剛性は高くなるが靭性を下げる効果があった。このように、靭性及び剛性と難燃性の両立を図ることができなかった。
特開2021-42334号公報 特開2015-189785号公報 特開2004-106513号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を両立した樹脂組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、以下のことを見いだし本発明に至った。すなわち、従来、強度を落とすと考えられていたリン系難燃剤のうち、低分子量エステル化合物(分子量500以下のリン酸エステル化合物)と、金属水酸化物とポリオレフィン樹脂を特定範囲内で含有させる。これにより、難燃性を上げつつ、靭性及び剛性も高め、難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を両立した樹脂組成物を提供することができることを見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.射出成形用の樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物の全量に対して、下記条件(1)~(3)を満たす化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
(1)分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%
(2)金属水酸化物を5~30質量%
(3)ポリオレフィン樹脂を50質量%以上
2.前記リン酸エステル化合物が、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)のいずれかであることを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
3.前記リン酸エステル化合物の分子量が、140以上410以下であることを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
4.前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
5.前記樹脂組成物の全量に対して、NOR型ヒンダードアミン化合物を0.05~5質量%の範囲内で含有することを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
6.前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする第1項に記載の樹脂組成物。
7.前記金属水酸化物の平均分散粒径が、0.1~5μmの範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
本発明の上記手段により、難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を両立した樹脂組成物を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の射出成形用の樹脂組成物は、分子量500以下のリン酸エステル化合物、金属水酸化物及びポリオレフィン樹脂を含有し、これらを樹脂組成物の全量に対して特定量を含有している。
すなわち、ポリオレフィン樹脂、低分子量のリン酸エステル化合物及び金属水酸化物(吸熱フィラー)の組み合わせにより難燃性と機械的特性(靭性、剛性等)を改善することができる。
さらに、好ましくはNOR型ヒンダードアミン化合物を併用することにより難燃性と靭性を含む機械的特性を高水準に改善することができる。
なお、本発明において、「機械的特性」とは、材料(樹脂組成物)の力学的特性をいい、外力に対する強さの指標として、変形しにくさ(剛性)、粘り強さ(靭性)、耐熱性等がある。
プラスチックの燃焼は複数のプロセスからなる。
具体的には、A)可燃性ガスの燃焼:可燃性ガス、酸素の補給、B)燃焼による輻射熱の発生、C)有機材料中への熱伝導、D)有機材料の熱分解:可燃性ガスの発生、E)可燃性ガスの材料表面への拡散、F)可燃性ガスの燃焼場への拡散、A)可燃性ガスの燃焼というサイクルでプラスチックの燃焼が進む。さらに高温では可燃性ガスがラジカル化して酸素との化学反応が大幅に促進され、光と熱が発生する。
プラスチックの燃焼を止めるには、このサイクルを止める必要があるが、サイクルのどこか一つでなく複数の難燃メカニズムによって複数のプロセスを抑制して難燃効率を上げることが一般的である。
リン化合物にはラジカルトラップ性(又は効果)や、可塑化効果がある一方、機械的特性低下を招くという問題がある。しかしながら、リン化合物から低分子量のリン酸エステル化合物を選択し、ポリオレフィン樹脂と組み合わせることにより、難燃性を改善しながら同時に耐衝撃性の両方を改善することができる。そのメカニズムは明らかになっていないが、低分子量のリン酸エステル化合物が存在することで、成形時の結晶化度が抑制されることが要因と考えられる。
基本的には、リン化合物は添加量を多くすればするほど難燃効果は増す傾向にある。そのため、1質量%未満では難燃効果が不十分である。10質量%以上の領域では難燃効果、靭性の改善効果は増すものの、靭性のトレードオフである剛性が大きく低下してバランス上好ましくない。
また、もともとリン化合物とポリオレフィン樹脂は相溶性が悪く混錬不良(両者が混ざらない)、成形不良、成形後のブリードアウト(成形後難燃剤成分の成形片への表出)を生じる。
そのため、ポリオレフィン樹脂とリン酸エステル化合物の組み合わせに加え、ヒドロキシ基を持った金属水酸化物(吸熱フィラー)を利用することで、リン酸エステル化合物及びNOR型ヒンダードアミン化合物が持たない吸熱による難燃化効果を追加するとともに、金属水酸化物による剛性補強効果も利用する。
さらに、金属水酸化物(吸熱フィラー)粒子の平均分散粒径の分布を制御することで、剛性と靭性のバランスを高い水準で制御することができる。サブミクロンサイズの金属水酸化物(吸熱フィラー)を使用することで、靭性を改善することができ、ミクロンサイズの金属水酸化物(吸熱フィラー)を使用することで剛性改善効果が得られる。
しかしながら、5ミクロンを超えるサイズの金属水酸化物(吸熱フィラー)を使用すると、剛性改善には効果があるが、低分子量リン酸エステル化合物による靭性改善効果を超えて靭性の低下が起こるため、靭性と剛性のバランスの観点から望ましくない。
また、0.1ミクロン未満の金属水酸化物(吸熱フィラー)を使用した場合、剛性改善効果は得られない。また、金属水酸化物(吸熱フィラー)の量を増量することで靭性と剛性は改善していくが、30%より多い領域では金属水酸化物(吸熱フィラー)の凝集が顕著になり、サブミクロンサイズの金属水酸化物(吸熱フィラー)であっても靭性が大きく低下する。5質量%未満では吸熱効果が不十分であり、難燃効果が得られない。
本発明の射出成形用の樹脂組成物は、前記樹脂組成物の全量に対して、下記条件(1)~(3)を満たす化合物を含有することを特徴とする。
(1)分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%
(2)金属水酸化物を5~30質量%
(3)ポリオレフィン樹脂を50質量%以上
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記リン酸エステル化合物が、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)のいずれかであることが、靭性向上の点で好ましい。
また、前記リン酸エステル化合物の分子量が、140以上410以下であることが、靭性向上の点で好ましい。
前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることが、難燃性向上の点で好ましい。
前記樹脂組成物の全量に対して、NOR型ヒンダードアミン化合物を0.05~5質量%の範囲内で含有することが、ドリップ促進の点で好ましい。
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることが、靭性及び剛性をバランスよく向上させられる点で好ましい。
前記金属水酸化物の平均分散粒径が、0.1~5μmの範囲内であることが、靭性、剛性をバランスよく向上させられる点で好ましい。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[本発明の樹脂組成物の概要]
本発明の射出成形用の樹脂組成物であって、前記樹脂組成物の全量に対して、下記条件(1)~(3)を満たす化合物を含有することを特徴とする。
(1)分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%
(2)金属水酸化物を5~30質量%
(3)ポリオレフィン樹脂を50質量%以上
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記各成分以外に、ポリオレフィン樹脂以外のその他樹脂、樹脂組成物が一般的に含有する各種添加剤を任意に含有することができる。以下、本発明の樹脂組成物における各成分について説明する。
<リン酸エステル化合物>
本発明の樹脂組成物は、分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%の範囲内で含有する。
本発明の樹脂組成物において、リン酸エステル化合物は主として難燃剤として作用する。
本発明に係るリン酸エステル化合物は、分子量500以下であれば、脂肪族リン酸エステル化合物であっても芳香族リン酸エステル化合物であってもよい。芳香族リン酸エステル化合物を使用すると、後述するNOR型ヒンダードアミン化合物がより安定的にラジカルを生成することが考えられ、難燃性の効果をより発揮しやすくなる。
リン酸エステル化合物としては、リン酸と脂肪族又は芳香族アルコールを反応させたモノマー型リン酸エステル化合物及びオキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である芳香族縮合リン酸エステル化合物等が挙げられる。
リン酸エステル化合物として、具体的には、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等が含まれる。
また、リン酸エステル化合物は、耐熱性等の観点で、縮合タイプである縮合リン酸エステル化合物であることが好ましい。縮合リン酸エステル化合物としては、例えば、下記化学式(A2)で表される芳香族縮合リン酸エステル化合物が挙げられる。
Figure 2024046791000001
上記式(A2)中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、R~Rは同一でも異なっていてもよい。複数(5個)存在するRは、互いに同一でも異なっていてもよい。それぞれ複数(4~5個)存在するR、R、R及びRについても同様である。nは1~30の整数であり、好ましくは1~10の整数である。
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、アミル基、tert-アミル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、2,6-キシリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステル化合物は、上記のとおりオキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である。式(A2)で構造が表される芳香族縮合リン酸エステル化合物は、二価のフェノール系化合物が、置換基を有してもよいレゾシノール(以下、「レゾシノール化合物」ともいう。)である場合の化合物である。芳香族縮合リン酸エステル化合物は、レゾシノール化合物に替えて、4,4´-ビフェノール、ビスフェノールA(それぞれ置換基を有してもよい。)を用いて得られる化合物であってもよい。具体的には、式(A2)において、レゾシノール化合物残基の代わりに、それぞれ置換基を有してもよい、4,4´-ビフェノール残基、又はビスフェノールA残基を有する芳香族縮合リン酸エステル化合物を本発明に用いることができる。
リン酸エステル化合物は市販品を用いてもよい。リン酸エステル化合物の市販品としては、例えば、いずれも大八化学工業社製の、TPP(トリフェニルホスフェート)、TMP(トリメチルホスフェート)等が使用できる。
また、本発明に係るリン酸エステル化合物の分子量は、500以下であれば、特に限定されないが、分子量が140以上410以下であることが、靭性改善の点で好ましい。このような分子量のリン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等が挙げられる。本発明に係るリン酸エステル化合物は、これらのいずれかであることが靭性改善の点で好ましい。
前記リン酸エステル化合物は、樹脂組成物の全量に対して、1~10質量%となるように用い、特に、1~5質量%の範囲内が好ましい。
<金属水酸化物>
本発明の樹脂組成物は、金属水酸化物を5~30質量%の範囲内で含有する。
本発明の樹脂組成物において、金属水酸化物も前記リン酸エステル化合物と同様に主として難燃剤として作用する。
本発明に係る金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト等が挙げられ、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることが難燃性向上の点で好ましい。
前記金属水酸化物は、水酸化アルミニウムのみ又は水酸化マグネシウムのみを用いてもよく、両者を用いてもよい。
金属水酸化物の形態は、粒子が好ましい。粒子の形状は特に制限されず、球状、紡錘状、板状、鱗片状、針状、繊維状等が挙げられる。粒子の場合、アスペクト比は10未満であることが好ましい。
樹脂組成物における、前記金属水酸化物は、平均分散粒径が0.01~100μmの範囲内にあることが好ましく、0.1~5μmがより好ましく、0.2~2μmがさらに好ましい。
金属水酸化物の平均分散粒径(単に「分散径」ともいう。)は、樹脂組成物の製造に際して用いられる水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムの粒子(以下、「原料粒子」ともいう。)の樹脂中の分散粒径と同じとして扱うことができる。平均分散粒径は、樹脂を焼却した残渣の粒子のレーザ回折・散乱法で測定される体積基準のメジアン径(D50)として測定可能である。また、樹脂をSEM等で観察することによっても測定することができる。
金属水酸化物の原料粒子は必要に応じて表面修飾剤により表面修飾されていてもよい。
表面修飾に用いる表面修飾剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のようなアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのようなクロロシラン系化合物、シリコーンオイル、シリコーンワニス、各種脂肪酸等を用いることができる。これらの表面修飾剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記金属水酸化物は、樹脂組成物の全量に対して、5~30質量%となるように用い、特に、10~25質量%の範囲内が好ましい。金属水酸化物の含有量が、5質量%以上であると、射出成形品の難燃性が十分となり。金属水酸化物の含有量が、30質量%以下であると射出成形品中の金属水酸化物の凝集が進み、機械的特性、特に耐衝撃強度(靭性)が十分となる。
<ポリオレフィン樹脂>
本発明に係る樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を50質量%以上含有する。
ポリオレフィン樹脂(「ポリオレフィン系樹脂」ともいう。)は、オレフィンを単量体成分の主成分として重合された単独重合体又は共重合体である。なお、本明細書において、「オレフィン」は、二重結合を1つ有する脂肪族鎖式不飽和炭化水素をいう。
ここで、樹脂(重合体)を構成する主成分とは、重合体を構成する全単量体成分中、50質量%以上である成分をいう。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを全単量体成分中、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは80~100質量%含んでなる単独重合体又は共重合体である。
オレフィン共重合体には、オレフィンと他のオレフィンとの共重合体、又はオレフィンとオレフィンに共重合可能な他の単量体との共重合体が含まれる。ポリオレフィン系樹脂における上記他の単量体の含有量は、全単量体成分中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは0~20質量%である。
オレフィンとしては、炭素数2~12のα-オレフィンが好ましい。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-デセン等を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂の重合に際して、オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
オレフィンに共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロペンテン及びノルボルネン等の環状オレフィン、並びに1,4-ヘキサジエン及び5-エチリデン-2-ノルボルネン等のジエン等を挙げることができる。さらに、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ビニルエーテル、無水マレイン酸、一酸化炭素、N-ビニルカルバゾール等の単量体を用いてもよい。上記他の単量体は、ポリオレフィン系樹脂の重合に際して、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレンを主成分とするポリエチレン樹脂;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂;ポリブテン;並びにポリペンテン等を挙げることができる。
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、さらに、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリケトン、メタロセン触媒で製造された共重合体が挙げられる。また、これらの重合体を化学的に反応、変性したもの、具体的にはアイオノマー樹脂、EVAの鹸化物、押出機内で動的加硫を用いて製造されたオレフィン系エラストマーなども含まれる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレンに由来する構造の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びアタクチックのいずれでもよい。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物が含有するポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく2種以上であってもよい。ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いてもよい。
本発明の樹脂組成物におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂組成物から上記リン酸エステル化合物、前記金属水酸化物及び任意に含有するその他の成分の含有量を除いた量である。樹脂組成物の全量に対するポリオレフィン系樹脂の含有量は、50質量%以上の範囲内であり、70~90質量%の範囲内がより好ましい。
(その他の樹脂)
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。
その他の樹脂は、例えば、熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。その他の樹脂は、市販品を用いてもよい。
また、その他の樹脂として、増靭剤として機能する樹脂を用いてもよい。増靭剤は、樹脂組成物の柔軟性や加工性、耐衝撃性などを向上させることを目的用いられる、例えば、ゴム弾性を有する樹脂である。上記のとおり、増靭剤を添加すると、その副作用として剛性が低下することが想定される。したがって、使用に際しては、含有量を調整して、本発明の効果を損なわないように留意する。
増靭剤として用いられる樹脂は、ブタジエンを含むモノマーの重合体で構成されるソフトセグメントと、スチレンのような芳香族基を有するモノマーの重合体で構成されるハードセグメントとを含む熱可塑性エラストマーであることが好ましい。上記熱可塑性エラストマーの例には、メチルメタアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、及び、ブチルアクリレート-メチルメタアクリレート共重合体、が含まれる。中でも、増靭剤がMBS及びABSからなる群から選ばれる一以上であることが好ましい。これらから選ばれることにより、樹脂組成物の相溶化性及び難燃性や、樹脂組成物における熱可塑性エラストマーの分散性に優れる。増靭剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
本発明の樹脂組成物における、その他の樹脂の含有量は、例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0~20質量部の範囲とすることができる。より好ましくは、0~10質量部の範囲とすることができ、その他の樹脂を含有しないことが特に好ましい。
<NOR型ヒンダードアミン化合物>
本発明の樹脂組成物は、さらにNOR型ヒンダードアミン化合物(以下、「NOR型HALS」ともいう。)を含有することが好ましい。
NOR型HALSの含有量は、本発明の樹脂組成物の全量に対して0.05~5質量%の範囲内であることが好ましい。
NOR型HALSは、ラジカルトラップやポリオレフィン系樹脂の燃焼時の低分子量化といった難燃効果を有する。また、NOR型HALSは、光安定化剤としてよく知られるものであり、添加することにより耐光性を付与することもできる。
NOR型HALSは、アルコキシイミノ基(>N-OR)を有するHALSである。
アルコキシイミノ基とは、イミノ基(>N-H)のN-H部分のHがHのままであるNH型、Hがアルキル基(R(アルコキシ基のRと同じ意味である。)、典型的にはメチル基で置き換わったNR型、典型的にはNメチル型に対して、Hがアルコキシ基で置き換わったN-アルコキシ基の構造を有するものである。このN-アルコキシ基は、アルキルパーオキシラジカル(RO・)を捕捉して容易にラジカルとなり難燃効果を発揮する。
一方、Nメチル型ヒンダードアミン化合物又はNH型ヒンダードアミン化合物の場合は、難燃性の効果が低い。
上記のアルコキシ基(-OR)におけるRは、置換又は非置換の飽和又は不飽和の炭化水素基を表す。Rとしては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基等が挙げられる。アルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、これらを組み合わせたアルキル基であってもよい。
本発明で用いるNOR型HALSとしては、アルコキシイミノ基(>N-OR)の構造を有するものであれば特に限定されない。具体例として、例えば、特表2002-507238号公報、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号等に記載されているNOR型HALS等が好適例として挙げられる。
NOR型HALSとしては、例えば、下記式(B)で構造が表される化合物が挙げられる。
Figure 2024046791000002
[式(B)中、G及びGは独立して炭素数1~4のアルキル基を表すか、又は一緒になってペンタメチレン基を表す。
及びZは各々メチル基を表すか、又はZとZは一緒になって架橋部分を形成している。該架橋部分はさらにエステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基又はウレタン基を介して有機基に結合されることができる。
Eは炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数5~12のシクロアルコキシ基、炭素数7~25のアラルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基を表す。]
式(B)に示されるNOR型HALSとしては、高分子タイプのものが好ましい。高分子タイプとは、一般に、オリゴマー状又はポリマー状化合物である。高分子タイプであると、難燃性と耐熱性の点に優れる。上記高分子タイプのオリゴマー状又はポリマー状化合物は、繰り返し単位数としては、2~100が好ましく、より好ましくは5~80である。
また、式(B)で示されるNOR型HALSとして、例えば、下記式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2024046791000003
上記式(1)中、R~Rはそれぞれ水素原子又は下記式(2)の有機基を表す。R~Rの少なくとも1つは下記式(2)の有機基である。
Figure 2024046791000004
式中、Rは炭素数1~17のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、フェニル基又は炭素数7~15のフェニルアルキル基を表す。R、R、R及びRはそれぞれ炭素数1~4のアルキル基を表す。R10は水素原子、又は炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を表す。
である炭素数1~17のアルキル基のうち、メチル基、プロピル基又はオクチル基が好ましい。また、炭素数5~10のシクロアルキル基のうち、シクロヘキシル基が好ましい。また、フェニル基又は炭素数7~15のフェニルアルキル基のうち、フェニル基が好ましい。
~Rである炭素数1~4のアルキル基うち、メチル基が好ましい。
10である炭素数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基のうち、n-ブチル基が好ましい。
式(1)中、R、R、及びRが式(2)の有機基であるもの、又はR、R、及びRが式(2)の有機基であるものが好ましい。
NOR型HALSの具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-オクタデシルアミノピペリジン;ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;ビス(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート;4,4´-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物;4,4´-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)-6-クロロ-s-トリアジン;過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N´-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物(N,N´,N´´´-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3´-エチ
レンジイミノジプロピルアミン);ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート;1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン;ビス(1-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート。
NOR型HALSは市販品を用いてもよい。NOR型HALSの市販品としては、BASF社製、Flamestab NOR116FF、TINUVIN NOR371、TINUVIN XT850FF、TINUVIN XT855FF、TINUVIN PA123、ADEKA社製、LA-81、FP-T80等を例示することができる。NOR型HALSは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、前記したリン酸エステル化合物、金属水酸化物、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤として公知の成分を含有することができる。その他の添加剤としては、前記したリン酸エステル化合物及び金属水酸化物以外のその他の難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、滑剤等が挙げられる。
(その他の難燃剤)
その他の難燃剤は、有機系難燃剤であっても、無機系難燃剤であってもよい。有機系難燃剤の例には、ブロモ化合物等が含まれる。無機系難燃剤の例には、アンチモン化合物や前記した金属水酸化物以外の金属水酸化物が含まれる。
(ドリップ防止剤)
ドリップ防止剤は、燃焼時に樹脂材料の滴下(ドリップ)を防止し、難燃性を向上させる目的で添加されるものである。ドリップ防止剤としては、フッ素系ドリップ防止剤やシリコンゴム類、層状ケイ酸塩等が挙げられる。ドリップ防止剤は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類等が挙げられる。
(滑剤)
滑剤としては、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、シランポリマー、固体パラフィン、液体パラフィン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、シリコーン粉末、メチレンビスステアリン酸アミド及びN,N´-エチレンビスステアリン酸アミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上のものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物におけるその他の添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であり、例えば、樹脂組成物の全量に対して、0.1~30質量%程度の範囲内であり、0.1~20質量%の範囲内が好ましい。また、合計で30質量%以下が好ましい。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、前記したリン酸エステル化合物、金属水酸化物、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂、及び必要に応じて含有されていてもよいその他の添加剤の原料成分を、上記本発明の樹脂組成物となるように溶融混練して得ることができる。
本発明の製造方法において、溶融混練は、例えば、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、押出機(単軸押出機、多軸押出機(例えば、二軸押出機)等)、及びニーダー等の混練装置を用いて行われる。これらの中でも、生産効率がよいことから、押出機を用いて溶融混練を行うことが好ましい。さらに、高いせん断性を付与できることから、溶融混練は多軸押出機を用いることが好ましく、二軸押出機を用いることがより好ましい。ここで、押出機の用語は、押出混練機を含む範疇で用いられる。
溶融混練の際の温度(溶融混練温度)は、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上とする。溶融混練温度は、例えば、150~280℃が好ましく、使用するポリオレフィン系樹脂に応じて適宜選択される。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、溶融混練温度は、180~270℃が好ましく、より好ましくは180~230℃である。溶融混練に押出機を用いる場合、混練溶融温度はシリンダー温度に相当する。
溶融混練に押出機を用いる場合、スクリュー回転数は、50~300rpmの範囲が好ましい。
押出機からの樹脂混合物又は樹脂組成物の吐出量は、それぞれ1~50kg/hrの範囲が好ましい。
なお、溶融混練を行う前に、各成分を、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサー等の各種混合機を用いて予め混合(ドライブレンド)しておいてもよい。
本発明の製造方法においては、混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出した混練物をペレット状やフレーク状等の形態に加工することができる。
なお、本発明の樹脂組成物は、粉末状、顆粒状、タブレット(錠剤)状、ペレット状、フレーク状、繊維状、及び液状等の各種形態をとることができる。
本発明の樹脂組成物を用いれば、射出成形品を、例えば、長期に亘る連続生産において金型のゲート部の摩耗やエアベント部の腐食等が抑制され、安定した品質で経済的に生産できる。また、本発明の樹脂組成物を用いて得られる射出成形品は、外観が優れるとともに、機械的特性(剛性、靭性等)及び難燃性に優れるものである。
例えば、本発明の樹脂組成物から成形される射出成形品は、JIS-K7171に準じて実施される曲げ試験において測定される曲げ強度が、25MPa以上であることが好ましい。35MPa以上であることがより好ましく、50MPa以上であることがさらに好ましい。曲げ強度が、25MPa以上であれば、成形品の剛性が実用上問題ないと評価できる。
例えば、本発明の樹脂組成物から成形される射出成形品は、JIS-K7110に準じて実施されるシャルピー衝撃試験(ノッチ付)において測定されるシャルピー衝撃強度が、8kJ/m以上であることが好ましい。15kJ/m以上であることがより好ましく、20kJ/m以上であることがさらに好ましい。シャルピー衝撃強度が、8kJ/m以上であれば、成形品の靭性が実用上問題ないと評価できる。
ここで、難燃性とは、耐燃性の一つで、燃焼する速さは遅いが、ある程度は燃え続ける性質を指す。耐燃性の評価については、JIS、ASTMなどがあるが、一般には、特にUL規格が重視されている。UL規格とはアメリカの「Underwriters Laboratorie社」が定め、同社によって評価される規格である。
本発明の樹脂組成物から成形される射出成形品において、所定のサイズの試験片として、上記UL規格で評価された場合に、UL-94に準拠した燃焼試験において、V-2以上と判定されることが好ましい。V-1以上がより好ましく、V-0がさらに好ましい。
<成形品>
本発明の樹脂組成物を用いて、射出成形品を作製することができる。この射出成形品を用いることで、上記のとおり、外観が優れるとともに、機械的特性(剛性、靭性等)及び難燃性に優れる製品を得ることができる。
射出成形品を製造する際には、従来公知の射出成形機が使用できる。射出成形品は、例えば、シリンダー内で樹脂組成物を溶融させ、溶融させた樹脂組成物を金型に射出した後に、金型を冷却することで製造できる。射出速度及び圧力は適宜調整する。射出成形の条件は、例えば、シリンダー温度(溶融温度)が180~230℃、射出速度が30~200mm/秒、圧力が500~1000kgf/cm、金型温度が40~80℃であるのが好ましい。
本発明の樹脂組成物から射出成形される射出成形品としては、特に限定されず、例えば、家電製品及び自動車等の分野における電気電子部品、電装部品、外装部品、及び内装部品等、並びに各種包装資材、家庭用品、事務用品、配管、及び農業用資材等を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
[樹脂組成物の原料成分]
各実施例及び比較例の樹脂組成物に含有させる原料成分として、以下の市販品を準備した。
<樹脂>
・ポリプロピレン系樹脂:プライムポリプロJ715M(製品名、プライムポリマー社製)(下記表において、「PP」と記載。)
<金属水酸化物又はフィラー>
・水酸化アルミニウム:商品名「KH101(KCコーポレーション社製、平均一次粒径が1.0μmの粒子)
・水酸化アルミニウム:商品名「KH108(KCコーポレーション社製、平均一次粒径が0.8μmの粒子)
・水酸化アルミニウム:商品名「B703(日本軽金属株式会社製、平均一次粒径が3.0μmの粒子)
・水酸化アルミニウム:商品名「B103(日本軽金属株式会社製、平均一次粒径が7.5μmの粒子)
・水酸化マグネシウム:商品名「ECOMAG Z-10(タテホ化学工業株式会社製、平均一次粒径が1.0μmの粒子)
・水酸化マグネシウム:商品名「ジュンマグ(株式会社ファイマテック製、平均一次粒径が4.5μmの粒子)
・炭酸カルシウム(フィラー):商品名「カルシーズ(神島化学工業株式会社製、平均一次粒径が0.5μmの粒子)
<難燃剤>
・トリフェニルホスフェート(TPP):大八化学工業株式会社製
・トリメチルホスフェート(TMP):大八化学工業株式会社製
・トリエチルホスフェート(TEP):大八化学工業株式会社製
・トリクレジルホスフェート(TCP):大八化学工業株式会社製
・トリキシレニルホスフェート(TXP):大八化学工業株式会社製
・クレジルジフェニルホスフェート(CDP):大八化学工業株式会社製
・PX200(RDX):大八化学工業株式会社製
<ヒンダードアミン化合物(HALS)>
・NOR型HALS:Flamestab NOR116FF:(製品名、BASF社製、N,N´,N´´´-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3´-エチレンジイミノジプロピルアミン)
・NH型HALS:Tinuvin 770DF(BASF社製、ビス(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート)
<分散剤>
・ステアリン酸マグネシウム:ダイワックスM(大日化学工業株式会社製)
<ヒンダードフェノール系熱劣化防止剤>
・Irganox 1010(BASF製、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])
[樹脂組成物の製造]
2軸混練機「KTX-30」(神戸製鋼所社製)を用いて、下記表に示す各成分及び含有量(質量%)で、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練して、各樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物について、金属水酸化物又はフィラーの分散径(平均分散粒径)を以下のとおりにして測定した。
下記の方法により成形した試験片1gをマッフル炉を用いて500℃で3時間焼成し、残渣を回収した。回収した残渣をマイクロトラック社製の粒度分布測定装置(MT-3300)を用いて体積基準のメジアン径(D50)を測定した。
[試験片(評価用成形品)の成形]
前記で得られた各樹脂組成物を80℃で4時間乾燥させ、射出成形機(J140AD-110H(日本製鋼所製))によって、長さ80mm×幅10mm×奥行き4mmの試験片、長さ80mm×幅10mm×奥行き4mmの中央部に深さ2mmのVノッチが付いたノッチ付き試験片、長さ125mm×幅13mm×奥行き1.6mmの短冊形試験片((実施例1~13及び比較例1~5)をそれぞれ成形した。
成形時のシリンダー温度は200℃とし、射出圧力は1次圧1000kgf/cm、2次圧500kgf/cm、射出速度50mm/sec、金型温度は50℃とした。
[評価]
(1)曲げ試験(剛性)
前記で成形した、長さ80mm×幅10mm×奥行き4mmの試験片を、「JIS-K7171」に準拠して曲げ試験を行い、曲げ強度[MPa]を測定し、以下の基準で評価した。なお、「AA」及び「A」であれば成形品の剛性が実用上問題ないと判断した。
(基準)
AA:35Mpa以上
A:30Mpa以上~35Mpa未満
B:25Mpa以上30Mpa未満
(2)衝撃強度(靭性)
前記で成形した、長さ80mm×幅10mm×奥行き4mmの中央部に深さ2mmのVノッチが付いたノッチ付き試験片を、「JIS-K7171」に準拠してシャルピー衝撃試験を行い、シャルピー衝撃強度[kJ/m]を測定し、下記評価基準により評価した。なお、「AAA」、「AA」及び「A」であれば成形品の靭性が実用上問題ないと判断した。
(基準)
AAA:15kJ/m以上
AA:10kJ/m以上15kJ/m未満
A:5kJ/m以上10kJ/m未満
B:5kJ/m未満
(3)燃焼試験(難燃性)
前記で成形した、長さ125mm×12.5mm×1.6mmの短冊形試験片を、「UL-94」に準拠して燃焼試験を行い、以下の基準で評価した。下記表に記載の「燃焼時間t1」、「燃焼時間t2」は、接炎を2回行ったそれぞれの燃焼時間を示す。
なお、「AAA」、「AA」及び「A」であれば実用上問題ないと判断した。
(基準)
AAA:V2かつ燃焼時間t1及びt2が10秒未満
AA:V2かつ燃焼時間t1及びt2が10秒以上20秒未満
A:V2かつ燃焼時間20秒以上30秒未満
B:Not V(V2未達成)
Figure 2024046791000005
Figure 2024046791000006
上記結果に示されるように、本発明の樹脂組成物を用いることで、機械的特性(靭性、剛性等)及び難燃性を両立した射出成形品を製造できることが分かる。

Claims (7)

  1. 射出成形用の樹脂組成物であって、
    前記樹脂組成物の全量に対して、下記条件(1)~(3)を満たす化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
    (1)分子量500以下のリン酸エステル化合物を1~10質量%
    (2)金属水酸化物を5~30質量%
    (3)ポリオレフィン樹脂を50質量%以上
  2. 前記リン酸エステル化合物が、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記リン酸エステル化合物の分子量が、140以上410以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 前記金属水酸化物が、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記樹脂組成物の全量に対して、NOR型ヒンダードアミン化合物を0.05~5質量%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  6. 前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. 前記金属水酸化物の平均分散粒径が、0.1~5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。


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